JP2011207842A - 移植用細胞保護溶液及び被覆保護細胞体 - Google Patents

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輝 興津
Kentaro Toyoda
健太郎 豊田
Yasuko Kimura
泰子 木村
Masanori Fukushima
雅典 福島
Shinji Uemoto
伸二 上本
Nobuya Inagaki
暢也 稲垣
Tsutomu Sato
勉 佐藤
Shingo Ogawa
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Takeshi Aso
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Abstract

【課題】移植用の細胞を適切に保護する移植用細胞保護溶液を提供する。
【解決手段】移植用細胞保護溶液13は、移植用の細胞を適切に保護すると共に、その機能を活性化させるものであって、移植用の細胞の機能を直接的又は間接的に活性化させるexendin−4等の細胞保護物質15と、細胞保護物質15に緩徐かつ持続的な薬理効果を与える共に、経時的に体内に吸収される性質を有するコラーゲン等の被覆物質14とを含む。
【選択図】図1

Description

この発明は、細胞保護物質を含有する移植用細胞保護溶液、及び移植用細胞保護溶液で保護された被覆保護細胞体に関するものである。
インスリン依存状態糖尿病(以下、単に「糖尿病」という)の多くは、膵島におけるβ細胞の消失、若しくは膵臓の喪失によってインスリン分泌が枯渇することにより生じる。このような糖尿病患者は、生命維持のためにインスリン注射を行い、血糖をコントロールする必要がある。
また、糖尿病の他の治療法として、インスリンを分泌するβ細胞を含む膵島組織を、患者の体内に移植する方法(膵島移植)が知られている(特許文献1を参照)。例えば、膵島組織を点滴等で患者の門脈に注入すれば、肝臓内に生着した膵島細胞からインスリンが分泌され、血糖のコントロールが可能となる。
この場合の生着とは、膵島組織内に豊富に存在する毛細血管網と肝臓から伸びてきた毛細血管とが吻合して膵島組織内への血流が再開し、もともと膵臓に存在していたように肝臓の門脈内で血糖の変動に応じて適量のインスリンが適時に分泌されるようになった状態のことをいう。
生着する移植膵島量が充分な場合、インスリン注射をしなくとも血糖値をコントロールできるようになると考えられている(この状態を「インスリン離脱」という)。また、この方法はメジャーサージェリーを必要としないので、患者の身体的負担が少ないという利点がある。
特開2001−299908号公報
図10は移植された膵島細胞の量の経時変化を示す概念図であって、実線は門脈内に移植した場合の膵島量の推移を、破線は本発明によって可能となる膵島量の推移を示す。門脈内に移植された膵島細胞は、移植後急性期(6時間程度)で50%以上が死滅する。これは、門脈内の膵島細胞が血小板や白血球等からの攻撃に晒されることが一因であると考えられている。
このため、現行の門脈内への膵島移植手技では、インスリン離脱を達成するために、ドナー1人から分離した膵島量では充分ではなく、複数のドナーからの膵島を使用する必要がある。また、膵島組織は一旦生着した後も種々のストレス(高血糖、免疫担当細胞による攻撃、免疫抑制剤など)によってその数は徐々に少なくなる。
このため、長期のインスリン離脱を可能とするためには、移植後早期においてできるだけ多くの膵島の生着を可能とする必要がある。すなわち、移植膵島細胞の生着率が高くなり、生着膵島細胞量が多くなればなるほどインスリン離脱の可能性は高くなり、かつインスリン離脱期間は長期になると期待される。
そこで、この発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、移植用の細胞を適切に保護する移植用細胞保護溶液、及び生着率の高い被覆保護細胞体を提供することを目的とする。
この発明に係る移植用細胞保護溶液は、移植用の細胞の機能を直接的又は間接的に活性化させる細胞保護物質と、前記細胞保護物質に緩徐かつ持続的な薬理効果を与えると共に、経時的に体内に吸収される性質を有する被覆物質とを含む。
上記組成の移植用細胞保護溶液において、被覆物質は、細胞保護物質を細胞に対して緩徐かつ持続的に作用させる性質を有する。その結果、酸素や栄養素の不足しがちな部位に細胞移植を行う場合でも、細胞のストレスを軽減することができる。一方、血小板、白血球、又は免疫担当細胞等からの攻撃を受けやすい部位に細胞移植を行う場合には、被覆物質は細胞をこれらの攻撃から保護する保護物質としても機能し得る。
