JP2011164002A - 硬さ測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】物体の硬さを簡易な工程で再現性よく測定することができる硬さ測定方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる硬さ測定方法は、物体10の平坦な表面12に圧子20を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕14を形成する工程と、
圧子20を表面12から離間させて、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させる工程と、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせて、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、調整工程の後に、圧子20を表面12に第2の押し込み力で押し込んで物体10の硬さを測定する測定工程と、を含む。
【選択図】図12
【解決手段】本発明にかかる硬さ測定方法は、物体10の平坦な表面12に圧子20を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕14を形成する工程と、
圧子20を表面12から離間させて、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させる工程と、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせて、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、調整工程の後に、圧子20を表面12に第2の押し込み力で押し込んで物体10の硬さを測定する測定工程と、を含む。
【選択図】図12
Description
本発明は、物体の硬さの測定方法に関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスや、各種の薄膜の研究開発において、これらの特性を材料の基本的な物性値から、より正確に求めることが重要になってきている。例えば、圧電材料を用いた部材を有するデバイスにおいては、当該デバイスの圧電定数を求める場合がある。このような場合、正確な圧電定数を得るために必要な基本的な物性値の一つとして、例えば、ヤング率があり、これを正確に測定する必要がある。
一般に、材料の機械的な物性値の測定は、該材料の試験片を作成して比較的容易に測定される。このようなバルク試料の測定方法は、技術的に確立されているといえる。しかし、例えば、デバイス内に形成された薄膜を構成する材料の物性を、薄膜の状態で評価する手法は、未だ十分に確立されているとはいえない。
例えば、圧子と称する先端の尖鋭な針状の治具を試料表面に押し込み、試料の硬さを評価する硬さ試験機が実用化されている。この硬さ試験機の一例としては、特許文献1に示すような技術を用いた薄膜の機械的特性の評価装置がある。このような評価装置は、一般に、試料に押し込まれる圧子に印加される荷重、圧子の押し込まれた量、圧子の形状などに基づいて、応力および歪みを測定することができ、例えば試料の硬さ(ヤング率等)を評価するものとなっている。
しかしながら、硬さ試験機を用いて、特に金属、半金属、セラミック等の硬い材料の薄膜の物性を評価する場合、圧子の押し込み方の微妙な差により圧子の押し込み深さが大きく変わり、正確な物性値が得られなかったり、得られる物性値の再現性が不十分となることがあった。そのため、薄膜の物性を評価するにあたっては、再現性の良い評価方法、評価装置が確立されているとは必ずしもいえない状況である。発明者の検討によると、このような測定において、正確な物性値が再現性よく得られないという不具合は、測定で圧子を押し込むときに、試料と圧子の空間的な配置がばらつくことが一因となっていることが分かってきた。
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、物体の硬さを簡易な工程で再現性よく測定することができる硬さ測定方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明にかかる硬さ測定方法の一態様は、
物体の平坦な表面に圧子を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕を形成する工程と、
前記圧子を前記表面から離間させて、前記圧子痕が光学顕微鏡で観察可能な位置まで前記物体および前記圧子の少なくとも一方を移動させる工程と、
前記光学顕微鏡で前記圧子痕の開口および前記圧子のそれぞれに焦点を合わせて、前記表面および前記圧子の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、
前記調整工程の後に、前記圧子を前記表面に第2の押し込み力で押し込んで前記物体の硬さを測定する測定工程と、
を含む。
本発明にかかる硬さ測定方法の一態様は、
物体の平坦な表面に圧子を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕を形成する工程と、
前記圧子を前記表面から離間させて、前記圧子痕が光学顕微鏡で観察可能な位置まで前記物体および前記圧子の少なくとも一方を移動させる工程と、
前記光学顕微鏡で前記圧子痕の開口および前記圧子のそれぞれに焦点を合わせて、前記表面および前記圧子の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、
前記調整工程の後に、前記圧子を前記表面に第2の押し込み力で押し込んで前記物体の硬さを測定する測定工程と、
を含む。
