高炉の操業で鉄源として使用される焼結鉱は、一般に下記の方法により製造される。焼結鉱の原料は粉鉄鉱石、副原料および炭材であり、その多くは銘柄毎にヤードに野積みされる。副原料とは、SiO2を含有する原料、CaOを含有する原料、MgOを含有する原料などが該当し、鉄鉱石、炭材、および返鉱を除く原料を意味する。炭材とは、コークス、石炭などが該当し、フリーカーボン(以下、「F.C.」とも略記する)源を含有する原料を意味する。また、製鉄所内で発生するダストやスラグなどは雑原料として用いられ、この雑原料はフリーカーボンを含有するが、副原料に分類される。
これらの個々の原料は、予め計画された配合比率にしたがって原料槽から切り出され、混合される。このように混合された原料を「焼結原料」と称す。焼結原料は、混合された直後の水分値が通常3.0質量%〜6.0質量%程度であり、この水分値を初期水分と称す。初期水分は、晴天の日が続けばヤードに保管された鉄鉱石、副原料や炭材が乾燥するのに伴って低くなり、一方、雨天の日が続けばヤードに保管された鉄鉱石、副原料や炭材が雨に濡れるのに伴って高くなるため、日々変動している。
このように初期水分が日々変動する焼結原料は、通常6.0質量%〜7.5質量%程度の水分値になるように水分が添加され、混合、調湿および造粒処理が施される。ここで、水分が添加された後の焼結原料の全水分値を「造粒水分」と称す。水分の添加、混合、調湿および造粒処理を経る過程で、種々の粒径の粒子が水分を介して合体して擬似的な粒子が形成される。形成された擬似的な粒子を「擬似粒子」と称す。通常、擬似粒子は、粒子径が1mm以上の原料を核粒子として、その周囲に粒子径が0.25mm以下の原料が付着することにより、粒子径が2mm〜4mm程度に形成されたものである。
擬似粒子は、サージホッパーに装入された後、サージホッパーの下方からロールフィーダによって切り出され、スローピングシュートを介して焼結機のパレット上へ装入される。擬似粒子は、パレット上で焼結原料充填層(以下、「原料層」とも略記する)を形成し、通常、その原料層の層厚は500〜700mm程度に調整される。
こうして形成された原料層は、焼結機の点火炉においてその表面に着火される。この着火により、原料層内に存在する擬似粒子中の炭材の燃焼が開始し、炭材の燃焼部分は燃焼帯を形成する。原料層は、給鉱側から排鉱側へ移動する間、下方から吸引されているので、空気が原料層の上部から下部に向かって流通する。これにともなって、上記の燃焼帯は原料層の上部から下部に向かって次第に移行する。なお、燃焼帯において発生する燃焼熱は、燃焼帯が上部から下部に移行するにつれて蓄積されるので、一般に、原料層の上部では熱不足になりやすく、これに対して下部では熱過剰になりやすい。
このような燃焼帯の移行にともない、燃焼熱によって周囲の擬似粒子が昇温されて、擬似粒子が部分的に溶融し、その融液により擬似粒子間が架橋されて焼結し、原料層は最終的に焼結ケーキを形成する。このようにして形成された焼結ケーキは、焼結機の排鉱部から排鉱される。上記のように、原料層は、焼結機のパレット上に装入されて以降、焼結ケーキを形成し、冷却後、排鉱されるまでの間に、昇温、焼結反応および冷却の各操作を受けるので、それらの条件により焼結成品の品質は左右される。
このような焼結鉱の製造方法において、焼結原料への水分の添加は、一般的に、焼結原料を運搬するベルトコンベアや、焼結原料を混合し造粒するドラムミキサーで行われ、焼結原料の造粒水分は、その添加量を増減させることにより調整される。
このとき、造粒水分が少な過ぎる場合、原料の造粒(擬似粒子形成)が進行せず、原料層の通気性が悪化し、生産性を低下させる。一方、造粒水分が多過ぎる場合、水分蒸発に伴い気化熱が増加することや、熱源である粉コークスの着火が起こらなかったり遅れることで、通気性の悪化および成品歩留の低下が生じ、生産性を低下させる。従って、焼結原料の造粒水分には、通気性や燃焼前線降下速度(FFS)を踏まえ、最適値が存在する。