ただし、被覆物質は、細胞と血管とが結びつくのを妨げたり、細胞から分泌される物質の拡散を妨げたりする障壁としても作用する。そこで、移植直後の所定期間は細胞を保護し、その後は消滅して細胞を露出させるのが望ましい。
前記被覆物質は、雰囲気(体内組織)に直接暴露されているのが望ましい。上記と同様の理由から、細胞を被覆する物質は必要最小限であることが望まれる。つまり、被覆物質は他の物質で覆われておらず、雰囲気に直接接しているのが望ましい。
前記被覆物質は、コラーゲンが望ましい。コラーゲンは、細胞保護物質に緩徐かつ持続的な薬理効果を与え、細胞との親和性が高く、かつ抗原性が極めて低いので、被覆物質として好適である。
また、前記被覆物質は、血管新生能を有する血管新生誘導因子をさらに含有してもよい。これにより、細胞と血管とが結びつきやすくなるので、細胞の生着率が向上する。前記血管新生誘導因子は、血管内皮細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸性線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子からなる群より選択された物質である。
この発明に係る被覆保護細胞体は、移植に用いられる細胞と、前記細胞を被覆する上記のいずれかに記載の移植用細胞保護溶液とを備える。一例として、前記細胞は腸間膜下への移植に用いられる膵島細胞であり、前記細胞保護物質はexendin−4、GLP−1、及びリラグルチドのうちのいずれかである。
腸間膜下に移植される膵島細胞は、血液に直接接する機会が少ないので、血小板や白血球等の攻撃に晒されない代わりに、酸素や栄養の不足によるストレスが大きい。そこで、移植用細胞保護溶液を用いて、膵島細胞に対して細胞保護物質を緩徐かつ持続的に作用させることにより、移植直後における膵島細胞の生存率を飛躍的に向上させることができる。
なお、移植部位が血管以外の場所(例えば、腹腔内等)であれば、上記と同様の効果を得ることができる。しかしながら、腸間膜は門脈を介して肝臓とつながっているので、膵島細胞を腸間膜下に移植することにより、分泌されたインスリンを効率的に肝臓に供給することができる。
前記細胞保護物質はexendin−4であり、その含有濃度は1nmol/L以上である。exendin−4の含有濃度が1nmol/Lを下回ると膵島細胞を十分に活性化させることができないからである。
この発明によれば、移植後の細胞を適切に保護できる移植用細胞保護溶液、及び生着率の高い被覆保護細胞体を得ることができる。
この発明の一実施形態に係る被覆保護細胞体を示す概略図である。 図1の他の実施形態を示す図である。 アテロコラーゲンの徐効性能を確認する実験の結果を示す図である。 人体の内部組織の概略図である。 膵島細胞の移植部位と耐糖能との関係を示す図である。 400個の膵島細胞を含む被覆保護細胞体を腸間膜下に移植した際の血糖値の変化を示す図である。 150個の膵島細胞を含む被覆保護細胞体を腸間膜下に移植した際の血糖値の変化を示す図である。 移植用細胞保護溶液の効果を確認する実験の結果を示す図である。 アテロコラーゲンの適正濃度を確認する実験の結果を示す図である。 門脈内に移植された膵島細胞の数の経時変化を示す図である。
図1及び図2を参照して、この発明の一実施形態に係る被覆保護細胞体11及び移植用細胞保護溶液13を説明する。なお、図1は1つの細胞を保護する例を示す図、図2は複数の細胞を纏めて保護する例を示す図である。また、移植用細胞として膵島細胞12を例にとって説明する。
図1に示されるように、被覆保護細胞体11は、膵島細胞12と、膵島細胞12を被覆する移植用細胞保護溶液13とで構成される。また、移植用細胞保護溶液13は、膵島細胞12を被覆する被覆物質14と、被覆物質14に添加される細胞保護物質15とを少なくとも含んでいる。
膵島細胞12は、膵臓内に存在する直径が50〜700μmの細胞塊であり、血糖量を低下させるホルモンであるインスリンを分泌する。膵島細胞12を得る方法としては、従来から知られている方法を用いることができる。例えば、まず、脳死ドナー、心停止ドナー、又は健常ドナーから膵臓の一部又は全部を摘出する。次に、消化酵素を用いて膵臓から膵島細胞を分離する。さらに、遠心分離によって膵島を純化することによって移植用の膵島細胞12を得ることができる。
被覆物質14は、膵島細胞12、細胞保護物質15、及びその他の添加剤を包含する物質である。また、細胞保護物質15等を膵島細胞12に対して緩徐かつ持続的に作用させる性質を有する。また、時間の経過に伴って徐々に体内に吸収される性質を有する。さらに、膵島細胞12の足場となる基質(スカフォールド)としても機能する。なお、被覆物質14の状態は特に限定されないが、体内では膵島細胞12を安定して保持するためにゲル状であることが望ましい。
