以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る画像形成装置について説明をする。図1に示す複写機100は、実施形態としての画像形成装置の一例を構成するものである。複写機100は、例えば、原稿dから読み取って得た画像データに基づいて所定の用紙Pに画像を形成する。複写機100は機械本体部101を有している。
機械本体部101には、画像書き込み部3、画像形成部4、排紙部8、制御部15、定着ユニット17、給紙トレイ20A,20B,20C、第1給紙部61,62,63,64、第2給紙部66、手差し給紙トレイ67、排紙トレイ68、自動両面コピー給紙部(ADU)82、操作表示部48等が設けられている。機械本体部101上には、画像読取装置102が実装されている。
画像読取装置102は、原稿dを走査露光して画像を読み取り、画像データD1(図8参照)を出力する。画像読取装置102にはスキャナが使用される。画像データD1は、画像読取装置102から得られる他、パソコン等からの画像信号、ネットワークからの外部信号、ファクシミリからの画像信号等を入力してデジタル処理したものでもよい。
機械本体部101の上部には、自動原稿送り装置DFが搭載されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、矢印方向に搬送され、画像読取装置102の光学系により原稿dの片面又は両面の画像が読みとられ、CCD(固体撮像素子)を使用したイメージセンサ1Aに読み込まれる。イメージセンサ1Aにより光電変換されたアナログの画像信号は、制御部15において、アナログ処理、A/D変換処理、シェーディング補正処理、画像圧縮処理等を行った後、画像データD1となって画像書き込み部3に転送される。
画像書き込み部3においては、レーザーダイオード(LD)から出射されたレーザー出力光が画像形成部4で像担持体の一例を構成する感光体ドラム41に照射され、静電潜像を形成する。画像書き込み部3に隣接する画像形成部4においては、用紙Pの所定の面に画像を形成するために、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。画像形成部4では、感光体ドラム41上にトナー像が形成され、当該感光体ドラム41上から記録材(以下用紙Pという)へトナー像が転写される。
感光体ドラム41の下方には転写部42が設けられる。転写部42は、例えば、転写ベルト42a及び帯電器42bを有して構成される。転写ベルト42aは帯電器42bを介して感光体ドラム41と反対の電位に帯電される。この例では、画像形成部4に関して、白黒用の画像形成機能について説明しているが、もちろん、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色のカラー用の画像形成機能を備えた画像形成部4を構成するようにしてもよい。
画像形成部4の下方には用紙搬送部の一例を構成する給紙トレイ20A,20B,20C及び第1給紙部61〜64が備えられ、転写部42に用紙Pを搬送するようになされる。給紙トレイ20A,20B,20Cは、所定の載置向きに揃えられた用紙Pを収納する。給紙トレイ20Aには、例えば、普通紙が収納され、給紙トレイ20Bには、例えば、コート紙が収納され、給紙トレイ20Cには、例えば、坪量90g/m2の用紙Pが収納される。
機械本体部101の図示の右側面の側には、手差し給紙トレイ67が設けられる。給紙トレイ20A,20B,20C又は、手差し給紙トレイ67から第1給紙部61〜64により給送された用紙Pは、第2給紙部66(レジストローラ等)により用紙搬送制御を受けて転写部42に搬送される。第2給紙部66は用紙Pの搬送タイミングと画像転写位置とを合わせる機能を有している。転写部42は、感光体ドラム41に形成されたトナー画像を所定の用紙Pに転写する。
この例では、トナー画像が転写された所定の用紙Pを記録紙P’という。例えば、転写部42は、搬送タイミングが合わせ込まれた用紙Pの所定の面に画像を転写(担持)する。画像を担持した記録紙P’は、定着ユニット17により定着され、排紙部8から排紙トレイ68等に排紙される。
この例で、定着ユニット17は、分離爪移動機構30、加熱ローラ71及び加圧ローラ72を有して構成される。分離爪移動機構30は複数の分離爪38を有している。分離爪38には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)等の材質の部材が使用される。
加熱ローラ71は定着部材の一例を構成し、画像形成部4によって用紙Pに転写されたトナー像を定着するものである。加圧ローラ72は定着部材の他の一例を構成し、加熱ローラ71の下方に設けられ、記録紙P’を加熱ローラ71の側に押し付けるように回転される。分離爪38は加熱ローラ71から記録紙P’を分離するように動作する。分離爪移動機構30は、加熱ローラ71の表面に沿って分離爪38を往復移動させるように動作する。
