JP2011173336A - 印刷用スリーブ及び印刷胴 - Google Patents

Abstract

【課題】印刷用スリーブ及び印刷胴において、構造の簡素化を可能とする。
【解決手段】印刷胴を刷版３４，３５が巻き付けられる版胴３１として構成し、円柱形状をなす胴本体３２と、この胴本体３２の外周部に装着される円筒形状をなすスリーブ３３と、胴本体３２の外周部に設けられて刷版３４，３５における各端部３４ａ，３４ｂ，３５ａ，３５ｂを保持可能な保持装置３６と、スリーブ３３に設けられて外周部に装着される刷版３４の各端部３４ａ，３４ｂを挿入可能な貫通孔５１とを設ける。
【選択図】図１

Description

本発明は、回転する支持体の外周部に装着して印刷胴を構成するスリーブ、このスリーブが装着された印刷胴に関するものである。

一般に、オフセット輪転印刷機は、給紙装置とインフィード装置と印刷装置と乾燥装置と冷却装置とウェブパス装置と折り装置と排紙装置とから構成されている。従って、給紙装置により巻取体からウェブが引き出され、このウェブがインフィード装置により所定のテンションで印刷装置に供給され、この印刷装置における各印刷ユニットにより多色印刷が施され、印刷されたウェブは、乾燥装置でインキが乾燥され、冷却装置で冷却され、ウェブパス装置を経て搬送された後、折り装置により切断されて折り畳まれることで折帖が作成され、排紙装置により搬出される。

ところで、上述したオフセット輪転印刷機は、１台の印刷機で複数のサイズの印刷物を印刷することが可能となっている。この場合、印刷装置では、印刷物の長さに応じた周長を有する版胴やブランケット胴が必要となる。そのため、従来の版胴やブランケット胴は、円柱形状をなす支持体の外周部にスリーブを着脱可能とすることで構成し、周長、つまり、厚さのとなる複数のこのスリーブを用意することで対応している。

このような複数のサイズの印刷物を印刷可能とする印刷装置に用いられる印刷胴（版胴やブランケット胴）としては、例えば、下記特許文献１に記載されたものがある。

特開２００７−００１２０４号公報

上述した従来の印刷胴にあっては、支持体の外周部にスリーブを装着することで構成されている。この場合、この印刷胴を実際に使用する場合には、外周部に刷版やブランケットを巻き付け、端部を保持する必要がある。そのため、従来の印刷胴を構成するスリーブは、版胴やブランケットの端部を固定するための保持装置が設けられている。ところが、スリーブは、その厚さが薄いことから、保持装置を内蔵することが困難となり、その構成が複雑で高価なものとなってしまう。

本発明は上述した課題を解決するものであり、構造の簡素化を可能とする印刷用スリーブ及び印刷胴を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するための本発明のスリーブは、支持体の外周部に装着される円筒形状をなす印刷用スリーブにおいて、軸方向に沿って貫通孔が形成される、ことを特徴とするものである。

従って、印刷用スリーブに板状部材の端部を保持する保持装置を設ける必要がなくなり、構造の簡素化を可能とすることができる。

本発明のスリーブでは、前記貫通孔は、長手方向の各端部が開口していないことを特徴としている。

従って、貫通孔の高精度な加工が容易となり、加工性を向上することができると共に、加工コストを低減することができ、また、高い剛性を確保することができる。

また、本発明の印刷胴は、板状部材が巻き付けられる印刷胴において、円柱形状をなす支持体と、該支持体の外周部に装着される円筒形状をなすスリーブと、前記支持体の外周部に設けられて前記板状部材の端部を保持可能な保持装置と、前記スリーブに設けられて外周部に装着される前記板状部材の各端部を挿入可能な貫通孔と、を備えることを特徴とするものである。

従って、スリーブに貫通孔を設け、支持体に保持装置を設けることで、スリーブにこの保持装置を設ける必要がなくなり、また、支持体に保持装置を設けることが容易となり、構造の簡素化を可能とすることができる。

本発明の印刷胴では、前記貫通孔は、前記スリーブの軸方向に沿って形成されると共に、長手方向の各端部が前記スリーブの端部に開口していないことを特徴としている。

従って、貫通孔がスリーブの軸方向の各端部に開口しておらず、スリーブにおける各軸端部に円環部が存在することで、貫通孔の高精度な加工が容易となり、加工性を向上することができると共に、加工コストを低減することができ、また、高い剛性を確保することができる。

