JP2011202269A - 温間加工性に優れた高強度鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】温間加工でTRIP効果が最大限に発揮され、従来鋼板よりもさらに確実に高延性化しうる高強度鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C :0.05〜0.25%、Si:1.00%超2.5%以下、Al:1.0%以下(0%を含まない)、Si+Al:合計で3%以下、Mn:0.5〜3%、P :0.15%以下(0%を含まない)、S :0.02%以下(0%を含む)を含み、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、母相は、平均ビッカース硬さが250Hv以上のベイニティック・フェライトを全組織に対して面積率で80%以上含み、第2相は、残留オーステナイトを全組織に対して面積率で5~15%含み、該残留オーステナイト中のC濃度(CγR)は0.6質量%以上1.0質量%未満であり、さらに、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含んでもよい組織を有する温間加工性に優れた高強度鋼板。
【選択図】 図1
Description
C :0.05〜0.6%、
Si+Al:0.5〜3%、
Mn:0.5〜3%、
P :0.15%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含む)
を含有し、且つ、
母相組織は、平均硬度がビッカース硬度で240Hv以上であるベイニティック・フェライト及び/又はグラニュラー・ベイニティック・フェライトを全組織に対して占積率で70%以上含有し、
第2相組織は、残留オーステナイトを全組織に対して占積率で5〜30%含有し、該残留オーステナイト中のC濃度(CγR)は1.0質量%以上であり、
更にベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含有してもよい高強度鋼板である。
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C :0.05〜0.25%、
Si:1.00%超2.5%以下、
Al:1.0%以下(0%を含まない)、
Si+Al:合計で3%以下、
Mn:0.5〜3%、
P :0.15%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含む)
を含み、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、
母相は、平均ビッカース硬さが250Hv以上のベイニティック・フェライトを全組織に対して面積率で80%以上含み、
第2相は、残留オーステナイトを全組織に対して面積率で5〜15%含み、該残留オーステナイト中のC濃度(CγR)は0.6質量%以上1.0質量%未満であり、
さらに、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含んでもよい組織を有する
ことを特徴とする温間加工性に優れた高強度鋼板である。
成分組成が、さらに、
Mo:1%以下 (0%を含まない)、
Ni:0.5%以下(0%を含まない)、
Cu:0.5%以下(0%を含まない)、
Cr:1%以下 (0%を含まない)の1種または2種以上
を含むものである請求項1に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板である。
成分組成が、さらに、
Ti:0.1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、
Zr:0.1%以下(0%を含まない)
の1種または2種以上
を含むものである請求項1または2に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板である。
成分組成が、さらに、
Ca :0.003%以下(0%を含まない)、および/または
REM:0.003%以下(0%を含まない)
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板である。
上述したとおり、本発明鋼板は、上記先行発明鋼板と同じくTRIP鋼の組織をベースとするものであるが、特に、残留オーステナイト中のC濃度(CγR)が0.6質量%以上1.0質量%未満に制御されている点で、1.0質量%以上に制御されている上記先行発明鋼板と相違している。
本発明における「ベイニティック・フェライト」とは、ベイナイト組織が転位密度の高いラス状組織を持った下部組織を有しており、組織内に炭化物を有していない点で、ベイナイト組織とは明らかに異なり、また、転位密度がないかあるいは極めて少ない下部組織を有するポリゴナル・フェライト組織、あるいは細かいサブグレイン等の下部組織を持った準ポリゴナル・フェライト組織とも異なっている(日本鉄鋼協会 基礎研究会 発行「鋼のベイナイト写真集−1」参照)。この組織は、光学顕微鏡観察やSEM観察するとアシキュラー状を呈しており、区別が困難であるため、ベイナイト組織やポリゴナル・フェライト組織等との明確な違いを判定するには、TEM観察による下部組織の同定が必要である。
γRは全伸びの向上に有用であり、このような作用を有効に発揮させるためには、全組織に対して面積率で5%以上(好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上)存在することが必要である。一方、多量に存在すると伸びフランジ性が劣化するので、上限を15%に定めた。
さらに、上記γR中のC濃度(CγR)は0.6質量%以上1.0質量%未満とする。前述したとおり、CγRは、TRIP(歪誘起変態加工)の特性に大きく影響するものであるが、従来は上記先行発明鋼板のように1.0質量%以上とすることを必須とし、CγRの含有量は多いほど好ましいとしていた。しかしながら、本発明では、該先行発明鋼板よりも低い範囲である、0.6質量%以上1.0質量%未満の範囲とすることで、変形時の応力誘起変態の駆動力が小さくなる温間(150〜350℃)でTRIP効果を最大限に発揮させてより確実に高延性化させることができる。好ましくは0.7質量%以上0.9質量%以下である。
