以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図7を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明における第1実施形態のエフェクタ1(楽音信号処理装置の一例)を示したブロック図である。このエフェクタ1は、信号処理を施す対象となる楽音信号(以後、「抽出信号」と称す)の抽出を、複数の各条件(周波数、定位および最大レベルが一組となった条件の各々)にわたって行うことができるものである。
エフェクタ1は、Lch用アナログデジタルコンバータ(以下、「A/Dコンバータ」と称す)11Lと、Rch用A/Dコンバータ11Rと、デジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」と称す)12と、Lch用第1デジタルアナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)13L1と、Rch用第1D/Aコンバータ13R1と、Lch用第2D/Aコンバータ13L2と、Rch用第2D/Aコンバータ13R2と、CPU14と、ROM15と、RAM16と、表示装置121を接続するためのインターフェイスであるI/F21と、入力装置122を接続するためのインターフェイスであるI/F22と、バスライン17とを有している。各部11〜16,21,22は、バスライン17を介して互いに電気的に接続されている。
Lch用A/Dコンバータ11Lは、IN_L端子から入力された左チャンネル信号(楽音信号の一部)を、アナログ信号からデジタル信号へ変換して、デジタル化された左チャンネル信号を、バスライン17を介してDSP12へと出力するコンバータである。また、Rch用A/Dコンバータ11Rは、IN_R端子から入力された右チャンネル信号(楽音信号の一部)を、アナログ信号からデジタル信号へ変換して、デジタル化された右チャンネル信号を、バスライン17を介してDSP12へと出力するコンバータである。
DSP12は、Lch用A/Dコンバータ11Lから出力された左チャンネル信号およびRch用A/Dコンバータ11Rから出力された右チャンネル信号を入力すると、その入力した左チャンネル信号および右チャンネル信号へ信号処理を施して、その信号処理を施した左チャンネル信号および右チャンネル信号を、Lch用第1D/Aコンバータ13L1、Rch用第1D/Aコンバータ13R1、Lch用第2D/Aコンバータ13L2およびRch用第2D/Aコンバータ13R2へ出力するプロセッサである。
Lch用第1D/Aコンバータ13L1及びLch用第2D/Aコンバータ13L2は、DSP12で信号処理が施された左チャンネル信号を、デジタル信号からアナログ信号へ変換して、そのアナログ信号を、メインスピーカのLチャンネル側(図示せず)が接続される端子(OUT1_L端子,OUT2_L端子)へ出力するコンバータである。なお、Lch用第1D/Aコンバータ13L1及びLch用第2D/Aコンバータ13L2には、それぞれ、DSP12で各々独立した信号処理がなされて出力された左チャンネル信号が入力される。
Rch用第1D/Aコンバータ13R1及びRch用第2D/Aコンバータ13R2は、DSP12で信号処理が施された右チャンネル信号を、デジタル信号からアナログ信号へ変換して、そのアナログ信号を、メインスピーカのRチャンネル側(図示せず)が接続される端子(OUT1_R端子,OUT2_R端子)へ出力するコンバータである。なお、Rch用第1D/Aコンバータ13R1及びRch用第2D/Aコンバータ13R2には、それぞれ、DSP12で各々独立した信号処理がなされて出力された右チャンネル信号が入力される。
CPU14は、エフェクタ1の動作を制御する中央制御装置である。ROM15は、エフェクタ1で実行される制御プログラム15a等を格納した書換不能なメモリである。RAM16は、各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。
I/F21に接続される表示装置121は、LCD等によって構成される表示画面を有する装置であり、A/Dコンバータ11L,11Rを介してエフェクタ1に入力された楽音信号や、エフェクタ1において入力楽音信号に対して後述する信号処理を施した処理後の楽音信号を、可視化して表示させるためのものである。
I/F22に接続される入力装置122は、エフェクタ1に供給する各種実行指示を入力するための装置であり、例えば、マウスやタブレットやキーボードなどで構成される。また、入力装置122を、表示装置121の表示画面上になされた操作を感知するタッチパネルとして構成してもよい。
次に、図2〜図6を参照して、DSP12の処理について説明する。なお、図2〜図6に示す各処理(DSP12による処理)は、ROM15に記憶されている制御プログラム15aにより実行される。
図2は、DSP12で実行される処理を、機能ブロックを用いて模式的に示した図である。DSP12は、機能ブロックとして、第1処理部S1と第2処理部S2とを有している。DSP12は、エフェクタ1の電源オン中、図2に示す処理を繰り返し実行する。
DSP12は、IN_L端子から入力された時間領域における左チャンネル信号(以下、「IN_L[t]信号」と称す。[t]は、信号が時間領域で示されることを表わしている)と、IN_R端子から入力された時間領域における右チャンネル信号(以下、「IN_R[t]信号」と称す)とを入力し、第1処理部S1および第2処理部S2における処理を実行する。
ここで、第1処理部S1と第2処理部S2とにおける処理は、同一の処理であり、かつ、所定間隔毎に実行されるのであるが、第2処理部S2における処理は、第1処理部S1における処理の実行開始から所定時間遅れて実行開始される。これにより、第2処理部S2における処理は、第1処理部S1における処理の実行終了から実行開始までのつなぎ目を補い、第1処理部S1における処理は、第2処理部S2における処理の実行終了から実行開始までのつなぎ目を補っている。よって、第1処理部S1により生成された信号と第2処理部S2により生成された信号とが合成された信号、即ち、DSP12から出力される、時間領域における第1左チャンネル信号(以下、「OUT1_L[t]信号」と称す)と、時間領域における第1右チャンネル信号(以下、「OUT1_R[t]信号」と称す)と、時間領域における第2左チャンネル信号(以下、「OUT2_L[t]信号」と称す)と、時間領域における第2右チャンネル信号(以下、「OUT2_R[t]信号」と称す)とが、不連続となることを防止している。なお、本実施形態では、第1処理部S1及び第2処理部S2は、0.1秒毎に実行され、第2処理部S2における処理が、第1処理部S1における処理の実行開始から0.05秒後に実行開始されるものとする。しかし、第1処理部S1及び第2処理部S2の実行間隔、並びに、第1処理部S1における処理の実行開始から第2処理部S2における処理の実行開始までの遅延時間は、0.1秒及び0.05秒に限定されず、サンプリング周波数と楽音信号の数とに応じた値を適宜利用可能である。
第1処理部S1および第2処理部S2は、機能ブロックとして、Lch解析処理部S10、Rch解析処理部S20、メイン処理部S30、L1ch出力処理部S60、R1ch出力処理部S70、L2ch出力処理部S80およびR2ch出力処理部S90をそれぞれ有している。
Lch解析処理部S10は、入力したIN_L[t]信号を、周波数領域で示される左チャンネル信号(以下、「IN_L[f]信号」と称す。[f]は、信号が周波数領域で示されることを表わしている)に変換して出力するものであり、Rch解析処理部S20は、入力したIN_R[t]信号を、周波数領域で示される右チャンネル信号(以下、「IN_R[f]信号」と称す)に変換して出力するものである。なお、Lch解析処理部S10およびRch解析処理部S20の詳細は、図3を参照して後述する。
メイン処理部S30は、Lch解析処理部S10から入力されたIN_L[f]信号とRch解析処理部S20から入力されたIN_R[f]信号に対し、後述する第1信号処理、第2信号処理、及び、指定以外を取り出す処理を施し、各処理からの出力結果に基づき、周波数領域で示される左チャンネル信号及び右チャンネル信号を出力するものである。なお、メイン処理部S30の処理の詳細は、図4〜6を参照して後述する。
L1ch出力処理部S60は、メイン処理部S30から出力された周波数領域で示される左チャンネル信号の1つ(以下、「OUT_L1[f]信号と称す)が入力された場合に、そのOUT_L1[f]信号を、時間領域で示される左チャンネル信号(以下、「OUT1_L[t]信号」と称す)へ変換するものである。R1ch出力処理部S70は、メイン処理部S30から出力された周波数領域で示される右チャンネル信号の1つ(以下、「OUT_R1[f]信号と称す)が入力された場合に、そのOUT_R1[f]信号を、時間領域で示される右チャンネル信号(以下、「OUT1_R[t]信号」と称す)へ変換するものである。
L2ch出力処理部S80は、メイン処理部S30から出力されたもう1つの周波数領域で示される左チャンネル信号(以下、「OUT_L2[f]信号と称す)が入力された場合に、そのOUT_L2[f]信号を、時間領域で示される左チャンネル信号(以下、「OUT2_L[t]信号」と称す)へ変換するものである。R2ch出力処理部S90は、メイン処理部S30から出力されたもう1つの周波数領域で示される右チャンネル信号(以下、「OUT_R2[f]信号と称す)が入力された場合に、そのOUT_R2[f]信号を、時間領域で示される右チャンネル信号(以下、「OUT2_R[t]信号」と称す)へ変換するものである。L1ch出力処理部S60、R1ch出力処理部S70、L2ch出力処理部S80およびR2ch出力処理部S90の処理の詳細は、図3を参照して後述する。
なお、第1処理部S1の各出力処理部S60〜S90から出力されるOUT_L1[f]信号、OUT_R1[f]信号、OUT_L2[f]信号およびOUT_R2[f]信号と、第2処理部S2の各出力処理部S60〜S90から出力されるOUT_L1[f]信号、OUT_R1[f]信号、OUT_L2[f]信号、およびOUT_R2[f]信号とは、それぞれ、クロスフェードで合成される。
次に、図3を参照して、メイン処理部30を除く、Lch解析処理部S10、Rch解析処理部S20、L1ch出力処理部S60、R1ch出力処理部S70、L2ch出力処理部S80およびR2ch出力処理部S90で実行される処理の詳細について説明する。図3は、各部S10、S20およびS60〜S90で実行される処理を示した図である。
まず、Lch解析処理部S10およびRch解析処理部S20について説明する。Lch解析処理部S10では、まず、IN_L[t]信号に対して、ハニング窓をかける処理である窓関数処理を実行する(S11)。その後、IN_L[t]信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)を行う(S12)。この高速フーリエ変換により、IN_L[t]信号は、IN_L[f]信号へ変換される(フーリエ変換された各周波数fを横軸とするスペクトル信号となる)。なお、このIN_L[f]信号は、実数部と虚数部を持つ式(以下、「複素式」と称す)で表現される。ここで、S11の処理で、IN_L[t]信号に対してハニング窓をかけるのは、入力されたIN_L[t]信号における始点と終点とが、高速フーリエ変換へ与える影響を軽減するためである。
S12の処理後、Lch解析処理部S10では、IN_L[f]信号のレベル(以下、「INL_Lv[f]」と称す)およびIN_L[f]信号の位相(以下、「INL_Ar[f]」と称す)を、各周波数f毎に算出する(S13)。具体的には、INL_Lv[f]は、IN_L[f]信号の複素式における実数部を2乗した値と、IN_L[f]信号の複素式における虚数部を2乗した値とを足し合わせ、その足し合わせた値の平方根を算出することで求める。また、INL_Ar[f]は、IN_L[f]信号の複素式における虚数部を実数部で除した値のアークタンジェント(tan^(−1))を算出することで求める。S13の処理後、メイン処理部S30の処理へと移行する。
Rch解析処理部S20では、IN_R[t]信号に対して、S21〜S23の処理が行われる。なお、このS21〜S23の処理は、S11〜S13の処理と同様の処理であり、S11〜S13の処理と異なる点は、処理対象が、IN_R[t]信号であり、IN_R[f]信号が出力される点である。よって、S21〜S23の処理の詳細な説明は省略する。なお、S23の処理後、メイン処理部S30の処理へと移行する。
次に、L1ch出力処理部S60、R1ch出力処理部S70、L2ch出力処理部S70、R2ch出力処理部S90について説明する。
L1ch出力処理部S60では、まず、逆高速フーリエ変換(逆FFT)が実行される(S61)。この処理では、具体的には、メイン処理部S30で算出されたOUT_L1[f]信号と、Lch解析処理部S10のS13の処理で算出されたINL_Ar[f]とを使用して、複素式を求め、その複素式に対して、逆高速フーリエ変換を行う。その後、逆高速フーリエ変換で算出された値に対して、Lch解析処理部S10およびRch解析処理部S20で使用したハニング窓と同一の窓をかける窓関数処理を実行する(S62)。例えば、Lch解析処理部S10およびRch解析処理部S20で使用した窓関数が、ハニング窓であるとすれば、S62の処理でも、ハニング窓を、逆高速フーリエ変換で算出した値に対してかける。これにより、OUT1_L[t]信号が生成される。なお、S62の処理で、逆高速フーリエ変換で算出された値に対してハニング窓をかけるのは、各出力処理部S60〜S90から出力される信号をクロスフェードしながら合成するためである。
R1ch出力処理部S70では、S71〜S72の処理が行われる。なお、このS71〜S72の処理は、S61〜S62の処理と同様の処理であり、S61〜S62の処理と異なる点は、逆高速フーリエ変換で使用する複素式を求める際の値が、メイン処理部S30で算出されたOUT_R1[f]信号と、Rch解析処理部S20のS23の処理で算出されたINR_Ar[f]となるところである。それ以外は、S61〜S62の処理と同一である。よって、S71〜S72の処理の詳細な説明は省略する。
また、L2ch出力処理部S80では、S81〜S82の処理が行われる。なお、このS81〜S82の処理は、S61〜S62の処理と同様の処理であり、S61〜S62の処理と異なる点は、逆高速フーリエ変換で使用する複素式を求める際の値が、メイン処理部S30で算出されたOUT_L2[f]信号となるところである(Lch解析処理部S10のS13の処理で算出されたINL_Ar[f]を使用するところは同じ)。それ以外は、S61〜S62の処理と同一である。よって、S81〜S82の処理の詳細な説明は省略する。
また、R2ch出力処理部S90では、S91〜S92の処理が行われる。なお、このS91〜S92の処理は、S61〜S62の処理と同様の処理であり、S61〜S62の処理と異なる点は、逆高速フーリエ変換で使用する複素式を求める際の値が、メイン処理部S30で算出されたOUT_R2[f]信号と、Rch解析処理部S20のS23の処理で算出されたINR_Ar[f]となるところである。それ以外は、S61〜S62の処理と同一である。よって、S91〜S92の処理の詳細は省略する。
次に、図4を参照して、メイン処理部S30で実行される処理の詳細について説明する。図4は、メイン処理部S30で実行される処理を示した図である。
メイン処理部S30では、まず、IN_L[t]信号及びIN_R[t]信号に対して行ったフーリエ変換(S12、S22)により得られた各周波数毎に定位w[f]を求めると共に、INL_Lv[f]とINR_Lv[f]とのうち、大きいほうのレベルを、各周波数における最大レベルML[f]として設定する(S31)。S31で求められた定位w[f]および設定された最大レベルML[f]は、RAM16の所定領域に記憶される。なお、S31において、定位w[f]は、(1/π)×(arctan(INR_Lv[f]/INL_Lv[f])+0.25で求められる。よって、任意の基準点で楽音を受音した場合に、即ち、任意の基準点でIN_L[t]およびIN_R[t]を入力した場合に、INR_Lv[f]がINL_Lv[f]に対して十分大きければ、定位w[f]は0.75となる一方、INL_Lv[f]がINR_Lv[f]に対して十分大きければ、定位w[f]は0.25となる。
次に、メモリのクリアを行う(S32)。具体的には、RAM16の内部に設けられた、1L[f]メモリ、1R[f]メモリ、2L[f]メモリおよび2R[f]メモリをゼロクリアする。なお、1L[f]メモリおよび1R[f]メモリは、メイン処理部S30から出力されるOUT_L1[f]信号およびOUT_R1[f]信号によって形成される定位を変更する場合に使用されるメモリであり、2L[f]メモリおよび2R[f]メモリは、メイン処理部S30から出力されるOUT_L2[f]信号およびOUT_R2[f]信号によって形成される定位を変更する場合に使用されるメモリである。