本発明の印刷胴では、前記貫通孔は、前記スリーブの軸方向における各端部に前記スリーブの周方向に沿う加工孔が設けられることを特徴としている。

従って、貫通孔における軸方向の端部に加工孔が形成されることで、スリーブに貫通孔を容易に形成することができ、加工性を向上することができる。

本発明の印刷胴では、前記貫通孔は、前記スリーブの径方向に対して周方向に所定角度だけ傾斜していることを特徴としている。

従って、貫通孔が周方向に傾斜していることで、板状部材の端部をこの貫通孔に容易に挿入することができ、作業性を向上することができる。

本発明の印刷胴では、前記支持体は、外周部に前記板状部材の端部を前記保持装置まで挿入可能な開口部が形成され、該開口部の前記支持体における周方向の長さが、前記貫通孔の前記スリーブにおける周方向の長さより長く設定されることを特徴としている。

従って、支持体における開口部の周方向の長さが貫通孔における周方向の長さより長く設定されることで、板状部材の端部を貫通孔から開口部を通して保持装置まで挿入するとき、この板状部材の端部が支持体の外周面に接触することはなく、容易に挿入することができ、作業性を向上することができる。

本発明の印刷胴では、前記スリーブの外周部に装着される前記板状部材は、一端部が前記貫通孔に係止可能であり、他端部が前記保持装置に保持されることを特徴としている。

従って、板状部材は、一端部を貫通孔に係止し、他端部を保持装置に保持させればよく、両端部を長く形成する必要がなくなり、構造の簡素化を可能とすることができる。

本発明の印刷胴では、前記支持体の外周部に前記スリーブが装着された状態で固定するクランプ装置が設けられることを特徴としている。

従って、クランプ装置により支持体の外周部にスリーブを適正に固定することができ、板状部材の位置ずれを防止することができる。

本発明の印刷胴では、前記クランプ装置は、前記支持体及び前記スリーブにおける軸方向の一端部に前記支持体と前記スリーブとの周方向及び軸方向における位置決めを行う位置決め部材が設けられると共に、前記支持体及び前記スリーブにおける軸方向の他端部に前記支持体と前記スリーブとを一体に固定する固定部材が設けられることを特徴としている。

従って、位置決め部材により支持体に対するスリーブの周方向及び軸方向の位置が適正位置に設定されると共に、固定部材により強固に固定されることとなり、作業精度の向上及び作業コストの低減を可能とすることができる。

本発明の印刷用スリーブ及び印刷胴によれば、支持体の外周部にスリーブを装着可能とし、支持体に板状部材の端部を保持可能な保持装置を設けると共に、スリーブに板状部材の各端部を挿入可能な貫通孔を設けるので、スリーブに保持装置を設ける必要がなくなり、また、支持体に保持装置を容易に設けることができ、構造の簡素化を可能とすることができる。

図１は、本発明の実施例１に係る印刷胴としての版胴を表す正面図である。 図２は、実施例１の版胴における軸方向に沿った断面図である。 図３は、実施例１の版胴における径方向に沿った断面図である。 図４は、実施例１の版胴における刷版の装着状態を表す断面図である。 図５は、実施例１の版胴における刷版の装着状態を表す断面図である。 図６は、実施例１の商業用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。 図７は、実施例１の印刷胴としてのブランケット胴を表す断面図である。 図８は、本発明の実施例２に係る印刷胴としての版胴を表す断面図である。

以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷用スリーブ及び印刷胴の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。

図１は、本発明の実施例１に係る印刷胴としての版胴を表す正面図、図２は、実施例１の版胴における軸方向に沿った断面図、図３は、実施例１の版胴における径方向に沿った断面図、図４は、実施例１の版胴における刷版の装着状態を表す断面図、図５は、実施例１の版胴における刷版の装着状態を表す断面図、図６は、実施例１の商業用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図７は、実施例１の印刷胴としてのブランケット胴を表す断面図である。

実施例１の印刷機は、商業用オフセット輪転印刷機であって、図６に示すように、給紙装置１１と、インフィード装置１２と、印刷装置１３と、乾燥装置１４と、冷却装置１５と、ウェブパス装置１６と、折り装置１７と、排紙装置１８とから構成されている。

給紙装置１１は、２つの巻取体（ウェブロール）が装着されるリールスタンドを有しており、一方の巻取体から引き出されて走行しているウェブＷを、他方の巻取体のウェブＷに接続することで、連続的にウェブＷを供給可能となっている。インフィード装置１２は、給紙装置１１から繰り出されたウェブＷを印刷装置１３側に供給するものである。印刷装置１３は、４つのインキ色である藍（Cyan）、紅（Magenta）、黄（Yellow）、墨（Black）ごとの４個の印刷ユニット２１，２２，２３，２４がウェブ走行方向に沿って並設されて構成されている。各印刷ユニット２１，２２，２３，２４は、走行するウェブＷの両面（表面及び裏面）に印刷を施すことができる。

