JP2011163438A - 往復動用シールリング - Google Patents

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Abstract

【課題】往復動用のシールリング1において、厳しい摺動条件でも良好な潤滑性を維持して摺動面の摩耗を抑制する。
【解決手段】軸心Oを通る平面で切断した断面が略円弧状の膨出形状をなし相手材200の円筒面201に適当なつぶし代をもって軸方向摺動可能に密接される摺動面11を有する往復動用のシールリング1であって、摺動面11に、円周方向へ延びる複数の潤滑溝14が形成される。このため、潤滑溝14に介入する密封対象液の一部によって、高圧及び摺動距離の厳しい条件でも良好な潤滑性が維持される。
【選択図】図2

Description

本発明は、相対的に往復運動を行う内周部材と外周部材の間で流体を密封するために用いられるシールリングに関するものである。
自動車のトランスミッションのクラッチピストンなど、往復動部分の密封を行うのに用いられる往復動用シールリングとしては、図6に示されるようなもの知られている。このシールリング100はゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、軸心Oを通る平面で切断した断面形状が扁平なD字形に形成され、すなわち外径側へ膨らんだ円弧状断面をなす外周摺動面101と、軸心Oと直交する平面状をなす両側面102と、円筒面状に形成された内周面103とを有し、一般に「Dリング」と呼ばれている(典型的な従来例としては、下記の特許文献参照)。
そして図7に示されるように、このシールリング100は、内周部材300の外周面301に円周方向へ連続して形成された、半径方向に切断した断面形状が長方形状の装着溝302に装着されて、この溝302から外径側へ突出した外周摺動面101が、外周部材200の内周面と摺動可能に密接されるものである。
詳しくは、シールリング100は、断面形状が矩形状をなす内径部が装着溝302に嵌め込まれて内周面103が溝底面302aに着座するので捩れが発生せず、高圧空間H側の密封対象の作動油の圧力を受けることによって側面102が装着溝302の内側面302bに密接状態に押し付けられると共に、外周摺動面101が円弧状断面をなすことによって外周部材200の内周面に対する摺動面圧が局部的に高まるので、高圧空間Hから低圧空間Lへの作動油の漏れを有効に防止することができるのである。
しかしながら、この種のシールリング100は、摩耗による密封性能の低下を極力抑えることが大きな課題となっており、特に、自動車のトランスミッションに用いられる往復動用シールリングの場合には、近年、複数段のギアを切り替えて変速する従来のAT(Automatic Transmission)から、無段階で連続的に自動変速可能なCVT(Continuously Variable Transmission)への移行に伴って、使用環境がますます厳しくなる傾向にある。
これについて説明すると、密封対象の作動油の一部は、外周部材200の内周面とシールリング100の外周摺動面101との間に介入し、潤滑油膜として機能するが、外周摺動面101は断面略円弧状の膨出形状をなすことから、圧縮量の大きい軸方向中央部付近では十分な潤滑油膜が形成されにくい。しかも、高圧空間Hから外周部材200の内周面と内周部材300の外周面301との間の隙間を通じてシールリング100に作用する油圧によって、このシールリング100が軸方向の圧縮変形を受け、その圧縮応力は、外周部材200の内周面に対する外周摺動面101の密接面圧を増大させるように作用するため、ATでは約2MPa程度であった前記油圧が、例えばCVTでは約6MPaといった高圧になるため、外周摺動面101に高い密接面圧が負荷されることによって、摺動時に油膜切れが起こり、早期摩耗を来たすおそれがあった。
加えて、外周部材200の内周面とシールリング100の軸方向摺動距離が、ATでは約2mm程度であったものがCVTでは数十mmに増大することも、上述の潤滑不足と相俟って外周摺動面101の早期摩耗の一因となっていた。
特開2004−125099号公報 特開2006−316947号公報
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、ピストンなど往復動用のシールリングにおいて、厳しい摺動条件でも良好な潤滑性を維持して摺動面の摩耗を抑制することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る往復動用シールリングは、軸心を通る平面で切断した断面が略円弧状の膨出形状をなし相手材の円筒面に適当なつぶし代をもって軸方向摺動可能に密接される摺動面を有し、この摺動面に、円周方向へ延びる複数の潤滑溝が形成されたものである。
