JP2011211244A - Iii族窒化物半導体レーザ素子、及びiii族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】六方晶系III族窒化物の半極性面上において、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子と、このIII族窒化物半導体レーザ素子を安定して作製する方法とを提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体レーザ素子11のアノード側にある第1の面13aの四つの角のそれぞれに、切欠部113a等の切欠部が形成されている。切欠部113a等は、素子11を分離するために設けられたスクライブ溝の一部である。スクライブ溝はレーザスクライバで形成され、スクライブ溝の形状はレーザスクライバを制御することによって調整される。例えば、切欠部113a等の深さとIII族窒化物半導体レーザ素子11の厚みとの比は0.05以上0.4以下、切欠部113aの端部における側壁面の傾きは45度以上85度以下、切欠部113bの端部における側壁面の傾きは10度以上30度以下。
【選択図】図1
【解決手段】III族窒化物半導体レーザ素子11のアノード側にある第1の面13aの四つの角のそれぞれに、切欠部113a等の切欠部が形成されている。切欠部113a等は、素子11を分離するために設けられたスクライブ溝の一部である。スクライブ溝はレーザスクライバで形成され、スクライブ溝の形状はレーザスクライバを制御することによって調整される。例えば、切欠部113a等の深さとIII族窒化物半導体レーザ素子11の厚みとの比は0.05以上0.4以下、切欠部113aの端部における側壁面の傾きは45度以上85度以下、切欠部113bの端部における側壁面の傾きは10度以上30度以下。
【選択図】図1
Description
本発明は、III族窒化物半導体レーザ素子、及びIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法に関する。
特許文献1には、半導体基板上に設けられた半導体素子構造に、第1の補助溝を形成する工程と、半導体素子構造に第2の補助溝を形成する工程と、第1の補助溝及び第2の補助溝に沿う分割方向に、半導体基板及び前記半導体素子構造を分割する工程と、を備えた半導体素子の製造方法が開示されている。この製造方法では、分割方向において、第2の補助溝が分離して複数設けられ、複数の第2の補助溝のうち、少なくとも一組の隣接する第2の補助溝間に、少なくとも二つの第1の補助溝が互いに離間されて設けられる。そして、上記分割する工程において、二つの第1の補助溝の離間領域を分割する。非特許文献1には、低い積層欠陥密度であって半極性面(10−11)を有する六方晶系GaN基板とこの半極性面上に設けられたレーザ構造体とを有する半導体レーザ素子が開示されている。導波路は、六方晶系GaN基板のc軸のオフ方向に延在し、半導体レーザのミラーは反応性イオンエッチング(RIE)によって形成される。
Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 46, (2007) L444
c軸がm軸の方向に傾斜した半極性面の支持基体を用いるIII族窒化物半導体レーザ素子では、c軸及びm軸によって規定される面に沿ってレーザ導波路を延在させるとき、しきい値電流を下げることができると考えている。しかしながら、このレーザ導波路の向きでは、共振器ミラーとなる適当な結晶面が存在しないので、劈開を利用した先行技術では良好な共振器ミラーを形成することが困難となる。共振器ミラーの作製に反応性イオンエッチング(RIE)を用いる場合があるが、RIE法で形成された共振器ミラーは、レーザ導波路に対する垂直性又はドライエッチング面の平坦性の点で、改善が望まれている。発明者が知る限りにおいて、これまで、上記の半極性面上に形成された同一のIII族窒化物半導体レーザ素子において、c軸の傾斜方向(オフ方向)に延在するレーザ導波路とドライエッチングを用いずに形成された共振器ミラー用端面との両方が達成されていない。本発明は、このような事情を鑑みて為されたものである。本発明の目的は、六方晶系III族窒化物のc軸からm軸の方向に傾斜した支持基体の半極性主面上において、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子と、このIII族窒化物半導体レーザ素子を安定して作製する方法とを提供することである。
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体レーザ素子は、六方晶系III族窒化物半導体からなり半極性主面を有する支持基体、及び前記支持基体の前記半極性主面上に設けられた半導体領域を含むレーザ構造体と、前記レーザ構造体の前記半導体領域上に設けられた電極とを備える。前記半導体領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に前記法線軸に対して有限な角度ALPHAで傾斜しており、前記レーザ構造体は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び前記法線軸によって規定されるm−n面に交差する第1及び第2の割断面と、前記第1又は第2の割断面と交差する方向に延びている第1の面と、前記第1の面の反対側にあり前記第1の面に沿って延びている第2の面と、前記第1の面と前記第1の割断面とが交差している第1のエッジの両端にそれぞれ設けられた第1及び第2の切欠部とを含み、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器は前記第1及び第2の割断面を含み、前記第1の割断面は、前記第1のエッジから前記第2の面のエッジまで延在し、前記第1の切欠部の側壁面に含まれており前記第1のエッジに接続している第1の部分は、前記第1の面に対し、45度以上85度以下の範囲内にある第1の傾斜角度の勾配で前記第2の面側に傾斜しており、前記第2の切欠部の側壁面に含まれ前記第1のエッジに接続する第2の部分は、前記第1の面に対し、10度以上30度以下の範囲内にある第2の傾斜角度の勾配で前記第2の面側に傾斜しており、前記第1の割断面は、前記第1のエッジと交差する方向に延びている第2のエッジを有し、前記第2のエッジは、前記第1の面側にある端部を有し、前記第1の切欠部の底壁面から、前記底壁面上において前記第1の面に沿って前記第1の面から延びる仮想面までの距離を、前記第1の面から前記第2の面までの距離で割った商は、0.05以上0.4以下の範囲内にあり、前記第1のエッジの端部から、前記第1のエッジと交差する方向に延びている前記第1の割断面の中心線までの距離は、30μm以上100μm以下の範囲内にある、ことを特徴とする。
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、レーザ共振器となる第1及び第2の割断面が、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸によって規定されるm−n面に交差するので、m−n面と半極性面との交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲内にあることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲内にあることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲では、押圧により形成される端面が、基板主面に垂直に近い面が得られる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは400μm以下であることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは、50μm以上100μm以下の範囲内にあることができる。厚さ50μm以上であれば、ハンドリングが容易になり、生産歩留まりが向上する。100μm以下であれば、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした微傾斜面であることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これら典型的な半極性面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面(割断面)を提供できる。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の積層欠陥密度は1×104cm−1以下であることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、積層欠陥密度が1×104cm−1以下であるので、偶発的な事情により割断面の平坦性及び/又は垂直性が乱れる可能性が低い。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な第1及び第2の端面(割断面)を得ることができる。AlN基板又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1及び第2の割断面の少なくともいずれか一方に設けられた誘電体多層膜を更に備えることができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子においても、破断面にも端面コートを適用できる。端面コートにより反射率を調整できる。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記活性層は、360nm以上600nm以下の範囲内にある波長の光を発生するように設けられた発光領域を含むことができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子は、半極性面の利用により、LEDモードの偏光を有効に利用したIII族窒化物半導体レーザ素子を得ることができ、低しきい値電流を得ることができる。
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記活性層は、430nm以上550nm以下の範囲内の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。このIII族窒化物半導体レーザ素子は、半極性面の利用により、ピエゾ電界の低減と発光層領域の結晶品質向上によって量子効率を向上させることが可能となり、波長430nm以上550nm以下の光の発生に好適である。