しかしながら、焼結原料の造粒水分の最適値は、例えば、焼結原料中に配合した原料銘柄や配合比率、焼結原料の初期水分によって変動することが知られている。そこで、造粒水分を、前述した6.0質量%〜7.5質量%程度の範囲内で、焼結原料中に配合した原料銘柄や配合比率、焼結原料の初期水分等を勘案して経験的に調整する方法が一般的である。本発明においては、これらの調整を加えて造粒水分を決定する方法を総称して従来法と呼ぶ。
焼結原料の造粒水分を最適にして焼結鉱の生産性を向上させるために、従来から、造粒時の水分を決定する方法や、造粒時の水分を制御する方法が種々検討されてきた。造粒時の水分は、焼結原料を構成する個々の原料(鉄鉱石、炭材、副原料および返鉱)の水分吸収性と、原料粒度に強く依存すると考えられている。造粒時の最適な水分を決定する方法として、鉄鉱石の遠心脱水後に残留する水分(吸収水分)と粒度構成から最適水分量を推定するフィードフォーワード制御方法と、オンラインにおいて焼結原料の一部を採取し通気性を測定し最適水分量を決定するフィードバック制御方法が提案されている。
フィードフォーワード制御方法を用いた従来技術は、例えば、非特許文献1、特許文献1〜3に開示されている。
非特許文献1では、造粒時の添加水分量を変化させた場合、その増加に伴い、添加水分が鉱石粒子に吸収され粒子表面でのバインダー効果が低く造粒が進行しない吸収域、鉱石粒子内への水分吸収が飽和し粒子表面を濡らした水分がバインダー効果を生じ造粒が進行する造粒域、および、過剰な水分が造粒粒子間の空隙を埋めるために原料層を通過する空気の流れを妨げる過剰域に分類することができると論述されている。
そして、造粒域において、鉱石と水との相互作用は鉱石の種類に関わらず粒子表面で生じる現象なので、造粒水分が同一である時、造粒粒子径及び通気性の違いは、鉱石銘柄の粒子内への吸収水分の違いに起因する。そこで、1mm〜2mmに整粒した鉱石を一昼夜水中に浸漬させた後、遠心脱水機にて粒子表面の付着水を除去し、粒子内の吸収水分を測定し、添加水分から鉱石銘柄特有の吸収水分を差し引いた水分が造粒に寄与する水分であると定義している。
しかし、非特許文献1に記載の方法で求めた吸収水分は、過剰の水の中に原料を一昼夜浸漬させており、原料の吸収水分が飽和している状態と考えられる。従って、非特許文献1に記載の方法では、ドラムミキサーにおける水分添加状態と大きく異なり、焼結原料の水分の吸収状態を模擬しているとは考え難く、初期水分の影響についても全く考慮されていない。また、非特許文献1に記載の方法では、吸収水分の測定には1mm〜2mmに整粒した鉱石を使用しているため、ペレットフィードなどのように大部分が0.25mm以下の原料について、吸収水分を求めることができない。
特許文献1では、焼結原料を構成する各鉱石銘柄の「吸収水分」および「造粒前粒度分布」に基づき、水分添加後の前記焼結原料の各鉱石銘柄が付着力を有する水分濃度の下限値である臨界水分濃度を算出し、各鉱石銘柄の臨界水分濃度を加重平均し、造粒時の水分の添加量を制御する方法が提案されている。
しかし、特許文献1に記載の方法では、原料の吸収水分は飽和している状態であり、ドラムミキサーにおける水分添加状態と大きく異なり、焼結原料の水分の吸収状態を模擬しているとは考え難く、初期水分の影響についても全く考慮されていない。
特許文献2では、焼結原料の造粒時の目標水分を、焼結原料を80Gの遠心力で15分間以上遠心脱水した時に残留する水分(吸収水分)とし、各銘柄の吸収水分を加重平均して算出する方法が提案されている。
しかし、特許文献2に記載の方法では、過剰の水の中に原料を浸漬させており、原料の吸収水分が飽和している状態であると考えられることから、ドラムミキサーにおける水分添加状態と大きく異なり、焼結原料の水分の吸収状態を模擬しているとは考え難く、初期水分の影響についても全く考慮されていない。
特許文献3では、乾燥した鉄鉱石原料を常圧下で20分間水中に浸漬した後、水分が付着した前記鉄鉱石原料の重量の80倍の遠心力を15分間与えて脱水した場合に除去される含水分量を用いて、この含水分量の2.5質量%以上4.0%質量以下の量を加えた水を供給する方法が提案されている。
しかし、特許文献3に記載の方法においても、過剰の水の中に原料を浸漬させており、原料の吸収水分が飽和している状態であると考えられることから、ドラムミキサーにおける水分添加状態と大きく異なり、焼結原料の水分の吸収状態を模擬しているとは考え難く、初期水分の影響についても全く考慮されていない。
