JP2011159655A - チャックテーブル装置およびこれを用いた半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔質式のチャックテーブルに吸着した被加工物を取り外す際に、被加工物に部分的に強さが異なる圧力が印加されて被加工物が損傷するのを防止する。
【解決手段】吸着面に被加工物を真空吸着保持する多孔質材1と、多孔質材1を支持するとともに、多孔質材1に印加される負圧を遮断する遮断手段23とを備え、多孔質材1の被加工物が載置されていない箇所から媒体を導入し、残留する負圧を解消する。
【選択図】図1

Description

この発明は、被加工物を負圧により吸着固定するチャックテーブル装置及びこれを用いた加工方法に関するものである。
板状の被加工物を加工する装置において、被加工物をテーブルに固定するための方法が多々提案されている。
例えば、研削加工や研磨加工を行う際に被加工物を固定するチャックテーブルとして、静電容量型のもの、ワックス粘着式のもの、真空吸着式のものなどがある。この真空吸着式のものの中には、テーブルの被加工物の吸着面に真空(負圧)を伝達する為の穴が穿孔された形式のものと、多孔質の材料を用いて真空を伝達する形式のものとが有る。
まず、静電容量型のチャックテーブルについて説明すると、チャックテーブルと被加工物との間に異なる極性の電圧を印加し、両者の間に発生した静電気力により吸着固定するものである。
このため、被加工物が非誘電体材料である場合には、被加工物を固着するために、誘電体材料からなる保持具に固定する必要がある。
ここで、静電容量型のチャックテーブルに被加工物として薄い基板(例えば厚さ100μm程度)を吸着し、所望の加工を行った後、該チャックテーブルからこの薄い基板を取り外す場合、吸着のための電圧印加を解除し、チャックテーブルと薄い基板に蓄積した電荷を除去する。すなわち、吸着のために印加した電圧を反対極性の電圧を適宜印加する。
しかし、被加工物の面積が大きい場合には、その全面に対して同時に均一に電荷を与える事が難しく、被加工物の領域毎に電荷量が異なってしまう。この電荷量の差は、被加工物である薄い基板にかかる応力となり、薄い基板が損傷する原因となる。
一方、ワックス粘着式のものでは、ガラス、セラミック、金属等の支持基材にワックスを溶解塗布し、被加工物である薄い基板を粘着させる。その後ワックスは冷却され薄い基板が支持基材に固定される。この支持基材を加工装置に固定することで、薄い基板が加工装置に固定される。
その後、所望の加工を行った後、薄い基板を支持基材から取り外すのであるが、ワックスを溶解除去するか、支持基材を引き剥す。引き剥しは、ワックスを溶解するよりも簡便な方法であるが、被加工物が薄い基板のように脆性基板の場合、引き剥がし時の応力が基板を損傷する原因となる。被加工物と支持基材の粘着面に残存するワックスは、洗浄等により別途除去する必要が有り、全体として工程数が格段に多くなってしまう。
それに対して、真空式チャックテーブルの場合、チャックテーブル上に載置した被加工物を、チャックテーブルの被加工物搭載面とは反対側から印加する負圧による吸着させるものである。このため、被加工物が誘電体であるか否かにかかわらず直接チャックテーブル上に吸着固定することができる。
ここで、真空吸着式のチャックテーブルとしては、一般的に、多数の穴を穿孔したチャック面を有する多数孔式のもの(例えば特許文献1参照)と、チャック面自体を多孔質物質で形成した多孔質式のものとが知られている。
図9は、チャックテーブルの従来例を示す図である。
図9(a)において、10は被加工物としての半導体基板、70は吸引口71が複数設けられたチャックテーブル、74は吸引口71と真空ポンプ77とを接続する配管である。以下において、チャックテーブルから真空ポンプの間を真空系と呼ぶ。チャックテーブルから真空ポンプとの間には、バルブ75が設けられており、真空系を途中で遮断することができる。吸引口71は、半導体基板10が載置される領域より内側に設けられており、半導体基板10をチャックテーブル70に載置した後、吸引口71から吸引する(負圧を印加する)ことによって、半導体基板10をチャックテーブルに吸着する。
その後、所定の加工を行った後、バルブ75を閉じ、真空ポンプ77を切り離し、図示しないエア供給源からエアを導入し、配管74内を大気圧あるいは陽圧として、半導体基板を取り外す。
図9(a)に示す多数孔式のチャックテーブルでは、吸引口71付近に負圧力が集中するため、被加工物の吸着面にかかる吸着力が均一でない。このため、被加工物が半導体基板などの薄い基板である場合は、負圧が集中する領域が吸引によって変形してしまう。このように変形した状態で基板の研削加工や研磨加工を行うと、加工面が均一に研削(研磨)されず、加工面にディンプルが生じる原因となる。
これに対して、多孔質式のものは、チャックテーブルの吸着面を多孔質の部材で形成し、吸着面に無数に散在する気孔を介して被加工物の吸着面に負圧を印加する(例えば特許文献2、3、4)。
図9(b),(c)は、多孔質式のチャックテーブルの従来例を示す図である。
図9(b)において、80は、多孔質材81を備えたチャックテーブルである。チャックテーブルは、多孔質材81の半導体基板10が接する面とは反対面が露出する与圧室83を備えており、与圧室83は、真空ポンプ87と配管84で接続されている。多孔質材81は、半導体基板10が載置される領域より内側に設けられており、半導体基板10をチャックテーブル80(多孔質材81)に載置した後、真空ポンプ87によって与圧室83の空気を吸引することによって多孔質材81の半導体基板10を載置する側とは反対側の面に負圧を印加して、半導体基板10をチャックテーブルに吸着する。例えば、多孔質材81の多孔質の平均気孔径は40μm〜50μmである。
チャックテーブルから真空ポンプとの間には、バルブ85が設けられており、真空系を途中で遮断することができる。
図9(b)に示す例は、一般に半導体基板の研磨やダイシングなどのチャックテーブルとして多く使用されるものである。被加工物としての半導体基板の周囲に多孔質の吸着面41が露出する箇所がないため、吸着時に半導体基板の周囲から負圧が漏洩することがない。
また、無数の気孔を介して吸着されるため、半導体基板は均一な吸引力によってチャックテーブルに吸着される。
図9(c)は、多孔質式のチャックテーブルの他の従来例を示す図である。
図9(c)において、90は多孔質領域911と多孔質領域912からなる多孔質材910を備えたチャックテーブルである。
多孔質領域911と多孔質領域912は、多孔質領域911の外周部に多孔質領域912が同心円状に配置された構造となっている。内側の多孔質領域911の気孔は外周の多孔質領域912の気孔より大きく形成されている。例えば多孔質領域911の平均気孔径は40μm〜50μmであり、多孔質領域912の平均気孔径は10μm程度である。
多孔質領域911は半導体基板10が載置される領域より内側に設けられており、被加工物である半導体基板を多孔質材910の吸着面に吸着保持すると、平均気孔径が大きな多孔質領域911では負圧が効率良く被加工物に伝達し、強固な保持力が得られる。
