JP2011185920A - バイオ用磁性ボールの製造方法ならびに磁性ボール及び磁性品 - Google Patents

バイオ用磁性ボールの製造方法ならびに磁性ボール及び磁性品 Download PDF

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Abstract

【課題】“微粒子”および“マイクロプレート・サンプルチューブ”に伴う制限・問題点を低減・解消する手段を提供すること。
【解決手段】バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、(i)少なくとも2つの磁性粒子と樹脂原料とを混合して粒子分散樹脂原料を調製する工程、(ii)粒子分散樹脂原料を成形に付して粒子分散成形品を得る工程、および、(iii)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程を含んで成り、磁性ボールが2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している、磁性ボールの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオ用磁性ボールの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、標的物質の分離、固定化、分析、抽出、精製または反応などの処理に適した磁性ボールの製造方法に関する。更に、本発明では、かかる製造方法より得られるバイオ用の磁性ボールおよび磁性品にも関する。
バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野においては、従来より、微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理に用いられる磁性ビーズが種々市販されている。これらの磁性ビーズは、いずれも粒径が数十nm〜数μmの範囲の微小なビーズである。“微小”であるために、ビーズの表面積が向上して標的物質の処理量増加や検出・分析感度の向上に効果的であり、かつ、“磁性”であるゆえに磁石を用いたビーズ捕集が可能であり自動化等のハンドリング性に優れている。しかしながら、微小な磁性ビーズでは磁石で集めた際に重なり合って隙間に溶液等を保持してしまう問題や、多数の微粒子であるために検出時に利用される光を遮ってしまう等の問題が懸念される。また、“非常に小さい”と“磁性体を含む”といった2つの制約によって、ビーズに色を付したり、ビーズの色を変更したりするのは困難を伴う。
一方、上記分野では、マイクロプレートやサンプルチューブ等の底面や壁面を用いた処理も広く行われている。つまり、マイクロプレートやサンプルチューブ等の底面や壁面を用いて、微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理を行っている(この場合、上述の“微小な磁性ビーズ”のような大きな表面積を必要としない用途で行われることが多い)。このようなマイクロプレートやサンプルチューブ等は、微小な磁性ビーズに関連した問題は生じないものの、あくまでも“面”を用いるために工程に応じて“面”を移動させたり容器の形状を変えたりすることができないために自由度が低く、適用範囲が限られている。
特開2005−166967号公報
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。特に、本願発明者は、微粒子やマイクロプレート・サンプルチューブ等における制限・問題点に対して従来技術の延長線で対処するのではなく、新たな観点により対処し、下記課題の解決を試みた。
本発明の課題は、“微粒子”および“マイクロプレート・サンプルチューブ”に伴う制限・問題点を低減・解消する手段を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、
(i)少なくとも2つの磁性粒子と樹脂原料とを混合して粒子分散樹脂原料を調製する工程、
(ii)粒子分散樹脂原料を成形に付して粒子分散成形品を得る工程、および
(iii)粒子分散成形品を球状・球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
を含んで成り、
磁性ボールが2〜200A・m/kg(2〜200emu/g)の飽和磁化および0〜10A・m/kg(0〜10emu/g)の残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している製造方法が提供される。
本発明の特徴の1つは、“樹脂成形”と“研削・研摩の機械加工”とを用いてバイオテクノロジー・ライフサイエンス分野で用いられる磁性品を製造することである。特に、本発明では、そのような“樹脂成形”と“研削・研摩加工”とを併用して粒径0.1mm以上かつ30mm以下の球状磁性品を製造する。
本明細書において「磁性ボール」とは、従前の微小な磁性ビーズ(例えば粒径が約5nm〜約10μm)よりも大きい磁性品のことを実質的に指している。例示すれば、本発明にいう「磁性ボール」は、粒径がサブミリ〜センチオーダー(例えば粒径が約0.1mm〜約1cm)の略球状の磁性品である。
また、本明細書において「球状」または「球形状」とは磁性ボールの中心または重心を通る平面で切断して得られるボール切断面が略円形となる態様を実質的に意味している。より具体的にいえば、磁性ボールのアスペクト比が1.0〜1.2の範囲にある形状を「球状」または「球形状」と称している。ここでいうアスペクト比は、磁性ボールの重心から測ったボール表面までの距離の最大値Lmaxと最小値Lminとの比(Lmax/Lmin)のことである。
更に、本明細書において「バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野」とは、従来にて粒径が数十nm〜数μm程度の微小ビーズを用いて標的物質の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等が行われていた分野のことを実質的に意味している。
本発明の製造方法では、粒子分散成形品の研削・研摩に先立って、粒子分散成形品を分割処理に付してよい。これにより、所望の研削・研摩加工を容易に実施することができる。
ある好適な態様では、できるだけ揃った粒径を得るべく、工程(iii)を実施する。例えば、得られることになる複数の磁性ボールにつき、その粒径の範囲が平均粒径の5%以内となるように粒子分散成形品を研削・研摩する。また、ある好適な態様では、全体的により均一な形状とするべく、得られることになる複数の磁性ボールにつき、真球度の粒径に対する割合が5%以内に収まるように粒子分散成形品を研削・研摩する。ここでいう「真球度」とは、JIS B 1501に定義されているものと実質的に同じである。
ある好適な態様では、磁性ボールに反応性官能基を導入する。好ましくは、磁性ボール表面に対して反応性官能基を導入する。反応性官能基の導入に際しては、例えば、工程(i)で用いる樹脂原料の少なくとも一部に「反応性官能基を有して成る樹脂」を用いる。また、工程(i)で用いる樹脂原料の少なくとも一部に「後処理により反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有して成る樹脂」を用い、工程(iii)で得られた磁性ボールに対して後処理を施して磁性ボール表面に反応性官能基を生成させてもよい。
ある好適な態様では、「標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基」を磁性ボール表面に固定化する。
本発明の製造方法では、磁性ボールの表面にコーティング処理/被覆処理を施してよい。例えば、「反応性官能基を有して成る樹脂」または「標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基を含んで成る樹脂」を磁性ボール表面にコートまたは被覆形成してよい。また、金属または金属化合物を磁性ボール表面にコートまたは被覆形成してもよい。更には、磁性ボールよりも小さい粒子または該小さい粒子と樹脂原料との混合物を磁性ボール表面にコートまたは被覆形成してもよい。
本発明の製造方法では、得られることになる磁性ボールが所望の色を呈するように処理できる。例えば、得られることになる磁性ボールの色が“白色”、“磁性粒子の色と白色との中間色”または“種々の有彩色”を帯びることになるように処理できる。かかる処理としては、例えば、工程(i)において顔料(即ち、無彩色あるいは有彩色の顔料)および/もしくは染料を付加的に樹脂原料に混合する、ならびに/または、工程(iii)の研削・研摩の後に塗料を磁性ボール表面にコートする。
ある好適な態様では、工程(iii)で形成された磁性ボールに対して加熱処理を施す。別の好適な態様では、工程(iii)の研削・研摩に際して、磁性ボールの表面粗さを調整する。
本発明では、上述した製造方法を通じて得られる磁性ボールも提供される。かかる本発明の磁性ボールは、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールであって、
磁性ボールが、樹脂部内にて少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る球形状複合体から成っており、その球形状複合体の粒径が0.1mm以上かつ30mm以下であり、また
磁性ボールの飽和磁化が2〜200A・m/kg(2〜200emu/g)となっており、磁性ボールの残留磁化が0〜10A・m/kg(0〜10emu/g)となっている(但し、飽和磁化値>残留磁化値)。
本発明の磁性ボールの特徴1つは、粒径が0.1mm以上かつ30mm以下となっておりバイオテクノロジー・ライフサイエンス分野で用いられる磁性品としては極めて大きいサイズを有していることである。
本発明の磁性ボールでは、好ましくは、球状体表面が研削面または研摩面を成している。
本発明の磁性ボールでは、好ましくは、球状体表面に「反応性官能基」または「標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基」が設けられている。
また、本発明の変更態様としては、非球形状の磁性品が提供される。このような磁性品は、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性品であって、
磁性品が、樹脂部内に少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る複合体から成っており、
磁性品の複合体サイズ(即ち、磁性品サイズ)が0.1mm以上かつ30mm以下であり、また
磁性品の飽和磁化が2〜200A・m/kgであり、磁性品の残留磁化が0〜10A・m/kg(但し、飽和磁化値>残留磁化値)となっている。かかる非球形状の磁性品では、かかる磁性品を成す複合体の形状が、好ましくは、楕円体形、円筒形、立方体形および多面体形から成る群から選択される形状となっている。また、好ましくは、磁性品を成す複合体の表面が研削面または研摩面を成している。
更に、本発明の変更態様として、1個の磁性粒子を用いた磁性ボールの製造方法も提供される。かかる磁性ボールの製造方法は、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、
(I)内部形状が球形となった金型の内部において、1つの磁性粒子を保持する工程、
(II)金型内部に樹脂を供して成形を行い、樹脂部内に磁性粒子を含んで成る粒子含有成形品を得る工程、および
(III)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
を含んで成り、
磁性ボールが2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している、磁性ボールの製造方法である。かかる製造方法の工程(I)では、1つの磁性粒子を1以上の支点によって金型内壁に接触しないように金型の内部に保持することが好ましい。
本発明に係る磁性ボールおよび磁性品は、“微粒子”と“マイクロプレート・サンプルチューブ”との双方の制限・問題点が効果的に低減・解消されている点で有利な効果を奏する。具体的には、本発明の磁性ボール・磁性品では、主に以下の効果が奏される:

