JP2011171439A - 導電性組成物及びそれを用いた太陽電池の製造方法並びに太陽電池 - Google Patents

導電性組成物及びそれを用いた太陽電池の製造方法並びに太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】太陽電池におけるn型半導体層との密着性を低下させることなく、n型半導体層との良好な電気的導通が得られる電極を形成するための組成物及びそれを用いた太陽電池の製造方法並びに太陽電池を提供する。
【解決手段】銀粉末と、PbOを含むガラス粉末と、樹脂及び溶剤からなるビヒクルと、銀粉末及びガラス粉末を分散し安定化させる分散剤とを含有し、銀粉末の組成物中の比率が70〜95質量%であり、ガラス粉末が組成物中の銀粉末100質量部に対して1〜10質量部含まれ、ガラス粉末はPbO−B23を主成分とし、ZnOを微量成分として更に含み、ガラス粉末に含まれるSiO2の含有量がガラス粉末100モル%に対して5.0モル%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に太陽電池の電極を形成するための導電性組成物に関する。更に詳しくは、太陽電池におけるn型半導体層との密着性を低下させることなく、n型半導体層との良好な電気的導通が得られる電極を形成するための組成物及びそれを用いた太陽電池の製造方法並びに太陽電池に関するものである。
従来、太陽電池としてp型半導体基板を有するものが知られている。この太陽電池にはpn接合が作成され、このpn接合に向かう適切な波長の放射線は、この太陽電池内に正孔−電子対を発生させる外部エネルギーの供給源として働くようになっている。そして、pn接合に存在する電位差のため、正孔と電子とはこの接合部を反対方向に横断し、それによって、電力を外部回路に送出することが可能な電流の流れを引き起こすようになっている。そして、このような構成を有するほとんどの太陽電池は、メタライズされているシリコンウェーハ、すなわち導電性である金属接点が設けられているシリコンウェーハの形をとる。
ここで、現在、地球上で使用されているほとんどの発電用の太陽電池は、シリコン太陽電池である。この太陽電池ではp型半導体基板が用いられ、そのp型半導体基板の上面にn型半導体層を形成してpn接合とし、そのn型半導体層の上に反射防止用のコーティングとして窒化ケイ素層を更に形成している。そして、その窒化ケイ素層を貫通してn型半導体層と導通する電極をその窒化ケイ素層の上に形成している。ここで、このようなシリコン太陽電池を生産するためのプロセスでは、一般に、大量生産を可能とすべく単純化を最大限に実現すること、及び製造コストを最小限に抑えることが目標とされている。このため、電極の形成に関してはいわゆる「ファイアスルー」と呼ばれる手順により行われている。
この電極を形成する「ファイアスルー」と呼ばれる具体的な手順は、先ず、スクリーン印刷等の方法を使用して窒化ケイ素層の上にペースト状の導電性組成物を直線状又は櫛歯状に印刷する。この導電性組成物中には銀粉末が含まれ、そのペーストを焼成することによりその銀を窒化ケイ素層に浸透させ、これによりそのペーストを焼成することにより得られた電極を窒化ケイ素層を貫通してその窒化ケイ素層の下のn型半導体層と導通させるようになっている。
しかし、導電性組成物のペーストを焼成して得られた電極では、導電性組成物に含まれるガラス成分が焼成中に溶融して、その一部がn型半導体層と電極界面に沈降し、絶縁性のガラス層を形成する。そのため、このガラス層が、窒化ケイ素層を貫通した電極とn型半導体層との電気的な導通を阻害し、電極、n型半導体層間の良好なオーミック接触性が得られないという問題があった。
このような問題点を解消するため、焼成後、電極が形成された太陽電池にフッ酸又はフッ化水素アンモニウム水溶液による浸漬処理を施し、電極とn型半導体層との電気的な導通を阻害する余分なガラス成分を除去する方法が知られている。しかし、このような処理を行うと、その処理条件によっては、接着剤として機能するガラス成分を過剰に除去してしまい、電極とn型半導体層間の接着強度を低下させ、更には電極が剥離するという問題が生じる。このため、太陽電池における電極とn型半導体層間の密着性及び導電性に関しては、一般にその両立が非常に困難であるため、この問題は太陽電池の分野における大きな課題の一つとされている。