定着ユニット17の下流側には、搬送路切換板81及び自動両面コピー給紙部82が設けられる。定着後の記録紙P’は、両面印刷モードが設定されている場合であって、排紙される前に、搬送路切換板81により自動両面コピー給紙部82に送り込まれ、片面画像処理済みの記録紙P’が再び画像形成部4において、両面画像処理された後に、排紙部8から排紙トレイ68へ排出するようになされる。
この例で定着ユニット17の下流側には定着排紙センサ12が設けられる。ここに、定着ユニット17の下流側とは、当該定着ユニット17の加熱ローラ71と加圧ローラ72のニップ位置を基準にして、当該ニップ位置に用紙Pが進入する側を上流側としたとき、当該ニップ位置から記録紙P’が排紙される側をいう。定着排紙センサ12は、定着ユニット17から分離された記録紙P’の先端及び後端を検出して定着排紙信号S12を発生する。
続いて、図2を参照して、定着ユニット17の構成例について説明する。図2に示す定着ユニット17は、加熱ローラ71と加圧ローラ72により形成されたニップ領域に記録紙P’を通過させ、用紙Pにトナー像を定着する。定着ユニット17は、表面に弾性体層を有した加熱ローラ71を備える。加熱ローラ71は記録紙P’上のトナー像を溶融するための発熱体を有している。
加熱ローラ71は、例えば、肉厚14mm程度の中空のアルミニウム芯金の外周に、弾性体層の一例を構成する肉厚2mm程度のシリコンゴムを被膜し、その上に30μm程度のパーフルオロアルコキシ (PFA)をコーティングした直径70mmのローラを含み構成され、内部に発熱体の一例を構成するハロゲンヒータを有して構成される。
加圧ローラ72は、例えば、肉厚2mm程度の中空のアルミニウム芯金の外周に、肉厚2mm程度のシリコンゴム(硬度10°(JIS K 6253のタイプAデュロメータ(A型)で測定))を被覆し、その上に30μm程度のPFAをコーティングした直径60mm程度のローラである。もちろん、PFAの代わりにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をシリコンゴム上にコーティングしたものでもよい。
加圧ローラ72はバネ等の付勢部材(図示せず)によって、加熱ローラ71に線圧29.4N/cmで圧接され、弾性変形によってニップ領域を形成している。このときのニップ領域の短手方向の長さは線圧や、ローラ表面の硬度によっても異なるが、ほぼ10.5mm程度に設定されている。加熱ローラ71は周速度350〜410[mm/s]程度で時計方向に回転し、加圧ローラ72は加熱ローラ71に圧接して従動回転する。このように定着ユニット17を構成すると、画像の欠陥を減少させ、良好な画像を用紙Pに形成できると共に、分離爪38による分離性能を十分に確保できるようになる。
加熱ローラ71の上部には、図1に示すような清掃ユニット73が設けられる。清掃ユニット73は、巻き上げローラ74及びウェブ75を有して、加熱ローラ71の表面上に付着したトナーや紙粉を回収し、当該加熱ローラ71の表面を清掃する。例えば、加熱ローラ71の表面にウェブ75が接触し、巻き上げローラ74がウェブ75を巻き上げることにより加熱ローラ71の表面からトナー部材や紙粉を回収するように動作する。
この例では、清掃ユニット73を駆動するユニット駆動部99によって分離爪移動機構30を駆動するようになされる。ユニット駆動部99は、清掃歯車96、駆動歯車97及びモータ98を有して構成される。モータ98には、例えば、ステッピングモータが使用され、速度変更制御がなされる。分離爪移動機構30は加熱ローラ71の下流側に設けられる。分離爪移動機構30はカム軸用歯車92や複数の分離爪38等を有している。
分離爪移動機構30の分離爪38は、加熱ローラ71に密着した記録紙P’を分離することで、記録紙P’が加熱ローラ71に巻き付くことを防止している。分離爪38が同じ位置で加熱ローラ71に接触していると、加熱ローラ71の表面にスジ状の傷を発生させてしまうため、分離爪移動機構30は、加熱ローラ71の長手方向で分離爪38を左右に沿って往復移動するように動作する。
この例で、図2に示す清掃歯車96は、図1に示した巻き上げローラ74に設置されている。清掃歯車96は、例えば、駆動歯車97の一つの歯車を介して噛み合っており、駆動歯車97が回動することによって、清掃ユニット73が動作する構造となっている。駆動歯車97はモータ98に設置されている。
駆動歯車97にはカム軸用歯車92が噛み合っており、モータ98の駆動力が分離爪38を移動させるために伝達される。これにより、分離爪38が加熱ローラ71の表面に沿って左右方向に往復移動する構造となっている。このように、清掃ユニット73の一部を構成する巻き上げローラ74を動作させる駆動源によって分離爪38を移動させるので、分離爪38を移動させるための専用の駆動モータを別途設ける必要がなく、コストダウンや省スペース化が図れる。もちろん、分離爪38を専用に駆動するモータを増設してもよい。
続いて、図3〜図7を参照して、分離爪移動機構30の構成例及びその機能例について説明する。図3に示す分離爪移動機構30は、加熱ローラ71に対して、その下流側に配置され、加熱ローラ71の表面に沿って分離爪38を移動させるように動作する。この分離爪移動機構30では、6個の分離爪38を一度に加熱ローラ71の表面に沿って移動させる場合を例に挙げている。
