ところで、ガソリン燃料配管のコネクタ接続部からは、比較的多量のガソリン燃料が透過して大気中に漏出している。このようなガソリン燃料の透過を低く抑えて環境問題に対処するためには、シール手段に、ガソリン燃料低透過性の弾性材料を用いることが好ましい。したがって、シール手段を1本の環状シール部材から構成する場合には、FKM(フッ素ゴム)、NBR(アクリロニトリル‐ブタジエンゴム)、NBR/PVC(アクリロニトリル‐ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム)あるいはFKM/FVMQ(フッ素ゴムとフロロシリコーンゴムとのブレンドゴム)をこの環状シール部材に使用する場合が多くなっている。また、特許文献1に示されているように、シール手段を軸方向に並んで配置された2つの環状シール部材から構成する場合には、ガソリン燃料と直接接触する軸方向一方側の環状シール部材の素材を、ガソリン燃料低透過性の観点からFKM又はFKM/FVMQとし、軸方向他方側の環状シール部材の素材を、耐低温性の観点からFVMQ(フロロシリコーンゴム)、NBR又はNBR/PVCとするのが一般的となりつつある。
しかしながら、このようなシール手段を有しているにもかかわらず、コネクタ接続部からのガソリン燃料透過量は、依然として燃料配管の他の部分と比較して多く、自動車の燃料配管からのガソリン燃料透過量の規制が極めて厳しくなっている現状を考慮して、コネクタ接続部のガソリン燃料低透過性をさらに高める必要があるが、コネクタ接続部のガソリン燃料低透過性は、図10の矢印で示すようにしてコネクタハウジングAを透過するガソリン燃料の量を低く抑えることによって効果的に改善されるものと考えられる。すなわち、ガソリン燃料と直接接触し、かつ、外面側が露出しているコネクタハウジングAの部分Bからのガソリン燃料透過量を低く抑えることが必要である。ここで、コネクタハウジングの材料を適当に選択すれば、コネクタハウジングAの部分Bからの、すなわちコネクタ接続部からのガソリン燃料透過量を低減させることができるのであるが、コネクタハウジングの材質のみによる問題の解消は、コストやコネクタハウジングに要求される他の機能の観点から規制される場合もあり得る。
そこで本発明は、ガソリン燃料等の内部流体の透過量を十分低減できる汎用的な構成を備えたクイックコネクタ及びクイックコネクタを用いる配管接続構造の提供を目的とする。
この目的を達成するための本発明のクイックコネクタは、パイプ体の挿入端部が挿入されて接続される内部流体通過用のクイックコネクタであって、軸方向一方側にチューブ接続部を有し、軸方向他方側にリテーナー構成部が形成された筒状のコネクタハウジングと、前記パイプ体の前記挿入端部が、軸方向他方側端の挿入開口から前記コネクタハウジング内に挿入されたときに、前記挿入端部に形成されている環状係合突部とスナップ係合するように、前記リテーナー構成部に構成されたリテーナ手段と、前記コネクタハウジング及び前記パイプ体の前記挿入端部の前記環状係合突部よりも軸方向一方側の間を密封するためのシール手段と、を備え、前記シール手段は、前記コネクタハウジングの前記チューブ接続部内に配置されているものである。
コネクタハウジングは、例えば樹脂製とすることができる。リテーナー手段としては、コネクタハウジングのリテーナー構成部であるリテーナー保持部に嵌め付けられたリテーナーを用いることができ、リテーナーの嵌め付けは、例えば、リテーナー保持部に一対の係合窓を設けておき、この係合窓にリテーナーを係合させることにより行うことができる。また、リテーナーの軸方向一方側端部に係合スリットを設けておき、パイプ体の環状係合突部がこの係合スリットにスナップ係合することによりクイックコネクタとパイプ体とが接続されるように構成することができる。
コネクタハウジング内に挿入されたパイプ体とコネクタハウジングとの間は、シール手段によって密封される。より具体的には、例えば、パイプ体の挿入端部の環状係合突部よりも軸方向一方側とコネクタハウジングとの間が、シール手段によって密封されることとなる。本発明では、このようなシール手段は、コネクタハウジングのチューブ接続部内に配置されている。あるいは、シール保持部がチューブ接続部内に構成されている。それゆえ、チューブ接続部とシール保持部とが軸方向に並んで構成されたクイックコネクタと比較して、本発明のクイックコネクタは軸方向に短いコンパクトな形状に形成することができるものである。