ここで、図9(b)のチャックテーブル80に半導体基板10を載置する際に、半導体基板10がずれて多孔質材81の吸着面外部に露出すると、真空が漏洩し、結果として被加工物の保持力を維持できなくなる。
図9(c)の構成では、半導体基板の周辺部を比較的小さな平均気孔径の多孔質領域912で吸着保持しているので、吸着面910の一部が外部に露出しても半導体基板の吸着力が大きく低下することはない。多孔質材の平均気孔径が比較的小さくなると、外周部からの大気等の周辺気体の流入抵抗が大きいため、真空の漏洩を最小限に抑えることができる。
このように、無数の気孔を介して吸着されるため、半導体基板は均一な吸引力によってチャックテーブルに吸着される。
したがって、図9(b),(c)に示すような多孔質式のチャックテーブルでは、吸着面に一様に分布する無数の気孔を介して被加工物が吸着保持される為、局所的な吸引変形は起こりにくい。このため、多孔質式のチャックテーブルに半導体基板を吸着させて研削加工を行えば、ディンプルの発生を抑止することができる。
特開2008-254749号公報(図3等) 特開平6-8086号公報(図1等) 特開平10-109241号公報(図3等) 特開2004-319885号公報(図2等)
図9(b)(c)のような多孔質式のチャックテーブルにおいて、被加工物を取り外すには、吸着力を与えていた負圧を解除する必要がある。チャックテーブル80,90と真空ポンプ11との間に設けたバルブ85,95を閉塞することによって、チャックテーブルに印加されていた負圧を解除する。その後、バルブとチャックテーブルとの間に圧搾空気や窒素(不活性ガス)等の気体あるいは水等の液体などの媒体を導入して、チャックテーブルの裏面(基板の搭載面とは反対側)を大気圧に開放する。あるいは、更に媒体を導入して、陽圧を印加する。
しかし、チャックテーブル装置の可動部や配管系などの真空系の体積は、チャックテーブルの真空系の体積に比べて大きい。このため、大気開放の目的で圧搾空気や窒素等の不活性ガス、水等の液体などの媒体を導入すると、真空系内の随所に圧力バランスの乱れが生じてしまう。
例えば図9(b),(c)に示すチャックテーブルの与圧室83,95は、配管84,94によって真空ポンプ87,97に接続されている。与圧室83,93内の気圧を大気圧へ開放するために、上記の媒体を導入するのであるが、比較的断面積の小さい配管84,94から断面積の大きなチャックテーブルの与圧室83,93へ接続されるため、与圧室83,93内の配管84,94付近と配管から遠い部分とでは、媒体の導入直後の圧力にばらつき(圧力分布)が生じる。
また。与圧室への複数の配管で接続した場合、配管内の流路抵抗の相違から、やはり与圧室への接続部分でのばらつき(圧力分布)が生じてしまう。
この圧力の分布は、多項質材81,910の領域によって部分的に強さが異なる圧力となって多孔質材81,910の半導体基板10の吸着面に伝達される。
その結果、この圧力の差によって、半導体基板10の吸着面内で、部分的な領域毎の圧力に差が生じ、この圧力の差よって発生する応力が半導体基板10の塑性変形限界を超えて大きくなと、基板が損傷することがあった。
また、被加工物の加工後に被加工物を取り外す別の方法として、図9(d)に示すように、被加工物に対向させて他の吸着体を用いる方法がある。これは、図9(b)の構成に加えて、被加工物の加工面の一部または全部を覆う保持面を有する吸着機構800を、被加工物の加工面に対向させて配置するものである。図9(c)の構成にも適用が可能である。
被加工物の所望の加工が終了したら、チャックテーブル80と真空ポンプ11との間に設けたバルブ85を閉塞することによって、チャックテーブルに印加されていた負圧を解除する。チャックテーブル80と真空ポンプ11との間に設けたバルブとチャックテーブルとの間に圧搾空気や窒素(不活性ガス)等の気体あるいは水等の液体などの媒体を導入して、チャックテーブルの裏面(基板の搭載面とは反対側)を大気圧に開放する。あるいは、さらに媒体を導入して、陽圧を印加する。
そして、被加工物に対向して配置された吸着機構800の吸着体810に、被加工物への吸着力を印加することで、被加工物をチャックテーブルから取り外す際に掛かる応力を緩和する。
ここで、被加工物に対向して配置された吸着体は、被加工物の加工面に接触していてもよいし、わずかに離れて配置してもよい。
しかしながら、被加工物の多孔質材81への吸着面にはやはり圧力分布が生じており、吸着機構800からの吸着力の印加を行なっても、被加工物と吸着体810の吸着面との間に隙間が設けられている場合には被加工物の形状的な歪みが発生する。被加工物の歪み量が該被加工物の脆性破壊限界を超えると被加工物の破損に至っていた。
また、前記吸着機構800の吸着体810が被加工物に接触する場合は、吸着機構800による圧迫や擦過のために、被加工物の加工面に損傷を与える原因となっていた。
なお、該吸着体の吸着機構として、静電気力を用いるものや真空ポンプ等に依る負圧を用いるものなどが挙げられる。図9(d)の例ではチャックテーブル80の真空系を利用している。


ところで、半導体基板10のような脆性基板が適用される分野として、IGBTやMOSFETなどのパワー半導体がある。IGBTでは、耐圧1800Vの素子では、その厚さが180μmから300μm程度、耐圧が1200Vの素子では、その厚さが120μmから200μm程度、耐圧600Vの素子ではその厚さが60μmから90μm程度である。
この様に、60μm〜300μm程度の薄い半導体基板を用いてIGBTを製造すると、製造工程で半導体基板に反りが生じる。半導体基板のサイズがφ6インチ基板からφ8インチ基板へと大口径化するとともに、半導体基板の反りの影響が顕著となる。
そこで、このような薄い半導体基板の製造工程での取り扱いを容易にするために、半導体基板の外周部に肉厚の所謂リブを形成したリブ構造基板が一般に応用されている。
図10はリブ構造基板の構造を示す図である。
図10(a)は、オリエンテーションフラット110を有する基板にリブ構造111を形成した例を示す図であり、図10(b)はノッチ120を有する基板にリブ構造121を形成した例を示す図である。また、図10(c)は、リブ構造基板の断面形状を示す図である。
リブ構造を形成するためには、図9(b),(c)に示したような多孔質式のチャックテーブルに薄化加工前の半導体基板を吸着させ、外周部分を残して、半導体基板の内側部分を坐繰り研削して、内側部分を薄化する。
図11は、図9(c)に示したチャックテーブルを用いて薄化加工を行う工程を示す図である。
図11(a)において、例えば600μm程度の半導体基板を、砥石130によって研削し、基板の外周部以外の部分を薄化加工し、外周部はほぼ薄化加工前の基板の厚さのまま残してリブ構造111,121とし、リブ構造基板10’とする。図11(b)は、研削加工後の状態を示す。