本発明の鋼板は、上記組織のみ(ベイニティック・フェライトおよびγRの混合組織)からなっていてもよいが、本発明の作用を損なわない範囲で、他の異種組織として、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトを有していてもよい。これらの組織は本発明の製造過程で必然的に残存し得るものであるが、少なければ少ない程よく、全組織に対して面積率で6%以下、より好ましくは3%以下に制御することが推奨される。
ここで、各相の面積率、母相の平均ビッカース硬さ、および、γR中のC濃度(CγR)の各測定方法について説明する。
C:0.05〜0.25%
Cは、高強度を確保しつつ、所望の母相組織(ベイニティック・フェライト)および第2相組織(γR)を得るために必須の元素であり、このような作用を有効に発揮させるためには0.05%以上(好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.15%以上)添加する必要がある。ただし、0.25%超では溶接に適さない。
Al:1.0%以下(0%を含まない)、
Si+Al:合計で3%以下、
SiとAlは、γRが分解して炭化物が生成するのを有効に抑制する元素である。特にSiは、固溶強化元素としても有用である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを1.00%超添加する必要がある。好ましくはSiとAlを合計で1.3%以上、より好ましくは1.5%以上とする。ただし、SiとAlを合計で3%を超えて添加すると、母相組織の生成が阻害される他、熱間変形抵抗が高くなって溶接部の脆化を起こしやすくなり、さらには鋼板の表面性状にも悪影響を及ぼすので、その合計量の上限を3%とする。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。なお、Siは2.5%以下とし、Alは1.0%以下(0%を含まない)とする。
Mnは、固溶強化元素として有効に作用する他、変態を促進してベイニティック・フェライト組織の生成を促進する作用も発揮する。さらにはγを安定化し、所望のγRを得るために必要な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、0.5%以上添加することが必要である。好ましくは0.7%以上、より好ましくは1%以上である。ただし、3%を超えて添加すると、鋳片割れが生じる等の悪影響が見られる。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
Pは、所望のγRを確保するのに有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、0.03%以上(より好ましくは0.05%以上)添加することが推奨される。ただし、0.15%を超えて添加すると二次加工性が劣化する。より好ましくは0.1%以下である。
Sは、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させる元素である。好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下である。
Ni:0.5%以下(0%を含まない)、
Cu:0.5%以下(0%を含まない)、
Cr:1%以下 (0%を含まない)の1種または2種以上
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、γRの安定化や所定量の確保に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Mo:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Ni:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cu:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cr:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)を、それぞれ添加することが推奨される。ただし、MoおよびCrはそれぞれ1%、NiおよびCuはそれぞれ0.5%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはMo:0.8%以下、Ni:0.4%以下、Cu:0.4%以下、Cr:0.8%以下である。
Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、
Zr:0.1%以下(0%を含まない)の1種または2種以上
これらの元素は、析出強化および組織微細化効果があり、高強度化に有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Ti:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、Nb:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上))、Zr:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)を、それぞれ添加することが推奨される。ただし、いずれの元素もそれぞれ0.1%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはTi:0.08%以下、Nb:0.08%以下、V:0.08%以下、Zr:0.08%以下である。
REM:0.003%以下(0%を含まない)
CaおよびREM(希土類元素)は、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発明に用いられる希土類元素としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させるためには、それぞれ0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)添加することが推奨される。ただし、0.003%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくは0.0025%以下である。