本適用例の硬さ測定方法によれば、平坦な表面を有する物体の硬さを、簡易な工程で再現性よく測定することができる。すなわち、物体の平坦な表面には、光学顕微鏡によって焦点を合わせることが困難であるが、本適用例では当該表面に圧子痕を形成する工程を有する。そのため、圧子痕がマーカーとなって、調整工程において正確に物体の表面の位置を正確に把握することができる。そのため、当該表面および圧子の間の距離を所定の大きさに調整することが容易であり、測定工程における条件の一つである当該表面および圧子の間の距離を、所定の値に一定とすることが容易である。したがって、本適用例の硬さ測定方法によれば、平坦な表面を有する物体の硬さを再現性よく測定することができる。
[適用例2]
適用例1において、
前記調整工程では、前記光学顕微鏡の像における前記圧子痕の開口のサイズが最小であることに基づいて前記圧子痕の開口に焦点を合わせるようにしてもよい。
適用例1において、
前記調整工程では、前記光学顕微鏡の像における前記圧子痕の開口のサイズが最小であることに基づいて前記圧子痕の開口に焦点を合わせるようにしてもよい。
本適用例の硬さ測定方法によれば、調整工程において、さらに正確に物体の平坦な表面の位置を把握することができる。これにより、測定工程における条件の一つである当該表面および圧子の間の距離のバラツキをさらに小さくすることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第1の押し込み力は、前記第2の押し込み力よりも大きくすることができる。
適用例1または適用例2において、
前記第1の押し込み力は、前記第2の押し込み力よりも大きくすることができる。
本適用例の硬さ測定方法によれば、測定工程において、圧子痕の深さよりも浅い押し込み深さとなる状態で硬さの測定を行うことができる。これにより、例えば、測定工程における物体の変形量を小さくすることができ、物体のより表面付近における硬さを正確に測定することができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記物体は、厚みが10nm以上5mm以下である薄膜状であってもよい。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記物体は、厚みが10nm以上5mm以下である薄膜状であってもよい。
本適用例の硬さ測定方法によれば、平坦な表面を有する薄膜の硬さを再現性よく測定することができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記第1の押し込み力は、10mN以上50mN以下であることができる。
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記第1の押し込み力は、10mN以上50mN以下であることができる。
本適用例の硬さ測定方法によれば、圧子痕を形成する工程で、適度な大きさの圧子痕を形成することができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記第2の押し込み力は、0.1mN以上5mN以下であることができる。
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記第2の押し込み力は、0.1mN以上5mN以下であることができる。
本適用例の硬さ測定方法によれば、測定工程で、歪みの少ない変位−荷重曲線を得ることができ、特に物体の表面付近の硬さを評価することができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、
前記物体の材質は、圧電性を有することができる。
適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、
前記物体の材質は、圧電性を有することができる。
本適用例の硬さ測定方法によれば、圧電性を有する物体の硬さを測定することができる。これにより、例えば、ヤング率などの正確な値が得られ、圧電性を有する物体の圧電定数を求める際の基本的な物性値の信頼性を高めることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、
前記物体の材質は、少なくとも、チタン、ジルコニウム、および鉛を含有することができる。
適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、
前記物体の材質は、少なくとも、チタン、ジルコニウム、および鉛を含有することができる。
本適用例の硬さ測定方法によれば、少なくとも、チタン、ジルコニウム、および鉛を含有する物体の硬さを測定することができる。これにより例えば、ヤング率などの正確な値が得られ、物体の圧電定数を求める際の基本的な物性値の信頼性を高めることができる。
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、下記の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
本実施形態の硬さ測定方法は、物体10の平坦な表面12に圧子20を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕14を形成する工程と、圧子20を表面12から離間させて、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させる工程と、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせて、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、調整工程の後に、圧子20を表面12に第2の押し込み力で押し込んで物体10の硬さを測定する測定工程と、を含む。
1.物体
本実施形態の硬さ測定方法によって、硬さが測定される物体10について説明する。
本実施形態の硬さ測定方法によって、硬さが測定される物体10について説明する。