研削工程の後、次の工程へ送るためには、リブ構造基板を多孔質材910から取り外しのために、図9(c)において与圧室93を大気圧に開放すると、前述のとおり、応力のアンバランスがリブと極薄加工領域の境界部に大きな曲げ応力となって集中する。そして、応力が集中する部位を起点として基板が損傷する。
この様なリブ構造基板の場合でも、図9(d)のように、被加工物(リブ構造基板)に他の吸着機構800を対向させて、多孔質材910から取り外す場合がある。この際、被加工物のチャックテーブルに吸着された面と反対面の、リブ構造部の内側で薄化された領域の一部を覆うように吸着体810を配置する。
この場合も吸着体810は、被加工物の取り外し時に導入される媒体の圧力の不均一性に基づく該被加工物の応力変形を緩和することを目的としている。しかし、吸着体810によって保持する領域と保持していない領域の境界部で大きな応力分布が生じ、該被加工物の破損の危険性が高くなっていた。
図9(b),(c)に示すチャックテーブルは、リブ構造を形成するための研削工程のみならず、リブ構造111,121が形成された側をエッチングしたり、電極膜を形成したりする工程にも適用できる。あるいは、リブ構造が形成されていない側の面に、電極膜を形成したり、切断して個片化する際にも適用することができるが、その場合は、図11(c)のごとく、多孔質材にリブの段差を吸収する凸部を設ける。
図9(b),(c)に示すチャックテーブルを上記のようにさまざまな各工程で用いると、チャックテーブルへの吸着と取り外しが繰り返し行われることとなり、そのたびリブと極薄加工領域の境界部に大きな曲げ応力が印加されてしまい、応力が集中する部位を起点として基板が損傷する。
本発明は、上記のように脆性材料の被加工物(例えば半導体基板など)を吸着するチャックテーブルにおいて、吸着した被加工物を損傷させることなく安全に取り外すことができるチャックテーブル装置とこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明では、多孔質材で構成された吸着面に被加工物を真空吸着保持するチャックテーブル装置において、前記多孔質材を支持するとともに、該多孔質材の吸着面とは反対側の面に負圧を印加するための印加手段と、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断する遮断手段と、を備え、前記遮断手段によって、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断した後、前記多孔質材の吸着面の前記被加工物が載置されていない箇所から媒体を導入し、前記多孔質材の反対側の面に残留する負圧を解消することとする。
また、多孔質材で構成された吸着面に被加工物を真空吸着保持するチャックテーブル装置において、前記多孔質材を支持するとともに、該多孔質材の吸着面とは反対側の面に負圧を印加するための印加手段と、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断する遮断手段と、を備え、前記遮断手段によって、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断した後、前記多孔質材の吸着面とは反対側の面に媒体を導入し、前記多孔質材の反対側の面に残留する負圧を解消することとする。
また、前記被加工物は半導体基板であり、上記のチャックテーブル装置を用い、前記多孔質材に負圧を印加して前記半導体基板を吸着して該半導体基板に半導体装置を製造する工程と、前記半導体基板を製造する工程につづいて、前記負圧を遮断し、前記半導体基板を前記チャックテーブル装置から取り外す工程を含むものとする。
本発明によれば、多孔質式真空式チャックテーブルに脆性基板を吸着した場合であっても、加工後に脆性基板を取り外す際に、基板が損傷することを防止することができる。
IGBTやMOSFETなどのパワーデバイスの製造工程で、基板厚さを減ずるために、リブ構造化工程が採用される場合、研削機のチャックテーブルからリブ端部と薄化研削領域の境界部での亀裂や割れを抑止することができる。
チャックテーブルの第1の実施例を示す図である。 シャッター24と支持体25の開口部の関係を示す図である。 シャッター24と支持体25の開口部の関係を示す断面図である。 チャックテーブルの第2の実施例を示す図である。 チャックテーブルの第3の実施例を示す図である。 図5の受台41の上面図である。 チャックテーブルの第4の実施例を示す図である。 チャックテーブルの第5の実施例を示す図である。 チャックテーブルの従来例を示す図である。 リブ構造基板の構造を示す図である。 図9(c)に示したチャックテーブルを用いて薄化加工を行う工程を示す図である。 シャッターの他の例を示す図である。
以下、図に沿って本発明を実施するための最良の形態を説明する。
〔実施例1〕
図1は、チャックテーブルの第1の実施例を示す図である。
図1において、20は多孔質材1を備えたチャックテーブルである。21は有底筒状の受台であり、受台21の内部に連通する開口22を備えている。図1の例では開口22は、受台の側壁に設けられていて、開口22は図示しない配管を介して図示しない真空ポンプへ接続されている。
23はシャッター、25は受台21に連結された空間を形成する支持体、1は図示しない半導体基板を載置し吸着するための多孔質材である。支持体25には、多孔質材1を支持するための支持部27が形成されている。
シャッター23は、支持部27の多孔質材1側の空間を、図示しない真空ポンプにつながる真空系から速やかに切り離すための機構である。すなわち、真空ポンプから負圧の電圧を速やかに遮断もしくは大幅に減少させることができる程度の気密性を有するものとする。
この例では、シャッター23に開口部24が、支持部27に開口部26がそれぞれ形成され、シャッター23の開口部24と、支持体25の開口部26とはそれぞれ対応した位置に設けられており、シャッター23を回動させて開口部24,26の位置を合わせたときに双方の開口部が重なり、全開となる。シャッター23を回動自在とするために、シャッター23と受台21あるいは支持体25の中心に軸を設け、図示しない回転機構に接続する。回転機構は、外部からの指令を受けてシャッター23を回転駆動し、開口部24,26を全開・全閉を切り替えるものであり、回転機構自身も真空系内に設置することで、外部の大気と遮断する機構を用いればよい。
シャッター23は、例えば、研磨されたステンレス板などで形成される。真空ポンプからの負圧によって変形せず、支持体との間で上記の気密性が確保できる程度の剛性を有し、また上記の回転動作に耐えられるものであればこれに限らない。
図2は、シャッター23と支持体25の開口部の関係を示す図であり、図1におけるシャッターの側から多孔質材1の方を見た状態を示す。図3は、シャッター23と支持体25の開口部の関係を示す断面図である。図2(a)は、図1において、開口部24,26の位置が重なっており、全開の状態を示す。図2(a)のX1−X1線の断面図を図3(a)に示す。すなわち、シャッター23の側からは多孔質材1が見えている。この状態では、支持部27の両側の空間(多孔質材1側と真空ポンプ側)が連通していて、真空ポンプによる負圧を多孔質材1へ伝達することができる。
