JP2011144228A - 導体パターン形成用インク、導体パターン、配線基板 - Google Patents

導体パターン形成用インク、導体パターン、配線基板 Download PDF

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Masaya Shibatani
正也 柴谷
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光宏 磯部
Hiroshi Takiguchi
宏志 瀧口
Toshiyuki Kobayashi
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Abstract

【課題】断線が防止された信頼性の高い導体パターンを形成することができ、液滴の吐出安定性に優れた導体パターン形成用インクを提供すること、信頼性の高い導体パターンを提供すること、および、このような導体パターンを備え、信頼性の高い配線基板を提供すること。
【解決手段】本発明の導体パターン形成用インクは、液滴吐出法により、基板上に導体パターンを形成するための導体パターン形成用インクであって、金属粒子と、前記金属粒子が分散する水系分散媒と、ポリグリセロール変性シリコーンとを含むことを特徴とする導体パターン形成用インク。
【選択図】図1

Description

本発明は、導体パターン形成用インク、導体パターン、配線基板に関する。
電子部品が実装される回路基板(配線基板)として、セラミックスで構成された基板(セラミックス基板)上に、金属材料で構成された配線が形成されたセラミックス回路基板が、広く用いられている。このようなセラミックス回路基板では、基板(セラミックス基板)自体が、多機能性材料で構成されているため、多層化による内装部品の形成、寸法の安定性等の点で有利である。
そして、このようなセラミックス回路基板は、セラミックス粒子とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体上に、形成すべき配線(導体パターン)に対応するパターンで、金属粒子を含む組成物を付与し、その後、当該組成物が付与されたセラミックス成形体に対し、脱脂、焼結処理を施すことにより製造されている。
セラミックス成形体上へのパターン形成の方法としては、スクリーン印刷法が広く用いられている。その一方で、近年、配線の微細化、狭ピッチ化による回路基板の高密度化が求められているが、スクリーン印刷法では、配線の微細化、狭ピッチ化に不利であり、上記のような要求に応えるのが困難である。そこで、近年、セラミックス成形体上へのパターン形成の方法として、液体吐出ヘッドから金属粒子を含む液体材料(導体パターン形成用インク)を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、従来の方法と比較して、微細な導体パターンを形成することが可能であり、回路密度の向上に有利である。
しかしながら、従来の導体パターン形成用インクでは、セラミックス成形体に、脱脂、焼結処理を施した際に、セラミックス成形体の熱膨張によって、形成した導体パターンの一部に断線が生じてしまうといった問題があった。特に、近年の配線の微細化、狭ピッチ化による回路基板の高密度化に伴い、このような問題の発生が顕著であった。
また、配線の微細化、狭ピッチ化に伴い、より微細なパターンを形成することが求められている。このため、導体パターン形成用インクの液滴の吐出量の安定性(均一性)、液滴の着弾精度等の液滴の吐出安定性についてより一層の向上が求められている。しかしながら、導体パターンの形成に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって連続で吐出することが求められる。また、導体パターンの形成に用いるインク(産業用)では、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて、一般に、吐出時の液切れも悪く、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)や吐出面にインクが残存しやすい。この結果、継続して吐出した場合、インクに含まれる成分が液滴吐出装置のインクの流路に付着し、液滴吐出ヘッドへのインクの供給が不安定になりやすい。また、導体パターンの形成に用いるインク(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて、組成に制限が多く、乾燥性や再溶解性等の特性が十分ではなく、金属粒子等の固形分が析出、あるいは凝集して、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まりを起こしやすく、液滴の飛行曲がりが頻発する問題があった。
特開2007−84387号公報
本発明の目的は、断線が防止された信頼性の高い導体パターンを形成することができ、液滴の吐出安定性に優れた導体パターン形成用インクを提供すること、信頼性の高い導体パターンを提供すること、および、このような導体パターンを備え、信頼性の高い配線基板を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の導体パターン形成用インクは、液滴吐出法により、基板上に導体パターンを形成するための導体パターン形成用インクであって、
金属粒子と、前記金属粒子が分散する水系分散媒と、ポリグリセロール変性シリコーンとを含むことを特徴とする。
これにより、断線が防止された信頼性の高い導体パターンを形成することができ、液滴の吐出安定性に優れた導体パターン形成用インクを提供することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、前記ポリグリセロール変性シリコーンは、下記構造式(1)、(2)、(3)、(4)または(5)で表わされるグリセロール基またはグリシドール基を含んで構成されるポリグリセロール鎖を有するものであることが好ましい。
Figure 2011144228
このような基で構成されることにより、ポリグリセロール鎖は水酸基を十分に有することができ、水系分散媒の揮発を防止することができるとともに、水系分散媒への溶解性を高いものとすることができる。この結果、液滴の吐出安定性が向上するとともに、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、前記ポリグリセロール変性シリコーンのうち、少なくとも1つの前記ポリグリセロール鎖は、エーテル基を有する2価の連結基を介して、シリコーンのケイ素原子に結合していることが好ましい。
これにより、ポリグリセロール鎖が安定してシリコーン骨格に結合するものとなり、ポリグリセロール変性シリコーンの耐熱性が向上し、導体パターンの断線をより確実に防止することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、前記ポリグリセロール変性シリコーンは、下記式(6)で表わされるものであることが好ましい。
Figure 2011144228
(式中、R、R、R、t個のR、t個のR、R、R、Rは、同一または異なって、ポリグリセロール鎖が結合した連結基、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルコシキ基、あるいは炭素数6以上22以下のアリール基を示し、R、R、R、t個のR、t個のR、R、R、Rのうち少なくとも1つはポリグリセロール鎖が結合した連結基である。pは0以上10,000以下の数を示す。)
これにより、ポリグリセロール変性シリコーンの効果をより顕著に得ることができ、導体パターン形成用インクは、液滴の吐出安定性に特に優れ、形成される導体パターンの断線がより確実に防止されたものとなる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、導体パターン形成用インク中における前記ポリグリセロール変性シリコーンの含有量は、0.1wt%以上15wt%以下であることが好ましい。
これにより、ポリグリセロール変性シリコーンの含有量が高すぎて導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性が低下することを防止しつつ、ポリグリセロール変性シリコーンの効果を十分に発揮することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、前記ポリグリセロール変性シリコーンの数平均分子量は、500以上500000以下であることが好ましい。
これにより、導体パターン形成用インクの粘度を十分に低いものとしつつ、ポリグリセロール変性シリコーンは、断線およびクラックの発生をより好適に防止することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、前記基板は、ガラス材料を含むことが好ましい。
これにより、得られる基板と導体パターン前駆体との間での密着性が高まる。この結果、形成される導体パターンは、より信頼性の高いものとなる。
本発明の導体パターンは、本発明の導体パターン形成用インクによって形成されたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い導体パターンを提供することができる。
本発明の配線基板は、本発明の導体パターンが備えられてなることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い配線基板を提供することができる。
本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の好適な実施形態の一例を示す縦断面図である。 図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の概略の工程を示す説明図である。 図1の配線基板(セラミックス回路基板)の製造工程説明図である。 インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。 インクジェットヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の好適な実施形態の一例を示す縦断面図、図2は、図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の概略の工程を示す説明図、図3は、図1の配線基板(セラミックス回路基板)の製造工程説明図、図4は、インクジェット装置(液滴吐出装置)の概略構成を示す斜視図、図5は、図4の液滴吐出装置が備えるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の概略構成を説明するための模式図である。
《導体パターン形成用インク》
本発明の導体パターン形成用インクは、基板上に導体パターンを形成するのに用いるインクであり、特に、液滴吐出法によって導体パターンを形成するのに用いるインクである。
なお、本実施形態では、金属粒子を水系分散媒に分散してなる分散液として、銀粒子が分散した分散液を用いた場合について代表的に説明する。
また、導体パターンが形成される基板は、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、基板としてセラミックスを主として構成されたセラミックス基板を用いることとする。また、本実施形態では、セラミックスとバインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体(セラミックスグリーンシート)に導体パターン形成用インクを付与するものとして説明する。なお、セラミックス成形体は、後述するように焼結処理され、セラミックス基板となる。
以下、導体パターン形成用インクの各構成成分について詳細に説明する。
[水系分散媒]
まず、水系分散媒について説明する。
本発明において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水:100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、導体パターン形成用インク中における水系分散媒の含有量は、25wt%以上60wt%以下であることが好ましく、30wt%以上50wt%以下であることがより好ましい。これにより、インクの粘度を好適なものとしつつ、分散媒の揮発による粘度の変化を少ないものとすることができる。
[銀粒子]
次に、銀粒子(金属粒子)について説明する。