本発明に係る往復動用シールリングによれば、相手材の円筒面に適当なつぶし代をもって軸方向摺動可能に密接される略円弧状の膨出形状の摺動面に、円周方向へ延びる複数の潤滑溝が形成されているため、この潤滑溝に介入する密封対象液の一部によって、高圧及び摺動距離の厳しい条件でも良好な潤滑性が維持され、シールリングの早期摩耗を有効に防止することができる。
本発明に係る往復動用シールリングの第一の形態を示す図で、図の左半分が軸心Oを通る平面で一部を切断した半断面図、図の右半分が外周から見た外観図である。 図1の往復動用シールリングの装着状態を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。 図1の往復動用シールリングのはみ出しを防止した装着例を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。 本発明に係る往復動用シールリングの第二の形態の装着状態を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。 本発明に係る往復動用シールリングの第三の形態を示す図で、図の左半分が軸心Oを通る平面で一部を切断した半断面図、図の右半分が外周から見た外観図である。 従来の往復動用シールリングの一例を示す図で、図の左半分が軸心Oを通る平面で一部を切断した半断面図、図の右半分が外周から見た外観図である。 図6の往復動用シールリングの装着状態を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
以下、本発明に係る往復動用シールリングの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係る往復動用シールリングの第一の形態を示す図で、図の左半分が軸心Oを通る平面で一部を切断した半断面図、図の右半分が外周から見た外観図であり、図2は、図1の往復動用シールリングの装着状態を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
このシールリング1はゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、軸心Oを通る平面で切断した断面形状が扁平なD字形に形成され、すなわち「Dリング」と呼ばれる基本形状をなし、外径側へ膨らんだ円弧状断面をなす外周摺動面11と、軸心Oと直交する平面状をなす両側面12と、円筒面状に形成された内周面13とを有する。
シールリング1の外周摺動面11には、円周方向へ連続して互いに平行に延びる複数の潤滑溝14が形成されている。そして例えばシールリング1の軸方向肉厚が約2mm、径方向肉厚が約4mmである場合、潤滑溝14の深さは、密封性が損なわれることのないように、1〜30μm、好ましくは5〜15μmとする。
また図2において、参照符号200は外周部材、参照符号300は、この外周部材200の内周に軸方向移動可能に配置された内周部材である。内周部材300の外周面301には、円周方向へ連続した装着溝302が形成されており、上述したシールリング1は、この装着溝302に装着される。なお、外周部材200は請求項1に記載された相手材に相当し、円筒面状に形成されたその内周面201は、請求項1に記載された円筒面に相当する。
詳しくは、装着溝302は軸心Oを通る平面で切断した断面形状が略コ字形をなすものであって、すなわち円筒面状の底面302aと、その軸方向両端から軸心Oと直交する平面状をなして立ち上がる内側面302b,302bからなる。そしてシールリング1は、この装着溝302への未装着状態での径方向肉厚が、外周部材200の内周面201と装着溝302の底面302aとの対向距離よりも大きく、したがって、外周部材200の内周面201と装着溝302の底面302aとの間で径方向に適当に圧縮された状態で、すなわち適当なつぶし代をもって装着されるようになっている。
以上の構成において、高圧空間Hに印加される密封対象の作動油の圧力(以下、油圧という)は、外周部材200の内周面201と内周部材300の外周面301との間の隙間Gを通じてシールリング1に作用しており、シールリング1はこの油圧によって装着溝302における相対的に低圧となる側(図2における下方)の内側面302bに押し付けられる。このため、外周部材200の内周面201との相対的な摺動方向に拘らず、シールリング1は装着溝302内における相対的に低圧となる側に偏在するように保持され、内周面13が装着溝302の底面302aに密接状態に着座されると共に、外周摺動面11が適当に圧縮変形した状態で外周部材200の内周面201と摺動可能に密接されることによって、高圧空間Hの作動油の漏洩を防止する。