・0.1mm〜30mmと大きい粒径ないしはサイズとなっているので、微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理に際して「磁石で集めた際に磁性ボールが重なり合い隙間に溶液等を保持してしまうといった問題」が減じられる。

・磁性ボールないしは磁性品を重ねずに用いれば、かかるボール・磁性品の半分の面で発光または反射した光は他のボール・磁性品によってさえぎられることがないので、微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理に際して“光の遮り”が減じられる。

・磁性粒子と原料樹脂とから成形法を通じて磁性ボール・磁性品を得るので、所望の色を磁性ボール・磁性品に容易に付すことができる。

・大きい粒径・サイズによるボール表面・磁性品表面が供されるので、“マイクロプレート・サンプルチューブ”の“面”を用いる態様に類する方法で微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理することができる。一方、“面”を用いているといえども、容器等に拘束されず磁場によって移動させたりできるので、“微粒子”に類する方法でも上記処理することができる。つまり、本発明の磁性ボール・磁性品は自由度が比較的高く、適用範囲がより広い。

・ある容器から別の容器に磁性ボール・磁性品を移動させる操作において、“全ての”磁性ボール・磁性品を移動させることができる。この点、従来技術の微粒子粉末の場合では一部の粒子が移動できずに元の容器に残留してしまう可能性があり、更には、非常に小さい微粒子の場合では残留しているか否かの目視確認が難しい。
総括的に述べれば、本発明の磁性ボール・磁性品は、“微粒子”および“マイクロプレート・サンプルチューブ”の特長を兼ね備えつつも、標的物質の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等への適用可能性を大きく広げてくれる。
図1は、本発明の製造方法で得られた磁性ボールを示した写真図である(実施例参照)。 図2は、図1の磁性ボールにネオジム磁石を近づけて、磁石に磁性ボールが吸着した状態を示した写真図である。 図3は、表面に凹凸形状が設けられた磁性ボール(即ち、表面が粗面化された磁性ボール)を示した写真図である。 図4(a)は、内部形状が球形となった金型の内部にて1つの磁性を保持する態様を模式的に示した図であり、図4(b)および図4(c)は、1つの磁性粒子を1以上の支点によって金型内壁に接触しないように金型の内部に保持する態様を模式的に示した図である。特に、図4(b)では、金型内壁に設けられた支持突起40a,40bが、磁性ボール20の凹部(点線部分)に嵌合することによって、磁性ボール20が金型内壁に接しないように保持され得る態様を示している。一方、図4(c)では、磁性ボール20の凹部(点線部分)に嵌り込んだ棒状部材50a,50bが型締めによって金型内に保持されることを通じて、磁性ボール20が金型内壁に接しないように保持され得る態様を示している。
本発明の製造方法を実施すると、2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化を有する粒径0.1mm〜30mmの磁性ボールを得ることができる。ここでいう「飽和磁化」の値は、例えば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量を測定することにより得られる数値のことを指している。そして、「残留磁化」の値は上記磁界を印加した後、磁界を取り除いたときの磁化量を測定することにより得られる数値のことを指している(尚、上記測定においては、磁性ボールは原型のまま測定しても、所定の形状に加工しても、あるいは砕いて粉状にして測定してもよい。砕いて粉状にした場合は粉体測定用の容器に収めて測定を行うことができ、磁性粒子が小さい場合に効果的である。また、原型のまま測定するためには専用の固定治具等が必要になるが、前処理がほとんど不要となる。既存の治具等を使用する場合等は、必要に応じて所定の形状に加工すればよい)。更に、磁性ボールの「粒径」についていえば、その数値は、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージ等を用いて測定される数値のことを指しており、その中でも特に“マイクロメータ”を用いて測定することによって得られる数値(ボールの中心・重心を通る各方向寸法のうち最大のもの)を指している。
磁性ボールの飽和磁化値が上記数値よりも大きいと、磁性粒子の鉄等の比率(即ち、磁性粒子の比率)が大きく樹脂成分の比率が小さくなることに起因して成形・研削・研磨が困難になる。つまり、製造が難しくなり得る。磁性ボールの飽和磁化は好ましくは3〜180A・m/kg(3〜180emu/g)であり、より好ましくは4〜160A・m/kg(4〜160emu/g)であり、更に好ましくは4〜100A・m/kg(4〜100emu/g)である(例えば、4〜60A・m/kgや4〜30A・m/kg程度であってもよい)。
一方、残留磁化値についていうと、磁性ボールの残留磁化が上記数値よりも大きいと、磁石等による磁場を除去した後にも磁性ボールに大きな磁化が残り、ボール同士がくっついたりすることによってボールのハンドリングに支障をきたしたりする。磁性ボールの残留磁化は好ましくは0〜8A・m/kg(0〜8emu/g)であり、より好ましくは0〜6A・m/kg(0〜6emu/g)である。なお、飽和磁化と残留磁化の定義から飽和磁化値>残留磁化値となる。
以下では、まず、本発明の製造方法について詳述し、その後、本発明の磁性ボールを説明する。
[本発明の製造方法]
本発明の実施に際しては、まず、工程(i)を実施する。即ち、少なくとも2つの磁性粒子と樹脂原料とを混合して粒子分散樹脂原料を調製する。この工程においては、最終的に飽和磁化が2〜200A・m/kg(2〜200emu/g)、残留磁化が0〜10A・m/kg(0〜10emu/g)となるように、混合する磁性粒子の種類や混合量を選択することになる。
工程(i)で用いる磁性粒子は、磁性ボールとして上記の飽和磁化および残留磁化が得られることになるのであれば、いずれの粒子であってよい。例えば、強磁性粒子、超常磁性粒子および/または軟磁性粒子等を好適に利用することができる。
強磁性粒子の材質は、特に制限はなく、鉄、コバルト、ニッケルなどの公知の金属ならびにそれらの合金および酸化物などであってよい。特に磁界に対する感応性に優れることから、強磁性酸化物粒子として強磁性酸化鉄を用いることが好ましい。かかる強磁性酸化鉄は、公知の種々のものを使用できるものの、特に化学的安定性に優れることから、マグヘマイト(γ−F e)、マグネタイト(Fe)、ニッケル亜鉛フェライト:Ni(1−X)ZnFe(0<X<1)およびマンガン亜鉛フェライト:Mn(1−x)ZnFe(0<X<1)から成る群から選択される少なくとも1種のフェライトであることが好ましい。これらの中でも大きな磁化量を有しており、磁界に対する感応性に優れるマグネタイト(Fe)が特に好ましい。超常磁性粒子としては、例えば粒径10nm以下の磁性酸化鉄粒子、FePt粒子やFe粒子を使用してよい。さらに、軟磁性粒子としては軟磁性体鉄粒子を用いてよく、そのような粒子の材質として、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、ソフトフェライト、アモルファス磁性合金および/またはナノクリスタル磁性合金等を使用してよい。
磁性粒子の粒径は最終的に得られることなる磁性ボールよりも小さければ特に問題はない。具体的には3nm以上かつ磁性ボールの粒径×0.9以下であることが好ましい。より好ましくは3nm以上かつ磁性ボールの粒径×0.8以下である。更に好ましくは5nm以上かつ磁性ボールの粒径×0.7以下である。なお、後の工程において、例えば射出成型等のように樹脂と共に流動したり、細い流路等を通る必要がある場合では、磁性粒子の粒径は“微細”であることが好ましい。このような場合、磁性粒子の粒径は好ましくは3nm以上かつ0.3mm以下であり、より好ましくは3nm以上かつ0.1mm以下であり、更に好ましくは5nm以上かつ0.05mm以下である。ここでいう「磁性粒子の粒径」とは、粒子の写真から得られる粒子平面画像上の重心を通る径を全方向に渡って(例えば2度刻みで)計測しその平均を求めたものを実質的に意味しており、複数の粒子から成る場合では「平均粒径」に相当するものである(「平均粒径」は、粒子の電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子の粒径を測定し、その数平均として算出した粒径を実質的に意味している)。例えば Media Cybernetics 社の画像解析ソフトウェア Image-Pro Plus により計測できる。
磁性粒子の形状自体は特に制限はないが、表面に突き出したりしないよう、長い形状や突起の大きな形状ではない方が好ましく、例えば重心から測った半径の最大値と最小値の比Rが1〜3程度の形状が好ましい。より好ましくは比Rが1〜2である。ちなみに、形状により保磁力が決る磁性材料の場合では、上述の残留磁化の範囲に収まるような比Rにすることが好ましい。
本発明では、工程(i)で用いる磁性粒子、即ち、樹脂原料と混合される磁性粒子は、“少なくとも2つ”である。磁性粒子の個数の上限は、磁性ボールとして上記の飽和磁化および残留磁化が得られるのであれば、特に制限はない。具体的にいえば、工程(i)で用いる磁性粒子の個数は、好ましくは2個以上、より好ましくは10個以上、更に好ましくは100個以上である。なお、磁性粒子の個数につき、その具体的な上限は、磁性ボールの粒径(その粒径から決まる体積)、磁性粒子の粒径(その粒径から決まる体積)、体積分率から決定することが好ましい。
上記のごとく磁性粒子の個数の上限値というものは、磁性ボールの粒径・磁性粒子の粒径や体積分率などに依存し得るものである。よって、あくまでも例示にすぎないが、例えば磁性粒子の粒径が約3nmであって磁性ボール粒径が約30mmとなる場合、磁性粒子の個数の上限値は約1×1021個(例えば1×1020個オーダー)となり得る。