ところで、コネクタ接続部からのガソリン燃料等の透過量を低く抑えるためには、ガソリン燃料等と直接接触するコネクタハウジングの部分からのガソリン燃料等透過量を低くしておく必要がある。クイックコネクタでは、チューブ接続部の外周にチューブが嵌め付けられるが、本発明では、シール手段配置箇所及びシール手段配置箇所よりも軸方向一方側のコネクタハウジングの部分は、チューブによって覆われることとなる。このような構成では、ガソリン燃料等が直接接触するコネクタハウジングの部分全体で、ガソリン燃料等がコネクタハウジング及びチューブによって2重に覆われることとなるため、コネクタ接続部からのガソリン燃料等の透過量を十分に低く抑えることができるようになり、しかも、コネクタハウジングにガソリン燃料等低透過性材料を用いなくても、チューブが十分なガソリン燃料等低透過性(ガスバリア性)を有してさえすれば、コネクタ接続部からのガソリン燃料等の透過量を満足できる程度に抑えることが可能となる。チューブは例えば、ガソリン燃料等バリア性(ガスバリア性)又はガソリン燃料等バリア層(ガスバリア層)を有して、樹脂により形成される。
また、本発明の配管接続構造は、クイックコネクタを介してチューブとパイプ体とを連結する内部流体通過用の配管接続構造であって、前記クイックコネクタは、軸方向一方側にチューブ接続部を有し、軸方向他方側にリテーナー構成部が形成された筒状のコネクタハウジングと、前記リテーナー構成部に構成されたリテーナー手段と、前記コネクタハウジング内に配置されたシール手段と、を備え、前記パイプ体は、環状係合突部を有する挿入端部が設けられて、前記環状係合突部が前記リテーナ手段とスナップ係合し、かつ、前記挿入端部の前記環状係合突部よりも軸方向一方側及び前記コネクタハウジングの間が前記シール手段により密封されるように、軸方向他方側端の挿入開口から前記コネクタハウジング内に挿入されてこのコネクタハウジングと接続され、前記チューブは、前記コネクタハウジングの前記チューブ接続部の外周にきつく嵌め付けられていて、前記チューブ接続部に嵌め付けられている前記チューブの嵌め付け部分の軸方向他方側端は、前記シール手段よりも軸方向他方側に位置しているものである。
チューブ接続部の外周には、チューブの嵌め付け部分とチューブ接続部との間を密封する密封手段が配置されているのが好ましい。このように構成することにより、コネクタハウジングあるいはチューブ接続部を透過したガソリン燃料等又はガソリン燃料等ガスが、チューブ接続部とチューブの嵌め付け部分との間を通過して、大気中に漏出するのを効果的に防止できる。密封手段は、チューブの嵌め付け部分の開口近くの箇所又は軸方向他方側端部とチューブ接続部又はチューブ接続部の軸方向他方側端部との間を密封するように配置されるのが好ましい。密封手段はまた、シール手段よりも軸方向他方側に配置できる。シール手段が軸方向に並んで複数個設けられている場合に、密封手段がすべてのシール手段の軸方向他方側に配置されている、といったことは必ずしも必要ではない。チューブ接続部の外周には、例えば軸方向他方側端部に、密封手段を嵌め込むための環状溝を設けることができる。
チューブあるいは樹脂チューブには、比重が1.2乃至2.0の材料である基材あるいはガスバリア基材、すなわちガスバリア層の基材が用いられることが好ましい。基材の比重が1.2を下回ると、例えば組織が疎になって、十分なガソリン燃料等低透過性を確保できないし、基材の比重が2.0を超えると、チューブの柔軟性が損われ、取り扱い性が低下するとともに、チューブ接続部に嵌め付けたときの密着性、したがって密封性が低下するおそれがある。
コネクタハウジングには、比重が1.2乃至2.0の材料である基材が用いられることが好ましく、かつ、コネクタハウジングの曲げ弾性率(ASTM D790)が1500MPa以上に設定されているものであることが効果的である。基材の比重が1.2を下回ると、コネクタハウジングからのガソリン燃料の透過量が多くなりすぎるし、基材の比重が2.0を超えると、弾性、したがって耐衝撃性が低下し、ガソリン燃料低透過性を低下させる要因となる損傷が生じやすい。また、曲げ弾性率が1500MPaを下回ると、やはりガソリン燃料低透過性を低下させる要因となる損傷が生じやすくなる。