分離爪移動機構30は、移動板31、ユニット本体部39及び移動板駆動部90を有して構成され、加熱ローラ71と組み合わされ、ユニット化されている。ユニット本体部39には操作レバー39aが取り付けられ、ユニット交換時に操作される。
図4に示す分離爪移動機構30によれば、加熱ローラ71の側からユニット本体部39を見た場合、そのユニット本体部39には、1組のL形状の移動板支持部34,34(保持部材)が設けられる。図4では、6個の分離爪38の内、左右端部の2つの分離爪38,38のみを表している。
各々の移動板支持部34,34には1対の移動板支持軸37が設けられる。移動板支持軸37の一端は、例えば、移動板支持部34の立設部位で図示しない開口部に嵌入され固着される。これにより、移動板支持部34によって移動板支持軸37の端部を支持できるようになる。
移動板支持軸37の他端には摺動可能な移動板31(揺動部材)が係合されている。移動板31の左右端部は折れ曲げられ、側壁部31a,31aを有している。移動板支持軸37は、移動板31の両端の側壁部31a,31aに、1対の開口部を設け(図示せず)、その開口部にその各々を貫通するようにして組み立てられる。この例で、各々の側壁部31aと移動板支持部34との間であって、各々の移動板支持軸37の周辺(周囲)には、移動板用の付勢バネ35が嵌入され、移動板31を一方向へ押圧するようになされる。
また、移動板31上には、複数のコ状の分離爪支持部32及び、1本の移動軸36が配設されている。各々の分離爪支持部32には、分離爪38が取り付けられている。分離爪38は、コ状の分離爪支持部32に取り付けられる。例えば、分離爪38の一部には開口部があり(図示せず)、その開口部に分離爪支持軸33が貫通して支持される。分離爪支持軸33の両端は分離爪支持部32によって支持される。
このような構成により、分離爪支持軸33を介して分離爪38を分離爪支持部32により個々に支持できるようになる。しかも、分離爪支持部32は、移動板31に固着されているため、移動板31が左右方向(図4の矢印方向)に移動すると、分離爪支持部32も移動板31と共に左右方向に動く構造となされる。
移動軸36は、移動板31に設置され、後述する移動板駆動部90に係合される。移動軸36は、移動板駆動部90を構成するブロック94の溝部94aに嵌ることにより分離爪38を左右方向に移動するようになされる。移動軸36は、例えば、移動板31の左端寄りの上下端部から立設された側壁部31b,31bの図示しない開口部に嵌入されている。側壁部31b,31bは、例えば、移動板31の左端寄りの上下端部を折り曲げ加工することで、立設部位となされる。なお、図4において、破線円領域A1は、加熱ローラ71に接触している分離爪38の接触箇所である。
図5に示す移動板駆動部90は、分離爪38を移動させるカム機構を構成するために、カム軸91、カム軸用歯車92、揺動カム93、カム用のブロック94及びブロック用の付勢バネ95を備えている。
図5に示すカム軸91の一端にはカム軸用歯車92が取り付けられている。カム軸91にはカム軸用歯車92の側から見て順に、軸受け部96a、付勢バネ95、ブロック94、揺動カム93及び軸受け部96aが組み込まれている。付勢バネ95は、ブロック94と軸受け部96aとの間であって、カム軸91の周囲に配設され、図5において、右方向から左方向へブロック94を押圧するように付勢している。付勢バネ95にはスプリングバネが使用される。
ブロック94は、揺動カム93に接触する、例えば、鉄製の塊であり、その一部が立方体形状に抉られている。抉られた部分の反対側には、U字形状の溝部94aが設けられ、移動板31の移動軸36に係合される。ブロック94の抉られた部位に露出するカム軸91には、揺動カム93が固着され、カム軸91の回転と共に揺動カム93が一体的に回転するようになされる。ブロック94の抉られた部位であって、揺動カム93に対して摺接する突起部94bが固着されている。上述の移動板駆動部90では、図2に示したユニット駆動部99からカム軸用歯車92を介してカム軸91に、駆動力が伝達される。
続いて、図6を参照して、分離爪移動機構30の動作例について説明する。図6に示す分離爪移動機構30によれば、分離爪38を加熱ローラ71の表面に沿って移動する場合に、まず、ユニット駆動部99からの駆動力がカム軸用歯車92を介してカム軸91に伝達されると、カム軸91と揺動カム93が一体的に回動する。
揺動カム93が回動すると、図5における破線円領域A2で揺動カム93と接触しているブロック94が揺動カム93の形状に沿ってカム軸91と平行する方向に移動する。このとき、ブロック94の突起部94bが、付勢バネ95に付勢され、揺動カム93の形状に摺接された状態を維持する。この結果、ブロック94がカム軸91と平行する方向に移動するようになる。
一方、ブロック94の溝部94aには、移動軸36が嵌っているため、ブロック94の移動に伴って移動板31が移動する。このような機構によって、移動板31上の複数の分離爪38の各々を図6の矢印に示す方向に、一斉に、図示しない加熱ローラ71の表面に沿って左→右及び右→左方向に往復移動できるようになる。