乾燥装置１４は、印刷装置１３により印刷が施されたウェブＷ上のインキを乾燥させるためのものであり、印刷が施されたウェブＷの上面及び下面に対して温風を吹き付け、インキを乾燥することができる。冷却装置１５は、乾燥装置１４での乾燥後の過剰な熱を蓄えるウェブＷを適当な温度まで冷却するものであり、ウェブＷを巻き付けて冷却する複数（本実施例では、４個）の冷却シリンダを有している。ウェブパス装置１６は、乾燥されて冷却されたウェブＷを搬送するものであり、折り装置１７は、ウェブＷを縦折りされた後に断裁し、所定の大きさに折り畳んで折帖を形成するものであり、排紙装置１８は、折り畳まれた折帖を機外へ搬出するものである。

従って、給紙装置１１により巻取体からウェブＷが引き出され、インフィード装置１２により印刷装置１３に供給され、この印刷装置１３にて、各印刷ユニット２１，２２，２３，２４により多色両面印刷が施され、印刷されたウェブＷは、乾燥装置１４で温風によりインキが乾燥され、冷却装置１５により冷却され、ウェブパス装置１６を経て搬送された折り装置１７により折帖が作成され、排紙装置１８により搬出される。

このように構成された本実施例の商業用オフセット輪転印刷機は、この１台の印刷機により複数のサイズの印刷物（折帖）を印刷することができる。そのため、上述した印刷装置１３における各印刷ユニット２１，２２，２３，２４にて、版胴やブランケット胴は、印刷物のサイズに応じてその周長、つまり、外径が変更可能な構成となっている。

即ち、図１乃至図３に示すように、版胴（印刷胴）３１は、胴本体（支持体）３２のみ、または、胴本体３２の外周部にスリーブ（印刷用スリーブ）３３が装着されて構成されており、このスリーブ３３を着脱可能とすることで、版胴３１の外径、つまり、周長を変更可能となっている。そして、版胴３１は、その外周部、つまり、胴本体３２またはスリーブ３３の外周面に刷版（板状部材）３４，３５（図４及び図５参照）を装着可能となっている。

胴本体３２は、全体が円柱形状をなし、軸方向（長手方向）の中間部に位置する本体部３２ａが、所定の外径に設定された同一径の円柱形状となっている。また、胴本体３２は、この本体部３２ａにおける軸方向の一端部（図１及び図２にて、左端部）に、先細円錐形状をなすテーパ部３２ｂが形成されている。一方、胴本体３２は、本体部３２ａにおける軸方向の他端部（図１及び図２にて、右端部）に、先太円錐形状をなすテーパ部３２ｃが形成されると共に、このテーパ部３２ｃに円板形状をなす接続部３２ｄを介して接続部３２ｄより大径の円板形状をなすフランジ部３２ｅが形成されている。そして、胴本体３２は、テーパ部３２ｂ及びフランジ部３２ｅに同心状の支持軸３２ｆ，３２ｇが一体に固定され、この各支持軸３２ｆ，３２ｇは、図示しない印刷機フレームに回転自在に支持されている。この場合、支持軸３２ｆ側が操作側で、支持軸３２ｇが駆動側であり、この支持軸３２ｇに駆動歯車などを介して駆動源が駆動連結されている。

スリーブ３３は、全体が円筒形状をなし、軸方向（長手方向）の中間部に位置する本体部３３ａが、所定の内径及び外径に設定された同一径の円筒形状となっている。また、スリーブ３３は、この本体部３３ａにおける軸方向の一端部（図１及び図２にて、左端部）の内周部に、内径より大径となる段付部３３ｂが形成されている。一方、スリーブ３３は、本体部３３ａにおける軸方向の他端部（図１及び図２にて、右端部）の内周部に、内径より先太円錐形状をなすテーパ部３３ｃが形成されている。

この場合、胴本体３２とスリーブ３３とにおいて、本体部３２ａ，３３ａは、軸方向の長さがほぼ同様の長さに設定され、胴本体３２における本体部３２ａの外径が、スリーブ３３における本体部３３ａの内径より若干小さく設定されることで、胴本体３２の外周部にスリーブ３３を嵌入可能となっている。また、胴本体３２とスリーブ３３とにおいて、テーパ部３２ｂと段付部３３ｂ、テーパ部３２ｃとテーパ部３３ｃがそれぞれ径方向に対向する位置に形成されている。

刷版３４，３５は、図４及び図５に示すように、印刷物のサイズに応じてその周長が異なるものとなっており、一端部が内側に折曲されて咥え側端部３４ａ，３５ａが形成され、他端部が折曲されて咥え尻側端部３４ｂ，３５ｂが形成されると共に、この咥え尻側端部３４ｂ，３５ｂの先端部が折曲されて係止端部３４ｃ，３５ｃが形成されている。この場合、刷版３４，３５は、その周長が異なるだけでなく、咥え尻側端部３４ｂ，３５ｂの長さが相違している。

胴本体３２は、外周部に刷版３４の端部としての咥え側端部３４ａ、咥え尻側端部３４ｂを保持可能な保持装置３６が設けられている。この保持装置３６において、胴本体３２の外周部に、開口部４１を介して収容孔４２が形成されており、この収容孔４２にテンションバー４３が収容されている。この場合、開口部４１は、胴本体３２の外周面に開口し、収容孔４２は、略円形をなし、開口部４１及び収容孔４２は、軸方向に沿って形成され、各端部が胴本体３２の端面に開口している。