一方、フィードバック制御方法を用いた従来技術は、例えば、特許文献4〜6に開示されている。
特許文献4では、造粒後の焼結原料の一部を採取し、これを複数に分割し、それぞれ異なった水分になるように水を添加し、さらに造粒して、小型の鍋焼成装置に層高および水分量のうちの少なくとも一方を変更して装入・焼成し、この結果から生産性や歩留に対する適正操業条件を評価する方法が提案されている。
しかし、この方法は、適正な水分と層高を同時に評価できる点は優れているが、複数の原料を準備し、それぞれを異なった水分で造粒するため、非常に時間がかかり、簡便な手法とは言いがたい。また、この方法では原料の初期水分が変化した場合、その都度、最適水分を評価する必要がある。
特許文献5では、直接実機の原料処理ライン上のドラムミキサー内の添加水分量を段階的に変化させて、焼結機上で原料充填層の通気度を連続的に測定することによって最適な添加水分量を決定する方法が提案されている。
しかし、この方法は実機において直接通気度を評価できる点は優れているが、原料配合や初期水分などの変動があった場合、頻繁に添加水分量を変更して測定しなければならず評価に時間がかかることに加え、造粒時の水分が適正値を大幅に外れて過少になったり過多になる可能性があり、焼結反応の乱れを誘発して、焼結機から未焼成の不良品を大量に製造してしまう可能性がある。また、この方法では原料の初期水分が変動した場合、その都度、最適水分を評価する必要がある。
特許文献6では、焼結原料の一部を採取し、水分を添加し造粒する機能および充填層の通気度を計測する機能を兼備した装置を用いて、この原料に任意の水を添加し、造粒した後、通気度を測定する一連の操作を繰り返し、この結果から得られた情報に基づいて、実機操業の造粒における添加水分量を決定する方法が提案されている。
しかし、この方法は、造粒機能と通気度測定機能を兼備した装置を使用している点は優れているが、同一の原料に水を添加し再造粒しているため、造粒時間が異なり、水分上昇による通気度変化と造粒時間延長による通気度変化とを判別することができない。また、この方法では原料の初期水分が変動した場合、その都度、最適水分を評価する必要がある。
以下に、本発明を前記の通り規定した理由および本発明による焼結鉱の製造プロセスフローについて説明する。
(1)遠心脱水処理を用いる理由
本発明者らは、焼結原料に水分を添加し、水分を添加した焼結原料を遠心分離機を用いて遠心脱水し、この際に脱水される水分(遠心脱水分)と残留する水分(吸収水分)をそれぞれ測定する試験を行った。その際、焼結原料の初期水分や、遠心脱水時間、焼結原料の造粒水分、焼結原料の原料配合比を種々変更した。遠心脱水処時の遠心力は、592Gとした。
焼結原料としては、一般的に製鉄所で使用されている原料であって、表1〜3に記す配合割合、化学成分および粒度分布の焼結原料A、焼結原料Bを用いた。
図1は、焼結原料における造粒水分と、遠心脱水により脱水される遠心脱水分および残留する吸収水分との関係を示す図である。同図は、初期水分が0質量%の焼結原料Aを用い、造粒水分を2質量%〜8質量%の範囲で変更し、30分間の遠心脱水処理を施した結果を示す。同図より、造粒水分を増加させると、ある造粒水分までは遠心脱水分が0.1質量%以下であり吸収水分だけが増加し、その造粒水分を超えると逆に吸収水分はほとんど増加せず遠心脱水分が増加することがわかる。
このことから、遠心脱水処理により、焼結原料が含有する全水分(造粒水分)を、容易に脱水される水分(遠心脱水分)と残留する水分(吸収水分)の2つに分離できることがわかる。ここで、遠心脱水分は、遠心力[G]と脱水時間に影響すると考えられるが、遠心力[G]については100G以上であれば充分に表面の水分を除去できると考えても差しつかえない。
図2は、遠心脱水時間と遠心脱水分の関係を示す図である。同図では、初期水分が0質量%の焼結原料Aに水分を添加して造粒水分を7質量%としたものについて、処理時間を変更して遠心脱水処理を施す試験を行った結果を示す。同図より、遠心脱水時間は、10分以上であれば、ほぼ一定であることがわかる。仮に遠心脱水時間を変更する場合は、遠心脱水時間に対する遠心脱水分の変化値(0.015質量%/分)で補正することが望ましい。
