JP2011172526A - 酵母宿主 - Google Patents

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Tomotake Morita
友岳 森田
Masaru Kitamoto
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Abstract

【課題】ヒト等の高等動物由来の異種タンパク質遺伝子を導入した形質転換体を作成するために好適な遺伝子欠損宿主を提供する。
【解決手段】マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産能を有するシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母のMEL生合成遺伝子を欠損させた、形質転換体作成用の改良宿主。該改良宿主は、ヒト等の高等動物由来の異種タンパク質遺伝子発現に好適であり、また、該宿主に異種タンパク質遺伝子を導入して得た形質転換体は、異種タンパク質の生産性に優れる。
【選択図】なし

Description

本発明は、形質転換体による異種タンパク質の生産効率を向上させるための、遺伝子改変した真核細胞微生物宿主および該宿主の構築方法に関する。
組換えDNA技術を用いた異種タンパク質の生産はエッシェリシア・コリ(Escherichia coli)をはじめとした様々な微生物や動物細胞を宿主として行われている。また様々な生物由来のタンパク質(本明細書では、ポリペプチドを含む意味で使用する)が生産対象とされ、既に多くのものが工業的に生産され、医薬品等に用いられている。
異種タンパク質生産のための種々の宿主が開発されてきた中で酵母は真核細胞であるため、転写、翻訳などの点で動植物と共通性が高く動植物のタンパク質発現が良好であると考えられ、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)などが宿主として広く使用されている。分裂酵母、特にシゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)は、出芽ではなく分裂という手段で増殖し、動物細胞に近い性質を持つことが知られており、異種タンパク質を発現させる宿主として用いられている。
酵母を用いた異種タンパク質生産系は、既に知られている微生物学の方法と組換えDNA技術を用いて容易に実施でき、かつ高い生産能力を示すため、既に大容量の培養も実施されて実生産に急速に利用されてきている。実生産にあたり、実験室で得られた菌体あたりの高い産生効率はスケールアップ後も維持される。
しかしながら、実生産の場合にしばしば求められる、より低コストの生産法を考えた場合、菌体の増殖効率そのものの向上、目的異種タンパク質の分解の抑制、酵母特有の修飾の効率的実施、栄養源の利用効率の向上、などの異種タンパク質の産生効率を向上させる方策が必要と考えられる。たとえば、生育のために培地に添加した炭素源から目的とする異種タンパク質への変換効率をより高めることができれば、菌体増殖ひいては異種タンパク質の産生効率が格段に上昇することが期待できる。
異種タンパク質の産生効率を向上させるための手法として、異種タンパク質産生に不要または有害な宿主ゲノム部分の一部または全部を削除または不活化した宿主を用いることにより、異種タンパク質の産生効率を向上させようとする試みが行われている(特許文献1参照)。しかし、この手法は、削除または不活性化したゲノム部分(特に遺伝子部分)の種類に応じて異種タンパク質の産生効率が変化するため、より高い産生効率を達成するためには改変対象とするゲノム部分の更なる検討が必要であると考えられている。
一方、担子菌類の真菌であるシュードザイマ(Pseudozyma)種は、真菌の最も進化したクラスの員であり、そして他のいかなる微生物のクラスよりも系統発生的に動物細胞に近い。このことはそれらが酵母のサッカロミセス(Saccharomyces)およびピヒア(Pichia)のようなより低級の真菌、または大腸菌(E.coli)およびストレプトミセス(Streptomyces)種のようなバクテリアよりも複雑なタンパク質を合成することを示す。しかしシュードザイマ(Pseudozyma)種は系統学以外、遺伝学および生理学的にほとんど知られていない。
数種のシュードザイマ(Pseudozyma)は、工業的に重要な天然の酵素的タンパク質を生産することが知られており、シュードザイマ(Pseudozyma)種の産生酵素タンパク質としては、例えば、天然のアミラーゼ(非特許文献1)、及び天然リパーゼB(非特許文献2)が挙げられる。
過去数年、真菌を含む多くの生物に関する遺伝的形質転換系が成功裏に開発された。しかしシュードザイマ(Pseudozyma)種は、これらの生物内での遺伝的形質転換も組換え産物の生産を行うための方法も現時点で知られていないので、無視されたようだ。
また、シュードザイマ(Pseudozyma)種は、菌体外に大糖型バイオサーファクタントの一種であるマンノシルエリスリトールリピッド(以下、MELという)を分泌生産することが知られている。
マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、高い界面活性作用を有し、界面活性剤又はファインケミカルの種々の触媒として用いられる。ヒト急性前骨髄性白血病細胞性HL60株にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると顆粒系を分化させる白血病細胞分化誘導作用があり、また、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると神経突起の伸長が生ずる神経系細胞株に対する分化誘導作用等の生理活性作用を有する。更に、微生物産生の糖脂質として初めて、メラノーマ細胞のアポトーシスを誘導することが可能となり、癌細胞増殖抑制作用がある。これらの生理作用から見て、マンノシルエリスリトールリピッドには抗ガン剤等の医薬としての用途が期待される。また、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)には生分解性があり、高い安全性を有すると考えられる。このように、MELは、生分解性が高く、低毒性で環境に優しく、新規な生理機能を持つ界面活性剤としてだけでなく、優れた機能性を有する素材として、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等の幅広い産業での利用が期待されている。
現在MELは、洗剤、化粧品等幅広い分野で工業利用が進められており、MELの遺伝子導入剤としての利用(特許文献1参照)およびリポソーム形成剤としての利用(特許文献2参照)、MELのスキンケアおよびヘアケア剤としての利用(特許文献3参照)、乳化剤・可溶化剤(特許文献4参照)、タンパク質分離用担体(特許文献5参照)などの報告がある。
しかし、シュードザイマ属酵母を異種タンパク質生産用の宿主として用いること及びそのための検討は、現在ほとんどなされていない。
国際公開第02/101038号パンフレット
De Mot R.,Verachtert H. Purification and characterization of extracellular alpha−amylase and glucoamylase from the yeast Candida antarctica CBS 6678. Eur. J. Biochem.,164,643−654 (1987). Martinelle M.,Hult K.,Kinetics of acyltransfer reactions in organic media catalysed by Candida antarctica lipase B. Biochim. Biophys. Acta,1251,191−197(1995).
上記したように、担子菌類の真菌であるシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母は、真菌の最も進化したクラスの1員であり、この点では、高等生物であるヒト等の動物由来の異種タンパクを生産するための宿主微生物としては好適と考えられるものの、異種タンパク質の生産効率等を含め宿主微生物としての適正についての検討は十分なされていない。本発明の課題は、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母の宿主としての適正を検討し、異種タンパク質の生産性が高く、工業的スケールで適用可能な宿主微生物としてのシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母を提供する点にある。
本発明者は、上記課題に鑑み、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母において物質の生合成系において消費されるエネルギーを異種タンパク質の生産に振り向け、異種タンパク質の生産性を向上させることを意図し、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母の有する種々の物質の生合成系に関与する遺伝子の失活について検討した。この中で、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母はマンノースーエリスリトールリピド(以下、MELという。)を多量に産生するので、このMEL生合成に消費されるエネルギーは大きく、このMEL生合成系の消費エネルギーを、異種タンパク質の生産に振り向けられれば、異種タンパク質の生産性の向上につながる可能性があるが、MELは、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母に対する、浸透圧、温度等種々のストレスに対する保護機能を有していると予想された。すなわち、MEL生合成経路をブロックした場合、耐浸透圧性が低下し、例えば、高濃度の原料あるいは栄養含有培地を使用することができない、あるいは培養温度が低下する等の異種タンパク質の生産性向上において不利になる問題点も予想された。そこで本発明者は、あえて、実際にシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母MEL生合成系遺伝子を欠損させて、耐浸透圧性、温度条件を調べたところ、意外にも耐浸透圧性はほとんど低下せず、また最適培養温度は低下するもののほとんど問題ないことが明らかとなり、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)マンノシルエリスリトールリピッドの生合成経路が欠損しているシュードザイマ属酵母からなることを特徴とする、形質転換体作成用宿主。