この被覆物質14の具体例としては、ゼラチン、コラーゲン(天然型、組換え型、合成型)、ヒアルロン酸、及びポリ乳酸グリコール酸(Poly Lactic acid/Glycolic Acid:PLGA)等を挙げることができる。さらに、コラーゲンの一例として、アテロコラーゲンを挙げることができる。
アテロコラーゲンは、ウシ真皮からプロテアーゼ処理によって抽出されたコラーゲンであり、細胞保護物質15に緩徐かつ持続的な薬理効果を与える。このアテロコラーゲンは、常温ではゾル状態であるが、体温下(37℃前後)ではゲル化して固まる性質を有している。このため、移植細胞を容易に被覆することができ、かつ移植方法にも柔軟性を持たせることが可能となる。
また、蛋白質の両末端に存在するテロペプチドと呼ばれる抗原部位が除去されているので、ヒトに投与しても抗原性は示されず、免疫反応が起こらない。さらに、蛋白質構造の類似性から種間差に関係なく高い生体親和性を持ち、かつ生分解性を有する。こうした性質から既に医療機器として承認を受けており、皮内注入剤として20年以上に亘って臨床使用されている。
上記の例のように、被覆物質14としては、徐放性を有する公知の物質を採用することができる。ただし、この発明における被覆物質14は、内部に保持している膵島細胞12に対して細胞保護物質15を緩徐かつ持続的に作用させるものであり、従来のように、薬剤を外部に徐放する徐放性剤とは用途が全く異なる。
なお、移植直後の細胞は、移植部位によって酸素や栄養の不足、あるいは患者の免疫活動等の様々なストレスに晒されるので、移植直後からの所定期間(少なくとも1ヶ月間)は被覆物質14によって膵島細胞12を保護することは極めて重要である。これにより、移植直後における膵島細胞12の破壊を効果的に抑制することができる。
一方、移植された膵島細胞12は、細胞間の毛細血管と患者の血管とが結びつくことによってインスリン分泌能が活性化される。また、分泌されたインスリンは、血管を通じて速やかに肝臓に供給される必要がある。しかしながら、被覆物質14は、膵島細胞12と患者の体内組織との間に立ちはだかって、細胞間の毛細血管と患者の血管とが結びつくのを妨げたり、膵島細胞12から分泌されたインスリンの拡散を妨げたりする障壁としても作用する。
そこで、被覆物質14は、アテロコラーゲンのように時間の経過に伴って徐々に体内に吸収され、一定期間経過後には消滅してしまう物質である必要がある。なお、被覆物質14が膵島細胞12を被覆保護する期間としては、少なくとも1ヶ月、より好ましくは3ヶ月の期間が必要である。
これにより、移植後急性期には膵島細胞12を適切に保護することができ、その後は徐々に消滅して障壁としての作用を減じていく。また、上記と同様の理由から膵島細胞12を被覆する物質は必要最小限であることが望まれる。すなわち、被覆物質14は他の物質で覆われておらず、被覆保護細胞体11の外郭を構成する(体内組織に直接暴露されている)のが望ましい。
細胞保護物質15は、膵島細胞12の機能を直接的又は間接的に活性化させる物質である。直接的因子の具体例としては、例えば、exendin−4、GLP−1(グルカゴン様ペプチド)、リラグルチド(liraglutide)等を挙げることができる。exendin−4は、ドクトカゲの唾液腺において生成されるペプチドであって、膵島細胞12によるインスリン分泌を促進する機能を有する。一方、間接的因子の具体例としては、例えば、抗炎症因子、抗アポトーシス因子、免疫抑制剤等を挙げることができる。
なお、細胞保護物質15としてのexendin−4の被覆物質14に対する含有濃度は、少なくとも1nmol/L以上とするのが望ましい。含有濃度が1nmol/Lを下回ると、膵島細胞12を十分に活性化することができないからである。
上記構成の被覆保護細胞体11は、被覆物質14に含有される細胞保護物質15が膵島細胞12に対して緩徐かつ持続的に作用するので、酸素や栄養の不足しがちな部位に移植されても、膵島細胞12の機能を長期間に亘って維持することができる。一方、血小板や白血球等の攻撃に晒される部位(例えば、血管内)に移植された場合には、被覆物質14がこれらの攻撃から膵島細胞12を保護する役割を担う。その結果、膵島細胞12を移植する部位の選択肢が広がる。
なお、被覆物質14は、細胞保護物質15の他に、他の物質又は因子を含有していてもよい。例えば、血管新生誘導因子を含有させてもよい。血管新生とは、既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理現象であり、血管新生誘導因子はこの現象を促進する機能を有する。
