JP2011195517A - メチオニンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】二番晶における回収量を向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】次の工程(1)ないし(3)を包含するメチオニンの製造方法。
(1)反応工程:塩基性カリウム化合物の存在下に5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンを加水分解する工程、
(2)第一晶析工程:工程(1)で得られた反応液に二酸化炭素を導入することによりメチオニンを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程、および
(3)第二晶析工程:工程(2)で得られた母液に塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理した後、二酸化炭素を導入することによりメチオニン及び炭酸水素カリウムを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、5−(2−(メチルチオ)エチル)イミダゾリジン−2,4−ジオンの加水分解反応により、メチオニンを製造する方法に関する〔下記反応式(1)参照〕。メチオニンは、動物用飼料添加剤として有用である。
Figure 2011195517
メチオニンを製造する方法の1つとして、炭酸カリウムや炭酸水素カリウムの如き塩基性カリウム化合物を用いて、塩基性条件下に5−(2−(メチルチオ)エチル)イミダゾリジン−2,4−ジオンを加水分解する方法が知られている。この方法では、加水分解後の反応液に二酸化炭素を導入して晶析を行うことにより、メチオニンを結晶として分離、取得することができるが、このメチオニン分離後の母液には、溶解度分のメチオニンが残存しており、また上記塩基性カリウム化合物としてリサイクル可能な炭酸水素カリウムが含まれている。そのため、この母液は、上記加水分解反応にリサイクルするのがよいが、その際、全量をリサイクルすると不純物が蓄積するので、所定の割合でパージする必要がある。そして、このパージされた母液を廃水として処理することは、そこに含まれるメチオニンと炭酸水素カリウムのロスを招き、廃水処理の負担も大きいので、得策ではない。
そこで、上記母液から、メチオニンと炭酸水素カリウムをいわゆる二番晶として回収する方法が、種々報告されている。例えば、特公昭54−9174号公報(特許文献1)には、上記母液をメチルアルコールの如きアルコールやアセトンなどの水溶性溶媒と混合し、該混合液に二酸化炭素を導入して晶析を行うことが開示されている。また、特開昭51−1415号公報(特許文献2)には、上記母液を濃縮し、該濃縮液に二酸化炭素を導入して晶析を行うことが開示されている。さらに、特開平5−320124号公報(特許文献3)には、上記母液をイソプロピルアルコールと混合し、該混合液に二酸化炭素を導入して晶析を行うことが開示されている。さらには、特開2007−63141号公報(特許文献4)には、上記一番晶分離後の母液を濃縮後、165℃で加熱処理し、その後、イソプロピルアルコールと混合し、二酸化炭素を導入して晶析を行うことが開示されている。
特公昭54−9174号公報 特開昭51−1415号公報 特開平5−320124号公報 特開2007−63141号公報
上記の方法では、一番晶分離後の母液からの二番晶の回収量が満足できるものではなかった。
本発明の目的は、二番晶における回収量を向上させることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、一番晶分離後の母液中には、メチオニンジペプチド(メチオニン2分子の脱水縮合物)が比較的多く存在するため、晶析後の二番晶の回収量が低いことが判明した。この知見に基づき、一番晶分離後の母液に塩基性カリウムを添加して母液中のカリウム濃度が高い状態で加熱処理することにより、メチオニンジペプチドがメチオニンに効果的に分解され、晶析後の二番晶の回収量が向上することを見出し、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]次の工程(1)ないし(3);
(1)反応工程:塩基性カリウム化合物の存在下に5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンを加水分解する工程、
(2)第一晶析工程:工程(1)で得られた反応液に二酸化炭素を導入することによりメチオニンを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程、および
(3)第二晶析工程:工程(2)で得られた母液に塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理した後、二酸化炭素を導入することによりメチオニン及び炭酸水素カリウムを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程、