これらを両立させるための試みとして、銀粉末と、鉛、ホウ素、珪素等の酸化物を既に含んでいるガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒を含む導電性ペーストに、更にSi、Pb等の酸化物を添加物として添加させたペーストを用いて第1電極層を形成し、該第1電極層より上に、これらの添加物を添加させない導電性ペーストを用いて最表層の電極層を形成することによって、2層以上の多層構造とする電極又はその形成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、上記従来から行われているフッ酸等による浸漬処理工程そのものを省略することによって、電極と基板との接着強度の劣化に関する問題を解決している。
特開2008−42095号公報(請求項1,4、段落[0033])
しかしながら、上記特許文献1に示された発明では、電極を多層構造に形成する必要があり、焼成等の工程も各層毎に行わなければならない。また、各層の形成に用いられる導電性ペーストについては、それぞれの各層毎にその組成を調整しなければならないため、製造までの工程数も非常に多くなり、製造コスト及び量産性の面で問題がある。
一方、上述した電極形成後にフッ酸等による浸漬処理を行う従来の製造方法において、適度に電極中のガラス成分を除去することができれば、このような煩雑な工程を経ずとも、n型半導体層との密着性及び導電性を両立させることができる。
本発明の目的は、電極形成後にフッ酸等による浸漬処理を行った際に、過剰にガラス成分が除去されずn型半導体層との間に十分な密着性が得られ、かつ余分なガラス成分が除去されることによりn型半導体層との良好な電気的導通が得られる電極を形成し得る導電性組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、電極とn型半導体層間に十分な密着性及び良好な導電性を備えた太陽電池及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点は、p型半導体基板14の一方に形成された窒化ケイ素層11を貫通して窒化ケイ素層11の下に形成されたn型半導体層12と導通する電極13を形成するための導電性組成物であって、銀粉末と、PbOを含むガラス粉末と、樹脂及び溶剤からなるビヒクルと、銀粉末及びガラス粉末を分散し安定化させる分散剤とを含有し、銀粉末の組成物中の比率が70〜95質量%であり、ガラス粉末が組成物中の銀粉末100質量部に対して1〜10質量部含まれ、ガラス粉末はPbO−B23を主成分とし、ZnOを微量成分として更に含み、ガラス粉末に含まれるSiO2の含有量がガラス粉末100モル%に対して5.0モル%以下であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、p型半導体基板14に酸又はアルカリによるエッチング処理を施して、p型半導体基板14のスライスダメージを除去する工程と、p型半導体基板14にテクスチャエッチング処理を施して、p型半導体基板14の上面にテクスチャ構造を形成する工程と、p型半導体基板14の上面にn型ドーパントを熱拡散させることにより、p型半導体基板14の上面にn型半導体層12を形成する工程と、n型半導体層12上に窒化ケイ素層11を形成する工程と、窒化ケイ素層11上に第1の観点の導電性組成物を直線状又は櫛歯状に印刷する工程と、p型半導体基板14の下面に、Alペーストを印刷する工程と、印刷した導電性組成物及びAlペーストを有するp型半導体基板14を700〜975℃の温度で1〜30分間焼成することにより、窒化ケイ素層11を貫通してn型半導体層12と導通する電極13を形成するとともに、p+層16、Al−Si合金層19、アルミニウム裏面電極18を形成する工程と、窒化ケイ素層11、n型半導体層12、電極13、p+層16、アルミニウム裏面電極18及びAl−Si合金層19が形成されたp型半導体基板14をフッ酸又はフッ化アンモニウムを含む水溶液に浸漬する工程を含む太陽電池の製造方法である。
本発明の第3の観点は、p型半導体基板14と、p型半導体基板14の上面に形成されたn型半導体層12と、n型半導体層12の上に形成された窒化ケイ素層11と、第1の観点の導電性組成物の焼き付けにより形成され窒化ケイ素層11を貫通してn型半導体層12と導通する直線状又は櫛歯状の電極13とを備える太陽電池である。