収容孔４２は、径方向の一端部に開口部４１に連通する第１係止孔４４が形成されている。一方、テンションバー４３は、円柱形状をなし、収容孔４２内で回動可能に支持されており、第１係止孔４４に対向する位置に第２係止孔４５が形成されている。この場合、刷版３４は、咥え側端部３４ａ及び咥え尻側端部３４ｂを胴本体３２の開口部４１に挿入可能であり、第１係止孔４４は、刷版３４の咥え側端部３４ａが挿入されて係止可能である一方、第２係止孔４５は、刷版３４の咥え尻側端部３４ｂにおける係止端部３４ｃが挿入されて係止可能である。このとき、テンションバー４３が、図５にて時計周り方向に回動することで、第２係止孔４５が刷版３４の咥え尻側端部３４ｂ（係止端部３４ｃ）を係止することができる。

スリーブ３３は、図１及び図５に示すように、外周部に刷版３４の端部としての咥え側端部３４ａ、咥え尻側端部３４ｂを挿入可能な貫通孔５１が形成されている。この貫通孔５１は、胴本体３２及びスリーブ３３の軸方向に沿って形成され、各端部にスリーブ３３の周方向に沿う加工孔５２，５３が形成されている。そのため、この貫通孔５１は、各端部がスリーブ３３の端部には開口しておらず、ここに円環部５４，５５が設けられている。

また、貫通孔５１は、スリーブ３３の径方向に対して、周方向に所定角度だけ傾斜している。即ち、この貫通孔５１は、２つの内壁面５１ａ，５１ｂが対向して位置し、この内壁面５１ａ，５１ｂは、略平行をなし、スリーブ３３の径方向に対して周方向に所定角度θだけ傾斜している。この内壁面５１ａ，５１ｂの傾斜方向は、スリーブ３３の内側から外側に向けて、刷版３４の咥え尻側端部３４ｂを挿入する側に傾斜している。なお、胴本体３２の開口部４１も、スリーブ３３の貫通孔５１と同様に、内壁面４１ａ，４１ｂが胴本体３２の径方向に対して、周方向に所定角度θだけ傾斜しており、胴本体３２とスリーブ３３の回転相対位置により、開口部４１と貫通孔５１が一致したとき、両者はほぼ一直線上に一致する。

上述したように、本実施例では、版胴３１は、スリーブ３３の着脱によりその外径、つまり、周長を変更可能であることから、全長の短い刷版３５を用いる場合には、この版胴３１が胴本体３２だけで機能し、全長の長い刷版３４を用いる場合には、この胴本体３２の外周部にスリーブ３３を装着して機能する。即ち、図４に示すように、全長の短い刷版３５を用いる場合には、刷版３５を胴本体３２の外周部に直接巻き付け、咥え側端部３５ａ及び咥え尻側端部３５ｂを開口部４１から挿入し、保持装置３６により保持する。一方、図５に示すように、全長の長い刷版３４を用いる場合には、刷版３４を胴本体３２に装着されたスリーブ３３の外周部に巻き付け、咥え側端部３４ａ及び咥え尻側端部３４ｂを貫通孔５１を通して開口部４１に挿入し、保持装置３６により保持する。

このとき、全長の長い刷版３４を装着する場合、刷版３４をスリーブ３３の外周部に巻き付けた後、咥え側端部３４ａは、貫通孔５１の内壁面５１ａに係止し、胴本体３２の開口部４１まで挿入する必要はない。

また、この全長の長い刷版３４を用いる場合には、胴本体３２に対してスリーブ３３を装着した後、両者を一体に固定する必要がある。そのため、版胴３１は、図１及び図２に示すように、胴本体３２の外周部にスリーブ３３が装着された状態で、両者を一体に固定するクランプ装置６１を有している。このクランプ装置６１は、胴本体３２及びスリーブ３３における軸方向の一端部に、この胴本体３２とスリーブ３３との周方向及び軸方向における位置決めを行う位置決め部材６２が設けられると共に、胴本体３２及びスリーブ３３における軸方向の他端部に、胴本体３２とスリーブ３３とを一体に固定する固定部材６３が設けられている。

即ち、胴本体３２は、軸方向の他端部側に設けられた接続部３２ｄの外周面に位置決めピン７１が固定されている。一方、スリーブ３３は、軸方向の他端部に設けられたテーパ部３３ｃに、スリーブ３３の端面側に開口して位置決めピン７１が嵌入可能な位置決め切欠７２が形成されている。この場合、胴本体３２とスリーブ３３は、開口部４１と貫通孔５１の回転方向の位置が一致するように、位置決めピン７１の固定位置と位置決め切欠７２の形成位置が設定されている。また、リング形状をなす固定円盤７３は、中心部に支持軸３２ｆが挿通可能であり、円環形状をなす嵌入部７３ａが一体に形成されており、この嵌入部７３ａは、先細形状となるように内周部にテーパ面７３ｂが形成されている。

