JP2011216931A - モジュロ演算で生成された信号を送受信する無線通信システム、受信機、及び、復調方法 - Google Patents

モジュロ演算で生成された信号を送受信する無線通信システム、受信機、及び、復調方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 通信速度の高速化または通信品質の安定化を目的として、モジュロ演算を適用して送信機で生成された信号を、受信機が受信する際のBERを改善する。
【解決手段】 少なくとも一の課題を解決するために、本発明の一態様は、モジュロ演算により生成された信号を受信し、受信した信号をから送信機と受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得し、モジュロ演算に関する演算情報を取得し、伝搬路情報と演算情報とに基づいて信号の判定結果を出力する復調器と、を有する受信機を少なくとも備える無線通信システムである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、無線通信システム、無線ネットワークを介して通信する通信機に関し、特に、モジュロ演算で生成された信号を送受信する無線通信システムに関する。
モジュロ演算を適用して生成された信号を送信する方式は、送信側の信号処理によって干渉信号の除去や伝搬特性の予等化を達成する方式として知られている。この方式では送信する所望信号dに相殺信号cを加算したのち、加算結果d+cにMを法としたモジュロ演算を適用して送信信号を生成する。以下に相殺信号cの生成方法とモジュロ演算の詳細について順に説明する。
送信機から複数の受信機への複数の信号の同時伝搬はMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)−BC(Broadcast Channel)と呼ばれ、無線通信での採用が期待されている。ある受信機R1に着目すると、送信機が受信機R1へ送信した所望信号の他に、別の受信機R2、3…へ送信した信号も合わせて受信してしまうため、別の受信機R2、3…への信号が干渉信号となり、通信特性を劣化させてしまう。そこで、送信機は受信機R1が受信する干渉信号を計算し、符号反転した信号を相殺信号cとすることで受信機R1が受信する干渉信号を除去できる。
所望信号に相殺信号を加算することで干渉信号の除去や伝搬特性の予等化を実現できるが、一方で送信信号強度は増加してしまう。モジュロ演算はその送信信号強度の増加を抑えるために適用される。信号xに対するMを法としたモジュロ演算modを数1のように定義する。
Figure 2011216931
Mは送受信機の双方に予め設定される固定値である。qは商と呼ばれる整数である。qの決定方法には複数の方式が存在する。例えばTHP(Tomlinson−Harashima Precoding)ではmod(x、M)の絶対値が最小になるqを採用する。またVector−Precodingではモジュロ演算結果にさらにPrecoding処理した後の信号強度が最小となるようなqを採用する。いずれの方法でも、モジュロ演算によって送信信号強度の増加が抑えられる。
受信信号には送信機のモジュロ演算で加算される−qMが残留してしまう。これは受信機で受信信号にモジュロ演算を適用して除去することができる。しかし受信信号には、送信機と受信機との間の伝搬路における雑音信号も加わるため、モジュロ演算が誤った商を算出する可能性があり、符号誤り率(Bit Error Rate:BER)を劣化させる問題がある。
この問題に対し、非特許文献1は受信機でのモジュロ演算が、本来の商qより1だけ異なる(q+1,q−1)場合に想定される受信信号値(レプリカ)も考慮して、軟判定復調することでBERを改善している。
特許文献1には、MIMO伝送の受信機において、信号対干渉雑音比を考慮した軟判定復調値の補正方法が開示されている。
WO2009/037727公報
E. C. Y. Peh and Y.−C. Liang,"Expected soft demapper for LDPC coded GMD−THP MIMO system," in Proc. IEEE Radio Wireless Symp., Jan. 2007, pp.519−522
モジュロ演算を適用して送信機で生成された信号を、受信機が受信する際のBERを改善する。非特許文献1での軟判定復調では、限られた条件でしか判定できない。一方、送信機のモジュロ演算の商はある確率分布を持つ確率変数であり、その確率分布は相殺信号の平均信号強度によって変化する。例えば相殺信号の平均信号強度が極端に小さい場合、当該の商は0となる確率が高い。その点に着目した発明者により検討された本発明は、通信速度の高速化または通信品質の安定化を目的とする。