銀粒子は、形成される導体パターンの主成分であり、導体パターンに導電性を付与する成分である。
また、銀粒子は、インク中において分散している。
銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上30nm以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより高いものとすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
また、インク中に含まれる銀粒子(分散剤が表面に吸着していない銀粒子(金属粒子))の含有量は、0.5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上45wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターンの断線をより効果的に防止することができ、より信頼性の高い導体パターンを提供することができる。
また、銀粒子(金属粒子)は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子(金属コロイド粒子)として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、インクの吐出安定性が特に優れたものとなる。
インク中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。銀コロイド粒子の含有量が前記下限値未満であると、銀の含有量が少なく、導体パターンを形成した際、比較的厚い膜を形成する場合に、複数回重ね塗りする必要が生じる。一方、銀コロイド粒子の含有量が前記上限値を超えると、銀の含有量が多くなり、分散性が低下し、これを防ぐためには攪拌の頻度が高くなる。
また、銀コロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。コロイド粒子(固形分)を500℃まで加熱すると、表面に付着した分散剤等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。500℃までの加熱による減量は、銀コロイド粒子中の分散剤の量にほぼ相当すると考えられる。加熱減量が1wt%未満であると、銀粒子に対する分散剤の量が少なく、銀粒子の充分な分散性が低下する。一方、25wt%を超えると、銀粒子に対する残留分散剤の量が多なり、導体パターンの比抵抗が高くなる。但し、比抵抗は、導体パターンの形成後に加熱焼結して有機分を分解消失させることである程度改善することができる。そのため、基板として、より高温で焼結されるセラミックス成形体等を用いた場合、このような効果を容易に得ることができる。
[分散剤]
導体パターン形成用インクは、分散剤を含むことが好ましい。
分散剤は、銀粒子に付着することにより、銀コロイド粒子を形成する。このような銀コロイド粒子は、分散安定性に優れるため、導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性は、より優れたものとなる。
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、インクによって形成されたパターン(導体パターン前駆体)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とOH基の数が3個未満であったり、COOH基の数がOH基の数よりも少ないと、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、分散剤は、COOH基とSH基とを合わせて2個以上有するメルカプト酸またはその塩を含んでいてもよい。これらの分散剤は、メルカプト基が銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、インクによって形成されたパターン(導体パターン前駆体)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とSH基の数が2個未満すなわち片方のみであると、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸二ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸二カリウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
[有機バインダー]
本発明の導体パターン形成用インクは、有機バインダーを含んでいる。有機バインダーは、導体パターン形成用インクによって形成された導体パターン前駆体において、銀粒子の凝集を防止するものである。すなわち、形成された導体パターン前駆体において、有機バインダーは、銀粒子同士の間に存在することで銀粒子同士が凝集して、パターンの一部に亀裂(クラック)が生じることを防止できる。
また、焼結時においては、有機バインダーは、分解されて除去されることができ、導体パターン前駆体中の銀粒子同士は、結合して導体パターンを形成する。このとき、導体パターン前駆体は、有機バインダー等の有機物が除去されるため、収縮しつつ導体パターンを形成する。一方で、導体パターン前駆体を担持する基板も、熱により膨張、収縮する。特に、セラミックス粒子とバインダーとを含むセラミックス成形体においては、焼結時においてバインダーが除去されるため、このような膨張、収縮がより大きいものとなっている。導体パターン前駆体は、有機バインダーを含むことにより、柔軟性を有し、このような基板の膨潤、収縮に追従することができ、形成される導体パターンの断線が防止される。
(ポリグリセロール変性シリコーン)
本発明において、導体パターン形成用インクは、有機バインダーとしてポリグリセロール変性シリコーンを含む。ポリグリセロール変性シリコーンは、シリコーンを基本骨格として、ポリグリセロール鎖が当該基本骨格(シリコーン骨格)に結合した化合物である。
ポリグリセロール変性シリコーンは、シリコーン骨格を有するため、比較的耐熱性が高く、比較的高温にて分解する。このため、ポリグリセロール変性シリコーンを含む導体パターン前駆体は、長期にわたって、基板の収縮、膨張に対する追従性に優れたものとなり、断線が防止される。すなわち、ポリグリセロール変性シリコーンは、耐熱性に優れることにより後述するような他の有機バインダーと比較してより長期にわたって、導体パターン前駆体中に存在でき、断線を防止する効果に優れている。特に、上記のような粒径の金属粒子を含む導体パターン形成用インクでは、一般に、スクリーン用のAgペースト(金属粒子の粒径がμmオーダー)等と比較して、金属粒子(ナノコロイド)の融着が低温で起きてしまい、基材との間での収縮性の違いから、断線、クラックが生じやすく、また、セラミックス基板の反り、めくれ等の寸法安定性による問題も生じやすいという課題があるが、本発明では、ポリグリセロール変性シリコーンを含むことにより、断線等の問題を確実に防止することができる。
さらに、ポリグリセロール変性シリコーンのシリコーン骨格は、焼結により二酸化ケイ素となり、基板への密着性の向上に付与することができ、導体パターンの断線をより効果的に防止できるものとなる。このような効果は、セラミックス成形体(基板)にガラス材料が含まれる場合に顕著なものとなる。
一方で、ポリグリセロール変性シリコーンのポリグリセロール鎖は、ポリグリセロール変性シリコーンを嵩高くしており、銀粒子同士の間にポリグリセロール変性シリコーンが存在することにより、銀粒子同士の接触が十分に防止される。
また、ポリグリセロール変性シリコーンのポリグリセロール鎖は、多量の水酸基を有している。このため、水系分散媒への溶解性が高いものとなり、導体パターン形成用インク中を容易に運動できる結果、容易に銀粒子同士の間に存在することができ、クラックの発生を防止することができる。
また、ポリグリセロール鎖が多量の水酸基を有することにより、水系分散媒の揮発を防止することができる。これにより、導体パターン形成用インクの液滴の吐出時において、液滴吐出ヘッドの吐出口付近における水系分散媒の揮発を防止でき、金属粒子の析出、凝集等を防止することができる。この結果、導体パターン形成用インクは、長期にわたって、液滴の吐出量の均一性、液滴の着弾精度が優れたものとなり、液滴の吐出安定性に優れたものとなり、微細な形状の導体パターン前駆体を描画することができるものとなる。また、後述するような乾燥抑制剤の含有量を比較的少ないものとすることができる。
以上より、導体パターン形成用インクがポリグリセロール変性シリコーンを含むことにより、導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性は優れたものとなり、かつ、導体パターン形成用インクを用いて、断線、クラックの発生が防止された信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
上述したようなポリグリセロール変性シリコーンを構成するポリグリセロール鎖は、a個の構造式(1)で表されるグリセロール基(以下、基(1)という)、b個の構造式(2)で表されるグリシドール基(以下、基(2)という)、c個の構造式(3)で表されるグリセロール基(以下、基(3)という)、d個の構造式(4)で表されるグリセロール基(以下、基(4)という)、e個の構造式(5)で表されるグリセロール基(以下、基(5)という)が結合(重合)してなるものとして表わすことができる。このような基で構成されることにより、ポリグリセロール鎖は水酸基を十分に有することができ、水系分散媒の揮発を防止することができるとともに、水系分散媒への溶解性を高いものとすることができる。この結果、液滴の吐出安定性が向上することともに、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。
なお、上記の各基間の結合では、ある基の酸素原子に対して、他の基の炭素元素がエーテル結合するように構成されている。
Figure 2011144228
特に、ポリグリセロール鎖が上述したような構造式のうち、基(1)または基(5)を含む場合、ポリグリセロール鎖は、分岐鎖を有する分岐ポリグリセロール鎖となる。このような場合、ポリグリセロール変性シリコーンは、比較的嵩高い分子となり、銀粒子同士の間に介在することによる銀粒子同士の接触(凝集や融着)を防止することがより容易となる。このため、導体パターン前駆体にクラックが生じることをより確実に防止することができる。また、このように分岐鎖を有することで、ポリグリセロール変性シリコーンの一分子あたりの水酸基の量が多いものとなり、この結果、液滴の吐出安定性が向上することともに、クラックの発生をより効果的に防止することができる。
なお、基(1)および基(5)の数が多いほど、ポリグリセロール鎖の分岐構造が発達したものとなる。そして、ポリグリセロール鎖の末端(分岐鎖を有する場合には、各分岐鎖の末端)には、基(4)が存在する。
また、ポリグリセロール鎖中において、基(1)、(2)、(3)および(5)は、任意の配列で相互に結合していてもよい。
ポリグリセロール鎖の、基(1)、(2)、(3)、(4)および(5)の平均結合総数(重合度、a+b+c+d+e)は、4以上であることが好ましく、4以上101以下であることがより好ましく、4以上51以下であることがさらに好ましく、4以上21以下であることが最も好ましい。これにより、ポリグリセロール変性シリコーンの水系分散媒への親和性が高いものとなり、導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性がより優れたものとなる。
なお、ポリグリセロール鎖の平均重合度は、NMRによる解析および前駆体シリコーンとの分子量比較により求められる。
分岐ポリグリセロール鎖中の分岐の割合は、[(a+e)/(a+b+c+d+e)]とすることができ、1/20以上1/2未満であることが好ましく、1/10以上1/2未満であることがより好ましく、1/6以上1/2未満であることがさらに好ましい。これにより、ポリグリセロール変性シリコーンが十分嵩高くなり、銀粒子同士の接触を防止できる結果、導体パターン前駆体のクラックの発生がより効果的に防止される。また、過度にポリグリセロール鎖が嵩高くなって、水系分散媒への溶解性が低下することを防止することができる。
各ポリグリセロール鎖中における基(1)の数(a)は、特に限定されないが、2以上100以下であることが好ましく、2以上25以下であることがより好ましく、2以上10以下であることがさらに好ましい。
