JP2011184221A - 硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】靭性があっても外観が良好で、流動性が低下せず成形体を成形するときの作業性が損なわれない硬化性組成物の提供。
【解決手段】硬化性組成物中に、所定量のスラグ粒子を含有させ、このスラグ粒子を最大粒径が5mm以下とするとともに、粒径0.15mm未満のスラグ粒子/粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比を0:100〜20:80とする。
【選択図】図1A

Description

本発明は、硬化性組成物、該硬化性組成物により形成され建築材等に用いることができる成形体、およびこれを用いた建築材に関する。
従来、珪酸アルミニウム、アルカリ金属珪酸塩、補強繊維、水からなる硬化性組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、押出装置で硬化性組成物を押出して成形体を成形する際に、押出装置と硬化性組成物を受ける型枠とを相対的に反対方向へ略同一の速度で移動させながら成形を行う特有の成形方法を用いることで、押出によって配向された硬化性組成物中の補強繊維がそのままの配向で型枠内に注型されるため、靭性の高い成形体が得られるという技術内容が提案されている(特許文献1参照)。
解決しようとする課題
しかしながら、特許文献1の方法では、上述したように型枠を移動させる方向と相対的に反対方向へ押出装置を移動させる押出工程を経なければならず、製造工程が複雑となる。そこで、硬化性組成物に添加する補強繊維の添加量を増やす、さらにはより切れにくい補強繊維を用いた硬化性組成物を用いて靭性の高い成形体を得ることが考えられるが、補強繊維の添加量を増やすと硬化性組成物の流動性が低下するため、成形時等の作業性(ワーカビリティー)が低減する上に、製品表面に気泡による窪みが残存するなど、良好な製品外観が得られないという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、靭性があっても外観が良好で、流動性が低下せず成形時の作業性が損なわれない硬化性組成物の提供を目的とする。
特開2006−088408号公報
本発明者は、靭性を向上させる材料として補強繊維のみを用いた従来の硬化性組成物について、該補強繊維の一部を所定量のスラグ粒子により置換することで、硬化性組成物の流動性を損なわずにその結果物である成形体の靭性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明に係る硬化性組成物は、少なくとも珪酸アルミニウム、アルカリ金属珪酸塩、補強繊維及び水を含有する硬化性組成物において、所定量のスラグ粒子を含有し、前記スラグ粒子は、最大粒径が5mm以下であり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子/粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比が0:100〜20:80であるスラグ粒子であることを特徴とする。
また、前記珪酸アルミニウムを100重量部、前記補強繊維を0.5〜3重量部、前記スラグ粒子を50〜250重量部、より好ましくは71〜216重量部で含有してもよい。
さらに、本発明に係る成形体は上記いずれかの硬化性組成物を例えば押出成形により成形した成形体であり、本発明に係る建築材はこの成形体を用いた建築材である。
ここでスラグとは、鉱石から金属を製錬する際などに、鉱石母岩の鉱物成分などが冶金対象である金属と溶融分離したものをさし、高炉スラグ、製鋼スラグ、鋳物スラグ等が挙げられる。粒径とは、スラグ粒子が通過しうる最小の分級サイズの値をさし、例えば粒径0.15mmのスラグ粒子とは、孔径0.15mmの篩を通過し、それ未満の孔径の篩を通過できないスラグ粒子をさす。実質的な長さが0.20mm径のスラグ粒子であっても針状を呈する場合には、0.15mm径の孔を通過しうるため、粒径0.15mmのスラグ粒子となる場合もある。
本発明に係る硬化性組成物は、靭性を向上させる材料として該補強繊維を用いた従来の硬化性組成物において、該補強繊維の一部を所定量のスラグ粒子により置換し、このスラグ粒子が最大粒径5mm以下で、粒径0.15mm未満のスラグ粒子/粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比が0:100〜20:80であるスラグ粒子であることにより、補強繊維の添加量のみを増加することによって、ある所望の靭性(成形体の靭性)を得る場合と比較して、硬化性組成物の流動性の低下を招かず、成形体を成形する際の作業性(ワーカビリティー)も損なわれない。
また、補強繊維のみで靭性を高める場合と比較して、成形体表面に気泡による窪みが残存しにくく、良好な成形体の外観が得られる。