S32の実行後、第1取り出し処理(S100)、第2取り出し処理(S200)および指定以外を取り出す処理(S300)がそれぞれ実行される。第1取り出し処理(S100)は、予め設定された第1条件で、信号処理を施す対象となる信号を、つまり抽出信号を抽出する処理であり、第2取り出し処理(S200)は、予め設定された第2条件で、抽出信号を抽出する処理である。また、指定以外を取り出す処理(S300)は、第1条件および第2条件以外で、抽出信号を抽出する処理である。なお、指定以外を取り出す処理(S300)は、第1取り出し処理(S100)および第2取り出し処理(S200)の処理結果を使用するので、第1取り出し処理(S100)および第2取り出し処理(S200)の処理完了後に実行される。
第1取り出し処理(S100)の実行後は、その処理(S100)で抽出された抽出信号へ信号処理を施す第1信号処理が実行される(S110)。また、第2取り出し処理(S200)の実行後は、その処理(S200)で抽出された抽出信号へ信号処理を施す第2信号処理が実行される(S210)。更に、指定以外を取り出す処理(S300)の実行後は、その処理(S300)で抽出された抽出信号へ信号処理を施す指定外信号処理が実行される(S310)。
ここで、図5を参照して、第1取り出し処理(S100)、第1信号処理(S110)、第2取り出し処理(S200)および第2信号処理(S210)を説明し、次に、図6を参照して、指定以外を取り出す処理(S300)および指定外信号処理(S310)を説明する。
まず、第1取り出し処理(S100)、第1信号処理(S110)、第2取り出し処理(S200)および第2信号処理(S210)について説明する。図5は、第1取り出し処理(S100)、第1信号処理(S110)、第2取り出し処理(S200)および第2信号処理(S210)で行われる処理の詳細を示した図である。
第1取り出し処理(S100)では、周波数fが、予め設定された第1周波数範囲内であり、かつ、第1周波数範囲内の周波数における定位w[f]および最大レベルML[f]がそれぞれ、予め設定された第1設定範囲内であるか否か、即ち、楽音信号が第1条件を満たすか否かが判定される(S101)。周波数fが、予め設定された第1周波数範囲内であり、かつ、第1周波数範囲内の周波数における定位w[f]および最大レベルML[f]がそれぞれ、予め設定された第1設定範囲内である場合には(S101:Yes)、その周波数fにおける楽音信号(左チャンネル信号および右チャンネル信号)は、抽出信号であると判定され、配列rel[f][1]に1.0が代入される(S102)。なお、図面上では、配列relにおける「l(エル)」部分を、筆記体のエルとして表示している。配列rel[f][1]に記載のfには、S101でYesと判定された時点の周波数が代入される。また、配列rel[f][1]に記載の1は、配列rel[f][1]が、第1取り出し処理(S100)における抽出信号であることを示している。
なお、周波数fが、予め設定された第1周波数範囲内でないか、または、第1周波数範囲内の周波数fにおける定位w[f]が第1設定範囲内でないか、或いは、第1周波数範囲内の周波数fにおける最大レベルML[f]が、第1設定範囲内でない場合には(S101:No)、その周波数fにおける楽音信号(左チャンネル信号および右チャンネル信号)は、抽出信号でないと判定され、配列rel[f][1]に0.0が代入される(S103)。
S102またはS103の処理後、フーリエ変換された全ての周波数について、S101の処理が完了したか否かが判定され(S104)、S104の判定が否定される場合には(S104:No)、S101の処理へ戻る一方、S104の判定が肯定される場合には(S104:Yes)、第1信号処理(S110)へ移行する。
第1信号処理(S110)では、OUT_L1[f]信号の一部となる1L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R1[f]信号の一部となる1R[f]信号のレベルを調整することで、第1取り出し処理(S100)での抽出信号によって形成される定位(メインスピーカから出力される分)を調整するS111の処理が行われる。また、このS111の処理と平行して、第1信号処理(S110)では、OUT_L2[f]信号の一部となる2L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R2[f]信号の一部となる2R[f]信号のレベルを調整することで、第1取り出し処理(S100)での抽出信号によって形成される定位(サブスピーカから出力される分)を調整するS114の処理が行われる。
S111の処理では、OUT_L1[f]信号の一部となる1L[f]信号が算出される。具体的には、「INL_Lv[f]×ll+INR_Lv[f]×lr)×rel[f][1]×a」が、IN_L[t]信号及びIN_R[t]信号に対して行ったフーリエ変換(S12、S22)により得られた全ての周波数について行われて、1L[f]信号が算出される。同様に、S111の処理では、OUT_R1[f]信号の一部となる1R[f]信号が算出される。具体的には、「INL_Lv[f]×rl+INR_Lv[f]×rr)×rel[f][1]×a」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、1R[f]信号が算出される。
なお、aは、第1信号処理に対して予め定められた係数であり、ll,lr,rl,rrは、楽音信号(左チャンネル信号、右チャンネル信号)から求められる定位w[f]と、第1信号処理に対して予め定められた目標とする定位(例えば、0.25〜0.75の範囲内の値)とに応じて決定される係数である。なお、図面上では、「l(エル)」を、筆記体のエルとして表記している。ここで、図7を参照して、ll,lr,rl,rrについて説明する。図7は、定位w[f]と目標とする定位とに応じて決定される各係数を説明するためのグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値であり、縦軸は、各係数(ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´)である。
llとrrとの関係は、図7(a)に示す通りである。よって、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が0.5である場合に、llとrrとは、互いに最大の係数となる。逆に、lrとrlとの関係は、図7(b)に示すようになり、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が0.5である場合に、lrとrlとは、互いに最小の(ゼロの)係数となる。
図5の説明に戻る。S111の処理後、1L[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S112)。なお、ピッチ変更、レベル変更、及びリバーブ付与(所謂、コンボリューション・リバーブ)については、いずれも公知技術であるので、それらの具体的説明は省略する。1L[f]信号に対してS112の処理が行われると、OUT_L1[f]信号を構成する1L_1[f]信号が生成される。同様に、S111の処理後、1R[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S113)。1R[f]信号に対してS113の処理が行われると、OUT_R1[f]信号を構成する1R_1[f]信号が生成される。
また、S114の処理では、OUT_L2[f]信号の一部となる2L[f]信号が算出される。具体的には、「INL_Lv[f]×ll´+INR_Lv[f]×lr´)×rel[f][1]×b」が、IN_L[t]信号及びIN_R[t]信号に対して行ったフーリエ変換(S12、S22)により得られた全ての周波数について行われて、2L[f]信号が算出される。同様に、S114の処理では、OUT_R2[f]信号の一部となる2R[f]信号が算出される。具体的には、「INL_Lv[f]×rl´+INR_Lv[f]×rr´)×rel[f][1]×b」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、2R[f]信号が算出される。
なお、bは、第1信号処理に対して予め定められた係数である。この係数bは、係数aと同じであっても異なっていてもよい。また、ll´,lr´,rl´,rr´は、楽音信号から求められる定位w[f]と、第2信号処理に対して予め定められた目標とする定位(例えば、0.25〜0.75の範囲内の値)とによって決定される係数である。ここで、図7を参照して、ll´,lr´,rl´,rr´について説明する。ll´とrr´との関係は、図7(a)に示すようになり、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が0.0である場合に、ll´は最大の係数となる一方で、rr´は最小の(ゼロの)係数となる。逆に、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が1.0である場合に、ll´は最小の(ゼロの)係数となる一方で、rr´は最大の係数となる。
同様に、lr´とrl´との関係は、図7(b)に示すようになり、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が0.0である場合に、lr´は最大の係数となる一方で、rl´は最小の(ゼロの)係数となる。逆に、(目標とする定位−定位w[f]+0.5)の値が1.0である場合に、lr´は最小の(ゼロの)係数となる一方で、rl´は最大の係数となる。
図5の説明に戻る。S114の処理後、2L[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S115)。2L[f]信号に対してS115の処理が行われると、OUT_L2[f]信号を構成する2L_1[f]信号が生成される。同様に、S114の処理後、2R[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S116)。2R[f]信号に対してS116の処理が行われると、OUT_R2[f]信号を構成する2R_1[f]信号が生成される。
第1取り出し処理S100と平行して実行される第2取り出し処理S200では、周波数fが、予め設定された第2周波数範囲内であり、かつ、第2周波数範囲内の周波数における定位w[f]および最大レベルML[f]がそれぞれ、予め設定された第2設定範囲内であるか否か、即ち、楽音信号が第2条件を満たすか否かが判定される(S201)。本実施形態では、第2周波数範囲は、第1周波数範囲とは異なる範囲(範囲開始と範囲終了とが完全には一致しない範囲)であり、第2設定範囲は、第1設定範囲とは異なる範囲(範囲開始と範囲終了とが完全には一致しない範囲)とする。なお、第2周波数範囲は、第1周波数範囲に一部重なる範囲であってもよいし、第1周波数範囲と完全に一致する範囲であってもよい。第2設定範囲もまた、第1設定範囲に一部重なる範囲であってもよく、第1設定範囲と完全に一致する範囲であってもよい。
周波数fが、予め設定された第2周波数範囲内であり、かつ、第2周波数範囲内の周波数における定位w[f]および最大レベルML[f]がそれぞれ、予め設定された第2設定範囲内である場合には(S201:Yes)、その周波数fにおける楽音信号(左チャンネル信号および右チャンネル信号)は、抽出信号であると判定され、配列rel[f][2]に1.0が代入される(S102)。なお、配列rel[f][2]に記載の2は、配列rel[f][2]が、第2取り出し処理S200における抽出信号であることを示している。
なお、周波数fが、予め設定された第2周波数範囲内でないか、または、第2周波数範囲内の周波数fにおける定位w[f]が第2設定範囲内でないか、或いは、第2周波数範囲内の周波数fにおける最大レベルML[f]が、第2設定範囲内でない場合には(S201:No)、その周波数fにおける楽音信号(左チャンネル信号および右チャンネル信号)は、抽出信号でないと判定され、配列rel[f][2]に0.0が代入される(S203)。
S202またはS203の処理後、フーリエ変換された全ての周波数について、S201の処理が完了したか否かが判定され(S204)、S204の判定が否定される場合には(S204:No)、S201の処理へ戻る一方、S204の判定が肯定される場合には(S204:Yes)、第2信号処理(S210)へ移行する。
第2信号処理(S210)では、OUT_L1[f]信号の一部となる1L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R1[f]信号の一部となる1R[f]信号のレベルを調整することで、第2取り出し処理(S200)での抽出信号によって形成される定位(メインスピーカから出力される分)を調整するS211の処理が行われる。また、このS211の処理と平行して、第2信号処理(S210)では、OUT_L2[f]信号の一部となる2L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R2[f]信号の一部となる2R[f]信号のレベルを調整することで、第2取り出し処理(S200)での抽出信号によって形成される定位(サブスピーカから出力される分)を調整するS214の処理が行われる。
ここで、第2信号処理(S210)におけるS211〜S216の各処理は、以下に説明する点が異なっていること以外は、第1信号処理(S110)におけるS111〜S116の各処理と同様に行われるので、その説明は省略する。第2信号処理(S210)と第1信号処理(S110)との第1の相違点は、第1信号処理に入力される信号が、第1取り出し処理(S100)からの抽出信号であるのに対し、第2信号処理に入力される信号は、第2取り出し処理(S200)からの抽出信号である点であり、第2の相違点は、第1信号処理では、配列rel[f][1]を用いるのに対し、第2信号処理では、配列rel[f][2]をそれぞれ用いる点であり、第3の相違点は、第1信号処理から出力される信号が、1L_1[f]、1R_1[f]、1L_2[f]、及び1R_2[f]であるのに対し、第2信号処理から出力される信号は、2L_1[f]、2R_1[f]、2L_2[f]、及び2R_2[f]である点である。
なお、第1信号処理(S110)で目標とする定位と、第2信号処理(S210)で目標とする定位とは、同じであっても異なっていてもよい。つまり、第1信号処理と第2信号処理とで目標とする定位が異なる場合には、第1信号処理で用いる係数ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´と、第2信号処理で用いる係数ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´が異なることになる。また、第1信号処理で用いる係数a,bと、第2信号処理で用いる係数a,bとは、同じであっても異なっていてもよい。また、第1信号処理の中で実行される加工処理S112,S113,S115,S116の内容と、第2信号処理(S210)の中で実行される加工処理S212,S213,S215,S216の内容は、同じであっても異なっていてもよい。
次に、指定以外を取り出す処理(S300)および指定外信号処理(S310)について説明する。図6は、指定以外を取り出す処理(S300)および指定外信号処理(S310)で行われる処理の詳細を示した図である。
指定以外を取り出す処理(S300)では、まず、S12,S22においてフーリエ変換された周波数のうち、最も低い周波数におけるrel[f][1]が0.0であり、かつ、最も低い周波数におけるrel[f][2]が0.0であるか、即ち、最も低い周波数における楽音信号(左チャンネル信号および右チャンネル信号)が抽出信号として、第1取り出し処理(S100)または第2取り出し処理(S200)で抽出されていないかを判定する(S301)。なお、本実施形態では、第1取り出し処理(S100)におけるS102,S103で設定されたrel[f][1]の値、及び、第2取り出し処理(S200)におけるS202,S203で設定されたrel[f][2]の値を用いてS301の判定を行うものとする。また、S301の処理を行う前に、第1、第2取り出し処理(S100,S200)と同様の処理を別途実行し、その際に得られたrel[f][1]の値及びrel[f][2]の値を用いてS301の判定を行ってもよい。
最も低い周波数におけるrel[f][1]が0.0であり、かつ、最も低い周波数におけるrel[f][2]が0.0である場合には(S301:Yes)、最も低い周波数における楽音信号が抽出信号として、第1取り出し処理(S100)または第2取り出し処理(S200)で未だ抽出されていないと判定されて、配列remain[f]に、1.0を代入する(S302)。ここで、remain[f]に代入される1.0は、最も低い周波数における楽音信号が指定以外を取り出す処理(S300)における抽出信号であることを示している。なお、remain[f]に記載のfには、S301でYesと判定された時点の周波数が代入される。
