JP2011214658A - 歯車機構の潤滑装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】掻き上げられた潤滑油が供給されて回転し、その回転によって前記潤滑油を軸線方向に飛散させるはすば歯車のいわゆるポンプ作用によって、はすば歯車に供給された潤滑油の一部を予め定められた必要箇所に対して供給することのできる歯車機構の潤滑装置を提供すること。
【解決手段】潤滑油が供給されて回転するとともに前記潤滑油を外周方向に飛散させるはすば歯車19を有する歯車機構の潤滑装置において、前記はすば歯車19から飛散した潤滑油の一部を受け止めるとともに、前記潤滑油が有する前記はすば歯車19の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に前記潤滑油を導く受け部25が、前記はすば歯車19の外周側に配置され、さらにその受け部25から前記潤滑油を予め定められた必要箇所に向けて供給する管路37,47が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】潤滑油が供給されて回転するとともに前記潤滑油を外周方向に飛散させるはすば歯車19を有する歯車機構の潤滑装置において、前記はすば歯車19から飛散した潤滑油の一部を受け止めるとともに、前記潤滑油が有する前記はすば歯車19の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に前記潤滑油を導く受け部25が、前記はすば歯車19の外周側に配置され、さらにその受け部25から前記潤滑油を予め定められた必要箇所に向けて供給する管路37,47が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
この発明は、歯車が掻き上げた潤滑油によって予め定められた必要箇所を潤滑あるいは冷却する装置に関するものである。
この種の装置の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、デフリングギアによって掻き上げた潤滑油をオイル受け部により受け止め、このオイル受け部で受け止めた潤滑油をオイル受け部よりも鉛直方向で下方に設けられたモータの軸心などの被潤滑部に供給するように構成された装置が記載されている。
また特許文献2には、ファイナルドリブンギアの側面に近接してコの字型のプレートが配置されており、ファイナルドリブンギアの回転により掻き上げられ、そのファイナルドリブンギアの側面に連れまわる潤滑油がコの字プレートによってスクレープされて、すなわち取り除かれた潤滑油をコの字プレートよりも鉛直方向で下方のメインシャフトなど被潤滑部に供給するように構成された装置が記載されている。
さらにまた特許文献3には、ヘリカルギアによって構成されたカウンタドライブギアと同じくヘリカルギアによって構成されたカウンタドリブンギアとの噛み合い部が浸漬されるようにケースの内部に潤滑油を貯留し、これらのギアの噛み合い部から圧送される潤滑油をキャッチタンクに導くようにガイド通路が形成された装置が記載されている。
上述した特許文献1および2に記載された発明は、掻き上げられた潤滑油が供給されるオイル受け部などからその鉛直方向で下方のモータの軸心などの被潤滑部に潤滑油を供給するように構成されている。言い換えれば、モータの軸心などの被潤滑部よりも鉛直方向で上方のオイル受け部から潤滑油の自重、言い換えれば水頭圧により被潤滑部に潤滑油が供給されるように構成されている。また、潤滑油を掻き上げるデフリングギアなどの歯車の配置によっては、オイル受け部などに掻き上げられる潤滑油量が不足し、したがって、オイル受け部から被潤滑部に供給される潤滑油の供給量や供給圧が不足する虞があり、未だ改善の余地があった。
また、特許文献3に記載された発明によれば、カウンタドライブギアとカウンタドリブンギアとの噛み合い部を潤滑油によって浸漬させる必要があり、したがってこれらのギアの撹拌損失が増大する虞がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、掻き上げられた潤滑油が供給されて回転し、その回転によって前記潤滑油を軸線方向に飛散させるはすば歯車のいわゆるポンプ作用によって、はすば歯車に供給された潤滑油の一部を例えばモータの軸心などを含む潤滑必要箇所に対して供給することのできる歯車機構の潤滑装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、潤