続いて、図7A〜Cを参照して、分離爪移動機構30の機能例について説明する。図7Aに示す分離爪38は、加熱ローラ71の表面に沿って長手方向(軸方向)に往復移動するように制御される。図7Aにおいて、Lは分離爪38の往復動作区間(分離爪揺動行程)である。往復動作区間Lは、例えば10mm程度である。Psは分離爪38の往復切り替え点であり、往路から復路に切り替わるポイントである(揺動幅両端部)。71aは記録紙P’の分離時、分離爪先端で発生した加熱ローラ71の凹状の打痕である。
この例では、制御部15が、爪先端を加熱ローラ71に当接させた状態で、分離爪38を往復動作するように分離爪移動機構30を制御する。例えば、制御部15は、分離爪38の記録紙分離時の移動速度をV1とし、当該分離爪38の記録紙分離後次の記録紙P’が当該分離爪38に到達するまでの移動速度をV2としたとき、次の関係式、すなわち、V1<V2を満すように分離爪移動機構30を制御するようになる。
また、制御部15は、当該記録紙P’の分離時における、図7Aに示すような分離爪38の位置を第1の位相φ1(打痕位相)としたとき、位相φ1に対して、次の記録紙P’の分離時に至るまでの分離爪38の往復動作の間において、分離爪38の幅(当接幅:以下爪幅lという)を含む位置が位相φ1と重ならない、図7Cに示すような第2の位相φ2に移動するように分離爪移動機構30を制御する。
この例で、図7Cに示す分離爪38の移動速度をV2とすると、移動速度V2は、図7Aに示す分離爪38の爪幅l[mm]と、当該記録紙P’が加熱ローラ71から分離された時点から、次の記録紙P’の先端が分離爪38に到達するまでの時間T[ms]とに基づいてV2≧l/Tが設定される。ここに分離爪38の移動速度V2とは、当該分離爪38が加熱ローラ71の表面に沿って単位時間当たりに移動する距離をいう。移動速度V1も同様に定義される。分離爪38の爪幅lは、例えば、1mm乃至5mm程度である。
なお、揺動動作途中の往復動作区間Lにおける分離爪38の位置例を図7Bに示している。図7Bに示す往復動作区間の分離爪38は従来例と同様に制御される。例えば、加熱ローラ71の表面に沿って移動される分離爪38の移動速度V1は、0.001mm/s≦V1≦0.1mm/sに設定される。
このように分離爪移動機構30を制御すると、記録紙P’の分離時、分離爪先端で発生した加熱ローラ71の打痕71a(凹状)へ再度分離爪先端が進入することを防止できるようになる。これにより、加熱ローラ71の耐久性を向上できるようになる。しかも、画像の欠陥の無い、良好な画像を形成できると共に、分離爪38による分離性能を十分に確保することができる。
続いて、図8を参照して、複写機100の制御系の構成例について説明する。図8に示す複写機100は、画像形成部4、定着排紙センサ12、制御部15、定着ユニット17、用紙搬送部20、操作表示部48、画像メモリ53及び、画像読取装置102を有している。
制御部15は画像処理部16、タイミング発生部45、メモリ部54、中央処理ユニット(Central Processing Unit;以下CPU55という)、I/Oポート56を有している。CPU55にはメモリ部54が接続される。メモリ部54には当該複写機全体を制御するためのシステムプログラムや、画像書き込み部3の書き込みタイミングを制御するための情報が格納される。
メモリ部54には読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)や、随時情報の書込み読出し可能なワーク用のメモリ(Random Access Memory:RAM)や、不揮発メモリ(EEPROM)等を含んでいる。CPU55は、例えば、電源がオンされると、ROMからシステムプログラムを読み出して、RAMに展開し、システムを起動して、当該複写機全体を制御するようになされる。
CPU55にはI/Oポート56を介して操作表示部48が接続される。操作表示部48は、操作部14及び表示部18から構成される。操作表示部48は、タッチパネルと液晶表示パネルから構成される。操作表示部48にはGUI(Graphic User Interface)方式の入力手段が使用される。
操作部14は設定部の一例を構成し、記録紙P’に関して用紙Pの種類、例えば、普通紙、コート紙/ラフ紙等を設定するように操作される。CPU55は、操作部14によって設定された紙種情報に対応して分離爪移動機構30の制御を実行する。このように分離爪移動機構30を制御すると、分離に不利な紙種(コート紙/ラフ紙)にのみ分離爪移動機構30を制御できるようになる。コート紙/ラフ紙は、加熱ローラ71に巻き付き易い。
操作表示部48は、用紙Pの種類(紙種)を設定する際に操作される他、例えば、記録紙P’に関して用紙の坪量や紙サイズを選択したり、当該用紙Pが収納されている給紙トレイ20A〜20Cを選択する際に操作され、画像形成条件が設定される。操作表示部48で設定された画像形成条件や給紙トレイ選択情報等は、操作データD14となってI/Oポート56を介し、CPU55に出力される。