一方、最も低い周波数におけるrel[f][1]が1.0である場合、または、最も低い周波数におけるrel[f][2]が1.0である場合、或いは、両方が1.0である場合には(S301:No)、最も低い周波数における楽音信号が抽出信号として、第1取り出し処理S100または第2取り出し処理S200で既に抽出されていると判定され、配列remain[f]に、0.0を代入する(S302)。ここで、remain[f]に代入される0.0は、最も低い周波数における楽音信号が指定以外を取り出す処理(S300)における抽出信号とはならないことを示している。
S302またはS303の処理後、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について、S301の処理が完了したか否かが判定され(S304)、S304の判定が否定される場合には(S304:No)、S301の処理へ戻り、S301の判定が未だ行われていない周波数のうち、最も低い周波数に対して、S301の判定が行われる一方、S304の判定が肯定される場合には(S304:Yes)、指定外信号処理(S310)へ移行する。
指定外信号処理(S310)では、OUT_L1[f]信号の一部となる1L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R1[f]信号の一部となる1R[f]信号のレベルを調整することで、指定以外を取り出す処理(S300)での抽出信号によって形成される定位(メインスピーカから出力される分)を調整するS311の処理が行われる。また、このS311の処理と平行して、指定外信号処理(S310)では、OUT_L2[f]信号の一部となる2L[f]信号のレベルを調整すると共に、OUT_R2[f]信号の一部となる2R[f]信号のレベルを調整することで、指定以外を取り出す処理(S300)での抽出信号によって形成される定位(サブスピーカから出力される分)を調整するS314の処理が行われる。
S311の処理では、OUT_L1[f]信号の一部となる1L[f]信号が算出される。具体的には、「(INL_Lv[f]×ll+INR_Lv[f]×lr)×remain[f]×c」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、1L[f]信号が算出される。同様に、S311の処理では、OUT_R1[f]信号の一部となる1R[f]信号が算出される。具体的には、「(INL_Lv[f]×rl+INR_Lv[f]×rr)×remain[f]×c」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、1R[f]信号が算出される。なお、cは、この指定外信号処理(S310)において1L[f]及び1R[f]を算出するために予め定められた係数であり、この係数cは、上述した係数a,bと同じであっても異なっていてもよい。
S311の処理後、1L[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S312)。1L[f]信号に対してS312の処理が行われると、OUT_L1[f]信号を構成する1L_3[f]信号が生成される。同様に、S311の処理後、1R[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S313)。1R[f]信号に対してS113の処理が行われると、OUT_R1[f]信号を構成する1R_3[f]信号が生成される。
また、S314の処理では、OUT_L2[f]信号の一部となる2L[f]信号が算出される。具体的には、「(INL_Lv[f]×ll´+INR_Lv[f]×lr´)×remain[f]×d」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、2L[f]信号が算出される。同様に、S314の処理では、OUT_R2[f]信号の一部となる2R[f]信号が算出される。具体的には、「(INL_Lv[f]×rl´+INR_Lv[f]×rr´)×remain[f]×d」が、S12,S22においてフーリエ変換された全ての周波数について行われて、2R[f]信号が算出される。なお、dは、この指定外信号処理(S310)において2L[f]及び2R[f]を算出するために予め定められた係数であり、この係数dは、上述した係数a,b,cと同じであっても異なっていてもよい。
S314の処理後、2L[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S315)。2L[f]信号に対してS315の処理が行われると、OUT_L2[f]信号を構成する2L_3[f]信号が生成される。同様に、S314の処理後、2R[f]信号に対して、ピッチ変更、レベル変更やリバーブ付与を行う加工処理が行われる(S316)。2R[f]信号に対してS316の処理が行われると、OUT_R2[f]信号を構成する2R_3[f]信号が生成される。
上述した通り、メイン処理部S30では、図5及び図6に示すように、S111,S211,S311の処理に加え、S114,S214,S314の処理が実行される。これにより、抽出された抽出信号における左チャンネル信号および右チャンネル信号を分配して、その分配した左チャンネル信号および右チャンネル信号に対し、各々独立した信号処理を施すことができる。そのため、抽出された抽出信号から分配された左および右チャンネル信号の各々に対して、異なる信号処理(定位を変更する処理)を施すことができる。もちろん、抽出された抽出信号から分配された左および右チャンネル信号の各々に対して、同一の信号処理を施すことも可能である。ここで、S111,S211,S311の処理で生成された信号は、加工処理の後、メインスピーカ用の端子であるOUT1_L端子およびOUT1_R端子から出力される一方で、S114,S214,S314の処理で生成された信号は、加工処理の後、サブスピーカ用の端子であるOUT2_L端子およびOUT2_R端子から出力される。よって、所望の条件毎に抽出信号を抽出した後、所望の条件における抽出信号(言い換えれば、1の条件における抽出信号)に対して、異なる信号処理や加工処理を施した場合には、その異なる信号処理や加工処理を施した各々の抽出信号を、OUT1端子およびOUT2端子の各々から、別々に出力することができる。
図4の説明に戻る。第1信号処理(S110)、第2信号処理(S210)および指定外信号処理(S310)が実行完了すると、第1信号処理(S110)で生成された1L_1[f]信号と第2信号処理(S210)で生成された1L_2[f]信号と指定外信号処理(S310)で生成された1L_3[f]信号とが合成されて、OUT_L1[f]信号が生成される。そして、そのOUT_L1[f]信号がL1ch出力処理部S60(図3参照)に入力されると、L1ch出力処理部S60は、入力したOUT_L1[f]信号をOUT1_L[t]へ変換して、バスライン17を介し、Lch用第1D/Aコンバータ13L1(図1参照)へ出力する。
同様に、第1信号処理(S110)で生成された1R_1[f]信号と第2信号処理(S210)で生成された1R_2[f]信号と指定外信号処理(S310)で生成された1R_3[f]信号とが合成されて、OUT_R1[f]信号が生成される。そして、そのOUT_R1[f]信号がR1ch出力処理部S70(図3参照)に入力されると、R1ch出力処理部S70は、入力したOUT_R1[f]信号をOUT1_R[t]信号へ変換して、バスライン17を介し、Rch用第1D/Aコンバータ13R1(図1参照)へ出力する。なお、OUT_L2[f]信号およびOUT_R2[f]信号の生成と、OUT2_L[t]信号およびOUT2_R[t]信号の変換も、上述と同様に行われる。
このように、OUT_L1[f]信号の生成においては、第1信号処理(S110)で生成された1L_1[f]信号と第2信号処理(S210)で生成された1L_2[f]信号との合成に加え、指定外信号処理(S310)で生成された1L_3[f]信号が合成される。同様に、OUT_R1[f]信号の生成においては、第1信号処理(S110)で生成された1R_1[f]信号と第2信号処理(S210)で生成された1R_2[f]信号との合成に加え、指定外信号処理(S310)で生成された1R_3[f]信号が合成される。よって、所望の条件毎に抽出された抽出信号に対し、第1信号処理(S110)または第2信号処理(S210)で抽出されなかった信号を合成することができる。従って、OUT_L1[f]信号およびOUT_R1[f]を、入力された楽音信号と同様の信号に、即ち、広がりのある自然な楽音にすることができる。
上述した通り、第1実施形態のエフェクタ1では、第1取り出し処理(S100)あるいは第2取り出し処理(S200)で抽出された抽出信号に対し、信号処理(S110,S210)を行う。ここで、第1取り出し処理(S100)および第2取り出し処理(S200)は、設定された各条件毎に(周波数、定位および最大レベルが一組となった条件毎に)、各々の条件を満たす楽音信号を(左チャンネル信号および右チャンネル信号を)、抽出信号として抽出する。よって、信号処理を施す対象となる抽出信号の抽出を、複数の各条件(周波数、定位および最大レベルが一組となった条件の各々)にわたって行うことができる。
次に、図8及び図9を参照して、第2実施形態のエフェクタ1について説明する。なお、この第2実施形態において、上述した第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
この第2実施形態のエフェクタ1は、第1実施形態のエフェクタ1と同様に、第1又は第2取り出し処理(S100,S200)により設定条件に基づいて抽出された楽音信号(即ち、抽出信号)に対し、各取り出し処理の設定条件毎に独立して第1又は第2信号処理(S110,S210)を施すことができるものであるが、かかる第1又は第2信号処理において、音像拡大縮小処理を行い、音像を拡大(即ち、1倍より大きい拡大率での拡大)又は縮小(即ち、0倍より大きく1倍より小さい拡大率での拡大)できるように構成されている。
まず、図8を参照して、第2実施形態のエフェクタ1が行う音像拡大縮小処理の概要について説明する。図8は、第2実施形態における音像拡大縮小処理により音像が拡大又は縮小される様子を示した模式図である。
第1又は第2取り出し処理(S100,S200)により抽出信号を抽出するための条件(即ち、周波数、定位および最大レベルを一組として設定される条件)は、周波数及び定位を2軸として形成される座標面では、条件とされる周波数の範囲(第1周波数範囲、第2周波数範囲)と、条件とされる定位の範囲(第1設定範囲、第2設定範囲)とを隣接する2辺とする矩形領域(以下、この矩形領域を「取り出し領域」と称す)として表される。抽出信号は、その矩形領域内に存在する。なお、図8では、周波数の範囲を、Low≦周波数f≦Highとし、定位の範囲を、panL≦定位w[f]≦panRとし、取り出し領域を、周波数f=Lowであり、定位w[f]=panLである点と、周波数f=Lowであり、定位w[f]=panRである点と、周波数f=Highであり、定位w[f]=panRである点と、周波数f=Highであり、定位w[f]=panLである点との4点を頂点とする矩形領域として表している。
音像拡大縮小処理は、取り出し領域内にある抽出信号の定位w[f]を、音像の拡大又は縮小の目標とする領域(以下、「目標領域」と称す)内に線形写像することにより移動させる処理である。目標領域は、その一端側の境界定位を周波数に応じて規定する音像拡大関数YL(f)と、他端側の境界定位を周波数に応じて規定する音像拡大関数YR(f)と、周波数範囲(Low≦周波数f≦High)とにより囲まれる領域である。
本実施形態の音像拡大縮小処理では、定位の範囲(図8におけるpanL≦定位w[f]≦panRの範囲)の中心、即ち、図8におけるpanCを基準定位とし、取り出し領域内の抽出信号のうち、panCよりpanL側に定位する抽出信号の定位を、音像拡大関数YL(f)を用いて基準定位であるpanCを基準とする連続的な線形写像によって移動させ、その一方で、panCよりpanR側に定位する抽出信号の定位を、音像拡大関数YR(f)を用いて基準定位であるpanCを基準とする連続的な線形写像によって移動させる。
なお、panCよりpanL側に定位する抽出信号がpanL側に移動する、又は、panCよりpanR側に定位する抽出信号がpanR側に移動する場合が拡大であり、抽出信号が基準定位panC側に移動する場合が縮小である。つまり、音像拡大関数YL(f)が取り出し領域の外側に位置する周波数領域では、panCよりpanL側に定位する抽出信号によって形成される音像は拡大され、音像拡大関数YL(f)が取り出し領域の内側に位置する周波数領域では、panCよりpanL側に定位する抽出信号によって形成される音像は縮小される。同様に、音像拡大関数YR(f)が取り出し領域の外側に位置する周波数領域では、panCよりpanR側に定位する抽出信号によって形成される音像は拡大され、音像拡大関数YR(f)が取り出し領域の内側に位置する周波数領域では、panCよりpanR側に定位する抽出信号によって形成される音像は縮小される。
なお、図8に示す例では、音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)をいずれも、周波数fの値に応じて直線を描く関数としているが、音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)は、周波数fの値に応じて直線を描く関数に限らず、種々の形状を示す関数を適用できる。例えば、周波数fの範囲に応じて折れ線を描く関数、周波数fの値に応じて放物線(即ち、二次曲線)を描く関数、周波数fの値に応じた三次関数や、楕円や円の弧を表す関数や、指数又は対数関数などを適用できる。
この音像拡大関数YL(f)及びYR(f)は、予め決められていても、ユーザにより設定されるものであってもよい。例えば、周波数領域や定位範囲に応じて、用いる音像拡大関数YL(f)及びYR(f)が予め設定されており、取り出し領域の位置(周波数領域や定位範囲)に応じた音像拡大関数YL(f)及びYR(f)が選定されるように構成されてもよい。
また、ユーザが、所望に応じて、取り出し領域を含む座標面における座標(即ち、周波数と定位との組)を2以上設定し、設定された周波数と定位との組に基づいて、音像拡大関数YL(f)又はYR(f)が設定されるように構成してもよい。例えば、周波数f=Lowにおける定位がYL(Low)である点と、周波数f=Highにおける定位がYL(High)である点とをユーザが設定し、それにより、周波数fの変化に対して定位が直線的に変化する関数である音像拡大関数YL(f)が設定され、一方で、周波数f=Lowにおける定位がYR(Low)である点と、周波数f=Highにおける定位がYR(High)である点とをユーザが設定し、それにより、周波数fの変化に対して定位が直線的に変化する関数である音像拡大関数YR(f)が設定されてもよい。あるいは、音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)の変化パターン(直線、放物線、弧など)を、各々ユーザが設定するように構成してもよい。なお、音像拡大関数YL(f)又はYR(f)の周波数範囲は、図8に示すように、取り出し領域の周波数範囲を超えるものであってもよい。
音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)が、周波数fの値に応じて直線を描く関数である場合には、これらの音像拡大関数YL(f),YR(f)を以下のようにして求めることができる。
まず、周波数fのLow側の拡大具合を決める係数として、BtmL,BtmRを仮定し、High側の拡大具合を決める係数として、TopL,TopRを仮定する。なお、BtmL及びTopLは、基準定位であるpanCより左方向(panL方向)の拡大具合を決めるものであり、BtmR及びTopRは、panCより右方向(panR方向)の拡大具合を決めるものである。これらの4つの係数BtmL,BtmR,TopL,TopRは、それぞれ、例えば、0.5〜10.0程度の範囲とされる。なお、この係数が1.0を超える場合は拡大となり、0より大きく1.0より小さい場合には縮小となる。
ここで、直線である音像拡大関数YL(f)における両端の座標、即ち、YL(Low)及びYL(High)の座標を求めると、YL(Low)=panC+(panL−panC)×BtmLであり、YL(High)=panC+(panL−panC)×TopLである。このとき、Wl=panL−panCとすれば、YL(f)={Wl×(TopL−BtmL)/(High−Low)}×(f−Low)+panC+Wl×BtmLとなる。
同様に、音像拡大関数YR(f)について、YR(Low)=panC+(panR−panC)×BtmRであり、YR(High)=panC+(panR−panC)×TopRであるので、Wr=panR−panCとすると、YR(f)={Wr×(TopR−BtmR)/(High−Low)}×(f−Low)+panC+Wr×BtmRとなる。