次に、本発明者らは、同一配合で初期水分の異なる焼結原料(初期水分0質量%と初期水分4質量%)を用い、初期水分の違いによる造粒水分と吸収水分の関係、および造粒水分と遠心脱水分の関係を調査した。さらに、水分を添加した後の焼結原料を用いて、造粒操作の有無による遠心脱水分への影響を調査した。
図3は、初期水分の異なる焼結原料を用いた場合の造粒水分と吸収水分の関係を示す図であり、図4は、初期水分の異なる焼結原料を用いた場合の造粒水分と遠心脱水分の関係を示す図である。図3および図4は、初期水分が0質量%または4質量%の焼結原料Aを用い、造粒水分を2.0質量%〜9.5質量%の範囲で変更し、30分間の遠心脱水処理を施した結果を示す。
図3より、吸収水分は、造粒水分を増加させると、ある造粒水分までは線形的に増加し、その造粒水分以上ではほぼ一定になることがわかる。また、この一定になる造粒水分は、初期水分が0質量%よりも4質量%の方が、高水分側にシフトする。
一方、図4より、遠心脱水分は、造粒水分を増加させると、ある造粒水分までは0.1質量%以下であり、この造粒水分以上では、線形的に増加することがわかる。また、遠心脱水分が増加し始める造粒水分は、初期水分が0質量%よりも4質量%の方が、高水分側にシフトする。
図5は、造粒前と造粒後の焼結原料の遠心脱水分を示す図である。同図は、初期水分が0質量%の焼結原料Aに水分を添加して造粒水分を6.8質量%としたものを用い、造粒操作の前後に分けてそれぞれ遠心脱水処理した結果を示す。同図より、造粒前焼結原料の遠心脱水分と造粒後焼結原料の遠心脱水分水分はほぼ一致しており、造粒操作による遠心脱水分への影響はないことがわかる。以上の結果より、水分を添加した後の焼結原料を用いて、遠心脱水処理することにより、造粒水分を遠心脱水分と吸収水分に容易に分離可能であることが確認できる。
(2)遠心脱水分に応じて添加する水分量を調整する理由
直径105mmの焼結鍋装置を使用し、乾燥重量で2kgの焼結原料を装入して原料層の通気性に及ぼす遠心脱水分の影響について調査する試験を行った。実験手順としては、同一配合で初期水分の異なる焼結原料(初期水分0質量%と初期水分4質量%)を用い、高速撹拌ミキサーにて混合・調湿した後、ドラムミキサーで造粒し、擬似粒子を作製した。そして、この擬似粒子を焼結鍋装置に装入し、焼結鍋試験を行った。
その際、焼結原料は前記表1〜3に示した焼結原料A、焼結原料Bを用い、高速撹拌ミキサーで混合・調湿した後の造粒水分は5.0質量%〜9.5質量%の範囲で変化させた。焼結原料の粒度分布や化学成分は、乾燥機にて完全乾燥(105℃、2時間以上)した後の試料を用いて調査しているため、初期水分によらず、同一配合であれば一致する。また、焼結原料の粒度分布[質量%]は、完全乾燥した後の試料を、篩目が9.5mm、6.7mm、4.0mm、2.0mm、1.0mm、0.5mmおよび0.25mmの順で、振トウ機(タップなし)にて15秒篩って測定した。
評価指標として、原料層の通気性と非常に相関性が高いと考えられている未造粒粉率(質量%)を算出した。未造粒粉率[質量%]とは、擬似粒子を乾燥機にて完全乾燥(105℃、2時間以上)した後、振トウ機(タップなし)にて15秒篩った場合の粒径0.25mm以下の粒子の質量含有率である。また、水分を添加した焼結原料の一部を採取して遠心脱水分を計測し、その際、遠心分離機で遠心力592G、遠心脱水時間30分で遠心脱水した。
さらに、焼結鍋試験での評価指標として原料層通気性を求めた。原料層通気性P[J.P.U.]は、下記の(1)式で算出される値をいう。
P=F/A×(h/S)0.6 ・・・(1)
ここで F:通風量[m3/min]、
A:原料断面積[m3]、
h:原料層厚[m]
S:吸引圧力[mmH2O]
図6は、焼結原料の造粒水分と擬似粒子の未造粒粉率の関係を示す図であり、図7は、焼結原料の遠心脱水分と擬似粒子の未造粒粉率の関係を示す図である。図6および図7は、初期水分が0質量%または4質量%の焼結原料Aを用いて造粒し、未造粒粉率を算出した結果を示す。