また、図3(a)は、半導体基板10を多孔質材1に吸着している様子を示す。図3には図示しない真空ポンプからの負圧が、開口部24,26を経由して多孔質材1に伝達する。多孔質材1は内部及び表面に無数の気孔を有しており、多孔質材1の支持部27側から印加された負圧は、前記気孔を介して半導体基板10の吸着面側に伝達され、半導体基板10を多孔質材1の吸着面に均一に吸着する。
このように、半導体基板10を多孔質材1に吸着させた状態で、図示しない半導体の製造工程を行なう。半導体の製造工程としては、半導体基板の厚さを減厚するための研削工程や、エッチング工程,電極膜を形成したりする工程などがある。
このように、半導体の製造工程(研削工程など)を経て、半導体基板10を多孔質材1から取り外す場合は、シャッター23を回動させる。シャッター23の回動によりシャッター23の開口部24以外の部分を支持部27の開口部に対応する位置へ移動させると、開口部が閉塞される。
図2(b)は、図1において、シャッター23の開口部24が、支持部27の開口部26からずれて、全閉の状態を示す。すなわち、シャッター23の開口部24からは、支持部27が見えている。図2(b)のX2−X2線の断面図を図3(b)に示す。シャッター23の開口部24は、支持部27の開口部以外の部分へ移動し、シャッター23の開口部以外の部分が、支持部27の開口部24の部分へ移動する。この状態では、支持部27の両側の空間は遮断され、真空ポンプによる負圧の多孔質材1へ伝達が遮断される。
図3(c)は同図(b)の点線で囲んだYの部分を拡大した断面図である。シャッター23の移動(回動)により、支持部27の多孔質材1側は、真空ポンプにつながる真空系から遮断され、支持体25(支持部27およびシャッター23)と半導体基板10に囲まれた非常に小さな容積となる。このとき、半導体基板10の多孔質材1への接触面より僅かに大きい多孔質材の外周部から、点線矢印に示すように、装置周辺に存在する大気などの気体(以下、外気という)が多孔質材1へ流入する。そして、支持体25(支持部27およびシャッター23)と半導体基板10に囲まれた部分の気圧は、多孔質材1の気孔を介して徐々に流入する外気によって負圧から緩やかに上昇する。支持体25と半導体基板10に囲まれた部分の気圧が緩やかに上昇するのに伴い、半導体基板10の多孔質材1への吸着圧力も徐々にかつ均一に弱まっていく。
このように、半導体基板10の多孔質材1への吸着圧力が徐々にかつ均一に弱まっていくことにより、半導体基板10に急激な応力印加がなく、脆性材料としての半導体基板10の破損を防ぐことができる。
なお、図3(c)の構成では、真空ポンプから負圧が印加されている状態であっても、点線矢印に示す外気の流入があるが、真空ポンプからの負圧の方が大きいため、半導体基板10は多孔質材1に吸着されている。また、このとき、多孔質材1の外周部分を、図9(c)に示すように、内側より多孔質の気孔を小さくしておくことで、半導体基板10の吸着時における外気流入の影響を小さくすることができる。
例えば、多孔質材1としては、半導体基板10を吸着する部分の平均気孔径を40μmから50μm程度の一様なものを用いる。また、半導体基板10の内側の領域を吸着する部分を平均気孔径40μmから50μmとし、半導体基板10の辺縁部を吸着する領域を平均気孔径10μm程度とした2層構造(図9(c))としても構わない。即ち、多孔質材の平均気孔径とその領域毎の設計は、半導体基板10などの脆性材料からなる被加工物の材質や形状、真空によって得られる負圧の強度によって選択することができる。
また、多孔質材の材質は、セラミックス焼結体や金属粉末の焼結体などを用いることができる。この多孔質材の吸着面は、半導体基板10などの被加工物を吸着する際に、加工物の吸着面を傷つけず、また、必要な負圧が維持できる程度に吸着できるように平坦化加工されたものを用いる。
図10(a)〜(c)に示すような、外周に凸状の部分を有するいわゆるリブ構造ウェハ(半導体基板)が被加工物の場合は、図11に示す通り、リブ構造によるウェハ裏面の段差を解消して吸着可能とする為に、多孔質材の表面の形状をリブ形状に沿った形状に加工しておけばよい。
ここで、図3においては、多孔質材1,支持体25(支持部27),シャッター23の各部材を区別して図示する都合上、各部材の間に僅かに隙間をあけて示した。実際は、真空ポンプからの負圧を多孔質材1に確実に伝達するために、各部材間は可能な限り密着させて設ける。特に、シャッター23と支持体25は、シャッター23により開口部を閉塞した際に、多孔質材1への真空ポンプからの負圧の印加を速やかに遮断もしくは大幅に減少させることができる程度の気密性を有するものとする。
図3(d)は、実施例1の変形例を示す図である。シャッター23を、支持部27の多孔質材1側に設置している。シャッター23を回動させてシャッターを閉じた(開口部24,26を閉鎖した)際、真空ポンプからの負圧により、シャッター23が支持部27に押し付けられる。このように構成することで、シャッターと支持部との機密性を高めることができる。また、シャッターを支持部で受ける構造であるため、シャッター単体で負圧に耐える必要がなく、シャッターの剛性を軽減することができる。
図1,図2に示した例では、シャッター23を円盤形状として、開口部を均等な間隔で多数設置した(図1の例では放射状に12箇所)。開口部の数、形状はこれに限るものではない。例えば、開口部の1箇所当たりの大きさを大きくして数を減らしてもよいし、市松模様状に多数設けてもよい。ただし、同様の開口部を支持部27にも設けるとすると、開口部の形状を複雑なものとするよりは簡単な形状とする方が好適である。
また、開口部は均等に配置した方が、多孔質材1へ印加される負圧の分布が均等になるので、偏った配置とするよりは好適である。
図1,図2に示した例では、支持体が円筒形であったので、シャッターにも円盤状のものを用い、これを回転する構成とした。図1,図2に示したように、開口部を均等に多数設置することにより、シャッター23の回転角が少なくても、開口部を全閉とすることができる。
また、シャッターは図1,図2に示したように回転させるものに限らない。例えば、鎧戸状に複数のルーバーをその角度を変更可能に構成し、ルーバーの向きを、負圧の印加方向(真空ポンプによって引かれる気体の流動方向)に向けて全開とし、それに直行する方向に近づけて閉塞状態としてもよい。
あるいは、シャッターと支持部にストライプ状のスリット(開口部)を設け、シャッターを直線的に移動させることで、開口部を全開・全閉としてもよい。
また、シャッターの開口部に対応する開口部を支持部に設けるのではなく、支持部は、単に多孔質材1を支持する構造とし、シャッターを複数枚の部材から構成して、開口部を全開・全閉としてもよい。