さらに、得られる成形体にクラックが生じた場合にクラックの成長がスラグ粒子で一旦止まるため、クラックの成長が起こりにくくなる。
また、硬化性組成物が気泡を連行している場合には気泡が破壊されにくいものとなるため、気泡がより小さな気泡となって分散されにくく気泡を除去しやすい。この結果、成形体の表面に気泡による窪みが表れにくいものとなり、成形体の外観がより良好となる。
前記珪酸アルミニウム100重量部に対して、前記補強繊維を0.5〜3重量部で含有させることで、成形体の外観を損ねない混入量の範囲で補強繊維が含有される。さらに、成形体に高い靭性を付与する観点において、前記珪酸アルミニウム100重量部に対して前記スラグ粒子を50〜250重量部、より好ましくは71〜216重量部で含有させることで、より適正な範囲でスラグ粒子が含有される。
さらに、本発明に係る成形体は、上記いずれかの硬化性組成物を例えば押出成形により成形した成形体であり、本発明に係る建築材は、この成形体を用いた建築材である。このため、建築材の製造コストが低減できる上に、建築材の強度が上昇する。
本発明に係る実施例1〜3と比較例1〜5に係る硬化性組成物について、補強繊維とスラグ粒子の配合量と各成形体の試験結果を示す表である。 本発明に係る実施例4〜8と比較例6に係る硬化性組成物について、補強繊維とスラグ粒子の配合量と各成形体の試験結果を示す表である。 本発明に係る実施例9〜11と比較例7〜9に係る硬化性組成物について、補強繊維とスラグ粒子の配合量と各成形体の試験結果を示す表である。 キュポラ(コークスの燃焼熱を利用して鉄を溶かし鋳物の溶湯を得るためのシャフト型溶解炉)から得られるスラグを粉砕および分級して得られるスラグ粒子の平均粒径とスラグ粒子の割合を示す表である。 図2のスラグ粒子種別の粒度分布を示すグラフである。
本発明に係る硬化性組成物は、前述したように、少なくとも珪酸アルミニウム、アルカリ金属珪酸塩、補強繊維及び水を含有する硬化性組成物において、所定量のスラグ粒子を含有し、前記スラグ粒子は、最大粒径が5mm以下であり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子:粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比が0:100〜20:80であるスラグ粒子であることを特徴するものである。
スラグ粒子の粒度については、その最大粒径を5mm以下とするとともに、粒径0.15mm未満のスラグ粒子を用いるスラグ粒子の全重量の20%以下とする必要がある。
最大粒径を5mm以下のスラグ粒子が混入すると、硬化性組成物から後述するように成形体を形成し、この成形体に外力を加えて破壊した場合にクラックの成長がスラグ粒子で一旦とまり、クラックの成長が起こらないため、成形体の靭性を向上させることができ、少量の補強繊維を混入させるだけで済む。
また、スラグは産業廃棄物であることから、成形体の靭性を一定量高める場合に補強繊維のみで靭性を高める場合よりも材料コストがかからず、また、従来の硬化性組成物中の補強繊維をスラグ粒子で置換した際に、置換量以上のスラグ粒子を硬化性組成物に含めても、成形体の製造コストが低減される。この結果、成形体を用いる建材等のコストを低減させながら、靭性も高めることができる。
スラグの成分としては、珪酸(SiO)、アルミナ(Al)、その他石灰(CaO)を含んでもよい。これらの成分を含むスラグは、アルカリ金属珪酸塩と反応し、別途生成する珪酸アルミニウムとのアルカリ金属珪酸塩との反応物と一体の硬化体を形成する。
また、スラグは非晶質であることが必要である。スラグが非晶質であることにより、アルカリ金属珪酸塩のアルカリ成分によってスラグ中のアルミナ成分がスラグから溶出し、容易に溶解して反応する。スラグが非晶質であるのはスラグを急冷することによるが、非晶質が維持されるのは、スラグの成分にアルミナが含まれていることで結晶化が防止されていることにもよるため、アルミナの割合が多いものが好ましい。
スラグが非晶質のガラス状であれば、水分と混合した際にスラグが吸水せず、またスラグの表面に吸着する水が少なくなるため、硬化性組成物の流動性が低下することがない。
スラグの原料として、製鋼スラグ、高炉スラグ等を用いることができ、例えばスラグ粒子を含んだ成形体を建築材表面に貼り付けた場合に成形体の付着力の観点から製鋼スラグが好ましい。
製鋼スラグは、鋳物スラグとも呼称され、CaO,SiO2,FeOが主成分のガラス質であり、高炉スラグよりCaOが多いために、その水溶液はアルカリ性 (pH=11〜12) を示し、水和反応によって硬化するという物性もある。
水砕した高炉スラグは、粒径がおよそ6mm以下の粒状でCaOが主成分のガラス質であり、天然砂に似た物性があり、かつ水和反応によって硬化するという物性もある。