本発明の第1の観点の導電性組成物では、銀粉末と、PbOを含むガラス粉末と、樹脂及び溶剤からなるビヒクルと、銀粉末及びガラス粉末を分散し安定化させる分散剤とを含有し、銀粉末の組成物中の比率が70〜95質量%であり、ガラス粉末が前記組成物中の銀粉末100質量部に対して1〜10質量部含み、ガラス粉末はPbO−B23を主成分とし、ZnOを微量成分として更に含み、ガラス粉末に含まれるSiO2の含有量がガラス粉末100モル%に対して5.0モル%以下である。これにより、この組成物を用いて電極が形成された後に、フッ酸等による浸漬処理を行っても、電極とn型半導体層間の密着性を大幅に低下させる程、電極中のガラス成分が過剰に除去されることはない。そのため、これを用いて製造される太陽電池では、電極とn型半導体層間に十分な密着性及び良好な導電性が得られる。
本発明の第2の観点の製造方法では、本発明の導電性組成物を用いて直線状又は櫛歯状の電極を形成するため、フッ酸等による浸漬処理を行った際に、電極中のガラス成分を適度に除去させ、電極とn型半導体層間に十分な密着性及び良好な導電性を有する太陽電池を製造することができる。
本発明の第3の観点の太陽電池では、本発明の導電性組成物の焼き付けにより形成された直線状又は櫛歯状の電極を備えるため、フッ酸等による浸漬処理により、電極中のガラス成分が適度に除去され、電極とn型半導体層間に十分な密着性及び良好な導電性を備える。
本発明実施形態の導電性組成物を用いた太陽電池の断面図である。 その太陽電池の焼成前の状態を示す図1に対応する断面図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明の導電性組成物は、図1に示すように、太陽電池10におけるp型半導体基板14の一方に形成された窒化ケイ素層11を貫通してその窒化ケイ素層11の下に形成されたn型半導体層12と導通する電極13を形成するためのものである。そしてこの導電性組成物は、銀粉末と、PbOを含有するガラス粉末と、樹脂及び溶剤からなるビヒクルと、銀粉末及びガラス粉末を分散し安定化させる分散剤とを含む。ここで、銀粉末の組成物中の比率は70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この銀粉末が70質量%未満であると、焼成後の電極13の電気抵抗が高くなり、太陽電池10の特性低下を招くおそれがあるためであり、また、95質量%を超えると、導電性組成物の塗布性が低下する傾向にあるためである。ここで、銀粉末の組成物中の比率は75質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。また、その銀粉末は、その塗布性及び塗布膜の均一性の観点からは、その平均粒径は、レーザー回析散乱法により得られるところの平均粒径が0.1〜2.0μmであるのが好ましく、0.5〜1.0μmであることが更に好ましい。
ガラス粉末はPbOを含有するものであって、銀粉末100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である。このガラス粉末は、焼成後の電極13における密着性を向上させるために添加されるものであり、このガラス粉末が銀粉末100質量部に対して1質量部未満であると、焼成後の電極13の接着強度が低下する不具合があり、このガラス粉末が銀粉末100質量部に対して10質量部を越えると、ガラスの偏析が生じるおそれがある。このガラス粉末は、銀粉末100質量部に対して3質量部以上7質量部以下であることが更に好ましい。そして、このガラス粉末がPbOを含有するものに限定するのは、広範囲にガラス代範囲を有するからである。
また、本発明で使用するガラス粉末は、SiO2量が5.0モル%以下のものである。太陽電池10における電極13は、焼成の際に、いわゆるファイアスルーによって窒化ケイ素層11を貫通してその窒化ケイ素層11の下のn型半導体層12と導通する。しかし、焼成によって形成された電極13では、焼成時に組成物に含まれるガラス成分の一部が沈降してn型半導体層12との界面に絶縁性のガラス層を形成するため、電極13とn型半導体層12との導通を阻害する。そのため、電極13とn型半導体層12間に良好な電気的導通を得るために、焼成によって電極13が形成された後、フッ酸等による浸漬処理を行う。この浸漬処理の際のガラス成分の除去量は、主に電極13中に含まれているSiO2量に依存する。このため、組成物の作製に用いるガラス粉末のSiO2量を5.0モル%以下とすることにより、浸漬処理の際に過剰にガラス成分が除去されるのを防ぎ、電極13とn型半導体層12間の密着性低下を抑制することができる。ガラス粉末のSiO2量が5.0モル%を超えると、浸漬処理の際に、電極13とn型半導体層12との密着性を確保するために必要とされるガラス成分までもが除去され、接着強度を大幅に低下させる不具合が生じる。