各ポリグリセロール鎖中における基(2)の数(b)は、特に限定されないが、1以上101以下であることが好ましく、3以上26以下であることがより好ましく、3以上11以下であることがさらに好ましい。
各ポリグリセロール鎖中における基(3)の数(c)は、特に限定されないが、1以上101以下であることが好ましく、3以上26以下であることがより好ましく、3以上11以下であることがさらに好ましい。
各ポリグリセロール鎖中における基(4)の数(d)は、特に限定されないが、1以上101以下であることが好ましく、3以上26以下であることがより好ましく、3以上11以下であることがさらに好ましい。
各ポリグリセロール鎖中における基(4)の数(d)は、特に限定されないが、1以上101以下であることが好ましく、3以上26以下であることがより好ましく、3以上11以下であることがさらに好ましい。
各ポリグリセロール鎖中における基(5)の数(e)は、aが0のときは1であり、aが1以上のときは、0または1が好ましい。
また、ポリグリセロール変性シリコーンは、ポリグリセロール鎖が、連結基を介してシリコーン骨格に結合されることが好ましい。シリコーン骨格に結合しやすい連結基を介してポリグリセロール鎖が結合されることにより、ポリグリセロール変性シリコーンは、化学的により安定なものとなり、上述したような効果が十分に発揮される。
連結基としては、特に限定されないが、例えば、エーテル基またはエステル基を有する2価または3価の連結基が挙げられる。これにより、ポリグリセロール鎖が安定してシリコーン骨格に結合するものとなり、ポリグリセロール変性シリコーンの耐熱性が向上する。なお、上記の連結基は、シリコーン骨格のケイ素原子に対して結合するものである。
上述した中でも、連結基は、エーテル基を有する2価また3価の連結基であることが好ましく、エーテル基を有する2価の連結基であることがより好ましい。これにより、ポリグリセロール鎖がより安定してシリコーン骨格に結合し、上述したような効果をより確実に発揮することができる。
また、ポリグリセロール鎖は、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基を含んでいてもよい。アルキレンオキシ基は、ポリグリセロール鎖中にランダムに存在するものであってもよいし、複数のアルキレンオキシ基が連鎖をなすようにしてブロック的に存在するものであってもよい。また、アルキレンオキシ基は、ポリグリセロール鎖のどの部位に存在するものであってもよい。アルキレンオキシ基は0.00モル当量以上10.5モル当量以下存在することが好ましく、0.02モル当量以上0.2モル当量以下存在することがさらに好ましい。
エーテル基を有する2価の連結基としては、下記式(7)で表される基(以下、連結基(7)という)が好ましい。なお、連結基(7)は、(R)q側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)r側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
−(R−O−(AO)− (7)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、アルケニレン基または炭素数6以上28以下のアリーレン基、AOは炭素数1以上4以下のアルキレンオキシ基(オキシアルキレン基ともいう)または炭素数6以上10以下のアリーレンオキシ基(オキシアリーレン基ともいう)、qは0または1の数、rは0以上30以下の数を示し、r個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
連結基(7)において、R中のアリーレン基は、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基を含む。
がアルキレン基またはアルケニレンである場合、Rは、その炭素数が1以上16以下であることが好ましく、1以上12以下であることがより好ましい。
としては、具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
として好ましいアリーレン基としては、アルキレン基の炭素数が1以上22以下のアルキレンフェニレン基が挙げられ、例えば、トリメチレンフェニレン基が挙げられる。
上述したRの中でも、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基またはトリメチレンフェニレン基が好ましく、原料の合成の容易さの観点から、エチレン基、トリメチレン基またはトリメチレンフェニレン基がより好ましい。
中の置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、炭素数が1以上22以下のアミノ基、炭素数が1以上22以下のイミノ基、カルボキシ基、炭素数が1以上22以下のアルコキシ基、炭素数が1以上22以下のアシル基等が挙げられる。
AOは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基またはフェニレンオキシ基であることが好ましく、エチレンオキシ基またはフェニレンオキシ基であることがより好ましい。
連結基(7)において、rは、0以上20以下であるのが好ましく、0以上5以下であるのがより好ましく、0または1であるのがさらに好ましい。特に、Rが、エチレン基またはトリメチレン基の場合は1が、アルキレンアリーレン基の場合には0が、好ましい。
q個のRは、同一又は異なって、交互、ランダムまたはブロックあるいはこれら以外の周期配列であっても良いし、またはランダム型であってもよい。r個のAOについても同様である。
連結基としては、下記式(8)で示される連結基であることが好ましい。なお、下記式(8)で表わされる連結基では、トリメチレン側がシリコーン骨格のケイ素原子に結合し、酸素原子側がポリグリセロール鎖に結合する。
Figure 2011144228
上記式(8)において、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、酸素原子とトリメチレン基の結合様式は、互いにオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよく、またこれらの混合であってもよい。
また、エーテル基を有する3価の連結基としては、例えば、下記式(9)で表わされる基、下記式(10)で表わされる基等が挙げられる。なお、連結基(9)では、R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)sおよび(AO)t側がそれぞれポリグリセロール鎖に結合し、連結基(10)では、R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)uおよび(AO)v側がそれぞれポリグリセロール鎖に結合する。
Figure 2011144228
(式中、RおよびAOは前記の意味を示し、sは1以上30以下の数、tは1以上30以下の数を示し、s個のAOおよびt個のAOは、独立して、同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2011144228
(式中、R10は、置換基を有していてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、アルケニレン基、xは0または1の数、uは0以上30以下の数、vは0以上30以下の数、AOは前記の意味を示し、u個及びv個のAOは独立して、同一でも異なっていてもよい。)
式(9)において、sおよびtはそれぞれ、1以上30以下の数であるが、1以上10以下であるのが好ましく、1以上5以下であるのがより好ましく、1であるのがさらに好ましい。
また、s個のAO、t個のAOは、同一または異なっていてもよいが、異なる場合、それらAOの相互の結合様式は、交互型、ブロック型あるいはこれら以外の周期配列であってもよいし、またはランダム型であってもよい。
また、式(10)において、R10の好ましいアルキレン基、アルケニレン基としては、上記のR1の好ましいアルキレン基、アルケニレン基と同様である。
uおよびVはそれぞれ、独立して、0以上30以下の数であるが、0以上15以下であるのが好ましく、0以上5以下であるのがより好ましく、0であるがさらに好ましい。uならびにvが0以外の数である場合、u個のAO、v個のAOは、独立して、同一または異なっていてもよいが、異なる場合、それらAOの相互の結合様式は、交互型、ブロック型あるいはこれら以外の周期配列であってもよいし、又はランダム型であってもよい。
また、式(10)において、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、2個の酸素原子と(R10)x基(xが0の場合はシリコーン鎖上のケイ素原子)のうちいずれの2個についても、その結合様式は、互いにオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよく、またこれらの混合であってもよい。
また、エーテル基を有する3価の連結基としては、特に、下記式(11)に示す連結基であるのが好ましい。
Figure 2011144228
式(11)において、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、2個の酸素原子とトリメチレン基のうち何れの2個についても、その結合様式は、互いにオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよく、またこれらの混合であってもよい。
エステル基を有する2価の連結基としては、例えば、式(12)で表される連結基が挙げられる。なお、式(12)では、R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)y側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
−R−COO−(AO)− (12)
(式中、RおよびAOは、前記の意味を示し、yは0以上30以下の数を示し、y個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
ポリグリセロール変性シリコーンを構成するシリコーン骨格は、ケイ素原子を2つ以上有するポリシロキサンである。
シリコーン骨格の形状は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
シリコーン骨格において、ポリグリセロール鎖が結合した連結基以外の基(側鎖)は、例えば、同一または異なって、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基、あるいは炭素数6以上22以下のアリール基である。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、トリフルオロプロピル等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基やアリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、フェノキシ基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
上述した中でも、炭素数1以上12以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、ビニル基、アリル基、または炭素数6以上12以下のアリール基が好ましく、メチル基、プロピル基またはフェニル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
シリコーン骨格において、上記の基(側鎖)が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基(炭素数0以上14以下)、イミノ基、(アミノエチル)アミノ基、(ジメチルアミノエチル)アミノ基、ポリオキシアルキレン基、メルカプト基、およびエポキシ基等が挙げられる。
上記の基(側鎖)がこれらの置換基を有する場合、上記の基(側鎖)はプロピル基であることが好ましい。
なお、ポリグリセロール変性シリコーンを構成するシリコーンは、その少なくとも1部の基が連結基となるように構成されていてもよい。