かかる音像拡大関数YL(f)用いて、基準定位PanCより左方向に定位している抽出信号PoL[f]の移動を行う場合、その移動先の定位PtL[f]は、panCを基準とすると、ある周波数fにおける、panCからPoL[f]までの長さと、panCからPtL[f]までの長さの比が、panCからpanLまでの長さと、panCからYL(f)までの長さの比に等しいことに基づいて算出することができる。即ち、移動先の定位PtL[f]は、(PtL[f]−panC):(PoL[f]−panC)=(YL(f)−panC):(panL−panC)であることから、PtL[f]=(PoL[f]−panC)×(YL(f)−panC)/(panL−panC)+panCにより算出できる。
同様に、音像拡大関数YR(f)用いて、基準定位PanCより右方向に定位している抽出信号PoR[f]の移動を行う場合、その移動先の定位PtR[f]は、(PtR[f]−panC):(PoR[f]−panC)=(YR(f)−panC):(panR−panC)であることから、PtR[f]=(PoR[f]−panC)×(YR(f)−panC)/(panR−panC)+panCにより算出できる。
音像拡大縮小処理では、移動先とする定位PtL[f]及び定位PtR[f]を目標とする定位とすることにより、定位を移動させるための係数ll,lr,rl,rrや、係数ll´,lr´,rl´,rr´を決定し、それにより、抽出信号の定位を移動させる。その結果、取り出し領域の音像が拡大又は縮小される。
つまり、本実施形態では、取り出し領域内の抽出信号のうち、panCよりpanL側に定位する抽出信号の定位を、音像拡大関数YL(f)を用いて基準定位であるpanCを基準とする連続的な線形写像によって移動させ、その一方で、panCよりpanR側に定位する抽出信号の定位を、音像拡大関数YR(f)を用いて基準定位であるpanCを基準とする連続的な線形写像によって移動させることにより、取り出し領域の音像が拡大又は縮小される。
なお、図8では、一例として、1の取り出し領域に対し音像拡大関数YL(f)及びYR(f)が設定されている様子を図示しているが、音像拡大関数YL(f)及びYR(f)は、取り出し領域毎に各々設定されていていてもよい。
例えば、高音域を周波数範囲とする取り出し領域と、中音域を周波数範囲とする取り出し領域と、低音域を周波数範囲とする取り出し領域とで、各々異なる音像拡大関数YL(f)及びYR(f)を設定してもよい。なお、ステレオ信号の音像を全体的に拡大する場合において、高音域の全定位の範囲に対しては、周波数が高くなるにつれて拡大具合が小さくなるように音像拡大関数YL(f)及びYR(f)を設定し、中音域の全定位の範囲に対しては、周波数が高くなるにつれて拡大具合が大きくなるように音像拡大関数YL(f)及びYR(f)を設定すると、好ましい聴感を与えることができる。一方、低音域の信号抽出は行わず、音像の拡大(又は縮小)を行わないようにしてもよい。
なお、複数の取り出し領域が存在する場合には、音像の拡大又は縮小を行う領域、即ち、基準定位、音像拡大関数YL(f)、及び音像拡大関数YR(f)の設定を行う領域は、全ての取り出し領域でなく、一部の取り出し領域に限定されていてもよい。
また、全ての取り出し領域に対して共通のBtmL,BtmR,TopL,TopRを設定することにより、全ての取り出し領域の拡大(又は縮小)具合が同じになるような音像拡大関数YL(f)及びYR(f)を設定してもよい。
また、BtmL,BtmR,TopL,TopRを、抽出する領域の位置及び/又は該領域の大きさの関数として設定してもよい。即ち、取り出し領域に応じて、所定の規則に基づいて、拡大具合(又は縮小具合)が変化するようにしてもよい。例えば、周波数が大きくなるにつれ、拡大具合が大きくなるようにしたり、抽出信号の定位が基準定位(例えば、中央であるpanC)から離れるにつれて拡大具合が小さくなる、等のようにBtmL,BtmR,TopL,TopRを設定してもよい。
また、基準定位、音像拡大関数YL(f)、及び音像拡大関数YR(f)を、全ての取り出し領域に対して共通して設定してもよい。つまり、全ての取り出し領域内の抽出信号が、同じ基準定位を基準として、同じ音像拡大関数YL(f)及びYR(f)により線形写像させるようにしてもよい。なお、かかる場合には、楽音全体を1つの取り出し領域として選択することにより、楽音全体の音像を1の条件(即ち、共有に設定された基準定位、及び、音像拡大関数YL(f),YR(f))で拡大又は縮小するようにしてもよい。
また、本実施形態では、取り出し領域における定位の範囲(図8におけるpanL≦定位w[f]≦panRの範囲)の中心、即ち、panCを基準定位としたが、基準定位は取り出し領域内又は取り出し領域外のいずれの定位にも設定可能である。複数の取り出し領域がある場合、取り出し領域毎に異なる基準定位を設定してもよいし、全取り出し領域に対して共通の基準定位を設定してもよい。なお、この基準定位は、取り出し領域毎に、又は、全取り出し領域に対し、予め設定されていても、ユーザがその都度設定するものであってもよい。
次に、図9を参照して、本実施形態のエフェクタ1が行う音像拡大縮小処理について説明する。図9は、第2実施形態の第1信号処理S110および第2信号処理S210で行われる処理の詳細を示した図である。
第2実施形態の第1信号処理(S110)では、図9に示すように、第1取り出し処理(S100)により第1条件を満たす楽音信号を抽出信号として抽出した後、抽出信号から形成される音像の拡大又は縮小を行うために、メインスピーカから出力される分の抽出信号の定位の移動量を算出する処理を実行する(S117)。同様に、第1取り出し処理(S100)により抽出された抽出信号から形成される音像の拡大又は縮小を行うために、サブスピーカから出力される分の抽出信号の定位の移動量を算出する処理を実行する(S118)。
S117の処理では、第1取り出し処理(S100)による取り出し領域(即ち、第1条件により決まる領域)内において、基準定位より左方向にある抽出信号を音像拡大関数YL1[1](f)によって移動させたときの移動量ML1[1][f]と、基準定位より右方向にある抽出信号を音像拡大関数YR1[1](f)によって移動させたときの移動量MR1[1][f]とを算出する。
なお、音像拡大関数YL1[1](f)及び音像拡大関数YR1[1](f)は、いずれも、メインスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させるための音像拡大関数であり、それぞれ、基準定位より左方向の抽出信号を移動させるための関数及び基準定位より右方向の抽出信号を移動させるための関数である。
具体的に、S117の処理では、「{(w[f]−panC[1])×(YL1[1](f)−panC[1])/(panL[1]−panC[1])+panC[1]}−w[f]」を、S12及びS22においてフーリエ変換された全ての周波数に対して行うことにより、移動量ML1[1][f]を算出する。同様に、「{(w[f]−panC[1])×(YR1[1](f)−panC[1])/(panR[1]−panC[1])+panC[1]}−w[f]」を、S12及びS22においてフーリエ変換された全ての周波数に対して行うことにより、移動量MR1[1][f]を算出する。なお、panL[1]及びpanR[1]は、第1取り出し処理(S100)による取り出し領域における左右境界の定位であり、panC[1]は、第1取り出し処理(S100)による取り出し領域における基準定位、例えば、該取り出し領域における定位の範囲の中心である。
S117の処理後、移動量ML1[1][f]及び移動量MR1[1][f]を用いて、第1取り出し処理(S100)によって取り出された抽出信号によって形成される定位(メインスピーカから出力される分)の調整を行う(S111)。具体的に、S111の処理では、移動量ML1[1][f]及び移動量MR1[1][f]は、目標とする定位(即ち、拡大又は縮小による移動先の定位)から抽出信号の定位w[f]を引いた差であるので、移動量ML1[1][f]及び移動量MR1[1][f]を用いて、定位を移動させるための係数ll,lr,rl,rrの決定を行い、決定された係数ll,lr,rl,rrを用いて、第1実施形態におけるS111と同様に定位の調整を行い、1L信号及び1R信号を得る。なお、調整された定位が0未満であれば、その定位を0とし、その一方で、調整された定位が1を超える場合には、その定位を1とする。S117の処理による移動量ML1[1][f],MR1[1][f]の算出と、S111の処理による定位の調整とが、音像拡大縮小処理に相当する。
その後、1L[f]信号は、S112において加工処理に供されて1L_1[f]信号とされ、1R[f]信号は、S113において加工処理に供されて1R_1[f]信号とされる。
一方、サブスピーカから出力される分の抽出信号の定位の移動量を算出するS118の処理では、第1取り出し処理(S100)による取り出し領域内において、基準定位より左方向にある抽出信号を音像拡大関数YL2[1](f)によって移動させたときの移動量ML2[1][f]と、基準定位より右方向にある抽出信号を音像拡大関数YR2[1](f)によって移動させたときの移動量MR2[1][f]とを算出する。
なお、音像拡大関数YL2[1](f)及び音像拡大関数YR2[1](f)は、いずれも、サブスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させるための音像拡大関数であり、それぞれ、基準定位より左方向の抽出信号を移動させるための関数及び基準定位より右方向の抽出信号を移動させるための関数である。音像拡大関数YL2[1](f)は、メインスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させるために使用する音像拡大関数YL1[1](f)と同じであっても異なっていてもよい。同様に、音像拡大関数YR2[1](f)は、メインスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させるために使用する音像拡大関数YR1[1](f)と同じであっても異なっていてもよい。
例えば、メインスピーカとサブスピーカとを等間隔に配置させる場合には、YL1[1](f)とYL2[1](f)とを同じにすると共に、YR1[1](f)とYR2[1](f)とを同じとする。また、メインスピーカとサブスピーカとが極端に離れている場合には、移動量ML2[1][f]及び移動量MR2[1][f]が、移動量ML1[1][f]及び移動量MR1[1][f]より小さくなるような音像拡大関数YL2[1](f)及びYR2[1](f)を用いる。
具体的に、S118の処理では、「{(w[f]−panC[1])×(YL2[1](f)−panC[1])/(panL[1]−panC[1])+panC[1]}−w[f]」を、S12及びS22においてフーリエ変換された全ての周波数に対して行うことにより、移動量ML2[1][f]を算出する。同様に、「{(w[f]−panC[1])×(YR2[1](f)−panC[1])/(panR[1]−panC[1])+panC[1]}−w[f]」を、S12及びS22においてフーリエ変換された全ての周波数に対して行うことにより、移動量MR2[1][f]を算出する。これらの移動量ML2[1][f]及びMR2[1][f]は、目標とする定位(即ち、拡大又は縮小による移動先の定位)から抽出信号の定位w[f]を引いた差に相当する。
S118の処理後、移動量ML2[1][f]及び移動量MR2[1][f]を用いて、第1取り出し処理(S100)によって取り出された抽出信号によって形成される定位(サブスピーカから出力される分)の調整を行う(S114)。具体的に、S114の処理では、移動量ML2[1][f]及び移動量MR2[1][f]を用いて、定位を移動させるための係数ll´,lr´,rl´,rr´の決定を行い、決定された係数ll´,lr´,rl´,rr´を用いて、第1実施形態におけるS114と同様に定位の調整を行い、2L信号及び2R信号を得る。なお、調整された定位が0未満であれば、その定位を0とし、その一方で、調整された定位が1を超える場合には、その定位を1とする。また、S118の処理による移動量ML2[1][f],MR2[1][f]の算出と、S114の処理による定位の調整とが、音像拡大縮小処理に相当する。
その後、2L[f]信号は、S115において加工処理に供されて2L_1[f]信号とされ、2R[f]信号は、S116において加工処理に供されて2R_1[f]信号とされる。
また、図9に示すように、第2実施形態の第2信号処理(S210)では、第2取り出し処理(S200)により第2条件を満たす楽音信号を抽出信号として抽出した後、抽出信号から形成される音像の拡大又は縮小を行うために、メインスピーカから出力される分の定位の移動量ML1[2][f]とを算出する処理を実行する(S217)。同様に、第2取り出し処理(S200)により抽出された抽出信号から形成される音像の拡大又は縮小を行うために、サブスピーカから出力される分の定位の移動量MR2[1][f]とを算出する処理を実行する(S218)。
ここで、S217の処理では、以下に説明する点が異なること以外は、第1信号処理(S110)の中で実行されるS117の処理と同様に行われるので、その説明は省略する。S217の処理とS117の処理との相違点は、メインスピーカから出力される分の定位を移動させるための音像拡大関数として、基準定位より左方向の抽出信号を移動させるための関数であるYL1[2](f)と、 基準定位より右方向の抽出信号を移動させるための関数であるYR1[2](f)とを用いる点と、panL[1]及びpanR[1]に換えて、第2取り出し処理(S200)による取り出し領域における左右境界の定位、即ち、panL[2]及びpanR[2]を用いる点と、基準定位として、panC[1]に換えて、第2取り出し処理(S200)による取り出し領域内の定位(例えば、該取り出し領域における定位の範囲の中心)であるpanC[2]を用いる点である。
また、S218の処理では、以下に説明する点が異なること以外は、第1信号処理(S110)の中で実行されるS118の処理と同様に行われるので、その説明は省略する。S218の処理とS118の処理との相違点は、サブスピーカから出力される分の定位を移動させるための音像拡大関数として、基準定位より左方向の抽出信号を移動させるための関数であるYL2[2](f)と、 基準定位より右方向の抽出信号を移動させるための関数であるYL2[2](f)とを用いる点と、panL[1]及びpanR[1]に換えて、panL[2]及びpanR[2]を用いる点と、基準定位として、panC[1]に換えて、panC[2]を用いる点である。
そして、S217の処理後は、算出した移動量ML1[2][f]及び移動量MR1[2][f]を用いて、係数ll,lr,rl,rrを決定し、それによって、第2取り出し処理(S200)によって取り出された抽出信号によって形成される定位(メインスピーカから出力される分)の調整を行う(S211)。S211の処理において、調整された定位が0(ゼロ)未満であれば、その定位を0(ゼロ)とし、その一方で、調整された定位が1を超える場合には、その定位を1とする。なお、S217の処理による移動量ML1[2][f],MR1[2][f]の算出と、S211の処理による定位の調整とが、音像拡大縮小処理に相当する。その後、S211の処理により得られた1L[f]信号及び1R[f]信号を、それぞれ、S212の加工処理及びS213の加工処理に供し、それによって、1L_2[f]信号及び1R_2[f]信号を得る。
一方、S218の処理後は、算出した移動量ML2[2][f]及び移動量MR2[2][f]を用いて、係数ll´,lr´,rl´,rr´を決定し、それによって、第2取り出し処理(S200)によって取り出された抽出信号によって形成される定位(サブスピーカから出力される分)の調整を行う(S214)。S214の処理において、調整された定位が0未満であれば、その定位を0とし、その一方で、調整された定位が1を超える場合には、その定位を1とする。なお、S218の処理による移動量ML2[2][f],MR2[2][f]の算出と、S214の処理による定位の調整とが、音像拡大縮小処理に相当する。その後、S214の処理により得られた2L[f]信号及び2R[f]信号を、それぞれ、S215の加工処理及びS216の加工処理に供し、それによって、2L_2[f]信号及び2R_2[f]信号を得る。
上述した通り、第2実施形態のエフェクタ1では、第1取り出し処理(S100)あるいは第2取り出し処理(S200)によって取り出し領域内から抽出された抽出信号に対し、基準定位と、定位の範囲の一端側である左方向の境界の拡大具合(拡大度)を規定する音像拡大関数YL(f)と、該定位の範囲の他端側である右方向の境界の拡大具合を規定する音像拡大関数YR(f)とを設定し、基準定位より左方向にある抽出信号を、該基準定位を基準として、音像拡大関数YL(f)によって線形写像することにより移動させると共に、基準定位より右方向にある抽出信号を、該基準定位を基準として、音像拡大関数YR(f)によって線形写像することにより移動させることにより、取り出し領域内に形成される音像を拡大又は縮小することができる。よって、本実施形態のエフェクタ1によれば、ステレオ音源が示す各音像を自在に拡大又は縮小することができる。