滑油が供給されて回転するとともに前記潤滑油を外周方向に飛散させるはすば歯車を有する歯車機構の潤滑装置において、前記はすば歯車から飛散した潤滑油の一部を受け止めるとともに、前記潤滑油が有する前記はすば歯車の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に前記潤滑油を導く受け部が、前記はすば歯車の外周側に配置され、さらにその受け部から前記潤滑油を予め定められた必要箇所に向けて供給する管路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記受け部で受け止めた前記潤滑油が流動する方向における前記はすば歯車を有するシャフトを支持する軸受に、前記受け部から前記軸受に供給される前記潤滑油と前記管路を流動して前記予め定められた必要箇所に向けて供給される前記潤滑油とを分けることにより、前記受け部から前記軸受に供給される前記潤滑油の量を調整する油量調整部が設けられていることを特徴とする歯車機構の潤滑装置である。
請求項1の発明によれば、はすば歯車の歯のいわゆる捩れ角によってその歯からはすば歯車の軸線方向に押し出されて飛散した潤滑油が受け部で受け止められる。また、この受け部は、その受け止めた潤滑油のはすば歯車の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向にその潤滑油を導くようになっている。そして、その導かれた潤滑油は管路を流動して予め定められた必要箇所に供給される。その結果、はすば歯車に供給された潤滑油を、はすば歯車のいわゆるポンプ作用により予め定められた必要箇所に供給できる。言い換えれば、はすば歯車に供給された潤滑油を回収して予め定められた必要箇所に供給できる。そしてこれにより、予め定められた必要箇所における油量の不足を防止もしくは抑制できる。また、はすば歯車のいわゆるポンプ作用によって潤滑油を圧送するので、例えば掻き上げた潤滑油をいわゆるキャッチタンクに供給し、そのキャッチタンクから水頭圧によって予め定められた必要箇所に潤滑油を供給する場合に比較して、潤滑油の供給圧力を増大させることができる。さらにまた、いわゆる掻き上げによって供給される油量がある程度少なく、またいわゆる水頭圧では潤滑あるいは冷却に必要とする油量の確保が困難な箇所であっても、はすば歯車のいわゆるポンプ作用によって潤滑油を供給できる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、はすば歯車のいわゆるスラスト方向に設けられた軸受に供給する油量と管路を流動して予め定められた必要箇所に供給する油量とを油量調整部によって分けることができる。そしてこれにより、軸受に供給する油量を調整することができる。その結果、軸受に過剰に潤滑油が供給されて軸受の撹拌損失が増大することを防止もしくは抑制できる。言い換えれば、軸受の潤滑と軸受の動力損失とを両立させることができる。また、油量調整部によって軸受に供給する油量と管路を流動して予め定められた必要箇所に供給する油量とを分けることにより、はすば歯車のいわゆるポンプ作用によって予め定められた必要箇所に供給される潤滑油の流動が、軸受に衝突することを防止もしくは抑制できる。言い換えれば、軸受の遠心力によって潤滑油の流動が阻害されることを防止もしくは抑制できる。さらにまた、軸受に供給する油量を調整できることから、管路を流動して予め定めた必要箇所に供給される油量を増大させることができる。
図10に、この発明に係る歯車機構の潤滑装置を適用した車両の構成をスケルトン図で示してある。ここに示す例は、いわゆるツーモータ式のハイブリッド装置を搭載した車両の例である。図10において、エンジン1の出力軸2がクラッチ(図示せず)を介して動力分配機構3に連結されている。エンジン1は、要は燃料を燃焼して機械的な動力を出力する熱機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはガスを燃料としたガスエンジンなどがその例である。動力分配機構3は、三つの回転要素によって差動作用をおこなうように構成されたいわゆる差動機構であり、それらの三つの回転要素は、歯車やローラである。その一例として、動力分配機構3は、外歯歯車であるサンギア4と、そのサンギア4に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギア5と、これらサンギア4およびリングギア5の間に配置されてこれらサンギア4とリングギア5とに噛み合っているピニオンギア6を自転かつ公転できるように支持しているキャリヤ7とを回転要素として備えている。