本発明の別の側面は、III族窒化物半導体レーザ素子を作成する方法に係る。この方法は、六方晶系III族窒化物半導体からなり半極性主面を有する基板を準備する工程と、前記半極性主面上に形成された半導体領域と前記基板とを含むレーザ構造体、アノード電極、及びカソード電極を有する基板生産物を形成する工程と、前記六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に前記基板生産物の第1の面を部分的にスクライブすることによって、複数のスクライブ溝を前記第1の面に設ける工程と、前記基板生産物の第2の面への押圧により前記基板生産物の分離を行って、別の基板生産物及びレーザバーを形成する工程と、前記レーザバーの端面を加工した後に、前記六方晶系III族窒化物半導体のa軸に交差する方向に延びており前記複数のスクライブ溝のそれぞれを通る切断面に沿って前記加工後のレーザバーを切断して、この加工後のレーザバーから複数の前記III族窒化物半導体レーザ素子の分離を行う工程とを備える。前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、前記半導体領域は前記第1の面と前記基板との間に位置し、前記レーザバーは、前記第1の面から前記第2の面にまで延在し前記分離により形成された第1及び第2の端面を有し、前記第1及び第2の端面は当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成し、前記アノード電極及びカソード電極は、前記レーザ構造体上に形成され、前記半導体領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、前記基板の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に前記法線軸に対して有限な角度ALPHAで傾斜しており、前記第1及び第2の端面は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び前記法線軸によって規定されるm−n面に交差しており、前記スクライブは、レーザスクライバを用いて行われ、前記スクライブにより複数のスクライブ溝が前記第1の面に形成され、前記スクライブ溝の側壁面に含まれており前記スクライブ溝の一の端部において前記第1の面に接続する第1の部分は、前記第1の面に対し45度以上85度以下の範囲内にある第1の傾斜角度の勾配で傾斜し、当該側壁面に含まれており当該スクライブ溝の他の端部において前記第1の面に接続する第2の部分は、前記第1の面に対し10度以上30度以下の範囲内にある第2の傾斜角度の勾配で傾斜しており、前記スクライブ溝の前記一の端部から前記他の端部に向かう方向は、前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸を前記半極性主面に投影した方向と交差する方向であり、前記別の基板生産物及びレーザバーを形成する工程では、前記スクライブ溝の前記一の端部から前記他の端部に向かう方向に、前記レーザバーの分離が進行され、前記スクライブ溝の底壁面から、前記底壁面上において前記第1の面に沿って前記第1の面から延びる仮想面までの距離を、前記第1の面から前記第2の面までの距離で割った商は、0.05以上0.4以下の範囲内にあり、隣り合って並列する二つの前記切断面の間にある前記スクライブ溝の前記一の端部又は前記他の端部から、当該二つの切断面の間の中心面までの距離は、30μm以上100μm以下の範囲内にある、ことを特徴とする。
この方法によれば、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に基板生産物の第1の面をスクライブした後に、基板生産物の第2の面への押圧により基板生産物の分離を行って、別の基板生産物及びレーザバーを形成する。これ故に、六方晶系III族窒化物半導体のm軸と法線軸とによって規定されるm−n面に交差するように、レーザバーに第1及び第2の端面が形成される。この端面形成によれば、第1及び第2の端面に当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い共振ミラー面が提供される。また、この方法では、レーザ導波路は、六方晶系III族窒化物のc軸の傾斜の方向に延在しており、このレーザ導波路を提供できる共振器ミラー端面をドライエッチング面を用いずに形成している。また、レーザスクライバによって、スクライブ溝の形状や配置が好適に制御されるので、レーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い共振ミラー面を有する複数の同質の素子が容易に安定して(平坦性や垂直性のバラつきを低減できるように)形成可能となる。
本発明に係る方法では、前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲内にあることができる。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られない。
本発明に係る方法では、前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲内にあることができる。63度未満及び117度を越える角度では、押圧により形成される端面の一部に、m面が出現する可能性がある。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られない。
本発明に係る方法では、前記基板生産物を形成する前記工程において、前記基板は、前記基板の厚さが400μm以下になるようにスライス又は研削といった加工が施され、前記第2の面は前記加工により形成された加工面、又は前記加工面に上に形成された電極を含む面であることができるし、前記基板生産物を形成する前記工程において、前記基板は、前記基板の厚さが50μm以上100μm以下になるように研磨され、前記第2の面は前記研磨により形成された研磨面、又は前記研磨面に上に形成された電極を含む面であることができる。このような厚さの基板では、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い第1及び第2の端面を歩留まりよく形成できる。
本発明に係る方法では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。これら典型的な半極性面においても、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い第1及び第2の端面を提供できる。
本発明に係る方法では、前記基板は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。この方法によれば、これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な第1及び第2の端面を得ることができる。
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
以上説明したように、本発明によれば、六方晶系III族窒化物の半極性主面上において、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子と、このIII族窒化物半導体レーザ素子を安定して作製する方法とを提供できる
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体レーザ素子、及びIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図面である。III族窒化物半導体レーザ素子11は、利得ガイド型の構造を有するけれども、本発明の実施の形態は、利得ガイド型の構造に限定されるものではない。III族窒化物半導体レーザ素子11は、レーザ構造体13及び電極15を備える。レーザ構造体13は、支持基体17、半導体領域19及び絶縁膜31を含む。支持基体17は、六方晶系III族窒化物半導体からなり、また半極性主面17a及び裏面17bを有する。半導体領域19は、支持基体17の半極性主面17a上に設けられている。電極15は、レーザ構造体13の半導体領域19上に設けられる。半導体領域19は、第1のクラッド層21と、第2のクラッド層23と、活性層25とを含む。第1のクラッド層21は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばn型AlGaN、n型InAlGaN等からなる。第2のクラッド層23は、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型AlGaN、p型InAlGaN等からなる。活性層25は、第1のクラッド層21と第2のクラッド層23との間に設けられる。活性層25は窒化ガリウム系半導体層を含み、この窒化ガリウム系半導体層は例えば井戸層25aである。活性層25は窒化ガリウム系半導体からなる障壁層25bを含み、井戸層25a及び障壁層25bは交互に配列されている。井戸層25aは、例えばInGaN等からなり、障壁層25bは例えばGaN、InGaN等からなる。活性層25は、波長360nm以上600nm以下の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。半極性面の利用により、波長430nm以上550nm以下の光の発生に好適である。第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25は、半極性主面17aの法線軸NXに沿って配列されている。III族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ構造体13は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する第1の割断面27及び第2の割断面29を含む。
図1を参照すると、直交座標系S及び結晶座標系CRが描かれている。法線軸NXは、直交座標系SのZ軸の方向に向く。半極性主面17aは、直交座標系SのX軸及びY軸により規定される所定の平面に平行に延在する。また、図1には、代表的なc面Scが描かれている。支持基体17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に法線軸NXに対して有限な角度ALPHAで傾斜している。
絶縁膜31はレーザ構造体13の半導体領域19の表面19aを覆っており、半導体領域19は絶縁膜31と支持基体17との間に位置する。支持基体17は六方晶系III族窒化物半導体からなる。絶縁膜31は開口31aを有し、開口31aは半導体領域19の表面19aと上記のm−n面との交差線LIXの方向に延在し、例えばストライプ形状を成す。電極15は、開口31aを介して半導体領域19の表面19a(例えば第2導電型のコンタクト層33)に接触を成しており、上記の交差線LIXの方向に延在する。レーザ構造体13は、更に、導波路111を含む。導波路111は、第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25を含み、また上記の交差線LIXの方向に電極15に沿って延在する。導波路111は、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を半極性主面17aに投影した方向(六方晶系III族窒化物半導体のa軸と交差する方向)に沿って第1の割断面27から第2の割断面29まで延在する。
III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1の割断面27及び第2の割断面29は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器は第1及び第2の割断面27、29を含み、第1の割断面27及び第2の割断面29の一方から他方に、レーザ導波路が延在している。レーザ構造体13は、第1の割断面27又は第2の割断面29と交差する方向に延びている第1の面13aと、第1の面13aの反対側にあり第1の面13aに沿って延びている第2の面13bとを有する。第1の面13aは絶縁膜31の表面であり、第2の面13bは、支持基体17に含まれ電極41に接合している面である。第1及び第2の割断面27、29は、第1の面13aのエッジ13cから第2の面13bのエッジ13dまで延在する。第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、レーザ共振器を構成する第1及び第2の割断面27、29がm−n面に交差する。これ故に、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、III族窒化物半導体レーザ素子11は、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有することになる。
III族窒化物半導体レーザ素子11は、n側光ガイド層35及びp側光ガイド層37を含む。n側光ガイド層35は、第1の部分35a及び第2の部分35bを含み、n側光ガイド層35は例えばGaN、InGaN等からなる。p側光ガイド層37は、第1の部分37a及び第2の部分37bを含み、p側光ガイド層37は例えばGaN、InGaN等からなる。キャリアブロック層39は、例えば第1の部分37aと第2の部分37bとの間に設けられる。支持基体17の裏面17bには別の電極41が設けられ、電極41は例えば支持基体17の裏面17bを覆っている。