ポリグリセロール変性シリコーンを構成するシリコーン(ポリグリセロール変性シリコーンの前駆体としてのシリコーン)としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等のストレートシリコーンまたは該ストレートシリコーンの基(側鎖)の一部を置換した変性シリコーン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリグリセロール変性シリコーンのシリコーン骨格部分の数平均式量は、300以上700000以下であることが好ましく、300以上200000であることがより好ましく、1000以上20000であることがさらに好ましい。なお、シリコーン骨格となるシリコーンの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPC)法等により求めることができ、当該シリコーンの数平均分子量をシリコーン骨格の数平均分子量とすることができる。
シリコーン骨格中のケイ素原子の重合度は、特に限定されないが、2以上10,000以下であるのが好ましく、3以上3,000以下であるのがより好ましく、10以上150以下であるのが好ましい。
そして、ポリグリセロール変性シリコーンは、式(6)で表される直鎖状シリコーンであることが好ましい。これにより、上述したようなポリグリセロール変性シリコーンの効果をより顕著に得ることができ、導体パターン形成用インクは、液滴の吐出安定性に特に優れ、形成される導体パターンの断線がより確実に防止されたものとなる。
Figure 2011144228
(式中、R、R、R、t個のR、p個のR、R、R、Rは、同一または異なって、ポリグリセロール鎖が結合した連結基、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルコシキ基、あるいは炭素数6以上22以下のアリール基を示し、R、R、R、t個のR、t個のR、R、R、Rのうち少なくとも1つはポリグリセロール鎖が結合した連結基である。pは0以上10,000以下の数を示す。)
上記式(6)において、ポリグリセロール鎖が結合した連結基は、R、R、R、p個のR、p個のR、R、R、Rのうち少なくとも1個であればよいが、1個以上10個以下であることが好ましく、1個以上5個以下であることがより好ましく、1個以上2個以下であることがさらに好ましい。
また、この連結基は、シリコーン骨格の側鎖、片末端および/または両末端のいずれに位置していてもよい。
ポリグリセロール変性シリコーンとしては、上記式(6)において、R〜Rらなる群から選択される1の基と、R〜R8からなる群から選択される1の基とが、ポリグリセロール鎖が結合した連結基であることが好ましい。
また、ポリグリセロール変性シリコーンとしては、上記式(6)において、p個のRおよびp個のRから選択される3以上の基が連結基であることが好ましい。このような場合、側鎖他置換型のポリグリセロール変性シリコーンとなる。
ポリグリセロール変性シリコーンは、シリコーン骨格中のケイ素原子数(Si)とポリグリセロール鎖中の基(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の合計数(以下、グリセロール基数という)(G)の比(G/Si)が、0.001以上50以下であることが好ましく、0.05以上10以下であることがより好ましく、0.15以上1以下であることがさらに好ましい。
また、ポリグリセロール変性シリコーンとして、異なる化学構造のポリグリセロール変性シリコーンを2種以上用いるものであってもよい。
また、導体パターン形成用インク中におけるポリグリセロール変性シリコーンの含有量は、0.1wt%以上15wt%以下であるのが好ましく、2wt%以上12wt%以下であるのがより好ましい。これにより、ポリグリセロール変性シリコーンの含有量が高すぎて導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性が低下することを防止しつつ、上述したようなポリグリセロール変性シリコーンの効果を十分に発揮することができる。
ポリグリセロール変性シリコーンの重量平均分子量は、500以上500000以下であることが好ましく、750以上200000以下であることが好ましく、1000以上100000以下であることが好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの粘度を十分に低いものとしつつ、ポリグリセロール変性シリコーンは、断線およびクラックの発生をより好適に防止することができる。
数平均分子量は、GPC法(標準ポリスチレンまたはポリエチレングリコール換算)によって測定することができる。
ポリグリセロール変性シリコーンは、反応性不飽和基を有するポリグリセロールと、シリコーン鎖中のケイ素原子の一部に水素原子が結合した、いわゆるオルガノハイドロジェンシリコーンとを、白金系触媒存在下でヒドロシリル化反応させる方法により得ることができる。反応性不飽和基を有するポリグリセロールは、反応性不飽和基と官能基(好ましくはヒドロキシ基またはカルボキシ基)を有する化合物に、酸性触媒又は塩基性触媒存在下、グリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)を、添加速度をコントロールしながら、添加して反応させることにより得ることができる。添加速度を、遅くすることで、分岐度の高い反応性不飽和基を有する分岐ポリグリセロールを製造することが出来る。
また、ポリグリセロール変性シリコーンは、反応性基としてヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1以上の基を有するシリコーンに、酸性またはカリウム等の塩基性触媒の存在下、グリシドールを添加し、グラフト重合させる方法等によっても製造することができる。
(その他の有機バインダー)
また、導体パターン形成用インクは、ポリグリセロール変性シリコーン以外の有機バインダーを含むものであってもよい。
ポリグリセロール変性シリコーン以外の有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
また、インク中に有機バインダーの含有量は、1wt%以上30wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性を特に優れたものとしつつ、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。これに対して、有機バインダーの含有量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、断線やクラックの発生を防止する効果が小さくなる場合がある。また、有機バインダーの含有量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、インクの粘度を十分に低いものとすることが困難な場合がある。
[乾燥抑制剤]
また、導体パターン形成用インクは、乾燥抑制剤を含んでいてもよい。乾燥抑制剤は、インク中の水系分散媒の不本意な揮発を防止するものである。その結果、インクジェット装置の吐出部付近において水系分散媒が揮発することを防止でき、インクの粘度の上昇、乾燥が抑えられる。導体パターン形成用インクは、このような乾燥抑制剤を含む結果、インクの液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。すなわち、インクの液滴の重量のばらつきが小さいものとなり、目詰まり、飛行曲がり等が少ないものとなる。また、特に、インクジェット装置に導体パターン形成用インクを充填した後に、長期間(例えば、5日間)運転を行わずにインクジェット装置を待機状態とした場合であっても、本発明の導体パターン形成用インクは、均一な量で、目的とする位置に精度よく吐出させることができる。
このような乾燥抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(13)で示される化合物、糖アルコール、アルカノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2011144228
(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
上記式(13)で表される化合物は、水素結合性の高い成分である。このため、水との親和性が高く、適度な水分を保持することができ、導体パターン形成用インクの水系分散媒の不本意な揮発を防止することができる。
また、上記化合物は、比較的燃焼しやすく、導体パターンを形成する際には導体パターン内からより容易に除去(酸化分解)することができる。
また、導体パターン形成用インクによって形成されたパターンを乾燥(脱分散媒)する際に、水系分散媒が揮発とともに、上記化合物の濃度が上昇する。これにより、導体パターン前駆体の粘度が上昇するため、導体パターン前駆体を構成するインクの不本意な部位への流れ出しがより確実に防止される。その結果、形成される導体パターンをより高い精度で所望の形状とすることができる。
上述したように、本発明で用いる上記式(13)で表される化合物中における、R、R’は、それぞれ、水素またはアルキル基であるが、R、R’は、ともに水素であるのが好ましい。すなわち、尿素であるのが好ましい。これにより、上述したような保湿性を特に高いものとすることができ、特に優れた吐出安定性を得ることができる。
アルカノールアミンは、保湿性の高い成分であるとともに、金属粒子が前述したようなコロイド粒子である場合に、コロイド粒子表面の分散剤の官能基を活性化させることができ、金属粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等各種のものを挙げることができる。
また、アルカノールアミンは、第3級アミンであるのが好ましい。第3級アミンは、アルカノールアミンの中でも、特に保湿性が高く、上記効果をより顕著なものとすることができる。
また、第3級アミンの中でも、取り扱いやすさや、保湿性の高さ等の観点から、特に、トリエタノールアミンを用いるのが好ましい。
糖アルコールは、糖類のアルデヒド基およびケトン基を還元して得られるものである。
また、糖アルコールは、高い保湿性を有する化合物である。また、糖アルコールは、分子量あたりの酸素数が多いため、雰囲気が糖アルコールの分解温度に達すると、容易に分解して除去される。このため、導体パターンを形成する際には、導体パターンの温度を糖アルコールの分解温度よりも高くすることで、導体パターン内から糖アルコールを確実に除去(酸化分解)することができる。
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、ドルシトール、イディトール、グリセリン(グリセロール)、イノシトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、エリスリトール、マルチトールまたはキシリトールから選択される1種以上を用いることが好ましく、キシリトールを用いることがより好ましく、導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性をより長期にわたって優れたものとすることができる。
上述したような乾燥抑制剤の、導体パターン形成用インク中における含有量は、3wt%以上12wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上10wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの水系分散媒の揮発をより確実に抑制することができ、導体パターン形成用インクは、より長期にわたって液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。
[表面張力調整剤]
また、導体パターン形成用インクには、表面張力調整剤を含んでいてもよい。
表面張力調整剤は、導体パターン形成用インクと基板(セラミックス成形体)との接触角を所定の角度に調整するために用いられる。
表面張力調整剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。
アセチレングリコール系化合物は、少ない添加量で、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲に調整することができる。このように、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲に調整することにより、より微細な導体パターンを形成することができる。また、吐出した液滴内に気泡が混入した場合であっても、速やかに気泡を除去することができる。その結果、形成される導体パターンでのクラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。