コネクタハウジングのチューブ接続部の内側には、軸方向一方側で、例えばシール手段を軸方向に位置決めするためのブッシュが嵌め付けられる場合がある。ここで、例えばコネクタハウジングの曲げ弾性率が1500MPa以上に設定されていると、チューブ接続部にチューブをきつく嵌め付けても、チューブ接続部が縮径変形するといったことはない。したがって、製造時のバラツキ等により、チューブ接続部とブッシュとの間に、例えば過剰なクリアランスが発生しているような場合には、チューブ接続部にチューブを嵌め付けても、このクリアランスを吸収することができず、ブッシュにガタが生じてしまう。そうすると、ブッシュとシール手段とが繰り返し衝突するといった事態も予測され、配管接続構造の密封性が早期に低下するおそれがある。そこで、軸方向一方側端部が、チューブ接続部の軸方向一方側端よりも軸方向一方側に突出し、かつ、チューブ接続部の軸方向一方側端の外径よりも大きな外径を有するようにブッシュを形成するとともに、チューブ接続部の軸方向一方側端よりも軸方向一方側に突出しているブッシュの軸方向一方側端部を締め付けるように、チューブがチューブ接続部に嵌め付けられる、というようにしておけば、チューブの締め付けにより、ブッシュの軸方向の位置決めを確実なものとすることができる。
本発明のクイックコネクタ及び配管接続構造を用いれば、チューブのガソリン燃料等低透過性を利用して、コネクタ接続部からのガソリン燃料の透過を低く抑えることができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る第1のクイックコネクタの斜視図、図2は第1のクイックコネクタの断面図、図3は本第1のクイックコネクタに用いられるリテーナの斜視図、図4は第2の樹脂ブッシュ部分の拡大図である。
第1のクイックコネクタ1は、自動車のガソリン燃料配管の接続用に使用されるものであり、筒状のコネクタハウジング3と、ほぼ環状のリテーナー5と、シール手段7と、を備えて構成されている。コネクタハウジング3はガラス繊維強化プラスチック又は樹脂を素材として形成され、軸方向一方側の円筒状の樹脂チューブ接続部9と、軸方向他方側のほぼ円筒状のリテーナー保持部11とから一体的に構成され、軸方向一方側端から軸方向他方側端に貫通する貫通孔13を有している。樹脂チューブ接続部9は、外周面が軸方向他方側に向かって緩やかに拡径する断面直角三角形状の軸方向一方側部15と、軸方向一方側部15の軸方向他方側でほぼ単純な円筒状外面として延びている外周面に、断面四角形状の抜け止め環状突出部17及び軸方向他方側に向かって拡径する断面直角三角形状の2本の抜け止め環状突出部19が、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって順次、軸方向に間隔を有して形成された軸方向他方側部21とから構成され、外周又は外周面に樹脂チューブがきつく接続される。軸方向他方側部21の軸方向一方側端外周面23(軸方向一方側部15と抜け止め環状突出部17との間)は小径にあるいは深い環状溝として形成されていて、樹脂チューブを嵌め付けるに際してこの軸方向一方側端外周面23に環状シール24(密封手段)を配置しておく。この環状溝は例えば断面正方形状又は長方形状に形成できる。
リテーナー保持部11又はリテーナー保持部11内よりも軸方向一方側のコネクタハウジング3の内周面、あるいはチューブ接続部9の内周面は、軸方向他方側端寄りに形成された内向き分割環状突出部25により、軸方向一方側の第1の収容部27と軸方向他方側の第2の収容部29とに分割されていて、第1の収容部27の軸方向他方側には、軸方向一方側の第1のOリング31と軸方向他方側の第2のOリング33とがカラー35を介して、すなわち軸方向に間隔を有して並んで嵌められ、第1の収容部27の軸方向一方側には円筒状の第1の樹脂ブッシュ37が嵌め付けられている。第1の樹脂ブッシュ37は、軸方向一方側端部に径方向外側に多少広がる環状係合部39を一体的に有し、外周面の軸方向一方側端寄りに低い環状突出部41を備え、内径が内向き分割環状突出部25の内径とほぼ同一に形成されていて(環状係合部39の内周面は軸方向一方側に向かって拡径するテーパ状に形成されている)、環状突出部41が、第1の収容部27の軸方向一方側端寄りに形成されている浅い環状凹部43内に嵌り込み、環状係合部39の軸方向他方側の外周面が樹脂チューブ接続部9あるいは軸方向一方側部15の軸方向一方側端部と係合するように、第1の収容部27内に嵌め付けられている。