前述したエンジン1の出力軸2はクラッチを介してキャリヤ7に連結されており、サンギア4には第1モータ・ジェネレータ(MG1)8が連結されている。この第1モータ・ジェネレータ8は、一例として永久磁石式の交流同期電動機であって、詳細は図示しないが、インバータを介して蓄電装置に接続されている。そして、この第1モータ・ジェネレータ8は、蓄電装置から電力が供給されることによりモータとして機能し、また強制的に回転させられることにより発電を行って蓄電装置に充電するように構成されている。この第1モータ・ジェネレータ8のロータ軸は中空軸であって、その内部に油路が形成されており、この油路に潤滑油を供給することにより第1モータ・ジェネレータ8を潤滑あるいは冷却するようになっている。
さらに、出力部材であるリングギア5の外周側には、カウンタドライブギア9が一体化されて設けられている。このカウンタドライブギア9にカウンタドリブンギア10が噛み合っている。このカウンタドリブンギア10は前述した出力軸2と平行でかつ回転自在に配置されたカウンタ軸11に取り付けられており、そのカウンタ軸11には出力ギア12が更に取り付けられている。この出力ギア12は、デフリングギア13に噛み合っている。このデフリングギア13は、終減速機であるデファレンシャルギア14のデフケース15に一体化されたギアであり、したがってこのデファレンシャルギア14からドライブシャフト16を介して左右の駆動輪17に駆動トルクを伝達するように構成されている。
さらに、上述したリングギア5と駆動輪17との間の伝動機構に対して、いわゆるパワートレインに対してトルクを付与する第2モータ・ジェネレータ(MG2)18が設けられている。この第2モータ・ジェネレータ18は、前述した第1モータ・ジェネレータ8と同様に、一例として永久磁石式の交流同期電動機によって構成され、詳細は図示しないが、インバータを介して蓄電装置に接続されている。そして、この第2モータ・ジェネレータ18は、前述したカウンタドリブンギア10に噛み合っている駆動ギア19に連結されており、したがって第2モータ・ジェネレータ18の出力トルクを駆動ギア19およびカウンタドリブンギア10ならびに出力ギア12を介してデファレンシャルギア14に伝達し、ここから左右の駆動輪17にトルクを伝達するようになっている。この第2モータ・ジェネレータ18のロータ軸は中空軸であって、その内部に油路が形成されており、この油路に潤滑油を供給することにより第2モータ・ジェネレータ18を潤滑あるいは冷却するようになっている。なお、出力ギア12に対してデフリングギア13が大径であるから、第2モータ・ジェネレータ18からデファレンシャルギア14に到る歯車機構は減速機構を構成している。
図1に、この発明に係る歯車機構の潤滑装置を適用した車両のハイブリッドトランスアクスルの側面図を示してある。ここに示す例は、ハイブリッドトランスアクスル20のケーシング21の内部に収容される動力伝達軸を、そのケーシング21の内部に収容される動力伝達軸の軸線方向から見た状態を示してある。図1での上方がハイブリッドトランスアクスル20を車両に取り付けた場合における車両の高さ方向で上方であり、図1での下方がハイブリッドトランスアクスル20を車両に取り付けた場合における車両の高さ方向で下方である。このケーシング21の内部において、出力軸2とこれに同軸線上に設けられている第1モータ・ジェネレータ8との回転軸線に平行かつ車両の高さ方向でこれらの回転軸線よりも上方にカウンタ軸11が配置されている。
カウンタ軸11には、前述したカウンタドリブンギア10が設けられており、これらの回転軸線に平行かつ車両の高さ方向でこれらの回転軸線よりも下方にデファレンシャルギア14が配置されている。すなわち、デファレンシャルギア14のデファレンシャル軸は、カウンタ軸11と平行に配置されている。さらにまた、カウンタ軸11の回転軸線に平行かつ車両の高さ方向でカウンタ軸11の回転軸線よりも上方に第2モータ・ジェネレータ18が配置されている。すなわち、カウンタ軸11の回転軸線に平行かつ車両の高さ方向で上方に、第2モータ・ジェネレータ18のロータ軸が配置されている。