アセチレングリコール系化合物としては、例えば、サーフィノール104シリーズ(104E、104H、104PG−50、104PA等)、サーフィノール400シリーズ(420、465、485等)、オルフィンシリーズ(EXP4036、EXP4001、E1010等)(「サーフィノール」および「オルフィン」は、日信化学工業株式会社の商品名)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、インク中には、HLB値が異なる2種以上のアセチレングリコール系化合物を含んでいるのが好ましい。導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
特に、インク中に含まれる2種以上のアセチレングリコール系化合物のうち、最もHLB値が高いアセチレングリコール系化合物のHLB値と、最もHLB値が低いアセチレングリコール系化合物のHLB値との差が、4以上12以下であるのが好ましく、5以上10以下であるのがより好ましい。これにより、より少ないアセチレングリコール系化合物の添加量で、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
インク中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の高いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、8以上16以下であるのが好ましく、9以上14以下であるのがより好ましい。
また、インク中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の低いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、2以上7以下であるのが好ましく、3以上5以下であるのがより好ましい。
インク中に含まれる表面張力調整剤の含有量は、0.001wt%以上1wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以上0.5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角をより効果的に所定の範囲に調整することができる。
[その他の成分]
なお、導体パターン形成用インクの構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、導体パターン形成用インクには、上記成分の他、1,3−プロパンジオールが含まれていてもよい。これにより、インクジェットヘッドの吐出部付近における水系分散媒の揮発をより効果的に抑制することができるとともに、インクの粘度をより適度なものとすることができ、吐出安定性がさらに向上する。
インク中に1,3−プロパンジオールを含む場合、その含有量は、0.5wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、2wt%以上10wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。
また、例えば、導体パターン形成用インクは、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールを含んでいてもよい。導体パターン形成用インクは、上述した尿素以外にも、チオ尿素を含んでいてもよい。
導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角は、特に限定されないが、40°以上80°以下であることが好ましく、50°以上80°以下であることがより好ましい。接触角が小さすぎると、微細な線幅の導体パターンを形成するのが困難となる場合がある。一方、接触角が大きすぎると、吐出条件等によっては、均一な線幅の導体パターンを形成するのが困難となる場合がある。また、着弾した液滴とセラミックス成形体との接触面積が小さくなりすぎてしまい、着弾した液滴が着弾位置からずれてしまう場合がある。
また、導体パターン形成インクの粘度は、特に限定されないが、1.5mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、2.0mPa・s以上6.0mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性を優れたものとすることができるとともに、セラミックス成形体に着弾したインクの濡れ広がりを防止することができ、微細な線幅の導体パターン前駆体を形成することができる。
導体パターン形成インクの表面張力は、30mN/m以上40mN/m以下が好ましい。
《導体パターン形成用インクの製造方法》
次に、上述したような導体パターン形成用インクの製造方法の一例について説明する。
本実施形態では導体パターン形成用インクは、銀コロイド粒子が水系分散媒中に分散したコロイド液であるとして説明する。
本実施形態のインクを製造する際には、まず、上記分散剤と、還元剤とを溶解した水溶液を調製する。
分散剤の配合量としては、出発物質である硝酸銀のような銀塩中の銀と分散剤とのモル比が1:1〜1:100程度となるように配合することが好ましい。銀塩に対する分散剤のモル比が大きくなると、銀粒子の粒径が小さくなって導体パターン形成後の粒子同士の接触点が増えるため、体積抵抗値の低い被膜を得ることができる。
還元剤は、出発物質である硝酸銀(AgNO3−)のような銀塩中のAgイオンを還元して銀粒子を生成するという働きを有する。
還元剤としては、特に限定されず、例えば、ヒドラジン、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系;水酸化ホウ素ナトリウム、水素ガス、ヨウ化水素等の水素化合物系;一酸化炭素、亜硫酸次亜リン酸等の酸化物系、Fe(II)化合物、Sn(II)化合物等の低原子価金属塩系、D−グルコースのような糖類、ホルムアルデヒド等の有機化合物系、あるいは上記の分散剤として挙げたヒドロキシ酸であるクエン酸、りんご酸や、ヒドロキシ酸塩であるクエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウムやタンニン酸等が挙げられる。中でも、タンニン酸や、ヒドロキシ酸は還元剤として機能すると同時に分散剤としての効果を発揮するため好適に用いることができる。あるいは、金属表面で安定した結合を形成する分散剤として上記に挙げたメルカプト酸であるメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸やメルカプト酸塩であるメルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸カリウム等を好適に用いることができる。これらの分散剤や還元剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの化合物を使用する際には、光や熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
また、還元剤の配合量としては、上記出発物質である銀塩を完全に還元できる量が必要であるが、過剰な還元剤は不純物として銀コロイド液中に残存してしまい、成膜後の導電性を悪化させる等の原因となるため、必要最小限の量が好ましい。具体的な配合量としては、上記銀塩と還元剤とのモル比が1:1〜1:3程度である。
本実施形態において、分散剤と還元剤とを溶解して水溶液を調製した後、この水溶液のpHを6〜12に調整することが好ましい。
これは、以下のような理由による。例えば、分散剤であるクエン酸三ナトリウムと還元剤である硫酸第一鉄とを混合した場合、全体の濃度にもよるがpHは大体4〜5程度と、上記したpH6を下回る。このとき存在する水素イオンは、下記反応式(1)で表される反応の平衡を右辺に移動させ、COOHの量が多くなる。したがって、その後、銀塩溶液を滴下して得られる銀粒子表面の電気的反発力が減少し、銀粒子(コロイド粒子)の分散性が低下してしまう。
−COO+H → −COOH…(1)
そこで、分散剤と還元剤とを溶解して水溶液を調製した後、この水溶液にアルカリ性の化合物を添加し、水素イオン濃度を低下させる。
添加するアルカリ性の化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水や、上述したアルカノールアミン等を用いることができる。これらの中でも、アルカノールアミンを用いた場合、pHを容易に調整できるとともに、形成される銀コロイド粒子の分散安定性をより向上させることができる。
なお、アルカリ性の化合物の添加量が多すぎて、pHが12を超えると、鉄イオンのような残存している還元剤のイオンの水酸化物の沈殿が起こりやすくなる。
次に、本実施形態のインクの製造工程では、調製した分散剤と還元剤とが溶解した水溶液に銀塩を含む水溶液を滴下する。
銀塩としては、特に限定されず、例えば、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀、クロム酸銀、硝酸銀、二クロム酸銀等を用いることができる。これらの中では、水への溶解度が大きい硝酸銀が好ましい。
また、銀塩の量は、目的とするコロイド粒子の含有量、および、還元剤により還元される割合を考慮して定められるが、例えば、硝酸銀の場合、水溶液100重量部に対して15〜70重量部程度とするのが好ましい。
銀塩水溶液は、上記銀塩を純水に溶かすことにより調製し、調製した銀塩の水溶液を徐々に前述した分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する。
この工程において、銀塩は還元剤により銀粒子に還元され、さらに、該銀粒子の表面に分散剤が吸着して銀コロイド粒子が形成される。これにより、銀コロイド粒子が水溶液中にコロイド状に分散した水溶液が得られる。
得られた溶液中には、コロイド粒子のほかに、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体のイオン濃度が高くなっている。このような状態の液は、凝析が起こり、沈殿しやすい。そこで、このような水溶液中の余分なイオンを取り除いてイオン濃度を低下させるために、洗浄を行うことが望ましい。
洗浄の方法としては、例えば、得られたコロイド粒子を含む水溶液を一定期間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、さらに一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度が繰り返す方法、上記静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過等でイオンを取り除く方法等を挙げることができる。
あるいは、次のような方法で洗浄を行ってもよい。溶液を製造した後に溶液のpHを5以下の酸性の領域に調整し、上記反応式(1)の反応の平衡を右辺に移動させることで銀粒子表面の電気的反発力を減少させ、積極的に金属コロイド粒子を凝集させた状態で洗浄を行い、塩類や溶媒を除去することができる。メルカプト酸のような低分子量の硫黄化合物を分散剤として粒子表面に有する金属コロイド粒子であれば金属表面で安定した結合を形成するため、凝集した金属コロイド粒子は、溶液のpHを6以上のアルカリ性の領域に再調整することにより、容易に再分散し、分散安定性に優れた金属コロイド液を得ることができる。
本実施形態のインクの製造過程では、上記工程の後、必要により銀コロイド粒子が分散した水溶液に水酸化アルカリ金属水溶液を添加し、最終的なpHを6〜11に調整することが好ましい。
これは、還元後に洗浄を行ったため、電解質イオンであるナトリウム濃度が減少している場合があり、このような状態の溶液では、下記反応式(2)で表される反応の平衡が右辺へ移動する。このままでは、銀コロイドの電気的反発力が減少して銀粒子の分散性が低下するため、適当量の水酸化アルカリを添加することにより、反応式(2)の平衡を左辺に移動させ、銀コロイドを安定化させるのである。
−COONa+HO → −COOH+Na+OH…(2)
このときに使用する上記水酸化アルカリ金属としては、例えば、最初にpHを調整する際に用いた化合物と同様の化合物を挙げることができる。