環状係合部39は樹脂チューブ接続部9の軸方向一方側端から軸方向一方側に突出していて、環状係合部39の軸方向一方側の外周面は、軸方向一方側部15のテーパ状の外周面を軸方向一方側に延長するように、軸方向一方側部15の外周面とほぼ連続して位置しているが(環状係合部39の軸方向一方側の外周面の軸方向他方側端は、軸方向一方側部15の軸方向一方側端とほぼ同一の外径を有している)、より詳しく説明すると、環状係合部39の軸方向一方側の外周面は、径方向外側に若干拡径してから(符号44参照)、軸方向一方側部15のテーパ状の外周面とほぼ同一の角度でテーパ状に縮径する(符号46参照)ように形成されている。したがって、環状係合部39の軸方向一方側の外周面は、樹脂チューブ接続部9あるいは軸方向一方側部15の軸方向一方側端の外径よりも大径に形成されている。第1のOリング31及び第2のOリング33は、内向き分割環状突出部25と第1の樹脂ブッシュ37とに挟まれて軸方向に位置決めされている。
第1のOリング31はFKMによって形成され、第2のOリング33もFKMによって形成されている。なお、カラー35は、断面形状が径方向外側に向かって幅が狭くなる台形状に形成されていて、第1のOリング31及び第2のOリング33がパイプ体挿入時につぶされて軸方向に膨らんだとき、第1のOリング31及び第2のOリング33が入り込むスペースが確保されている。このように構成することにより、比較的大径で変形しやすい第1のOリング31及び第2のOリング33に、パイプ体挿入に際して無理な変形が生じるのを効果的に防止できる。
第2の収容部29の軸方向一方側には、第3のOリング45が嵌められ、軸方向他方側には環状の第2の樹脂ブッシュ47が嵌め付けられている。第2の樹脂ブッシュ47は、軸方向他方側端部に多少外側に突出するフランジ部49を一体的に有し、外周面の軸方向一方側に径方向外側に多少突出する環状突出部51を備えていて、第2の樹脂ブッシュ47の内周面は、軸方向他方側が軸方向他方側に向かって拡径するテーパ状に形成され、軸方向一方側が内向き分割環状突出部25の内径とほぼ同一の内径の短い円筒状内面に形成されている。第2の収容部29の軸方向他方側端部は多少大径に形成され、第2の樹脂ブッシュ47の外周面形状に対応する形状を有していて、第2の樹脂ブッシュ47は、軸方向他方側の環状端面53が、リテーナー保持部11の内側の軸方向一方側端に形成されている、狭い幅を有して径方向内側に広がる環状当接面55と同一平面上に位置するように、第2の収容部29の軸方向他方側端部に嵌め付けられている。第3のOリング45は、内向き分割環状突出部25と第2の樹脂ブッシュ47とに挟まれて軸方向に位置決めされている。なお、内向き分割環状突出部25の軸方向他方側端面は、径方向外側に向かって軸方向一方側に傾斜するように形成されていて、第3のOリング45がパイプ体挿入時につぶされて軸方向に膨らんだとき、第3のOリング45が入り込むスペースが確保されている。このように構成することにより、比較的大径で変形しやすい第3のOリング45に、パイプ体挿入に際して無理な変形が生じるのを効果的に防止できる。
第3のOリング45はFKMによって形成されているが、FVMQ、NBR、NBR/PVC、EPDM又はTPO(サーモプラスチックオレフィン)によって形成してもよい。
第1のOリング31、第2のOリング33及び第3のOリング45はシール手段7を構成する。第1のOリング31と第2のOリング33との間には、カラー35の厚み分の軸方向間隔が確保され、第2のOリング33と第3のOリング45との間には、内向き分割環状突出部25の厚み分の軸方向間隔が確保されているが、カラー35は内向き分割環状突出部25よりも薄く(具体的には内向き分割環状突出部25のほぼ半分の厚み)、したがって、第1のOリング31と第2のOリング33との間に確保される軸方向間隔は、第2のOリング33と第3のOリング45との間に確保される軸方向間隔よりも狭い(具体的には第2のOリング33と第3のOリング45との間に確保される軸方向間隔のほぼ半分)。