少なくとも一の課題を解決するために、本発明の一態様は、モジュロ演算により生成された信号を受信し、受信した信号をから送信機と受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得し、モジュロ演算に関する演算情報を取得し、伝搬路情報と演算情報とに基づいて信号の判定結果を出力する復調器と、を有する受信機を少なくとも備える無線通信システムである。
本発明の他の態様は、送信機から、ユーザデータを含む所望信号及び相殺信号とに対して行われたモジュロ演算により生成される信号を、無線ネットワークを介して受信する信号を復調する復調方法であって、前記信号から前記送信機と前記受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得し、受信した信号から、モジュロ演算に関する演算情報を取得し、伝搬路情報と演算情報とに基づいて、信号の判定結果を出力する。
本発明によると、信号の復調を効率よく行うことができる。
第1の実施例の通信システムの構成を示す図 実数2値変調を示す図 THPモジュロ演算の入出力関係を示す図 本実施例で得られるLLRのグラフ 本実施例を用いて硬判定復調した場合のBERカーブ 本実施例を用いて軟判定復調し、誤り訂正した場合のBERカーブ 第2の実施例の受信機を表す図 第3の実施例の受信機を表す図 第4の実施例の受信機を表す図 第5の実施例の受信機を表す図 第6の実施例の受信機を表す図 第7の実施例の受信機を表す図 図4のグラフで変動周期が一致するような係数で倍率変換したグラフ 第7の実施例の受信機を表すもう一つの図 テーブルの構成を示す図 係数決定部で決定される係数の等高線図 テーブルの構成を示すもう一つの図 第8の実施例の受信機を表す図
図1は、第1の実施例の通信システムの構成を示す図である。
送信機101はモジュロ演算を適用した信号を生成する通信機であり、符号器201、変調器202、相殺信号加算器203、モジュロ演算器204を備える。受信機102は、送信機101から送信される信号を受信する通信機であり、商情報取得部301、信号対雑音比(Signal−to−Noise Ratio:SNR)取得部302、復調器303、復号器304を備える。
符号器201は、入力データ信号に誤り訂正符号化して、得られた信号eを出力する。変調器202は、符号器201から入力された信号eをコンスタレーション上にマッピングして、得られた信号dを出力する。相殺信号加算器203は、変調器202から入力された信号dに、相殺信号cを加算して、得られた信号d+cを出力する。モジュロ演算器204は、相殺信号加算器203から加算された信号d+cにモジュロ演算を適用し、得られた信号sを出力する。
送信機101から受信機102へ信号が伝送される過程で、干渉信号iが信号sに加算され、s+iとなる。
受信機102では回路で生じる雑音nが信号に加算され、その結果の受信信号値yはs+i+nとなる。商情報取得部301は、受信信号から送信機のモジュロ演算における商の確率分布(以後、商情報と呼ぶ)を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。復号器304は、復調器303から入力された信号に誤り訂正復号処理を適用し、得られた信号を出力する。
符号器201と復号器304で用いる誤り訂正符号は拘束長9の畳み込み符号とする。変調器202は入力信号eが0か1かに応じて2値実数信号を出力するものとする。送信機はMIMO−BCの場合のように干渉信号iを知っているものとし、相殺信号cをc=−iで生成し、モジュロ演算器204の動作はモジュロ演算器204の出力の絶対値を最小とするTHP方式とする。
変調器202の入力eは0、1の2値信号であり、e=0の時d=0.5、e=1の時d=−0.5を出力する。モジュロ演算器204におけるモジュロ演算の法Mは2に設定する。eとdの関係を図2に示す。またモジュロ演算器204の入出力関係は図3のグラフに示される関係となり、モジュロ演算器204の出力値sは数2のように表される。
Figure 2011216931

受信機で受信される信号yは、干渉信号iと雑音nが加算されるため数3で表される。
Figure 2011216931

所望信号対相殺信号比(Desired−to−Counter Ratio:DCR)、信号対干渉比(Signal−to−Interference Ratio:SIR)とSNRを数4で定義する。
Figure 2011216931

<>は平均を意味している。この例ではc=−iとしているためDCR=SIRとなるが、相殺信号は干渉信号の定数(−a)倍(c=−ai)とする構成も可能であり、必ずしもDCR=SIRとはならない。
商qの確率分布P(q|d)は数5で表される。
Figure 2011216931