pHが6未満では、反応式(2)の平衡が右辺に移動するため、コロイド粒子が不安定化し、一方、pHが11を超えると、鉄イオンのような残存しているイオンの水酸化塩の沈殿が起こりやすくなるため好ましくない。ただし、予め鉄イオン等を取り除いておけば、pHが11を超えても大きな問題はない。
なお、ナトリウムイオン等の陽イオンは水酸化物の形で加えるのが好ましい。これは、水の自己プロトリシスを利用できるため最も効果的にナトリウムイオン等の陽イオンを水溶液中に加えることができるからである。
また、pHを6〜11に調整する上記工程において、水酸化アルカリ金属水溶液の代わりに、アルカノールアミンを用いてもよい。
以上のようにして得られた銀コロイド粒子が分散した水溶液に、ポリグリセロール変性シリコーン等の他の成分を添加することにより、導体パターン形成用インク(本発明の導体パターン形成用インク)を得る。
なお、ポリグリセロール変性シリコーン等の他の成分の添加時期は、特に限定されず、銀コロイド粒子の形成後ならいつでもよい。
《導体パターンおよび配線基板》
次に、本発明の導体パターンおよび配線基板について説明する。
図1に示すように、配線基板(セラミックス回路基板)30は、セラミックス基板31が多数(例えば10枚から20枚程度)積層されてなる積層基板32と、この積層基板32の最外層、すなわち一方の側の表面に形成された、微細配線等からなる導体パターン(回路)21とを有して形成されたものである。
積層基板32は、積層されたセラミックス基板31、31間に、導体パターン(回路、本発明の導体パターン)20を備えている。
導体パターン20は、本発明の導体パターン形成用インクにより形成されたパターン(導体パターン前駆体、以下、単に前駆体ともいう。)10を加熱する(焼結する)ことにより形成される薄膜状の導体パターンであって、銀粒子が相互に結合されてなり、少なくとも導体パターン表面において前記銀粒子同士が隙間なく結合している。
このような導体パターン20は、本発明の導体パターン形成用インクを用いて形成されている。このため、その前駆体10は、精度よく形成されており、クラックの発生が防止されている。また、導体パターン20は、断線の発生が防止された、信頼性の高いものとなっている。
導体パターン20の比抵抗は、20μΩcm未満であることが好ましく、15μΩcm以下であることがより好ましい。このときの比抵抗は、インクの付与後、160℃で加熱、乾燥した後の比抵抗をいう。上記比抵抗が20μΩcm以上になると、導電性が要求される用途、すなわち回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる。
なお、上記のような導体パターン20は、携帯電話やPDA等の移動通話機器の高周波モジュール、インターポーザー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、加速度センサー、弾性表面波素子、アンテナや櫛歯電極等の異形電極、その他各種計測装置等の電子部品等に適用することができる。
なお、導体パターン20は、導体パターン前駆体10を焼結処理として160℃以上で20分以上の条件で加熱することにより得られる。なお、この導体パターン前駆体10の焼結は、後述するようにセラミックス成形体15の脱脂、焼結とともに行うことができる。
なお、導体パターン20Aも、導体パターン20と同様に、本発明の導体パターン形成用インクにより形成されたものとなっている。
セラミックス基板31は、シート状をなしており、導体パターン20を支持する。
また、セラミックス基板31には、導体パターン20に接続するコンタクト(ビア)33が形成されている。このような構成によって導体パターン20は、上下に配置された導体パターン20、20間が、コンタクト33によって導通したものとなっている。
なお、セラミックス基板31は、後述するように、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等のセラミックス粉末と、バインダーとを含む材料をシート状にし、その後、加熱処理(焼結処理)することにより得られる基板である。
以上のような配線基板30は、本発明の導体パターン形成用インクを用いて形成されているため、導体パターン20の断線が防止され、信頼性の高いものとなっている。
また、上述したような配線基板30は、各種の電子機器に用いられる電子部品となるものであり、各種配線や電極等からなる回路パターン、積層セラミックスコンデンサ、積層インダクター、LCフィルタ、複合高周波部品等を基板に形成してなるものである。
《配線基板の製造方法》
次に、上述したような配線基板の製造方法を、図2の概略工程図を参照して説明する。
以下、各工程について詳細に説明する。
[セラミックス成形体形成工程(基板準備工程)]
まず、原料粉体として、平均粒径が1μm以上2μm以下のアルミナ(Al)や酸化チタン(TiO)等からなるセラミックス粉末(セラミックス材料)と、平均粒径が1μm以上2μm以下のホウ珪酸ガラス等からなるガラス粉末とを用意し、これらを適宜な混合比、例えば1:1の重量比で混合する。
特に、基板(セラミックス成形体15)の材料として、ガラス材料を含むことにより、以下のような効果が得られる。ガラス材料は、焼結時において溶融し、導体パターン20を形成されるセラミックス基板31に固定、密着させる機能を有している。特に、本発明においては、導体パターン形成用インク中のポリグリセロール変性シリコーンは、焼結後において二酸化ケイ素となり、導体パターン20がセラミックス基板31のガラス材料と密着しやすいものとなる。このため、形成される導体パターン20および配線基板30はより信頼性の高いものとなる。
次に、得られた混合粉末に適宜なバインダー(結合剤)や可塑剤、有機溶剤(分散剤)等を加え、混合・撹拌することにより、スラリーを得る。ここで、バインダーとしては、ポリビニルブチラールが好適に用いられるが、これは水に不溶であり、かつ、いわゆる油系の有機溶媒に溶解しあるいは膨潤し易いものである。
次に、得られたスラリーを、ドクターブレード、リバースコーター等を用いてPETフィルム上にシート状に形成し、製品の製造条件に応じて数μm以上数百μm以下の厚さのシートに成形し、その後、ロールに巻き取る。
続いて、製品の用途に合わせて切断し、さらに所定寸法のシートに裁断する。本実施形態では、例えば1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断する。
次に、必要に応じて所定の位置に、COレーザー、YAGレーザー、機械式パンチ等によって孔開けを行うことでスルーホール(貫通孔)を形成する。
そして、このスルーホールに、金属粒子が分散した厚膜導電ペーストを充填することにより、コンタクト6となるべき部位(コンタクト前駆体16)を形成する。厚膜導電ペーストとしては、後述するような導体パターン形成用インクを用いることができる。
以上により、複数の基板(セラミックス成形体15)を準備する。
[導体パターン前駆体形成工程]
以上のようにして得られたセラミックス成形体15の一方の側の表面に、導体パターン20となる導体パターン前駆体10を、コンタクト前駆体16に連続した状態に形成する。すなわち、図3(a)に示すようにセラミックス成形体15上に、前述したような導体パターン形成用インク(以下単にインクともいう)1を液滴吐出(インクジェット)法により付与し、前記導体パターン前駆体10を形成する。
本実施形態において、導体パターン形成用インクの吐出は、例えば図4および図5に示すインクジェット装置(液滴吐出装置)100を用いることにより行うことができる。以下に、インクジェット装置100について説明する。
図4は、インクジェット装置100の斜視図である。図4において、X方向はベース130の左右方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
インクジェット装置100は、図5に示すインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド。以下、単にヘッドと呼ぶ)110と、ベース130と、テーブル140と、制御装置190と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180とを有している。
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等のインクジェット装置100の各構成部材を支持する台である。
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、基材S(本実施形態ではセラミックス成形体15)を載置するものである。
また、テーブル140の裏面には、ラバーヒータ(図示せず)が配設されている。テーブル140上に載置されたセラミックス成形体15は、その上面全体がラバーヒータにて所定の温度に加熱されるようになっている。
セラミックス成形体15に着弾したインク1は、その表面側から水系分散媒の少なくとも一部が蒸発する。このとき、セラミックス成形体15は加熱されているので、水系分散媒の蒸発が促進される。そして、セラミックス成形体15に着弾したインク1は、乾燥とともにその表面の外縁から増粘し、つまり、中央部に比べて外周部における固形分(粒子)濃度が速く飽和濃度に達することから表面の外縁から増粘していく。外縁の増粘したインク1は、セラミックス成形体15の面方向に沿う自身の濡れ広がりを停止するため、着弾径しいては線幅の制御が容易になる。
セラミックス成形体15の加熱温度としては、例えば、40℃以上100℃以下で行うのが好ましく、50℃以上70℃以下で行うのがより好ましい。このような条件とすることにより、水系分散媒が蒸発した際に、クラックが発生するのをより効果的に防止することができる。
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モータ172とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140の位置を決定し、これにより、ベース130におけるセラミックス成形体15の位置を決定する。
第1移動手段171は、Y方向と略平行に設けられた2本のレールと、当該レール上を移動する支持台とを有している。第1移動手段171の支持台は、モータ172を介してテーブル140を支持している。そして、支持台がレール上を移動することにより、基材Sを載置するテーブル140は、Y方向に移動および位置決めされる。
モータ172は、テーブル140を支持しており、θz方向にテーブル140を揺動および位置決めする。
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモータ182と、モータ183、184、185とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110の位置を決定する。
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱と、当該支持柱同士の間に当該支持柱に支持されて設けられ、2本のレールを有するレール台と、レールに沿って移動可能でヘッド110を支持する支持部材(図示せず)とを有している。そして、支持部材がレールに沿って移動することにより、ヘッド110は、X方向に移動および位置決めされる。
リニアモータ182は、支持部材付近に設けられており、ヘッド110のZ方向の移動および位置決めをすることができる。
モータ183、184、185は、ヘッド110を、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決めする。
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180とにより、インクジェット装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基材Sとの相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。
図5に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によってインク1をノズル(突出部)118から吐出するものである。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインクを吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、インク1に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバ116およびリザーバ116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