物体10は、平坦な表面12を有する。本明細書では、「平坦な表面」とは、表面粗さが物体10の膜厚よりも十分に小さく、より具体的には、当該表面を法線の方向から、光学顕微鏡で微分干渉法等を利用せずに通常の観察をしたときに、観察視野内に凹凸等がほとんどまたは全く観察されない表面のことを指す。物体10が有する平坦な表面12の大きさは特に限定されない。物体10の形状は、特に限定されず、塊状、板状、針状、薄膜状であることができる。より具体的な物体10としては、例えば、シリコン基板、化合物半導体基板などの基板、平坦な表面上に形成された各種の薄膜を挙げることができる。物体10が板状または薄膜状である場合における物体10の厚みとしては、例えば、1nm以上5mm以下とすることができる。またこの場合、後述する圧子20の形状および押し込み力の大きさが調節しやすいという観点からは、物体10の厚みとしては、例えば、10nm以上5mm以下とすることがより好ましい。
本実施形態の硬さ測定方法によって、硬さを測定しうる物体10の材質としては、固体(弾塑性体)であって、後述する圧子痕12を形成しうる材質を有するものが挙げられる。すなわち、物体10の材質としては、塑性変形する性質を有するものが挙げられる。また、物体10の材質としては、塑性変形する性質を有するかぎり、弾性変形する性質を有していてもよい。したがって、物体10の材質としては、例えば、金属、半導体、セラミック、ガラス、各種の酸化物、窒化物などの無機物、および、高分子などの有機物のうち圧子20によって変形を受けた後に当該変形が一定時間以上維持されるものを挙げることができる。また、物体10の材質としては、上記性質を有すれば、結晶質であってもアモルファスであってもよい。
また、物体10の材質としては、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびビスマスフェライトから選択される少なくとも一種を含む酸化物であってもよい。これらの物質は、圧電性を有し、本実施形態の硬さ測定方法によって、例えば、ヤング率を求めれば、これを用いて物体10によって構成されるデバイス等の圧電定数を求める際の信頼性を高めることができる。
2.硬さ
本実施形態の硬さ測定方法によって測定される物体10の「硬さ」とは、例えば、硬度H、ヤング率Eなどであり、必要に応じて適宜物体10や圧子20のポアソン比ν、測定されるスティフネスSを用いて算出される。このような硬さは、例えば、市販のナノインデンテーションを行う装置に付属するソフトウェア等に、適宜パラメーターを入力して算出されることができる。
本実施形態の硬さ測定方法によって測定される物体10の「硬さ」とは、例えば、硬度H、ヤング率Eなどであり、必要に応じて適宜物体10や圧子20のポアソン比ν、測定されるスティフネスSを用いて算出される。このような硬さは、例えば、市販のナノインデンテーションを行う装置に付属するソフトウェア等に、適宜パラメーターを入力して算出されることができる。
3.装置構成
図1は、本実施形態の硬さ測定方法に使用する装置構成の一例である装置1000を模式的に示す図である。本実施形態の硬さ測定に用いる装置は、少なくとも、物体10(試料)と圧子20との間の相対的な位置を変化させる機構と、物体10の表面12および圧子20を観察する光学顕微鏡300とを有する。
図1は、本実施形態の硬さ測定方法に使用する装置構成の一例である装置1000を模式的に示す図である。本実施形態の硬さ測定に用いる装置は、少なくとも、物体10(試料)と圧子20との間の相対的な位置を変化させる機構と、物体10の表面12および圧子20を観察する光学顕微鏡300とを有する。
図1に示す装置1000の例では、圧子20は、カンチレバー21の先端付近に形成され、カンチレバー21は、力検出器22に片持ち梁状に支持されている。また、力検出器22、筐体100にXYステージ400を介して固定されている。
本実施形態の硬さ測定方法に用いられる圧子20は、特に限定されず、例えば、市販のものを用いることができる。圧子20の形状としては、先端の尖鋭な三角錐、四角錐、円錐などとすることができる。また、硬さの測定および解析のしやすさ等を考慮すれば、圧子20の形状は、バーコビッチ型の正三角錐とすることや、ビッカース型の正四角錐とすることがより好ましい。
圧子20の材質はできるだけ硬度の大きいものが好ましい。圧子20の硬度は、測定される物体10の材質に依存するが、例えば、圧子20の材質としては、ダイヤモンド、サファイヤ、窒化ホウ素などの高弾性率材料が挙げられる。また、圧子20の材質としては、ガラス等にダイヤモンドコーティングが施されたものであってもよい。本実施形態の硬さ測定方法において使用する圧子20は、ヤング率、弾性率、ポアソン比等が既知で、繰り返し使用することが容易な、ダイヤモンドで形成されることがより好ましい。
装置1000の例では、圧子20は、カンチレバー21の試料に対抗する面に設けられている。圧子20の支持形態としては、光学顕微鏡300によって圧子20が直接観察されなくても、圧子20の位置を特定することができればよい。また、装置1000では、カンチレバー21が力検出器22に接続され、力検出器22が備えるトランスデューサー(圧電素子等)によって、カンチレバー21に生じる力(圧子20の押し込み力に対応する力)を検出している。このような圧子20の押し込み力に対応する力を検出する機構としては、例示している力検出器22の代わりに、光テコ検出機構を設けて、カンチレバー21のたわみ(圧子20の押し込み力に対応する変形)を検出するものであってもよい。カンチレバー21の材質は、限定されないが、たわみ量から応力等を算出しやすいように、弾性率等の物性値が既知の材質、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、白金、金、イリジウムなどであることが好ましい。
装置1000では、XYステージ400は、筐体100に対する圧子20の位置を変化させるために用いることができるが、他の、物体10(試料)と圧子20との間の相対的な位置を変化させる機構が、装置に備えられていれば必須の構成とはならない。装置1000では、XYステージ400は、圧子20を物体10(試料)の表面12に対して平行に移動させることができる。