そして、胴本体３２にスリーブ３３を装着するには、まず、胴本体３２に対して、その一端部側からスリーブ３３の他端部側を挿入し、本体部３２ａ，３３ａ同士を嵌合させる。このとき、胴本体３２の位置決めピン７１とスリーブ３３の位置決め切欠７２とが嵌合するように、胴本体３２とスリーブ３３との回転方向における相対位置を調整する。

また、このとき、胴本体３２のテーパ部３２ｃに、スリーブ３３のテーパ部３３ｃが接触すると共に、胴本体３２のテーパ部３２ｂとスリーブ３３の段付部３３ｂが所定隙間をもって対向する。この状態で、固定円盤７３の嵌入部７３ａを、胴本体３２のテーパ部３２ｂとスリーブ３３の段付部３３ｂの所定隙間に嵌入する。なお、スリーブ３３の端面と固定円盤７３との間に弾性部材としてのスプリング（または、ゴムなど）７４を介装する。そして、複数の固定ボルト７５を固定円盤７３を貫通して胴本体３２のねじ穴に螺合する。

すると、固定円盤７３が胴本体３２のテーパ部３２ｂとスリーブ３３の段付部３３ｂの隙間に嵌入していくことで、固定円盤７３のテーパ面７３ｂと胴本体３２のテーパ部３２ｂが作用し、両者が強固に締結される。また、固定円盤７３が胴本体３２のテーパ部３２ｂとスリーブ３３の段付部３３ｂの隙間に嵌入することで、スプリング７４が圧縮されて弾性力が増加し、胴本体３２に対してスリーブ３３を他端部側に押圧する。すると、スリーブ３３のテーパ部３３ｃと胴本体３２のテーパ部３２ｃが作用し、且つ、スリーブ３３の端面が胴本体３２におけるフランジ部３２ｅの端面に当接することで、両者が強固に締結される。

即ち、スリーブ３３は、位置決め部材６２を構成する位置決めピン７１と位置決め切欠７２により胴本体３２との周方向の位置決めがなされ、位置決め部材６２を構成するフランジ部３２ｅやスプリング７４などにより胴本体３２との軸方向の位置決めがなされる。また、スリーブ３３は、固定部材６３を構成する固定円盤７３や固定ボルト７５により胴本体３２に固定される。

なお、固定円盤７３は、外側から抜きボルト７６が螺合し、先端部が胴本体３２の端面に当接可能となっている。また、胴本体３２のフランジ部３２ｅは、外側から抜きボルト７７が螺合し、先端部がスリーブ３３の端面に当接可能となっている。胴本体３２からスリーブ３３を抜きとる場合には、この各抜きボルト７６，７７を用いることで、固定円盤７３のテーパ面７３ｂと胴本体３２のテーパ部３２ｂとの楔係合、スリーブ３３のテーパ部３３ｃと胴本体３２のテーパ部３２ｃとの楔係合を解除することが可能となる。

このように構成された本実施例の印刷装置１３にて、ウェブＷに対して、全長の短い印刷物を印刷する場合には、全長の短い刷版３５を用いることとなり、胴本体３２にスリーブ３３を装着せずにこの胴本体３２を版胴３１として機能させる。即ち、版胴３１としての胴本体３２に対して、図４に示すように、刷版３５の咥え側端部３５ａを開口部４１に挿入すると共に第１係止部４４に係止し、胴本体３２を回転しながらその外周部に刷版３５を直接巻き付けていき、咥え尻側端部３５ｂを開口部４１に挿入すると共に、係止端部３５ｃを第２係止孔４５に挿入し、テンションバー４３を回動することで、この咥え尻側端部３５ｂを保持する。そして、版胴３１としての胴本体３２に刷版３５が装着された状態で印刷を行う。

一方、ウェブＷに対して、全長の長い印刷物を印刷する場合には、全長の長い刷版３４を用いることとなり、胴本体３２にスリーブ３３を装着して胴本体３２及びスリーブ３３を版胴３１として機能させる。即ち、胴本体３２の外周部にスリーブ３３を嵌合し、クランプ装置６１における位置決め部材６２により胴本体３２とスリーブ３３との周方向及び軸方向における位置決めを行うと共に、固定部材６３により胴本体３２にスリーブ３３を固定する。そして、版胴３１を構成するスリーブ３３に対して、図５に示すように、刷版３４の咥え側端部３４ａを貫通孔５１に挿入すると共に係止し、版胴３１を回転しながらスリーブ３３の外周部に刷版３４を巻き付けていき、咥え尻側端部３４ｂを貫通孔５１を通して開口部４１に挿入すると共に、係止端部３４ｃを第２係止孔４５に挿入し、テンションバー４３を回動することで、この咥え尻側端部３４ｂを保持する。そして、版胴３１を構成するスリーブ３３に刷版３４が装着された状態で印刷を行う。