使用するガラス粉末は、PbO−B23を主成分とし、ZnOを微量成分として更に含む。SiO2を主成分とするPbO−SiO2の二元系ガラス粉末を使用すると、上述のように、フッ酸等による浸漬処理の際の耐フッ酸性を大幅に低下させるからである。また、微量成分としてZnOを含ませることにより、ガラスの化学的耐久性を向上させるという効果が得られる。ガラス粉末中に含まれるZnOの含有量は、ガラス粉末100モル%に対して0.1〜30モル%の範囲が好ましい。
また、ガラス粉末の塩基度は0.3以上0.9以下であることが好ましい。この「塩基度」は、森永健次らにより提案されたものであり、例えば彼の著書「K.Morinaga, H.Yoshida And H.Takebe:J.Am Cerm.Soc.,77,3113(1994)」の中で以下に示すような式を用いてガラス粉末の塩基度を規定している。この抜粋を以下に示す。
「酸化物MiOのMi−O間の結合力は陽イオン−酸素イオン間引力Aiとして次式で与えられる。
i=Zi・Z02-/(ri+r02-2=Zi・2/(ri+1.40)2
i:陽イオンの価数,酸素イオンは2
i:陽イオンのイオン半径(Å),酸素イオンは1.40Å
このAiの逆数Bi(1/Ai)を単成分酸化物MiOの酸素供与能力とする。
i≡1/Ai
このBiをBCaO=1、BSiO2=0と規格化すると、各単成分酸化物のBi−指標が与えられる。この各成分のBi−指標を陽イオン分率により多成分系へ拡張すると、任意の組成のガラス酸化物の融体のB−指標(=塩基度)が算出できる。B=Σni・Bi
i:陽イオン分率
このようにして規定された塩基度は上記のように酸素供与能力をあらわし、値が大きいほど酸素を供与し易く、他の金属酸化物との酸素の授受が起こり易い。」
上記記載から明らかなように、「塩基度」とはガラス融体中への溶解の程度を表すものということができ、上記式により得られるガラス粉末の塩基度が0.3以上であれば、焼成により太陽電池10における窒化ケイ素層11を確実に貫通させることができ、得られた電極13とn型半導体層12との密着性を確保することができる。一方、ガラス粉末の塩基度が0.9以下であれば、焼成により得られた電極13がn型半導体層12を越えて直接p型半導体基板と導通するような自体を回避して、得られた電極13とn型半導体層12の十分な導通を得ることができる。なお、この塩基度は0.3以上0.8未満であることが更に好ましい。また、ガラス粉末のガラスの転移点は300℃〜450℃であることが好ましく、更に300℃〜400℃であることが好ましい。ガラスの転移点を300℃〜450℃とすることにより、焼成中にガラスが軟化して電極13と窒化ケイ素層11界面に流動し、ガラスと窒化ケイ素層11が反応することが可能となる。なお、ガラス転移点Tgは、次のように測定した。示差熱天秤(株式会社マックサイエンス社製 TG−DTA2000S)を用いて、この示差熱天秤に、試料となるガラス粉末と基準物質とをセットし、測定条件として昇温速度10℃/minにて室温から900℃まで昇温させた。この時、試料であるガラス粉末と基準物質の温度差を温度に対してプロットした曲線(DTA曲線)を得た。このようにして得られたDTA曲線より、基線に沿う接線と第1の変曲点から第2の変曲点までの曲線に沿う接線との交点をガラス転移点Tgとした。
ビヒクルは、印刷に適した流体力学的性質を有する「ペースト」と呼ばれる粘性組成物を形成するためのものであり、エチルセルロース、アクリル樹脂又はアルキッド樹脂等を溶剤に溶解させた樹脂及び溶剤からなる有機物である。その他、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレート、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルを含めたポリマーも例示することができる。分散剤は、組成物中の銀粉末及びガラス粉末を分散し安定化させるものであり、カルボン酸系分散剤、アミン系分散剤又はリン酸系分散剤等が挙げられる。また、組成物には、その他、増粘剤又はその他の一般的な添加剤が含まれても含まれなくてもよい。