あるいは、図12に示す様に、シャッターとして絞り羽を用いても良い。図12(a),(b)では、支持部27の側から絞り羽230を見た状態で示している。図12(a)は絞り羽230を絞った(閉じた)状態、図12(b)は絞り羽230を開いた状態である。状態を説明するために図12においては、絞り羽230を完全に閉じる(開く)途中の状態で示している。この場合、被加工物の吸着保持に支障の無い開口面積を確保すれば、支持部の大きさは任意に設定する事が可能となる。図12(c)は、要部断面図であり、支持部27をチャックテーブル周辺部に配した一例である。図12の例では、開口面積を確保しつつ、多孔質材1を安定して保持することができる。なお、支持部27は外周部に限らず、十字形に配置してよいし、格子状に配置してもよい。
上記の例において、シャッターは、研磨されたステンレス板などで形成される。真空ポンプからの負圧によって変形せず、支持体との間で上記の気密性が確保できる程度の剛性を有していればよい。
次に、実施例1の応用例について説明する。シャッター23を閉じて真空ポンプからの負圧を遮断した後に、空気,窒素などの不活性ガス,水などの液体(以下、総じて媒体という)を導入して半導体基板10を多孔質材1から離脱しやすくする方法がある。
例えば、図1の受台21と図示しない真空ポンプとの間の真空系の途中にバルブを設ける。シャッター23の回動により、支持体25の多孔質材1側の空間を、真空系から速やかに遮断した後、前記バルブを閉じて真空ポンプも切り離す。そして、支持体25の多孔質材1側の空間の気圧がゆるやかに上昇してきているうちに、シャッター23により隔絶されたシャッター23と前記バルブとの間に、前記媒体を導入する。この媒体の導入により、シャッター23と前記バルブとの間を大気圧あるいは弱い陽圧とする。その後、シャッター23を再び開いて、多孔質材1の半導体基板10を吸着する面とは反対側の面から大気圧もしくは弱い陽圧を印加する。
つまり、シャッター23を閉じることで、半導体基板10の吸着面を速やかに真空系から切り離し、外周部からの外気の流入で緩やかに吸着力を減じた後、シャッター23を開いて、真空系側から大気圧あるいは弱い陽圧を印加する。
このようにすることで、半導体基板10に急激な応力印加を避け、脆性材料としての半導体基板10の破損を防ぐとともに、半導体基板10を安全に取り外すまでの時間を短縮することができる。
また、半導体基板を吸着した状態での製造工程として、半導体基板の研削工程を行なうと、半導体基板の切削カスや砥粒などが、図3(c)の点線矢印に沿って多孔質材に入り込んでしまう。上記の応用例によれば、多孔質材の真空系側から半導体基板を吸着する面に向かって媒体が導入される。このため、切削カスや砥粒などは、媒体の導入によって図3(c)の点線矢印とは反対方向に押し出されて、多孔質材を清浄な状態に戻すことができる。特に媒体として水などの液体を用いると好適である。また、水等の液体と圧搾空気の混合体を用いてもよい。
〔実施例2〕
図4は、チャックテーブルの第2の実施例を示す図である。
図4において、30は多孔質材1を備えたチャックテーブルである。31は有底筒状の受台であり、多孔質材1が筒内に嵌って受台の底部で支持される。受台31には受台の内部と外部を連通する開口32が設けられている。図4の例では開口32は、受台の底部に設けられていて、開口32は配管34を介して図示しない真空ポンプへ接続されている。受台31の底部には溝33が設けられていて、配管34,開口32を介して真空ポンプからの負圧を均等に多孔質材1に伝達する。35は開閉バルブであり、受台31の内部の空間を、図示しない真空ポンプにつながる真空系から速やかに切り離すための機構である。すなわち、真空ポンプからの負圧の伝達を速やかに遮断もしくは大幅に減少させることができるものとする。
そのため、開閉バルブ35は、チャックテーブルにつながる真空系の、チャックテーブルの直近に設けることが望ましい。
被加工物である半導体基板(図示せず)を、多孔質材1上に載置して、多孔質材1を介して負圧により吸着する。このとき、開閉バルブ35は開いていて、図示しない真空ポンプからの負圧が、開閉バルブ35、配管34、開口32、溝33を介して多孔質材1に伝達する。多孔質材1は内部及び表面に無数の気孔を有しており、多孔質材1の受台31側から印加された負圧は、前記気孔を介して半導体基板10の吸着面側に伝達され、半導体基板10を多孔質材1の吸着面に均一に吸着する。そして、図示しない半導体の製造工程を行なう。半導体の製造工程としては、半導体基板の厚さを減厚するための研削工程や、エッチング工程,電極膜を形成したりする工程などがある。
このように、半導体の製造工程(研削工程など)を経て、半導体基板10を多孔質材1から取り外す場合は開閉バルブ35を閉じることで、開閉バルブ35から半導体基板10の吸着面までの空間を、真空ポンプ等で得られる真空系内の負圧から、速やかに隔絶する。その後、半導体基板10の吸着面と開閉バルブ35との間の空間に残存する負圧は、半導体基板10と多孔質材1の吸着領域の外周部から大気が徐々に侵入することでやがて完全に解消される(図3(c)参照)。
図4に示すチャックテーブル30の場合も、多孔質材1には、平均気孔径が40μmから50μm程度のものを用いることができる。また、被加工物である半導体基板の内側の領域を吸着する部分を平均気孔径40μmから50μmとし、また、半導体基板の辺縁部の領域を吸着する部分を平均気孔径10μm程度とした2層構造としても構わない。即ち、この場合も、多孔質材の平均気孔径とその領域毎の設計は、被加工物の材質や形状、真空によって得られる負圧の強度に応じて選択することができる。
また、多孔質材の材質は、一般的に用いられるセラミックス焼結体や金属粉末の焼結体などでよい。多孔質材の吸着面は、被加工物を加工する際に真空が漏洩する事を防止する為に、必要な負圧が維持できる程度に平坦化加工されたものを用いる。
図4に示すチャックテーブル30では、図1,図2に示すチャックテーブル20に比べ構造を簡素化することが可能である。ただし、被加工物(半導体基板10など)の吸着面から開閉バルブ35の閉鎖弁までの空間体積が広くなり、負圧の解消迄に必要な時間は長くなる傾向がある。そのため、開閉バルブ35を閉じた後、被加工物を破損無く安全に着脱することが可能となるまでの待機時間は長くなる。
また、図4に示した第2の実施例においても、実施例1の応用例と同様に、被加工物の脱着に際し、開閉バルブ35を閉じて真空系と遮断した後、開閉バルブ35と受台31との間に、媒体を導入して半導体基板10を多孔質材1から離脱しやすくすることができる。
例えば、多孔質材1側の空間の気圧がゆるやかに上昇してきているうちに、バルブ35と受台31との間に、前記媒体を導入する。この媒体の導入により、バルブ35と受台31との間を大気圧あるいは弱い陽圧として、多孔質材1の半導体基板10を吸着する面とは反対側の面から大気圧もしくは弱い陽圧を印加する。このようにすることで、最初に開閉バルブ35を閉じてから、被加工物(半導体基板10)を破損無く安全に着脱するまでの待機時間を短縮することができる。