を包含することを特徴とするメチオニンの製造方法;
[2]塩基性カリウム化合物が、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび水酸化カリウムから選ばれる、上記[1]記載の製造方法;
[3]塩基性カリウム化合物の添加量が、母液100重量部に対してカリウム換算で0.25重量部以上である、上記[1]記載の製造方法;
[4]塩基性カリウム化合物添加後の母液のカリウム換算濃度が、30重量%以下である、上記[1]記載の製造方法;
[5]塩基性カリウム化合物の添加前に、工程(2)で得られた母液を濃縮する、上記[1]記載の製造方法;
を提供する。
本発明によれば、一番晶分離後の母液中のメチオニンジペプチドがメチオニンに効果的に分解されるので、二番晶の回収量を向上させることができる。
本発明では、5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンを原料に用い、これを塩基性カリウム化合物の存在下に加水分解することにより、メチオニンをカリウム塩として含有する反応液を得る〔反応工程(1)〕。原料の5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンは、例えば、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを、アンモニア及び二酸化炭素と、又は炭酸アンモニウムと反応させることにより、調製することができる〔下記反応式(2)又は(3)参照〕。
Figure 2011195517
Figure 2011195517
塩基性カリウム化合物としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。塩基性カリウム化合物の使用量は、5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオン1当量に対し、カリウムとして、通常2〜10当量、好ましくは3〜6当量である。また、水の使用量は、5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンに対し、通常2〜20重量倍である。
加水分解反応は、ゲージ圧力で0.5〜1MPa程度の加圧下に、150〜200℃程度に加熱して行うのがよい。反応時間は通常10分〜24時間である。
こうして得られる加水分解反応液からメチオニンを取り出すため、該反応液に二酸化炭素を導入して晶析を行い、得られたスラリーを、濾過やデカンテーションなどで析出物と母液とに分離することにより、析出したメチオニンを一番晶として取得する〔第一晶析工程(2)〕。
二酸化炭素の導入により反応液に二酸化炭素が吸収され、メチオニンのカリウム塩が遊離のメチオニンとなって析出する。
二酸化炭素の導入は、ゲージ圧力で通常0.1〜1MPa、好ましくは0.2〜0.5MPaの加圧下で行うのがよい。
晶析温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃である。また、晶析時間は、二酸化炭素が加水分解反応液に飽和して、メチオニンが十分に析出するまでの時間を目安にすればよいが、通常30分〜24時間である。
分離されたメチオニンは、必要に応じて、洗浄やpH調整などを行った後、乾燥することにより製品とすればよい。この乾燥は、微減圧下に、50〜120℃程度に加熱して行うのがよく、乾燥時間は通常10分〜24時間である。
メチオニン分離後の母液(以下、この母液を「一番晶母液」という)には、溶解度分のメチオニンが残存しており、また上記塩基性カリウム化合物としてリサイクル可能な炭酸水素カリウムが含まれている。このため、一番晶母液は、工程(1)の加水分解反応にリサイクルするのが望ましいが、一方で、原料中の不純物や加水分解時の副反応に起因する不純物、例えば、グリシン、アラニンの如きメチオニン以外のアミノ酸や、着色成分なども含まれているので、リサイクルにより、これら不純物が加水分解反応に持ち込まれることになる。そこで、一番晶母液のリサイクルは、全量ではなく、不純物が蓄積しない範囲で行う必要があり、その割合は、一番晶母液の全量に対し通常50〜90重量%、好ましくは70〜90重量%である。
一番晶母液のリサイクルは、該母液を濃縮し、この濃縮液をリサイクル液として行うのが望ましい。この濃縮により、一番晶母液から二酸化炭素を留去することができ、塩基性が高められた加水分解反応に有利なリサイクル液を得ることができる。また、この濃縮を100〜140℃の高温で行うことにより、一番晶母液中の炭酸水素カリウムが炭酸カリウムに変換される反応(2KHCO→KCO+HO+CO)が促進され、さらに塩基性が高められた加水分解反応に有利なリサイクル液を得ることができる。この濃縮は、常圧下、減圧下又は加圧下に行うことができるが、上記の如く高温で行うためには、加圧条件を採用するのが有効である。濃縮率は、通常1.2〜4倍、好ましくは1.5〜3.5倍であり、ここで、濃縮率とは、濃縮後の液重量に対する濃縮前の液重量の割合(濃縮前の液重量/濃縮後の液重量)を意味し、以下も同様である。