図6より、造粒水分で整理すると、造粒水分が同一でも初期水分が高いと、未造粒粉率が高いことが確認できる。一方、図7より、遠心脱水分で整理すると、初期水分によらず、未造粒粉率が一致することが確認できる。従って、焼結原料の初期水分によらず、遠心脱水分に着目して添加する水分量を制御すれば、最適な造粒状態を簡単かつ容易に見出すことができる。
図8は、焼結原料の造粒水分と原料層通気性の関係を示す図であり、図9は、焼結原料の遠心脱水分と原料層通気性の関係を示す図である。図8および図9は、初期水分が0質量%または4質量%の焼結原料Aを用いて造粒し、原料層通気性を測定した結果を示す。
図8より、造粒水分で整理すると、初期水分の違いにより、原料層通気性が最大となる造粒水分が異なることが確認できる。一方、初期水分変動を考慮すべく0質量%と4質量%の両者を統合した原料層通気性の近似線を実線で表したが、原料層通気性は、初期水分の変動を考慮すると、造粒水分が平均7.5質量%で最大値になることがわかる。つまり、造粒水分を目標値にした場合の最適水分がこの値である。
一方、図9より、遠心脱水分で整理すると、初期水分によらず、原料層通気性が最大となる遠心脱水分が一致することが確認できる。また、遠心脱水分が1.3質量%〜2.5質量%になるように、焼結原料に添加する水分量を制御することにより、従来法による平均値の最大値よりも、原料層通気性が向上することが理解される。
図10は、異なる配合の焼結原料を使用した場合の遠心脱水分と原料層通気性の関係を示す図である。同図は、初期水分が0質量%の焼結原料Aまたは焼結原料Bを用いて造粒し、原料層通気性を測定した結果を示す。遠心脱水分で整理すると、焼結原料の配合によらず、原料層通気性が最大となる遠心脱水分は一致し、その遠心脱水分が1.5質量%〜2.0質量%の範囲にあることがわかる。従って、遠心脱水分が1.5質量%〜2.0質量%の範囲になるように、焼結原料に添加する水分を制御することにより、原料層通気性が安定して最大値を示すことが理解される。
遠心脱水分による水分制御方法として、フィードフォーワード制御とフィードバック制御の2つが考えられる。フィードフォーワード制御は、事前に添加水分量を予測できる点には優れているが、配合する原料の種類、配合割合、初期水分などが変動した場合の影響を受けやすく、さらに測定回数と事前処理などの工数が増加する。一方、フィードバック制御は、配合する原料の種類、比率、初期水分などが変動した場合の影響を含んでおり、さらに変動に素早く対応できる点で優れており、フィードバック制御の方が望ましい。
以上の結果および知見から、本発明では、水分添加後の焼結原料における遠心脱水処理による除去水分値(遠心脱水分)に着目し、フィードバック制御を採用することにより、従来法よりも簡便かつ精度良く初期水分の変動に適応して添加水分量を調整できる。
(3)焼結鉱の製造プロセスフロー
図11は、本発明の焼結鉱の製造方法による焼結鉱の製造プロセスフローの一例を説明する図である。同図に示すように、銘柄毎に貯留された原料槽1から、予め計画された配合比率にしたがって各種原料を切り出し、所定の配合比率の焼結原料とする。焼結原料は、ベルトコンベア2、1次造粒機4および2次造粒機5に配置された散水ノズル3により水分が添加され、調湿されるとともに、1次造粒機4および2次造粒機5の混合処理により、造粒されて擬似粒子となる。2次造粒機5から排出された焼結原料は、ベルトコンベア2により運搬され、サージホッパー6に装入される(同図の白抜き矢印参照)。
サージホッパー6に装入された焼結原料は、サージホッパー6の下方からロールフィーダによって切り出され、スローピングシュートを介して焼結機7が備えるパレット71上へ装入され、パレット71上で原料層を形成する。原料層は、点火炉72により表面を着火され、炭材の燃焼により燃焼帯を形成し、パレット下方からの吸引により、燃焼帯は上方から下方へ移行する。原料層は、燃焼帯により加熱され、擬似粒子間が架橋されて焼結し、焼結ケーキを形成する。焼結ケーキは、冷却された後、焼結機の排鉱部から排鉱され、クラッシャー8により所定の粒度に破砕され、その後、高炉の原料として利用される。