磁性粒子の飽和磁化および残留磁化の値も、最終的な磁性ボールとして上記の飽和磁化および残留磁化が得られるのであれば、特に制限はない。例えば、磁性粒子の飽和磁化は、好ましくは2〜300A・m/kgであり、より好ましくは10〜200A・m/kgであり、更に好ましくは50〜100A・m/kgである。一方、磁性粒子の残留磁化は、好ましくは0〜25A・m/kg、より好ましくは0〜15A・m/kgであり、更に好ましくは0〜10A・m/kgである。
工程(i)において磁性粒子と混合される樹脂原料は、最終的に成形可能なものであれば特に制限はなく、使用する用途・成形法などに適したものを適宜選択してよい。換言すれば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれの樹脂原料を用いてもよく、常套的な樹脂成形に使用される原料であれば、本発明における“樹脂原料”として好適に用いることができる。本発明における樹脂原料として特に代表的なものを例示すれば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム等、および、これらの誘導体・共重合体から成る群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂原料である。
上述の樹脂原料は磁性粒子と混合されるが、樹脂原料中に磁性粒子が含まれることになるのであれば、いずれの混合法を採用してもよい。代表的な手法としては溶融混合を挙げることができる。つまり、樹脂原料を加熱などで溶融させ、溶融した樹脂原料に対して磁性粒子を加えることによって、磁性粒子を樹脂原料中に混ぜ込む。
「後の工程(ii)の成形」に際して、「磁性粒子と樹脂原料との混合」を行ってもよい。つまり、「磁性粒子と樹脂原料との混合」と「工程(ii)の成形」とを実質的に同時に行ってよい。たとえば、溶融混合では、押出成形機において樹脂を溶融させ混練することができる。また、例えば後の工程(ii)で射出成形を行う場合では、樹脂原料と磁性粒子とを射出成形機にかけることによって、成形に際して両者を混合することができる。その他、溶液として分散機等で混合したり、樹脂粉体および微小な磁性粒子で混合することもできる。
樹脂原料と磁性粒子とを混合することによって、樹脂原料中に磁性粒子が含まれた原料を得ることができる。つまり、磁性粒子が樹脂原料中に分散した粒子分散樹脂原料を得ることができる。粒子分散樹脂原料中の磁性粒子の含有量(体積%)は、磁性ボールとして最終的に上記飽和磁化および残留磁化を得ることができるのであれば特に制限はなく、例えば0.1〜70体積%程度であってよい(粒子分散樹脂原料の体積基準)。
工程(i)に引き続いて、工程(ii)を実施する。即ち、粒子分散樹脂原料を成形プロセスに付して粒子分散成形品を得る。かかる成形にはいずれの手法を用いてもよい。代表的には、射出成形、押出成形または圧縮成形等を行うことによって粒子分散成形品を得る。
また、樹脂原料として重合性モノマーあるいは重合性モノマーと重合体の混合物を用い、工程(ii)において塊状重合を行うことによって粒子分散成形品を得てもよい。
成形によって得られる粒子分散成形品の形状としては、最終形状に近い“球形”が好ましい。しかしながら、それに限定されず、“球形”への研削・研磨が可能となるのであれば、粒子分散成形品の形状はいかなる形状であってもよい。例えば粒子分散成形品が円筒形、多面体形または出っ張りがある形状等を有していてもよい。
粒子分散成形品の形状については、それが分割されることによって「球形への研削・研磨が可能となる形状」を有することになるのであれば、特に制限はない。かかる場合、粒子分散成形品は、例えば、棒状または板状等の形状を有していてよい。粒子分散成形品の分割は、粒子分散成形品を別個のサブ成形品に分けることができるのであれば、どのような手段・手法で分割を行ってもよい。典型的には、切削刀を備えた工作機械(例えば鋸盤)を用いてよく、あるいは、加熱より切断を行うレーザー照射装置などを用いてもよい。
工程(ii)に引き続いて、工程(iii)を実施する。即ち、粒子分散成形品(または粒子分散成形品の分割処理により得られたサブ成形品)を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを得る。
研削・研摩には、機械加工分野において常套的に用いられている研削機および/または研摩機を使用してよい。例えば、研削機・研摩機として、フラッシング機、研磨機・研磨盤(例えば鋼球研磨機)、ポリッシュ装置またはラップ盤等を使用することができる。
かかる工程(iii)の研削・研摩に際しては磁性ボールの粒径を調整することができる。特に本発明では磁性ボールの粒径が約0.1mm以上かつ約30mm以下となるように研削・研摩できる。このような粒径範囲以下では微小な磁性ビーズに対する優位性が出にくくなる一方、このような粒径範囲以上では利用者のハンドリングおよび製造者の製造性のいずれにおいてもメリットがほとんど生じなくなる。工程(iii)の研削・研摩により得られる磁性ボールの粒径についていえば、より好ましくは約0.5mm以上かつ約20mm以下であり、さらに好ましくは約1.1mm以上かつ約10mm以下である(例えば約2.5mm以上かつ約10mm以下である)。
複数の磁性ボールを得る場合、できるだけ粒径を揃えることが好ましい。これにより磁性ボールの用途(即ち、微量試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等)における精度が向上し得る。例えば、複数の磁性ボールの粒径の範囲は、その平均粒径の±5%以内であることが好ましい。これを超えると標的物質のボール毎の吸着量や検出値のバラツキが大きくなる。より好ましくは平均粒径の±1%以内であり、さらに好ましくは平均粒径の±0.5%以内である。
更にいえば、磁性ボールの形状は、吸着、反応、検出等の均一性を高くし、また容器や隣接するボールとの接触を小さくするために、真球形状に近いことが好ましい。実質的には真球度(ボールの表面に外接する最小球面とボール表面の各点との半径方向の距離の最大値)の粒径に対する割合が5%以下であることが好ましい。より好ましくは真球度の粒径に対する割合は2%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0.5%以下である。
以上の工程(i)〜(iii)を経ることによって、約2A・m/kg〜約200A・m/kgの飽和磁化および約0〜約10A・m/kgの残留磁化を有した粒径0.1mm〜30mmの磁性ボールを最終的に得ることができる。
得られた磁性ボールに対しては反応性官能基を導入してよい。例えば、磁性ボール表面に反応性官能基を導入してよい。これにより特定の標的物質を吸着したり(“化学的な吸着”および“物理的な吸着”のいずれの態様も含む)、「特定の標的物質に対して吸着性がより高い別の物質」を固定することができるようになる。これによって、磁性ボールが、標的物質の分離、固定化、分析、抽出、精製または反応などの処理にとってより好適なものとなる。
ここで、本明細書で用いる「標的物質」とは、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野における試料の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の種々の対象になり得る物質を実質的に意味している。具体的な標的物質として、例えば、核酸、蛋白質(例えばアビジンおよびビオチン化HRPなども含む)、糖、脂質、ペプチド、細胞、真菌、細菌、酵母、ウィルス、糖脂質、糖蛋白質、錯体、無機物、ベクター、低分子化合物、高分子化合物、抗体または抗原等を挙げることができる。ちなみに、「試料」とは、例えば、ヒト又は動物の尿、血液、血清、血漿、精液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト又は動物の臓器、毛髪、皮膚、粘膜、爪、骨、筋肉又は神経組織等の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;便懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;培養細胞又は培養組織の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;ウィルスの懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;菌体の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;土壌懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;植物の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;食品・加工食品懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;排水等である。
磁性ボールに導入する反応性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、トシル基、スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、チオエーテル基およびジスルフィド基などの硫化物官能基、アルデヒド基、アジド基、ヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、イミドエステル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ヨードアセチル基、カルボキシル基のハロゲン置換体、ならびに、二重結合から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であることが好ましい。
上述のような反応性官能基はいかなる手法によって導入してもよい。代表的な例を以下に挙げる:

a)樹脂原料の一部または全部として、上記の反応性官能基を有する樹脂を用いる。つまり、工程(i)にて磁性粒子が混入される樹脂原料の少なくとも一部として「反応性官能基を有する樹脂」を用いる。

b)樹脂原料の一部または全部として、後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有する樹脂を用いる。つまり、工程(i)にて磁性粒子が混入される樹脂原料の少なくとも一部として「後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有する樹脂」を用いる。後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造としては、エステル基、二重結合、ハロゲン、ジスルフィド基、ベンゼン環または3級アミノ基等を挙げることができる。
磁性ボール表面には特定の物質に対して吸着性を有する物質を固定してもよい。これによっても、標的物質の分離、固定化、分析、抽出、精製または反応など種々の処理にとって好適な磁性ボールを得ることができる。換言すれば、標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基を磁性ボール表面に固定化してよい。
“固定化する物質または官能基”は、磁性ボールの表面に疎水性相互作用、静電的相互作用、水素結合等によって物理吸着させてもよいし、先に例示したように導入した反応性官能基に対して化学的な反応または物理的な吸着を介して固定化してもよい。また、固定化した物質に対して更に別の物質を固定化してもよい。
“固定化する物質または官能基”として代表的なものを列挙すると、以下のようなものが挙げられる。
(1)標的物質との間に働く親和力が、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用または双極子相互作用に起因する「親和性を呈する物質または官能基」の例
シリカ、活性炭、スルホン酸基、カルボキシル基、ジエチルアミノエチル基、トリエチルアミノエチル基、フェニル基、アルギニン、セルロース、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、クラウンエーテルもしくはπ電子を有する環状化合物、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(2)標的物質との間に働く親和力が疎水相互作用に起因する「親和性を呈する物質または官能基」の例
アルキル基、オクタデシル基、オクチル基、シアノプロピル基もしくはブチル基またはフェニル基、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(3)標的物質との間に働く親和力が水素結合に起因する「親和性を呈する物質または官能基」の例
DNA、RNA、Oligo(dT)、キチン、キトサン、アミロース、セルロース、デキストリン、デキストラン、プルラン、多糖、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)もしくはβ-グルカン、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(4)標的物質との間に働く親和力が配位結合に起因する「親和性を呈する物質または官能基」の例
イミノジ酢酸、ニッケル、ニッケルイオン、ニッケル錯体、コバルト、コバルトイオン、コバルト錯体、銅、銅イオンもしくは銅錯体、または、それらの酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(5)標的物質との間に働く親和力が生化学的相互作用に起因する「親和性を呈する物質または官能基」の例(生化学的相互作用:生体分子に関する相互作用を含むものであって、抗原・抗体反応、リガンド・レセプター結合、水素結合、配位結合、疎水相互作用、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用、双極子相互作用およびファンデルワールス力などが単独または二種以上で連係して働く相互作用)
抗原、抗体、レセプター、リガンド、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンニュートラアビジン、シリカ、活性炭、ケイ酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、アルブミン、アミロース、セルロース、レクチン、プロテインA、プロテインG、Sタンパク質、デキストリン、デキストラン、プルラン、多糖、カルモジュリン、ニッケル、ニッケルイオン、ニッケル錯体、コバルト、コバルトイオン、コバルト錯体、銅、銅イオン、銅錯体、ゼラチン、N-アセチルグルコサミン、イミノジ酢酸、アミノフェニルホウ酸、エチレンジアミン二酢酸、アミノベンズアミジン、アルギニン、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ジエチルアミノエチル基、トリエチルアミノエチル基、ECTEOLA-セルロース、フィブロネクチン、ビトロネクチン、アルギニン-グリシン-アスパラギン(RGD)酸配列を含むペプチド、ラミニン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、コラーゲン、コンカナバリンA、アデノシン5'リン酸(ATP) 、ADP、ATP、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、アクリジン色素、アプロチニン、オボムコイド、トリプシンインヒビターやプロテアーゼインヒビター等のインヒビター類、ホスホリルエタノールアミン、フェニルアラニン、プロタミン、シバクロンブルー、プロシオンレッド、ヘパリン、グルタチオン、DIG、DIG抗体、DNA、RNA、Oligo(dT)、キチン、キトサン、β-グルカン、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ヒアルロン酸、エラスチン、セリシンもしくはフィブロイン、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