また、スラグに含まれる成分のうち、Al2O3/CaO値が大きくなるにつれて熱伝導率が増加して硬化性組成物の流動性が上昇するため、Al2O3/CaO値が大きい製鋼スラグを用いることがなお好ましい。
このような成分を含むスラグは、ダクタイル鋳鉄用のキュポラから得られるスラグが挙げられる。
通常スラグは、キュポラから得られる溶解したスラグを水冷又は空冷させることで凝結させる。空冷した場合にはガラス板状の塊が得られるので、これを破砕してスラグ粒子とする。水冷の場合には、ある粒径の範囲でスラグ粒子が得られる。空冷する場合のスラグの粉砕には、微粒のスラグ粒子の発生を少なくするために、ロールクラッシャー、ハンマークラッシャー、インペラークラッシャーなど、衝撃により粉砕する方式が好ましい。
図2にキュポラから採取した溶融スラグを空冷した各種スラグを、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー又はインペラークラッシャーにより粉砕して得られたスラグ粒子(スラグ粒子2〜7)と、水冷による得られるスラグ粒子(スラグ粒子1)について、分級点(mm)、平均粒径(mm)、粒径0.15mm未満の割合を示す。また、図3に、図2のスラグ粒子(スラグ粒子1〜7)について、粒径(mm)と積算ふるい上(%)を示す。
キュポラから得られるスラグのうち、空冷して得られるスラグを所定の条件にてハンマークラッシャーで粉砕し、各mm孔径(4.5mm、3mm、1.6mm孔径)の篩により分級すると、図2に示すように、得られるスラグ粒子は平均粒径約0.60mm〜0.8mmの範囲となり、スラグ全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合は順に、7.6%、10.4%、9.5%となる(スラグ粒子2〜4)。
したがって、キュポラ由来の空冷したスラグを所定の条件下でハンマークラッシャーにより粉砕して、1.6〜4.5mm孔径の篩でスラグ粒子を調製することで、粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合をスラグ全重量の20%未満とすることができる。また、図3に示すように、スラグ粒子2〜4の最大粒径は5mm以下となっている。
このスラグ粒子2〜4について、そのまま硬化組成物の組成分として使用することもできるが、さらに別途調製した粒径0.15mm以上のスラグ粒子を混入することで粒度分布を調節して粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合をさらに下げてもよい。
一方、キュポラから得られるスラグを空冷後にロールクラッシャーで所定の条件にて粉砕し、1.4mm孔径の篩により分級すると、得られるスラグ粒子の平均粒径は約0.25mmとなり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合はスラグ全重量に対して約12.6%となる(スラグ粒子5)。ロールクラッシャーの場合はこの分級条件でスラグ粒子を調製することで、粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合をスラグ全重量の20%未満とすることができる。また、図3に示すように、このスラグ粒子5の最大粒径は5mm以下となっている。
さらに、キュポラから得られるスラグを空冷後に所定の条件にてインペラークラッシャーで粉砕して、各mm孔径(2.0mm、1.6mm孔径)の篩により分級すると、得られるスラグ粒子は平均粒径約0.4mm、0.45mmとなり、スラグ全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合は、順に約12.1%、11.3%となる(スラグ粒子6,7)。
したがって、インペラークラッシャーで粉砕する場合は、1.6〜2.0mm孔径の篩でスラグ粒子を調製することで、粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合をスラグ全重量の20%未満とすることができる。また、図3に示すように、これらのスラグ粒子6、7の最大粒径は5mm以下となっている。
ところで、上述したように粉砕をしない場合でも、キュポラから得られるスラグを水冷して得られるスラグ粒子は、平均粒径約1.6mmとなり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子はほとんど含まれない(スラグ粒子1)。また、図3に示すように、このスラグ粒子1も最大粒径が5mm以下となっている。
上述したスラグ粒子1〜7の中では、粒径0.15mm未満のスラグ粒子はほとんど含まれないスラグ1が好ましい。