さらに、図11に示すプロセスフローでは、2次造粒機の出口から排出された焼結原料をサージホッパーに運搬するベルトコンベア2に、焼結原料の一部を採取するサンプラー9が配置される。サンプラー9により採取された採取原料に遠心脱水処理を施し、これにより除去される水分値(遠心脱水分)を算出し、除去水分値に応じて散水ノズル3により焼結原料に添加する水分量を決定し、除去水分値を目標値に制御する(同図の斜線を施した矢印および黒塗り矢印参照)。
本発明の焼結鉱の製造方法は、水分を添加して造粒機で造粒した焼結原料を焼結機に装入し焼結鉱を製造する方法において、水分を添加した焼結原料の一部を造粒機の出口から焼結機の点火炉までの間で採取し、該採取原料を遠心脱水処理することによって除去される水分値(遠心脱水分)を算出し、算出した除去水分値に応じて焼結原料に添加する水分量を調整し、除去水分値を目標値に制御することを特徴とする。
水分を添加した焼結原料の一部を採取し、該採取原料を遠心脱水処理することにより、前述の通り、焼結原料が含有する水分を造粒に寄与する遠心脱水分と造粒に寄与しない吸収水分に分離することができる。さらに、採取原料の除去水分値、すなわち、焼結原料の遠心脱水分に応じて、焼結原料に添加する水分量を決定することで、前述の通り、焼結原料が最適な造粒寄与水分を含有することから、焼結機に装入された際に原料層通気性を安定して向上させることができる。
除去水分値が目標値から外れた場合、目標値になるように添加水分量を変更する。例えば、目標値よりも低い除去水分値であった場合、添加水分量を増加し、目標値よりも高い除去水分値あった場合、添加水分量を低減する。
焼結原料の一部を造粒機の出口から焼結機の点火炉までの間で採取するのは、水分の添加が完了した焼結原料を採取するためであり、これにより、添加する水分量をフィードバック制御することができる。前述の通り、フィードバック制御を採用することにより、配合する原料の種類、比率、初期水分の変動に素早く対応できる。
前記図11に示すように2機以上の造粒機を直列に並べて用いる場合、その一方もしくは両方の造粒機で焼結原料に水分を添加する。水分を添加した焼結原料を2次造粒機出口以降で採取した場合、2次造粒機以前で添加する水分量を調整する方法を採用できる。一方、水分を添加した原料を1次造粒機と2次造粒機の間で採取した場合、1次造粒機以前で添加する水分量を調整する方法、または2次造粒機で添加する水分量を調整する方法を採用できる。
本発明の焼結鉱の製造方法は、除去水分値の目標値を1.3質量%〜2.5質量%の範囲とするのが望ましく、1.5質量%〜2.0質量%の範囲とするのがより望ましい。除去水分値の目標値を1.3質量%〜2.5質量%の範囲とすることにより、前記図9において説明したとおり、焼結機における原料層通気性を、従来法による平均値の最大値よりも向上させることができる。さらに、除去水分値の目標値を1.5質量%〜2.0質量%の範囲とすることにより、前記図10において説明したとおり、焼結原料の初期水分や焼結原料の配合銘柄によらず、原料層通気性を安定して向上させることができる。
本発明の焼結鉱の製造方法は、除去水分値に応じて焼結原料に添加する水分量を調整するに際し、除去水分値が1.3質量%未満である場合、焼結原料が含有する全水分の目標値を最大で1.0質量%増加させ、除去水分値が2.5質量%を超える場合、焼結原料が含有する全水分の目標値を最大で1.0質量%減少させるのが望ましい。
造粒水分の目標値を増減させて焼結原料への添加水分量を調整する場合、遠心脱水処理により除去される水分値を1.5質量%〜2.0質量%の範囲内に制御すれば、焼結原料の初期水分や焼結原料の配合銘柄によらず、原料層通気性を安定して向上させることができるので、より望ましい。
造粒水分の目標値を増減させる量は、遠心脱水処理により除去される水分値の変動等に応じて適宜決定することができるが、最大で1.0質量%とするのが望ましい。造粒水分の目標値を1.0質量%を超えて増減させると、遠心脱水処理により除去される水分値が所定の範囲を行き過ぎる場合があるからである。また、造粒水分の目標値を増減させる量が少ないと、遠心脱水分を所定の範囲内に制御するのに要する操作が増加することから、造粒水分の目標値を増減させる量は目標値と実測値の差(|目標値−実測値|)以上とするのが望ましい。