濃縮後の一番晶母液は、リサイクル用と第二晶析用に分けられるが、全量を第二晶析に付すこともできる。
第二晶析用の一番晶母液について、さらに二番晶としてメチオニンと炭酸水素カリウムを回収すべく、一番晶母液に塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理した後、二酸化炭素を導入して晶析を行い、得られたスラリーを濾過やデカンテーションなどで析出物と母液とに分離することにより、析出したメチオニンと炭酸水素カリウムを二番晶として回収する〔第二晶析工程(3)〕。
加熱処理により、一番晶母液中に含まれるメチオニンジペプチドがメチオニンに分解されるが、塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理することにより、母液中のカリウム濃度が高い状態で加熱処理が行われるので、メチオニンジペプチドをメチオニンに効果的に分解することができる。
塩基性カリウム化合物としては、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、中でも、水酸化カリウムが好ましい。
塩基性カリウム化合物の添加量は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、母液100重量部に対してカリウム換算で、好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは、水酸化カリウムの場合0.25重量部以上、炭酸カリウムの場合1.5重量部以上、炭酸水素カリウムの場合1.0重量部以上である。なお、塩基性カリウム化合物の添加は、後の晶析工程でのメチオニンの晶析効率が良好となる点、および経済性の点から、30重量部を超えないことが好ましい。
塩基性カリウム化合物添加後の母液のカリウム濃度(カリウム換算)は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、後の晶析工程でのメチオニンの晶析効率が良好となる点、および経済性の点から、30重量%以下、特に20重量%以下となるのが好ましい。なお、当該カリウム濃度の下限は、メチオニンジペプチドの効果的な分解の点から、0.5重量%以上となるのが好ましい。本発明では、カリウム濃度はイオン交換クロマトグラフィー(絶対検量線法)により測定される。
加熱処理は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、ゲージ圧力で0.5〜2MPa程度の加圧下に、好ましくは150〜200℃、より好ましくは170〜190℃の温度で行う。加熱処理温度が低すぎると、メチオニンジペプチドの分解が遅くなり、逆に、加熱処理温度が高すぎると、メチオニンの熱劣化が生じたり、反応器等に腐蝕が生じる場合がある。
加熱処理時間は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、好ましくは0.3〜10時間、より好ましくは1〜3時間である。加熱処理時間が短すぎると、メチオニンジペプチドの分解が遅くなり、逆に、加熱処理時間が長すぎると、メチオニンの熱劣化が生じたり、反応器等に腐蝕が生じる場合がある。
この加熱処理は、メチオニンに対するメチオニンジペプチド含有量が、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは5〜18重量%まで行うのがよい。
加熱処理後の一番晶母液では、母液中の塩基性が上昇して、第一晶析工程で変換された遊離のメチオニンがメチオニンのカリウム塩に戻ってしまう。よって、第二晶析工程でも、加熱処理後に二酸化炭素を導入することにより、メチオニンのカリウム塩を再び遊離のメチオニンに変換する。
二酸化炭素の導入は、第一晶析工程と同様、ゲージ圧力で通常0.1〜1MPa、好ましくは0.2〜0.5MPaの加圧下で行うのがよい。
晶析温度は通常0〜50℃、好ましくは5〜30℃である。また、晶析時間は、二酸化炭素が上記加熱処理した後の液に飽和して、メチオニンと炭酸水素カリウムが十分に析出するまでの時間を目安にすればよいが、通常10分〜24時間である。
二酸化炭素の導入後、晶析効率を高めるため、低級アルコールと混合することが好ましい。低級アルコールとしては、通常、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアルコールが用いられるが、中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールの如き、水と任意の割合で混和しうるものが好ましく、特にイソプロピルアルコールが好ましい。低級アルコールの使用量は、晶析に付される一番晶母液に対し、通常0.05〜5重量倍、好ましくは0.1〜2重量倍である。なお、一番晶母液と低級アルコールとの混合は、二酸化炭素の導入の前に行ってもよいし、二酸化炭素の導入と同時に行ってもよい。
回収された二番晶(メチオニンと炭酸水素カリウムの混合物)は、工程(1)の加水分解反応にリサイクルするのがよく、その際、リサイクル用の一番晶母液に溶解してリサイクルすると、操作性の点で好ましい。