上記構成のシールリング1によれば、外周部材200の内周面201との摺動の過程で、密封対象の作動油の一部は、外周部材200の内周面201とシールリング1の外周摺動面11との間に介入し、潤滑油膜として機能する。また、前記外周摺動面11に形成された複数の潤滑溝14は、摺動過程で外周部材200の内周面201とシールリング1の外周摺動面11との間に介入される作動油を保持して潤滑油膜の形成を促す油溜まりとして機能すると共に外周摺動面11の摺動面積を低減するように機能する。したがって、外周摺動面11が断面略円弧状の膨出形状をなすことによって、軸方向中央部付近では圧縮量が大きくなっているにも拘らず良好な潤滑油膜が形成されるので、例えばCVTのように印加油圧が約6MPaといった高圧になり、かつ摺動距離が大きくなる厳しい条件でも、早期摩耗を有効に防止することができる。
ここで、図2のように装着溝302にシールリング1を保持しただけの場合は、高圧空間Hから外周部材200と内周部材300との間の隙間Gを通じてシールリング1に作用する油圧が6MPaといった高圧になると、隙間Gの大きさによってはこのシールリング1の一部が装着溝302から低圧空間L側の隙間GLへはみ出して、破損するおそれが懸念される。図3は、このようなシールリング1のはみ出しを防止するための装着例を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
すなわち、図3に示される装着例では、内周部材300の外周面301に円周方向へ連続して形成された装着溝302には、シールリング1と、その軸方向両側に位置して一対のバックアップリング2を装着したものである。したがって、装着溝302の軸方向幅は図2のようにシールリング1だけを装着するものに比較して広く形成されている。
バックアップリング2は、PTFE(四フッ化エチレン:Poly tetra fluoro ethylene)あるいはナイロン等、シールリング1より硬質でかつ低摩擦の合成樹脂材料からなり、その径方向高さは装着溝302の径方向深さよりも大きく、言い換えればバックアップリング2の外径は内周部材300の外周面301よりも大径で、外周部材200の内周面201に対して微小隙間をもって対向している。また、各バックアップリング2の外周面には、その軸方向両側空間(装着溝302内と隙間G)を互いに連通する多数の切欠21が円周方向等間隔で形成されている。
その他の構成は、先に説明した図2と同様である。
したがって図3に示される装着例によれば、バックアップリング2は、その外径が内周部材300の外周面301よりも大径で、外周部材200の内周面201に微小隙間をもって対向しているので、高圧空間Hの印加油圧の上昇によってシールリング1の一部が相対的に低圧空間L側の隙間GLへはみ出すのを有効に防止することができる。
また、バックアップリング2の外周面には多数の切欠21が形成されているので、外周部材200の内周面201との摺動の過程で、密封対象の作動油の一部が、隙間G側から切欠21を介してバックアップリング2とシールリング1の間に流入する。したがって、作動油が外周部材200の内周面201とシールリング1の外周摺動面11との間に介入して潤滑溝14に保持され潤滑油膜の形成が促されるといった機能が阻害されない。
なお、図3に示される装着例によれば、バックアップリング2がシールリング1の軸方向両側に配置されているため、例えば内周部材300の軸方向両側の空間に交互に高圧の油圧が印加され、すなわち高圧空間Hと低圧空間Lの関係が交互に逆転するものにおいて有用であるが、このような印加油圧の切り換えのない機器では、バックアップリング2を装着溝302内におけるシールリング1の片側(低圧空間L側)にのみ配置しても良い。
次に図4は、本発明に係る往復動用シールリングの第二の形態の装着状態を、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
この第二の形態において、先に説明した図1及び図2に示される第一の形態と異なるところは、シールリング1の外周摺動面11に形成された複数の潤滑溝14のうち、外径側へ膨らんだ円弧状断面をなす外周摺動面11の最大径部である軸方向中央付近に位置する潤滑溝14aが最も深く、最も軸方向端部寄りに位置する潤滑溝14bが最も浅くなるように、潤滑溝14の深さを順次変化させて形成したものである。その他の部分は、基本的に図1及び図2と同様に構成される。