ケーシング21の底部には、潤滑油を貯留するオイル溜まり部22が設けられており、このオイル溜まり部22に貯留されている潤滑油にデフリングギア13の少なくとも一部が浸漬されるようになっている。また、ケーシング21の上部であって、デフリングギア13の上方にデフリングギア13の回転によって掻き上げられた潤滑油が供給されるキャッチタンク23が設けられている。キャッチタンク23には、デフリングギア13の回転により掻き上げた潤滑油をその内部に受け入れる流入口24が形成されている。また、詳細は図示しないが、例えばキャッチタンク23の底部あるいは側面には、その内部に受け入れた潤滑油をキャッチタンク23から予め定められた必要箇所に供給するための供給口が形成されており、その供給口から予め定められた必要箇所に潤滑油を供給するようになっている。
さらに、図1において、第2モータ・ジェネレータ18もしくは駆動ギア19の半径方向外側であって、これらの回転軸線よりも車両の高さ方向で下方の一部に、円弧状の受け部25が設けられている。駆動ギア19は、その一例としてはすば歯車(ヘリカルギアと呼ばれることがある。)によって構成されており、したがって、この駆動ギア19がこの発明におけるはすば歯車に相当する。受け部25は、はすば歯車によって構成されている駆動ギア19の歯のいわゆる捩れ角によってその軸線方向に、すなわちスラスト方向に押し出されて飛散した潤滑油を受け止めて、この受け止めた潤滑油の有するはすば歯車の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向にその潤滑油を導くようになっている。
要は、受け部25は、駆動ギア19の回転にともなって、その歯の捩れ角によってその軸線方向に押し出されて飛散した潤滑油を受け止めて、その受け止めた潤滑油が有する駆動ギア19の軸線方向の運動成分による流動を継続させる方向に導くように構成されていればよい。なお、各回転部材の回転方向を矢印Aで示してあり、潤滑油の流動あるいは飛散の方向を矢印Bで示してある。
図2に、図1におけるII−II線に沿う断面図を示してある。第2モータ・ジェネレータ18のロータ軸26は、軸受27,28によってケーシング21に回転自在に取り付けられている。このロータ軸26は、その内部が中空の円筒形状に形成されており、その内部に油路29が形成されている。詳細は図示しないが、この油路29に供給された潤滑油がロータ軸26に形成された潤滑油の供給孔(図示せず)を通って、例えば潤滑油の供給圧やロータ軸26の回転にともなう遠心油圧によって第2モータ・ジェネレータ18の内部に、すなわちロータ30やステータ31に供給されるようになっている。
このロータ軸26は、これと同軸のギアシャフト32に動力伝達可能に連結されており、このギアシャフト32に一体化して前述した駆動ギア19が設けられている。このギアシャフト32は、ロータ軸26と同様に、その内部が中空の円柱形状に形成されており、その内部に油路33が形成されている。この油路33と前述したロータ軸26の油路29とは連通されている。また、ギアシャフト32は、軸受34,35によってケーシング21に回転自在に取り付けられている。
また、図2に示す例では、駆動ギア19のスラスト方向に設けられた軸受35の取り付け部36に、言い換えれば、取り付け部36における軸受35側に、すなわち軸受35における車両の高さ方向で下側の取り付け部36に切り欠き部37が設けられている。この切り欠き部37は、取り付け部36の少なくとも一部を切り欠いて、取り付け部36における駆動ギア19側と前述した油路33とを連通するようになっている。そして、駆動ギア19の半径方向外側であって、駆動ギア19よりも下方の少なくとも一部に前述した円弧状の受け部25が設けられている。図2において、この受け部25は、その一方の端部が取り付け部36に接続されている。すなわち、受け部25は、駆動ギア19の回転によってその歯からスラスト方向に押し出されて飛散した潤滑油を受け止めて、この受け止めた潤滑油の有するスラスト方向に向けた運動成分による流動を継続させて、前述した切り欠き部37に導くようになっている。
したがって、図1および図2に示すように構成した歯車機構の潤滑装置においては、デフリングギア13が掻き上げた潤滑油が回転する駆動ギア19に降りかかると、駆動ギア19の歯のいわゆる捩れ角によってその軸線方向に押し出されて飛散した潤滑油が受け部25で受け止められる。そして、この受け止められた潤滑油は、その受け止められた潤滑油の有する駆動ギア19の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に受け部25によって導かれる。より具体的に説明すると、駆動ギア19から飛散した潤滑油は、受け部25によって受け止められ、この受け部25が受け止めた潤滑油は、図2において駆動ギア19側からその右側に配置されている軸受35側に導かれる。言い換えれば、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19のいわゆるポンプ作用によって軸受35側に供給される。そして、その受け部25によって受け止められて軸受35側に導かれた潤滑油は、切り欠き部37に供給される。この切り欠き部37は油路33に連通しているので、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19のいわゆるポンプ作用によって受け部25および切り欠き部37を流動して油路33に供給される。