装置1000は、試料(物体10)を載置する試料台220を有する。試料台220は、ピエゾ駆動部210によって保持され、ピエゾ駆動部210は、XYZステージ200を介して、筐体100に支持されている。装置1000では、試料は、試料台220に載置または固定される。ピエゾ駆動部210は、駆動信号が印加されることにより、変形することができ、試料台220を、例えば、XYZの3軸の方向に移動させることができる。ピエゾ駆動部210は、電気信号を機械的動作に変換しているため、試料台220に微小な変位を与えるときに好適である。XYZステージ200は、例えば、圧子20に対して試料を移動させる粗動機構として使用することができる。また、装置1000では、XYZステージ200は、筐体100を基準に、圧子20に対する試料の位置を変化させるために用いることができるが、他の、物体10(試料)と圧子20との間の相対的な位置を変化させる機構が、装置に備えられていれば必須の構成とはならない。
光学顕微鏡300は、XYZステージ310を介して筐体100に支持されている。装置1000の例では、光学顕微鏡300は、レンズとCCD素子が一体的に組み合わされたものが例示されている。光学顕微鏡300は、試料(物体10)の表面12と圧子20(カンチレバー21の表面)を観察できるようになっている。装置1000では、光学顕微鏡300の焦点を合わせる機構の一つとしてXYZステージ310を例示しているが、光学顕微鏡300の焦点あわせは、XYZステージ200やピエゾ駆動部210の動作によって行ってもよい。なお、XYZステージ310は、光学顕微鏡300の位置、または移動量を計測することができるようになっている。
装置1000は、制御装置500を有している。装置1000の例では、制御装置500は、ピエゾ駆動部210、力検出器22、および光学顕微鏡300に接続されている。制御装置500は、例えば、試料を微小に動作させるための駆動信号をピエゾ駆動部210に供給して、ピエゾ駆動部210を駆動することができる。また、制御装置500は、力検出器22から、カンチレバー21に生じる力(圧子20の押し込み力に対応する力)に対応する信号を取得することができる。さらに、制御装置500は、光学顕微鏡300によって取得された画像を取り込むことができる。なお、図示しないが、制御装置500は、光学顕微鏡300によって取得された画像を表示または解析するようにしてもよい。また、制御装置500は、XYステージ400、XYZステージ200、310などに接続されてもよく、例えば、これらのステージをモーター等で動作するようにしてこれらのステージの動作を制御してもよい。さらに、制御装置500は、演算装置などに接続されるか、演算装置などを備えてもよく、このような演算装置によって、後述する硬さ測定方法の工程の一部あるいは全部を自動的に制御できるように構成してもよい。
以上例示した装置1000では、XYステージ400、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって、物体10(試料)と圧子20との間の相対的な位置を変化させることができる。また、装置1000では、光学顕微鏡300によって、物体10の表面12の任意の位置および圧子20(カンチレバー21の表面)を観察して、少なくとも物体10の表面12および圧子20の相対的な距離を測定することができる。
4.硬さ測定方法
図2、図3、図5および図12は、それぞれ本実施形態の硬さ測定方法の一工程を模式的に示す断面図である。図4および図6は、それぞれ本実施形態の硬さ測定方法の一工程を模式的に示す平面図である。図4および図6は、それぞれ図3および図5に対応している。
図2、図3、図5および図12は、それぞれ本実施形態の硬さ測定方法の一工程を模式的に示す断面図である。図4および図6は、それぞれ本実施形態の硬さ測定方法の一工程を模式的に示す平面図である。図4および図6は、それぞれ図3および図5に対応している。
4.1.圧子痕を形成する工程
本実施形態の硬さ測定方法では、まず、本工程によって、物体10の平坦な表面12に圧子痕14を形成する。本工程では、圧子20を第1の押し込み力で、物体10の平坦な表面12に押し込む。図2は、本工程において、圧子20が物体10の表面12に押し込まれている様子を示している。
本実施形態の硬さ測定方法では、まず、本工程によって、物体10の平坦な表面12に圧子痕14を形成する。本工程では、圧子20を第1の押し込み力で、物体10の平坦な表面12に押し込む。図2は、本工程において、圧子20が物体10の表面12に押し込まれている様子を示している。
圧子20は、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYステージ400、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって、物体10の表面12に押し込まれることができる。
圧子痕14は、圧子20が物体10に押し込まれることによって形成される。したがって圧子痕14は、圧子20が押し込まれた状態では、圧子20の押し込まれた部分の形状とほぼ同じとなっている。圧子痕14は、平坦な表面12に開口14aを有する窪みである。圧子痕14の機能の一つとしては、光学顕微鏡の焦点を、表面12に合わせる際のマーカーとなることが挙げられる。したがって、本実施形態の硬さ測定方法における、本工程の機能の一つとしては、後述する調整工程において、表面12に対する光学顕微鏡の焦点あわせのためのマーカー(圧子痕14)を形成することが挙げられる。
本工程で、圧子20に印加される第1の押し込み力は、特に限定されないが、例えば、10mN以上50mN以下とすることができる。第1の押し込み力が、このような範囲であると、適度な大きさの圧子痕14を形成することができる。第1の押し込み力は、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、カンチレバー21のたわみを、力検出器22によって測定することにより知ることができる。