次に、図10及び図11を参照して、第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態において、上述した第2実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
上述した第2実施形態では、左右チャンネルの楽音信号(即ち、ステレオ信号)から設定条件に応じて抽出した抽出信号の音像を拡大又は縮小することについて説明したが、この第3実施形態では、1チャンネルの楽音信号(即ち、モノラル信号)から設定条件に応じて抽出した抽出信号から形成される音像を拡大又は縮小することについて説明する。
具体的に、モノラル信号は、定位が中央(panC)に位置してしまうので、本実施形態では、音像拡大縮小処理を実行する前に、準備処理として、モノラル信号であるが故に中央(panC)に定位する抽出信号を、取り出し領域における定位の左方向の境界(panL)または右方向の境界(panR)のいずれかに分配する(振り分ける)処理を行う。
図10は、第3実施形態における音像拡大縮小処理の概要を説明するための模式図である。図10において、黒く塗り潰された10個の箱Poは、各々、1の周波数範囲にあるモノラル信号からの1または複数の抽出信号を示す。なお、図10では、各箱Poの区別を付ける目的で、各箱Poの間には間隔(空白)を設けているが、実際には、各箱Poは隙間なく連続する(即ち、各箱Poの周波数範囲は連続する)。
図10に示すように、本実施形態では、準備処理として、モノラル信号からの抽出信号を表す箱Poが、周波数領域が隣接する箱Poの分配先が、それぞれ、各取り出し領域O1,O2における定位の左方向の境界(panL)と右方向の境界(panR)とで交互になるように分配される。即ち、箱PoLまたは箱PoRに移動される。
その後、上述した第2実施形態と同様に、取り出し領域内の抽出信号のうち、panCよりpanL側に定位する抽出信号(即ち、箱PoLに含まれる抽出信号)を、各取り出し領域O1,O2に対して設けた音像拡大関数YL[1](f),YL[2](f)を左方向の定位の境界とする領域に線形写像することにより移動する。その一方で、panCよりpanR側に定位する抽出信号(即ち、箱PoRに含まれる抽出信号)を、各取り出し領域O1,O2に対して設けた音像拡大関数YR[1](f),YR[2](f)を左方向の定位の境界とする領域に線形写像することにより移動する。
その結果、第1の取り出し領域O1(f1≦周波数f≦f2)内にあるモノラル信号からの抽出信号(即ち、箱Poに含まれる抽出信号)は、周波数範囲毎に交互に、音像拡大関数YL[1](f)又は音像拡大関数YR[1](f)上における各周波数に応じた定位、即ち、箱PtLまたは箱PtRに移動される。同様に、第2の取り出し領域O2(f2≦周波数f≦f3)内にある箱Poは、周波数範囲毎に交互に、音像拡大関数YL[2](f)又は音像拡大関数YR[2](f)上における各周波数に応じた定位(箱PtLまたは箱PtR)に移動される。
このように、モノラルの楽音信号の定位を、一旦、予め規定された連続する周波数範囲毎に交互にpanL又はpanRに分配した(振り分けた)後に、第2実施形態と同様に音像の拡大又は縮小を行うことにより、モノラル信号(モノラル音源)に、バランスのよい拡がり感を持たせることができる。
第1取り出し領域O1が中音域を周波数範囲とする領域であり、第2取り出し領域O2が高音域を周波数範囲とする領域である場合には、図10に示した例と同様に、第1取り出し領域O1に対する音像拡大関数YL[1](f)及び音像拡大関数YR[1](f)を、高周波数側で定位が拡がるような拡大具合を表す関数とし、第2取り出し領域O2に対する音像拡大関数YL[2](f)及び音像拡大関数YR[2](f)を、高周波数側で定位が狭まるような拡大具合を表す関数とすることにより、好ましい聴感を与えることができる。
なお、図10において、第1取り出し領域O1の定位の範囲と、第2取り出し領域O2の定位の範囲は等しい場合を例示したが、各取り出し領域O1,O2の定位の範囲は異なっていてもよい。
次に、図11を参照して、第3実施形態の音像拡大縮小処理について説明する。図11は、第3実施形態のエフェクタで実行される主要な処理を示した図である。なお、本実施形態のエフェクタは、Lch用A/Dコンバータ11L及びRch用A/Dコンバータ11Rに換えて、IN_MONO端子から入力されたモノラル楽音信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/Dコンバータを有している点で、第2実施形態で使用したエフェクタ1(図1参照)と相違する。
本実施形態では、モノラル信号を入力信号とするので、第2実施形態のエフェクタ1において、左チャンネル信号及び右チャンネル信号に対しそれぞれ行っていた処理は、モノラル信号に対して実行される。即ち、本実施形態のエフェクタは、図11に示すように、IN_MONO端子から入力した時間領域のIN_MONO[t]信号を、S10又はS20と同様の解析処理部S50により、周波数領域のIN_MONO[f]信号に変換し、メイン処理部S30に供給する。
モノラル信号の状態では、各信号の定位w[f]は、全て、0.5(中央)、即ち、panCとなるので、上述した第2実施形態のメイン処理部S30において実行したS31の処理は省略することができる。よって、本実施形態におけるメイン処理部S30では、まず、メモリのクリアを実行した後(S32)、第1取り出し処理(S100)及び第2取り出し処理(S200)を実行し、予め設定された条件毎に信号の抽出を行うと共に、指定以外の信号の取り出しを行う(S300)。
なお、各モノラル信号の定位w[f]は中央(panC)であるので、本実施形態のS100,S200では、各信号の定位w[f]が第1又は第2設定範囲内にあるか否かを判定しなくてもよい。また、第2実施形態のS100,S200では、信号の抽出を行うために、最大レベルML[f]を用いたが、本実施形態では、IN_MONO[f]信号のレベルを用いる。また、上述した通り、本実施形態では、モノラル信号であるという理由で定位w[f]を求める処理(即ち、第2実施形態におけるS31の処理)を省略する構成としたが、モノラル信号の場合であっても、S31の処理、即ち、IN_MONO[f]信号に対して行ったフーリエ変換により得られた各周波数毎に定位w[f]を求める処理を実行してもよい。
第1取り出し処理(S100)の実行後、モノラルの抽出信号の定位を左右に分配(振り分ける)ことによって擬似ステレオ信号を生成する準備処理を実行する(S120)。この準備処理(S120)では、まず、抽出した信号の周波数fが、予め規定された連続する周波数範囲のうち、奇数番目の周波数範囲内にあるか否かを判定する(S121)。予め規定された連続する周波数範囲は、例えば、全周波数範囲を、セント単位(例えば、50セント単位や、100セント(半音階)単位)、又は、周波数単位(例えば、100Hz単位)で分割した範囲である。
S121の処理により、抽出した信号の周波数fが、奇数番目の周波数範囲内にあれば(S121:Yes)、定位w[f][1]を、panL[1]とする(S122)。一方、抽出した信号の周波数fが、偶数番目の周波数範囲内にあれば(S121:No)、定位w[f][1]を、panR[1]とする(S123)。S122またはS123の処理後、フーリエ変換された全ての周波数について、S121の処理が完了したか否かが判定され(S124)、S124の判定が否定される場合には(S124:No)、S121の処理に戻る一方、S124の判定が肯定される場合には(S124:Yes)、第1信号処理110へ移行する。
よって、かかる準備処理(S120)によれば、第1条件を満たす抽出信号の定位は、予め規定された連続する周波数範囲毎に、定位に対して設定された第1設定範囲の左右境界の定位(panL[1],panR[1])となるよう交互に分配される。
その後、第2実施形態と同様に、S117の処理とS111の処理とを実行することにより、左右のメインスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させる一方で、118の処理とS114の処理とを実行することにより、左右のサブスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させる。本実施形態では、準備処理(S120)と、S117及びS111の処理又はS118及びS114の処理とが、音像拡大縮小処理に相当する。
一方、第2取り出し処理(S200)の実行後には、第2取り出し処理(S200)により抽出された抽出信号に対する準備処理を実行する(S220)。この準備処理(S220)については、処理対象が第2取り出し処理(S200)により抽出された抽出信号であること以外は、上述した準備処理(S110)と同様に行われるので、その説明は省略する。かかる準備処理(S220)により、第2条件を満たす抽出信号の定位は、予め規定された連続する周波数範囲毎に、定位に対して設定された第2設定範囲の左右境界の定位(panL[2],panR[2])となるよう交互に分配される。
その後、第2実施形態と同様に、S217の処理とS211の処理とを実行することにより、左右のメインスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させる一方で、218の処理とS214の処理とを実行することにより、左右のサブスピーカから出力される分の抽出信号の定位を移動させる。本実施形態では、準備処理(S220)と、S217及びS211の処理又はS218及びS214の処理とが、音像拡大縮小処理に相当する。
上述した通り、第3実施形態では、モノラルの楽音信号を、一旦、予め規定された連続する周波数範囲毎に交互に分配した後に、音像の拡大又は縮小を行うことにより、モノラル信号に好適な拡がり感を持たせることができる。
次に、図12〜図15を参照して、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、エフェクタ1に対するユーザインターフェイス機能を提供するユーザインターフェイス装置(以下、「UI装置」と称す)について説明する。なお、この第4実施形態において、上述した各実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態のUI装置は、UI装置を制御する制御部と、表示装置121と、入力装置122とから構成される。本実施形態において、UI装置を制御する制御部は、上述した楽音信号処理装置としてのエフェクタ1の構成を共用しており、CPU14と、ROM15、RAM16と、表示装置121に接続されるI/F21と、入力装置122に接続されるI/F22と、バスライン17とから構成される。
本実施形態のUI装置は、楽音信号を、定位を示す定位軸と周波数を示す周波数軸とからなる定位−周波数平面上にレベル分布として表現することにより、楽音信号の可視化を図る。なお、レベル分布とは、楽音信号のレベルを所定の分布を用いて展開して得られる分布である。
図12は、本実施形態のUI装置が表示装置121に表示する表示内容を説明するための模式図である。図12(a)は、定位−周波数平面上における入力楽音信号のレベル分布を示す模式図である。この入力楽音信号のレベル分布は、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行されるS31の処理(即ち、各周波数fの定位w[f]と最大レベルML[f]とを算出する処理)の後であって、各取り出し処理(S100,S200)及び指定以外を取り出す処理(S300)を実行する前の段階の信号を用いて算出される。なお、その算出方法については後述する。
図12(a)に示すように、横軸方向を定位軸とし、縦軸方向を周波数軸とする矩形状の定位−周波数平面が、表示装置121の表示画面上の所定領域(表示画面全体又は一部)に表示され、その定位−周波数平面上に入力楽音信号のレベル分布を表示する。即ち、定位−周波数平面上における入力楽音信号のレベル分布のレベルを、定位−周波数平面に対する高さ(表示画面から手前方向に延びる長さ)として表す。
なお、図12(a)では、出力端子が左右に1つずつである場合を示しており、定位−周波数平面の定位軸(x軸)の範囲は、定位の左端(Lch)から右端(Rch)までの範囲であり、この定位−周波数平面における定位軸の中央は、定位の中央(Center)である。表示画面において、この定位軸の範囲(即ち、LchからRchまでの定位範囲)に対し、xmax個の画素(ピクセル)が割り当てられている。
一方、定位−周波数平面の周波数軸(y軸)の範囲は、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの範囲であり、これらの周波数fmin,fmaxの値は、適宜設定することができる。表示画面において、この周波数軸の範囲(即ち、fminからfmaxまでの範囲)に対し、ymax個の画素が割り当てられている。
本実施形態では、定位−周波数平面を表示画面上(即ち、表示画面と平行)に表示するので、該平面に対する高さを表示色の色相を変えることによって表す。なお、モノクロ図面である図12(a)では、便宜上、高さを等高線により表している。
図12(b)は、レベル(即ち、定位−周波数平面に対する高さ)と表示色との関係を示す模式図である。定位−周波数平面に対する高さは、レベルが「0」である場合に最小(高さ=0)であり、レベルが高くなるにつれて次第に高くなり、レベルが「最大値」である場合において最大となる。なお、ここでの「最大値」は、表示用のレベルの「最大値」を意味している。かかる表示用のレベルの「最大値」は、例えば、楽音信号から求められるレベルの最大値に基づく値として設定することができる。あるいは、表示用のレベルの「最大値」を、所定値としたり、ユーザ等により適宜設定できるよう構成してもよい。
図12(b)に示すように、定位−周波数平面に対する高さ(即ち、入力楽音信号のレベル)に対する色を、ゼロである場合の表示色を黒(RGB(0,0,0))とし、高さ(レベル)が高くなるにつれ、表示色を、濃紫→紫→藍→青→緑→黄→橙→赤→濃赤の順で順次RGB値をグラデーション変化させる。モノクロ図面である図12(b)では、レベルが「0」である場合には黒色が対応し、レベルが「最大値」に向かう程、濃紫から濃赤の色変化が対応することを文字により表している。本実施形態では、レベルと表示色とを対応付ける表示色テーブルが予めROM15に記憶されており、算出されたレベル分布に基づいて表示色を設定する。
本実施形態のUI装置は、図12(a)に示すように、定位−周波数平面を用いて入力楽音信号を表現するので、ユーザは、入力楽音信号中に含まれる特定周波数の信号がどの定位に位置するかを視認することができ、入力楽音信号中に含まれるボーカルや楽器の信号を特定し易い。特に、入力楽音信号のレベル分布を定位−周波数平面上に表示するので、ユーザは、入力楽音信号における各周波数帯域の信号がある程度にグループ化された状態を視認することになるため、ボーカルや楽器単位の信号群の存在位置を特定し易い。
本実施形態のUI装置は、図12(a)に示す表示に対し、定位範囲と周波数範囲とで規定される領域(取り出し領域)を、入力装置122を用いて所望に応じて設定することができるように構成されている。UI装置を用いてかかる取り出し領域を設定することにより、エフェクタ1のDSP12において上述した取り出し処理(S100,S200)によって、取り出し領域の定位範囲及び周波数範囲とレベルとを条件として抽出信号を得ることができる。
図12(c)は、取り出し領域を設定した場合における、表示装置112の表示内容を示す模式図である。図12(c)では、図12(a)の表示に対し、ユーザが入力装置122を用いて4つの取り出し領域O1〜O4を設定した場合の表示結果を示している。
取り出し領域の設定は、UI装置における入力装置122を用いて設定する。例えば、マウスの操作によりポインタを所望の位置に置き、ドラッグにより矩形領域を描くことにより設定する。なお、取り出し領域は、矩形領域以外の形状(例えば、円、台形、外周に凹凸のある複雑な形状の閉じたループなど)で設定してもよい。
そして、取り出し領域の設定が確定されると、設定された取り出し領域毎に抽出された抽出信号のレベル分布が算出され、図12(c)に示すように、算出されたレベル分布が取り出し領域毎に表示色を変えて表示される。これにより、抽出信号のレベル分布を、取り出し領域毎に区別させることができる。モノクロ図面である図12(c)では、便宜上、各取り出し領域O2,O3,O4の各レベル分布に対する表示色の相違をハッチングの相違により表している。なお、取り出し領域O1からは抽出される信号が存在しないので、何の変化もない。
各抽出信号のレベル分布は、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行される各取り出し処理(S100,S200)により各取り出し領域から抽出された信号を用いて算出される。ただし、上述した図4では、2つの取り出し領域に対して第1取り出し処理(S100)と第2取り出し処理(S200)を実行する場合であるが、図12(c)のように4つの取り出し領域O1〜O4が設定された場合には、4つの取り出し領域に対する取り出し処理が各々行われる。