CPU55は、記録紙P’に関して用紙の坪量に基づいて分離爪移動機構30の制御有無を判別する。例えば、分離爪移動機構30の制御を有する場合を判別する用紙の基準坪量を設定し、この基準坪量と、操作表示部28により設定された用紙の坪量とを比較し、基準坪量を越える又はそれ以下の坪量の用紙が設定された場合に、分離爪移動機構30の制御を実行する。このように構成すると、分離に不利な紙種(コート紙/ラフ紙)にのみ分離爪移動機構30を制御できるようになる。
また、CPU55にはタイミング発生部45が接続される。タイミング発生部45は、タイミング制御データD45に基づいて、画像形成部4、定着ユニット17、用紙搬送部20及び、画像メモリ53を制御する。タイミング制御データD45はタイミング発生部45を制御するデータ(命令)であって、CPU55からタイミング発生部45へ出力される。
タイミング発生部45は、タイミング制御データD45に基づいて定着制御信号S17、用紙搬送信号S20、分離爪制御信号S30、メモリ制御信号S53及び画像形成制御信号S4を生成する。定着制御信号S17及び分離爪制御信号S30はタイミング発生部45から定着ユニット17に出力される。定着制御信号S17は加熱ローラ71内の発熱体の制御に使用され、分離爪制御信号S30は、分離爪移動機構30の駆動源の制御に使用される。
用紙搬送信号S20はタイミング発生部45から用紙搬送部20に出力される。メモリ制御信号S53はタイミング発生部45から画像メモリ53に出力される。画像形成制御信号S4はタイミング発生部45から画像形成部4に出力される。
タイミング発生部45には分離爪センサ11が接続される。分離爪センサ11は、ユニット本体部39に配置され、左右に往復動作される移動板31上の分離爪38の位置を検知して分離爪検知信号S11をタイミング発生部45に出力する。分離爪センサ11は、例えば、分離爪38の往路・復路の反転点(往復切り替え点)に配置される。この配置は、分離爪38の往復切り替え点で速度変更を実行するためである。タイミング発生部45では、分離爪検知信号S11をアナログ・ディジタル変換(以下AD変換という)し、AD変換後の分離爪検知情報D11をCPU55に出力する。
上述のタイミング発生部45には分離爪センサ11の他に定着排紙センサ12が接続される。定着排紙センサ12は定着ユニット17から排紙される記録紙P’の先端及び後端を検知して定着排紙信号S12をタイミング発生部45に出力する。タイミング発生部45では、定着排紙信号S12をAD変換し、AD変換後の定着排紙情報D12をCPU55に出力する。
タイミング発生部45にはセンサ類の他に画像形成部4が接続される。画像形成部4は、画像形成制御信号S4に基づいて感光体ドラム41において静電潜像を形成したり、感光体ドラム41に形成された静電潜像をトナー部材により現像したり、感光体ドラム41上のトナー像を用紙Pに転写する。
タイミング発生部45には画像形成部4の他に用紙搬送部20が接続される。用紙搬送部20は、3つの給紙トレイ20A〜20C及び、給紙駆動部20Eを有している。給紙駆動部20Eは、用紙搬送信号S20に基づいてモータ回転制御を実行し、当該給紙トレイ20A、20B又は20Cから繰り出した用紙Pを画像形成系に搬送するように動作する。用紙搬送信号S20は、タイミング発生部45から用紙搬送部20に供給される。
上述のタイミング発生部45には定着ユニット17が接続される。定着ユニット17は、用紙Pに転写されたトナー像をタイミング発生部45から出力される定着制御信号S17に基づいて定着処理する。定着制御信号S17は、例えば、定着ユニット17の発熱体による加熱温度を一定に維持するために使用される。
分離爪制御信号S30は分離爪移動機構30のユニット駆動部99の出力制御に使用される。例えば、CPU55は、定着ユニット17の分離爪38の記録紙分離時の移動速度をV1とし、分離爪38の記録紙分離後次の記録紙P’が当該分離爪38に到達するまでの移動速度をV2としたとき、次の関係式、すなわち、V1<V2を満すように分離爪移動機構30を制御する。
また、CPU55は加熱ローラ71の表面に沿って移動される分離爪38の移動速度V1を0.001mm/s≦V1≦0.1mm/sに設定する。更に、CPU55は、当該分離爪38の爪幅l[mm]と、当該記録紙P’が加熱ローラ71から分離された時点から、次の記録紙P’の先端が分離爪38に到達するまでの時間T[ms]とに基づいて、分離爪38の移動速度V2を、V2≧l/Tに設定する。このように分離爪38の移動速度V1,V2を設定すると、画像の欠陥の無い、良好な画像を形成できると共に、分離爪38による分離性能を十分に確保できるようになる。
なお、CPU55には画像読取装置102が接続される。画像読取装置102は、図1に示した原稿dから画像を読み取って得たデジタルの画像データD1を画像処理部16に出力する。画像読取装置102には画像処理部16が接続される。画像処理部16は、画像読取装置102から入力した画像データD1を画像処理する。この画像処理では、記録紙P’の先端に転写される画像濃度を見出すために、先端カバレージ(印字率)が算出され、先端カバレージ情報が生成される。