次に、本発明の導電性組成物を用いた太陽電池セルの製造手順を説明する。図2に示すように、先ず、p型半導体基板14を準備する。この基板としてSi基板を用いる場合、単結晶基板、多結晶基板のいずれであってもよい。この場合、最初に所望の厚さにスライスされた基板14のスライスダメージを除去するため、10〜20μm程度表面をフッ酸(フッ化水素酸)と硝酸との混酸または水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液でエッチングすることが好ましい。単結晶基板を用いる場合、上面の反射を抑えるためにその上面にテクスチャ構造を形成するのが好ましい。このテクスチャ構造は、濃度1〜5%の水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液にイソプロピルアルコールを3〜10%加え、80℃前後で30〜60分エッチングすることにより形成することができる。また、テクスチャエッチングを行う前にp型半導体基板14の下面に数百nmの酸化膜を成膜することによって受光面のみをテクスチャ構造とすることができる。
このp型半導体基板14の下面には、従来から公知の方法によりp+層16を形成する。Alペーストを用いて形成する場合には、図2に示すように、先ずAlペースト17をp型半導体基板14の下面に印刷し、その後焼成する。Alペースト17は、焼成によって、乾燥状態から図1に示すアルミニウム裏面電極18に変換する。焼成中、裏面のAlペースト17とp型半導体基板14の裏面との境界は合金状態を成し、焼成後にその境界にAl−Si合金層19を形成する。そして、そのAl−Si合金層19のp型半導体基板14側にp+層16が形成される。
なお、このp+層16の形成方法としては、Alペーストを必ずしも用いなくても良く、他の方法であっても良い。例えば、700〜1000℃で数十分間BBr3を気相拡散する方法により、p型半導体基板14の下面にp+層16を形成しても良い。この方法によりp+層16を形成する場合、受光面側に拡散されないように予め受光面側に酸化膜等を形成しておく必要がある。また、ホウ素化合物を含む薬液をp型半導体基板14にスピンコートしてから700〜1000℃でアニールする方法やイオン注入によりp+層16を拡散して形成する方法であっても良い。
一方、p型半導体基板14の上面にはn型半導体層12が形成される。このn型半導体層12は、リン(P)等の熱拡散によって形成することができ、この場合オキシ塩化リン(POCl)がリン拡散源として一般に使用される。例えば、この半導体層12をp型半導体基板14の全面に形成した後、その上面をレジスト等で保護した後、n型半導体層12が上面にのみ残るよう、エッチングによってほとんどの面から除去する。次いで有機溶媒等を使用して、レジストを除去することにより、p型半導体基板14の上面にn型半導体層12を形成することができる。なお、このn型半導体層12は、平方センチメートル当たりが数十オーム程度の面積抵抗率と、約0.3〜0.5μmの厚さとを有することが好ましい。
次に、このn型半導体層12の上に反射防止用のコーティングとしての窒化ケイ素層11を形成する。この窒化ケイ素層11は、プラズマ化学気相成長法(CVD)等のプロセスにより、約700〜900Åの厚さになるまでn型半導体層12上に形成する。
そして、前述した導電性組成物を用い、窒化ケイ素層11を貫通してこの下に形成されたn型半導体層12と導通する電極13をいわゆる「ファイアスルー」と呼ばれる手順により形成する。具体的には、図2に示すように、前述した導電性組成物からなるペースト21を、窒化ケイ素層11上に直線状又は櫛歯状に印刷する。このペースト21の印刷にあってはスクリーン印刷が好ましいが、他の印刷方法であっても良い。その後、約700〜975℃の温度範囲の赤外炉内で、1〜30分間、好ましくは数分から数十分間焼成を行う。この焼成によりペースト21中の銀を窒化ケイ素層11に浸透させ、図1に示すように、焼成することにより得られた電極13を窒化ケイ素層11を貫通してその窒化ケイ素層11の下のn型半導体層12と導通させる。このように、焼成することにより得られた電極13は、その適切な電気的性能とn型半導体層12との密着性を確保することができる。
このようにして、p型半導体基板14には、そのp型半導体基板14の上面に形成されたn型半導体層12と、そのn型半導体層12の上に形成された窒化ケイ素層11と、その窒化ケイ素層11を貫通してn型半導体層12と導通する直線状又は櫛歯状の電極13が形成される。