商情報取得部301では、この確率分布P(q|d)を取得する。数5で導出された通り、商qの確率分布P(q|d)は相殺信号cの確率分布P(c)から求められる。予めP(c)確率分布を仮定しておき、相殺信号cの分散値等を取得することで、P(c)やP(q|d)を求めるのがよい。例えばP(c)は平均0の正規分布と仮定しておけば、相殺信号cの分散値を取得すれば確率分布P(q|d)を算出する。つまり、受信機102は、相殺信号の確率分布の仮定値と前記相殺信号の分散値とをあらかじめ保持しておく。あるいは、P(c)の分布形状を取得してもよい。復調器303では商情報取得部301で得られるP(q|d)とSNR取得部302で得られるSNRを用いて、受信信号を復調する。軟判定復調する場合には対数尤度比(Log Likelihod Ratio:LLR)を出力するのが復調器の典型的な動作である。硬判定復調の場合にはLLRの正負(典型的にはLLRが正なら0、負なら1)を出力する。復調器303はLLRを数6のように求めることができる。
Figure 2011216931

数6は、P(y|e=0)、P(y|e=1)を算出するために、yとqの同時確率P(y,q|e)を、とり得るqの範囲で合計して求めている点が従来とは異なる。雑音nは通常、平均0の正規乱数とみなすことができ、標準偏差σnはSNR取得部302で得られたSNRから算出することができる。従って、数6のP(n)は数7のように求めることができる。
Figure 2011216931

特許文献1に記載の技術では、信号対干渉雑音比(Signal−to−Interference−Noise Ratio:SINR)を考慮してLLRを算出しているが、本実施例の復調器ではSNRだけでなく商qの確率分布P(q|d)も考慮することで、LLRを算出している。
以後の説明では干渉信号iと雑音信号nは、平均0の実数正規乱数信号とした。図4にSNR=0dBの際の受信信号値yに対するLLRのグラフを示した。DCRは−20,−10,0,10dBとした。グラフ中、丸と星(401〜416)は、それぞれe=0,1の信号を受信する場合に期待される受信信号点(信号レプリカ)を示している。黒丸と黒星(401,402)はq=0の信号レプリカ、白丸と白星(411〜416)はq≠0の信号レプリカを示している。DCR=−20dBでは受信信号がe=0(丸:402、411、413、415)の信号レプリカに等しい受信信号値yでLLRが大きくなってe=0の尤度が高くなり、e=1(星:401、412、414、416)の信号レプリカに等しいに受信信号値yでLLRが小さくなってe=1の尤度が高くなり、信号レプリカの中間点ではLLRが0になってe=0,1の判別がつかなくなっている。このLLRは、非特許文献1で開示されている従来方法で得られるLLRに等しい。しかし、DCRが大きくなるにつれてグラフの形状は変化し、従来方法とは異なるLLRが得られる。特に、DCR=10dBで受信信号値が1.5の場合は、e=1(星)の信号レプリカのある受信信号値yであるにも関わらず、LLRは極大値となってe=0の尤度が高くなる。このようなLLRは従来方法によっては得られない。
図4のLLRは正負の変化点がDCRによって異なるため、このLLRの正負に従って硬判定復調することで性能改善を期待できる。硬判定復調で誤り訂正しない場合のBERカーブを図5に示した。DCR=−10,0,10dBの3つの結果がプロットされている。従来方式ではDCRの値に関わらず、図5のDCR=−10dBと同等の結果となる。本実施例によれば、DCRが−10dBより高い場合には硬判定復調でBERの改善が得られる。
誤り訂正復号時の性能改善も期待できる。図6はLLRを軟判定復調結果として誤り訂正した場合のBERカーブである。DCR=−15,−10,−5,0,5,10,15dBの7つの結果がプロットされている。従来方式ではDCRの値に関わらず、図6のDCR=−15dBと同等の結果となる。DCRが−10dBより高い場合には軟判定復調による誤り訂正でのBERも改善され、ここではDCR=15dBで2.5dB程度の感度向上が得られている。
本実施例の動作の説明では誤り訂正符号を畳み込み符号としたが、特に限定するものではなく、他の誤り訂正符号を用いてもよい。あるいは、復調器303が硬判定結果を出力する場合には、誤り訂正符号を用いなくてもよい。変調器202における変調は、実数の2値変調としたが、多値変調やIQ信号(複素信号)変調を用いても良い。IQ信号に対するモジュロ演算ではI信号とQ信号それぞれに対してモジュロ演算を適用する。
本実施例によると、従来より正確に確率計算するため、BERが改善される。それに付随して,通信速度の高速化,通信品質の安定化が可能となる。
図7は第2の実施例の受信機を表す図である。誤り訂正方式には、復調器と復号器の間でフィードバックループを構成することで通信性能の向上を図る方式がある。Bit−Interleaved Coded Modulation with Iterative Decoding(BICM−ID)はその一例であり、ループを構成する復調器と復号器を繰り返し動作させる。本実施例は、そのような誤り訂正方式を本実施例で実施する際の構成を示す。