なお、本実施例の商業用オフセット輪転印刷機は、各印刷ユニット２１，２２，２３，２４にて、版胴３１だけでなく、ブランケット胴も同様に、印刷物のサイズに応じてその周長、つまり、外径が変更可能な構成となっている。

即ち、図７に示すように、ブランケット胴（印刷胴）８１は、胴本体（支持体）８２のみ、または、胴本体８２の外周部にスリーブ（印刷用スリーブ）８３が装着されて構成されており、このスリーブ８３を着脱可能とすることで、ブランケット胴８１の外径、つまり、周長を変更可能となっている。そして、ブランケット胴８１は、その外周部、つまり、スリーブ８３の外周面にブランケット（板状部材）８４を装着可能となっている。

即ち、胴本体８２は、外周部にブランケット８４の端部としての咥え側端部８４ａ、咥え尻側端部８４ｂを保持可能な保持装置８６が設けられている。この保持装置８６は、開口部９１を介して外部に無出しており、２つのテンションバー９２，９３が協働することで、咥え尻側端部８４ｂを保持可能となっている。

スリーブ８３は、外周部にブランケット８４の端部としての咥え側端部８４ａ、咥え尻側端部８４ｂを挿入可能な貫通孔９４が形成されている。この貫通孔９４は、胴本体８２及びスリーブ８３の軸方向に沿って形成されている。この場合、胴本体８２の開口部９１と、スリーブ９３の貫通孔９４とは、周方向において一致した位置に設けられている。

上述したように、本実施例では、ブランケット胴８１は、スリーブ８３の着脱によりその外径、つまり、周長を変更可能であることから、全長の短いブランケットを用いる場合には、このブランケット胴８１が胴本体８２だけで機能し、全長の長いブランケットを用いる場合には、この胴本体８２の外周部にスリーブ８３を装着して機能する。即ち、全長の短いブランケットを用いる場合には、ブランケットを胴本体８２の外周部に直接巻き付け、咥え側端部及び咥え尻側端部を開口部９１から挿入し、保持装置８６により保持する。一方、全長の長いブランケット８４を用いる場合には、ブランケットを胴本体８２に装着されたスリーブ８３の外周部に巻き付け、咥え側端部８４ａ及び咥え尻側端部８４ｂを貫通孔９４に挿入し、咥え側端部８４ａを貫通孔９４に係止し、咥え尻側端部８４ｂを開口部９１に挿入し、保持装置８６により保持する。

なお、図示しないが、ブランケット胴８１は、版胴３１と同様に、胴本体８２の外周部にスリーブ８３が装着された状態で、両者を一体に固定するクランプ装置を有している。

このように実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴にあっては、印刷胴を刷版３４，３５が巻き付けられる版胴３１として構成し、円柱形状をなす胴本体３２と、この胴本体３２の外周部に装着される円筒形状をなすスリーブ３３と、胴本体３２の外周部に設けられて刷版３４，３５における各端部３４ａ，３４ｂ，３５ａ，３５ｂを保持可能な保持装置３６と、スリーブ３３に設けられて外周部に装着される刷版３４の各端部３４ａ，３４ｂを挿入可能な貫通孔５１とを設けている。