(2)マンノシルエリスリトールリピッド生合成経路の欠損が、マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子の欠損によるものである、上記(1)に記載の宿主。
(3)マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子配列中に形質転換体選択マーカー遺伝子が挿入されていることを特徴とする、上記(2)に記載の宿主。
(4)欠損したマンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子がマンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であることを特徴とする、上記(2)または(3)に記載の宿主。
(5)請求項(1)〜(4)のいずれか記載の宿主に異種タンパク質をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする形質転換体。
(6)シュードザイマ属酵母のマンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子に、形質転換体選択マーカー遺伝子を挿入することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の宿主の作成方法。
(7)上記形質転換体選択マーカー遺伝子の挿入が、マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子の配列中に形質転換体マーカー遺伝子カセットを挿入した遺伝子断片を用いる相同遺伝子組換法によるものであることを特徴とする、上記(6)の方法。
(8)マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子がマンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であることを特徴とする、上記(6)または(7)に記載の方法。
(9)上記(5)に記載の形質転換体を培地に培養することを特徴とする、異種タンパク質の製造方法。
本発明によれば、マンノシルエリスリトールリピド(MEL)生合成経路が欠損したシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母の改良型宿主を提供することができる。
該改良型宿主はマンノシルエリスリトールリピドの生合成にエネルギーを消費せず、また、マンノシルエリスリトールリピドの異種タンパク質に対する親和性に起因する異種タンパク質生産への悪影響がないため、異種タンパク質を効率良く生産することが可能になり、シュードザイマ属酵母を宿主とした新たな異種タンパク質生産技術の開発に著しく貢献できる。
MEL生合成必須遺伝子を破壊するための遺伝子断片を示す模式図である。 形質転換体がMEL生合成必須遺伝子を破壊するための遺伝子断片を保有することを確認したPCR分析の結果を示す電気泳動の図である。 形質転換体がMEL生合成必須遺伝子を破壊するための遺伝子断片を保有し、破壊されてないMEL生合成必須遺伝子を保有しないことを確認したサザン分析の結果を示す図である。 形質転換体のMEL生産能力が欠損していることを示す図である。 形質転換体において、MELの糖骨格を合成する反応が不活性化していることを示す図である。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明は、異種タンパク質生産用に用いる宿主微生物に係り、該宿主微生物はMEL生産能を有するPseudozyma属の酵母を異種タンパク質生産に適するように改良したものである。
MELは、糖型バイオサーファクタントの一種であり、マンノース、あるいはヒドロキシル基が一部アセチル化したマンノースと、エリスリトールを糖骨格(親水基)として、1〜3本の脂肪酸を親水基として有する糖脂質である。MELの一般式1を化1に示す。
一般式1中、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アセチル基、又は炭素原子数1〜14、好ましくは3〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪酸残基を表す。また、R3およびRがアセチル基である構造物はMEL-A、Rがアセチル基でありR3が水素である構造物はMEL-B、R3がアセチル基でありR4が水素である構造物はMEL-C、R3およびRが水素である構造物はMEL-Dと定義されている。
マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、高い界面活性作用を有し、界面活性剤又はファインケミカルの種々の触媒として用いられる他、白血病細胞、神経系細胞に対する分化誘導、癌細胞増殖抑制作用等の生理作用があり、抗ガン剤等の医薬としての用途が期待され、一方、MELは、生分解性が高く、低毒性で環境に優しく、新規な生理機能を持つ界面活性剤としてだけでなく、優れた機能性を有する素材として、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等の幅広い産業での利用が期待されているものである。
MEL生産能を有するシュードザイマ(Pseudozyma)属酵母としては、例えば、シュードザイマ アルタールクティカ(Pseudozyma antarctica)、シュードザイマ アフィディス(Pseudozyma aphidis)、シュードザイマ フロッキュローサ(Pseudozyma flocculosa)シュードザイマ フシホルマータ(Pseudozyma fusiformata)、シュードザイマ ルグローサ(Pseudozyma rugulosa)、シュードザイマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)に属する菌株が挙げられるが、あるいは常法および/または分子同定技術に基づきシュードザイマ(Pseudozyma)属の一員と同定され得る菌株も、MEL産生能を有する限り、本願発明の改良型宿主を作成するための細胞材料として用いることができる。これらは、環境中から単離された菌株、または保存機関から分譲された菌株によらず、あるいはその継代培養であってもよい。
シュードザイマ属酵母におけるMEL産生においては、様々な酵素が関与しており、例えば、糖骨格であるマンノースあるいはエリスリトールを合成する酵素、マンノースとエリスリトールを結合する反応を触媒するマンノシルトランスフェラーゼ、脂質を合成する酵素、脂質をマンノシルエリスリトールに結合させるアシルトランスフェラーゼ、アセチル基をマンノシルエリスリトールに結合させるアセチルトランスフェラーゼ、マンノシルエリスリトールを菌体外に排出するためのトランスポーター、マンノシルエリスリトールリピッドを合成する細胞小器官の機能を制御するタンパク質、および、上記タンパク質をコードする遺伝子の発現制御にかかわる転写因子などが挙げられる。
本発明においては、シュードザイマ属酵母におけるマンノシルエリスリトールリピドの生合成をブロックするため、MEL産生に関与する酵素遺伝子の機能を欠損させるが、その標的となる遺伝子としては、マンノシルエリスリトールの合成からMEL合成に至るMEL生合成経路において直接関与する酵素遺伝子(MEL生合成系遺伝子)が好ましく、その中では、MELの糖骨格であるマンノシルエリスリトールの合成を触媒するマンノーストランスフェラーゼをコードする遺伝子(以下、PaEMT1遺伝子という)であることがより好ましい。
本発明において、マンノシルエリスリトール生合成系遺伝子を欠損させるための手法として、例えば、相同遺伝子組換法が挙げられる。これは、マンノシルエリスリトール生合成系遺伝子のORF中に、薬剤耐性あるいは栄養要求性を相補する遺伝子等の選択マーカー遺伝子を発現する遺伝子カセットを挿入した遺伝子断片を作成し、該遺伝子断片を上記シュードザイマ属酵母に導入し、シュードザイマ属酵母のMEL生合成系遺伝子中にマーカー遺伝子を相同組み換えにより挿入するものである。マーカー遺伝子の挿入によりMEL生合成系遺伝子が欠損したシュードザイマ属酵母は、上記マーカー遺伝子の発現により選択することができる。
使用するマーカー遺伝子としては、遺伝子工学において、通常使用される形質転換体の選択マーカー遺伝子を用いることができる。これには、例えばハイグロマイシン、ゼオシン、カナマイシン、クロラムフェニコール、G418等の薬剤に耐性を付与する遺伝子、ウラシル合成酵素、ロイシン合成酵素、アデニン合成酵素、リシン合成酵素等の栄養要求性を相補する遺伝子が挙げられる。
上記のようにして得られた、MEL生合成系遺伝子欠損型シュードザイマ属酵母(以下、欠損型シュードザイマ属酵母という場合がある。)のMEL生産性の確認は、以下のようにして行う。
すなわち、シュードザイマ(Pseudozyma)属酵母を培養した後、培養液に等量の酢酸エチルを添加して、培養液中の脂質および糖脂質成分を抽出する。抽出した脂質および糖脂質成分のうち、糖脂質は、TLCプレート上で、アンスロン硫酸試薬で青緑色に呈色することにより糖脂質成分であると判断できる。特に、MELは、精製標品を標準物質として使用することで、MELであることを判断できる。また、TLCプレート上に青緑色に呈色が見られない場合、TLCに供したサンプルの生産株はMEL生産能力を欠損していると判定できる。
MEL生合成系遺伝子欠欠損型シュードザイマ属酵母は、異種タンパク質遺伝子を導入するための改良型宿主として用いられ、異種タンパク質をコードする遺伝子の導入により得られた形質転換体は、異種タンパク質を効率的に発現する。