なお、本工程の副次的な機能としては、調整工程において圧子痕14を観察したときに、圧子痕14の開口14aの大きさを知ることができるようにすることが挙げられる。そのため、第1の押し込み力、圧子20の形状、および圧子痕14の開口14aの大きさを考慮すれば、測定工程における硬さの測定の前に、物体10のおよその硬さを知ることができる。これにより、測定工程における第2の押し込み力の大きさを設定するための情報を提供することができる。
また、本工程において、圧子20が押し込まれる際に、圧子20によって排除または圧縮された物体10の一部は、塑性変形して圧子痕14の開口14aの周囲に土手状の構造を形成する場合がある。このような場合でも、次の工程で圧子20が表面12から離間したときに、圧子痕14が残るかぎり本工程の効果を得ることができる。ただし、本工程で形成される圧子痕14の開口14aの周囲の構造が表面12から大きく離れる場合には、調整工程における表面12の位置の検出の精度が低下する場合があるため、適宜第1の押し込み力を小さくするなどして、できるだけ開口14aの周囲の構造を変化させないように圧子痕14を形成することが好ましい。
4.2.物体および圧子の少なくとも一方を移動させる工程
本実施形態の硬さ測定方法では、次に、圧子痕14を形成する工程で押し込まれた圧子20を表面12から離間させて、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させる。図3および図4は、圧子20が表面12から離間した状態を模式的に示し、図4および図5は、圧子20および物体10の相対的な位置を変化させた後の様子を模式的に示している。
本実施形態の硬さ測定方法では、次に、圧子痕14を形成する工程で押し込まれた圧子20を表面12から離間させて、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させる。図3および図4は、圧子20が表面12から離間した状態を模式的に示し、図4および図5は、圧子20および物体10の相対的な位置を変化させた後の様子を模式的に示している。
圧子20は、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYステージ400、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって、物体10の表面12から離間させることができる。このとき、第1の押し込み力を印加した方向と反対の方向に、物体10および圧子20の相対的な位置を変化させて離間させることがより好ましい。このようにすれば、圧子痕14の形状を、圧子20が押し込まれた状態における形状に近い状態に維持させやすくなる。また、このようにすれば、圧子20の破損を抑制することができる。
物体10の表面12から圧子20が離間して、表面12に平行な方向に圧子20が移動されていない状態では、装置1000の例のように、光学顕微鏡が物体10の表面12の法線の方向に設けられている場合に、カンチレバー21または圧子20によって遮られて、光学顕微鏡によって圧子痕14を直接観察することは難しい。そこで、本工程では圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで、物体10および圧子20の少なくとも一方を移動させることによって、例えば、図5および図6に示すような物体10および圧子20の配置となるようにする。圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで移動させる場合も、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYステージ400、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって行うことができる。圧子20および物体10の少なくとも一方の移動方向は、図5および図6の例では、カンチレバー21の延びる方向となっているが、圧子痕14が光学顕微鏡で観察可能な位置まで移動するかぎり、任意の方向に相対的に移動することができる。
本工程を経ると、物体10および圧子20は、例えば、図5および図6に示すような配置となり、光学顕微鏡が物体10の表面12の法線方向に設置された場合に、カンチレバー21や圧子20によって遮られることなく、圧子痕14を光学顕微鏡で観察することができる。
4.3.調整工程
次に、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせて、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する。図7は、本工程で光学顕微鏡の焦点を圧子痕14に合わせる様子の模式図である。図8は、本工程で光学顕微鏡の焦点を圧子痕14に合わせた状態で得られる画像の一例を模式的に示す図である。図9は、本工程で光学顕微鏡の焦点をカンチレバー21に合わせる様子の模式図である。図10は、本工程で光学顕微鏡の焦点をカンチレバー21に合わせた状態で得られる画像の一例を模式的に示す図である。
次に、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせて、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する。図7は、本工程で光学顕微鏡の焦点を圧子痕14に合わせる様子の模式図である。図8は、本工程で光学顕微鏡の焦点を圧子痕14に合わせた状態で得られる画像の一例を模式的に示す図である。図9は、本工程で光学顕微鏡の焦点をカンチレバー21に合わせる様子の模式図である。図10は、本工程で光学顕微鏡の焦点をカンチレバー21に合わせた状態で得られる画像の一例を模式的に示す図である。