図2は、III族窒化物半導体レーザ素子における活性層におけるバンド構造を示す図面である。図3は、III族窒化物半導体レーザ素子11の活性層25における発光の偏光を示す図面である。図4は、c軸及びm軸によって規定される断面を模式的に示す図面である。図2(a)を参照すると、バンド構造BANDのΓ点近傍では、伝導帯と価電子帯との間の可能な遷移は、3つある。Aバンド及びBバンドは比較的小さいエネルギ差である。伝導帯とAバンドとの遷移Eaによる発光はa軸方向に偏光しており、伝導帯とBバンドとの遷移Ebによる発光はc軸を主面に投影した方向に偏光している。レーザ発振に関して、遷移Eaのしきい値は遷移Ebのしきい値よりも小さい。
図2(b)を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11におけるLEDモードにおける光のスペクトルが示されている。LEDモードにおける光は、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向の偏光成分I2と、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を主面に投影した方向の偏光成分I1を含み、偏光成分I1は偏光成分I2よりも大きい。偏光度ρは(I1−I2)/(I1+I2)によって規定される。このIII族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を用いて、LEDモードにおいて大きな発光強度のモードの光をレーザ発振させることができる。
図3に示されるように、第1及び第2の割断面27、29の少なくとも一方、又はそれぞれに設けられた誘電体多層膜43a、43bを更に備えることができる。割断面27、29にも端面コートを適用できる。端面コートにより反射率を調整できる。
図3(b)に示されるように、活性層25からのレーザ光Lは六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に偏光している。このIII族窒化物半導体レーザ素子11において、低しきい値電流を実現できるバンド遷移は偏光性を有する。レーザ共振器のための第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。しかしながら、第1及び第2の割断面27、29は共振器のための,ミラーとしての平坦性、垂直性を有する。これ故に、第1及び第2の割断面27、29とこれらの割断面27、29間に延在するレーザ導波路とを用いて、図3(b)に示されるように、c軸を主面に投影した方向に偏光する遷移Ebの発光よりも強い遷移Eaの発光を利用して低しきい値のレーザ発振が可能になる。
III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1及び第2の割断面27、29の各々には、支持基体17の端面17c及び半導体領域19の端面19cが現れており、端面17c及び端面19cは誘電体多層膜43aで覆われている。支持基体17の端面17c及び活性層25における端面25cの法線ベクトルNAと活性層25のm軸ベクトルMAとの成す角度BETAは、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において規定される成分(BETA)1と、第1平面S1(理解を容易にするために図示しないが「S1」として参照する)及び法線軸NXに直交する第2平面S2(理解を容易にするために図示しないが「S2」として参照する)において規定される成分(BETA)2とによって規定される。成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。この角度範囲は、図4において、代表的なm面SMと参照面FAとの成す角度として示されている。代表的なm面SMが、理解を容易にするために、図4において、レーザ構造体の内側から外側にわたって描かれている。参照面FAは、活性層25の端面25cに沿って延在する。このIII族窒化物半導体レーザ素子11は、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAに関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。また、成分(BETA)2は第2平面S2において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。ここで、BETA2=(BETA)1 2+(BETA)2 2である。このとき、III族窒化物半導体レーザ素子11の端面27、29は、半極性面17aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度に関して上記の垂直性を満たす。
再び図1を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは400μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは50μm以上100μm以下であることが更に好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。また、ハンドリングが容易になり、生産歩留まりを向上させることができる。
III族窒化物半導体レーザ素子11では、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは45度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また135度以下であることが好ましい。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
III族窒化物半導体レーザ素子11では、更に好ましくは、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは63度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また117度以下であることが好ましい。63度未満及び117度を越える角度では、押圧により形成される端面の一部に、m面が出現する可能性がある。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
半極性主面17aは、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。更に、これらの面から−4度以上+4度以下の範囲で微傾斜した面も前記主面として好適である。これら典型的な半極性面17aにおいて、当該III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の割断面27、29を提供できる。また、これらの典型的な面方位にわたる角度の範囲において、十分な平坦性及び垂直性を示す端面が得られる。
III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の積層欠陥密度は1×104cm−1以下であることができる。積層欠陥密度が1×104cm−1以下であるので、偶発的な事情により割断面の平坦性及び/又は垂直性が乱れる可能性が低い。また、支持基体17は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な第1及び第2の割断面27、29を得ることができる。AlN又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
レーザ構造体13は、更に、切欠部113a、切欠部113b、切欠部113c及び切欠部113dを有する。切欠部113aは、第1の面13aと第1の割断面27とが交差しているエッジ13cの一端に設けられており、切欠部113bは、エッジ13cの他端に設けられている。なお、切欠部113cは切欠部113aと同様の構成をしており、切欠部113dは切欠部113bと同様の構成をしているので、以下、切欠部113c及び切欠部113dの説明は、説明簡略化のために省略されている。切欠部113a及び切欠部113b等の切欠部は、III族窒化物半導体レーザ素子11の製造過程においてレーザスクライバ10aによって設けられたスクライブ溝の一部である。切欠部113a〜切欠部113dは、このように切欠部ということができるが、レーザ構造体13において第1の面13aの四隅(又はエッジ13c等のエッジの両端)に設けられた窪み部ということもでき、また、レーザ構造体13において第1の面13aの四隅(又はエッジ13c等のエッジの両端)に設けられた凹部ということもできる。図17には切欠部113aの構成が示されており、図18には切欠部113bの構成が示されている。
まず、図17を参照して切欠部113aについて説明する。切欠部113aの側壁面に含まれておりエッジ13cに接続する部分115aは、第1の面13aに対し、45度以上85度以下の範囲内にある傾斜角度BETA1の勾配で、第2の面13b側に傾斜している。傾斜角BETA1は、より具体的には、切欠部113aの側壁面の部分115aと第1の割断面27とが交差してなるエッジの接線DF1(エッジ13cとの交点における接線)と、エッジ13cとの間の角度である。第1の割断面27は、エッジ13eを有しており、エッジ13eは、エッジ13cと交差する方向に延びている。エッジ13eは、第1の面13a側にある端部117aを有する。切欠部113aの底壁面から、この底壁面上において第1の面13aに沿って第1の面13aから延びる仮想面123aまでの距離(LENGTH1)を、第1の面13aから第2の面13bまでの距離(THICKNESS1)で割った商(LENGTH1/THICKNESS1)は、0.05以上0.4以下の範囲内にある。なお、仮想面123aから切欠部113aの底壁面までの距離のうち、例えば最も大きい値を距離LENGTH1に用いることができる。また、第1の面13aから第2の面13bまでの距離のうち、例えば最も大きい値を距離THICKNESS1に用いることができる。距離LENGTH1に替えて、エッジ13eの端部117aから仮想面123aまでエッジ13eに沿って延びる仮想線分121aの長さを用いることができる。切欠部113aの底壁面と仮想面123aとを平行にできる。
次に、図18を参照して切欠部113bについて説明する。切欠部113bの側壁面に含まれておりエッジ13cに接続する部分115bは、第1の面13aに対し、10度以上30度以下の範囲内にある傾斜角度BETA2の勾配で、第2の面13b側に傾斜している。傾斜角BETA2は、より具体的には、切欠部113bの側壁面の部分115bと第1の割断面27とが交差してなるエッジの接線DF2(エッジ13cとの交点における接線)と、エッジ13cとの間の角度である。傾斜角度BETA1は傾斜角度BETA2よりも大きい。第1の割断面27は、エッジ13fを有しており、エッジ13fは、エッジ13cと交差する方向に延びている。エッジ13fは、第1の面13a側にある端部117bを有する。切欠部113bの底壁面から、この底壁面上において第1の面13aに沿って第1の面13aから延びる仮想面123bまでの距離(LENGTH2)を、第1の面13aから第2の面13bまでの距離(THICKNESS1)で割った商(LENGTH2/THICKNESS1)は、0.05以上0.4以下の範囲内にある。なお、仮想面123bから切欠部113bの底壁面までの距離のうち、例えば最も大きい値を距離LENGTH2に用いることができる。また、第1の面13aから第2の面13bまでの距離のうち、例えば最も大きい値を距離THICKNESS1に用いることができる。距離LENGTH2に替えて、エッジ13fの端部117bから仮想面123bまでエッジ13fに沿って延びる仮想線分121bの長さを用いることができる。切欠部113bの底壁面と仮想面123bとを平行にできる。