続いて、この基板14について、例えば、特開2005−167291号公報に記載の方法により、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含む水溶液による浸漬処理を行う。この浸漬処理により、電極13とn型半導体層12との界面の余分なガラス成分を除去し、電極13とn型半導体層12との導電性を向上させることができる。また、この電極13は、上述した本発明の導電性組成物を用いて形成されるため、この浸漬処理を行っても、電極中のガラス成分が過剰に除去されることはなく、電極13とn型半導体層12との密着性を低下させる不具合を回避することができる。浸漬処理は、例えば、HF:H2O=1:50の溶液に基板14を30秒間浸漬させることにより行う。
以上の工程により、p型半導体基板14と、そのp型半導体基板14の上面に形成されたn型半導体層12と、そのn型半導体層12の上に形成された窒化ケイ素層11と、その窒化ケイ素層11を貫通してn型半導体層12と導通する直線状又は櫛歯状の電極13とを備える太陽電池10が得られる。この太陽電池10は、電極13とn型半導体層間12に十分な密着性と良好な導電性を備える。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
導電性ペーストを下記のように作製した。
先ず、α-テルピネオール及びブチルカルビトールアセテートを2:1で混合した溶剤を13質量部、エチルセルロース樹脂を質量1.5部を混合してビヒクルを調製し、更に分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部を添加混合した。
次に、平均粒径0.8μmのAg粉末83質量部と、平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が305℃、塩基度が0.67であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末2質量部とを、上記分散剤が添加されたビヒクル15質量部に混合した。その後、これを三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させ、銀粉末とガラス粉末とビヒクルと分散剤とを含む導電性組成物からなるペーストを得た。なお、Ag粉末及びガラス粉末の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布装置(堀場製作所社製 型名:LA−950)により測定された数値である。
次に、上記ペーストを用いて太陽電池セル基板を下記のように作製した。25mm角、0.6mm厚のp型多結晶Si基板を、イソプロピルアルコールを含む水酸化ナトリウム水溶液にて、表面をエッチングし、2〜3μmの凹凸を有するテクスチャを形成した。次に、基板の一方に、リン化合物(POCl)を塗布した後、800℃にて数分間、加熱することにより、厚さが約0.4μmのn型Si層を形成した。続いて、プラズマCVDにより厚さ0.07μmの窒化ケイ素膜を形成した。その後、基板表面の窒化ケイ素膜上に、ライン幅100μm×長さ17mmのパターン6本をスペース幅2mmにて配置した櫛型パターンを有する乳剤厚30μmのスクリーン版を用いて、上記導電性ペーストをスクリーン印刷し、幅約120μm、厚さ約25μmの印刷パターンを形成した。その後、ベルト式乾燥炉にて150℃で、10分間、乾燥した。また、基板の裏面には、20mm角ベタパターンを有する、乳剤厚30μmのスクリーン版を用いて、Alペーストをスクリーン印刷し、約20mm角、厚さ約20μmの印刷パターンを形成した。同様に、これをベルト式乾燥炉にて150℃で、10分間、乾燥した。更に、赤外線ランプ加熱炉を用いて、大気中で、室温から800℃まで、15秒で昇温した後、15秒で室温まで冷却し、基板を得た。
続いて、この基板を、HF:H2O=1:50(質量比)の溶液に30秒間浸漬させた後、この基板を純水で洗浄し、更に水分を除去するための乾燥を行った。このようにして、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例1とした。
<実施例2>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が311℃、塩基度が0.65であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例2とした。