従って、スリーブ３３に貫通孔５１を形成し、胴本体３２に保持装置３６を設けることで、スリーブ３３にこの保持装置３６を設ける必要がなくなり、また、外径の大きな胴本体３２に保持装置３６を設けることが容易となり、版胴３１やスリーブ３３の構造の簡素化を可能とすることができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、貫通孔５１をスリーブ３３の軸方向に沿って形成すると共に、長手方向の各端部をスリーブ３３の端部に開口させないで円環部５４，５５を形成している。従って、貫通孔５１がスリーブ３３の軸方向の各端部に開口しておらず、スリーブ３３における各軸端部に円環部５４，５５が存在することで、貫通孔５１の高精度な加工が容易となり、加工性を向上することができると共に、加工コストを低減することができる。仮に、この貫通孔５１をスリーブ３３の端部に開口するスリットとした場合、スリーブ３３を固定した状態でこのスリットを形成することは困難であり、また、胴本体３２への装着した後における高精度な外径寸法の確保が困難となる。また、スリーブ３３の軸方向に沿って形成された貫通孔５１が、円環部５４，５５により端部に開口していないことから、高い剛性を確保することができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、貫通孔５１にて、スリーブ３３の軸方向における各端部にスリーブ３３の周方向に沿う加工孔５２，５３を設けている。従って、先に加工孔５２，５３を形成してから貫通孔５１を形成することで、この貫通孔５１をスリーブ３３に容易に、且つ、高精度に形成することができ、加工性を向上することができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、貫通孔５１をスリーブ３３の径方向に対して周方向に所定角度θだけ傾斜させている。従って、貫通孔５１が周方向に傾斜することで、刷版３４の咥え尻側端部３４ｂをこの貫通孔５１に挿入しやすくなり、版交換作業の作業性を向上することができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、スリーブ３３の外周部に装着される刷版３４にて、咥え側端部３４ａを貫通孔５１に係止可能とし、咥え尻側端部３４ｂを保持装置３６に保持可能としている。従って、刷版３４は、咥え側端部３４ａを長く形成する必要がなくなり、構造の簡素化を可能とすることができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、胴本体３２の外周部にスリーブ３３が装着された状態で固定するクランプ装置６１を設けている。従って、クランプ装置６１により胴本体３２の外周部にスリーブ３３を適正に固定することができ、刷版３４の位置ずれを防止することができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴では、クランプ装置６１として、胴本体３２及びスリーブ３３における軸方向の一端部に、胴本体３２とスリーブ３３との周方向及び軸方向における位置決めを行う位置決め部材６２を設けると共に、胴本体３２及びスリーブ３３における軸方向の他端部に、胴本体３２とスリーブ３３とを一体に固定する固定部材６３を設けている。従って、位置決め部材６２により胴本体３２に対するスリーブ３３の周方向及び軸方向の位置を適正位置に設定することができると共に、固定部材６３により強固に固定することができ、作業精度の向上及び作業コストの低減を可能とすることができる。

また、実施例１の印刷用スリーブ及び印刷胴にあっては、印刷胴をブランケット８４が巻き付けられるブランケット胴８１として構成し、円柱形状をなす胴本体８２と、この胴本体８２の外周部に装着される円筒形状をなすスリーブ８３と、胴本体８２の外周部に設けられてブランケット８４における各端部８４ａ，８４ｂの端部を保持可能な保持装置８６と、スリーブ８３に設けられて外周部に装着されるブランケット８４の各端部８４ａ，８４ｂを挿入可能な貫通孔９４とを設けている。

従って、スリーブ８３に貫通孔９４を形成し、胴本体８２に保持装置８６を設けることで、スリーブ８３にこの保持装置８６を設ける必要がなくなり、また、外径の大きな胴本体８２に保持装置８６を設けることが容易となり、ブランケット胴８１やスリーブ８３の構造の簡素化を可能とすることができる。

図８は、本発明の実施例２に係る印刷胴としての版胴を表す断面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の記号を付して詳細な説明は省略する。

実施例２の印刷胴としての版胴３１は、胴本体３２のみ、または、胴本体３２の外周部にスリーブ３３が装着されて構成されており、このスリーブ３３を着脱可能とすることで、版胴３１の外径、つまり、周長を変更可能となっている。そして、版胴３１は、その外周部、つまり、胴本体３２またはスリーブ３３の外周面に刷版３４（３５）を装着可能となっている。

即ち、胴本体３２は、外周部に開口部４１が形成されると共に、この開口部４１を通して刷版３４の端部としての咥え側端部３４ａ、咥え尻側端部３４ｂを保持可能な保持装置３６が設けられている。スリーブ３３は、外周部に刷版３４の端部としての咥え側端部３４ａ、咥え尻側端部３４ｂを挿入可能な貫通孔５１が形成されている。

そして、胴本体３２にて、開口部４１は、内壁面４１ａ，４１ｃが胴本体３２の径方向に対して周方向に所定角度θだけ傾斜している。また、スリーブ３３にて、貫通孔５１は、内壁面５１ａ，５１ｂがスリーブ３３の径方向に対して周方向に所定角度θだけ傾斜している。そして、胴本体３２の開口部４１とスリーブ３３の貫通孔５１とは、周方向の所定の位置で一致している。

本実施例にて、開口部４１の胴本体３２における周方向の長さＢが、貫通孔５１のスリーブ３３における周方向の長さＡより長く設定されている。即ち、開口部４１及び貫通孔５１にて、一方、つまり、咥え側端部３４ａを係止する側の内壁面４１ａ，５１ａは、ほぼ平坦となるように周方向の位置が規定されている。また、開口部４１及び貫通孔５１にて、他方、つまり、咥え尻側端部３４ｂを係止する側の内壁面４１ｂ，５１ｂは、開口部４１の内壁面４１ｂが開口部４１から凹むように周方向の位置が規定されている。

従って、開口部４１及び貫通孔５１では、開口部４１の内壁面４１ｂを貫通孔５１の内壁面５１ｂより奥側、つまり、開口部４１から胴本体３２の外周面が露出しないような位置に設けることで、刷版３４の咥え尻側端部３４ｂを貫通孔５１から開口部４１を通して保持装置３６まで挿入するとき、この咥え尻側端部３４ｂの先端が胴本体３２の外周面に接触することはなく、スムーズに開口部４１に挿入することができ、刷版３４の装着性を向上することができる。