また、端部119aから第1の割断面27の中心線CE1(図1を参照)までの距離は30μm以上100μm以下の範囲内にあり、端部119bから第1の割断面27の中心線CE1までの距離も30μm以上100μm以下の範囲内にある。中心線CE1は、第1の割断面27においてエッジ13eとエッジ13fとの間にあってエッジ13cと交差する方向に延びている。中心線CE1は、エッジ13e又はエッジ13fと平行に延びる。中心線CE1からエッジ13eまでの距離と中心線CE1からエッジ13fまでの距離との差は微小であり、両距離は略同一ということができる。
図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。図6(a)を参照すると、基板51が示されている。工程S101では、III族窒化物半導体レーザ素子の作製のための基板51を準備する。基板51の六方晶系III族窒化物半導体のc軸(ベクトルVC)は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸方向(ベクトルVM)に法線軸NXに対して有限な角度ALPHAで傾斜している。これ故に、基板51は、六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面51aを有する。
工程S102では、基板生産物SPを形成する。図6(a)では、基板生産物SPはほぼ円板形の部材として描かれているけれども、基板生産物SPの形状はこれに限定されるものではない。基板生産物SPを得るために、まず、工程S103では、レーザ構造体55を形成する。レーザ構造体55は、半導体領域53及び絶縁膜54とを含んでおり、工程S103では、半導体領域53は半極性主面51a上に形成される。半導体領域53を形成するために、半極性主面51a上に、第1導電型の窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61を順に成長する。窒化ガリウム系半導体領域57は例えばn型クラッド層を含み、窒化ガリウム系半導体領域61は例えばp型クラッド層を含むことができる。発光層59は窒化ガリウム系半導体領域57と窒化ガリウム系半導体領域61との間に設けられ、また活性層、光ガイド層及び電子ブロック層等を含むことができる。窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61は、半極性主面51aの法線軸NXに沿って配列されている。これらの半導体層はエピタキシャル成長される。半導体領域53上は、絶縁膜54で覆われている。絶縁膜54は例えばシリコン酸化物からなる。絶縁膜54の開口54aを有する。開口54aは例えばストライプ形状を成す。
工程S104では、レーザ構造体55上に、アノード電極58a及びカソード電極58bが形成される。また、基板51の裏面に電極を形成する前に、結晶成長に用いた基板の裏面を研磨して、所望の厚さDSUBの基板生産物SPを形成する。電極の形成では、例えばアノード電極58aが半導体領域53上に形成されると共に、カソード電極58bが基板51の裏面(研磨面)51b上に形成される。アノード電極58aはX軸方向に延在し、カソード電極58bは裏面51bの全面を覆っている。これらの工程により、基板生産物SPが形成される。基板生産物SPは、第1の面63aと、これに反対側に位置する第2の面63bとを含む。半導体領域53は第1の面63aと基板51との間に位置する。
工程S105では、図6(b)に示されるように、基板生産物SPの第1の面63aをスクライブする。このスクライブは、レーザスクライバ10aを用いて行われる。スクライブにより複数のスクライブ溝65aが形成される。図6(b)では、5つのスクライブ溝が既に形成されており、レーザビームLBを用いてスクライブ溝65bの形成が進められている。スクライブ溝65aの長さは、六方晶系III族窒化物半導体のa軸及び法線軸NXによって規定されるa−n面と第1の面63aとの交差線AISの長さよりも短く、交差線AISの一部分にレーザビームLBの照射が行われる。レーザビームLBの照射により、特定の方向に延在し半導体領域に到達する溝が第1の面63aに形成される。スクライブ溝65aは例えば基板生産物SPの一エッジに形成されることができる。
基板生産物SPの第1の面63aの構成を具体的に説明する。基板生産物SPの第1の面63aの構成の一例を図19に示す。図19には、第1の面63aに含まれる領域E1内の構成が例示されている。図19に例示する領域E1内の構成は、第1の面63a全体における構成であり、特定の領域に限定されるものではない。図19に示すように、第1の面63aには、複数のアノード電極58aが例えば並列に設けられており、隣接する二つのアノード電極58a間には複数のスクライブ溝65aが例えば等間隔に設けられている。基板生産物SPは複数の導波路(導波路111に対応)を含み、それぞれの導波路は半導体領域53内においてアノード電極58aに沿って延びている。アノード電極58aの延びている方向は、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を半極性主面51a(又は第1の面63a)に投影した方向であり、六方晶系III族窒化物半導体のa軸と交差する方向である。複数のスクライブ溝65aは、アノード電極58aの延びている方向と交差する方向(六方晶系III族窒化物半導体のa軸の延びている方向)に間隔P1(例えば、300μm以上500μm以下の範囲内の間隔であり、400μm程度が好ましい)に配置され、また、アノード電極58aの延びている方向に沿って間隔P2(例えば、400μm以上800μm以下の範囲内の間隔であり、600μm程度が好ましい)で配置されている。このように、レーザスクライバ10aによってスクライブ溝65aが基板生産物SPの第1の表面63a上に規則的に正確に形成されるので、基板生産物SPから分離されるレーザバーLB1等(更にはIII族窒化物半導体レーザ素子11)の形状のバラつきが低減される。
図6に戻って説明する。工程S106では、図6(c)に示されるように、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押圧は、例えばブレード69といったブレイキング装置を用いて行われる。ブレード69は、一方向に延在するエッジ69aと、エッジ69aを規定する少なくとも2つのブレード面69b、69cを含む。また、基板生産物SP1の押圧は支持装置71上において行われる。支持装置71は、支持面71aと凹部71bとを含み、凹部71bは一方向に延在する。凹部71bは、支持面71aに形成されている。基板生産物SP1のスクライブ溝65aの向き及び位置を支持装置71の凹部71bの延在方向に合わせて、基板生産物SP1を支持装置71上において凹部71bに位置決めする。凹部71bの延在方向にブレイキング装置のエッジの向きを合わせて、第2の面63bに交差する方向からブレイキング装置のエッジを基板生産物SP1に押し当てる。交差方向は好ましくは第2の面63bにほぼ垂直方向である。これによって、基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押し当てにより、第1及び第2の端面67a、67bを有するレーザバーLB1が形成され、これらの端面67a、67bは少なくとも発光層の一部は半導体レーザの共振ミラーに適用可能な程度の垂直性及び平坦性を有する。
形成されたレーザバーLB1は、上記の分離により形成された端面67a、67bを有し、端面67a、67bの各々は、第1の面63aから第2の面63bにまで延在する。これ故に、端面67a、67bは、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成し、XZ面に交差する。このXZ面は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に対応する。
この方法によれば、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に基板生産物SPの第1の面63aをスクライブした後に、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。これ故に、m−n面に交差するように、レーザバーLB1に端面67a、67bが形成される。この端面形成によれば、端面67a、67bに当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性が提供される。
また、この方法では、形成されたレーザ導波路は、六方晶系III族窒化物のc軸の傾斜の方向に延在している。ドライエッチング面を用いずに、このレーザ導波路を提供できる共振器ミラー端面を形成している。
この方法によれば、基板生産物SP1の割断により、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1が形成される。工程S107では、押圧による分離を繰り返して、多数のレーザバーを作製する。この割断は、レーザバーLB1の割断線BREAKに比べて短いスクライブ溝65aを用いて引き起こされる。
図20に、レーザバーLB1の端面67aの構成を例示する。切欠部DE1は、レーザバーLB1等のレーザバーの形成時(以下、ブレイキングという場合がある)に(基板生産物SP等からレーザバーLB1等を分離する処理が工程S106及び工程S107で行われることによって)スクライブ溝65aから形成されたものであり、レーザバーの形成前にはスクライブ溝65aを構成していた部分である。従って、以下では、切欠部DE1をスクライブ溝65aと読み替えることができる。なお、以下において、切欠部DE1をスクライブ溝65aに置き換えた記載は、切欠部DE1の記載と同様なので、説明簡略化のため、省略されている。
切欠部DE1とアノード電極58aとが、アノード電極58aの延びている方向と交差する方向DIR1(六方晶系III族窒化物半導体のc軸を前記半極性主面51aに投影した方向と交差する方向であり、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の延びている方向ということもできる)に交互に配置されている。レーザバーLB1等のレーザバーの分離は、工程S106及び工程S107におて、方向DIR1に沿って、図中符号Uに示す側から図中符号Dに示す側に向かって進行される。スクライブ溝65aの一の端部(図中符号Uに示す側の端部)から他の端部(図中符号Dに示す側の端部)に向かう方向DIR1は、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を半極性主面51aに投影した方向と交差する方向である(六方晶系III族窒化物半導体のa軸の延びている方向ということもできる)。
切欠部DE1は、切欠部DE1の側壁面に含まれており切欠部DE1の一の端部(図中符号Uに示す側の端部)において第1の面63aに接続する第1の部分(端部119aに対応し、以下U側部分という)と、切欠部DE1の側壁面に含まれており切欠部DE1の他の端部(図中符号Dに示す側の端部)において第1の面63aに接続する(端部119bに対応し、以下D側部分という)とを有する。切欠部DE1の側壁面のU側部分は、第1の面63aに対し、45度以上85度以下の範囲内にある傾斜角度BETA3(傾斜角度BETA1に対応)の勾配で傾斜している。切欠部DE1の側壁面のD側部分は、第1の面63aに対し、10度以上30度以下の範囲内にある傾斜角度BETA4(傾斜角度BETA2に対応)の勾配で傾斜している。傾斜角度BETA3は傾斜角度BETA4よりも大きい。切欠部DE1の底壁面から、この底壁面上において第1の面63aに沿って第1の面63aから延びる仮想面123cまでの距離(LENGTH3)を、第1の面63aから第2の面63bまでの距離(THICKNESS2)で割った商(LENGTH3/THICKNESS2)は、0.05以上0.4以下の範囲内にある。