<実施例3>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が324℃、塩基度が0.63であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例3とした。
<実施例4>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が314℃、塩基度が0.69であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例4とした。
<実施例5>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が330℃、塩基度が0.66であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例5とした。
<実施例6>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が345℃、塩基度が0.64であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例6とした。
<実施例7>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が315℃、塩基度が0.70であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例7とした。
<実施例8>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が330℃、塩基度が0.67であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例8とした。
<実施例9>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が345℃、塩基度が0.65であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を実施例9とした。
<比較例1>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が317℃、塩基度が0.75であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を比較例1とした。
<比較例2>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が316℃、塩基度が0.72であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を比較例2とした。
<比較例3>
平均粒径が0.7μm、ガラス転移点が316℃、塩基度が0.71であり、以下の表1に示す成分組成のガラス粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に、導電性ペーストを作製した。更に、このペーストを用いて実施例1と同様の条件及び手順により、表面には櫛型電極、裏面にはAl電極が形成された太陽電池セル基板を得た。この太陽電池セル基板を比較例3とした。
<比較試験及び評価1>
実施例1〜9及び比較例1〜3で導電性ペーストの作製に使用したガラス粉末について、定性分析及び定量分析を行った。この結果を以下の表1に示す。
(1) 定性分析:ガラス粉末を四ホウ酸リチウムの圧粉体の上に載せ、これをプレスして試料付きの圧粉体を作製した。この試料付きの圧粉体について、波長分散型蛍光X線分析装置(リガク社製 型名:ZSX−PrimusII)を用い、各ガラス粉末中に含まれる主成分の成分分析を行った。
また、1gのカーボン粉末、及びこれと同量のガラス粉末を秤量、混合して試料を作製した。この試料について、DCアーク固体発光分析装置(サーモジャーレルアッシュ社製 型名:AURORA)を用い、各ガラス粉末中に含まれる微量成分の成分分析を行った。
(2) 定量分析:濃硝酸10mlと濃度50モル%のフッ酸3mlとの混酸中に、ガラス粉末1gを溶解させて溶液試料を調製した。この溶液試料について、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 型名:SPS3100)を用い、上記定性分析で検出された各ガラス粉末中に含まれる各成分の含有割合を測定した。
Figure 2011171439
<比較試験及び評価2>