上述の分類から分かるように、本明細書で用いる「親和性を呈する」とは、“標的物質”と“磁性ボールに固定化される物質または官能基”との間に、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用、双極子相互作用、疎水相互作用、生化学的相互作用、水素結合または配位結合などがもたらされることを実質的に意味している。磁性ボールに固定化される物質または官能基の種類によっては、上述の親和性を2種以上兼ね備える場合があり、上述の分類で重複する物質または官能基が存在する場合がある点に留意されたい。また、上述の分類に必ずしも限定される必要はなく、標的物質に対して作用し、標的物質を磁性ボール表面またはその近傍に存在させる機能を有するものであれば、いずれの物質または官能基を磁性ボールに固定化させてもよい(一例を挙げるとすると、標的物質との相補的な形状に起因して親和性を呈するものも考えられる)。
なお、特定の物質に対して吸着性を有する物質以外の表面部分が存在する場合には、その部分に非特異な吸着を生じる可能性があり、好ましくない。このため、そのような特定の物質に対して吸着性を有する物質以外の表面部分に非特異吸着を生じにくい官能基や物質を固定することは効果的である。非特異吸着を生じにくい官能基や物質として特に代表的なものを例示すれば、水酸基、ポリエチレングリコール鎖、ホスホリルコリン基、カルボキシベタイン基、スルホベタイン基から成る群から選択される少なくとも1種類以上の官能基または物質である。これらは、前記の反応性官能基や特定の物質に対して吸着性を有する物質と同様の手法で固定すればよい。
これまで挙げたような“反応性官能基を有する態様”、“後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有する態様”、または“特定の物質に対して吸着性を有する態様”などについては、コーティング処理に応用することができる。つまり、上述のような態様を含む樹脂を磁性ボール形状形成後にボール表面にコートしてもよい。例えば、反応性官能基、後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造または特定の物質に対して吸着性を有する物質を有するモノマーを単独重合または他のモノマーと共重合した樹脂を、予め形状を形成した磁性ボールの表面にコートする。本発明では、このようなコート処理によって、磁性ボール表面に0.01〜100μm程度の被膜層を形成することが好ましい。
コート法としては、種々のマイクロカプセル化の手法を用いることができる。コートに用いられる樹脂の溶液または溶融体に磁性ボールを浸漬してよく、あるいはこれらを塗布、噴霧等後に乾燥または冷却してもよい
“コート”に用いることができる「反応性官能基を有する樹脂」を例示すれば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合体)、および、これらの変性物または共重合体から成る群から選択される少なくとも1種以上の合成高分子化合物を挙げることができる。更には、カルボキシアルキルセルロースもしくはアルギン酸ナトリウム等の半合成高分子化合物、または、キトサン、キチン、デンプン、ゼラチンもしくはアラビアゴム等の天然高分子化合物等のポリマーであってもよい。
また、“コート”に用いることができる「後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造を有する樹脂」を例示すれば、上記反応性官能基を有する樹脂に加えて、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、および、これらの変性物または共重合体から成る群から選択される少なくとも1種以上の合成高分子化合物を挙げることができる。更には、ヒドロキシアルキルセルロース等の半合成高分子化合物や天然高分子化合物等のポリマーであってもよい。
同様に“コート”に用いることができる「特定の物質に対して吸着性を有する物質を持った樹脂」を例示すれば、“標的物質に対して吸着性を有する物質”を上記のような樹脂の官能基に結合したり、そのような物質に重合性の官能基を導入して重合して得られた樹脂である。
本発明の製造方法では、磁性ボールに対して種々の処理を施すことができる。これについて詳述する。
例えば、磁性ボール形状形成後(即ち、工程(iii)の研削・研磨後)に必要に応じて加熱処理を施してもよく、それによって、有利な効果を得ることができる場合がある。例えばボール表面における微細な凹凸や変形を抑制したい場合、ボール表面に露出した磁性粒子を樹脂で覆いたい場合等に加熱処理は有効である。加熱温度は、樹脂のガラス転移温度Tg付近かそれを少し越える程度の温度が好ましく、具体的には樹脂原料のガラス転移温度Tgの−20℃〜+30℃が好ましい。それより低温では上記効果が得られにくく、それより高温では形状を維持するのが難しくなる。さらに好ましくは樹脂原料のガラス転移温度Tgの−10℃〜+20℃であり、より好ましくは−5℃〜+10℃である。
また、ボール表面に露出した磁性粒子を覆い隠したい場合や露出した磁性粒子の表面も有効に利用したい場合には、上記の樹脂等で覆う手法の他に、磁性粒子表面を他の物質で覆うことも有効である。例えば、磁性体表面に吸着、結合しやすい物質で処理してよい。例えば種々のカップリング剤、吸着性の強い界面活性剤等を用いて磁性粒子表面を覆ってよく、これによって、磁性体表面に親和性を供したり、磁性体表面に官能基を導入したりすることが可能となる。
また、磁性ボール形状形成後に洗浄処理を施してもよく、それによって、有利な効果を付加できる場合がある。例えばボール表面の汚染を除去したい場合、ボール表面に露出した剥離しやすい磁性粒子を予め除いておきたい場合等では洗浄処理は有効である。洗浄方法としては、洗浄液中への浸漬、撹拌、超音波付加、ブラシ状のもの等による擦り、高圧水使用等、公知の洗浄方法が利用可能である。洗浄処理に際しては界面活性剤、溶剤、酸、アルカリ等を併用することが効果的となり得る。
本発明に係る磁性ボールについては、磁性粒子と異なる色に着色することができる。これにより、磁性ボールを容易に識別することが可能となったり、発色や発光等の変化の検出性を高めたりできる。例えば、“白色”、“磁性粒子の色と白色との中間色”または“種々の有彩色”に磁性ボールを着色すると、発色や発光等の変化の検出性が効果的に向上し得る。また、種類の異なる磁性ボールを色によって識別することも可能になる。ちなみに、本発明に係る磁性ボールは、現時点で常套的に使用されている微小な磁性ビーズ(例えば粒径が約5nm〜約10μm)よりも大きい磁性体であるので、着色が比較的に容易となっている点に留意されたい。
制限するわけではないが、着色法としては以下の手法を挙げることができる:

(1)白色顔料もしくは着色顔料、または染料を工程(i)の樹脂原料に混入させる。
(2)磁性ボール形状形成後に白色塗料または着色塗料をボール表面にコートする。
本発明の製造方法では、研削・研磨後に金属または金属化合物をボール表面にコート(即ち、被覆)してもよい。この場合でも、磁性ボールの用途において発色や発光等の変化の検出性が向上し得る。用いることができる金属・金属化合物は、金、銀、銅および白金から成る群から選択される少なくとも1種の金属、またはそれら金属の化合物などである。金、銀、銅、白金等では、チオールやジスルフィド等が効果的に吸着する。従って、前述のように反応性官能基や、後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造や、または特定の物質に対して吸着性を有する物質がこれらの官能基を有するのであれば、ボール表面に容易に導入できる。
本発明の製造方法では、研削・研摩によって磁性ボールを得ているので、研削・研摩の調整によって真球度の高い磁性品を比較的容易に得ることができる。また、そのような研削・研摩の調整によってボール表面を所望状態にすることもできる。つまり、研削・研摩に際して、磁性ボールの表面粗さを調整することができる。例えば、ボール表面に凹凸形状を設けることができるので(即ち、磁性ボール表面に粗面化を施すことができるので)、表面積の増大に起因して各種処理の効率を高めることができたり、あるいは、光の乱反射により発光の検出性を高めたりできる。
研削・研磨に際して磁性ボール表面に凹凸形状を設ける手法は、特に制限されないが、以下の(1)および(2)を挙げることができる:

(1)研削・研磨を、粗い研削・研磨に留めておく。
(2)研削・研磨後、粗い研削または研磨を付加的に施す。

より具体的に例示する。研削・研磨加工において研削・研磨剤粒子の粒径を段階的に小さくしていくことによって粗面から平滑面へと仕上げることができるが、粗い粒子を用いた処理で研削・研磨加工を終了することによって、磁性ボール表面に凹凸形状を設けることができる。あるいは、平滑加工剤の粒子よりも粗い粒子を用いて研削・研磨処理を施すことによっても磁性ボール表面に凹凸形状を設けることができる。
尚、磁性ボールよりも小さな粒子またはかかる小さな粒子と樹脂原料の混合物を表面にコートすることによっても、ボール表面に凹凸形状を設けることができる。ここで用いる粒子としては、例えば樹脂粒子、セラミック粒子、金属粒子およびこれらの複合粒子から成る群から選択される少なくとも1種以上の粒子(粒径:0.1〜1000μm程度)を用いることができる。また、ここで用いる樹脂原料は、工程(i)で用いる樹脂原料と同様の樹脂原料であってよい。
[本発明の磁性ボール]
次に、本発明の磁性ボールについて説明する。かかる磁性ボールは、上述した製造方法によって得られるものである。つまり、本発明の磁性ボールは、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールであって、樹脂部内にて少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る球形状複合体から成っており、かかる球形状複合体の粒径が0.1mm以上かつ30mm以下であり、磁性ボール全体としての飽和磁化が2〜200A・m/kgであり、残留磁化が0〜10A・m/kgとなっている(但し、飽和磁化値>残留磁化値)。
本発明の磁性ボールは、研削・研磨によって得られるものであるため、ボール表面が研削面または研摩面を有している。また、本発明の磁性ボールは、標的物質の抽出、精製、反応、検出、分析または合成等の処理に用いられるものであるため、好ましくはボール表面に「反応性官能基」または「標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基」が固定化されている。
その他、本発明の磁性ボールは種々の特徴を有しているが、これについては上記[本発明の製造方法]で言及しているので、重複を避けるため説明を省略する。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
(ケースA)
例えば、上述の説明では、工程(i)で用いる磁性粒子は“少なくとも2つ”であったが、必ずしもこれに限定されない。つまり、1個の磁性粒子を用いて磁性ボールを製造してもよい。このような態様では磁性ボールの製造方法は、好ましくは、
(i)1つの磁性粒子と樹脂原料とを混合して粒子含有樹脂原料を調製する工程、
(ii)粒子含有樹脂原料を成形に付して粒子含有成形品を得る工程、および
(iii)粒子含有成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
を含んで成る。このような製造方法で得られる磁性ボールは、樹脂成分中に1個の磁性粒子を含んだ構成となっており、2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化を有している(但し、飽和磁化値>残留磁化値)。
尚、1個の磁性粒子と樹脂成分とから磁性ボールを得ることができるのであれば、製造方法は特に上記態様に限定されない。例えば、以下のような態様も考えられる:

・1ないしは複数の球状ないしは半球状のキャビティ部を備えた金型に対して磁性粒子を予め仕込んでおく。そして、磁性粒子が仕込まれた金型キャビティ部に対して樹脂原料を供して成形を行う。

・金型キャビティ部に仕込まれた磁性粒子につき、外部から支持部材で支えておく。そして、磁性粒子が支持された状態となった金型キャビティ部に対して樹脂原料を供して成形を行う。かかる場合、具体的には、以下の工程(I)〜(III)を実施し(図4参照)、それによって、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールであって、2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有する磁性ボールを製造する:

(I)内部形状が球形となった金型の内部において、1つの磁性粒子を保持する工程(好ましくは、1つの磁性粒子を1以上の支点によって金型内壁に接触しないように保持する)、
(II)金型内部に樹脂を供して成形を行い、樹脂部内に磁性粒子を含んで成る粒子含有成形品を得る工程、および
(III)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程。

(※ ちなみに、上記に示すような工程(I)〜(III)は、磁性粒子が1個の場合に限定されず、複数個の場合であっても同様に実施でき得る点に留意されたい)

ここで、1個の磁性粒子と樹脂成分とから成る磁性ボールの場合では、特に、磁性粒子の粒径が『3nm以上』かつ『|磁性ボール粒径−10μm|以下』であることが好ましい。より好ましくは『3nm以上』かつ『|磁性ボール粒径−100μm|以下』であり、更に好ましくは『5nm以上』かつ『|磁性ボール粒径−1000μm|以下』である。

また、1個の磁性粒子と樹脂成分とから成る磁性ボールの場合では、特に、磁性ボールに対する磁性粒子の含有量(体積%)は、例えば0.1〜98体積%程度となり得る(粒子分散樹脂原料の体積基準)。
(ケースB)
また、上述の説明では、磁性粒子の形状は“球形状”であったが、必ずしもこれに限定されない。つまり、使用用途によっては、以下のような磁性品であってもよく、かかる磁性品であっても上述した本発明の磁性ボールと同様の効果を奏し得る:

バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性品であって、その磁性品が、樹脂部内に少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る複合体から成っており、かかる複合体のサイズが0.1mm以上かつ30mm以下であり、また、磁性品全体としての飽和磁化が2〜200A・m/kg、残留磁化が0〜10A・m/kg(但し、飽和磁化値>残留磁化値)となっている。この磁性品であっても、表面の一部または全部が樹脂となっており、また、表面が研削面または研摩面を成し得る。

上記磁性品の形状としては、楕円体形、円筒形、立方体形、多面体形あるいはそれらを組み合わせたような形状を挙げることができる(換言すれば、磁性品の平行投影図が、楕円形、矩形、正方形、多角形あるいはそれらを組み合わせたような形状となっていてよい)。尚、楕円体形、円筒形、立方体形および多面体形の少なくとも2つ以上を組み合わせた形状、あるいは、それらと球形とを相互に組み合わせた形状についていうと、少なくとも1つの方向における磁性品の平行投影図が円形となるものが好ましい。なぜなら、回転等の諸操作を磁性品に容易に与えることができるからである。

上記における「磁性品を成す複合体の“サイズ”」とは、その磁性品の重心を通る最短寸法が0.1mm以上かつ該重心を通る最大寸法が30mm以下の範囲となっているものを実質的に意味している。換言すれば、ある1つの方向における磁性品の平行投影図の形状につき、その形状の重心を通る最短寸法が0.1mm以上かつ最大寸法が30mm以下の範囲となっている。
最後に、確認的に、本発明は下記の態様を有するものであることを付言しておく。
[第1態様]:磁性を有する粒子を混合した樹脂を成形した後、必要であればそれを分割し、さらに研削および/または研磨することによって、粒径が0.1mm以上かつ30mm以下、飽和磁化が2〜200A・m/kg(2〜200emu/g)、残留磁化が0〜10A・m/kg(0〜10emu/g)(ただし飽和磁化>残留磁化)の球体にすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第2態様]:上記第1態様において、粒径の範囲を平均粒径の5%以内にすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第3態様]:上記第1態様において、真球度の粒径に対する割合を5%以内にすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第4態様]:上記第1態様において、磁性ボールの表面に反応性官能基を導入することを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第5態様]:上記第4態様において、樹脂の一部または全部として反応性官能基を有する樹脂を用いることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第6態様]:上記第4態様において、樹脂の一部または全部として「後処理によって反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有する樹脂」を用い、磁性ボール形状形成後に後処理することによってボール表面に反応性官能基を生成させることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第7態様]:上記第1態様において、ボール表面に特定の物質に対して吸着性を有する物質を固定することを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第8態様]:上記第4または第7の態様において、磁性ボール形状形成後に反応性官能基を有するかまたは特定の物質に対して吸着性を有する物質を含んだ樹脂を磁性ボール表面にコートすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第9態様]:上記第1〜第8の態様において、磁性ボール形状形成後に加熱処理を行うことを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第10態様]:上記第1〜第9の態様のいずれかにおいて、磁性粒子と異なる色に着色した磁性ボールを得ることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第11態様]:上記第10態様において、“白色”または“磁性粒子の色と白色の中間色”に着色したことを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第12態様]:上記第10態様において、白色または着色した顔料粒子、または染料を樹脂に混合することを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第13態様]:上記第10態様において、磁性ボール形状形成後に白色塗料または着色塗料をボール表面にコートすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第14態様]:上記第1〜第4または第7の態様のいずれかにおいて、磁性ボール形状形成後に金属または金属化合物をボール表面に被覆することを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第15態様]:上記第1態様において、ボール表面に凹凸形状を設けることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第16態様]:上記第15態様において、研削・研磨の工程を、粗い研削または研磨に留めるか、または、研削・研磨後、粗い研削または研磨を施すことを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第17態様]:上記第15態様において、磁性ボールよりも小さな粒子または該粒子と樹脂との混合物をボール表面にコートすることを特徴とする磁性ボールの製造方法。
[第18態様]:バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールであって、樹脂成分中に磁性粒子を含んで成る球形状複合体から成り、
球形状複合体の粒径が0.1mm以上かつ30mm以下、飽和磁化が2〜200A・m/kg、残留磁化が0〜10A・m/kg(但し、飽和磁化値>残留磁化値)となっている磁性ボール。
[第19態様]:上記第18の態様において、球体表面が研削面または研摩面を成していることを特徴とする磁性ボール。
[第20態様]:上記第18または19の態様において、球体表面に「反応性官能基」または「標的物質に対して吸着性を有する物質または官能基」が設けられていることを特徴とする磁性ボール。
[第21態様]
バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性担体(磁性品)であって、磁性を有する物質を含有し、表面の一部または全部が樹脂であり、かつ重心を通る最短寸法が0.1mm以上、最大寸法が30mm以下である磁性担体。
[第22態様]
上記第21の態様において、磁性担体の形状が球形、楕円体形、円筒形、立方体形、多面体形、あるいはこれらを組み合わせた形状であることを特徴とする磁性担体。
[第23態様]
上記第21または22の態様において、2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有していることを特徴とする磁性担体。
[第24態様]
上記第21〜23の態様のいずれかにおいて、粗面化された表面を有していることを特徴とする磁性担体。
[第25態様]
バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、
(I)内部形状が球形の金型の内部に、少なくとも1つの磁性粒子を保持する工程、
(II)金型と磁性粒子の隙間に溶融樹脂を流しこむことによって成形を行い粒子分散成形品を得る工程、および
(III)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
を含んで成り、
磁性ボールが2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している、磁性ボールの製造方法。
本発明の製造方法に従って、磁性ボールを製造した。
まず、約5重量%(約1体積%)の磁性粒子(飽和磁化:85A・m/kg、残留磁化:5.1A・m/kg)を溶融混合によってポリスチレンと混合し、粒子分散樹脂原料を得た(尚、ここでの磁性粒子の“重量%”および“体積%”は、粒子分散樹脂原料の重量基準および体積基準である。即ち、[重量%=磁性粒子重量/(磁性粒子重量+樹脂原料重量)×100]および[体積%=磁性粒子体積/(磁性粒子体積+樹脂原料体積)×100]である)。次いで、得られた粒子分散樹脂原料を射出成形に付すことによって略球形状に成形した。引き続いて成形品を荒研削した後、中仕上げ研磨、(光沢)仕上げ研磨をすることによって、図1に示すような球状磁性ボールを1,000〜50,000個製造した。得られた磁性ボールにつき、飽和磁化は4.2A・m/kg、残留磁化は略0A・m/kgとなり、粒径特性は表1に示すものとなった。また、磁性粒子含有量の異なる磁性ボール(Run4〜6, 8, 9)および中仕上げ研磨で加工を終了した磁性ボール(Run7〜9)も同様に製造し、それらの結果も併せて示した。
Figure 2011185920
表1を参照すると分かるように、本発明の製造方法を実施することによって、粒径が0.1mm〜30mmの磁性品を得ることができ、特に粒径の範囲を平均粒径の5%以下、また、真球度の粒径に対する割合を5%以下にできることを理解できるであろう。
また、図1の写真図からは、球形状の磁性品が得られていることが理解できるであろう。図2は、図1の磁性ボールにネオジム磁石を近づけて、磁石に磁性ボールが吸着した状態の写真である。図2から分かるように、製造した磁性ボールでは、磁石に吸着し、磁石接触後にてボール同士がくっつき合うことはなかった。
尚、図3の写真図は粗面化された磁性ボールを示している。図1および図2の磁性ボールと比較すると、図3の磁性ボールは光沢がないことが分かる。
本発明の磁性ボールは、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において、標的物質の分離、固定化、分析、抽出、精製または反応などの種々の用途に用いることができる。
10a,10b 金型
20 磁性ボール
30 金型キャビティ(金型内部)
40a,40b 金型内部で磁性ボールを保持するための支持部材
50a,50b 金型内部で磁性ボールを保持するための支持部材