レーザバーLB1等のレーザバーは、後述する工程S108において加工された後に、後述する工程S109において、六方晶系III族窒化物半導体のa軸に交差する方向に延びており複数のスクライブ溝65aのそれぞれを通る切断面L1に沿って切断され、複数のIII族窒化物半導体レーザ素子11に分離される。切断面L1は、例えば間隔P1で例えば等間隔に並列される。隣り合って並列する二つの切断面L1の間にあるスクライブ溝65aのU側部分から、当該二つの切断面L1の間の中心面CE2までの距離LE1は、30μm以上100μm以下の範囲内にある。隣り合って並列する二つの切断面L1の間にあるスクライブ溝65aのD側部分から、当該二つの切断面L1の間の中心面CE2までの距離LE2も、30μm以上100μm以下の範囲内にある。中心面CE2は、隣接し並列する二つの切断面L1の間の中心面であって、六方晶系III族窒化物半導体のa軸に交差する方向に延びている。中心線CE2と端面67aとの交線は、上記の中心線CE1に対応している。切欠部DE1が切断面L1で切断されることによって、切欠部113a及び切欠部113bが形成される。
従って、レーザスクライバ10aによって、スクライブ溝65aの形状や配置が好適に制御されるので、レーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い共振ミラー面を有する複数の同質の素子が容易に安定して(平坦性や垂直性のバラつきを低減できるように)形成可能となる。なお、スクライブ溝65aの形状は、概略的にみれば、平坦な底面の船体の形状であるということもできる。図中符号Dに示す側の端部が船首に対応し、図中符号Uに示す側の端部が船尾に対応している、ということもできる。
工程S108では、レーザバーLB1の端面67a、67bに誘電体多層膜を形成して、レーザバー生産物を形成する。工程S109では、このレーザバー生産物を個々の半導体レーザのチップに分離する。より具体的には、工程S109において、切断面L1に沿ってレーザバー生産物を切断して、このレーザバー生産物から複数のIII族窒化物半導体レーザ素子11の分離を行う。
本実施の形態に係る製造方法では、角度ALPHAは、45度以上80度以下及び100度以上135度以下の範囲であることができる。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。更に好ましくは、角度ALPHAは、63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲であることができる。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面の一部に、m面が出現する可能性がある。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。半極性主面51aは、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。更に、これらの面から−4度以上+4度以下の範囲で微傾斜した面も前記主面として好適である。これら典型的な半極性面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性でレーザ共振器のための端面を提供できる。
また、基板51は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、レーザ共振器として利用可能な端面を得ることができる。基板51は好ましくはGaNからなる。
基板生産物SPを形成する工程S104において、結晶成長に使用された半導体基板は、基板厚が400μm以下になるようにスライス又は研削といった加工が施され、第2の面63bが研磨により形成された加工面であることができる。この基板厚では、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い端面67a、67bを歩留まりよく形成できる。第2の面63bが研磨により形成された研磨面であり、研磨されて基板厚が100μm以下であれば更に好ましい。また、基板生産物SPを比較的容易に取り扱うためには、基板厚が50μm以上であることが好ましい。
本実施の形態に係るレーザ端面の製造方法では、レーザバーLB1においても、図3を参照しながら説明された角度BETAが規定される。レーザバーLB1では、角度BETAの成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面(図3を参照した説明における第1平面S1に対応する面)において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。レーザバーLB1の端面67a、67bは、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。また、角度BETAの成分(BETA)2は、第2平面(図3に示された第2平面S2に対応する面)において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。このとき、レーザバーLB1の端面67a、67bは、半極性面51aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。
端面67a、67bは、半極性面51a上にエピタキシャルに成長された複数の窒化ガリウム系半導体層への押圧によるブレイクによって形成される。半極性面51a上へのエピタキシャル膜であるが故に、端面67a、67bは、これまで共振器ミラーとして用いられてきたc面、m面、又はa面といった低面指数のへき開面ではない。しかしながら、半極性面51a上へのエピタキシャル膜の積層のブレイクにおいて、端面67a、67bは、共振器ミラーとして適用可能な平坦性及び垂直性を有する。
(実施例1)
以下の通り、半極性面GaN基板を準備し、割断面の垂直性を観察した。基板には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に75度の角度で切り出した{20−21}面GaN基板を用いた。GaN基板の主面は鏡面仕上げであり、裏面は研削仕上げされた梨地状態であった。基板の厚さは370μmであった。
以下の通り、半極性面GaN基板を準備し、割断面の垂直性を観察した。基板には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に75度の角度で切り出した{20−21}面GaN基板を用いた。GaN基板の主面は鏡面仕上げであり、裏面は研削仕上げされた梨地状態であった。基板の厚さは370μmであった。
梨地状態の裏面側に、ダイヤモンドペンを用いて、c軸を基板主面に投影した方向と垂直にスクライブ溝を形成した後、押圧して基板を割断した。得られた割断面の垂直性を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いてa面方向から基板を観察した。
図7(a)は、割断面をa面方向から観察した走査型電子顕微鏡像であり、右側の端面が割断面である。割断面は半極性主面に対して、平坦性及び垂直性を有することがわかる。
(実施例2)
実施例1では、半極性{20−21}面を有するGaN基板において、c軸を基板主面に投影した方向と垂直にスクライブ溝を設けて押圧して得た割断面は、基板主面に対して平坦性及び垂直性を有することがわかった。そこでこの割断面をレーザの共振器としての有用性を調べるため、以下の通り、図8に示されるレーザーダイオードを有機金属気相成長法により成長した。原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。基板71を準備した。基板71には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に0度から90度の範囲の角度でウェハスライス装置を用いて切り出し、m軸方向へのc軸の傾斜角度ALPHAが、0度から90度の範囲の所望のオフ角を有するGaN基板を作製した。例えば、75度の角度で切り出したとき、{20−21}面GaN基板が得られ、図7(b)に示される六方晶系の結晶格子において参照符号71aによって示されている。
実施例1では、半極性{20−21}面を有するGaN基板において、c軸を基板主面に投影した方向と垂直にスクライブ溝を設けて押圧して得た割断面は、基板主面に対して平坦性及び垂直性を有することがわかった。そこでこの割断面をレーザの共振器としての有用性を調べるため、以下の通り、図8に示されるレーザーダイオードを有機金属気相成長法により成長した。原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。基板71を準備した。基板71には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に0度から90度の範囲の角度でウェハスライス装置を用いて切り出し、m軸方向へのc軸の傾斜角度ALPHAが、0度から90度の範囲の所望のオフ角を有するGaN基板を作製した。例えば、75度の角度で切り出したとき、{20−21}面GaN基板が得られ、図7(b)に示される六方晶系の結晶格子において参照符号71aによって示されている。
成長前に、基板の積層欠陥密度を調べるため、カソードルミネッセンス法によって、基板を観察した。カソードルミネッセンスでは、電子線によって励起されたキャリアの発光過程を観察するが、積層欠陥が存在すると、その近傍ではキャリアが非発光再結合するので、暗線状に観察される。その暗線の単位長さあたりの密度(線密度)を求め、積層欠陥密度と定義した。ここでは、積層欠陥密度を調べるために、非破壊測定のカソードルミネッセンス法を用いたが、破壊測定の透過型電子顕微鏡を用いてもよい。透過型電子顕微鏡では、a軸方向から試料断面を観察したとき、基板から試料表面に向かってm軸方向に伸びる欠陥が、支持基体に含まれる積層欠陥であり、カソードルミネッセンス法の場合と同様に、積層欠陥の線密度を求めることができる。
この基板71を反応炉内のサセプタ上に配置した後に、以下の成長手順でエピタキシャル層を成長した。まず、厚さ1000nmのn型GaN72を成長した。次に、厚さ1200nmのn型InAlGaNクラッド層73を成長した。引き続き、厚さ200nmのn型GaNガイド層74a及び厚さ65nmのアンドープInGaNガイド層74bを成長した後に、GaN厚さ15nm/InGaN厚さ3nmから構成される3周期MQW75を成長した。続いて、厚さ65nmのアンドープInGaNガイド層76a、厚さ20nmのp型AlGaNブロック層77及び厚さ200nmのp型GaNガイド層76bを成長した。次に、厚さ400nmのp型InAlGaNクラッド層77を成長した。最後に、厚さ50nmのp型GaNコンタクト層78を成長した。
SiO2の絶縁膜79をコンタクト層78上に成膜した後に、フォトリソグラフィを用いて幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成した。ここで、以下の2通りにストライプ方向のコンタクト窓を形成した。レーザストライプが(1)M方向(コンタクト窓がc軸及びm軸によって規定される所定の面に沿った方向)のものと、(2)A方向:<11−20>方向、のものである。
ストライプ窓を形成した後に、Ni/Auから成るp側電極80aとTi/Alから成るパッド電極を蒸着した。次いで、GaN基板(GaNウエハ)の裏面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、裏面がミラー状態の基板生産物を作製した。このとき、接触式膜厚計を用いて基板生産物の厚みを測定した。厚みの測定には、試料断面からの顕微鏡によっても行っても良い。顕微鏡には、光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡を用いることができる。GaN基板(GaNウエハ)の裏面(研磨面)にはTi/Al/Ti/Auから成るn側電極80bを蒸着により形成した。