ここで、粒径0.15mm未満の粒度のスラグ粒子がスラグ全重量の20%を越えていたり、スラグ粒子の最大粒径が5mmより大きかったりすると、成形体の表面にスラグ粒子が露出してくるため、成形体の外観が顕著に悪化する。また、硬化性組成物が気泡を連行させたものである場合、この気泡を破壊してさらに細かい気泡となり分散してしまい除去されにくくなってしまう。
なお、上記の各種粉砕における所定の条件は機械的エネルギーやクラッシャーの刃と刃の間隔等であり、これらの条件は例えば機械のロットや種類によって変化するため、その都度調節する必要がある。
<成形体の強度>
一般的に応力-ひずみ曲線で、成形体に与えていく力を次第に高めていくと、限界点(ピーク)にて成形体が塑性変形を起こし、その後は破断点まではある一定の応力が得られる。本発明に係る実施形態や実施例においては、限界点の応力をピーク強度、限界点から破断点までの応力をピーク後安定強度としている。
成形体については、このピーク後安定強度が成形体のクラックが起きた後の強度として判断され、この値が高いほど成形体が分断崩壊せず、例えば建築材表面に成形体を用いる場合では、よりひび割れが発生しにくくなるという観点でよい。
硬化性組成物に補強繊維を混入しないと、得られた成形体に加えられた衝撃等により成形体にクラックが発生した場合に成形体が分断されてしまうため、このピーク後安定強度は得られない。そのため、硬化性組成物には補強繊維を含める必要がある。
しかし一方で、補強繊維はコスト高であり、また、その添加量が多いと硬化性組成物のワーカビリティーを下げてしまうため、硬化性組成物に含める補強繊維は硬化性組成物のワーカビリティーとその成形体のピーク後安定強度を損ねない範囲で適量とするのが望ましい。
本発明に係る実施形態では、硬化性組成物のワーカビリティーを損ねず成形体が分断もされず成形体の強度を損ねない範囲で従来の硬化性組成物に含まれる補強繊維の一部を上記したようなスラグ粒子で置換することで、成形体の製造コストを下げつつ、成形体の曲げ強度(ピーク強度、ピーク後安定強度)を高めるとともに、硬化性組成物のワーカビリティーも低下しない。
また、硬化性組成物中に含めるスラグ粒子を所定量とするとともに、このスラグ粒子中の粒径0.15mm未満の粒度のスラグ粒子をスラグ全重量に対して所定の割合とすることで、得られる成形体のピーク後安定強度が高い値となり成形体の曲げ強度が高いものとなる。
具体的には本発明に係る硬化性組成物は、珪酸アルミニウム100重量部に対してスラグ粒子を50〜250重量部で含み、このスラグ粒子の全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合を0〜20%とし、該硬化性組成物から成形体を得ることで高いピーク後安定強度が得られる。
<補強繊維>
上述したように、本発明に係る硬化性組成物には補強繊維が所定の割合で含まれる。この補強繊維は、成形体に付与したい性能に応じて、任意のものが使用でき、例えば、ビニロン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、アクリル、レーヨン等の合成繊維や、カーボン、ガラス繊維、チタン酸カリウム、鋼等の無機繊維などが使用できる。
<成形体の製造>
成形体の製造については、成形体用の型に硬化性組成物を填入し、この型を2枚の金属板間に挟みこむようにしてホットプレスに密閉して高温で所定時間(例えば90℃、30分)加熱することで硬化させ、成形体を得ることができる。
<流動性>
硬化性組成物の流動性については、粘度等によっても評価することができるが、本実施形態や以下に説明する実施例のように、硬化性組成物をスランプ試験のように平面上に広げて、平面視した際に最長となる部分の長さを測定して評価することもできる。
上述したように従来の硬化性組成物に含まれる補強繊維の一部を所定量のスラグ粒子で置換することで、硬化性組成物の流動性が損なわれず、ある一定の成形体の強度とする場合に補強繊維のみを用いて強度を高める場合より成形時のワーカビリティーが向上する。さらに、型に流し込む際に、スラグ粒子によって型の隅々まで硬化性組成物がいきわたり、型の内面(成形体の表面を形成する部分)に空隙が発生しないことから好ましい。
以下に本発明に係る実施例と比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、珪酸アルミニウム(A)100重量部に対してスラグ粒子(F)を71重量部で硬化性組成物中に含有させるとともに、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の重量の割合(%)を10%とする等、下記組成にて硬化性組成物を調製し、その流動性の測定を行った。その後、該硬化性組成物から成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
(材料の準備)
A:珪酸アルミニウム
メタカオリン粉砕物(BASF社製Satintone SP-33)…100重量部
B:アルカリ金属珪酸塩