血管新生誘導因子を含有させることにより、膵島細胞12が血管と結び付き易くなるので、血管から酸素や栄養の供給を受けることができる。ただし、膵島細胞12と血管とが結び付くにはある程度の時間(約数十日間)を必要とするので、細胞保護物質15と併用するのが望ましい。つまり、移植の初期段階では被覆物質14中の細胞保護物質15が緩徐かつ持続的に作用し、その後は血管から酸素や栄養の供給を受けることにより、膵島細胞12の機能を長期間に亘って維持することができる。
なお、血管新生誘導因子としては、例えば、血管内皮細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸性線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β、オステオネクチン、アンジオポイエチン、及び肝細胞増殖因子等が挙げられる。
次に、図3を参照して、被覆物質14による細胞保護物質15の徐効性能を検証する。なお、「徐効性能」とは、細胞保護物質15を緩徐かつ持続的に作用させる性能をさすものとする。
まず、アテロコラーゲン(被覆物質14)とexendin−4(細胞保護物質15)とを混合した移植用細胞保護溶液13を100μlずつ6本のテストチューブに分取する。なお、この移植用細胞保護溶液13に含まれるアテロコラーゲンの濃度を3%、exendin−4の濃度を100nmol/mlとする。
次に、上記のテストチューブを4℃に保ち、1300rpmで4分間遠心分離する。これにより、内部の気泡を除去することができる。そして、このテストチューブを37℃に保ち、一晩静置する。これにより、アテロコラーゲンがゲル化する。
次に、上記のテストチューブにリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)を300μl加え、37℃に保った状態で所定の期間静置する。図3は、上記のテストチューブから0時間後、1時間後、5時間後、1日後、3日後、9日後に上清(300μlのPBS)を採取し、上清中のexendin−4の濃度を測定した結果を示す図である。
図3を参照すれば、上澄み中にはほとんどexendin−4が含まれておらず、9日後でも0.42nmol/mlしか検出されなかったことが確認できる。これは、移植用細胞保護溶液13に当初含まれていた量の約1.26%に過ぎない。
上記の結果より、膵島細胞12を上記の移植用細胞保護溶液13で被覆すれば、細胞保護物質15の薬理効果が膵島細胞12に対して持続的に作用すると推測することができる。
次に、図4〜図9を参照して、膵島細胞12の適切な移植部位を検討する。まず、図4を参照して、膵臓106から分泌されるインスリンは、門脈101を経由して肝臓105に供給される。門脈101は、上腸間膜静脈102、下腸間膜静脈103及び脾静脈104が合流し、肝臓105に向かう血管である。
そこで、従来と同様に門脈101に移植する場合と、門脈101及び門脈101より上流の血管(上腸間膜静脈102や下腸間膜静脈103等)に隣接する腸間膜下に移植する場合とにおけるマウスの耐糖能を測定した。
図5は、膵島細胞12の移植部位とインスリン抵抗性との関係を示す図である。具体的には、ワイルドタイプと、膵島細胞12を門脈内に移植した場合と、膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合とにおいて、インスリン抵抗性の指標であるHOMA−IR(HOmeostasis Model Assessment as an index of Insulin Resistance)を比較した。
なお、HOMA−IRは、空腹時血糖値(mg/dl)×空腹時インスリン濃度(U/ml)/405の計算式により計算される値である。また、この実験は、移植部位による差異を比較するために、被覆物質14で覆われていない膵島細胞12を用いて行った。
図5によれば、膵島細胞12を門脈内に移植した場合のHOMA−IRは約2.2であるのに対し、腸間膜下に移植した場合のHOMA−IRは約1.3であった。つまり、膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合の耐糖能は、門脈内に移植した場合の約1.7倍高いことが明らかとなった。
上記の結果は、門脈101に移植された膵島細胞12の多くが、血流に乗って門脈101の本管を通過し、門脈101の末梢部分に生着することに起因する。つまり、門脈101の末梢部分に生着する膵島細胞12から分泌されるインスリンは、その近傍の極僅かの肝細胞にしか届かない。