これら2種類のレーザストライプに対する共振器ミラーの作製には、波長355nmのYAGレーザを用いるレーザスクライバを用いた。レーザスクライバを用いてブレイクした場合には、ダイヤモンドスクライブを用いた場合と比較して、発振チップ歩留まりを向上させることが可能である。スクライブ溝の形成条件として以下のものを用いた:レーザ光出力100mW;走査速度は5mm/s。形成されたスクライブ溝は、例えば、長さ30μm、幅10μm、深さ40μmの溝であった。400μmピッチで基板の絶縁膜開口箇所を通してエピ表面に直接レーザ光を照射することによって、スクライブ溝を形成した。共振器長は600μmとした。
ブレードを用いて、共振ミラーを割断により作製した。基板裏側に押圧によりブレイクすることによって、レーザバーを作製した。より具体的に、{20−21}面のGaN基板について、結晶方位と割断面との関係を示したものが、図7(b)と図7(c)である。図7(b)はレーザストライプを(1)M方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81a、81bが示される。端面81a、81bは半極性面71aにほぼ直交しているが、従来のc面、m面又はa面等のこれまでのへき開面とは異なる。図7(c)はレーザストライプを(2)<11−20>方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81c、81dが示される。端面81c、81dは半極性面71aにほぼ直交しており、a面から構成される。
ブレイクによって形成された割断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、(1)および(2)のそれぞれにおいて、顕著な凹凸は観察されなかった。このことから、割断面の平坦性(凹凸の大きさ)は、20nm以下と推定される。更に、割断面の試料表面に対する垂直性は、±5度の範囲内であった。
レーザバーの端面に真空蒸着法によって誘電体多層膜をコーティングした。誘電体多層膜は、SiO2とTiO2を交互に積層して構成した。膜厚はそれぞれ、50nm以上100nm以下の範囲内で調整して、反射率の中心波長が500nm以上530nm以下の範囲内になるように設計した。片側の反射面を10周期とし、反射率の設計値を約95%に設計し、もう片側の反射面を6周期とし、反射率の設計値を約80%とした。
通電による評価を室温にて行った。電源には、パルス幅500ns、デューティ比0.1%のパルス電源を用い、表面電極に針を落として通電した。光出力測定の際には、レーザバー端面からの発光をフォトダイオードによって検出して、電流−光出力特性(I−L特性)を調べた。発光波長を測定する際には、レーザバー端面からの発光を光ファイバに通し、検出器にスペクトルアナライザを用いてスペクトル測定を行った。偏光状態を調べる際には、レーザバーからの発光に偏光板を通して回転させることで、偏光状態を調べた。LEDモード光を観測する際には、光ファイバをレーザバー表面側に配置することで、表面から放出される光を測定した。
全てのレーザで発振後の偏光状態を確認した結果、a軸方向に偏光していることがわかった。発振波長は500nm以上530nm以下の範囲内であった。
全てのレーザでLEDモード(自然放出光)の偏光状態を測定した。a軸の方向の偏光成分をI2、m軸を主面に投影した方向の偏光成分をI1とし、(I1−I2)/(I1+I2)を偏光度ρと定義した。こうして、求めた偏光度ρとしきい値電流密度の最小値の関係を調べた結果、図9が得られた。図9から、偏光度が正の場合に、(1)レーザストライプM方向のレーザでは、しきい値電流密度が大きく低下することがわかる。すなわち、偏光度が正(I1>I2)で、かつオフ方向に導波路を設けた場合に、しきい値電流密度が大幅に低下することがわかる。図9に示されたデータは以下のものである。
しきい値電流 しきい値電流
偏光度、(M方向ストライプ)、(<11−20>ストライプ)
0.08 64 20
0.05 18 42
0.15 9 48
0.276 7 52
0.4 6
しきい値電流 しきい値電流
偏光度、(M方向ストライプ)、(<11−20>ストライプ)
0.08 64 20
0.05 18 42
0.15 9 48
0.276 7 52
0.4 6
GaN基板のm軸方向へのc軸の傾斜角と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図10が得られた。本実施例では、発振歩留まりについては、(発振チップ数)/(測定チップ数)と定義した。また、図10は、基板の積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板であり、かつレーザストライプが(1)M方向のレーザにおいて、プロットしたものである。図10から、オフ角が45度以下では、発振歩留まりが極めて低いことがわかる。端面状態を光学顕微鏡で観察した結果、45度より小さい角度では、ほとんどのチップでm面が出現し、垂直性が得られないことがわかった。また、オフ角が63度以上80度以下の範囲では、垂直性が向上し、発振歩留まりが50%以上に増加することがわかる。これらの事実から、GaN基板のオフ角度の範囲は、63度以上80度以下が最適である。なお、この結晶的に等価な端面を有することになる角度範囲である、100度以上11
7度以下の範囲でも、同様の結果が得られる。図10に示されたデータは以下のものである。
傾斜角、歩留まり
10 0.1
43 0.2
58 50
63 65
66 80
71 85
75 80
79 75
85 45
90 35
7度以下の範囲でも、同様の結果が得られる。図10に示されたデータは以下のものである。
傾斜角、歩留まり
10 0.1
43 0.2
58 50
63 65
66 80
71 85
75 80
79 75
85 45
90 35
積層欠陥密度と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図11が得られた。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図11から、積層欠陥密度が1×104(cm−1)を超えると急激に発振歩留まりが低下することがわかる。また、端面状態を光学顕微鏡で観察した結果、発振歩留まりが低下したサンプルでは、端面の凹凸が激しく平坦な割断面が得られていないことがわかった。積層欠陥の存在によって、割れ易さに違いが出たことが原因と考えられる。このことから、基板に含まれる積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下である必要がある。図11に示されたデータは以下のものである。
積層欠陥密度(cm−1)、歩留まり
500 80
1000 75
4000 70
8000 65
10000 20
50000 2
積層欠陥密度(cm−1)、歩留まり
500 80
1000 75
4000 70
8000 65
10000 20
50000 2
基板厚みと発振歩留まりとの関係を調べた結果、図12が得られた。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。また、図12では、基板の積層欠陥密度1×104(cm−1)以下であり、かつレーザストライプが(1)M方向のレーザにおいて、プロットした。図12から、基板厚みが100μmよりも薄く50μmよりも厚いときに、発振歩留まりが高い。これは、基板厚みが100μmよりも厚いと、割断面の垂直性が悪化することによる。また、50μmよりも薄いと、ハンドリングが困難で、チップが破壊され易くなることによる。これらのことから、基板の厚みは、50μm以上100μm以下が最適である。図12に示されたデータは以下のものである。
基板厚、歩留まり
48 10
80 65
90 70
110 45
150 48
200 30
400 20
基板厚、歩留まり
48 10
80 65
90 70
110 45
150 48
200 30
400 20
(実施例3)
実施例2では、{20−21}面を有するGaN基板上に、半導体レーザのための複数のエピタキシャル膜を成長した。上記のように、スクライブ溝の形成と押圧とによって光共振器用の端面が形成された。これらの端面の候補を見いだすために、(20−21)面に90度近傍の角度を成し、a面とは異なる面方位を計算により求めた。図13を参照すると、以下の角度及び面方位が、(20−21)面に対して90度近傍の角度を有する。
具体的な面指数、{20−21}面に対する角度
(−1016): 92.46度;
(−1017): 90.10度;
(−1018): 88.29度。
実施例2では、{20−21}面を有するGaN基板上に、半導体レーザのための複数のエピタキシャル膜を成長した。上記のように、スクライブ溝の形成と押圧とによって光共振器用の端面が形成された。これらの端面の候補を見いだすために、(20−21)面に90度近傍の角度を成し、a面とは異なる面方位を計算により求めた。図13を参照すると、以下の角度及び面方位が、(20−21)面に対して90度近傍の角度を有する。
具体的な面指数、{20−21}面に対する角度
(−1016): 92.46度;
(−1017): 90.10度;
(−1018): 88.29度。
図14は、(20−21)面と(−101−6)面及び(−1016)面における原子配置を示す図面である。図15は、(20−21)面と(−101−7)面及び(−1017)面における原子配置を示す図面である。図16は、(20−21)面と(−101−8)面及び(−1018)面における原子配置を示す図面である。図14〜図16に示されるように、矢印によって示される局所的な原子配置は電荷的に中性な原子の配列を示し、電気的中性の原子配置が周期的に出現している。成長面に対し、比較的垂直な面が得られる理由は、この電荷的に中性な原子配列が周期的に現れることで、割断面の生成が比較的安定となっていることが考えられる可能性がある。
上記の実施例1〜3を含めた様々な実験によって、角度ALPHAは、45度以上80度以下及び100度以上135度以下の範囲であることができる。発振チップ歩留を向上させるためには、角度ALPHAは、63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲であることができる。典型的な半極性主面、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。更に、これらの半極性主面からの微傾斜面であることができる。例えば、半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から、m面方向に−4度以上+4度以下の範囲でオフした微傾斜面であることができる。
(実施例4)
図21(a)及び図21(b)は、(20−21)GaN基板を含む基板生産物の表面に、c軸を基板主面に投影した方向DIR2と垂直な方向DIR1にスクライブ溝を形成し、ブレードを用いてブレイキングした後のレーザバーを主面側(スクライブ溝が形成された面側)から光学顕微鏡を用いて観察した結果である。図21(a)には、本実施形態に係るブレイキング方法を用いない従来のブレイキング方法によって形成されたレーザバーLBC1が示されており、図21(b)には本実施形態に係るブレイキング方法によって形成されたレーザバーLBC2(例えばレーザバーLB1に対応)が示されている。ブレイキングは、図中に示す方向DIR1の向きに行われた。方向DIR2は、スクライブ溝が形成された面に六方晶系III族窒化物半導体のc軸を投影した方向である。
図21(a)及び図21(b)は、(20−21)GaN基板を含む基板生産物の表面に、c軸を基板主面に投影した方向DIR2と垂直な方向DIR1にスクライブ溝を形成し、ブレードを用いてブレイキングした後のレーザバーを主面側(スクライブ溝が形成された面側)から光学顕微鏡を用いて観察した結果である。図21(a)には、本実施形態に係るブレイキング方法を用いない従来のブレイキング方法によって形成されたレーザバーLBC1が示されており、図21(b)には本実施形態に係るブレイキング方法によって形成されたレーザバーLBC2(例えばレーザバーLB1に対応)が示されている。ブレイキングは、図中に示す方向DIR1の向きに行われた。方向DIR2は、スクライブ溝が形成された面に六方晶系III族窒化物半導体のc軸を投影した方向である。