したがって図1および図2に示す構成では、駆動ギア19のスラスト方向に飛散した潤滑油の少なくとも一部を、受け部25によって受け止めるとともにそのスラスト方向の運動を継続させるように切り欠き部37に導くことにより、その潤滑油を切り欠き部37から油路29,33に回収もしくは供給できる。そしてこれにより、油路29,33における油量の不足を防止もしくは抑制できる。また、はすば歯車によって構成された駆動ギア19のいわゆるポンプ作用によって潤滑油を油路29,33に供給するので、例えば掻き上げた潤滑油をいわゆるキャッチタンク23に供給し、そのキャッチタンク23から水頭圧によって潤滑油を油路29,33に供給する場合に比較して、潤滑油の供給圧力を増大させることができる。
ところで、駆動ギア19から飛散した潤滑油を受け部25が受け止めると、この受け部25はその受け止めた潤滑油が有するスラスト方向の流動を継続させる方向に導くので、そのスラスト方向に設けられている軸受35に供給される油量が増大する。言い換えると、駆動ギア19が疑似ポンプとして作用し、軸受35に供給される油量が増大して、これが軸受35における撹拌損失の増大の原因になる虞がある。また、軸受35に供給された潤滑油の一部は、軸受35の遠心力によりその流動が阻害される虞がある。すなわち、潤滑油の流動が阻害されることにより、切り欠き部37を通って油路29,33に供給される油量が減少する虞がある。したがって、この発明に係る歯車機構の潤滑装置は、受け部25から軸受35に供給される油量と前述した切り欠き部37を流動して油路29,33に供給される油量とを分けることにより、軸受35に供給される油量を調整するように構成することができる。
図3に、図2に示す構成を改良した例を模式的に示してある。ここに示す例は、駆動ギア19のスラスト方向に設けられた軸受36の軸線方向における両側面に、複数の油孔38が形成されたリング形状の薄板39,40が設けられている。そしてこのリング形状の薄板39,40によって、受け部25から軸受35に供給される油量を調整するように構成した例である。また、軸受35にリング形状の薄板39,40を設けることにより、切り欠き部37を通って油路29,33に供給される潤滑油の流動が軸受35の遠心力により阻害されないように構成した例である。言い換えれば、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送される潤滑油を軸受35と油路29,33とにいわゆる仕分けするように構成した例である。したがって、このリング形状の薄板39,40がこの発明おける油量調整部に相当する。
具体的に説明すると、図4に、この発明における油量調整部を模式的に示してある。前述したように、油量調整部39はリング形状に形成されており、その内周縁41と外周縁42との間の側面43が、軸受35の側面に対向するようになっている。すなわち、図4に示す構成では、油量調整部39と軸受35とは同心円状に構成されており、内周縁41の半径方向で内側に、ギアシャフト32が貫通するようになっている。そして、その内周縁41と外周縁42との間の側面43に少なくとも複数の油孔38が形成されており、これらの油孔38から軸受35に潤滑あるいは冷却のための潤滑油が供給されるようになっている。したがってこれらの油孔38の径あるいは数は、前述したように、軸受35を潤滑および冷却するとともに、潤滑油がある程度過剰に供給されることによる撹拌損失の増大を防止もしくは抑制できる径あるいは数であり、これは、使用する軸受に応じて予め実験などにより求めておくことができる。また、軸受35に供給されなかった潤滑油は、側面43を流動し、切り欠き部37を通って油路29,33に供給されるようになっている。