一方、腸間膜と肝臓105とは門脈101でつながっているので、腸間膜下に生着した膵島細胞12から分泌されるインスリンは、門脈101の本管を通って肝臓105全体に供給される。その結果、膵島細胞12が分泌したインスリンを効率的に肝臓105に供給することができる。
インスリン抵抗性が低いとは、より少量のインスリン分泌で耐糖能を維持できるということであり、移植された膵島細胞12の負荷が少ないということである。このことは、間接的に細胞保護にもつながる点で大きな意味を持っている。
したがって、耐糖能を向上させる観点からは、門脈101内よりも腸間膜下に膵島細胞12を移植するのが望ましい。また、腸間膜下は門脈101内よりも生着床が広いので、生着率の向上も期待できる。
さらに、血管を閉塞する心配がないので、肝細胞障害等の発生を防止することも可能である。特に、ゲル状の被覆物質14は血管を閉塞させる危険性が高いので、この発明の被覆保護細胞体11は血管以外の部位に移植するのが望ましい。ここで、血管以外の移植部位として腹腔内等も候補に挙げることができるが、門脈101を介して肝臓105とつながっている腸間膜下が膵島細胞12の移植部位として最も適していると考えられる。
ここで、被覆保護細胞体11を腸間膜下に移植する方法を説明する。まず、細胞保護物質15を含む被覆物質14を腸間膜下に注入する。具体的には、3.0%のアテロコラーゲン(「被覆物質14」に相当)と粉末状のexendin−4(「細胞保護物質15」に相当)とを混合した3.0%アテロコラーゲン溶液(「移植用細胞保護溶液13」に相当)を注入する。次に、腸間膜下の3.0%アテロコラーゲン溶液に膵島細胞12(膵島の組織塊)を注入する。このとき、膵島細胞12からできるだけ水分を除去しておくのが望ましい。
アテロコラーゲンは、常温下ではゾル状態であるが、体温下(37℃前後)ではゲル化して固まる性質を有する。そのため、アテロコラーゲン注入直後(アテロコラーゲンがまだ固まる前)に膵島細胞12を注入することによって、ゾル状態のアテロコラーゲン内に膵島細胞12を均一に分布させることが可能となる。この後アテロコラーゲンはゲル化し、膵島細胞12とexendin−4とを保持して腸間膜下に留まる。このとき、アテロコラーゲンの中は、局所的にexendin−4の濃度が高い領域となっている。このexendin−4は膵島細胞12に対して徐々に薬効を示すので、膵島細胞12の機能を持続的に活性化させることができる。
なお、被覆保護細胞体11を移植する方法は、上記の方法に限定されない。すなわち、予めexendin−4を含む3.0%アテロコラーゲン溶液で膵島細胞12を被覆しておき、これを患者の体内に移植するようにしてもよい。
次に、図6及び図7を参照して、腸間膜下に移植した被覆保護細胞体11の効果を検証する。図6は、ワイルドタイプ(□)と、100μlの移植用細胞保護溶液13で被覆した400個の膵島細胞12を腸間膜下に移植したマウス(○)との血糖値の変化を比較する図である。なお、移植用細胞保護溶液13に含まれるアテロコラーゲンの濃度を3.0%、exendin−4の濃度を1.43×10-10mol/mlとする。また、図7は、移植する膵島細胞12を150個とした以外は、図6と同じ条件である。
図6及び図7に示されるように、被覆保護細胞体11を腸間膜下に移植すれば、血糖値の変化がワイルドタイプと同等の挙動を示すことが確認できる。つまり、移植した膵島細胞12が生着し、十分な量のインスリンを分泌していることが分かる。
次に、図8を参照して、移植用細胞保護溶液13の効果を検証する。図8は、移植用細胞保護溶液13で被覆された150個の膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合(◇)、及び150個の膵島細胞12を単体で腸間膜下に移植すると共に、exendin−4を腹腔内に投与した場合(△)の血糖値の変化を示す図である。
図8を参照すれば、移植用細胞保護溶液13で被覆した膵島細胞12を移植した場合(◇)には、正常血糖値に達している。一方、膵島細胞12を単体で移植した場合(△)には、血糖値の減少は確認されなかった。
つまり、膵島細胞12を被覆物質14で覆うことにより、生着率が大幅に向上することが確認された。また、細胞保護物質15(exendin−4)を膵島細胞12とは別に投与しても顕著な効果は得られず、被覆物質14に含有させて膵島細胞12に緩徐かつ持続的に作用させることによって初めて生着率向上に寄与することが確認された。