なお、この場合も潤滑溝14の深さは1〜30μm、好ましくは5〜15μmの範囲で形成される。
すなわち図4に示される構成においても、シールリング1の外周摺動面11は断面略円弧状の膨出形状をなすことによって、軸方向中央部付近で最も圧縮量(外周部材200の内周面201に対する面圧)が大きくなっており、また、シールリング1が高圧空間Hへの印加油圧によって装着溝302における相対的に低圧となる側(図4における下方)の内側面302bに押し付けられ、軸方向に圧縮変形されるので、これによる圧縮応力は、外周部材200の内周面201に対する外周摺動面11の密接面圧を増大させるように作用する。しかしながら、前記外周摺動面11に形成された潤滑溝14は、軸方向中央付近に位置する潤滑溝14aが最も深く、最も軸方向端部寄りに位置する潤滑溝14bが最も浅くなっているため、最も圧縮量の大きい軸方向中央付近で潤滑溝14が圧縮によって消滅してしまうことがない。
このため、外周部材200の内周面201との圧接によって外周摺動面11が径方向の圧縮変形を受けた状態では、各潤滑溝14の深さがほぼ均一化される。したがって、潤滑溝14による潤滑油膜の形成を促す油溜まりとしての機能、及び外周摺動面11の摺動面積を低減する機能が維持され、すなわち外周部材200の内周面201とシールリング1の外周摺動面11との間の良好な潤滑状態が維持されると共に、外周摺動面11の早期摩耗が有効に防止される。
なお、この図4に示される第二の形態のシールリング1も、図3と同様に軸方向両側又は片側にバックアップリング2を配置するようにしても良い。
次に図5は、本発明に係る往復動用シールリングの第三の形態を示す図で、図の左半分が軸心Oを通る平面で一部を切断した半断面図、右半分が外周から見た外観図である。
この第三の形態によるシールリング3は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、軸心Oを通る平面で切断した断面形状が、径方向に対して図1及び図2とは逆向きのD字形に形成され、すなわち「Dリング」と呼ばれる基本形状をなし、内径側へ膨らんだ円弧状断面をなす内周摺動面31と、軸心Oと直交する平面状をなす両側面32と、円筒面状に形成された外周面33とを有する。
シールリング3の内周摺動面31には、円周方向へ連続して互いに平行に延びる複数の潤滑溝34が形成されている。そして例えばシールリング3の軸方向肉厚が約2mm、径方向肉厚が約4mmである場合、潤滑溝34の深さは、密封性が損なわれることのないように、1〜30μm、好ましくは5〜15μmとする。
このシールリング3は、不図示の外周部材の内周面に円周方向へ連続して形成された装着溝に保持され、この外周部材の内周に軸方向移動可能に配置された不図示の内周部材の外周面と、前記装着溝の底面との間で径方向に適当に圧縮された状態で、すなわち適当なつぶし代をもって装着されることによって、外周面33が前記装着溝の底面に密接状態に着座されると共に、内周摺動面31が適当に圧縮変形した状態で前記内周部材の外周面と摺動可能に密接されることによって、密封機能を奏するものである。
そして、内周摺動面31に形成された複数の潤滑溝34が、上述の各形態と同様、摺動過程で内周部材の外周面とシールリング3の内周摺動面31との間に介入される作動油を保持して潤滑油膜の形成を促す油溜まりとして機能すると共に内周摺動面31の摺動面積を低減するように機能する。したがって、内周摺動面31が断面略円弧状の膨出形状をなすことによって、軸方向中央部付近では圧縮量が大きくなっているにも拘らず良好な潤滑油膜が形成されるので、印加油圧が約6MPaといった高圧で、かつ摺動距離が大きくなる厳しい条件でも、早期摩耗を有効に防止することができる。
また、この形態によるシールリング3も図3と同様にバックアップリングと併用したり、あるいは潤滑溝34を、軸方向中央付近に位置する潤滑溝が最も深く、最も軸方向端部寄りに位置する潤滑溝が最も浅くなるように深さを順次変化させて形成しても良い。
1,3 シールリング
11 外周摺動面
12,32 両側面
13 内周面
14,34 潤滑溝
31 内周摺動面
33 外周面
2 バックアップリング
21 切欠
200 外周部材(相手材)
201 内周面(円筒面)
300 内周部材
302 装着溝

Claims (1)

  1. 軸心を通る平面で切断した断面が略円弧状の膨出形状をなし相手材の円筒面に適当なつぶし代をもって軸方向摺動可能に密接される摺動面を有し、この摺動面に、円周方向へ延びる複数の潤滑溝が形成されたことを特徴とする往復動用シールリング。
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