また、取り出し領域以外の領域の信号のレベル分布も、指定以外を取り出す処理(S300)により取り出された信号を用いて算出され、上述した各取り出し領域の抽出信号のレベル分布とは異なる表示色で表示される。モノクロ図面である図12(c)では、便宜上、取り出し領域以外の領域のレベル分布の領域にハッチングをかけないことにより、上述した各取り出し領域のレベル分布と表示色が異なっていることを表している。
また、取り出し領域が設定された場合には、各取り出し領域における抽出信号のレベル(即ち、定位−周波数平面に対する高さ)は、各表示色の明度(明るさ)を変えることによって表現する。具体的には、抽出信号のレベルが高い程、表示色の明度を高くする(明るくする)。同様に、取り出し領域以外の領域の信号のレベルもまた、そのレベルが高い程、表示色の明度を高くする。モノクロ図面である図12(c)では、表示色の明度の差を、レベル分布の裾野部分(レベルが低い部分)のみを濃く表示する程度に簡略化して表している。
なお、図12(c)に示す例では、取り出し領域毎に算出された抽出信号のレベル分布が、取り出し領域毎に表示色を変えて表示されるとしたが、複数の取り出し領域が設定されても、各取り出し領域における抽出信号のレベル分布の表示色は、取り出し領域以外の領域の信号のレベル分布とは異なる色にする必要があるが、全て同じ色としてもよい。
このように、本実施形態のUI装置は、取り出し領域が設定されると、取り出し領域毎に抽出信号のレベル分布を他の領域と異なる態様で表示するので、ユーザは、取り出し領域の設定により抽出した抽出信号を他の信号とは区別して認識することができるので、ボーカルや楽器単位の信号群が抽出されているかを確認し易い。
ここで、定位−周波数平面上における楽音信号のレベル分布を算出する方法について説明する。定位−周波数平面上に入力楽音信号のレベル分布を表示する場合、そのレベル分布P(x,y)は、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行されるS31の処理の後であって、各取り出し処理(S100,S200)及び指定以外を取り出す処理(S300)の実行する前の段階の信号を用い、各周波数fにおけるレベルを正規分布として展開して得られる分布(即ち、レベル分布)を全ての周波数について合算することにより算出される。即ち、次の(1)式により算出することができる。
なお、(1)式において、bは、BIN番号、即ち、各周波数fを管理する管理番号として全ての周波数fの各々に対して連番として付与されている番号である。また、lebel[b]は、bの値に対応する周波数fのレベルであり、本実施形態では、その周波数fにおける最大レベルML[f]を使用する。
W(b)は、定位−周波数平面の表示範囲が定位軸方向に画素数xmaxである場合(図12(a)参照)における、定位軸方向の画素位置であり、出力端子が左右に1つずつである場合には(2a)式により算出される。なお、w[b]は、bの値に対応する定位(即ち、w[f])を示し、出力端子が左右に1つずつである場合には、w[f]の値は0から1までの値をとるので、W(b)は(2a)式により算出される。
なお、出力端子が左右に2つずつである場合には、w[f]の値は0.25から0.75までの値をとるので、W(b)は、(2b)式により算出される。
F(b)は、定位−周波数平面の表示範囲が周波数軸方向に画素数ymaxである場合(図12(a)参照)における、周波数軸方向の画素位置である。F(b)は、(3)式により算出することができる。なお、(3)式において、fmin及びfmaxは、それぞれ、表示される定位−周波数平面における周波数軸方向における最低周波数と最高周波数である。
なお、(3)式では、周波数軸を対数軸とする場合に適用される。周波数軸を、周波数に対してリニアな軸としてもよい。かかる場合には、F(b)=((f[b]−fmin)/(fmax−fmin))×ymaxにより、周波数軸方向の画素位置を算出することができる。
また、(1)式におけるcoefは、正規分布であるレベル分布の裾野の拡がり具合又は山の尖り具合(尖度)を決める変数であり、このcoefの値を適宜調整することにより、表示されるレベル分布(即ち、入力楽音信号のレベル分布)におけるピークの分解能を調整することができ、それにより、信号をグループ化することができ、入力楽音信号中に含まれるボーカルや楽器の信号群を判別し易くすることができる。
図13は、定位−周波数平面上における楽音信号のレベル分布の、ある周波数での断面図である。図13(a)〜図13(c)のいずれも、横軸方向が定位を示し、縦軸方向がレベルを示す。図13(a)〜図13(c)は、それぞれ、各周波数のレベル分布P1〜P5の裾野の拡がり具合(即ち、coefの値)の設定を変えた場合における入力楽音信号のレベル分布Pを示している。
具体的に、図13(a)、図13(b)、図13(c)の順で、各周波数のレベル分布P1〜P5の拡がり具合が狭く設定されている。図13(a)〜図13(c)から明らかなように、各周波数のレベル分布P1〜P5の裾野の拡がり具合が大きい程、算出されるレベル分布Pはなだらかな曲線となり、ピークの分解能も低くなる。
各周波数のレベル分布P1〜P5の裾野の拡がり具合が最も大きい図13(a)に示す例では、レベル分布Pのピークは矢印で示す2つである。図13(a)よりも各周波数のレベル分布P1〜P5の裾野の拡がり具合が小さい図13(b)に示す例では、レベル分布P4のピーク付近に肩部が形成される。図13(b)よりもさらに各周波数のレベル分布P1〜P5の裾野の拡がり具合が小さい図13(c)に示す例では、図13(b)に示す例において肩部であった部分がピークとなり、レベル分布P3のピーク付近にさらに肩部が形成される。よって、(1)式におけるcoefの値を調整することにより、各周波数の信号をグループ化したり、個々の信号の位置を明確にしたり、入力楽音信号を自在に表現することができる。
なお、入力楽音信号のレベル分布を(1)式により算出することを説明したが、取り出し領域を設定して抽出信号のレベル分布を表示する場合(即ち、図12(c)の場合)には、bの値としてBIN番号を用いるのでなく、取り出し領域毎に、抽出された信号に対して連番に付した値を使用し、(1)式と同じ式で算出することができる。つまり、各取り出し領域内における抽出信号のレベル分布を全て合算することにより、取り出し領域毎のレベル分布を算出することができる。各抽出信号のレベル分布は、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行される各取り出し処理(S100,S200)により各取り出し領域から抽出された信号を用いて算出される。
次に、図14は、本実施形態のUI装置を用いたエフェクタ1への指示入力を説明するための模式図である。図14(a)は、入力楽音信号から、4つの取り出し領域O1〜O4を設定した場合に定位−周波数平面に表示される表示内容を示す図である。ただし、取り出し領域以外の領域の図示は省略している。図14(a)では、出力端子が左右に2つずつある場合の画面を図示している。そのため、入力楽音信号から抽出された各取り出し領域O1〜O4内の信号は、LchからRchの間(即ち、定位が0.25〜0.75の間)に位置する。
4つの取り出し領域O1〜O4が設定されると、各取り出し領域O1〜O4からそれぞれ抽出された抽出信号のレベル分布S1〜S4が、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行される第1又は第2取り出し処理(S100)と同様の取り出し処理により各取り出し領域から抽出された信号を用いて算出され、取り出し領域O1〜O4毎に異なる表示態様(即ち、表示色を換えて)表示される。なお、モノクロ図面である図14(a)では、各取り出し領域O1〜O4の各レベル分布に対する表示色の相違をハッチングの相違により表している。なお、この図14(a)では、取り出し領域以外の信号(即ち、指定以外を取り出す処理(S300)により取り出された信号)の図示は上述した通り省略している。
図14(b)は、4つの取り出し領域O1〜O4を設定して入力楽音信号から各取り出し領域内の信号を抽出した状態(図14(a)に示す状態)から、取り出し領域O1と取り出し領域O4とを定位−周波数平面上で移動させる場合について説明する図である。なお、この例において、取り出し領域O2と取り出し領域O3に対しては、何の変更もされていない。
本実施形態のUI装置は、表示装置121の表示画面に表示される定位−周波数平面上の取り出し領域を、入力装置122を用いて移動させることにより、移動元の取り出し領域内の抽出信号の定位及び/又は周波数を、その取り出し領域の移動先の領域に応じた定位及び/又は周波数に変更することを、楽音信号処理装置(本実施形態では、エフェクタ1)に指示する。なお、取り出し領域の移動は、UI装置における入力装置122を用いて設定する。例えば、マウスの操作によりポインタを、所望する取り出し領域上に置いて選択し、ドラッグにより所望の位置へ移動させる。
取り出し領域O1のように、周波数を変えずに定位軸に沿って取り出し領域を移動させた場合には、UI装置は、取り出し領域O1内から抽出された抽出信号の定位を、取り出し領域O1´の対応位置(定位)に移動する指示を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に供給する。即ち、本実施形態のUI装置は、取り出し領域を周波数一定で定位軸に沿って移動させることによって、その取り出し領域内から抽出された抽出信号の定位の移動を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に指示することができる。
楽音信号処理装置としてのエフェクタ1が当該指示を受け付けると、エフェクタ1は、取り出し領域に対応する信号処理の中で実行される定位を調整する処理(例えば、第1取り出し処理(S100)により信号を抽出する取り出し領域である場合には、第1信号処理(S110)の中で実行されるS111,S114の処理)において、取り出し領域O1内から抽出された抽出信号の定位を移動させる。
このとき、目標とする定位は、取り出し領域O1内から抽出された各抽出信号の、取り出し領域O1´内における対応位置、即ち、取り出し領域O1内から抽出された各抽出信号の定位を取り出し領域の移動量(取り出し領域O1から取り出し領域O1´までの移動量)だけ移動させた先の定位である。
一方、取り出し領域O4のように、定位を変えずに周波数軸に沿って取り出し領域を移動させた場合には、UI装置は、取り出し領域O4内から抽出された抽出信号の周波数を、取り出し領域O4´の対応位置(周波数)に変更する指示を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に供給する。即ち、本実施形態のUI装置は、取り出し領域を定位一定で周波数軸に沿って移動させることによって、その取り出し領域内から抽出された抽出信号の周波数の変更(即ち、ピッチの変更)を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に指示することができる。
楽音信号処理装置としてのエフェクタ1が当該指示を受け付けると、エフェクタ1は、取り出し領域に対応する信号処理の中で実行される加工処理(例えば、第1取り出し処理(S100)により信号を抽出する取り出し領域である場合には、第1信号処理(S110)の中で実行されるS112,S113,S115,S116の処理)において、取り出し領域O4内から抽出された抽出信号のピッチ(周波数)を、公知の方法により、取り出し領域の移動量に応じたピッチに変更する。
なお、図14(b)では、周波数を変えずに定位軸に沿った方向に移動される取り出し領域O1と、定位を変えずに周波数軸に沿った方向に移動させる取り出し領域O4とを例示したが、取り出し領域を、斜め方向(即ち、定位軸と周波数軸とのいずれにも平行とならない方向)に移動させてもよい。かかる場合には、移動元の取り出し領域内から抽出された各抽出信号は、定位とピッチとの両方が変更されることになる。
また、UI装置は、定位−周波数平面上における取り出し領域を移動した場合には、移動元の取り出し領域内から抽出された抽出信号のレベル分布を、移動先の取り出し領域内に表示させるよう制御する。
具体的に、取り出し領域O1を取り出し領域O1´に移動させた場合には、取り出し領域O1内から抽出された抽出信号のレベル分布S1の表示を、移動先の抽出信号のレベル分布S1´の表示に切り換える。なお、定位を移動させた場合における、移動先の抽出信号のレベル分布は、移動元の取り出し領域から抽出された抽出信号に対し、定位を調整する処理(S111,S114,S211,S214の処理)において、定位を調整するために用いる係数ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´を適用して算出される。あるいは、加工処理(S112,S113,S115,S116,S212,S213,S215,S216)の実行後の信号を元に改めて算出してもよい。
同様に、取り出し領域O4を取り出し領域O4´に移動させた場合には、取り出し領域O4内から抽出された抽出信号のレベル分布S4の表示を、移動先の抽出信号のレベル分布S4´の表示に切り換える。なお、周波数(ピッチ)を移動させた場合における、移動先の抽出信号のレベル分布は、移動元の取り出し領域から抽出された各抽出信号に対し、加工処理(S112,S113,S115,S116など)においてピッチを変更するために適用される数値を適用して算出される。
図14(c)は、4つの取り出し領域O1〜O4を設定して入力楽音信号から各取り出し領域内の信号を抽出した状態(図14(a)に示す状態)から、取り出し領域O1を定位方向に拡大させると共に、取り出し領域O4を定位方向に縮小させる場合について説明する図である。なお、この例において、取り出し領域O2,O3に対しては、何の変更もされていない。
本実施形態のUI装置は、表示装置121の表示画面に表示される定位−周波数平面上における取り出し領域の定位方向の幅を、入力装置122を用いて変更させることにより、その取り出し領域内の抽出信号から形成される音像を拡大又は縮小することができる。
なお、取り出し領域の定位方向の幅の変更(定位方向の拡大又は縮小)は、UI装置における入力装置122を用いて設定する。例えば、マウスの操作によりポインタを、1の取り出し領域の辺や頂点上に置き、ポインタが示す辺や頂点を、取り出し領域の形状を所望に応じて変更する。また、取り出し領域の左右の定位の境界となる辺をそれぞれ選択し、取り出し領域の定位方向の拡大又は縮小を行うために各辺に対して適用する上述した音像拡大関数YL(f),YR(f)を、キーボードやマウスなどを用いて設定するようにしてもよい。
取り出し領域O1の形状が取り出し領域O1´´に変更された場合には、UI装置は、取り出し領域O1内から抽出された各抽出信号を、取り出し領域O1´´の形状に応じて写像(例えば、線形写像)する指示を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に供給する。
楽音信号処理装置としてのエフェクタ1が当該指示を受け付けると、エフェクタ1は、取り出し領域に対応する信号処理の中で実行される音像拡大縮小処理(例えば、第1取り出し処理(S100)により信号を抽出する取り出し領域である場合には、第1信号処理(S110)の中で実行されるS117及びS111の処理、又は、S118及びS112の処理)において、取り出し領域O1内から抽出された各抽出信号を、取り出し領域O1´´内に写像し、それにより、取り出し領域O1内から抽出された抽出信号から形成される音像の拡大を図る。
一方、取り出し領域O4の形状が取り出し領域O4´´に変更された場合には、UI装置は、取り出し領域O4内から抽出された各抽出信号を、取り出し領域O4´´の形状に応じて写像する指示を、楽音信号処理装置(エフェクタ1)に供給する。エフェクタ1は、上述した取り出し領域O1の場合と同様に、取り出し領域に対応する信号処理の中で実行される音像拡大縮小処理(例えば、第2取り出し処理(S200)により信号を抽出する取り出し領域である場合には、第2信号処理(S210)の中で実行されるS217及びS211の処理、又は、S218及びS212の処理)において、取り出し領域O4内から抽出された各抽出信号を、取り出し領域O4´´内に写像する。取り出し領域O4´´は、取り出し領域O4を定位方向に縮小した領域であるので、かかる写像により、取り出し領域O4内から抽出された抽出信号から形成される音像は縮小される。
なお、図14(c)では、取り出し領域O1,O4を定位軸方向に拡大又は縮小する場合(即ち、x軸方向に拡げたり狭めたりする場合)について例示したが、取り出し領域を周波数軸方向に拡大することにより、対象とする取り出し領域のピッチスケールを拡大したり周波数帯域を拡大することができる。同様に、取り出し領域を周波数軸方向に縮小することにより、対象とする取り出し領域のピッチスケールや周波数帯域を狭めることができる。
また、UI装置は、定位−周波数平面上における取り出し領域の定位方向の幅を変更した場合には、写像元の取り出し領域内から抽出された抽出信号のレベル分布を、写像先の領域内に表示させるよう制御する。