二番晶分離後の母液(以下、この母液を「二番晶母液」という)には、未だメチオニンと炭酸水素カリウムが含まれている。そこで、本発明では、この二番晶母液から、さらに三番晶としてメチオニンと炭酸水素カリウムを回収すべく、二番晶母液を濃縮した後、二酸化炭素を導入して晶析を行い、得られたスラリーを濾過やデカンテーションなどで析出物と母液とに分離することにより、析出したメチオニンと炭酸水素カリウムを三番晶として回収する〔第三晶析工程(4)〕。
二番晶母液を濃縮することにより、三番晶の回収率を高めることができる。この濃縮は、リサイクルされる一番晶母液の濃縮と同様の条件で行うことができる。
濃縮後の二番晶母液では、母液中の塩基性が上昇して、第二晶析工程で変換された遊離のメチオニンがメチオニンのカリウム塩に戻ってしまう。よって、第三晶析工程でも、濃縮後の二番晶母液に二酸化炭素を導入することにより、メチオニンのカリウム塩を再び遊離のメチオニンに変換する。
二酸化炭素の導入は、第一晶析工程および第二晶析工程と同様、ゲージ圧力で通常0.1〜1MPa、好ましくは0.2〜0.5MPaの加圧下で行うのがよい。
第三晶析工程(4)では、二酸化炭素の導入前に、二番晶母液に塩基性カリウム化合物を添加することが好ましく、添加後、加熱処理することがさらに好ましい。
加熱処理により、二番晶母液中に含まれるメチオニンジペプチドがメチオニンに分解されるが、塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理することにより、母液中のカリウム濃度が高い状態で加熱処理が行われるので、メチオニンジペプチドをメチオニンに効果的に分解することができる。
塩基性カリウム化合物の添加は、カリウム濃度を効率よく高くできる点で、二番晶母液の濃縮後に行うのがよい。
塩基性カリウム化合物としては、第二晶析工程(3)において例示したものと同様のものが挙げられ、中でも、水酸化カリウムが好ましい。
塩基性カリウム化合物の添加量は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、母液100重量部に対してカリウム換算で、好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは、水酸化カリウムの場合0.25重量部以上、炭酸カリウムの場合1.5重量部以上、炭酸水素カリウムの場合1.0重量部以上である。なお、塩基性カリウム化合物の添加は、後の晶析工程でのメチオニンの晶析効率が良好となる点、および経済性の点から、30重量部を超えないことが好ましい。
塩基性カリウム化合物添加後の母液のカリウム濃度(カリウム換算)は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、後の晶析工程でのメチオニンの晶析効率が良好となる点、および経済性の点から、30重量%以下、特に20重量%以下となるのが好ましい。なお、当該カリウム濃度の下限は、メチオニンジペプチドの効果的な分解の点から、0.5重量%以上となるのが好ましい。本発明では、カリウム濃度はイオン交換クロマトグラフィー(絶対検量線法)により測定される。
加熱処理は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、ゲージ圧力で0.5〜2MPa程度の加圧下に、好ましくは150〜200℃、より好ましくは170〜190℃の温度で行う。加熱処理温度が低すぎると、メチオニンジペプチドの分解が遅くなり、逆に、加熱処理温度が高すぎると、メチオニンの熱劣化が生じたり、反応器等に腐蝕が生じる場合がある。
加熱処理時間は、母液中のメチオニンジペプチド濃度にもよるが、好ましくは0.3〜10時間、より好ましくは1〜3時間である。加熱処理時間が短すぎると、メチオニンジペプチドの分解が遅くなり、逆に、加熱処理時間が長すぎると、メチオニンの熱劣化が生じたり、反応器等に腐蝕が生じる場合がある。
この加熱処理は、メチオニンに対するメチオニンジペプチド含有量が、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%まで行うのがよい。
晶析温度は通常0〜50℃、好ましくは5〜30℃である。また、晶析時間は、二酸化炭素が上記加熱処理した後の液に飽和して、メチオニンと炭酸水素カリウムが十分に析出するまでの時間を目安にすればよいが、通常10分〜24時間である。
第三晶析工程は、例えば特開平4−169570号公報に示される如く、ポリビニルアルコールの存在下に行うのが好ましい。これにより、三番晶を脱液性の良い形状で析出させることができ、続く固液分離の際に母液が三番晶中に残存し難くなるので、回収される三番晶中の不純物含量を低減することができる。ポリビニルアルコールの使用量は、二番晶母液の加熱処理した後の液に対し、通常100〜5000重量ppm、好ましくは200〜3000重量ppmである。なお、第一晶析や第二晶析もポリビニルアルコールの存在下に行うことができ、特に第一晶析をポリビニルアルコールの存在下に行うと、製品粉体特性の良いメチオニンが得られるので、好ましい。