本工程において、光学顕微鏡で圧子痕14の開口14aおよび圧子20のそれぞれに焦点を合わせるが、圧子痕14の開口14aおよび圧子20のどちらに先に焦点を合わせてもよい。圧子痕14の開口14aに光学顕微鏡の焦点を合わせるには、例えば、物体10と光学顕微鏡との間の距離を調節する方法がある。同様に、圧子20に光学顕微鏡の焦点を合わせるには、例えば、圧子20と光学顕微鏡との間の距離を調節する方法がある。なお、本実施形態の圧子20は、上述のとおり、カンチレバー21の物体11側の表面に設けられているため、光学顕微鏡で直接には観察されない。しかし、圧子20はカンチレバー21に固定されており、圧子20の高さ(カンチレバー21の物体11側の表面から圧子20の先端までの距離)を既知とすることができるため、カンチレバー21の物体10と反対側の面に焦点を合わせることは、圧子20に焦点を合わせることと同じとみなすことができる。
図7は、圧子痕14の開口14aに光学顕微鏡300の焦点が合っている状態を模式的に示している。光学顕微鏡300の焦点Fは、図中に光路Lを用いて示してある。図8は、圧子痕14の開口14aに光学顕微鏡300の焦点が合っている状態で、光学顕微鏡300の視野内に、圧子痕14およびカンチレバー21(圧子20)が存在する場合の画像を模式的に示している。また、図9は、カンチレバー21に光学顕微鏡300の焦点が合っている状態を模式的に示している。図10は、カンチレバー21に光学顕微鏡300の焦点が合っている状態で、光学顕微鏡300の視野内に圧子痕14およびカンチレバー21が存在する場合の画像を模式的に示している。図中の光路Lは、焦点Fを説明する便宜のために描かれており、光学顕微鏡300の像面は焦点Fを含む面となっている。
圧子痕14の開口14aへの焦点合わせは、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYZステージ200、XYZステージ310およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって行うことができる。なお、物体10および圧子20の位置関係を移動させないようにする場合には、光学顕微鏡300を、XYZステージ310によって移動させて、圧子痕14の開口14aへの焦点合わせを行う。カンチレバー21への焦点合わせは、XYZステージ310を動作させることによって行うことができる。
上述した「4.2.物体および圧子の少なくとも一方を移動させる工程」を経て、物体10の表面12および圧子20は離間しているため、図7に示すような圧子痕14の開口14aに焦点Fが合っている状態では、図8に示すように、光学顕微鏡300の画像として、圧子痕14の開口14aの輪郭14bが鋭く、カンチレバー21の輪郭が鈍い(ボケた)ものが得られる。圧子痕14の開口14aに焦点Fが合っているかどうかは、画像における開口14aの輪郭14bの大きさが最小となることによって知ることができる。このような焦点合わせは、目視で行ってもよいし、画像処理によって行ってもよい。
同様に、上述した「4.2.物体および圧子の少なくとも一方を移動させる工程」を経て、物体10の表面12および圧子20は離間しているため、図9に示すようなカンチレバー21に焦点Fが合っている状態では、図10に示すように、光学顕微鏡300の画像として、カンチレバー21の輪郭が鋭く、圧子痕14の開口14aの輪郭14bが鈍いものが得られる。カンチレバー21に焦点Fが合っているかどうかは、画像におけるカンチレバー21の輪郭の大きさが最小となることによって知ることができる。このような焦点合わせは、目視で行ってもよいし、画像処理によって行ってもよい。
図11は、圧子痕14の開口14aに対して光学顕微鏡の焦点を合わせる際の画像の様子を模式的に示している。図11には、焦点が開口14aに合っており、開口14aの輪郭14bが鋭く観察される場合(ジャストフォーカス)の画像の例と、焦点が開口14aに合っておらず、開口14aの輪郭14cがボケて観察される場合(アンダーまたはオーバーフォーカス)の画像の例とが示されている。すなわち、焦点が合っている場合の像(輪郭14b)は、焦点が合っていない場合の像(輪郭14c)よりも小さくなっている。光学顕微鏡の画像上では、圧子痕14の開口14aに、焦点を合わせるときには、図11に示したような現象が生じる。そのため、圧子痕14の開口14aの像が最も小さくなったときに、焦点が合っていると判定することができる。このような判定は、目視によっても、画像処理によっても可能である。そして、画像処理を行う場合には、この現象を利用して、圧子痕14のサイズが最小となったことに基づいて、圧子痕14の開口14aに焦点が合っていると判定することができる。なお、光学顕微鏡300の焦点深度は浅いほど、焦点位置からのずれ量に対する画像のボケ量が大きくなる。そのため、より焦点深度の浅い光学顕微鏡300を用いれば、上記方法における焦点の合否の判定を行いやすくすることができる。
なお、図8および図10の例では、圧子痕14およびカンチレバー21が光学顕微鏡300の同一の視野内に存在するようにしている。しかし、例えば、光学顕微鏡300の移動をXYZステージ310で行い、少なくとも物体10と表面12との表面12の法線方向の位置関係が測定できれば、圧子痕14およびカンチレバー21の間の表面12に沿う方向の距離が離れて光学顕微鏡の異なる視野で焦点あわせを行っても支障はない。
上記のように圧子痕14の開口14aおよび圧子20(カンチレバー21)のそれぞれの焦点を合わせると、XYZステージ310から得られる位置情報から、物体10の表面12および圧子20の先端の位置をそれぞれ把握することができる。
そして、上記の焦点合わせの手順を適宜繰り返して、表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整する。表面12および圧子20の間の距離の調整は、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって行うことができる。