Claims (20)

  1. バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、
    (i)少なくとも2つの磁性粒子と樹脂原料とを混合して粒子分散樹脂原料を調製する工程、
    (ii)粒子分散樹脂原料を成形に付して粒子分散成形品を得る工程、および
    (iii)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
    を含んで成り、
    磁性ボールが2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している、磁性ボールの製造方法。
  2. 粒子分散成形品の研削・研摩に先立って、粒子分散成形品を分割処理に付すことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 得られることになる複数の磁性ボールにつき、粒径の範囲が平均粒径の5%以内となるように、粒子分散成形品を研削・研摩することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 得られることになる複数の磁性ボールにつき、真球度の粒径に対する割合が5%以内に収まるように、粒子分散成形品を研削・研摩することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
  5. 磁性ボール表面に反応性官能基を導入することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記工程(i)で用いる樹脂原料の少なくとも一部に、反応性官能基を有して成る樹脂を用いることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記工程(i)で用いる樹脂原料の少なくとも一部に、後処理により反応性官能基を生成することが可能な構造を分子内に有して成る樹脂を用い、
    前記工程(iii)で得られた磁性ボールに対して後処理を施して磁性ボール表面に反応性官能基を生成させることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
  8. 標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基を磁性ボール表面に固定化することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 「反応性官能基を有して成る樹脂」または「標的物質に対して親和性を呈する物質または官能基を含んで成る樹脂」を磁性ボール表面にコートすることを特徴とする、請求項5または8に記載の製造方法。
  10. 金属または金属化合物を磁性ボール表面にコートすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  11. 工程(i)において顔料および/もしくは染料を付加的に樹脂原料に混合する、ならびに/または、工程(iii)の研削・研摩の後に塗料を磁性ボール表面にコートすることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 工程(iii)で形成された磁性ボールに対して加熱処理を施すことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 工程(iii)の研削・研摩に際して、磁性ボールの表面粗さを調整することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 磁性ボールよりも小さい粒子または該小さい粒子と樹脂原料との混合物を磁性ボール表面にコートすることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールであって、
    該磁性ボールが、樹脂部内にて少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る球形状複合体から成っており、
    該球形状複合体の粒径が0.1mm以上かつ30mm以下であり、また
    飽和磁化が2〜200A・m/kgであり、残留磁化が0〜10A・m/kg(但し、飽和磁化値>残留磁化値)となっている、磁性ボール。
  16. 前記球形状複合体の表面が研削面または研摩面を成していることを特徴とする、請求項15に記載の磁性ボール。
  17. バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性品であって、
    該磁性品が、樹脂部内に少なくとも2つの磁性粒子が分散して成る複合体から成っており、
    該複合体のサイズが0.1mm以上かつ30mm以下であり、また
    飽和磁化が2〜200A・m/kgであり、残留磁化が0〜10A・m/kg(但し、飽和磁化値>残留磁化値)となっている、磁性品。
  18. 前記複合体の形状が、楕円体形、円筒形、立方体形および多面体形から成る群から選択される形状となっていることを特徴とする、磁性品。
  19. 前記複合体の表面が研削面または研摩面を成していることを特徴とする、請求項17または18に記載の磁性品。
  20. バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野において用いられる磁性ボールを製造するための方法であって、
    (I)内部形状が球形となった金型の内部において、1つの磁性粒子を保持する工程、
    (II)金型内部に樹脂を供して成形を行い、樹脂部内に磁性粒子を含んで成る粒子含有成形品を得る工程、および
    (III)粒子分散成形品を球形状に研削および/または研摩して、粒径0.1mm以上かつ30mm以下の磁性ボールを形成する工程
    を含んで成り、
    磁性ボールが2〜200A・m/kgの飽和磁化および0〜10A・m/kgの残留磁化(但し、飽和磁化値>残留磁化値)を有している、磁性ボールの製造方法。
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