まず、上記成分組成を満足する鋼を、オーステナイト(γ)域温度まで加熱し、均熱[具体的には850℃以上(好ましくは880℃以上、より好ましくは900℃以上)1000℃以下(好ましくは950℃以下)の温度で100〜1000秒間(好ましくは300〜600秒間)加熱]した後、30℃/s以上(好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃/s以上、特に好ましくは70℃/s以上)の平均冷却速度で、150℃以上(好ましくは200℃以上)350℃以下(好ましくは300℃以下)の温度域まで冷却(過冷)し、当該過冷温度で60秒間以下(好ましくは5〜50秒間)保持した後、5℃/s以上(好ましくは10℃/s以上)の平均加熱速度で、上記過冷温度より高く、かつ、350℃以上(好ましくは400℃以上)480℃以下(好ましくは450℃以下、より好ましくは430℃以下)の温度域まで再加熱し、当該温度域で60秒以上(好ましくは90秒以上)1000秒以下(好ましくは800秒以下、より好ましくは600秒以下)保持する(オーステンパ処理)。
上記過冷温度は低すぎると、マルテンサイト変態が進行してしまい、再加熱後のオーステンパ処理時にオーステナイト側への炭素の吐き出しが十分に行われないため、必要量の残留オーステナイトが確保できない。一方高すぎると、オーステンパ処理温度との差が小さくなるため、CγRを低下できない。また、上記過冷温度における保持時間は長すぎるとマルテンサイト変態が進行してしまうため、上記と同様に必要量の残留オーステナイトが確保できない。またこの保持時間は短くてもかまわないが、実操業における温度制御の再現性の観点からは、一定時間(5秒以上)の保持時間を設けることが好ましい。
また、本発明鋼板を温間加工する場合には、成形限界が高いので、本発明鋼板は複雑な形状を有する部品、たとえばセンターピラーを構成する部品やフロントピラーを構成する部品のような部品の加工にも好適に用いることができる。
さらに、本発明鋼板を温間加工して得られた温間成形部品は、その組織としてベイニティック・フェライトを多く含んでいるので降伏応力が高く、変形時の最大荷重が大きいという特徴を有し、このため、高い対荷重特性を発揮することが期待される。したがって、たとえばサイドシルを構成する部品やルーフレールを構成する部品のような部品に好適に用いることができる。
また、加工温度が熱間下降ほど高くないので、スケールは発生しにくく、塗装性も比較的良好であると考えられ、たとえばフロアクロスを構成する部品やルーフパネルを構成する部品のような部品に好適に用いることができる。
さらに加えて、本発明鋼板を温間加工して得られる温間成形部品中においても残留オーステナイトが適量残存するようにしておけば、加工後においても伸び特性が良好で、かつ、加工硬化係数も大きい状態にできるので、部品として使用している際にも破断しにくく、また吸収エネルギが大きいという特性を期待できる。たとえばフロントサイドメンバーを構成する部品やリアサイドメンバーを構成する部品のような部品にも好適に用いることができると考えられる。
本実施例では、成分組成を変化させた場合における機械的特性の影響について調査した。具体的には、表1に示す成分組成からなる供試鋼を真空溶製し、実験用スラブとした(熱延板の板厚は2.0mm)後、当該スラブを表2に示す製造条件で熱処理を施した。
本実施例では、鋼種No.9(鋼No.10のみ鋼種No.4を使用)の実験用スラブを用い、表4に示す各条件で鋼板を製造した(熱延板の板厚は2.0mm)後、加工温度(引張温度)を20℃から350℃まで種々変化させ、加工温度による機械的特性に及ぼす影響を実施例1と同様にして調査した。ちなみに上記の鋼種はいずれも、本発明で特定する成分組成を満足する鋼である。
Claims (4)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C :0.05〜0.25%、
Si:1.00%超2.5%以下、
Al:1.0%以下(0%を含まない)、
Si+Al:合計で3%以下、
Mn:0.5〜3%、
P :0.15%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含む)
を含み、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、
母相は、平均ビッカース硬さが250Hv以上のベイニティック・フェライトを全組織に対して面積率で80%以上含み、
第2相は、残留オーステナイトを全組織に対して面積率で5〜15%含み、該残留オーステナイト中のC濃度(CγR)は0.6質量%以上1.0質量%未満であり、
さらに、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含んでもよい組織を有する
ことを特徴とする温間加工性に優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Mo:1%以下 (0%を含まない)、
Ni:0.5%以下(0%を含まない)、
Cu:0.5%以下(0%を含まない)、
Cr:1%以下 (0%を含まない)の1種または2種以上
を含むものである請求項1に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Ti:0.1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、
Zr:0.1%以下(0%を含まない)の1種または2種以上
を含むものである請求項1または2に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Ca :0.003%以下(0%を含まない)、および/または
REM:0.003%以下(0%を含まない)
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の温間加工性に優れた高強度鋼板。
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