リザーバ116には、図示せぬインクタンクよりインク1が供給される。リザーバ116は、各インク室117にインク1を供給するための流路を形成している。
また、ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、インク1を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して開口されている。そして、各インク室117から対応するノズル118に向かって、インク流路が形成されている。
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバ116からインク室117にインク1が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118からインク1が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、インク1の吐出条件を制御し得るようになっている。
制御装置190は、インクジェット装置100の各部位を制御する。例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節してインク1の吐出条件を制御したり、テーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180を制御することにより基板Sへのインク1の吐出位置を制御する。
以上のようなインクジェット装置100を用いることにより、インク1を、セラミックス成形体15(基材S)上の所望する場所に所望の量、精度良く吐出し、配することができる。さらに、インク1は、導体パターン形成用インクであるので、図5(a)に示したように導体パターン前駆体10を、長時間にわたって、精度良くしかも容易に形成することができる。また、インク1の付与を一時的に停止して、長期間放置した場合であっても、ヘッド110のノズル118の目詰まりが防止されており、極めて短時間の予備運転で、インク1についての優れた液滴の吐出安定性が得られる。
なお、形成した導体パターン前駆体10について、さらに乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、上記の液滴吐出時におけるセラミックス成形体15の加熱温度と同様の条件で行うことができる。
また、一般の導体パターン前駆体の形成時においては、水系分散媒の揮発に伴って、銀粒子同士が凝集し、バルジやクラックが生じる問題があったが、本発明の導体パターン前駆体10は、ポリグリセロール変性シリコーンを含むことにより、このような問題が防止されている。
また、液滴吐出方法によりインク1を付与してから、セラミックス成形体15を加熱して水等の分散媒を蒸発させ、当該加熱後の導体パターン前駆体10の上に再度インク1を付与する、といった工程を繰り返し行うことで、厚膜の導体パターン前駆体10を形成してもよい。このような場合、セラミックス成形体15に一旦付与されたインク1の粘度が上昇することから、インク1がセラミックス成形体15上に過度に濡れ広がることを防止し、導体パターン前駆体10の厚さ、線幅等をより精度よく目的のものとすることができる。
また、この場合において、分散媒を蒸発させた後のインク1に乾燥抑制剤が含まれる場合、形成された導体パターン前駆体10が完全に乾燥しない状態でもパターンが流失してしまうおそれがない。従って、一旦、インク1を付与して乾燥してから長時間放置し、その後、再度インク1を付与することが可能になる。
また、この場合において、ポリグリセロール変性シリコーンは、化学的、物理的に安定な化合物であるので、インクを付与して乾燥してから長時間放置してもインクが変質するおそれがなく、再度インクを付与することが可能になり、均質なパターンを形成できる。これにより、導体パターン前駆体10自体が多層構造になるおそれがなく、この結果、層間同士の間の比抵抗が上昇して導体パターン20全体の比抵抗が増大するおそれがない。
上記の工程を経ることによって、本実施形態の導体パターン20は、従来のインクによって形成された導体パターンに比べて厚く形成することができる。より具体的には5μm以上の厚みのものを形成することができる。
このようにして導体パターン前駆体10を形成したら、同様の工程により、導体パターン前駆体10を形成したセラミックス成形体15を必要枚数、例えば10枚から20枚程度作製する。
[積層工程]
次いで、これらセラミックス成形体15からPETフィルムを剥がし、図3(b)に示すようにこれらを積層することにより、積層体17を得る。
この際に、積層するセラミックス成形体15については、上下に重ねられるセラミックス成形体15間で、それぞれの導体パターン前駆体10が必要に応じてコンタクト前駆体16を介して接続するように配置する。
その後、セラミックス成形体15を構成するバインダーのガラス転移点以上に加熱しつつ、各セラミックス成形体15同士を圧着する。これにより、積層体17を得る。なお、一般の導体パターン形成用インクには、液滴の吐出安定性を優れたものとするために乾燥抑制剤を大量に添加する場合があり、このような場合、添加剤が結晶として本工程において析出しやすい問題があった。しかしながら、本発明では、導体パターン形成用インク1にポリグリセロール変性シリコーンが含まれることにより、乾燥抑制剤の含有量を比較的低いものとすることができ、このような問題を防止することができる。
[加熱工程]
このようにして積層体17を形成したら、例えば、ベルト炉などによって加熱処理する。これにより、各セラミックス成形体15は焼結されることで、図1に示すようにセラミックス基板31となり、また、導体パターン前駆体10は、これを構成する銀コロイド粒子が焼結して配線パターンや電極パターンからなる導体パターン(回路)20となる。そして、このように積層体17が加熱処理されることで、この積層体17は図1に示した積層基板32となる。
ここで、積層体17の加熱温度としては、セラミックス成形体15中に含まれるガラス材料の軟化点以上とするのが好ましく、具体的には、600℃以上900℃以下とするのが好ましい。また、加熱条件としては、適宜な速度で温度を上昇させ、かつ下降させるようにし、さらに、最大加熱温度、すなわち前記の600℃以上900℃以下の温度では、その温度に応じて適宜な時間保持するようにする。
このようにガラスの軟化点以上の温度、すなわち前記温度範囲にまで加熱温度を上げることにより、得られるセラミックス基板31のガラス成分を軟化させることができる。したがって、その後常温にまで冷却し、ガラス成分を硬化させることにより、積層基板32を構成する各セラミックス基板31と導体パターン20との間がより強固に固着するようになる。
また、このような温度範囲で加熱することにより、得られるセラミックス基板31は、900℃以下の温度で焼結されて形成された、低温焼結セラミックス(LTCC)となる。
ここで、セラミックス成形体15上に配されたインク1中の金属は、加熱処理によって互いに融着し、連続することによって導電性を示すようになる。
このような加熱処理によって導体パターン20は、セラミックス基板31中のコンタクト33に直接接続させられ、導通させられて形成されたものとなる。ここで、この導体パターン20が単にセラミックス基板31上に載っているだけでは、セラミックス基板31に対する機械的な接続強度が確保されず、したがって衝撃等によって破損してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、前述したようにセラミックス成形体15中のガラスを一旦軟化させ、その後硬化させることにより、導体パターン20をセラミックス基板31に対し強固に固着させている。したがって、形成された導体パターン20は、機械的にも高い強度を有するものとなる。
なお、このような加熱処理により、導体パターン20Aについても前記導体パターン20と同時に形成することができ、これによってセラミックス回路基板(配線基板)30を得ることができる。
以上のようなセラミックス回路基板30の製造方法では、導体パターンの形成に際し、インク1を使用しているため、インク1の液滴の吐出安定性が優れており、導体パターン前駆体10を精度よく形成できる。また得られる導体パターン20は、クラックの発生、断線が防止された信頼性の高いものとなっている。また、製造されるセラミックス回路基板30も、信頼性の高いものとなっている。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、金属粒子を溶媒に分散してなる分散液として、コロイド液を用いる場合について説明したが、コロイド液でなくてもよい。
また、前述した実施形態では、導体パターン形成用インクは、銀粒子が分散したものとして説明したが、銀以外のものであってもよい。金属粒子に含まれる金属としては、例えば、銀、銅、パラジウム、白金、金、または、これらの合金等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。金属粒子が合金である場合、前記金属が主とするもので、他の金属を含む合金であってもよい。また、上記金属同士が任意の割合で混ざった合金であってもよい。また、混合粒子(例えば、銀粒子と銅粒子とパラジウム粒子とが任意の比率で存在するもの)が液中に分散したものであってもよい。これら金属は、抵抗率が小さく、かつ、加熱処理によって酸化されない安定なものであるから、これらの金属を用いることにより、低抵抗で安定な導体パターンを形成することが可能になる。
また、例えば、前述した実施形態では、液滴吐出方式としてピエゾ方式を用いたが、これに限定されず、例えば、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。
また、例えば、前述した実施形態では、導体パターン前駆体を形成する基板として、セラミックス成形体を用いることして説明したが、これに限定されない。導体パターン前駆体の形成に用いられる基板としては、特に限定されず、例えば、セラミックス焼結体、アルミナ焼結体、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、ガラス等からなる基板等が挙げられる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[1]ポリグリセロール変性シリコーンの合成
まず、本発明の導体パターン形成用インクの製造に先立ち、ポリグリセロール変性シリコーンの合成を行った。
(合成例1)
ポリグリセロール変性シリコーンA(連結基: −CHCHCH−C−O−)の合成
フェノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:BY16−752[両末端変性、比重= 0.99g/mL、粘度=110cSt、ヒドロキシ基当量=1500(平均分子量= 3000相当)、GPC(カラム:G4000HXL+G2000HXL(東ソー(株)製)、THF溶液(50mmol/L酢酸添加)、40℃、ポリスチレン換算)実測値:数平均分子量(Mn)=2340、重量平均分子量(Mw)=4780]):450gをフラスコに取り、1M水酸化カリウムエタノール溶液:15mLを加え、撹拌しながら減圧下に95℃まで加温し、淡橙色油状物としてカリウム化フェノール変性シリコーンを得た。激しく撹拌しながらアルゴン気流下にグリシドール77.8g(3.5当量)を定量送液ポンプを用いて5時間かけて添加した。20分間さらに加熱撹拌後、室温まで冷却すると、淡黄色粘稠油状生成物が得られた。得られた分岐ポリグリセロール変性シリコーンにエタノール500mLを加え、カチオン交換樹脂によりカリウムを除去、濃縮し、微黄色油状物として分岐ポリグリセロール変性シリコーンAを得た(収率99.6%)。13C−NMRスペクトルの解析により、基(1)のメチン炭素由来のシグナル(78.0〜81.0ppm)の存在から、基(1)を有する分岐ポリグリセロール変性シリコーンであることを確認した。また1H−NMRスペクトルの解析により、平均グリセロール基数(G)=6.8(片側3.4)、平均ケイ素原子数(Si)=33.5、G/Si比は0.20であり、GPC解析に依れば、数平均分子量(Mn)は2800であった。
(合成例2〜8)
ポリグリセロール変性シリコーンの合成に用いる材料の種類、配合量、合成条件を合成例1から適宜調整することにより、表1に示すような7種のポリグリセロール変性シリコーンB〜Hを得た。