図7の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303、復号器304を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、受信信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRと、復号器304から入力される事前情報を用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。復号器304は、復調器303から入力された信号に誤り訂正復号処理を適用し、復号によって得られたデータ信号を出力するとともに、外部情報を算出して出力する。出力された外部情報は、復号器304の事前情報入力として利用される。
図1の変調器202では、複数ビットの組が入力信号となり、1つの変調信号が出力される。従って、復調器303は、1つの受信信号から複数ビットを出力する。復調器303で前記複数ビットのうちの1ビットのLLRを求める場合、組を構成する他のビットのLLR(事前情報)がわかっていれば、当該ビットのLLRを高精度で求めることができる。復調器303は事前情報を復号器304から取得し、復調器303復号器304の動作を繰り返すことで誤り訂正能力を高めることができる。以上はBICM−IDのような復調器と復号器を繰り返し動作させる方式の、一般的な動作である。複数ビットの組でLLRを求めるビットの事象をe、その他のビットの事象をEとする。復号器304から復調器303に入力される事前情報により、Eの確率分布P(E)が得られるので、復調器303は数8でLLRを計算できる。
Figure 2011216931

数8は、P(y|e=0),P(y|e=1)を算出するために、yとqの同時確率P(y,q|e,E)を、とり得るqの範囲で合計して求めている点が従来とは異なる。
図8は第3の実施例である受信機を表す図である。本実施例は、DCRを取得し、商情報へと変換する。図8の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303を備える。商情報取得部301は、DCR取得部310を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、受信信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。DCR取得部310は受信信号からDCRを取得し出力する。
数5で示したように、商qの確率分布は、相殺信号の確率分布から求めることができる。相殺信号の確率分布は、分布形状と分散から計算できる。従って、相殺信号の確率分布の形状と分散から、商qの確率分布を求めることができる。相殺信号の確率分布の形状は、予めシミュレーション等により求めておくか、あるいは妥当な分布形状(例えば正規分布)を仮定することで、決定することができる。相殺信号の確率分布の分散は、DCRから(典型的にはDCRの真値の定数倍で)求められる。つまり、商情報取得部301が、DCR取得部310を備え、DCR取得部310でDCRを取得し、取得したDCRに基づいて商qの確率分布を得る。
相殺信号は干渉信号から計算されるので、干渉信号の確率分布がわかれば相殺信号の確率分布も求められる。そのため、実用上はDCRではなくSIRを取得してDCRに換算することが可能である。
平均所望信号強度と平均雑音強度は従来技術で取得可能であるため、受信信号平均強度から平均所望信号強度と平均雑音強度を減算することで、平均干渉信号強度を得ることができる。これより、SIRを算出し、DCRへ換算することが可能である。
また、通信信号にはデータとは別に、トレーニング信号、パイロット信号、あるいはリファレンス信号と呼ばれる信号(以後トレーニング信号と呼ぶ)が含まれる場合がある。その際には、所望信号に対応するトレーニング信号の信号強度から平均所望信号強度、干渉信号に対応するトレーニング信号の信号強度から平均干渉信号強度を取得することができる。それらの取得結果からSIRを算出し、DCRへ換算することが可能である。
以上は、DCRを取得する方法の例を示しているものであり、DCR取得手段をこれらに制限するものではない。
図9は第4の実施例である受信機を表す図である。本実施例によれば、送信機からの通知により、受信機は正確な商の確率分布情報を得ることができるため、良好な通信特性を得ることができる。図9の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303を備える。商情報取得部301は、制御情報取得部311を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、受信信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。制御情報取得部311は受信信号に含まれる制御情報を取得し、制御情報から商情報を抽出して出力する。