ここで、「異種タンパク質」とは、本願発明の改良型宿主の親株であるシュードザイマ属酵母が本来的に産生しない任意のタンパク質、ペプチド、ポリペプチド等を意味する。したがって、異種タンパク質をコードする遺伝子は、ヒトを含む動物、植物、真菌、バクテリアまたは任意の他の生物種に由来する遺伝子のものでよく、また、これら遺伝子を修飾したものあるいは人工的合成された遺伝子であってもよい。本発明の改良型宿主はシュードザイマ属酵母から作成されたものであり該酵母は真菌の最も進化したクラスの1員であり、この点で、高等生物であるヒト等の動物由来の異種タンパクの生産に特に適する。
本発明の改良型宿主は、例えば、異種タンパク質遺伝子をプラスミド等のベクターに挿入した組換えベクターを用いて形質転換させ、これにより異種タンパク質を生産するための形質転換体を得ることができる。形質転換の手法は、特に限定されず、例えば、PEG-カルシウム法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等の公知の方法を用いることができる。
本発明の改良型宿主あるいは該改良型宿主を用いて得られた異種タンパク質形質転換体を培養するための培地は、シューザイマ属酵母の培養に一般的に用いる培地でよく、主原料として炭素原料にグルコース、ショ糖、廃糖蜜などの糖質を用いることが望ましい。糖質に加えて、もしくは置き換えて、油脂類などを炭素源として用いてもかまわない。窒素源としては、有機窒素源と無機窒素源を組み合わせて用いてもよい。用いる油脂類としては、特に限定されるものではない。植物油、脂肪酸またはそのエステル類を用いても良い。使用する有機窒素源としては、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、ポリペプトン、コーンスティープリカー、カザミノ酸、尿素などの内、一種類もしくは二種類以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは酵母エキスを1−8g/Lの濃度範囲で用いるとよい。無機窒素源としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、アンモニアなどの内、一種類もしくは二種類以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは硝酸ナトリウムを用いるとよい。
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
(シュードザイマ アルタールクティカ(Pseudozyma antarctica)の培養〉
ディープフリーザー(-80℃)で冷凍保存されたシュードザイマ アルタールクティカ(Pseudozyma antarctica)T−34株を30mLのYM培地(グルコース10g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L、ペプトン5g/L)に0.5mL播種し、28℃で1日間、振蕩培養した。
(aEMT1遺伝子を破壊するための遺伝子断片の構築〉
シュードザイマ アルタールクティカ(Pseudozyma antarctica)T−34株から定法にて抽出したゲノムDNAを鋳型として、PaEMT1遺伝子を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー(配列1および配列2)を用い、PCRにてPaEMT1遺伝子を増幅した。PaEMT1遺伝子の配列は配列3に記載する。PaEMT1遺伝子のHindIIIサイトに、プラスミドpUXV1(ATCC77463)由来のハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを含むHindIII処理断片を挿入して、図1に記載の遺伝子破壊断片(以下、ΔPaEMT1::Hyg遺伝子という)を作製した。
(シュードザイマ アルタールクティカ(Pseudozyma antarctica)の形質転換)
300mL容量の三角フラスコに30mLの形質転換用培地(0.67%Yeast Nitrogen Base、10%グリセロール)を調製し、121℃、20分間オートクレーブで滅菌した培地を用意した。上述の培養液を1.5mLを播種し、25℃で2日間、振蕩培養を行った。培養終了後の培養液から遠心分離にて回収した。菌体を滅菌した2Mスクロース液に懸濁した後、遺伝子破壊断片(ΔPaEMT1::Hyg遺伝子)と混和し、さらにエレクトロポレーターにて通電した。通電後の菌体を、200μg/Lハイグロマイシンを添加した平板培地(0.67%Yeast Nitrogen Base、10%グルコース)上に塗布して、25℃で5日間静置培養した。生育してきたハイグロマイシン耐性のコロニーを単離して、形質転換体として実験に使用した。
〈MEL生合成必須遺伝子の破壊の確認:PCR〉