樹脂チューブ接続部9よりも大径に形成されたほぼ円筒状のリテーナー保持部11には、径方向対称位置に対向して係合窓57、57が形成され、係合窓57、57の間のそれぞれの外周面には対向して平面部分59、59が設けられている(一方側のみ図示)。なお、係合窓57、57の軸方向一方側端(端面)61、61は、リテーナー保持部11の内側の環状当接面55及び第2の樹脂ブッシュ47の軸方向他方側の環状端面53と同一平面上に設けられていて、係合窓57、57の軸方向一方側端61、61から第2の樹脂ブッシュ47の軸方向他方側開口縁にかけて段差は生じていない。したがって、水分が溜まりにくい構成となっていて、段差部と、接続された金属製のパイプ体との間に水分が溜まってしまい、その結果、パイプ体に錆が発生し、このパイプ体が腐食するといったことが効果的に防止される。また、係合窓57、57には例えば、パイプ体接続確認用のチェッカーの係合部が係合する。
リテーナー保持部11内にはポリアミド(PA)製のリテーナー5が嵌め付けられていて、このリテーナー5は比較的柔軟であり、弾性変形可能なように形成されている。リテーナー5は、軸方向他方側端部の径方向対称位置に、径方向外側に突出した一対の係合爪部63、63が対向して形成されている、周方向両端部65、65間に比較的大きな変形用隙間が設けられた断面C形(ほぼ環状形)の本体部67を有し、この本体部67の内面は、変形用隙間と対向する部分を除いて軸方向一方側に向かって縮径する状態に形成されていて、本体部67の軸方向一方側端部69は、変形用隙間と対向する部分を除いてパイプ体(図5の符合71参照)とほぼ同じ内径状態に形成され、環状係合突部(図5の符合73参照)よりも小さい内径状態に形成されている。本体部67の変形用隙間と対向する部分の内面はほぼ円筒内面状態に形成され、本体部67の変形用隙間と対向する部分の軸方向一方側端部69には切欠状凹部75が形成されている。
リテーナー5の本体部67の軸方向他方側端部には、係合爪部63、63と対応した位置から軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜して延びる一対の操作アーム77、77が一体的に設けられていて、それぞれの操作アーム77、77の軸方向他方側端部には径方向外側に突出した操作端部79、79が形成されている。本体部67の軸方向一方側端部69には、周方向に延びる係合スリット81、81が対向して形成されていて、このような構成のリテーナー5は、係合爪部63、63がリテーナー保持部11の係合窓57、57内に入り込み、操作端部79、79が、リテーナー保持部11の軸方向他方側端部83の径方向対称位置に形成された収容凹部85、85内に嵌まり込んで係合するように、リテーナー保持部11内に押し込まれて嵌め付けられている。リテーナー保持部11の軸方向他方側端部83に収容凹部85を形成し、この収容凹部85内に操作アーム77の操作端部79を収めることにより、操作端部79に不用意に触れただけでリテーナー5がリテーナー保持部11内で正常な嵌め付け状態からずれてしまうといったことが防止される。収容凹部85、85の周方向両端部は軸方向他方側に向かって広がるように形成されている。操作アーム77、77から係合スリット81、81まで延びる、リテーナー5の対向している断面円弧状の内面87、87はそれぞれ、軸方向一方側に向かって中心又は中心軸方向にほぼテーパ状に傾斜している。パイプ体71を操作アーム77、77の操作端部79、79側からリテーナー5の本体部67内に挿入すると、パイプ体71の環状係合突部73はリテーナー5のテーパ状の内面87、87と、操作アーム77及び本体部67の境界位置で当接する。なお、図2中符号89は、リテーナー保持部11の内周面に一体的に形成され、リテーナー5の本体部67の切欠状凹部75内に位置してリテーナー5の回り止めを行い、ガタ防止をするための回り止め突出部である。
図5は第1のクイックコネクタ1にパイプ体を接続して本発明に係る配管接続構造を構成した場合の断面図である。