送信機は自分で相殺信号を生成しているため、相殺信号の確率分布を知ることができ、また数5からモジュロ演算の商の確率分布を求めることができる。そのため、送信機は商情報を送信信号中の制御情報領域に含めて受信機へ通知することができる。受信機は制御情報を取得し、そこから商情報を抽出することができる。実施例3に記載のように、受信機へ通知する情報はDCRでもよい。送信信号中の制御情報領域とは、例えば変調多値数や誤り訂正符号の情報のような受信に必要なデータであり、無線LANではSIGNAL、WiMAXではDL/UL−MAP、LTEではPDCCH/PUCCHに存在する。
制御情報領域の情報は、送信機でモジュロ演算を適用して生成された送信信号(以後モジュロ信号と呼ぶ)の受信に必要となるため、制御情報自体をモジュロ信号で送信することはできない。そのため、制御情報はモジュロ信号に先立って、非モジュロ信号で送信する。
図10は第5の実施例である受信機を示す図である。本実施例は実施例4の構成において、データ再生部を利用して制御情報を再生する構成を示す。図10の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303、データ再生部312を備える。商情報取得部301は、制御情報取得部311を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、データ再生部312より入力される信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。データ再生部312は復調器303で得た復調結果からデータを再生する。制御情報取得部311はデータ再生部312で再生されたデータから制御情報を取得し、制御情報から商情報を抽出して出力する。
制御情報は、通常、データの一部として送信されるため、一つのブロックを共用して制御情報とデータを再生することができる。これを実現するには、データ再生部312の出力を、商情報取得部301への入力へ接続する。
図11は第6の実施例である受信機を示す図である。本実施例は、送信機から複数の受信機へ複数の信号を同時伝搬するMIMO−BCにおける、受信機の構成を示す。図11の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303、チャネル推定部313、MIMO処理部314を備える。商情報取得部301は、DCR取得部310を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。チャネル推定部313は、受信信号中のトレーニング信号から伝搬路の伝達関数を推定する。MIMO処理部314はチャネル推定部313で得られた伝達関数に基づいて、受信したMIMO多重信号を分離し、出力する。
商情報取得部301は、チャネル推定部313で得られた伝達関数から商情報を取得する。SNR取得部302は、チャネル推定部313で得られた伝達関数を用いてSNRを取得し、出力する。復調器303は、MIMO処理部314からの入力信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。DCR取得部310はチャネル推定部313で得られた伝達関数からDCRを取得し出力する。
本実施例は特に、送信機から複数の受信機への複数の信号の同時伝搬するMIMO−BCにおける受信機での適用を想定している。通信信号にはデータとは別に、トレーニング信号が含まれている。MIMO処理部314はMIMO多重信号を分離するために、チャネル推定部314で取得する伝搬路の伝達関数を必要とする。所望信号に対応する伝達関数から平均所望信号強度、干渉信号に対応する伝達関数から平均干渉信号強度を取得することができる。それらの取得結果からSNR取得部302はSNRを算出し、DCR取得部310はSIRを算出してDCRへ換算することが可能である。
以上の構成によれば、MIMO−BC無線通信においてモジュロ演算の商の確率分布情報を取得することができる。
図11では314をMIMO処理部としたが、一部のMIMO−BC方式ではMIMO復号器を必要としない。そのような場合には、114は等化器となり、伝搬路利得による信号の変化を等化する役割を果たす。
図12は第7の実施例である受信機を表す図である。本実施例は、上述のLLRを利用して、受信機構成の簡易化を可能としている。図12の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303を備える。復調器303は、係数決定部305、逆数演算部306、乗算器307−1、307−2、モジュロ演算器308、判定機309を備える。受信機102では、回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、受信信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。