具体的に、取り出し領域O1の形状を取り出し領域O1´´に変更した場合には、取り出し領域O1内から抽出された抽出信号のレベル分布S1の表示を、写像先(即ち、取り出し領域O1´´)における抽出信号のレベル分布S1´´の表示に切り換える。同様に、取り出し領域O4の形状を取り出し領域O4´´に変更した場合には、取り出し領域O4内から抽出された抽出信号のレベル分布S4の表示を、写像先(即ち、取り出し領域O4´´)における抽出信号のレベル分布S4´´の表示に切り換える。
なお、この場合、写像先における抽出信号のレベル分布は、写像元の取り出し領域から抽出された各抽出信号に対し、その抽出信号の定位の移動量を算出する処理(S117,S118,S217,S218の処理)の処理の後に実行される定位を調整する処理(S111,S114,S211,S214の処理)において、定位を調整するために用いる係数ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´を適用して算出される。
このように、本実施形態のUI装置では、ユーザは、表示画面の表示(定位−周波数平面上のレベル分布)を見ながら、取り出し領域を所望に応じて自在に設定できると共に、設定した取り出し領域を移動させたり拡大又は縮小させたりすることにより、その取り出し領域内の抽出信号を加工することができる。即ち、ボーカルや楽器の存在領域を抽出するように取り出し領域を設定することにより、ボーカルや楽器の楽音の定位移動や音像の拡大又は縮小を自在かつ容易に行うことができる。
次に、図15(a)を参照して、本実施形態のUI装置が行う表示制御処理について説明する。図15(a)は、第4実施形態のUI装置のCPU14が実行する表示制御処理を示したフローチャートである。なお、この表示制御処理は、ROM15に記憶されている制御プログラム15aにより実行される。
この表示制御処理は、入力楽音信号のレベル分布を表示する指示が入力装置122により入力された場合、取り出し領域の設定が入力装置122により入力された場合、取り出し領域を定位−周波数平面上で移動させる設定が入力装置122により入力された場合、又は、取り出し領域内の音像を拡大又は縮小するための設定が入力装置122により入力された場合に実行される。
表示制御処理は、まず、処理対象の信号(周波数領域の入力楽音信号、抽出信号、定位又はピッチが変更された信号、音像拡大又は縮小後の信号)について、各周波数fと定位w[f]と最大レベルML[f]を取得する(S401)。各周波数f、定位w[f]、及び最大レベルML[f]の値は、DSP12において算出された値を取得してもよいし、DSP12で処理中の対象信号を取得し、取得した対象信号の周波数とレベルとからCPU14において算出してもよい。
次いで、各周波数fについて、周波数fと定位w[f]とに基づいて、表示画面の画素位置を上述した通りに算出し(S402)、各周波数fの画素位置と、その周波数fの最大レベルML[f]とに基づき、(1)式に従い、定位−周波数平面上における各周波数fのレベル分布を、全ての周波数について合算する(S403)。S403では、定位−周波数平面上における各周波数fのレベル分布を算出するための領域が複数ある場合には、各領域毎に当該レベル分布の算出を行う。
S403の処理後、全ての周波数について合算したレベル分布に応じた画像の設定を行い(S404)、設定された画像を表示装置121の表示画面に表示して(S405)、表示制御処理を終了する。なお、S404の処理では、処理対象の信号が周波数領域の入力楽音信号である場合には、図12(b)に示したようなレベルと表示色との関係を用い、図12(a)に示した表示内容となるよう画像を設定する。
また、処理対象の信号が取り出し領域から抽出された抽出信号である場合には、図12(c)に示したように、各取り出し領域毎に表示色が異なり、レベルが高い程、表示色が明るくなるように画像を設定する。また、取り出し領域以外の領域における信号のレベル分布の画像は最下層の画層に形成し、取り出し領域から抽出された抽出信号のレベル分布が優先的に表示されるように画像を設定する。
次に、図15(b)を参照して、本実施形態のUI装置が行う領域設定処理について説明する。図15(b)は、本実施形態のUI装置のCPU14が実行する領域設定処理を示したフローチャートである。なお、この領域設定処理は、ROM15に記憶されている制御プログラム15aにより実行される。
この領域設定処理は、定期的に実行され、入力装置122による取り出し領域の設定受付、取り出し領域の移動の設定受付、又は、取り出し領域の定位方向の拡大もしくは縮小の設定受付がされたかを監視する。まず、入力装置112により取り出し領域の設定が確定されたことにより該設定が受付されたかを判別し(S411)、その判別が肯定される場合には(S411:Yes)、その取り出し領域を楽音信号処理装置としてのエフェクタ1に設定し(S412)、領域設定処理を終了する。S412において取り出し処理が設定されると、エフェクタ1は、設定された取り出し領域内の入力楽音信号を抽出する。
S411の判別が否定される場合には(S411:No)、入力装置112により取り出し領域の移動又は拡大もしくは縮小の設定が確定され、取り出し領域の移動又は拡大もしくは縮小の設定を受け付けたかを判別する(S413)。S413の判別が否定される場合には(S413:No)、領域設定処理を終了する。
一方、S413の判別が肯定される場合には(S413:Yes)、取り出し領域の移動又は拡大縮小を楽音信号処理装置としてのエフェクタ1に設定し(S414)、領域設定処理を終了する。S414において取り出し領域の移動又は拡大縮小が設定されると、エフェクタ1は、その設定に応じて、対象とする取り出し領域内の抽出信号に対する信号処理を実行し、該取り出し領域内の抽出信号の定位の変更(移動)や、ピッチの変更や、該取り出し領域内の抽出信号から形成される音像の拡大又は縮小が行われる。
上述した通り、第4実施形態のUI装置は、楽音信号処理装置としてのエフェクタ1に処理対象として入力された楽音信号(入力楽音信号)から上記式(1)により得られるレベル分布、即ち、入力楽音信号における各周波数fのレベル分布(各周波数におけるレベルを正規分布として展開したもの)を全ての周波数について合算して得られたレベル分布を、定位軸と周波数軸とレベル軸とから構成される三次元座標をレベル軸方向から見たものとして表示装置121の表示画面に表示する。
よって、ユーザは、ある周波数付近の信号であってある定位付近に定位する信号、つまり、ボーカルや楽器単位の信号群をグループ化された状態で視認することができる。これにより、ユーザは、表示画面の表示内容から、ボーカルや楽器単位の存在領域を容易に特定できるので、信号処理の対象として抽出する作業や、その後の処理内容の設定(定位の移動や、音像の拡大又は縮小、ピッチ変更など)を容易に行い得る。
また、本実施形態のUI装置によれば、各取り出し領域に対して行う各信号処理(定位の移動や、音像の拡大又は縮小、ピッチ変更など)の結果も、定位−周波数平面上に表現されるので、ユーザは、信号の合成前に、該処理結果を視覚的に捉えることができ、ユーザのイメージ通りにボーカルや楽器単位の音を加工できる。
次に、図16を参照して、第5実施形態について説明する。なお、この第5実施形態において、上述した第4実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本実施形態のUI装置は、上述した第4実施形態のUI装置と同一に構成される。
上述した第4実施形態のUI装置は、定位−周波数平面上における楽音信号のレベル分布として表現することにより、楽音信号の可視化を図るものであったが、この第5実施形態のUI装置は、定位−周波数平面上における、楽音信号の周波数fと定位w[f]とに応じた位置に、所定の図形を、楽音信号のレベルに応じた態様で表示することにより、楽音信号の可視化を図る。
図16は、本実施形態のUI装置が表示装置121に表示する表示内容を説明するための模式図である。図16(a)は、取り出し領域を設定した場合に、本実施形態のUI装置が、表示装置112に表示する表示内容を示す模式図である。
本実施形態のUI装置は、入力楽音信号、入力楽音信号を構成する各周波数帯域の信号について、信号の周波数fと定位w[f]とにより決まる定位−周波数平面上の位置に、その信号のレベル(最大レベルML[f])に応じて半径が異なる円を表示する。
ここで、取り出し領域が設定されていない場合には、入力楽音信号を構成する各周波数fの信号は、レベルに応じて大きさ(円の半径)が異なるものの、全て同じ表示色で表示される。即ち、取り出し領域が設定されていない場合には、図16(a)に示す画面と比べ、取り出し領域O1が表示されず、定位−周波数平面内の大小全ての円が同じデフォルトの表示色(例えば、黄色)で表示された画面となる。なお、モノクロ図面である図16(a)及び図16(b)では、デフォルトの表示色で表示された円を白抜きの円で表している。
なお、図16(a)に示す例では、定位−周波数平面上における楽音信号の周波数fと定位w[f]とに応じた位置に表示する図形を円としたが、図形の形状は円に限らず、三角や四角や星形などの各種図形を適用できる。また、図16(a)に示す例では、信号のレベルに応じて円の半径(大きさ)を変えるものとしたが、信号のレベルに応じた表示態様の違いは図形の大きさの違いに限らず、表示する図形は全て同じ大きさであって、信号のレベルに応じて該図形の塗り潰し色(色相)を変えたり、塗り潰し色が同じであるが信号のレベルに応じて濃淡や明るさを変えるようにしてもよい。さらに、図形の大きさと塗り潰し色との組み合わせ等、複数の要素の組み合わせを変えることによって信号のレベルを表すようにしてもよい。
入力装置122を用いて取り出し領域O1が設定されると、定位−周波数平面内に表示されている全ての円のうち、上述したメイン処理部S30(図4参照)の中で実行される取り出し処理(例えば、第1取り出し処理(S110))により、取り出し領域から抽出された抽出信号に対応する円の表示色が、図16(a)に示すように変更される。図16(a)に示す例では、取り出し領域O1内から抽出された信号に対応する円にハッチングを付加することにより、表示色が変更されたことを表している。
なお、図16(a)に示す例では、抽出信号が取り出し領域から抽出された場合には、抽出信号に対応する図形の表示色をデフォルトの表示色(例えば、黄色)から変化させることにより、抽出信号と、その他の信号(即ち、取り出し領域以外の領域内の入力楽音信号)とを区別させたが、表示色の違いに限らず、デフォルトの表示色と色は同一であるが濃度や明るさに応じて抽出信号とその他の信号とを区別可能にしてもよい。また、抽出信号をその他の信号から区別可能な表示形態で表示してもよい。例えば、抽出信号を示す図形を、その他の信号を示す図形(図16(a)に示す例では、円)から、例えば、三角や星形などの他の図形に変更して表示したり、抽出信号を示す図形をその他の信号を示す図形から変更すると共に表示色を変更して表示する。
図16(a)に示す例では、設定される取り出し領域を1つ(即ち、取り出し領域O1のみ)としたが、取り出し領域が複数ある場合には、各取り出し領域からの抽出信号に対応する円の表示色を、デフォルトの表示色(取り出し領域が設定されていない入力楽音信号に対して使用される表示色)から変更する。例えば、取り出し領域O1と、もう1つ取り出し領域が設定された場合に、取り出し領域O1からの抽出信号に対応する円の表示色をデフォルトの色とは異なる青色とし、他方の取り出し領域からの抽出信号に対応する円の表示色をデフォルトの色とは異なる赤色とする。
このように、1又は複数の取り出し領域(図16(a)の場合には、取り出し領域O1)内から抽出された信号と、そうでない信号(即ち、取り出し領域O1内から抽出されない信号)とをユーザに識別させ易くすることができる。よって、設定された取り出し領域から抽出された信号に対応する図形(図16(a)の場合には、円)の着色具合により、ある定位における信号の固まり具合をユーザに認識させることができる。これにより、ボーカルや楽器の存在領域をユーザに判別させ易くすることができる。
なお、取り出し領域が複数ある場合には、取り出し領域毎に、抽出信号に対応する円の表示色を変更することにより、取り出し領域毎に抽出信号を区別させることができる。この場合、各取り出し領域からの抽出信号に対応する円の表示色を、定位−周波数平面において取り出し領域を描く枠の色や、該取り出し領域内を着色する色に合わせた色とすることにより、取り出し領域と抽出信号との対応をユーザに分かり易くすることができる。
図16(b)は、取り出し領域から信号を抽出するための条件のうち、最大レベルの下限の閾値を上げた場合における、表示装置112に表示される表示内容を示す模式図である。取り出し領域O1から信号を抽出するための条件の1つである最大レベルの下限の閾値を上げた場合、最大レベルML[f]が該閾値より低い信号は、抽出の対象から外れて抽出されない。かかる場合には、図16(b)に示すように、取り出し領域O1内に表示される円のうち、所定の半径より小さい円の表示色は変更されず、デフォルトの表示色のままとされる。
よって、最大レベルML[f]が比較的高い信号に対応する比較的大きな半径の円の表示色だけが、デフォルトの表示色から変更されるので、ノイズなどのレベルの低い信号と、楽器やボーカルの楽音に基づく比較的レベルの高い信号との視覚的な区別を容易にできる。そのため、ユーザは、入力楽音信号中に含まれる楽器やボーカルの楽音の信号の固まり具合を認識し易く、その結果、ボーカルや楽器の存在領域も判別し易い。
次に、図17を参照して、本実施形態のUI装置が行う表示制御処理について説明する。図17は、第5実施形態のUI装置のCPU14が実行する表示制御処理を示したフローチャートである。なお、この表示制御処理は、ROM15に記憶されている制御プログラム15aにより実行される。
この表示制御処理は、第4実施形態の表示制御処理が起動する条件と同じ条件で起動し、まず、第4実施形態の表示制御と同様に、処理対象の信号について、各周波数fと定位w[f]と最大レベルML[f]を取得し(S401)、各周波数fについて、周波数fと定位w[f]とに基づいて、表示画面の画素位置を算出する(S402)。次いで、S402において各周波数fに対して算出した画素位置に、最大レベルML[f]に応じた半径の円を設定し(S421)、設定された画像を表示装置121の表示画面に表示して(S405)、表示制御処理を終了する。
上述した通り、第5実施形態のUI装置では、楽音信号処理装置としてのエフェクタ1に処理対象として入力された楽音信号(入力楽音信号)における各周波数fの信号が、定位−周波数平面上における(周波数f,定位w[f])の位置に、所定の図形(本実施形態では、円)を、各周波数fに対応する信号の最大レベルML[f]に応じた大きさ(本実施形態では、円の半径)で表示される。
取り出し領域を設定すると、該取り出し領域内から抽出された抽出信号に対応する図形の表示態様(本実施形態では、色)が、抽出前に着色されていたデフォルトの表示態様から変更される。よって、ユーザは、設定された取り出し領域から抽出された抽出信号を、抽出前とは異なる表示態様で視認することができ、ボーカルや楽器単位の信号群として適切な信号が抽出されているかを判別し易い。よって、ユーザは、各取り出し領域から抽出された抽出信号に対する表示態様から、所望のボーカルや楽器単位の信号群の存在位置の特定を容易に行うことができるので、それにより、所望のボーカルや楽器単位の信号群を適切に抽出できる。
また、本実施形態のUI装置によれば、各取り出し領域に対して行う各信号処理(定位の移動や、音像の拡大又は縮小、ピッチ変更など)の結果も、定位−周波数平面上に表現されるので、ユーザは、信号の合成前に、該処理結果を視覚的に捉えることができる。ユーザのイメージ通りにボーカルや楽器単位の音を加工できる。
以上、各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記第1及び第2実施形態では、第1取り出し処理(S100)および第2取り出し処理(S200)における抽出信号の抽出に、周波数、定位および最大レベルが一組となった条件を使用したが、これに限られるものではない。即ち、抽出信号を抽出する条件として、周波数だけ、定位だけ、または、最大レベルだけを用いても良い。或いは、これらを適宜組み合わせても良い(例えば、周波数と定位とを組み合わせても良い)。
例えば、抽出信号を抽出する条件として、周波数だけを使用する場合には、第1取り出し処理(S100)内のS101の判定内容を、「周波数[f]が、予め設定された第1周波数範囲内であるか否か」へ変更すればよい。また、例えば、抽出信号を抽出する条件として、定位だけを使用する場合には、第1取り出し処理(S100)内のS101の判定内容を、「定位w[f]が、予め設定された第1設定範囲内であるか否か」へ変更すれば良い。また、例えば、抽出信号を抽出する条件として、最大レベルだけを使用する場合には、第1取り出し処理(S100)内のS101の判定内容を、「最大レベルML[f]が、予め設定された第1設定範囲内であるか否か」へ変更すれば良い。ここで、S101の判定内容変更に伴い、第2取り出し処理(S200)内のS201の判定内容を変更する場合には、S101の判定内容の変更と同様の変更を行えば良い。