本発明に係る焼結鉱の製造方法の効果を確認するため、下記に示す試験を行い、その結果を評価した。本発明は、以下に示した実施例のみに限定されず、上述した発明の目的および技術思想に反しない限り、以下に示した条件以外においても効果が得られるものであることは言うまでもない。
本発明の焼結鉱の製造方法により造粒された焼結原料について、焼結機に装入された際の原料層通気性を評価する試験を行った。
DL式焼結機を模擬するため、以下の手順で試験を実施した。焼結原料は、実機のDL式焼結機を用いた焼結鉱の製造設備において、水分を添加する直前に、前記表1〜3に示す性状の焼結原料Aまたは焼結原料Bを採取して用いた。焼結原料の初期水分変動を模擬するため、実機から採取した焼結原料の初期水分4%の他に、意図的に乾燥処理して初期水分0%にしたケースを設定した。
本発明例では、ドラムミキサーにおいて、遠心脱水処理による除去水分値(遠心脱水分)を目標値に制御するため、焼結原料に添加する水分量を調整しながら、調湿および造粒操作を実施した。ドラムミキサーから排出された焼結原料について遠心脱水分を算出し、目標値通りであれば、直径105mmの焼結鍋装置に焼結原料を装入して原料層通気性を測定した。また、目標値から外れた場合、新たな焼結原料を用いて、添加する水分量を加減して、再度上記操作を繰り返した。
比較例では、ドラムミキサーにおいて、焼結原料が含有する全水分(造粒水分)を目標値に制御するため、焼結原料に添加する水分量を調整しながら、調湿および造粒操作を実施した。ドラムミキサーから排出された焼結原料の造粒水分を測定し、目標値通りであれば、本発明例と同様に焼結鍋装置での原料層通気性を測定した。また、目標値から外れた場合、新たな焼結原料を用いて、添加する水分量を加減して、再度上記操作を繰り返した。
本試験において、初期水分が0質量%と4質量%の焼結原料Aを用いて、本発明例では遠心脱水分の目標水分値を1.0質量%、1.5質量%および2.0質量%に変化させ、比較例では造粒水分の目標水分値を7.0質量%、7.5質量%および8.0質量%に変化させた。本発明例および比較例ともに、ドラムミキサーによる調湿および造粒操作と、その後の焼結鍋装置による原料層通気性の測定からなる試験をそれぞれの目標水分値で実施し、それぞれの目標水分毎に、初期水分が0質量%と4質量%の原料層通気性から標準偏差を算出した。
図12は、従来の造粒水分を制御する焼結鉱の製造方法における造粒水分と原料層通気性との関係および原料層通気性の標準偏差を示す図であり、図13は、本発明の焼結鉱の製造方法における造粒水分と原料層通気性との関係および原料層通気性の標準偏差を示す図である。図12および図13は、初期水分が0質量%または4質量%の焼結原料Aを用いて造粒し、原料層通気性を測定した結果を示す。
図12に示す結果から、初期水分が変動した場合に造粒水分を制御する比較例では、原料層通気性の標準偏差の最小値は1.6[J.P.U.]であった。一方、図13に示す結果から、初期水分が変動した場合に遠心脱水分を制御する本発明例では、原料層通気性の標準偏差はすべて1.6[J.P.U.]以下であった。
従って、遠心脱水処理による除去水分値(遠心脱水分)を制御する本発明では、焼結原料が含有する全水分(造粒水分)を制御する比較例(従来法の考え方)よりも、原料層通気性のばらつきが少なく、安定した操業が可能であることから、優れていることが確認できた。
次に、前記表1〜3に示した焼結原料Aおよび焼結原料Bを用い、同一配合の焼結原料を用いた場合と、異なる配合の焼結原料を用いた場合とについて、原料層通気性を評価する試験を行った。表4に、本発明例1〜5および比較例1〜4で用いた焼結原料、初期水分(質量%)、制御対象水分、目標水分値を示す。