復調器303では、係数決定部305が、商情報取得部301から入力される商情報と、SNR取得部302から入力されるSNRをもとに係数を決定し、出力する。逆数演算器306は、係数決定部305から入力される係数の逆数を求め、出力する。乗算器307−1は、逆数演算部306から入力される信号と受信信号を乗算し、結果を出力する。モジュロ演算器308は、乗算器307−1から入力される信号に対してモジュロ演算を適用し、結果を出力する。判定器309は、SNR取得部302から入力されるSNRと、モジュロ演算部308から入力される信号をもとに、軟判定復調結果を出力する。判定機309が硬判定する場合には、SNR取得部302からの入力は不要である。乗算器307−2は、判定器309から入力される信号と逆数決定部305から入力される係数を乗算し、結果を復調器303の出力とする。判定機309で硬判定している場合には、乗算器307−2は不要であり、判定機309の出力を、そのまま復調器303の出力とすればよい。
図4のLLRのグラフはDCRの違いにより形状が大きく変化する。しかし、受信信号に対してLLRが周期的に変化する様子は同じである。そこで、受信信号に対するLLRの変動周期がDCRの低い場合と同じになるように、各DCRでのグラフを横軸方向に縮小し、同じ縮小率で縦軸方向にも縮小したグラフを図13に示した。
図13のグラフの形状はDCRの違いによらず、ほぼ同じグラフとなっている。この特徴から、係数決定部305で係数を決定し、受信信号をその係数で除算した後、モジュロ演算器308でモジュロ演算を適用し、判定器309でLLRを算出し、前記係数を乗算器307−2で乗算することで図4のLLRを求めることができる。図13で、DCR=0、10dBでは受信信号値の絶対値が大きな箇所でグラフの形状がずれているが、そのような受信信号値はほとんど起こり得ないため、グラフ形状のずれは無視できる。
図14で表す受信機は、図12の受信機の商情報取得部301にDCR取得部310を設置し、係数決定部305にテーブル315を設置したものである。テーブル315の構成は図15に示した。係数はSNRとDCRから算出することができので、予め図15のテーブルを用意しておけば、係数決定部305はSNRとDCRからテーブル315をルックアップすることによって係数を定めることができる。
図16はSNR、DCRによって決まる係数を等高線によって示したものである。図16が示すように、等高線はグラフ上で直線となる。この直線はある2つの定数α、βを用いて数9のように表される。
Figure 2011216931

図16のグラフの場合はα/βを約1.55に設定すれば良い。係数は数9のγの関数として計算することができるため、テーブル315は図17に示すようにγに対応する係数のテーブルとすればよい。この方法によればテーブルのサイズを小さくすることができる。
本実施例の構成を用いれば、DCRによるLLRの変化は、乗算器307−1、307−2の乗算によって実現できる。判定器309は、非特許文献1のように、DCRに依存しない従来通りのSNRに応じた判定を実施すればよく、信号処理量を低減できる。
図18は第8の実施例である受信機を表す図である。本実施例は、LLRの特徴を利用して、受信機構成の簡易化を可能としている。図18の受信機102は、商情報取得部301、SNR取得部302、復調器303を備える。復調器303は、係数決定部305、モジュロ演算器308、判定機309を備える。受信機102では回路で生じる雑音が信号に加算される。商情報取得部301は、受信信号から商情報を取得する。SNR取得部302は受信信号からSNRを取得する。復調器303は、受信信号と、商情報取得部301で得た商情報と、SNR取得部302で得たSNRを用いて、受信信号の硬判定、あるいは軟判定復調結果を出力する。
復調器303では、係数決定部305が、商情報取得部301から入力される商情報と、SNR取得部302から入力されるSNRをもとに係数を決定し、出力する。モジュロ演算器308は、受信信号に対して、係数決定部305で決定した係数を法としてモジュロ演算を適用し、結果を出力する。判定器309は、係数決定部305から入力される係数と、SNR取得部302から入力されるSNRと、モジュロ演算部308から入力される信号をもとに、軟判定復調結果を出力する。判定機309が硬判定する場合には、SNR取得部302からの入力は不要である。
図4のLLRのグラフはDCRの違いにより形状が大きく変化する。しかし、受信信号に対してLLRが周期的に変化する様子は同じである。そこで、係数決定部105で決定した係数と、モジュロ演算器108のモジュロ演算の法を合わせることで、受信信号にモジュロ演算を適用することができる。判定器109はモジュロ演算器108の出力とSNR取得部102で取得したSNRから、硬判定あるいは軟判定結果を出力する。受信信号に対するLLRの変化は前記係数によって変化するため、判定器109は係数決定部105で決定された係数で補正して判定する。係数の求め方は、実施例7と同じである。
本実施例の構成を用いれば、モジュロ演算器108のモジュロ演算の法を制御することでDCRによって変化するLLRを算出できる。
101 送信機
202 受信機
201 符号器
202 変調器
203 相殺信号加算器
204 モジュロ演算器
301 商情報取得部
302 SNR取得部
303 復調器