また、実施例２の印刷用スリーブ及び印刷胴にあっては、印刷胴を刷版３４，３５が巻き付けられる版胴３１として構成し、胴本体３２の外周部にスリーブ３３を装着可能とし、胴本体３２の外周部に刷版３４，３５の端部を保持可能な保持装置３６を設ける一方、スリーブ３３に刷版３４の端部を挿入可能な貫通孔５１を設け、胴本体３２の開口部４１の周方向の長さを、貫通孔５１の周方向の長さより長く設定している。

従って、刷版３４，３５の端部を貫通孔５１から開口部４１を通して保持装置３６まで挿入するとき、この刷版３４，３５の端部が胴本体３２の外周面に接触することはなく、容易に挿入することができ、作業性を向上することができる。

なお、本発明は、外周部に板状部材を巻き付けて使用する印刷胴、及び、この印刷胴を構成するスリーブに関するものである。上述した各実施例では、印刷胴を刷版及びブランケット胴に適用して説明したが、これらに限定されるものではなく、他の胴、例えば、ゴムを巻き付けて使用する各種の転写胴、ゴムやステンレス、樹脂板などを巻き付けて使用するプレス胴などに適用することもできる。

また、本実施例では、印刷胴を商業用オフセット輪転印刷機に適用して説明したが、新聞印刷機や枚葉印刷機などに適用することもできる。

本発明に係る印刷用スリーブ及び印刷胴は、スリーブに板状部材の端部を挿入可能な貫通孔を設ける一方、支持体に板状部材の端部を保持可能な保持装置を設けることで、構造の簡素化を可能とするものであり、いずれの印刷機にも適用することができる。

１１ 給紙装置
１２ インフィード装置
１３ 印刷装置
１４ 乾燥装置
１５ 冷却装置
１６ ウェブパス装置
１７ 折り装置
１８ 排紙装置
３１ 版胴（印刷胴）
３２ 胴本体
３３ スリーブ
３４，３５ 刷版（板状部材）
３６ 保持装置
４１ 開口部
５１ 貫通孔
５２，５３ 加工孔
６１ クランプ装置
６２ 位置決め部材
６３ 固定部材
８１ ブランケット胴（印刷胴）
８２ 胴本体
８３ スリーブ
８４ ブランケット（板状部材）
８６ 保持装置
９１ 開口部
９４ 貫通孔

Claims (10)

1. 支持体の外周部に装着される円筒形状をなす印刷用スリーブにおいて、
   軸方向に沿って貫通孔が形成される、
   ことを特徴とする印刷用スリーブ。
2. 前記貫通孔は、長手方向の各端部が開口していないことを特徴とする請求項１に記載の印刷用スリーブ。
3. 板状部材が巻き付けられる印刷胴において、
   円柱形状をなす支持体と、
   該支持体の外周部に装着される円筒形状をなすスリーブと、
   前記支持体の外周部に設けられて前記板状部材の端部を保持可能な保持装置と、
   前記スリーブに設けられて外周部に装着される前記板状部材の各端部を挿入可能な貫通孔と、
   を備えることを特徴とする印刷胴。
4. 前記貫通孔は、前記スリーブの軸方向に沿って形成されると共に、長手方向の各端部が前記スリーブの端部に開口していないことを特徴とする請求項３に記載の印刷胴。
5. 前記貫通孔は、前記スリーブの軸方向における各端部に前記スリーブの周方向に沿う加工孔が設けられることを特徴とする請求項３または４に記載の印刷胴。
6. 前記貫通孔は、前記スリーブの径方向に対して周方向に所定角度だけ傾斜していることを特徴とする請求項３から５のいずれか一つに記載の印刷胴。
7. 前記支持体は、外周部に前記板状部材の端部を前記保持装置まで挿入可能な開口部が形成され、該開口部の前記支持体における周方向の長さが、前記貫通孔の前記スリーブにおける周方向の長さより長く設定されることを特徴とする請求項３から６のいずれか一つに記載の印刷胴。
8. 前記スリーブの外周部に装着される前記板状部材は、一端部が前記貫通孔に係止可能であり、他端部が前記保持装置に保持されることを特徴とする請求項３から７のいずれか一つに記載の印刷胴。
9. 前記支持体の外周部に前記スリーブが装着された状態で固定するクランプ装置が設けられることを特徴とする請求項３から８のいずれか一つに記載の印刷胴。
10. 前記クランプ装置は、前記支持体及び前記スリーブにおける軸方向の一端部に前記支持体と前記スリーブとの周方向及び軸方向における位置決めを行う位置決め部材が設けられると共に、前記支持体及び前記スリーブにおける軸方向の他端部に前記支持体と前記スリーブとを一体に固定する固定部材が設けられることを特徴とする請求項９に記載の印刷胴。
    

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