珪酸カリウム(SiO2/K2のモル比1.5、固形分40%)水溶液…150重量部
C:珪砂 10号珪砂…100重量部
D:ワラストナイト NYADーG(NYCO社製)…50重量部
E:ステアリン酸カルシウム(試薬特級)…2重量部
F:鋳物スラグ由来のスラグ粒子…71重量部
G:ビニロン繊維(クラレ社製、長さ8mm、Φ40μm)…0.5重量部
なお、スラグ粒子(F)については鋳物製造の際、キュポラから発生するスラグを冷却後、ロールクラッシャーで粉砕し、粒度調整(スラグ粒子の粒度:最大5 mm、粒径平均:0.17mm、粒径0.15mm未満のスラグ粒子重量/スラグ粒子全重量:0.10)した。
(流動性の測定)
上記材料(A)〜(G)を遊星式ミキサーで10分間混合後、上記硬化性組成物の流動性を測定した。具体的には、硬化性組成物を150mlの定形のカップに満たし、このカップを上下反転して平板上に載置するとともにカップを引き上げて硬化性組成物を平板上に山盛りにした。その後、この平板を700r.p.mにて1分間、左右振動幅8mmで左右往復動させた。その後、平板上に広がった硬化性組成物を平面視し、広がった範囲のうち最長となる部分を測定した。
(成形体の製造)
成形体の製造については、硬化性組成物を成形体の型に流し込み、型枠をやや左右に振動させて内部の気泡を浮き上がらせた後に、ホットプレスで80℃の雰囲気中で3時間加熱硬化させ、24時間乾燥して成形体を得た。
(成形体の外観評価)
成形体の外観評価は、成形体表面に露出したスラグ粒子や気泡による空隙の有無を目視により判断して、成形体の外観にスラグ粒子が露出しているか、気泡やバリが存在しているかなどを評価することより行った。また、成形体のバリの除去しやすさについては、バリがヘラにより簡単に除去できるか否かにより評価した。
[実施例2、3]
硬化性組成物中に含める補強繊維を1.5重量部(実施例2)、3.0重量部(実施例3)とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例4]
実施例4では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例5]
実施例5では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を1.5重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例6]
実施例6では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を3重量部とし、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合(%)を0%とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例7]
実施例7では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を3重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例8]
実施例8では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を3重量部とし、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合(%)を20%とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例9]
実施例9では、硬化性組成物中に含めるスラグを216重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[実施例10、11]
硬化性組成物中に含めるスラグを216重量部とするとともに、補強繊維を1.5重量部(実施例10)、3重量部(実施例11)とした以外は、実施例1と同様にして、それぞれ硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例1〜4]
比較例1〜4では、スラグを混入せずに、補強繊維のみをそれぞれ0.5重量部(比較例1)、1.5重量部(比較例2)、3重量部(比較例3)、6重量部(比較例4)で混入した以外は、それぞれ実施例1と同様に硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行った。その後、それぞれ成形体を形成し、各成形体の外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例5]
比較例5では、硬化性組成物中に含める補強繊維を3重量部とするとともに、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合(%)を30%とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例6]