なお、上記第1及び第2実施形態では、抽出信号を抽出する条件として、周波数、定位および最大レベルが一組となった条件を使用しているので、条件外に中心周波数を持つノイズや、条件を超えたレベルを持つノイズ、或いは、条件を下回ったレベルを持つノイズから受ける影響を抑制することができる。これにより、抽出信号を正確に抽出することができる。
上記第1及び第2実施形態のS101,S201では、周波数f、定位w[f]、および最大レベルML[f]がそれぞれ予め設定された範囲内であるか否かを判定したが、周波数f、定位w[f]、および最大レベルML[f]のうち少なくとも2つを変数とする任意の関数を用い、その関数により得られる値が設定された範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。これにより、より複雑な範囲を設定することができる。
上記各実施形態で実行される各加工処理(S112,S113,S115,S116,S212,S213,S215,S216,S312,S313,S315,S316)では、ピッチ変更、レベル変更、リバーブ付与が行われたが、これらの変更やリバーブ付与を、全ての加工処理で同一の内容に設定しても良いし、各加工処理の内容が異なっていてもよい。例えば、第1信号処理における加工処理(S112,S113,S115,S116)と、第2信号処理における加工処理(S212,S213,S215,S216)と、指定外信号処理における加工処理(S312,S313,S315,S316)とで、それぞれ異なる内容に設定しても良い。なお、第1信号処理、第2信号処理、及び指定外信号処理における各加工処理の内容が異なる場合には、各条件毎に抽出された各抽出信号に対して、異なる信号処理を施すことができる。
上記第1及び第2実施形態では、左右2チャンネルの楽音信号を、信号処理を施す対象としてエフェクタ1に入力する構成としたが、左右に限らず、上下又は前後、あるいは任意の2方向に定位する2チャンネルの楽音信号を、信号処理を施す対象としてエフェクタ1に入力する構成であってもよい。また、エフェクタ1に入力する楽音信号を、3チャンネル以上の楽音信号としてもよい。エフェクタ1に3チャンネル以上の楽音信号を入力する場合には、各チャンネルの定位に応じた定位w[f](定位情報)を算出し、算出された各定位w[f]が設定範囲に収まるか否かを判定すればよい。例えば、左右の定位w[f]に加えて、上下及び/又は前後の定位を算出し、算出された左右の定位w[f]と上下及び/又は前後の定位が設定範囲に収まるか否かを判定する。左右前後4チャンネルの楽音信号を例にすると、それぞれ対となる2組の楽音信号(左右、前後)の定位を算出し、算出された左右の定位と前後の定位が設定範囲に収まるか否かを判定する。
上記各実施形態では、取り出し処理(S100,S200)において、設定範囲との比較を行う各信号のレベル(特に、第1及び第2実施形態では最大レベルML[f])として、楽音信号の振幅を用いる構成としたが、楽音信号のパワーを用いる構成としてもよい。例えば、上記第1及び第2実施形態では、INL_Lv[f]を求めるために、IN_L[f]信号の複素式における実数部を2乗した値と、IN_L[f]信号の複素式における虚数部を2乗した値とを足し合わせ、その足し合わせた値の平方根を算出するものとしたが、例えば、IN_L[f]信号の複素式における実数部を2乗した値と、IN_L[f]信号の複素式における虚数部を2乗した値とを足し合わせることにより、INL_Lv[f]を求めてもよい。
上記第1及び第2実施形態では、定位w[f]を左右チャンネル信号のレベルの比に基づいて算出する構成としたが、左右チャンネル信号のレベルの差に基づいて算出する構成としてもよい。
上記第1及び第2実施形態では、定位w[f]を2チャンネルの楽音信号から各周波数帯域毎に一意的に求めたが、各周波数帯域においてそれぞれ求めた定位に基づいて、連続する複数の周波数帯域をグループとして、そのグループ内での定位のレベル分布を求め、その定位のレベル分布を定位情報(定位w[f])として用いてもよい。かかる場合、例えば、定位が所定のレベル以上である範囲が、設定範囲(方向範囲として設定された範囲)に収まるか否かを判定することにより、所望する楽音信号を抽出することができる。
上記第1及び第2実施形態では、S111,S114,S211,S214,S311,S314において、各取り出し処理(S100,S200,S300)により抽出された左右の楽音信号(即ち、抽出信号)から求められる定位w[f]と目標とする定位とに基づいて、抽出信号によって形成される定位を調整する構成とした。これに換えて、抽出された左右の楽音信号から、例えばそれらの信号を単に足し合わせる等によってモノラルの楽音信号を合成し、合成したモノラルの楽音信号に対し、目標とする定位に基づいて、抽出信号によって形成される定位を調整する構成としてもよい。
また、上記第2実施形態では、音像を拡大(又は縮小)するための定位の移動先を目標とする定位として、係数ll,lr,rl,rr及び係数ll´,lr´,rl´,rr´を算出したが、音像を拡大(又は縮小)するための定位の移動先と、音像そのものの移動(取り出し領域の移動)による移動先とを組み合わせた移動先を目標とする定位としてもよい。
上記各実施形態では、各取り出し処理(S100,S200,S300)により抽出信号及び指定以外の信号をそれぞれ取り出した後、抽出信号及び指定以外の信号に対して各信号処理(S110,S210,S310)を施し、その後、得られた各信号(即ち、処理後の抽出信号及び指定以外の信号)を出力チャンネル毎に合成して、合成後の信号(OUT_L1[f]、OUT_R1[f]、OUT_L2[f]、およびOUT_R2[f])を得、その後、これらの合成後の信号に対してそれぞれ逆FFT処理(S61,S71,S81,S91)を施すことにより、出力チャンネル毎の時間領域の信号を得る構成とした。
これに換えて、各取り出し処理(S100,S200,S300)により抽出信号及び指定以外の信号をそれぞれ取り出した後、抽出信号及び指定以外の信号に対して各信号処理(S110などに相当する処理)を施し、その後、得られた各信号(即ち、処理後の抽出信号及び指定以外の信号)に対してそれぞれ逆FFT処理(S61などに相当する処理)を施すことにより時間領域の信号に変換し、その後、得られた各信号(即ち、時間領域で表された処理後の抽出信号及び指定以外の信号)を出力チャンネル毎に合成することにより、出力チャンネル毎の時間領域の信号を得る構成としてもよい。かかる場合もまた、上述した実施形態と同様に、周波数軸上での信号処理が可能である。
あるいは、各取り出し処理(S100,S200,S300)により抽出信号及び指定以外の信号をそれぞれ取り出した後、抽出信号及び指定以外の信号に対してそれぞれ逆FFT処理(S61などに相当する処理)を施すことにより時間領域の信号に変換し、その後、得られた各信号(即ち、時間領域で表された抽出信号及び指定以外の信号)に対して各信号処理(S110などに相当する処理)を施し、その後、得られた各信号(即ち、時間領域で表された処理後の抽出信号及び指定以外の信号)を出力チャンネル毎に合成することにより、出力チャンネル毎の時間領域の信号を得る構成としてもよい。
上記第1及び第2実施形態では、左右チャンネル信号から抽出信号を抽出するための条件の1つとして、最大レベルML[f]を用いる構成としたが、最大レベルML[f]の代わりに、複数のチャンネル信号における各周波数帯域のレベルの和や平均などを抽出条件として用いる構成としてもよい。
上記各実施形態では、抽出信号を取り出すための取り出し処理を、2つ(第1取り出し処理(S100)、第2取り出し処理(S200))としたが、3つ以上の取り出し処理を設ける構成としてもよい。即ち、抽出条件(例えば、周波数、定位および最大レベルが一組となった条件)を2つでなく、3つ以上とする構成としてもよい。また、抽出信号を取り出すための取り出し処理を3つ以上とした場合に、その数に応じて信号処理を増やす構成としてもよい。
上記各実施形態では、指定以外を取り出す処理(S300)を設け、左右チャンネル信号やモノラル信号などの入力楽音信号における抽出信号以外の信号を取り出す構成としたが、指定以外を取り出す処理(S300)を設けない構成としてもよい。即ち、入力楽音信号における抽出信号以外の信号は取り出さない構成としてもよい。指定以外を取り出す処理(S300)を設けない場合には、指定以外信号処理(S310)も設けないようにすればよい。
上記各実施形態では、左右1組の出力端子を、2組(即ち、OUT1_L端子とOUT1_R端子との組、及び、OUT2_L端子とOUT2_R端子との組)としたが、出力端子の組は、1組であってもよいし、3組以上であってもよい。例えば、5.1チャンネルなどであってもよい。出力端子の組が1組である場合には、各信号処理において各チャンネル信号の分配を行わず、図7(a)及び(b)のグラフにおける0.25〜0.75の範囲を0.0〜1.0に(つまり、2倍に)引き伸ばしたグラフを用いて、S111,S211,S311の計算を行うようにすればよい。
上記各実施形態の各信号処理(S110,S210,S310)では、抽出した楽音(抽出信号)の定位の変更と、ピッチ変更、レベル変更、及びリバーブ付加から構成される加工処理を行うものとしたが、抽出した楽音に対して行う信号処理は常時同じ処理でなくてもよい。即ち、抽出条件毎に信号処理の実行内容を適宜取捨選択し、抽出条件毎に信号処理の実行内容が異なるように構成してもよい。また、信号処理の内容として、定位の変更と、ピッチ変更、レベル変更、及びリバーブ付加に加えて、その他の公知の信号処理を行ってもよい。
上記各実施形態では、係数ll,lr,rl,rr,ll´,lr´,rl´,rr´が、図7(a)及び(b)に示すように、横軸に対して直線的に変化するものとしたが、増加又は減少する部分については、直線的増加又は直線的減少でなく、曲線(例えば、サインカーブ)的な増加又は減少としてもよい。
上記各実施形態では、窓関数としてハニング窓を用いたが、ハミング窓やブラックマン窓を用いてもよい。
上記第2及び第3実施形態では、音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)が、周波数fに依存して拡大具合又は縮小具合が異なる関数、即ち、周波数fに応じて音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)の値が変化する関数としたが、周波数fの変化に依存することなく音像拡大関数YL(f)及び音像拡大関数YR(f)の値が一定である関数であってもよい。つまり、BtmL=TopL、かつ、BtmR=TopRであれば、音像拡大YL(f)及びYR(f)は、拡大又は縮小具合が周波数fに依存しない関数となるので、そのような関数を用いてもよい。
また、上記第2実施形態では、音像拡大関数をYL(f)及びYR(f)、即ち、周波数fの関数としたが、基準定位(上記実施形態では、取り出し領域の定位の中心)からの抽出信号の定位の差分(即ち、抽出信号の、panCからの離れ具合)に応じて、拡大具合(又は縮小具合)が決まる関数、例えば、中心に近い程、拡大具合が大きくなる関数としてもよい。かかる場合には、図8に示す図の横軸(周波数f)を、基準定位であるpanCからの抽出信号の定位の差分とすることにより、上記第2実施形態で行った計算と同様に計算できる。また、周波数f及び基準定位(panC)からの抽出信号の定位の差分とを組み合わせ、周波数fと基準定位(panC)からの抽出信号の定位の差分とに応じて拡大具合(又は縮小具合)を決める関数を用いてもよい。
なお、上記第2及び第3実施形態では、音像拡大関数をYL(f)及びYR(f)、即ち、周波数fの関数としたが、処理対象の抽出信号が時間領域の信号である場合には、周波数fの関数に換えて、時間tに依存する音像拡大関数を用いればよい。
また、上記第3実施形態では、モノラルの入力楽音信号に対し、一旦、予め規定された連続する周波数範囲毎に交互に分配する準備処理を行った後に、音像拡大縮小処理を行うことについて説明したが、例えば、左右2チャンネルの楽音信号を単に足し合わせる等によってモノラルの楽音信号を合成し、合成したモノラルの楽音信号に対し、第3実施形態と同様の準備処理を行い、その後に音像拡大縮小処理を行ってもよい。
また、上記第3実施形態では、第1の取り出し領域O1及び第2の取り出し領域O2の定位範囲を等しいものとしたが、取り出し領域毎に定位範囲が異なっていてもよい。また、取り出し領域における左方向の境界(panL)と右方向の境界(panR)とが中央(panC)に対して非対称となるよう設定してもよい。
また、上記第4及び第5実施形態では、UI装置を制御する制御部をエフェクタ1内に設ける構成としたが、エフェクタ1とは別体のコンピュータ(パーソナルコンピュータなど)に設ける構成としてもよい。かかる場合には、制御部としてのコンピュータをエフェクタ1に接続すると共に、該コンピュータに表示装置121及び入力装置122を接続する。あるいは、表示装置121に対応する表示画面と入力装置122に対応する入力部とを有するコンピュータをUI装置とし、エフェクタ1に接続してもよい。
また、上記第4及び第5実施形態では、表示装置121及び入力装置122を、エフェクタ1とは別体としたが、表示画面及び入力部を有するエフェクタであってもよい。かかる場合には、表示装置121に表示させた内容をエフェクタ内の表示画面に表示させ、入力装置122から受け付けた入力情報をエフェクタの入力部から受け付けるようにすればよい。
また、上記第4実施形態では、取り出し領域O1や取り出し領域O4を移動させた場合に、レベル分布S1,S4の表示を、移動先の抽出信号のレベル分布S1´,S4´の表示に切り換えることを例示したが(図14(b)参照)、移動元の領域(即ち、取り出し領域O1,O4)内に表示されるレベル分布S1,S4を残しつつ、移動先の抽出信号のレベル分布S1´,S4´を表示するように構成してもよい。同様に、取り出し領域O1や取り出し領域O4を拡大又は縮小させた場合に、レベル分布S1,S4の表示を、写像先の抽出信号のレベル分布S1´,S4´の表示に切り換えることを例示したが(図14(c)参照)、写像元のレベル分布S1,S4を残しつつ、写像先の抽出信号のレベル分布S1´,S4´を表示するように構成してもよい。
かかる場合には、移動元/写像元のレベル分布の表示と、移動先/写像先のレベル分布の表示とを、例えば、互いの表示色を同じ色相とする等によって関連付けをすることが好ましい。その際、移動元/写像元のレベル分布の表示と、移動先/写像先のレベル分布とを、色の濃淡やハッチングの有無等によって互いに区別可能にすることが好ましい。例えば、レベル分布S1及びレベル分布S1´の表示色を同じ色相とする一方で、レベル分布S1´の表示色をレベル分布S1の表示色より濃くすることにより、レベル分布S1とレベル分布S1´とに関連を持たせつつ、移動元又は写像元のレベル分布であるか、移動先又は写像先のレベル分布であるかを区別可能にすることが好ましい。
また、上記第4実施形態では、確率分布としての正規分布を用いてレベルを展開するように構成したが、t分布やガウス分布などの各種確率分布や、円錐型や釣鐘型などの任意の分布を用いてレベルの展開を行ってもよい。
また、上記第4実施形態では、入力楽音信号における各周波数fのレベル分布を合算して算出される(即ち、(1)式により算出される)レベル分布を、定位−周波数平面上に表示する構成としたが、各周波数fのレベル分布を表示する構成としてもよい。
また、上記第4実施形態では、レベル分布に応じた表示を行い、上記第5実施形態では、レベルに応じて大きさの異なる図形を表示する構成としたが、レベルに応じてレベルの違いを識別可能にする表示はこれらの表示に限らず、任意の表示方法を適用できる。例えば、各周波数fの信号のうち、同程度のレベルを結び等高線のような表示を行ってもよい。
また、上記第4及び第5実施形態では、定位軸及び周波数軸からなる二次元平面を表示画面に表示することにより入力楽音信号のレベルを表示する構成としたが、定位軸と周波数軸とレベル軸とからなる三次元座標系を表示画面に表示する構成としてもよい。かかる場合、入力楽音信号のレベル分布又はレベルが、三次元座標系における例えば高さ方向(z軸方向)として表現することができる。
また、上記第4及び第5実施形態では、取り出し領域による信号の抽出や、取り出し領域の移動による抽出信号の移動や、取り出し領域の拡大又は縮小による抽出信号の写像を行った場合に、処理後の信号のレベル分布やレベルに応じた図形を表示させる構成とした。これに換えて、各領域(取り出し領域、移動先の領域、拡大又は縮小された領域)の境界線のみを表示し、処理後の信号のレベル分布やレベルに応じた図形の表示を省略してもよい。
なお、取り出し領域の移動を行った場合には、移動前の領域(即ち、元の取り出し領域)の境界線と移動後の領域の境界線とを同時に表示してもよく、同様に、取り出し領域の拡大又は縮小を行った場合に、拡大又は縮小前の領域(即ち、元の取り出し領域)の境界線と拡大又は縮小後の領域の境界線とを同時に表示してもよい。この場合、元の取り出し領域の境界線と移動後/拡大又は縮小後の領域の境界線とを互いに区別可能に表示することが好ましい。