表面12および圧子20の間の距離の「所定の」大きさは、物体10、圧子20、およびカンチレバー21の材質、並びに、ピエゾ駆動部210、および力検出器22の性能などに応じて適宜設定される。例えば、所定の距離は、ピエゾ駆動部210によって、物体10の表面12を移動させた場合に、表面12が圧子20に接触したときに、ピエゾ駆動部210の駆動可能範囲の中央付近となるように設定されることができる。
表面12および圧子20の間の距離の所定の大きさは、具体的には、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。また、一つの物体10の複数の箇所の硬さを測定する場合や、複数の同種の物体10をそれぞれ硬さ測定する場合には、表面12および圧子20の間の距離の所定の大きさで一定となるようにすることがより好ましい。このようにすれば、測定工程における初期条件の一つである表面12および圧子20の間の距離の分布を狭くすることができ、測定結果の再現性をより高めることができる。なお、表面12および圧子20の間の距離の所定の大きさの範囲は、測定誤差(例えば、XYZステージ310の位置測定精度による)の範囲で分布を有していてもよい。
4.4.測定工程
調整工程の後に、圧子20を表面12に第2の押し込み力で押し込んで物体10の硬さを測定する。本工程では、圧子20を第2の押し込み力で、物体10の平坦な表面12に押し込む。図12は、本工程において、圧子20が物体10の表面12に押し込まれている様子を示している。
調整工程の後に、圧子20を表面12に第2の押し込み力で押し込んで物体10の硬さを測定する。本工程では、圧子20を第2の押し込み力で、物体10の平坦な表面12に押し込む。図12は、本工程において、圧子20が物体10の表面12に押し込まれている様子を示している。
圧子20は、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、XYステージ400、XYZステージ200およびピエゾ駆動部210の少なくとも1つを動作させることによって、物体10の表面12に押し込まれることができる。これらのうち、測定工程では、ピエゾ駆動部210を動作させて圧子20を物体10の表面12に押し込むようにすると、物体10と圧子20の間の位置関係を精密に制御しやすいためより好ましい。
本工程で、圧子20に印加される第2の押し込み力は、特に限定されない。第2の押し込み力は、例えば、0.1mN以上150mN以下とすることができる。また、第2の押し込み力を0.1mN以上5mN以下とすると、極めて小さい歪みの領域で荷重−変位曲線(応力−歪み曲線)を得ることができ、特に物体10の表面12付近の硬さを評価することができる。第2の押し込み力は、例えば、上記「3.装置構成」の項で例示した装置1000の構成であれば、カンチレバー21のたわみを、力検出器22によって測定することにより知ることができる。また、物体10の厚みが小さい場合には、第2の押し込み力は、物体10の厚みの40%以上60%以下程度まで圧子20が押し込まれる大きさに設定することが好ましい。
なお、本工程の第2の押し込み力を、圧子痕を形成する工程の第1の押し込み力よりも小さくする、すなわち、第1の押し込み力を、第2の押し込み力よりも大きくすると、本工程において、圧子痕14の深さよりも浅い押し込み深さとなる状態で硬さの測定を行うことができる。これにより、本工程における物体の変形量を小さくすることができ、物体のより表面付近における硬さを正確に測定することができる。
本工程で得られる測定値の典型として、第2の押し込み力、および圧子20および物体10の相対的な変位量が挙げられる。そして、必要に応じて、本工程で形成された圧子痕の形状を求め、その他のパラメーター(ポアソン比νなど)を用いて、硬さ(硬度H、ヤング率Eなど)を算出することができる。
5.作用効果等
以上のように、本実施形態の硬さ測定方法によれば、平坦な表面12を有する物体10の硬さを、簡易な工程で再現性よく測定することができる。すなわち、物体10の平坦な表面12には、光学顕微鏡によって焦点を合わせることが困難であるが、本実施形態では当該表面12に圧子痕14を形成する工程を有する。そのため、圧子痕14がマーカーとなって、調整工程において正確に物体10の表面12の位置を正確に把握することができる。そのため、当該表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整することが容易であり、測定工程における条件の一つである当該表面12および圧子20の間の距離を、所定の値に一定にすることが容易である。
以上のように、本実施形態の硬さ測定方法によれば、平坦な表面12を有する物体10の硬さを、簡易な工程で再現性よく測定することができる。すなわち、物体10の平坦な表面12には、光学顕微鏡によって焦点を合わせることが困難であるが、本実施形態では当該表面12に圧子痕14を形成する工程を有する。そのため、圧子痕14がマーカーとなって、調整工程において正確に物体10の表面12の位置を正確に把握することができる。そのため、当該表面12および圧子20の間の距離を所定の大きさに調整することが容易であり、測定工程における条件の一つである当該表面12および圧子20の間の距離を、所定の値に一定にすることが容易である。
なお、従来の硬さ測定においては、試料の表面が平坦な場合には、偶然的に、試料に付着した塵や、偶然的に、試料に存在する傷などをマーカーとして、試料の表面を把握することがあった。そのため、試料の表面を検出できない、あるいは試料の表面の位置を正確に把握することが困難であったため、硬さの測定結果がおよそ予想とかけ離れた不合理な値となったり再現性がなかったりした。これに対して、本実施形態の硬さ測定方法は、偶然等に依存することなく、確実かつ正確に物体10の表面12を把握することができるため、平坦な表面12を有する物体10の硬さを、簡易な工程で再現性よく測定することができる。
6.実験例および参考例