304 復号器
305 係数決定部
306 逆数演算器
307 乗算器
308 モジュロ演算器
309 判定器
310 DCR取得部
311 制御情報取得部
312 データ再生部
313 チャネル推定部
314 MIMO復号器
315 テーブル
401−416 信号レプリカ

Claims (11)

  1. 所望信号をモジュロ演算により生成された信号を送信機から受信する受信機であって、
    前記信号から前記送信機と前記受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得する伝搬路情報取得部と、
    前記信号に基づいて、前記モジュロ演算に関する演算情報を取得する演算情報取得部と、
    前記伝搬路情報と前記演算情報とに基づいて、前記信号の判定結果を出力する復調器と、を有することを特徴とする受信機。
  2. 請求項1記載の受信機であって、
    さらに、復調器の出力に対して誤り訂正復号処理を行い、前記誤り訂正復号処理結果に基づくフィードバック情報を前記復調器に伝送する復号器を有し、
    前記復調器は、前記フィードバック情報に基づいて前記判定結果を出力する、
    ことを特徴とする受信機。
  3. 請求項1記載の受信機であって、
    前記演算情報取得部は、前記相殺信号の確率分布の仮定値と前記相殺信号の分散値とから前記演算情報を取得する、ことを特徴とする受信機。
  4. 請求項3記載の受信機であって、
    前記モジュロ演算は、前記所望信号と前記相殺信号とに対して行い、
    前記相殺信号の分散値は、前記所望信号の強度と相殺信号の強度とに基づいて算出される、ことを特徴とする受信機。
  5. 請求項4記載の受信機であって、
    前記信号には、参照信号を含み、
    前記参照信号に基づいて複数の受信機に対する信号の伝搬路利得を推定するチャネル推定部を有し、
    推定された該受信機宛て信号の伝搬利得及び他の受信機宛ての伝搬利得の比から所望信号対相殺信号強度比を算出することを特徴とする受信機。
  6. 請求項1記載の受信機であって、
    前記伝搬路情報取得部は、前記信号から、前記信号と前記伝搬路状況における雑音信号の比である信号対雑音比を取得することを特徴とする受信機。
  7. 請求項6記載の受信機であって、
    前記モジュロ演算に関する演算情報は、前記モジュロ演算における商の確率分布の情報である、ことを特徴とする受信機。
  8. 請求項7記載の受信機であって、
    前記復調器は、前記信号対雑音比と前記商の確率分布の情報とに基づいて係数を決定する係数決定部と、
    該係数決定部の決定した係数の逆数を算出する逆数演算器と、
    該逆数演算器と前記信号を乗算する第一の乗算器と、
    前記第一の乗算器により乗算結果にモジュロ演算を適用するモジュロ演算器と、
    前記信号対雑音比と前記商の確率分布の情報とに基づいて前記信号の軟判定結果を出力する判定器と、
    前記係数決定部の決定した係数と前記判定機の出力を乗算する第二の乗算器と、をさらに備え、前記復調器は、前記第二の乗算器による乗算結果を前記判定結果として出力する、ことを特徴とする受信機。
  9. 請求項7記載の受信機であって、
    前記復調器は、
    前記信号対雑音比と前記商の確率分布の情報とに基づいて係数を決定する係数決定部と、
    前記係数決定部の決定した係数に基づいて、受信した信号にモジュロ演算を適用するモジュロ演算器と、
    前記信前記信号対雑音比と前記係数と、前記モジュロ演算器の出力から軟判定結果を前記判定結果として出力する判定器と、を有することを特徴とする受信機。
  10. 無線通信システムであって、
    ユーザデータを含む所望信号及び相殺信号に対してモジュロ演算を行うモジュロ演算部と、モジュロ演算により生成された信号を送信する送信部と、を有する送信機と、
    前記信号を受信する受信部と、前記信号から前記送信機と前記受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得する伝搬路情報取得部と、前記信号から、前記モジュロ演算に関する演算情報を取得する演算情報取得部と、前記伝搬路情報と前記演算情報とに基づいて、前記信号の判定結果を出力する復調器と、を有する受信機と、を備える、
    ことを特徴とする無線通信システム。
  11. 送信機から、ユーザデータを含む所望信号及び相殺信号とに対して行われたモジュロ演算により生成される信号を、無線ネットワークを介して受信する信号を復調する復調方法であって、
    前記信号から前記送信機と前記受信機間の伝搬路状況に関連する伝搬路情報を取得し、
    前記信号から、前記モジュロ演算に関する演算情報を取得し、
    前記伝搬路情報と前記演算情報とに基づいて、前記信号の判定結果を出力する、ことを特徴とする復調方法。
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