上記の方法で得られた形質転換体から定法にて抽出したゲノムDNAを鋳型として、PaEMT1遺伝子を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー(配列1および配列2)の外側と内側にデザインしたオリゴヌクレオチドプライマー(配列4および配列5)を用い、PCRにてPaEMT1遺伝子を増幅した。この場合、宿主が従来有するPaEMT1は、約1200bpの増幅断片として得られる。また、宿主が遺伝子破壊断片(ΔPaEMT1::Hyg遺伝子)を有するならば、約4000bpの増幅断片として得られる。その結果を図2に示す。図2によると、形質転換体4は、PaEMT1を保有しておらず、ΔPaEMT1::Hyg遺伝子を保有している。また、形質転換体1、2、3、および5は、ハイグロマイシン耐性を示すものの、PaEMT1を保有しているため、目的の遺伝子破壊株ではないと分かる。なお、図2に記載のWTは、形質転換に用いた宿主細胞を示す。
〈MEL生合成必須遺伝子の破壊の確認:サザン解析〉
さらに、形質転換体4と5について、サザン解析を行い、PaEMT1遺伝子の状態をより詳細に解析した結果を、図3に示す。図3によると、形質転換体4は、PaEMT1を保有しておらず、ΔPaEMT1::Hyg遺伝子を保有している。また、形質転換体5は、PaEMT1遺伝子とΔPaEMT1::Hyg遺伝子を有しており、目的の遺伝子破壊株ではないと分かる。なお、図3に記載のWTは、形質転換に用いた宿主細胞を示す。
(MEL生産能力の判定:1)
PaEMT1遺伝子を破壊した形質転換体4(図4中に、ΔPaEMT1として記載する)を、炭素源として大豆油あるいはグルコースを含む培地(0.3%硝酸ナトリウム、0.03%硫酸マグネシウム、0.03%リン酸水素ナトリウム、0.1%酵母エキス)で培養し、MEL生産性の有無を薄相クロマトグラフィー(TLC)分析にて判定した。図4にTCL分析の結果を示す。図4によると、形質転換体4は、大豆油からもグルコースからもMELを生産することができない。したがって、形質転換体4はMEL生産性を欠損していることが分かる。なお、図4に記載のWTは、形質転換に用いた宿主細胞を示す。
(MEL生産能力の判定:2)
さらに、形質転換体4(図5中に、ΔPaEMT1として記載する)が、MELの糖骨格であるマンノシルエリスリトールを添加した培地で培養した後、培地中にMELを蓄積できるかどうかを調べた。図5の上部に記載の、グルコースあるいはマンノシルエリスリトールを添加した結果、形質転換体4は、マンノシルエリスリトールを添加した培地中でMELを生産できた。この結果から、形質転換体4は、MEL生合成経路のうち、マンノシルエリスリトールを合成する反応が不活性化されており、マンノシルエリスリトールに脂肪酸やアセチル基を付加させる反応には保持していることが分かる。すなわち、形質転換体4は、目的としたMEL生合成必須遺伝子を不活化した改良宿主である。

Claims (9)

  1. マンノシルエリスリトールリピッドの生合成経路が欠損しているシュードザイマ属酵母からなることを特徴とする、形質転換体作成用宿主。
  2. マンノシルエリスリトールリピッド生合成経路の欠損が、マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子の欠損によるものである、請求項1に記載の宿主。
  3. マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子配列中に形質転換体選択マーカー遺伝子が挿入されていることを特徴とする、請求項2に記載の宿主。
  4. 欠損したマンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子がマンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項2または3に記載の宿主。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の宿主に異種タンパク質をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする形質転換体。
  6. シュードザイマ属酵母のマンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子に、形質転換体選択マーカー遺伝子を挿入することを特徴とする、請求項1又は2に記載の宿主の作成方法。
  7. 上記形質転換体選択マーカー遺伝子の挿入が、マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子の配列中に形質転換体マーカー遺伝子カセットを挿入した遺伝子断片を用いる相同遺伝子組換法によるものであることを特徴とする、請求項6の方法。
  8. マンノシルエリスリトールリピッド生合成系遺伝子がマンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
  9. 上記請求項5に記載の形質転換体を培地に培養することを特徴とする、異種タンパク質の製造方法。
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