第1のクイックコネクタ1に、リテーナー保持部11の軸方向他方側端の挿入開口91から挿入されて、より具体的には、操作アーム77、77の操作端部79、79側からリテーナー5の本体部67内に挿入されて嵌め付けられた相手方のパイプ体71は金属製であり、軸方向一方側の外周面に環状係合突部73が設けられることにより構成された挿入端部93を有していて、環状係合突部73がリテーナー5の本体部67を押し広げて進行し、係合スリット81、81に嵌り込んでスナップ係合するまで第1のクイックコネクタ1あるいはコネクタハウジング3に押し込まれている。パイプ体71は、環状係合突部73がリテーナー5の本体部67の係合スリット81、81に嵌り込んでスナップ係合することにより、第1のクイックコネクタ1に対して抜け止めされ、また挿入止めされる。すなわち、軸方向に位置決めされる。パイプ体71の軸方向一方側端は、第3のOリング45、第2のOリング33及び第1のOリング31を通過して、樹脂チューブ接続部9に嵌め付けられた第1の樹脂ブッシュ37内に達していて、パイプ体71(より具体的にはパイプ体71の挿入端部93の環状係合突部73よりも軸方向一方側)と第1のクイックコネクタ1(より具体的には樹脂チューブ接続部9)との間はこの第1乃至第3のOリング31、33、45により密封され、パイプ体71の挿入端部93の環状係合突部73よりも軸方向一方側は、パイプ体71の挿入端部93の外径とほぼ同一の内径を有する第2の樹脂ブッシュ47、内向き分割環状突出部25及び第1の樹脂ブッシュ37内にガタが生じないように挿入されている。なお、リテーナー5は多少軸方向にガタが生じる状態でリテーナー保持部11内に嵌め付けられるのが普通であるが、少なくともパイプ体71を押し込んだ時には、本体部67の軸方向一方側端が環状当接面55及び第2の樹脂ブッシュ47の軸方向他方側の環状端面53に当接したような、あるいは接近した状態となる。また、パイプ体71の円筒状外周面(先細りとなっていない部分)と第1の樹脂ブッシュ37との重なり長さ(軸方向幅)は、0.3mm乃至10mmであるが、特に5.0mm以上であることが好ましい。
パイプ体71は、収容凹部85内に収容されている操作アーム77、77の操作端部79、79を外側から押圧して操作アーム77、77の径方向の間隔、したがって係合爪部63、63の径方向の間隔を狭め、係合爪部63、63が係合窓57、57から抜け出た状態として、リテーナー5をコネクタハウジング3から相対的に引き抜くと、このリテーナー5とともにコネクタハウジング3から抜き出される。
コネクタハウジング3の樹脂チューブ接続部9には、樹脂チューブ95が接続されているが、樹脂チューブ95は、樹脂チューブ接続部9の外周よりも小さな内径を有するように、したがって、第1のブッシュ37の環状係合部39の軸方向一方側の外周面よりも小さな内径を有するように形成されていて、樹脂チューブ接続部9が、嵌め付け側に相対的に圧入されることにより、この樹脂チューブ接続部9にきつく嵌め付けられた状態で接続されている。嵌め付けられた樹脂チューブ95は、図5から明らかなように、第1のブッシュ37の環状係合部39の軸方向一方側の外周面と全体的に密着し、環状係合部39の軸方向一方側の外周面を全体的に締め付けている。樹脂チューブ95の嵌め付け部分97(樹脂チューブ接続部9の外周に嵌められている部分)の軸方向他方側端(開口側端)は、樹脂チューブ接続部9の軸方向他方側端に達して、この樹脂チューブ接続部9の軸方向他方側端に形成されている、径方向外側に広がる環状端面99に当接するような状態となっている。したがって、樹脂チューブ95の嵌め付け部分97の軸方向他方側端は、第1のOリング31及び第2のOリング33よりも軸方向他方側に位置している。なお、ここでは、樹脂チューブ95の嵌め付け部分97は、軸方向他方側端が第3のOリング45と軸方向位置を一致させるように、樹脂チューブ接続部9に嵌め付けられているが、第3のOリング45よりも軸方向一方側に位置するように、樹脂チューブ接続部9に嵌め付けられている場合もある。
コネクタハウジング3は、PA12の基材をガラス繊維(GF)で補強して形成できるが、例えば比重1.65のポリフェニレンスルフィド(PPS)の基材をガラス繊維で強化し、例えば1500MPa以上の曲げ弾性率(ASTM D790)を有するように形成することもできる。また、樹脂チューブ95は、図6に示すように、耐熱性を有するPA12を基材とする外層97と、酸変性ポリプロピレン(PP)を基材とする中間層99と、例えば比重1.05のPA11、例えば比重1.75のエチレン4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、例えば比重1.65のPPS又は例えば比重1.33のポリブチレンフタレート(PBN)を基材とする内側ガスバリア層101と、を備えた積層構造に形成することができる。