比較例6では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を3重量部とし、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合(%)を30%とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例7]
比較例7では、硬化性組成物中に含めるスラグを216重量部とするとともに、補強繊維を3重量部とし、スラグ粒子全重量に対する粒径0.15mm未満のスラグ粒子の割合(%)を30%とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例8]
比較例8では、硬化性組成物中に含めるスラグを268重量部とするとともに、補強繊維を1.5重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
[比較例9]
比較例9では、硬化性組成物中に含めるスラグを134重量部とするとともに、補強繊維を4.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を調製してその流動性の測定を行い、成形体を形成してその外観評価および曲げ強度試験を行った。
(各成形体の曲げ強度と外観)
図1Aを参照して、補強繊維のみで成形体の靭性を高める場合、補強繊維の混入量を増やしていくと、3重量部を境目に、ピーク後安定強度が得られるが外観が悪化し始める(比較例3)。特に、3重量部を超える範囲では補強繊維の混入量に応じて外観悪化する(比較例4)。逆に、補強繊維を1.5重量部以下とした場合では成形体の外観は良好だが、ピーク後安定強度が得られない(比較例1、2)。
これに対して、スラグ全重量の0〜20%が粒径0.15mm未満のものであるスラグ粒子約71〜216重量部(15〜35重量%)を所定量の補強繊維とともに混入することで、ピーク後安定強度が向上する(図1A〜1C、実施例1〜11)。
驚くべきことに、補強繊維が0.5〜1.5重量部の場合、補強繊維のみでは得られないピーク後安定強度(比較例1、2)がスラグの混入によって得られている(実施例1、2、4、5)。
補強繊維が3.0重量部の場合では、上記したスラグの混入により、スラグの一部が露出する場合もある(実施例9〜11)が、成形体の外観が改善されるとともにピーク後安定強度が高まる(実施例3、6-8、11および比較例3の各対比参照)。これは、補強繊維1.5重量部より高いピーク後安定強度となっている。
これらの実施例3、6-8、11中では、スラグを134重量部混入した実施例6〜8が特に高いピーク後安定強度となり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子を含まない実施例6が外観が良好で最も高いピーク後安定強度となった。
一方、粒径0.15mm未満のスラグ粒子をスラグ全重量の30%とした場合には、成形体に気泡が多くなって成形体の外観が悪化した(比較例5−7)。また、投入するスラグの全重量が268重量部(40重量%)では、得られる成形体の外観が悪化した(比較例8)。
これらの結果から、スラグ粒子については、最大粒径5mm以下とするとともに、粒径0.15mm未満のスラグ粒子/粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比を0:100〜20:80とするのが好ましい。さらに各混入量について、珪酸アルミニウム100重量部に対して、スラグは71〜216重量部(15〜35重量%)が好ましく、補強繊維については0.5〜3重量部の範囲で含有させることが好ましい。
以上、実施の形態、実施例及び比較例に基づいて本発明の説明をしてきたが、本発明は上記の構成に限られない。

Claims (4)

  1. 少なくとも珪酸アルミニウム、アルカリ金属珪酸塩、補強繊維及び水を含有する硬化性組成物において、
    所定量のスラグ粒子を含有し、
    前記スラグ粒子は、最大粒径が5mm以下であり、粒径0.15mm未満のスラグ粒子/粒径0.15mm以上のスラグ粒子の重量比が0:100〜20:80であるスラグ粒子であることを特徴する硬化性組成物。
  2. 前記珪酸アルミニウム100重量部に対して、前記補強繊維を3〜0.5重量部で含有し、前記スラグ粒子を71〜216重量部で含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物を用いて成形したことを特徴とする成形体。
  4. 請求項3に記載の成形体を用いたことを特徴とする建築材。
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