画像処理後の画像データD1は、先端カバレージ情報と共にメモリ部54や画像メモリ53等に転送される。画像メモリ53には、画像読取装置102から出力される画像データD1や、画像処理部16で画像データD1を画像処理した後の先端カバレージ情報付きの画像データD1が記憶される。画像メモリ53にはハードディスク(HDD)や,DRAM等が使用される。
この例で、CPU55は、記録紙P’の先端に転写される画像濃度に基づいて分離爪移動機構30の制御有無を判別する。例えば、CPU55は先端カバレージ情報を入力し、先端カバレージ(印字率)が一定以上か否かを判別する。このように構成すると、分離に不利な記録紙P’の先端に転写される画像濃度が高い場合(高印字率時)についてのみ分離爪移動機構30を制御できるようになる。
このように、実施形態としての複写機100によれば、加熱ローラ71の表面に沿って分離爪38を往復移動させる分離爪移動機構30を制御するCPU55を備え、このCPU55は、定着ユニット17の分離爪38の記録紙分離時の移動速度をV1とし、分離爪38の記録紙分離後次の記録紙P’が当該分離爪38に到達するまでの移動速度をV2としたとき、次の関係式、すなわち、V1<V2を満すように分離爪移動機構30を制御するものである。
従って、記録紙P’分離時には、極めて遅い移動速度V1で分離爪38を往復動作させることができ、加熱ローラ71への分離爪38の安定した当接状態を維持できる。これにより、記録紙P’の安定した分離動作が得られる。記録紙P’の分離後は、移動速度を変更し、分離爪38の移動速度を速くすることで、記録紙P’の分離時、分離爪38の先端で発生した加熱ローラ71の打痕(凹状)へ再度分離爪38の先端が進入することを防止できるようになる。しかも、加熱ローラ71の耐久性を向上できるようになる。
続いて、図9を参照して、第1の実施例としての分離爪移動機構30の制御例について説明する。この実施例では、モータ98による速度変更制御を行い、復往/往復切り替え時、更に、分離爪38の移動速度を上げるため、揺動カム93の形状を往路→復路、復路→往路の各々の切り替わり点(時)のカム変位量を通常時のカム変位量よりも大きく設定する。この設定によって、打痕発生問題を解決している。
図9において、縦軸は揺動カム93のカム変位量±[mm」であり、分離爪38の往復動作区間Lを生じさせる移動量である。例えば、カム変位量±は、往復動作する分離爪38の往復動作区間L=10mm等を生じさせる。横軸は揺動カム93の回転角度[°]であり、揺動カム93が1回転する時の回転角度0°〜360°である。
図中のIIは、揺動カム93のカム変位量対回転角度との関係を示す特性曲線であり、揺動カム93の揺動幅両端部における移動速度(端部速度)の変更を伴ったプロフィール曲線である。プロフィール曲線IIにおいて、破線楕円領域IIaは、往路→復路の遷移時の揺動カム93のカム変位量の傾きを通常部分よりも多く設定した部分である。
破線楕円領域IIbは、同様にして、復路→往路の遷移時の揺動カム93のカム変位量の傾きを通常部分よりも多く設定した部分である。ここに通常部分とは、往復動作区間Lから破線楕円領域IIa,IIbの部分を除いた部分をいい、この部分は従来例で説明したプロフィール曲線Iと同様にカム変位量が推移するようになる。
図9に示すプロフィール曲線IIにおいて、揺動カム93の揺動幅両端部における動作は、往復切り替えにより通常部分より揺動の移動速度を上げることで、打痕が発生し難くなる。すなわち、揺動カム93の揺動幅の一方の端部においては、破線楕円領域IIaのプロフィール曲線IIが、従来例に係るプロフィール曲線Iに比べて急激に立ち上がっている。揺動カム93の揺動幅の他方の端部においては、破線楕円領域IIbのプロフィール曲線IIが、従来例に係るプロフィール曲線Iに比べて急激に立ち下がっている。
このように揺動カム93の形状を設定すると、破線楕円領域IIaやIIbにおける分離爪38の移動速度をV2とし、分離爪38の記録紙分離時の通常部分の移動速度をV1とすると、V2>V1に設定することができる。従って、移動板駆動部90における揺動カム93の形状を設定することにより、分離爪移動機構30における分離爪38の記録紙分離後次の記録紙P’が当該分離爪38に到達するまでの移動速度V2を設定することが可能となり、記録紙分離時の移動速度と分離後、次の記録紙先端が分離ポイントに達するまでの移動速度との間で速度差を設定できるようになる。
このように第1の実施例としての分離爪移動機構30の制御例によれば、記録紙分離時の移動速度と分離後の移動速度との間で速度差を設定している。この速度差によって、定着分離後、次の記録紙P’が分離ポイントに達するまでに、例えば、図7Aに示した前回分離を行った加熱ローラ71の軸方向の位相φ1と、今回分離を行う分離爪38の先端の位相φ2(爪幅lを含む)とが重ならないように分離爪38を制御できるようになる。
これにより、記録紙分離時に発生する加熱ローラ71の表面の履歴(凹状跡)への分離爪38の先端部が入り込み、繰り返し荷重により画像欠損となる傷へ発展するのを防止でき、加熱ローラ71の高耐久化を図ることが可能となる。