実施例1〜9及び比較例1〜3で得られた太陽電池セル基板について、JIS−8504に準拠したテープテスト法により、櫛型電極と窒化ケイ素膜との密着性を評価した。密着性の具体的な評価は、フッ化アンモニウム水溶液による浸漬処理後の太陽電池セル基板について、その表面に形成された櫛型電極に、粘着テープを密着させて剥離した際に、電極が剥がれたり、めくれ上がったりする状態によって評価した。テープのみが剥がれ、電極が基板に残っている場合を「良」、剥離した粘着テープに電極が付着し、基板から電極が完全に剥がれた場合を「不良」とした。
また、太陽電池セル基板の表面電極と裏面電極とをソースメーター(2400型:ケースレイ社製)に4端子接続し、直列抵抗値の測定を行った。評価については、I・V曲線から算出される直列抵抗値が基準値より低く、かつI・V曲線がダイオード特性を示す場合を「良」とし、I・V曲線から算出される直列抵抗値が基準値より高く、かつI・V曲線がダイオード特性を示さない場合を「不良」とした。
Figure 2011171439
表2から明らかなように、SiO2量が5.0モル%を超えるガラス粉末を用いて作製した導電性ペーストにより櫛形電極を形成した比較例1では、浸漬処理後の基板において、櫛型電極と窒化ケイ素膜間の密着性が低いことが判る。一方、SiO2量が5.0モル%以下であるガラス粉末を用いて作製した導電性ペーストにより櫛形電極を形成した実施例1〜9では、浸漬処理後の基板においても、櫛型電極と窒化ケイ素膜間には良好な密着性があることが確認された。また、実施例1〜9では、導電性についても良好な結果が得られ、密着性を損なうことなく、良好な導電性が得られることが判る。
10 太陽電池
11 窒化ケイ素層
12 n型半導体層
13 電極
14 p型半導体基板

Claims (3)

  1. p型半導体基板(14)の一方に形成された窒化ケイ素層(11)を貫通して前記窒化ケイ素層(11)の下に形成されたn型半導体層(12)と導通する電極(13)を形成するための導電性組成物であって、
    銀粉末と、PbOを含むガラス粉末と、樹脂及び溶剤からなるビヒクルと、前記銀粉末及び前記ガラス粉末を分散し安定化させる分散剤とを含有し、
    前記銀粉末の組成物中の比率が70〜95質量%であり、
    前記ガラス粉末が前記組成物中の銀粉末100質量部に対して1〜10質量部含まれ、
    前記ガラス粉末はPbO−B23を主成分とし、ZnOを微量成分として更に含み、
    前記ガラス粉末に含まれるSiO2の含有量がガラス粉末100モル%に対して5.0モル%以下である
    ことを特徴とする導電性組成物。
  2. p型半導体基板(14)に酸又はアルカリによるエッチング処理を施して、前記p型半導体基板(14)のスライスダメージを除去する工程と、
    前記p型半導体基板(14)にテクスチャエッチング処理を施して、前記p型半導体基板(14)の上面にテクスチャ構造を形成する工程と、
    前記p型半導体基板(14)の上面にn型ドーパントを熱拡散させることにより、前記p型半導体基板(14)の上面にn型半導体層(12)を形成する工程と、
    前記n型半導体層(12)上に窒化ケイ素層(11)を形成する工程と、
    前記窒化ケイ素層(11)上に請求項1記載の導電性組成物を直線状又は櫛歯状に印刷する工程と、
    前記p型半導体基板(14)の下面に、Alペーストを印刷する工程と、
    前記印刷した導電性組成物及びAlペーストを有するp型半導体基板(14)を700〜975℃の温度で1〜30分間焼成することにより、前記窒化ケイ素層(11)を貫通して前記n型半導体層(12)と導通する電極(13)を形成するとともに、p+層(16)、Al−Si合金層(19)、アルミニウム裏面電極(18)を形成する工程と
    前記窒化ケイ素層(11)、n型半導体層(12)、電極(13)、p+層(16)、アルミニウム裏面電極(18)及びAl−Si合金層(19)が形成されたp型半導体基板(14)をフッ化水素又はフッ化アンモニウムを含む水溶液に浸漬する工程と
    を含む太陽電池の製造方法。
  3. p型半導体基板(14)と、前記p型半導体基板(14)の上面に形成されたn型半導体層(12)と、前記n型半導体層(12)の上に形成された窒化ケイ素層(11)と、請求項1記載の導電性組成物の焼き付けにより形成され前記窒化ケイ素層(11)を貫通して前記n型半導体層(12)と導通する直線状又は櫛歯状の電極(13)とを備える太陽電池。
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