表1に得られたポリグリセロール変性シリコーンの性状を示す。表中、連結基において、(8)は式(8)の連結基を、(11)は式(11)の連結基を、(7)は、式(7)の連結基のうちRが−CHCHCH−、AOが−CHCH−、q、rが1のものを、(12)は、式(12)の連結基のうちRが−CHCHCH−、AOが−CHCH−、yが1のものを示す。
Figure 2011144228
[2]導体パターン形成用インクの製造
(実施例1)
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸三ナトリウム二水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い銀コロイド液を得た。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。
この銀コロイド液に、ポリグリセロール変性シリコーンAと、乾燥抑制剤としてのキシリトールと、表面張力調整剤としてのサーフィノール104PG−50(日信化学工業社製)およびオルフィンEXP4036(日信化学工業社製)とを添加し、さらに濃度調整用のイオン交換水を添加して調整し、導体パターン形成用インクとした。
(実施例2〜14)
各材料の種類、材料を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして導体パターン形成用インクを製造した。
(比較例1、2)
ポリグリセロール変性シリコーンを添加せず、その他の成分の配合量を表2に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして導体パターン形成用インクを製造した。
(比較例3)
ポリグリセロール変性シリコーンの代わりに有機バインダーとしてポリエチレングリコール(重量平均分子量:400)を用い、他の成分の配合量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして導体パターン形成用インクを製造した。
表2に各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクの組成を示す。なお、表中、トリエタノールアミンをTEA、モノエタノールアミンをMEA、ジエタノールアミンをDEA、尿素をUr、キシリトールをXylとした。
Figure 2011144228
[3]液滴吐出の安定性評価(安定吐出性評価)
[3.1]着弾位置精度評価
室温25℃、相対湿度50%、クラス100のクリーンルーム内に設置した図4、図5に示すようなインクジェット装置に、前記各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクを充填し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、インクジェットヘッドの各ノズルから、50000発(50000滴)の液滴の連続吐出を行った。導体パターン形成用インクを充填した後の、インクジェットヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された50000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
A:ズレ量dの平均値が0.03μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.03μm以上、0.08μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.08μm以上、0.12μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.12μm以上。
[3.2]連続吐出試験(目詰まり評価)
室温27℃、相対湿度50%、クラス100のクリーンルーム内に設置した図4、図5に示すようなインクジェット装置内に、前記各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクを充填し、インクジェット装置を36時間、連続で運転させることにより、導体パターン形成用インクの吐出を行った。連続運転後における、インクジェットヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%以上、1.0%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が1.0%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
なお、上記の評価は、各実施例および各比較例について、同様の条件で行った。
[3.3]液滴吐出量の安定性評価
室温25℃、相対湿度50%、クラス100のクリーンルーム内に設置した図4、図5に示すようなインクジェット装置内に、前前記各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクを充填し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、インクジェットヘッドの各ノズルから、100000発(100000滴)の液滴の連続吐出を行った。インクジェットヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
A:ΔW/Wの値が、0.020未満。
B:ΔW/Wの値が、0.020以上、0.420未満。
C:ΔW/Wの値が、0.420以上、0.720未満。
D:ΔW/Wの値が、0.720以上。
[4]セラミックス回路基板の作製および評価
各実施例および各比較例で得られた導体パターン形成用インクを、それぞれ図4、5に示すようなインクジェット装置に投入した。
次に、上記セラミックスグリーンシートを60℃に昇温保持した。各吐出ノズルからそれぞれ1滴当り15ngの液滴を順次吐出し、線幅が35μm、厚み15μm、長さが10.0cmのライン(前駆体)を20本描画した。各ライン間の距離は、5mmとした。そして、このラインが形成されたセラミックスグリーンシートを乾燥炉に入れ、60℃で30分間加熱して乾燥した。
上記のようにして、ラインが形成されたセラミックスグリーンシートを第 1のセラミックスグリーンシートとした。この第1のセラミックスグリーンシートを各インクにつき、20枚ずつ作成した。また、各シートについて、クラックがあるか否かを確認した。この結果を表2に示した。なお、表2には、第1のセラミックスグリーンシートのうち、ラインにクラックの入っていない良品の数を示した。
次に、別のセラミックスグリーンシートに上記の金属配線の両端位置に機械式パンチ等によって孔開けを行うことで計40箇所に直径100μmのスルーホールを形成し、得られた各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクを充填することでコンタクト(ビア)を形成した。さらに、このコンタクト(ビア)上に2mm角のパターンを、得られた各実施例および各比較例の導体パターン形成用インクを用いて上記液滴吐出装置を用いて端子部を形成した。
この端子部が形成されたセラミックスグリーンシートを第2のセラミックスグリーンシートとした。
次に、第2のセラミックスグリーンシートの下に第1のセラミックスグリーンシートを積層し、さらに無加工のセラミックスグリーンシートを補強層として2枚積層し、生の積層体を得た。この生の積層体を各インクにつき、第1のセラミックスグリーンシート20枚それぞれに作成し、各インクにつき20ブロックずつ作成した。
次に、生の積層体を、95℃の温度において、250kg/cmの圧力で30分間プレスした後、大気中において、昇温速度66℃/時間で約6時間、昇温速度10℃/時間で約5時間、昇温速度85℃/時間で約4時間といった連続的に昇温する昇温過程を経て、最高温度890℃で30分間保持するといった焼結プロファイルに従って焼結し、セラミックス回路基板を得た。
冷却後、各セラミックス回路基板について、20本の導体パターン上に形成された端子部間にテスタをあて、それぞれ導通の有無を確認し、導通率が100%であったものを良品とした。なお、導通率は、各セラミックス回路基板中にある導通のあった導体パターンの数を、形成した導体パターンの数(20本)で除したものとした。
これらの結果を表3に示す。
Figure 2011144228
表3に示すように、本発明の導体パターン形成用インクでは、吐出安定性に優れるものであった。また、本発明の導体パターン形成用インクを用いて形成された導体パターンおよび配線基板は、優れた導通率を示し、信頼性の高いものであった。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、インク中における銀コロイド粒子の含有量を20wt%、30wt%に変更したところ、上記と同様の結果が得られた。
1…導体パターン形成用インク(インク) 10…導体パターン前駆体(前駆体) 15…セラミックス成形体(セラミックスグリーンシート) 16…コンタクト前駆体 17…積層体 20、20A…導体パターン(回路) 30…セラミックス回路基板(配線基板) 31…セラミックス基板 32…積層基板 33…コンタクト 100…インクジェット装置(液滴吐出装置) 110…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド、ヘッド) 111…ヘッド本体 112…振動板 113…ピエゾ素子 114…本体 115…ノズルプレート 115P…インク吐出面 116…リザーバ 117…インク室 118…ノズル(突出部) 130…ベース 140…テーブル 170…テーブル位置決め手段 171…第1移動手段 172…モータ 180…ヘッド位置決め手段 181…第2移動手段 182…リニアモータ 183、184、185…モータ 190…制御装置 191…駆動回路 S…基材

Claims (9)

  1. 液滴吐出法により、基板上に導体パターンを形成するための導体パターン形成用インクであって、
    金属粒子と、前記金属粒子が分散する水系分散媒と、ポリグリセロール変性シリコーンとを含むことを特徴とする導体パターン形成用インク。
  2. 前記ポリグリセロール変性シリコーンは、下記構造式(1)、(2)、(3)、(4)または(5)で表わされるグリセロール基またはグリシドール基を含んで構成されるポリグリセロール鎖を有するものである請求項1に記載の導体パターン形成用インク。
    Figure 2011144228
  3. 前記ポリグリセロール変性シリコーンのうち、少なくとも1つの前記ポリグリセロール鎖は、エーテル基を有する2価の連結基を介して、シリコーンのケイ素原子に結合している請求項2に記載の導体パターン形成用インク。
  4. 前記ポリグリセロール変性シリコーンは、下記式(6)で表わされるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
    Figure 2011144228
    (式中、R、R、R、t個のR、t個のR、R、R、Rは、同一または異なって、ポリグリセロール鎖が結合した連結基、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルコシキ基、あるいは炭素数6以上22以下のアリール基を示し、R、R、R、t個のR、t個のR、R、R、Rのうち少なくとも1つはポリグリセロール鎖が結合した連結基である。pは0以上10,000以下の数を示す。)
  5. 導体パターン形成用インク中における前記ポリグリセロール変性シリコーンの含有量は、0.1wt%以上15wt%以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
  6. 前記ポリグリセロール変性シリコーンの数平均分子量は、500以上500000以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
  7. 前記基板は、ガラス材料を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の導体パターン形成用インクによって形成されたことを特徴とする導体パターン。
  9. 請求項8に記載の導体パターンが備えられてなることを特徴とする配線基板。
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