したがって、図3および図4に示すよう構成された歯車機構の潤滑装置においては、受け部25によって導かれて軸受35に供給される潤滑油は、リング形状の油量調整部39,40によって軸受35に供給される油量と切り欠き部37を通って油路29,33に供給される油量とが分けられる。その結果、軸受35には、その潤滑および冷却に必要とする油量だけ供給され、他の潤滑油は切り欠き部37を流動して油路29,33に供給される。したがって、軸受35にある程度過剰に潤滑油が供給されて軸受35の撹拌損失が増大することを防止もしくは抑制できる。言い換えれば、軸受35に油量調整部39,40を設けることにより、軸受35の潤滑および冷却と軸受35の撹拌損失の低減とを両立させることができる。また、軸受35の側面が油量調整部39,40の側面43によって覆われているので、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送された潤滑油の流動が軸受35によって阻害されることを防止もしくは抑制できる。すなわち、潤滑油の流動が、軸受35の回転や遠心力の影響を受けることを防止もしくは抑制できる。したがって、軸受35に油量調整部39,40を設けることにより、軸受35に供給する油量をある程度最適化するとともに、油路29,33などの予め定められた必要箇所における油量の不足を防止もしくは抑制できる。
図5に、図2に示す構成を更に改良した例を模式的に示してある。ここに示す例は、受け部25によって受け止められて、その受け止められた潤滑油が有する駆動ギア19の軸線方向に向けた運動成分による流動をキャッチタンク23に導くように構成した例である。具体的には、図5に示す例では、切り欠き部37とキャッチタンク23とキャッチタンク用油路44によって連通することにより、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送された潤滑油をキャッチタンク23に供給できるように構成されている。このキャッチタンク用油路44は、ケーシング21に形成してもよいし、また、例えばパイプなどにより構成してもよい。要は、キャッチタンク用油路44は、受け部25で受け止めた潤滑油が、すなわち駆動ギア19によって圧送された潤滑油がキャッチタンク23に供給されるように構成されていればよい。
したがって、図5に示すよう構成した歯車機構の潤滑装置においては、デフリングギア13が掻き上げた潤滑油が駆動ギア19に降りかかると、その潤滑油は駆動ギア19の歯の捩れ角によってその軸線方向に押し出されて飛散させられる。そして、その飛散した潤滑油の少なくとも一部が受け部25に受け止められ、また受け部25によってガイドされて切り欠き部37に供給される。この切り欠き部37とキャッチタンク23とは、前述したキャッチタンク用油路44によって連通されているから、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19のいわゆるポンプ作用によって受け部25および切り欠き部37ならびにキャッチタンク用油路44を流動してキャッチタンク23に供給される。なお、この切り欠き部37ならびにキャッチタンク用油路44がこの発明における管路に相当する。
したがって図5に示す構成では、駆動ギア19に降りかかった潤滑油の少なくとも一部を回収してキャッチタンク23に供給できる。すなわち、デフリングギア13からキャッチタンク23に掻き上げられる油量がある程度少ない場合に、キャッチタンク23における油量を増大させることができる。その結果、キャッチタンク23から例えば第2モータ・ジェネレータ18などの予め定められた必要箇所に供給する油量を増大させることができる。したがって、キャッチタンク23から予め定められた必要箇所に潤滑あるいは冷却のために供給する油量の不足を防止もしくは抑制できる。
図6に、図2に示す構成を更に改良した例を模式的に示してある。ここに示す例は、駆動ギア19から飛散した潤滑油を受け部25によって受け止め、その受け止めた潤滑油を油路29,33およびキャッチタンク23に供給するように構成するとともに、軸受35に前述した油量調整部39,40を設けた例である。したがって、図6に示すように構成された歯車機構の潤滑装置においては、デフリングギア13が掻き上げた潤滑油が駆動ギア19に降りかかると、その潤滑油は、駆動ギア19の歯の捩れ角によってその軸線方向に押し出されて飛散させられる。そして、その飛散した潤滑油の少なくとも一部は受け部25に受け止められ、また受け部25によってガイドされて、駆動ギア19のスラスト方向に設けられている軸受35や切り欠き部37に供給される。図6において、軸受35の両側面には油量調整部39,40が設けられているため、前述したように軸受35に供給される潤滑油と切り欠き部37を流動する潤滑油とがいわゆる仕分けされる。この切り欠き部37は、油路29,33およびキャッチタンク用油路44を介してキャッチタンク23に連通されているから、切り欠き部37を流動する潤滑油は油路29,33あるいはキャッチタンク用油路44を介してキャッチタンク23に供給される。そして、キャッチタンク23に供給された潤滑油は、キャッチタンク23から例えば第2モータ・ジェネレータ18などの予め定められた必要箇所に供給される。