回収された三番晶(メチオニンと炭酸水素カリウムの混合物)は、二番晶と同様、工程(1)の加水分解反応にリサイクルするのがよい。なお、以上の工程(1)〜(4)は、全てを連続式で行ってもよいし、全ての回分式で行ってもよく、また、一部を連続式で行い、一部を回分式で行ってもよい。
次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、濃度ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
なお、実施例1〜3中のメチオニンジペプチドの分解率(%)は、以下の式により求めた。
メチオニンジペプチドの分解率(%)=〔(加熱処理前の2量体含量−加熱処理後の2量体含量)/加熱処理前の2量体含量〕×100
実施例1〜3中の母液については、メチオニンジペプチドの分解率が40%以上であると、良好にメチオニンジペプチドの分解が進行したと判断できる。
また、実施例1〜3中の、塩基性カリウム添加前後の母液のカリウム濃度は、イオン交換クロマトグラフィー(絶対検量線法)を用い、以下の条件にて測定した。
装置:陽イオンクロマトグラム(DIONEX社製)
キャリア液:メタンスルホン酸(1.73g/L)
流量:1.00mL/分
圧力:650〜1200PSI
実施例1
カリウム7.5重量部、メチオニン3重量部およびメチオニンジペプチド1重量部を含む一番晶母液500g(カリウム濃度7.47重量%)を1Lチタン製オートクレーブに入れ、表1に示す量の水酸化カリウムを添加し、180℃で1時間加熱を行った。1時間加熱後の母液中のメチオニンジペプチドの含量を液体クロマトグラフィーを用いて分析し、メチオニンジペプチドの分解率(%)を上記の式により求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2011195517
実施例2
実施例1において、水酸化カリウムの代わりに、表2に示す量の炭酸カリウムを添加したこと以外は、実施例1と同様の加熱を行った。1時間加熱後の母液中のメチオニンジペプチドの含量を液体クロマトグラフィーを用いて分析し、メチオニンジペプチドの分解率(%)を上記の式により求めた。その結果を表2に示す。
Figure 2011195517
実施例3
実施例1において、水酸化カリウムの代わりに、表3に示す量の炭酸水素カリウムを添加したこと以外は、実施例1と同様の加熱を行った。1時間加熱後の母液中のメチオニンジペプチドの含量を液体クロマトグラフィーを用いて分析し、メチオニンジペプチドの分解率(%)を上記の式により求めた。その結果を表3に示す。
Figure 2011195517
比較例1
母液への塩基性カリウム化合物の添加を行わなかった以外は、実施例1と同様に加熱を行った。1時間加熱処理後のメチオニンジペプチドの含量は、0.6重量部であり、メチオニンジペプチドの分解率は37%であった。
比較例2
カリウム7.5重量部、メチオニン3重量部およびメチオニンジペプチド1重量部を含む一番晶母液500g(カリウム濃度7.47重量%)を、温度110℃、圧力0.4kg/cmの条件で濃縮し、カリウム濃度7.76重量%とした母液(カリウム濃度8.50重量%)について、塩基性カリウム化合物の添加を行わずに、実施例1と同様に加熱を行った。1時間加熱処理後のメチオニンジペプチドの含量は0.6重量部であり、メチオニンジペプチドの分解率は39%であった。
本発明によれば、一番晶分離後の母液中のメチオニンジペプチドがメチオニンに加水分解されるので、二番晶の回収量を向上させることができる。

Claims (5)

  1. 次の工程(1)ないし(3);
    (1)反応工程:塩基性カリウム化合物の存在下に5−[2−(メチルチオ)エチル]イミダゾリジン−2,4−ジオンを加水分解する工程、
    (2)第一晶析工程:工程(1)で得られた反応液に二酸化炭素を導入することによりメチオニンを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程、および
    (3)第二晶析工程:工程(2)で得られた母液に塩基性カリウム化合物を添加して加熱処理した後、二酸化炭素を導入することによりメチオニン及び炭酸水素カリウムを析出させ、得られたスラリーを析出物と母液とに分離する工程、
    を包含することを特徴とするメチオニンの製造方法。
  2. 塩基性カリウム化合物が、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび水酸化カリウムから選ばれる、請求項1記載の製造方法。
  3. 塩基性カリウム化合物の添加量が、母液100重量部に対してカリウム換算で0.25重量部以上である、請求項1記載の製造方法。
  4. 塩基性カリウム化合物添加後の母液のカリウム換算濃度が、30重量%以下である、請求項1記載の製造方法。
  5. 塩基性カリウム化合物の添加前に、工程(2)で得られた母液を濃縮する、請求項1記載の製造方法。
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