図14は、同一配合の焼結原料を用いた場合の原料層通気性の測定結果を示す図である。ここで、前記図8に示す結果から、初期水分変動を考慮した場合の造粒水分制御による目標造粒水分は7.5質量%が最適であると考えられる。図14に示すように、比較例1および2の原料層通気性は、それぞれ27.6[J.P.U.]と25.3[J.P.U.]であった。そこで、従来法による制御の最大値を、原料層通気性が一番良好であった27.6[J.P.U.]と考えた。
一方、本発明例1〜3では、目標水分値を遠心脱水分1.3質量%〜2.5質量%の範囲とし、原料層通気性はいずれも27.6[J.P.U.]以上であり、比較例1および2より改善していることが確認できた。なお、本発明例1と本発明例3の目標水分値は遠心脱水分が1.5質量%であり、本発明例2の目標水分値は遠心脱水分2.0質量%である。
図15は、異なる配合の焼結原料を用いた場合の原料層通気性の測定結果を示す図である。同図に示すように、比較例1〜4の原料層通気性は、それぞれ27.6[J.P.U.]、25.3[J.P.U.]、22.1[J.P.U.]、26.9[J.P.U.]であった。そこで、従来法による制御の最大値を、原料層通気性が一番良好であった27.6[J.P.U.]と考えた。遠心脱水分1.7質量%を目標値とした本発明例4および本発明例5の原料層通気性は、それぞれ30.9[J.P.U.]、29.2[J.P.U.]であり、比較例1〜4より改善していることが確認できた。
さらに、焼結原料の初期水分を意図的に変動させた場合、遠心脱水処理による除去水分値に応じて添加水分量を調整する本発明の焼結鉱の製造方法により、原料層通気性が確保できるか確認する試験を行った。
焼結原料に添加する水分量は、焼結原料が含有する全水分(造粒水分)の目標値を増減させることにより調整し、遠心脱水処理による除去水分値(遠心脱水分)を管理範囲(1.3質量%〜2.5質量%)内に制御した。具体的には、遠心脱水分が管理範囲内である場合は造粒水分の目標値を維持し、その範囲を超えた場合は造粒水分の目標値を1.0質量%減少させ、その範囲未満となった場合は造粒水分の目標値を1.0質量%増加させることにより行った。
図16は、本発明の焼結鉱の製造方法を適用した場合において、初期水分の変動に対する原料層通気性、遠心脱水分、初期水分および造粒水分の目標値の変化を示す図である。同図では横軸に操作ステップ、縦軸に原料層通気性[J.P.U]、遠心脱水分[質量%]、初期水分[質量%]および造粒水分の目標値[質量%]をそれぞれ示す。
初期状態である操作ステップ0では、遠心脱水分が管理範囲内の1.5質量%であり、その際の焼結原料の初期水分は0質量%、造粒水分の目標値は6.5質量%であった。操作ステップ1において、焼結原料の初期水分を4質量%に変動させると、造粒水分の目標値は6.5質量%のままであるが、遠心脱水分が管理範囲未満の0.4質量%に減少し、原料層通気性が大幅に悪化した。
そこで、操作ステップ2では、遠心脱水分が管理範囲未満となったのに応じて、造粒水分の目標値を1.0質量%増加させて7.5質量%とした。その結果、遠心脱水分が0.9質量%まで上昇するとともに、原料層通気性が向上したが、遠心脱水分は依然として管理範囲未満であった。さらに、操作ステップ3では、造粒水分の目標値を8.5質量%まで増加させたところ、遠心脱水分が管理範囲内の1.5質量%となったので、造粒水分の目標値を8.5質量%で維持した。また、操作ステップ3では、遠心脱水分の増加とともに、原料層通気性が向上した。
操作ステップ4において、焼結原料の初期水分を0質量%に変動させたが、造粒水分の目標値が8.5質量%のままであるので、遠心脱水分が管理範囲を超えて3.3質量%に増加し、原料層通気性が悪化した。そこで、操作ステップ5では、造粒水分の目標値を1.0質量%減少させて7.5質量%とし、その結果、遠心脱水分が管理範囲内の2.4質量%まで減少したことから、造粒水分の目標値を7.5質量%に維持した。また、操作ステップ5では、遠心脱水分の減少とともに、原料層通気性が向上した。
以上のように、焼結原料の初期水分が変動して遠心脱水処理による除去水分値(遠心脱水分)が1.3質量%〜2.5質量%の範囲外になった場合でも、焼結原料が含有する全水分(造粒水分)の目標値を変更して添加水分量を調整することで、焼結機に装入された際の原料層通気性を安定して向上できることが確認できた。