以下に実験例および参考例を示し、本発明にかかる硬さ測定方法をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実験例および参考例によってなんら限定されるものではない。
以下に実験例および参考例を示し、本発明にかかる硬さ測定方法をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実験例および参考例によってなんら限定されるものではない。
実験例および参考例の硬さ測定方法では、いずれもシリコン基板上に厚さ1.3μmで成膜したPZT膜の硬さを測定したものである。したがって、実験例および参考例ではPZT膜が上記実施形態の物体10に相当する。
実験例では、上記実施形態に従って、PZT膜の表面に20mNの押し込み力で、圧子痕を形成し、光学顕微鏡で当該圧子痕をマーカーとして表面および圧子の間の距離を調整して測定を行った。実験例の測定は、複数回行い、測定毎に圧子痕を形成し、それぞれ荷重(上記実施形態の第2の押し込み力に相当する)を変えて新たな表面を測定した。
一方、参考例では、圧子痕を形成せず、PZT膜上の塵を探して、塵をマーカーとして表面および圧子の間の距離を調整して測定を行った。参考例の測定は、複数回行い、測定毎に塵を探しだし、それぞれ荷重(上記実施形態の第2の押し込み力に相当する)を変えて新たな表面を測定した。
図13は、実験例および参考例の荷重−変位履歴曲線である。図13に示すように、実験例および参考例のいずれの測定においても、いわゆる圧入−除荷曲線が得られた。そして、実験例の荷重−変位履歴曲線は、測定毎の圧入曲線がほぼ一致していた。これに対して、参考例の荷重−変位履歴曲線は、測定毎の圧入曲線はばらついていた。
図14は、得られた荷重−変位履歴曲線に基づいて得られたヤング率を荷重に対してプロットしたものである。実験例の測定によって得られたヤング率は、PZTの試験片を用いて測定されたヤング率(150GPa程度)に近い値(120GPa〜150GPa)となっている。また、実験例の測定によって得られたヤング率は、測定の荷重の変化に対して、大きな変化を示さなかった。これに対して、参考例の測定によって得られたヤング率は、PZTの試験片を用いて測定されたヤング率(150GPa程度)とは異なる非常に大きな値(400GPa以上)となっている。また、参考例の測定によって得られたヤング率は、測定の荷重によって大きく異なっている。
以上の結果から、実験例の測定では、上記実施形態の硬さ測定方法に従い、圧子痕を形成して測定しているため、確からしいヤング率が得られるとともに、得られるヤング率の値のバラツキが小さく、再現性が良好であることが判明した。これに対して、参考例の測定では、圧子痕を形成していないため、得られたヤング率が不合理に大きく、しかも再現性が不十分であった。このような結果は、実験例において、各測定前の表面と圧子の間の距離が一定で、十分に圧子が表面に押し込まれたこと、および、参考例において、各測定前の表面と圧子の間の距離が一定でなく、十分に圧子が表面に押し込まれなかったことが一因となっているものと推定される。なお、参考例の各測定は、塵を探しだすための時間もかかっており、実験例の場合に比較して、測定時間がより長時間となった。
以上に述べた実施形態および各変形形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果または相乗的な効果を奏することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…物体、12…表面、14…圧子痕、14a…開口、14b,14c…輪郭、20…圧子、21…カンチレバー、22…力検出器、100…筐体、200…XYZステージ、210…ピエゾ駆動部、220…試料台、300…光学顕微鏡、310…XYZステージ、400…XYステージ、500…制御装置、F…焦点、L…光路
Claims (8)
- 物体の平坦な表面に圧子を第1の押し込み力で押し込み、圧子痕を形成する工程と、
前記圧子を前記表面から離間させて、前記圧子痕が光学顕微鏡で観察可能な位置まで前記物体および前記圧子の少なくとも一方を移動させる工程と、
前記光学顕微鏡で前記圧子痕の開口および前記圧子のそれぞれに焦点を合わせて、前記表面および前記圧子の間の距離を所定の大きさに調整する調整工程と、
前記調整工程の後に、前記圧子を前記表面に第2の押し込み力で押し込んで前記物体の硬さを測定する測定工程と、
を含む、硬さ測定方法。 - 請求項1において、
前記調整工程では、前記光学顕微鏡の像における前記圧子痕の開口のサイズが最小であることに基づいて前記圧子痕の開口に焦点を合わせる、硬さ測定方法。 - 請求項1または請求項2において、
前記第1の押し込み力は、前記第2の押し込み力よりも大きい、硬さ測定方法。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記物体は、厚みが10nm以上5mm以下である薄膜状である、硬さ測定方法。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記第1の押し込み力は、10mN以上50mN以下である、硬さ測定方法。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記第2の押し込み力は、0.1mN以上5mN以下である、硬さ測定方法。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記物体の材質は、圧電性を有する、硬さ測定方法。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記物体の材質は、少なくとも、チタン、ジルコニウム、および鉛を含有する、硬さ測定方法。
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-
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