続いて、図10を参照して、第2の実施例としての複写機100の制御例について説明する。本発明者は、加熱ローラ71への記録紙P’の巻き付きが発生するポイントに着目し、巻き付きが発生する記録紙先端部のカバレッジ(印字率)を指標として、巻き付きが発生する一定以上(例えば、30%以上)のカバレッジを用紙Pに形成(プリント)する場合に、分離爪38の速度変更制御を導入した。
この実施例では、揺動カム93の形状は従来方式のままとし、図5に示した移動板駆動部90を専用に駆動するモータを設け、例えば、コピー処理時の画像形成条件に対応してそのスピード変更により分離爪38の移動速度V1,V2(揺動スピード)を変更する。もちろん、専用駆動モータ代わりに清掃用のモータ98を兼用してもよい。
この例では、分離爪38の復往/往復切り替え時、更に、その移動速度を上げるために、分離爪センサ11で揺動カム93の揺動幅の一方の端部を検出し、モータ98に正逆回転可能な駆動モータを採用し、分離爪端部を検出した際にモータ98の回転を逆転するようにユニット駆動部99を制御する。その際の制御では、記録紙P’の先端に転写される画像濃度に基づいて分離爪移動機構30の制御有無を判別する場合を例に採る。
これらを制御条件にして、まず、図10に示すステップST1でCPU55は画像形成条件を入力する。このとき、ユーザは操作表示部48を操作して画像形成条件を設定する。画像形成条件に関しては、用紙Pの種類、例えば、普通紙、コート紙/ラフ紙、坪量等や画像濃度等、給紙トレイ20A〜20Cの選択等を設定するように入力指示される。画像形成条件や給紙トレイ選択情報等は、操作データD14となってI/Oポート56を介し、CPU55に出力される。CPU55は、操作部14によって設定された画像形成条件に対応して分離爪移動機構30の制御を実行する。
次に、ステップST2でCPU55は分離爪移動速度を0.001mm/s≦V<0.1mm/sに初期設定する。このとき、CPU55はタイミング発生部45にタイミング制御データD45を出力すする。タイミング制御データD45には分離爪移動速度を0.001mm/s≦V<0.1mm/sに設定する情報が含まれる。タイミング発生部45はタイミング制御データD45に基づいて分離爪移動速度を0.001mm/s≦V<0.1mm/sに設定する旨の分離爪制御信号S30を分離爪移動機構30に出力する。
次に、ステップST3でCPU55はコピースタート又は中止の指示を入力して制御を分岐する。このとき、ユーザは操作表示部48を操作してコピースタート又は中止の指示をCPU55に入力する。コピースタートの指示が入力された場合は、ステップST4でCPU55は画像読み取り及び画像処理制御を実行する。
このとき、画像読取装置102は、図1に示した原稿dから画像を読み取って得たデジタルの画像データD1を画像処理部16に出力する。画像処理部16は、画像読取装置102から入力した画像データD1を画像処理する。この画像処理では、記録紙P’の先端に転写される画像濃度を見出すために、先端カバレージ(印字率)が算出され、先端カバレージ情報が生成される。画像処理後の画像データD1は、先端カバレージ情報と共にメモリ部54や画像メモリ53等に転送される。
そして、ステップST5でCPU55は先端カバレージ(印字率)が一定以上であるか否かを判別して制御を分岐する。このとき、分離爪移動機構30の制御を有する場合を判別する先端カバレージ判別用の画像濃度閾値を設定し、この画像濃度閾値と、メモリ部54又は画像メモリ53から良い出された先端カバレージ情報に基づく画像先端濃度とを比較し、画像先端濃度が画像濃度閾値を越える場合に、分離爪移動機構30の制御を実行する。
先端カバレージが一定以上である場合は、ステップST6でCPU55は先端カバレージが一定以上に到達した画像濃度に対応する画像形成制御を実行する。このとき、画像形成制御信号S4がタイミング発生部45から画像形成部4へ出力される。画像形成部4では、画像形成制御信号S4に基づいて感光体ドラム41において静電潜像を形成したり、感光体ドラム41に形成された静電潜像をトナー部材により現像したり、感光体ドラム41上のトナー像を用紙Pに転写する。
その後、ステップST7でCPU55は定着排紙センサ12が記録紙P’の先端を検知した否かに基づいて制御を分岐する。このとき、定着排紙センサ12は定着ユニット17から排紙される記録紙P’の先端及び後端を検知して定着排紙信号S12をタイミング発生部45に出力する。タイミング発生部45では、定着排紙信号S12をAD変換し、AD変換後の定着排紙情報D12をCPU55に出力する。
定着排紙センサ12が記録紙P’の先端を検知した場合は、ステップST8に移行してCPU55は、定着排紙情報D12に基づいて分離爪移動速度をl/Tmm/s≦Vに設定する。このとき、CPU55はタイミング発生部45にタイミング制御データD45を出力すする。タイミング制御データD45には分離爪移動速度を0.001mm/s≦V<0.1mm/sからl/Tmm/s≦Vに変更する情報が含まれる。
