JP2011143670A - 木材の乾燥方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の木材の乾燥方法は、木材を人工乾燥によって乾燥させる方法であって、木材10の木口面10aを、木口面遮蔽具11等の、該木材の木口面10aからの水分の蒸発を軽減可能な遮蔽物で覆った状態で、該木材10を人工乾燥する。好ましい木口面遮蔽具11は、木材10の木口面10aを覆うように、該木材10の木口部10bに取り付け可能である。
【選択図】図4
Description
近年、スギ、ヒノキ芯持ち角材の乾燥中に生じる材面割れを低城する高温乾燥法が開発され普及してきた。この高温乾燥法は、乾燥初期に乾球温度120℃の乾燥により、表層にドライングセットを形成することで、材面割れが少なくなるといわれている。高温乾燥法によれば、材面割れが比較的減少するが、十分ではないのが実情である。
また、材面割れは高温乾燥初期において、乾球温度120℃の持続時間が十分ではない場合、いわゆるドライングセット形成の層が浅く、まだ引張応力が表層に存在している状態で発生すると考えられている。
そして、材面割れを防ぐため、過剰に乾球温度120℃の持続時間を長くすると、ドライングセット形成の層は深くなるが、乾燥速度が速いため、表層のドライングセット層の内側の部分が120℃の乾球温度のため、急速に内層の一部に収縮が始まり、この内層の部分が表層のドライングセットに強く拘束され、そのため引張応力が増大して内部割れが起こるといわれている。
本発明の木材の乾燥方法の実施には、温度及び湿度を制御可能な乾燥室を備えた乾燥装置を用いることが好ましい。
図1は、斯かる乾燥装置の一例を示すもので、温度及び湿度を制御可能な乾燥室1を備え、該乾燥室1内に収容した木材10を、該乾燥室1内の温度及び湿度の制御下に乾燥可能である。
乾燥装置は、乾燥中における木材内部の温度を測定可能な温度測定手段6及び乾燥中における木材内部の含水率を測定可能な含水率測定手段7を具備していても良い。また、温度測定手段6及び含水率測定手段7は、それぞれ木材内部の温度又は含水率を、木材表面からの深さが異なる二箇所以上の部位において測定可能になされていても良い。温度測定手段及び含水率測定手段としては、例えば、特許文献1に記載のもの等を用いることができる。
また、乾燥装置は、木材(角材)10の相隣接する2側面に一対の変位計固定用治具を固定し、その一対の変位計固定用治具間に固定した変位計により、乾燥中の角材に生じる変位を計測する、変位測定手段を備えていても良い。このような変位測定手段の例は、例えば、特許文献3に記載のもの等を用いることができる。
人工乾燥は、図1に示す乾燥装置の乾燥室1内のように、少なくとも温度、好ましくは温度又は湿度の両者を制御可能な空間内で、温度又は温度及び湿度の制御下に行う乾燥であるか、又は減圧乾燥である。人工乾燥は、(乾球)温度100℃超140℃以下の高温乾燥工程を有することが好ましく、(乾球)温度110〜130℃の高温乾燥工程を具備することがより好ましい。人工乾燥は、木材を100℃以下の温度(例えば50〜100℃)に加熱して乾燥する中温乾燥や、加熱を伴う減圧乾燥若しくは加熱を伴わない減圧乾燥等であっても良い。
図2及び図3に示す木口面遮蔽具11は、そのような木口面遮蔽具の一例である。
木口面遮蔽具11は、図4に示すように、木材10の木口部10bに脱着自在に取り付け可能であり、該木口部10bに取り付けた状態において、平板状の遮蔽部12の片面が、該木材10の木口面10aを覆うように構成されている。
木材10の木口部10bとは、木材10の長手方向(軸方向)において、木口面10a及びその近傍に位置する部分(例えば木口面10aからの距離が10cm以内の部分)である。
一対の第1突出片13,13は、図3に示すように、その突出方向(遮蔽部12に垂直な方向)の中央部付近に、両者間の距離Wが最も狭くなる部位13a,13aを有し、その部位における両者間の距離W1が、木口面遮蔽具11を装着する木材10の互い平行な2側面10c,10c間の距離W4(図4参照)より小さくなっている。他方、第1突出片13,13の突出方向の先端部における両者間の距離W3は、前記距離W4より大きく、第1突出片13,13の突出方向の基端部(遮蔽部12に隣接する部位)における両者間の距離W2は、前記距離W4と同一又はそれより大きくなっている。