次に、図9を参照して、被覆物質14の適正濃度を検証する。図9は、400個の膵島細胞12を単体で門脈に移植した場合(○)、1.75%のアテロコラーゲンで被覆した400個の膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合(□)、exendin−4を添加した1.75%のアテロコラーゲンで被覆した400個の膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合(◇)、及びexendin−4を添加した3.0%のアテロコラーゲンで被覆した400個の膵島細胞12を腸間膜下に移植した場合(△)の血糖値の変化を示す図である。なお、exendin−4の濃度は、1.43×10-10mol/mlである。
図9を参照すれば、アテロコラーゲンの濃度を3.0%とした場合(△)には、門脈に移植した場合(○)と比較して正常血糖値に達するまでの時間は僅かに長いものの、正常血糖値に達していることが確認できる。一方、アテロコラーゲンの濃度を1.75%とした場合(□、◇)には、正常血糖値に達することはなかった。
上記の結果より、アテロコラーゲンの濃度が低すぎると、膵島細胞12の生着率が低下することが確認された。一方、アテロコラーゲンの濃度が高すぎると、移植用細胞保護溶液13がゲル状となって移植が難しくなる。そこで、アテロコラーゲンの濃度は、2.0%〜5.0%、より好ましくは、2.5%〜3.5%程度とするのが適切である。
以上の結果は、適切な因子を組み合わせて被覆物質14で覆うことによって、従来よりも少ない膵島量でインスリン離脱を達成できる可能性を示している。
なお、上記の実施形態においては、移植用の細胞として膵島細胞12の例を説明したが、これに限ることなく、他の移植用の細胞にも適用することができる。つまり、細胞保護物質15を含んだ被覆物質14で細胞を覆うことにより、細胞保護物質15の濃度が局所的に高い領域に細胞を保持し、細胞保護物質15を緩徐かつ持続的に作用させることができる。その結果、細胞移植医療において対象となる付着系の機能細胞の生体への生着効率を向上させることができる。なお、「付着系の機能細胞」とは、糖尿病に対する膵島細胞12の他に、パーキンソン病に対する黒質細胞や、脊髄損傷に対する神経細胞等を指す。このとき、細胞保護物質15は、移植細胞に合わせて適切に選択する必要がある。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、特に移植用の細胞に有利に利用される。
11 被覆保護細胞体
12 膵島細胞
13 移植用細胞保護溶液
14 被覆物質
15 細胞保護物質
101 門脈
102 上腸間膜静脈
103 下腸間膜静脈
104 脾静脈
105 肝臓
106 膵臓

Claims (8)

  1. 移植用の細胞の機能を直接的又は間接的に活性化させる細胞保護物質と、
    前記細胞保護物質に緩徐かつ持続的な薬理効果を与えると共に、経時的に体内に吸収される性質を有する被覆物質と
    を含む移植用細胞保護溶液。
  2. 前記被覆物質は、雰囲気に直接暴露されている
    請求項1に記載の移植用細胞保護溶液。
  3. 前記被覆物質は、コラーゲンである
    請求項1又は2に記載の移植用細胞保護溶液。
  4. 前記被覆物質は、血管新性能を有する血管新生誘導因子をさらに含有する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の移植用細胞保護溶液。
  5. 前記血管新生誘導因子は、血管内皮細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸性線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子からなる群より選択された物質である
    請求項4に記載の移植用細胞保護溶液。
  6. 移植に用いられる細胞と、
    前記細胞を被覆する請求項1〜5のいずれか1項に記載の移植用細胞保護溶液と
    を備える被覆保護細胞体。
  7. 前記細胞は、腸間膜下への移植に用いられる膵島細胞であり、
    前記細胞保護物質は、exendin−4、GLP−1、及びリラグルチドのうちのいずれかである
    請求項6に記載の被覆保護細胞体。
  8. 前記細胞保護物質はexendin−4であり、
    その含有濃度は、1nmol/L以上である
    請求項7に記載の被覆保護細胞体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014103985A (ja) * 2012-11-22 2014-06-09 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute コラーゲン水溶液及びそれから得られるゲル

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