タイミング発生部45はタイミング制御データD45に基づいて分離爪移動速度を0.001mm/s≦V<0.1mm/sからl/Tmm/s≦Vに変更する旨の分離爪制御信号S30を分離爪移動機構30に出力する。分離爪移動機構30では、分離爪制御信号S30に基づいてユニット駆動部99が移動板31の揺動制御を実行する。例えば、ユニット駆動部99は、分離爪センサ11が揺動カム93の揺動幅の一方の端部を検出すると、正逆回転可能なモータ98が、分離爪端部を検出した時点でその回転を逆転するようになる。
その後、ステップST9でCPU55は、30ms経過後に分離爪移動速度を再び、0.001mm/s≦V<0.1mm/sに設定する。このとき、CPU55はタイミング発生部45にタイミング制御データD45を出力すする。タイミング制御データD45には分離爪移動速度をl/Tmm/s≦Vから0.001mm/s≦V<0.1mm/sに変更する情報が含まれる。タイミング発生部45はタイミング制御データD45に基づいて分離爪移動速度をからl/Tmm/s≦Vから0.001mm/s≦V<0.1mm/sに変更する旨の分離爪制御信号S30を分離爪移動機構30に出力する。
その後、ステップST10に移行して、CPU55は、次のプリントの有無に対応して、制御を分岐する。次のプリントが有る場合は、ステップST4に戻って、CPU55は画像読み取り及び画像処理制御を実行する。そして、上述した処理を繰り返す。
上述のステップST5で、先端カバレージが一定以上に到達していない場合は、ステップST11に移行する。ステップST11でCPU55は先端カバレージが一定以上に到達していない画像濃度に対応した画像形成制御を実行する。その後、ステップST12で、次のプリントの有無に対応して、CPU55は制御を分岐する。
なお、ステップST10及びステップST12で次のプリントが無い場合、ステップST3でコピー中止の指示が有った場合は、コピー処理を終了する(正常終了)。また、ステップST7で定着排紙センサ12が用紙先端を検知していない場合は、ステップST13に移行してCPU55は異常処理を実行する。この異常処理では、CPU55が定着ユニット17でジャム発生が発生した旨等を表示するように操作表示部48を表示制御する(異常終了)。
このように第2の実施例に係る複写機100によれば、先端カバレージ情報に基づいて分離爪38の速度変更制御を実行する。この速度変更制御によれば、記録紙P’の分離時には、極めて遅い移動速度V1で分離爪38を移動し、安定した分離性能を提供できる。
記録紙P’の分離後は、分離爪38の移動速度を増速し、前回の記録紙P’で発生した打痕の位相φ1等を回避することで、打痕への繰り返し荷重がかかることを防止できる。特に、厚紙等の分離時に発生する加熱ローラ71への凹状の打痕への繰り返し荷重がかかることを防止するための移動速度V1を、一定時間増速して移動速度V2に設定し、凹状の打痕位置を回避した後、次の記録紙先端が分離爪38へ到達するまで、安定した分離性能が得られる速度域へ減速するような制御が実行できる。これにより、加熱ローラ71での凹状の打痕(傷)の発生を無くすことができた。
このような分離爪38の速度変更制御において、増減速を全条件で行わない理由は、次の通りである。分離爪38は加熱ローラ71へ接触した状態で往復移動を行っているため、分離爪38の先端と加熱ローラ71の表面とが常に摩擦状態に有り、かつ、加熱ローラ71の表面の硬度と分離爪38の硬度とを比較すると、加熱ローラ71の表面硬度の方が低いために、摩擦による摩耗が発生する。この摩擦による摩耗は、分離爪38が加熱ローラ71の表面を移動した距離に比例して進行する。このため、加熱ローラ71の耐久性を考慮した場合、この移動距離を必要最小限にする必要があるためである。
また、分離爪38の速度変更制御において、分離爪38の増速時間を限定する理由は、次の通りである。連続プリント時、1枚目の記録紙P’が定着ユニット17を通過した後、次の記録紙先端が到達する前に安定した分離性能が提供できる速度域への減速が必要であるためである。
なお、上述の分離爪38の速度変更制御において、そのステップST5で、先端カバレージ(印字率)が一定以上であるか否かを判別する場合について説明したが、これに限られることはなく、分離に不利な紙種(コート紙/ラフ紙)であるか否かや、分離に不利な用紙の坪量であるか否か判別して分離爪移動機構30を制御してもよい。
また、各実施例では、定着ユニット17に関して、加熱ローラ71を主体的に記載しているが、分離爪38が当接するベルトタイプの加熱部材を設けた定着ユニットに対しても同様な効果が得られる。
更に、各実施例では、分離爪38を揺動する場合について説明したが、これに限られることはなく、分離爪38を固定とし、加熱ローラ71を左右に揺動させるような場合においても、分離爪38と加熱ローラ71との相対位置が上述を満足するので、これも技術的範囲内に含まれる。
各実施例では、6個の分離爪38を備える場合について説明したが、これに限られることはなく、それ以上の個数の分離爪38を加熱ローラ71の表面に沿って設置しても良い。