図21(a)によれば、ブレイキングによってスクライブ溝が切欠部DE2となり、図21(b)によれば、ブレイキングによってスクライブ溝が切欠部DE3となった。切欠部DE3は切欠部DE1に対応する。図21(a)によれば、切欠部DE2の側壁面SF1から、方向DIR1にブレイキングが進んで端面SF2が形成され、この端面SF2が隣接する切欠部DE2の端部に到達するが、このブレイキングによって形成された端面SF2は、側壁面SF1に対し比較的大きく傾いていた。すなわち、側壁面SF1及び端面SF2を含む共振器ミラーに、傾きの異なる部分が形成されたことがわかる。このように、共振器ミラーは基板に平行な面内において傾きの異なる部分を含むので、反射率が低下し、これに伴ってレーザの発振しきい値が増大する可能性が高い。一方、図21(b)によれば、切欠部DE3の側壁面SF3から、方向DIR1にブレイキングが進んで端面SF4が形成され、この端面SF4が隣接する切欠部DE3の端部に到達するが、このブレイキングによって形成された端面SF4は、側壁面SF3と略平行となっていた。すなわち、図21(b)の場合は、図21(a)の場合と異なっており、共振器ミラーに傾きの異なる部分を確認することはできなかった。すなわち、本実施形態に係るブレイキング方法を用いれば、形成される共振器ミラーは十分な平坦性及び垂直性を有するので、一定のしきい値電流以下での発振歩留まりの高いIII族窒化物半導体レーザ素子を作製することが可能となる。図22には、図21(b)に示すレーザバーLBC2を端面側から光学顕微鏡を用いて観察した結果が示されている。なお、図22に記載されている方向DIR1は、図21に示す方向DIR1と逆向きに表されている。
(実施例5)
LENGTH1(LENGTH2,3も同様であり、以下、単にLENGTHという)とTHICKNESS1(THICKNESS2も同様であり、以下、単にTHICKNESSという)の比LENGTH/THICKNESSと、発振歩留まりとの関係を調べた結果、図23が得られた。THICKNESSを、60μm、100μmの2種類とした。本実施例では、発振歩留まりについては、(しきい値電流1000mA以下での発振チップ数)/(測定チップ数)とした。図23に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、LE1及びLE2を何れも50μmとし(LE1=LE2であり、以下、LE1及びLE2を、単に、LEという)、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)及び傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)を何れも30度として得られたものである。図23から、LENGTH/THICKNESSの値が0.4を超えると、発振歩留まりが半減することが分かる。これは、LENGTH/THICKNESSの値を小さくすると、スクライブ溝先端の応力集中が増大し、平坦な割断面が容易に得られることに因ると考えられる。また、LENGTH/THICKNESSの値が0.05よりも小さくなると急激に発振歩留まりが低下することが分かる。これは、スクライブ溝が浅すぎたために、割断をガイドする役割を果たせなかったことに因る。以上の結果から、LENGTH/THICKNESSの値は0.05以上0.4以下の範囲内が好適であることがわかる。図23に示されたデータは以下のものである(ここでは、特に、LENGTH/THICKNESSを“R”と記し、THICKNESSを“T”と記す)。
R、 T=60μmの T=100μmの
発振歩留まり、 発振歩留まり
0.03 53 39
0.05 69 54
0.1 81 70
0.15 78 72
0.2 65 54
0.25 53 46
0.3 47 44
0.5 34 36
0.8 39 38
LENGTH1(LENGTH2,3も同様であり、以下、単にLENGTHという)とTHICKNESS1(THICKNESS2も同様であり、以下、単にTHICKNESSという)の比LENGTH/THICKNESSと、発振歩留まりとの関係を調べた結果、図23が得られた。THICKNESSを、60μm、100μmの2種類とした。本実施例では、発振歩留まりについては、(しきい値電流1000mA以下での発振チップ数)/(測定チップ数)とした。図23に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、LE1及びLE2を何れも50μmとし(LE1=LE2であり、以下、LE1及びLE2を、単に、LEという)、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)及び傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)を何れも30度として得られたものである。図23から、LENGTH/THICKNESSの値が0.4を超えると、発振歩留まりが半減することが分かる。これは、LENGTH/THICKNESSの値を小さくすると、スクライブ溝先端の応力集中が増大し、平坦な割断面が容易に得られることに因ると考えられる。また、LENGTH/THICKNESSの値が0.05よりも小さくなると急激に発振歩留まりが低下することが分かる。これは、スクライブ溝が浅すぎたために、割断をガイドする役割を果たせなかったことに因る。以上の結果から、LENGTH/THICKNESSの値は0.05以上0.4以下の範囲内が好適であることがわかる。図23に示されたデータは以下のものである(ここでは、特に、LENGTH/THICKNESSを“R”と記し、THICKNESSを“T”と記す)。
R、 T=60μmの T=100μmの
発振歩留まり、 発振歩留まり
0.03 53 39
0.05 69 54
0.1 81 70
0.15 78 72
0.2 65 54
0.25 53 46
0.3 47 44
0.5 34 36
0.8 39 38
(実施例6)
LEと発振歩留まりとの関係を調べた結果、図24が得られた。図24に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)及び傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)を何れも30度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図24から、LEが30μmよりも小さくなると急激に発振歩留まりが低下することが分かる。これは、導波路とスクライブ溝を近づけすぎたことにより、導波路下の活性層がレーザ照射によるダメージを受けたことに因る。また、LEが100μmを超えると、発振歩留まりが半減することが分かる。これは、長いスクライブ溝のほうが容易に割断をガイドすることに因る。以上のことから、LEは30μm以上100μm以下が好適だとわかる。図24に示されたデータは以下のものである。
LE、 発振歩留まり
10 10
20 31
30 64
40 66
60 45
80 46
100 37
150 26
LEと発振歩留まりとの関係を調べた結果、図24が得られた。図24に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)及び傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)を何れも30度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図24から、LEが30μmよりも小さくなると急激に発振歩留まりが低下することが分かる。これは、導波路とスクライブ溝を近づけすぎたことにより、導波路下の活性層がレーザ照射によるダメージを受けたことに因る。また、LEが100μmを超えると、発振歩留まりが半減することが分かる。これは、長いスクライブ溝のほうが容易に割断をガイドすることに因る。以上のことから、LEは30μm以上100μm以下が好適だとわかる。図24に示されたデータは以下のものである。
LE、 発振歩留まり
10 10
20 31
30 64
40 66
60 45
80 46
100 37
150 26
(実施例7)
傾斜角度BETA1と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図25が得られた。図25に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、LEを50μmとし、傾斜角度BETA2を30度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図25から、傾斜角度BETA1が45度以上85度以下の時に発振歩留まりが高いことが分かる。また、傾斜角度BETA2と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図26が得られた。図26に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、LEを50μmとし、傾斜角度BETA3を45度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図26から、傾斜角度BETA2が10度以上30度以下の時に発振歩留まりが高いことが分かる。これは、傾斜角度BETA2<傾斜角度BETA1とすることで割断下流側への応力集中が増大し、スクライブ溝と平行に割断線が進展し易くなることに因ると考えられる。以上のことから、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)は45度以上85度以下、傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)は10度以上30度以下が好適であるとわかる。図25に示されたデータは以下のものである。
BETA1、発振歩留まり
18 42
27 46
45 74
63 78
76 74
84 72
また、図26に示されたデータは以下のものである。
BETA2、発振歩留まり
7 69
14 76
18 78
27 71
45 49
63 39
76 31
傾斜角度BETA1と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図25が得られた。図25に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、LEを50μmとし、傾斜角度BETA2を30度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図25から、傾斜角度BETA1が45度以上85度以下の時に発振歩留まりが高いことが分かる。また、傾斜角度BETA2と発振歩留まりとの関係を調べた結果、図26が得られた。図26に示す結果は、積層欠陥密度が1×104(cm−1)以下の基板を用い、THICKNESSを80μmとし、LENGTHを20μmとし、LEを50μmとし、傾斜角度BETA3を45度として得られたものである。発振歩留まりの定義については、上記と同様である。図26から、傾斜角度BETA2が10度以上30度以下の時に発振歩留まりが高いことが分かる。これは、傾斜角度BETA2<傾斜角度BETA1とすることで割断下流側への応力集中が増大し、スクライブ溝と平行に割断線が進展し易くなることに因ると考えられる。以上のことから、傾斜角度BETA1(傾斜角度BETA3)は45度以上85度以下、傾斜角度BETA2(傾斜角度BETA4)は10度以上30度以下が好適であるとわかる。図25に示されたデータは以下のものである。
BETA1、発振歩留まり
18 42
27 46
45 74
63 78
76 74