したがって図6に示す構成では、駆動ギア19に降りかかった潤滑油の少なくとも一部を受け部25によって回収できるとともに、その回収した潤滑油を油量調整部39,40によって軸受35に供給する油量と切り欠き部37を流動させる油量とに分けることができる。したがって、ある程度過剰な油量が軸受35に供給されることにより軸受35における撹拌損失が増大することを防止もしくは抑制できる。またこれにより、油路29,33およびキャッチタンク23における油量の不足を防止もしくは抑制できる。したがって、油路29,33からロータ30やステータ31になどの予め定められた必要箇所に供給される油量の不足を防止もしくは抑制できる。また、キャッチタンク23から例えば第2モータ・ジェネレータ18などの予め定められた必要箇所に供給される油量の不足を防止もしくは抑制できる。
図7に、図1に示す受け部の形状を改良した例を模式的に示してある。図7において、受け部45は、駆動ギア19の半径方向外側であって駆動ギア19よりも下方の少なくとも一部に直線状に設けられている。また、図8に、図1に示すリブの形状を更に改良した例を模式的に示してある。図8において、受け部46は、複数のボルトやピンなどの円柱形状の部材が互いに平行かつ駆動ギア19やギアシャフト32などの軸線方向に対して平行に設けられるとともに、所定の間隔を隔てて配置されて構成されている。
したがって、図7および図8に示すよう構成した歯車機構の潤滑装置においては、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19の歯の捩れ角によってその軸線方向に押し出されて飛散させられる。そして、その飛散した潤滑油の少なくとも一部は直線状の受け部45あるいは複数の部材によって構成された受け部46によって受け止められる。その潤滑油は、受け部45あるいは受け部46によってその潤滑油が有する駆動ギア19の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に導かれる。言い換えれば、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送され、その圧送された潤滑油が予め定められた必要箇所に供給される。
したがって、図7および図8に示す構成では、駆動ギア19の捩れ角を有する歯によってその軸線方向に飛散した潤滑油の少なくとも一部を、受け部45,あるいは受け部46によって受け止めるとともにその軸線方向の運動を継続させることができる。言い換えれば、駆動ギア19に降りかかった潤滑油は、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送されるから、その圧送された潤滑油を予め定められた必要箇所に供給できる。したがって、予め定められた必要箇所における油量の不足を防止もしくは抑制できる。また、はすば歯車によって構成された駆動ギア19のいわゆるポンプ作用によって潤滑油を予め定められた必要箇所に供給するので、例えば掻き上げた潤滑油をいわゆるキャッチタンク23に供給し、そのキャッチタンク23から水頭圧によって予め定められた必要箇所に潤滑油を供給する場合に比較して、潤滑油の供給圧力を増大させることができる。
図9に、図2に示す構成を更に改良した例を模式的に示してある。ここに示す例は、前述した受け部25とギアシャフト32の内部に形成される油路33とを円筒形状の例えばパイプ47によって連通するように構成した例である。このパイプ47は、駆動ギア19から飛散した潤滑油を受け止める受け部25に一方の端部が接続されており、他方の端部が油路33に接続されている。したがって、図9に示すよう構成した歯車機構の潤滑装置においては、駆動ギア19からその軸線方向に飛散し、受け部25によって受け止められた潤滑油は、パイプ47の内部を流動して油路29,33に供給される。言い換えれば、駆動ギア19のポンプ作用によって圧送された潤滑油は、パイプ47の内部を流動して油路29,33に供給される。