また、半導体基板を吸着した状態での製造工程として、半導体基板の研削工程を行なうと、半導体基板の切削カスや砥粒などが、図3(c)の点線矢印に沿って多孔質材に入り込んでしまう。上記の応用例によれば、多孔質材の真空系側から半導体基板を吸着する面に向かって媒体が導入される。このため、切削カスや砥粒などは、媒体の導入によって図3(c)の点線矢印とは反対方向に押し出されて、多孔質材を清浄な状態に戻すことができる。特に媒体として水などの液体を用いると好適である。また、水等の液体と圧搾空気の混合体を用いてもよい。
図10(a)〜(c)に示すような、外周に凸状の部分を有するいわゆるリブ構造ウェハ(半導体基板)が被加工物の場合は、図11に示す通り、リブ構造によるウェハ裏面の段差を解消して吸着可能とする為に、多孔質材の表面の形状をリブ形状に沿った形状に加工しておけばよい。
〔実施例3〕
図5,図6は、チャックテーブルの第3の実施例を示す図である。
図5において、40は多孔質材1を備えたチャックテーブルである。41は有底筒状の受台であり、多孔質材1が筒内に嵌って受台の底部で支持される。受台41には受台の内部と外部を連通する開口42が複数個所に設けられている。図5の例では開口42は、受台の底部に設けられていて、開口42は配管44を介して図示しない真空ポンプへそれぞれ接続されている。
受台41の底部は、内壁43によって複数の区画に区分されていて、この内壁43によって区分された各区画に、開口42がそれぞれ設けられている。この内壁43の上面に多孔質材1が載置されて、多孔質材1と内壁43で囲まれた個々の空間が、それぞれ開口42,配管44を介して、図示しない真空ポンプに接続される。
各開口42と真空ポンプに至る真空系との間には、開閉バルブ45がそれぞれ設けられている。開閉バルブは、受台41の内壁43によって区画された空間を、図示しない真空ポンプにつながる真空系から速やかに切り離すための機構である。すなわち、真空ポンプからの負圧の伝達を速やかに遮断もしくは大幅に減少させることができるものである。
また、開閉バルブ45と受台41との間には、内壁43と多孔質材1によって区分された各区画の各開閉バルブまでの空間の圧力を検出し、外部の制御装置(図示せず)に出力する圧力センサー46がそれぞれ設けられている。
さらに開閉バルブ45には配管47が接続されていて、受台41の内壁43によって区画された空間への真空ポンプからの負圧の伝達を遮断した後、配管47を介して媒体を導入可能としている。なお、図5においては、図示を簡略化するために、開閉バルブ45と圧力センサー46は1箇所のみ図示しているが、各配管44にそれぞれ設けるものである。
図6は、図5の受台41の上面図である。図6に示したV1,V2,V3は、それぞれの区画の体積を表している。
各区画の体積は、次のように設定する。
まず、被加工物としての半導体基板10(図示せず)の辺縁領域が多孔質材1の外側に位置する場合、すなわち、半導体基板の外周が、受台41の外周の縁上に位置する場合、多孔質材1の平均気孔径が、全面で同じであれば、各区画の体積V1,V2,V3は同一とすればよい。各区画の体積が同じであれば、各区画に均一に負圧あるいは媒体導入時の大気圧,弱い陽圧を印加した際に、半導体基板全面に均一に圧力が伝達する。
被加工物としての半導体基板10(図示せず)が多孔質材1の内側に位置する場合、すなわち、半導体基板の外周が、多孔質材1の外周より内側に位置する場合、多孔質材1の平均気孔径が、全面で同じであれば、各区画の体積はV1<V2,V1<V3とすればよい。多孔質材1の最外周の領域には半導体基板が当接せず、多孔質材1の表面(吸着面)が外気に露出しているため、負圧を印加する際には、この部分から外気が流入する。このため、多孔質材1の最外周を吸引する区画の体積V1を、他の区画より小さくしておくことで、他の区画と共通の真空ポンプで吸引した際の吸引圧力の低下を防ぐことができる。
また、吸着面を構成する多孔質材に、平均気孔径が異なる領域を組み合わせた構造のものを選択する場合、多孔質材1の平均気孔径の小さい部分を吸引する区画は、平均気孔の小さい部分の面積に応じて、体積を大きく設計する事が望ましい。
例えば、多孔質材1の外周部分に平均気孔径の小さい部分(10μm)が存在する場合、その部分を含む領域を吸引する受台41の外周領域の体積V1の区画を、平均気孔径が40μmから50μmの領域を吸引する体積V2およびV3の区画では、体積V1をV2およびV3よりも大きくする事が望ましい。体積V1の領域が、平均気孔径の小さい部分(10μm)とこれより平均気孔径の大きい部分(40μmから50μm)とに跨っている場合も同様である。これは、平均気孔径の小さい部分では、負圧を印加した際の流路抵抗が大きいため、他の領域を共通の真空ポンプで吸引した際の吸引力(負圧)を確実に半導体基板に伝達するためである。
また、平均気孔径の大きい部分の周りに、載置する半導体基板の直径に応じて、平均気孔径の小さい部分が配置され、複数種の半導体基板径に対応できるように、平均気孔径の大きい部分と小さい部分が交互に同心円状に配置された、いわゆるユニバーサルチャックテーブル用の多孔質材を用いる場合は、受台41側もこれに対応して内壁43による区画を行なえばよい。小径の半導体基板を吸着させる際に、最外周の区画を用いなくてもよければ、吸着に不要な区画の開閉バルブを閉じておけばよい。
第3の実施例において、被加工物である半導体基板(図示せず)を、多孔質材1上に載置して、多孔質材1を介して負圧により吸着する。このとき、開閉バルブ45は開いていて、図示しない真空ポンプからの負圧が、開閉バルブ45、配管44、開口42を介して、内壁43で区切られた各区画に伝達する。多孔質材1には各区画に負圧が印加され、多孔質材1の内部及び表面に無数の気孔を介して半導体基板10の吸着面側に伝達され、半導体基板10を多孔質材1の吸着面に均一に吸着する。そして、図示しない半導体の製造工程を行なう。半導体の製造工程としては、半導体基板の厚さを減厚するための研削工程や、エッチング工程,電極膜を形成したりする工程などがある。
このように、半導体の製造工程(研削工程など)を経て、半導体基板10を多孔質材1から取り外す場合は開閉バルブ45を閉じる。開閉バルブ45から半導体基板10の吸着面までの空間を、真空ポンプ等で得られる真空系内の負圧から、速やかに隔絶する。その後、開閉バルブを介し、配管47から媒体を導入し、各区画を大気圧あるいは弱い陽圧として、多孔質材1の半導体基板10を吸着する面とは反対側の面から大気圧もしくは弱い陽圧を印加する。
このとき、各区画の配管44に設けた圧力センサー46により各区画の圧力(気圧)を測定し、圧力センサーの検出値を外部の制御装置(図示せず)に出力する。制御装置は、各圧力センサーの検出値に基づいて、全区画の圧力が均等になるように開閉バルブ45の開度を制御し、ゆるやかに各区画の気圧を上昇させる。
このようにすることで、最初に開閉バルブ45を閉じてから、被加工物(半導体基板10)を破損無く安全に着脱するまでの待機時間を短縮することができる。
また、多孔質材の材質は、一般的に用いられるセラミックス焼結体や金属粉末の焼結体などでよい。多孔質材の吸着面は、被加工物を加工する際に真空が漏洩する事を防止する為に、必要な負圧が維持できる程度に平坦化加工されたものを用いる。