ここで、各種の基材を用いた樹脂チューブ95と第1のクイックコネクタ1とから構成される配管個所のガソリン燃料透過量の測定結果を表1に示す。樹脂チューブ95は、PA12を基材とする1.0mmの外層、酸変性PPを基材とする0.1mmの中間層及び0.3mmの内側ガスバリア層から構成された1.4mmの肉厚の積層構造を備え、外径が34.5mmで長さが216mmに形成されている。樹脂チューブ95としては、内側ガスバリア層の基材に、PA11(比重1.05)、ETFE(比重1.75)、PPS(比重1.65)及びPBN(比重1.33)を用いたものが準備されている。第1のクイックコネクタ1は、基材をガラス繊維で強化して形成されたコネクタハウジング3を有する、28.6mmの直径のパイプ体71用のものであり、コネクタハウジング3の基材にPA12及びPPS(何れもガラス繊維強化形)を用いたものが準備されている。PA12GF製のものは、比重1.23及び曲げ弾性率6310MPaに調整されている。また、PPSGF製のものは、比重1.65及び曲げ弾性率8500MPaに調整されている。
比較例として、図7に示すように、第1のOリング103及び第2のOリング105と樹脂チューブ107との間に軸方向間隔が設けられている従来型のクイックコネクタ109を用いることにより構成された配管個所を使用している。樹脂チューブ107は内径が樹脂チューブ95よりも小径に形成されているが、樹脂チューブ95と同様の積層構造を有している。クイックコネクタ109は、基材をガラス繊維で強化して形成されたコネクタハウジング111を有する、28.6mmの直径のパイプ体71用のものであり、第1のクイックコネクタ1と同様に、コネクタハウジング111の基材にPA12及びPPS(何れもガラス繊維強化形)を用いたものが準備されている。比重及び曲げ弾性率は第1のクイックコネクタ1と同様に調整されている。
それぞれのクイックコネクタ1、109の樹脂チューブ接続部9、113に所定の樹脂チューブ95、107を嵌め付け、かつ、パイプ体71を挿入して接続することにより構成した、コネクタ接続部(コネクタハウジング個所)を含む配管個所にガソリン燃料を封入し、樹脂チューブ接続部9、113の軸方向一方側端から軸方向一方側に延びる樹脂チューブ95、107部分からのガソリン燃料の透過量(表中の「樹脂チューブ」の欄に示す)、および樹脂チューブ接続部9、113の軸方向一方側端から第1のOリング31、103までの部分からのガソリン燃料の透過量(表中の「コネクタハウジング」の欄に示す)を測定した。なお、曲げ弾性率はASTM D790に準拠して測定した値である。
表1から理解できるように、PPSといったガソリン燃料低透過性(ガス低透過性)の基材をコネクタハウジングに使用すると、第1のクイックコネクタ1のような構成でも、クイックコネクタ109のような構成でも、ガソリン燃料の透過量には差異が生じない。
しかしながら、PA12といったガソリン燃料低透過性に劣る基材をコネクタハウジングに用いると、コネクタハウジング個所からのガソリン燃料の透過量は、実施例で比較例のほぼ25%となっている。また、配管個所全体からのガソリン燃料の透過量では、樹脂チューブ95、107の内側ガスバリア層の基材が、PPSといった高いガソリン燃料低透過性のものである場合には、実施例で比較例のほぼ35%、樹脂チューブ95、107の内側ガスバリア層の基材が、ETFEといった比較的高いガソリン燃料低透過性のものである場合には、実施例で比較例のほぼ70%となっている(表中の合計の欄参照)。ここでは、コネクタハウジング3の基材の比重が1.2以上であり、また、2.0以下であって、かつ曲げ弾性率が1500MPa以上、また、樹脂チューブ95の内側ガスバリア層の基材の比重が1.2以上であり、また、2.0以下である。ただし、樹脂チューブ95、107の内側ガスバリア層の基材が、PA11といったガソリン燃料低透過性に劣るものである場合には、配管個所全体からのガソリン燃料の透過量は、実施例と比較例とでほとんど変わらない。
図8は本発明に係る第2のクイックコネクタにパイプ体71を接続して本発明に係る第2の配管接続造を構成した場合の断面図である。