したがって、図9に示す構成では、前述したように駆動ギア19からその軸線方向に飛散した潤滑油の少なくとも一部を、受け部25によって受け止めるとともにその軸線方向の運動を継続させることによりパイプ47の内部を流動させて油路29,33などの予め定められた必要箇所に供給できる。したがって、このような構成においても、予め定められた必要箇所における油量の不足を防止もしくは抑制できる。また、図9に示す構成では、受け部25からパイプ47を介して予め定められた必要箇所に供給するように構成されている。したがって、軸受35にある程度過剰に潤滑油が供給されることを防止もしくは抑制できる。また、受け部25からパイプ47を介して必要箇所に供給するから、軸受35の遠心力により潤滑油の流動が阻害されることを防止もしくは抑制できる。さらにまた、詳細は図示しないが、パイプ47とキャッチタンク23と連通すれば、前述したように潤滑油をキャッチタンク23に供給できる。すなわち、キャッチタンク23における油量の不足を防止もしくは抑制できる。
したがって、このような構成の歯車機構の潤滑装置においては、はすば歯車の外周側に受け部を配置し、この受け部によってはすば歯車の軸線方向に飛散した潤滑油を受け止めるとともに、その潤滑油の軸線方向に向けた流動を継続させる方向に導くことにより、受け部から予め定められた必要箇所に潤滑油を供給できる。言い換えれば、このような受け部を設けることにより、はすば歯車のポンプ作用によって圧送された潤滑油を予め定められた必要箇所に供給できる。
13…デフリングギア、 19…駆動ギア、 22…オイル溜まり部、 25…リブ、 26…ロータ軸、 29…ロータ軸内部の油路、 32…ギアシャフト、 33…ギアシャフト内部の油路、 34,35…軸受、 36…取り付け部、 37…切り欠き部、 39,40…油量調整部、 44…キャッチタンク用油路。
Claims (2)
- 潤滑油が供給されて回転するとともに前記潤滑油を外周方向に飛散させるはすば歯車を有する歯車機構の潤滑装置において、
前記はすば歯車から飛散した潤滑油の一部を受け止めるとともに、前記潤滑油が有する前記はすば歯車の軸線方向に向けた運動成分による流動を継続させる方向に前記潤滑油を導く受け部が、前記はすば歯車の外周側に配置され、さらに
その受け部から前記潤滑油を予め定められた必要箇所に向けて供給する管路が設けられていることを特徴とする歯車機構の潤滑装置。 - 前記受け部で受け止めた前記潤滑油が流動する方向における前記はすば歯車を有するシャフトを支持する軸受に、前記受け部から前記軸受に供給される前記潤滑油と前記管路を流動して前記予め定められた必要箇所に向けて供給される前記潤滑油とを分けることにより、前記受け部から前記軸受に供給される前記潤滑油の量を調整する油量調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯車機構の潤滑装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010083114A JP2011214658A (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 歯車機構の潤滑装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010083114A JP2011214658A (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 歯車機構の潤滑装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011214658A true JP2011214658A (ja) | 2011-10-27 |
Family
ID=44944605
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010083114A Pending JP2011214658A (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 歯車機構の潤滑装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011214658A (ja) |
-
2010
- 2010-03-31 JP JP2010083114A patent/JP2011214658A/ja active Pending
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