また、半導体基板を吸着した状態での製造工程として、半導体基板の研削工程を行なうと、半導体基板の切削カスや砥粒などが、図3(c)の点線矢印に沿って多孔質材に入り込んでしまう。上記の応用例によれば、多孔質材の真空系側から半導体基板を吸着する面に向かって媒体が導入される。このため、切削カスや砥粒などは、媒体の導入によって図3(c)の点線矢印とは反対方向に押し出されて、多孔質材を清浄な状態に戻すことができる。特に媒体として水などの液体を用いると好適である。また、水等の液体と圧搾空気の混合体を用いてもよい。
図10(a)〜(c)に示すような、外周に凸状の部分を有するいわゆるリブ構造ウェハ(半導体基板)が被加工物の場合は、図11に示す通り、リブ構造によるウェハ裏面の段差を解消して吸着可能とする為に、多孔質材の表面の形状をリブ形状に沿った形状に加工しておけばよい。
〔実施例4〕
図7は、チャックテーブルの第4の実施例を示す図である。
図7(a)において、50は多孔質材1を備えたチャックテーブルである。51は受台であり、多孔質材1をその上部で支持する。受台51と多孔質材1とは、上面の形状が同一(図7の例では直径が同一)である。受台51の上面には溝53が設けられていて、そのうちの一部(53’)が、受台の側面にまで達している。52はリング状の枠であって、側面に達した溝53’に対応する箇所に開口52’を有している。
枠52または受台51は、相対的に移動が可能に配置されている。枠52の高さは、開口52’が受台側面の溝53’に対応する位置にあるとき多孔質材の側面を少なくとも覆うことができるように設定されている。開口52’は配管を介して真空ポンプへ接続されている(いずれも図示せず)。
被加工物である半導体基板(図示せず)を、多孔質材1上に載置して、多孔質材1を介して負圧により吸着する。このとき、開口52’が受台側面の溝53’に対応する位置にあり、図示しない真空ポンプからの負圧が、開口52’、溝53’,53を介して多孔質材1に伝達する。多孔質材1は内部及び表面に無数の気孔を有しており、多孔質材1の受台51側から印加された負圧は、前記気孔を介して図示しない半導体基板の吸着面側に伝達され、半導体基板を多孔質材1の吸着面に均一に吸着する。そして、図示しない半導体の製造工程を行なう。半導体の製造工程としては、半導体基板の厚さを減厚するための研削工程や、エッチング工程,電極膜を形成したりする工程などがある。
このように、半導体の製造工程(研削工程など)を経て、半導体基板を多孔質材1から取り外す場合は、枠52または受台51を相対的に移動させて、受台51の側面の溝53’を露出させる(図7(b))。
受台51の側面の溝53’が、枠52から外れて露出することにより、溝53’から媒体としての大気が徐々に侵入し、負圧はやがて完全に解消される。
各開口52’を受台51の側面の溝53’から相対的にずらせることで、溝53’が真空ポンプに至る真空系から速やかに切り離される。すなわち、真空ポンプからの負圧の伝達を速やかに遮断もしくは大幅に減少させることができるものである。
また、多孔質材の材質は、一般的に用いられるセラミックス焼結体や金属粉末の焼結体などでよい。多孔質材の吸着面は、被加工物を加工する際に真空が漏洩する事を防止する為に、必要な負圧が維持できる程度に平坦化加工されたものを用いる。
また、半導体基板を吸着した状態での製造工程として、半導体基板の研削工程を行なうと、半導体基板の切削カスや砥粒などが、図3(c)の点線矢印に沿って多孔質材に入り込んでしまう。上記の応用例によれば、多孔質材の真空系側から半導体基板を吸着する面に向かって媒体が導入される。このため、切削カスや砥粒などは、媒体の導入によって図3(c)の点線矢印とは反対方向に押し出されて、多孔質材を清浄な状態に戻すことができる。特に媒体として水などの液体を用いると好適である。
図10(a)〜(c)に示すような、外周に凸状の部分を有するいわゆるリブ構造ウェハ(半導体基板)が被加工物の場合は、図11に示す通り、リブ構造によるウェハ裏面の段差を解消して吸着可能とする為に、多孔質材の表面の形状をリブ形状に沿った形状に加工しておけばよい。
〔実施例5〕
図8は、チャックテーブルの第5の実施例を示す図である。
図8において、60は多孔質材1を備えたチャックテーブルである。61は有底筒状の受台であり、多孔質材1が筒内に嵌って受台の底部で支持される。受台61には受台の内部と外部を連通する開口621,622が設けられている。図8の例では開口621,622は、受台の側壁に設けられていて、開口621は配管を介して真空ポンプへ接続されている(いずれも図示していない)。受台61の底部には溝63が設けられていて、その一部は、開口621と開口622につながっている。
開口621を介して真空ポンプからの負圧を均等に多孔質材1に伝達する。また図示しない開閉バルブによって、受台61の内部の空間を、図示しない真空ポンプにつながる真空系から速やかに切り離すことができる。
被加工物である半導体基板(図示せず)を、多孔質材1上に載置して、多孔質材1を介して負圧により吸着する。このとき、図示しない真空ポンプからの負圧が、開口621、溝63を介して多孔質材1に伝達する。多孔質材1は内部及び表面に無数の気孔を有しており、多孔質材1の受台61側から印加された負圧は、前記気孔を介して半導体基板10の吸着面側に伝達され、半導体基板10を多孔質材1の吸着面に均一に吸着する。そして、図示しない半導体の製造工程を行なう。半導体の製造工程としては、半導体基板の厚さを減厚するための研削工程や、エッチング工程,電極膜を形成したりする工程などがある。
このように、半導体の製造工程(研削工程など)を経て、半導体基板を多孔質材1から取り外す場合は、真空系につながる開閉バルブを閉じることで、真空系内の負圧から、速やかに隔絶する。その後、開口622に設けた開閉バルブ65を開くことで、図示しない半導体基板を吸着する面と開閉バルブ65との間の空間に媒体が導入され、残存する負圧は減少する。
図8に示すチャックテーブル60の場合も、多孔質材1には、平均気孔径が40μmから50μm程度のものを用いることができる。また、被加工物である半導体基板の内側の領域を吸着する部分を平均気孔径40μmから50μmとし、また、半導体基板の辺縁部の領域を吸着する部分を平均気孔径10μm程度とした2層構造としても構わない。即ち、この場合も、多孔質材の平均気孔径とその領域毎の設計は、被加工物の材質や形状、真空によって得られる負圧の強度に応じて選択することができる。
また、多孔質材の材質は、一般的に用いられるセラミックス焼結体や金属粉末の焼結体などでよい。多孔質材の吸着面は、被加工物を加工する際に真空が漏洩する事を防止する為に、必要な負圧が維持できる程度に平坦化加工されたものを用いる。
図10(a)〜(c)に示すような、外周に凸状の部分を有するいわゆるリブ構造ウェハ(半導体基板)が被加工物の場合は、図11に示す通り、リブ構造によるウェハ裏面の段差を解消して吸着可能とする為に、多孔質材の表面の形状をリブ形状に沿った形状に加工しておけばよい。