第2のクイックコネクタ115は、第1のクイックコネクタ1と同様に、自動車のガソリン燃料配管の接続用に使用されるものであり、第1のクイックコネクタ1の樹脂チューブ接続部9の外部構成を変更したものであるが、その他の構成は第1のクイックコネクタ1と同様であるので、概略的には第1のクイックコネクタ1と同一の符号を付して同一構成部分の説明を省略する。
第2のクイックコネクタ115の樹脂チューブ接続部117では、外周面が軸方向他方側に向かって緩やかに拡径する断面直角三角形状の軸方向一方側部119は多少軸方向他方側まで延びていて、外面は環状溝を形成することなく軸方向他方側部121の外周面と接続されている。軸方向他方側部121の外周面の軸方向他方側端部には、深い環状溝123が形成されていて、この環状溝123内には環状シール125(密封手段)が配置されている。この環状シール125は、樹脂チューブ接続部117と樹脂チューブ95の開口端部との間を密封する。環状溝123は例えば断面正方形状又は長方形状とすることができる。
第2のクイックコネクタ115では、樹脂チューブ接続部117を透過したガソリン燃料が、樹脂チューブ接続部117と樹脂チューブ95の嵌め付け部分97との間を通って樹脂チューブ95の開口端側から放出されるのが効果的に防止されるので、第1のクイックコネクタ1よりも優れたガソリン燃料不透過性を期待できる。
図9は本発明に係る第3のクイックコネクタにパイプ体71を接続して本発明に係る第3の配管接続造を構成した場合の断面図である。
第3のクイックコネクタ127は、第1のクイックコネクタ1と同様に、自動車のガソリン燃料配管の接続用に使用されるものであり、第1のクイックコネクタ1の樹脂チューブ接続部9の構成、主に内部構成を変更したものであるが、その他の構成は第1のクイックコネクタ1と同様であるので、概略的には第1のクイックコネクタ1と同一の符号を付して同一構成部分の説明を省略する。
第3のクイックコネクタ127の樹脂チューブ接続部129では、軸方向他方側部131の軸方向他方側端外周面133(軸方向他方側の抜止環状突出部19よりもやや軸方向他方側からリテーナー保持部11までの間)は、軸方向一方側端外周面23よりもさらに小径にあるいは深く形成されている。
樹脂チューブ接続部129の内周面は、軸方向一方側の収容部135と、軸方向他方側の小径部137と、から形成され、収容部135は第1のクックコネクタ1の大径部27と同一の構成を有していて、収容部135には、第1のクイックコネクタ1の大径部27と同様に、カラー35を介して軸方向に並んで一対のOリング31、33が嵌め付けられている。第1のOリング31はFKM製であるが、FKM/FVMQ製としてもよい。第2のOリング33はFVMQ製であるが、NBR又はNBR/PVC製としてもよい。小径部137は、パイプ体71の外径とほぼ同一の内径を有し、樹脂チューブ接続部129の内周面の軸方向他方側全体に設けられていて、この小径部137の軸方向他方側の環状他端面139は、リテーナー保持部11の内側の軸方向一方側端に形成されている、狭い幅を有して径方向内側に広がる環状端面55と同一平面上に位置するように形成されている。そして、環状端面55は、リテーナー保持部11の係合窓57、57の軸方向一方側端61、61(端面)と同一平面上に形成されているので、係合窓57、57の軸方向一方側端61、61から、小径部137の軸方向他方側の環状他端面139にかけて、段部又は段差は形成されていない。
パイプ体71は、第1のクイックコネクタ1の場合と同様に、環状係合突部73がリテーナー5の本体部67の係合スリット81、81に嵌り込んでスナップ係合することにより、第3のクイックコネクタ127に対して抜止めされ、また挿入止めされる。すなわち、軸方向に位置決めされる。パイプ体71の軸方向一方側端は、樹脂チューブ接続部129内に設けられた一対のOリング31、33を越えて樹脂チューブ接続部129に嵌め付けられた樹脂製ブッシュ37内に達し、パイプ体71と第3のクイックコネクタ127との間は、本質的にはこのOリング31、33によってのみ密封されている。
第3のクイックコネクタ127では、第3のOリング45を有しない簡単な構造でありながら、第1のクイックコネクタ1と同様なガソリン燃料不透過性を有するものと考えられる。