84 72
また、図26に示されたデータは以下のものである。
BETA2、発振歩留まり
7 69
14 76
18 78
27 71
45 49
63 39
76 31
以上説明したように、形状を制御した破線スクライブ溝を形成することによって、割断面を利用した共振器ミラーの品質を改善し、ある一定のしきい値電流以下での発振歩留まりの高い半極性上LDを作製することが可能となる。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
11…III族窒化物半導体レーザ素子、13…レーザ構造体、13a…第1の面、13b…第2の面、13c、13d…エッジ、15…電極、17…支持基体、17a…半極性主面、17b…支持基体裏面、17c…支持基体端面、19…半導体領域、19a…半導体領域表面、19c…半導体領域端面、21…第1のクラッド層、23…第2のクラッド層、25…活性層、25a…井戸層、25b…障壁層、27、29…割断面、ALPHA…角度、Sc…c面、NX…法線軸、31…絶縁膜、31a…絶縁膜開口、35…n側光ガイド層、37…p側光ガイド層、39…キャリアブロック層、41…電極、43a、43b…誘電体多層膜、MA…m軸ベクトル、BETA…角度、DSUB…支持基体厚さ、51…基板、51a…半極性主面、SP…基板生産物、57…窒化ガリウム系半導体領域、59…発光層、61…窒化ガリウム系半導体領域、53…半導体領域、54…絶縁膜、54a…絶縁膜開口、55…レーザ構造体、58a…アノード電極、58b…カソード電極、63a…第1の面、63b…第2の面、10a…レーザスクライバ、65a…スクライブ溝、65b…スクライブ溝、LB…レーザビーム、SP1…基板生産物、LB1…レーザバー、69…ブレード、69a…エッジ、69b、69c…ブレード面、71…支持装置、71a…支持面、71b…凹部、BETA1,BETA2…角度、111…導波路、113a,113b,113c,113d,DE1,DE2…切欠部、115a,115b…部分、117a,117b,119a,119b…端部、121a,121b…仮想線分、123a,123b,123c…仮想面、13e,13f…エッジ、CE1…中心線、CE2…中心面、DF1,DF2…接線、L1…切断面、LBC1,LBC2…レーザバー、SF1,SF3…側壁面、SF2,SF4…端面。
Claims (18)
- III族窒化物半導体レーザ素子であって、
六方晶系III族窒化物半導体からなり半極性主面を有する支持基体、及び前記支持基体の前記半極性主面上に設けられた半導体領域を含むレーザ構造体と、
前記レーザ構造体の前記半導体領域上に設けられた電極とを備え、
前記半導体領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、
前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、
前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に前記法線軸に対して有限な角度ALPHAで傾斜しており、
前記レーザ構造体は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び前記法線軸によって規定されるm−n面に交差する第1及び第2の割断面と、前記第1又は第2の割断面と交差する方向に延びている第1の面と、前記第1の面の反対側にあり前記第1の面に沿って延びている第2の面と、前記第1の面と前記第1の割断面とが交差している第1のエッジの両端にそれぞれ設けられた第1及び第2の切欠部とを含み、
当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器は前記第1及び第2の割断面を含み、
前記第1の割断面は、前記第1のエッジから前記第2の面のエッジまで延在し、
前記第1の切欠部の側壁面に含まれており前記第1のエッジに接続している第1の部分は、前記第1の面に対し、45度以上85度以下の範囲内にある第1の傾斜角度の勾配で前記第2の面側に傾斜しており、
前記第2の切欠部の側壁面に含まれ前記第1のエッジに接続する第2の部分は、前記第1の面に対し、10度以上30度以下の範囲内にある第2の傾斜角度の勾配で前記第2の面側に傾斜しており、
前記第1の割断面は、前記第1のエッジと交差する方向に延びている第2のエッジを有し、
前記第2のエッジは、前記第1の面側にある端部を有し、
前記第1の切欠部の底壁面から、前記底壁面上において前記第1の面に沿って前記第1の面から延びる仮想面までの距離を、前記第1の面から前記第2の面までの距離で割った商は、0.05以上0.4以下の範囲内にあり、
前記第1のエッジの端部から、前記第1のエッジと交差する方向に延びている前記第1の割断面の中心線までの距離は、30μm以上100μm以下の範囲内にある、ことを特徴とするIII族窒化物半導体レーザ素子。 - 前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記支持基体の厚さは400μm以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記支持基体の厚さは、50μm以上100μm以下の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした微傾斜面である、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記支持基体の積層欠陥密度は1×104cm−1以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記第1及び第2の割断面の少なくともいずれか一方に設けられた誘電体多層膜を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記活性層は、360nm以上600nm以下の範囲内にある波長の光を発生するように設けられた発光領域を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- 前記活性層は、430nm以上550nm以下の範囲内の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
- III族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法であって、
六方晶系III族窒化物半導体からなり半極性主面を有する基板を準備する工程と、
前記半極性主面上に形成された半導体領域と前記基板とを含むレーザ構造体、アノード電極、及びカソード電極を有する基板生産物を形成する工程と、
前記六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に前記基板生産物の第1の面を部分的にスクライブすることによって、複数のスクライブ溝を前記第1の面に設ける工程と、
前記基板生産物の第2の面への押圧により前記基板生産物の分離を行って、別の基板生産物及びレーザバーを形成する工程と、
前記レーザバーの端面を加工した後に、前記六方晶系III族窒化物半導体のa軸に交差する方向に延びており前記複数のスクライブ溝のそれぞれを通る切断面に沿って前記加工後のレーザバーを切断して、この加工後のレーザバーから複数の前記III族窒化物半導体レーザ素子の分離を行う工程と
を備え、
前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、
前記半導体領域は前記第1の面と前記基板との間に位置し、
前記レーザバーは、前記第1の面から前記第2の面にまで延在し前記分離により形成された第1及び第2の端面を有し、
前記第1及び第2の端面は当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成し、
前記アノード電極及びカソード電極は、前記レーザ構造体上に形成され、
前記半導体領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、
前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、
前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記基板の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に前記法線軸に対して有限な角度ALPHAで傾斜しており、
前記第1及び第2の端面は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び前記法線軸によって規定されるm−n面に交差しており、
前記スクライブは、レーザスクライバを用いて行われ、
前記スクライブにより複数のスクライブ溝が前記第1の面に形成され、
前記スクライブ溝の側壁面に含まれており前記スクライブ溝の一の端部において前記第1の面に接続する第1の部分は、前記第1の面に対し45度以上85度以下の範囲内にある第1の傾斜角度の勾配で傾斜し、当該側壁面に含まれており当該スクライブ溝の他の端部において前記第1の面に接続する第2の部分は、前記第1の面に対し10度以上30度以下の範囲内にある第2の傾斜角度の勾配で傾斜しており、
前記スクライブ溝の前記一の端部から前記他の端部に向かう方向は、前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸を前記半極性主面に投影した方向と交差する方向であり、
前記別の基板生産物及びレーザバーを形成する工程では、前記スクライブ溝の前記一の端部から前記他の端部に向かう方向に、前記レーザバーの分離が進行され、
前記スクライブ溝の底壁面から、前記底壁面上において前記第1の面に沿って前記第1の面から延びる仮想面までの距離を、前記第1の面から前記第2の面までの距離で割った商は、0.05以上0.4以下の範囲内にあり、
隣り合う並列する二つの前記切断面の間にある前記スクライブ溝の前記一の端部又は前記他の端部から、当該二つの切断面の間の中心面までの距離は、30μm以上100μm以下の範囲内にある、ことを特徴とする方法。 - 前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲内にある、ことを特徴とする請求項12に記載された方法。
- 前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲内にある、ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載された方法。
- 前記基板生産物を形成する前記工程において、前記基板は、前記基板の厚さが400μm以下になるようにスライス又は研削といった加工が施され、
前記第2の面は前記加工により形成された加工面、又は前記加工面の上に形成された電極を含む面である、ことを特徴とする請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載された方法。 - 前記基板生産物を形成する前記工程において、前記基板は、前記基板の厚さが50μm以上100μm以下になるように研磨され、
前記第2の面は前記研磨により形成された研磨面、又は前記研磨面の上に形成された電極を含む面である、ことを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれか一項に記載された方法。 - 前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかである、ことを特徴とする請求項12〜請求項16のいずれか一項に記載された方法。
- 前記基板は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなる、ことを特徴とする請求項12〜請求項17のいずれか一項に記載された方法。
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