1:多孔質材
10:半導体基板
20,30,40,50,60,70,80,90:チャックテーブル
21,31,41,51,61:受台
22,32,42,52’,621,622:開口
23:シャッター
24,26:開口部
25:支持体
27:支持部
33,53,53’,63:溝
34,44:配管
35、65:開閉バルブ
43:内壁
52:リング状の枠

Claims (16)

  1. 多孔質材で構成された吸着面に被加工物を真空吸着保持するチャックテーブル装置において、
    前記多孔質材を支持するとともに、該多孔質材の吸着面とは反対側の面に負圧を印加するための印加手段と、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断する遮断手段と、を備え、
    前記遮断手段によって、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断した後、前記多孔質材の吸着面の前記被加工物が載置されていない箇所から媒体を導入し、前記多孔質材の反対側の面に残留する負圧を解消することを特徴とするチャックテーブル装置。
  2. 前記印加手段は、前記多孔質材の反対側の面を該印加手段内の空間に露出するように支持し、
    前記遮断手段は、前記印加手段内の空間に露出した前記多孔質材の反対側の面を閉塞するシャッター機構であることを特徴とする請求項1に記載のチャックテーブル装置。
  3. 前記印加手段は、該印加手段に負圧を供給する手段からの負圧を導入するための開口を有し、該開口に連通する溝が形成された底部にて前記多孔質材を支持し、
    前記遮断手段は、前記負圧の供給経路上に設けた開閉バルブ機構であることを特徴とする請求項1に記載のチャックテーブル装置。
  4. 前記多孔質材は、平均気孔径が大きい第1の部分と、第1の部分の外周であって、第1の部分の平均気孔径より平均気孔径が小さな第2の部分と、からなり、吸着面の前記被加工物が載置されない箇所は、前記第2の部分であることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のチャックテーブル装置。
  5. 多孔質材で構成された吸着面に被加工物を真空吸着保持するチャックテーブル装置において、
    前記多孔質材を支持するとともに、該多孔質材の吸着面とは反対側の面に負圧を印加するための印加手段と、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断する遮断手段と、を備え、
    前記遮断手段によって、前記多孔質材の反対側の面に印加される負圧を遮断した後、前記多孔質材の吸着面とは反対側の面に媒体を導入し、前記多孔質材の反対側の面に残留する負圧を解消することを特徴とするチャックテーブル装置。
  6. 前記印加手段は、該印加手段に負圧を供給する手段からの負圧を導入するための複数の開口と、該開口にそれぞれ連通した区画を構成する内壁とを有し、該内壁の上面にて前記多孔質材を支持し、前記多孔質材の反対側の面,前記内壁,前記印加手段の底面によって所定体積の空間を形成し、
    前記遮断手段は、前記負圧を前記開口へ供給する経路上にそれぞれ設けた開閉バルブ機構であり、
    該開閉バルブ機構は、前記負圧の供給と切り換えて、前記開口へ前記媒体を供給可能に構成することを特徴とする請求項5に記載のチャックテーブル装置。
  7. 前記バルブ機構と前記区画との間に、前記空間内の圧力を検出する圧力検出手段をそれぞれ設け、該圧力検出手段の検出値に応じて媒体の導入量を制御することを特徴とする請求項6に記載のチャックテーブル装置。
  8. 前記媒体の導入量は、前記空間内の圧力を、各空間相互の圧力の差が前記被加工物の破壊限界よりも小さくなるように制御されることを特徴とする請求項7に記載のチャックテーブル装置。
  9. 前記多孔質材は、平均気孔径が大きい第1の部分と、第1の部分の外周であって、第1の部分の平均気孔径より平均気孔径が小さな第2の部分と、からなり、
    前記空間は、前記第1の部分が露出する第1の空間と、前記第2の部分が露出する第2の空間からなり、第1の空間の体積より第2の空間の体積が大きくなるように設定することを特徴とする請求項5〜請求項8に記載のチャックテーブル装置。
  10. 前記印加手段は、該印加手段に負圧を供給する手段からの負圧を導入するための開口を有する第1の部分と、前記開口に連通する溝が形成され、前記開口を有する部分に対して相対的に移動可能に配置されるとともに、前記多孔質材を支持する第2の部分と、からなり、
    前記開口とこれに連通する溝の位置を合わせることにより、前記開口より前記溝を介して前記多孔質材に負圧を印加し、
    前記開口を、前記溝の開口への連通部からずらすことで前記多孔質材への負圧の印加を停止するとともに、前記溝の開口への連通部から媒体を導入することで前記多孔質材の反対側の面に残留する負圧を解消することを特徴とする請求項5に記載のチャックテーブル装置。
  11. 前記印加手段は、該印加手段に負圧を供給する手段からの負圧を導入するための第1の開口と、該印加手段に媒体を供給する手段から媒体を導入するための第2の開口とを有し、前記第1,第2の双方の開口に連通する溝が形成された底部にて前記多孔質材を支持し、
    前記遮断手段は、前記負圧の供給経路上に設けた開閉バルブ機構であることを特徴とする請求項5に記載のチャックテーブル装置。
  12. 前記遮断手段によって前記印加手段への負圧の供給を遮断した後、前記第2の開口を介して媒体を導入することを特徴とする請求項11に記載のチャックテーブル装置。
  13. 前記媒体は、圧搾空気や不活性ガスあるいは液体であることを特徴とする請求項1〜請求項12に記載のチャックテーブル装置。
  14. 前記被加工物は半導体基板であり、
    請求項1〜請求項13に記載のチャックテーブル装置を用い、前記多孔質材に負圧を印加して前記半導体基板を吸着して該半導体基板に半導体装置を製造する工程と、
    前記半導体基板を製造する工程につづいて、前記負圧を遮断し、前記半導体基板を前記チャックテーブル装置から取り外す工程と、
    を含む半導体装置の製造方法。
  15. 前記半導体装置を製造する工程は、
    前記半導体基板の外周部分に肉厚の部分を残し、前記半導体基板の外周部以外の部分を研削して薄化する工程であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
  16. 前記半導体装置を製造する工程は、
    外周部分に肉厚の部分を残し、前記半導体基板の外周部以外の部分が研削して薄化された半導体基板を吸着して、前記薄化された部分に半導体装置を形成する工程であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
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