木口面遮蔽具11を木材10を木口部10bに取り付ける際には、一対の第1突出片13,13間が押し拡げられる。第1突出片13,13は、元の状態に戻ろうとする弾性復元力によって木材10をその両側から押圧するため、木材10が乾燥により収縮して前記距離W4が多少減少しても、その取り付け状態が安定に維持される。
木口面遮蔽具11においては、一対の第1突出片13,13が、木口面遮蔽具を木材の木口部に固定する固定手段である。
金属板は、安価で、且つ高温高湿下で錆等の腐食が生じにくい、何度でも使用できるステンレス製が好ましいが、これに限定されるものではない。
また、木口面遮蔽具11は、金属以外の材質、例えば耐熱温度の比較的高い樹脂(例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂)や、セラミック等から形成されていても良い。
木口面遮蔽具11を金属板で形成する場合の該金属板の厚さは、木材の収縮や木材からの蒸気による変形を生じさせない、密着できる厚みを有することが好ましく、例えば0.5mm以上であることが好ましい。
第2突出片14,15は、遮蔽部12からの突出長さL4(遮蔽部12に垂直な方向に測定した突出量,図3参照)が、第1突出片13,13の同突出長さL3(図3参照)よりも短くなっている。これにより、桟木等を介在させ、木材を多段に積み上げて同時に乾燥する場合における、第2突出片14,15と桟木等との干渉を防止することができる。
第1突出片13,13の同突出長さL3は、例えば、20〜80mmとすることが好ましく、30〜50mmとすることがより好ましい。
第2突出片14,15の突出長さL4は、例えば、2〜20mmとすることが好ましく、3〜10mmとすることがより好ましい。
木口面遮蔽具11Aは、図5に示すように、平板状の遮蔽部12と、遮蔽部12の片面に設けられた針16とを有し、針16を、木材10の木口面10aに差し込むことにより、木材10の木口部10bに脱着自在に取り付け可能である。そして、木口部10bに取り付けた状態において、遮蔽部12が木材10の木口面10aを覆うように構成されている。木口面遮蔽具11Aにおいては、針16が、木口面遮蔽具11Aを木材の木口部に固定する固定手段である。
また、図5に示す木口面遮蔽具11Aにおいては、遮蔽部12の4隅部の近傍に針16が設けられているが、針16を設ける部位や設ける本数は適宜に変更でき、例えば、遮蔽部12の、木材の芯部に当接される中央部付近に針16を設けても良いし、正方形状の遮蔽部12の4辺それぞれの中央部の近傍に針16を設けることもできる。
一方、人工乾燥の場合、温度や、温度及び湿度を任意の条件に設定できるため、天然乾燥に比べて材面割れ、内部割れの発生が少なくなる。そのため、通常は、無垢材の状態で乾燥を開始する。
しかし、人工乾燥と言えども、高温乾燥を用いた場合、材には材面割れや内部割れが多く発生することが度々ある。乾燥材の割れ状況を観察した結果、割れが発生する場合には、両者とも殆どの場合、木口部より割れが開始し、ア)割れが途中で消滅しているケース、イ)割れが大きい場合、割れが材の長手方向の中央部まで伸びているケースなどがあることが判った。
木材の性質として、木材の長手方向(軸方向)が最も水分通導性が大きいことが知られている。人工乾燥の場合、天然乾燥に比べて乾燥温度が高いため、材の両端木口部から先に乾燥し、次第に中央部に向かって乾燥していく。実際に、人工乾燥材の長手方向(軸方向)の含水率分布を調べると、両端木口部が含水率が低く、材中央に向かって含水率が高くなっている。このことから、材の収縮も両端木口部から始まることが予想され、中央部側の材との収縮量差が大きくなったときに、材面や内部に割れが発生すると推定された。
このため、材の長さ方向の含水率傾斜を小さくする手法として、急速な乾燥となる、材の両端部を遮蔽することによって、長さ方向(軸方向)の含水率傾斜、即ち寸法変化傾斜を軽減することにした。
木口割れ止め剤は、従来、天然乾燥において干割れを防止するために用いられているものであるが、人工的に温度や温度及び湿度を制御できる人工乾燥においては、木口割れ止め剤が用いられることはなかった。木口割れ止め剤としては、従来、天然乾燥に用いていたもの等を用いることができる。
木材表面コーティング剤は、通常液状物であり、塗布方法としては、刷毛、スプレー等を使用した一般的なコーティング方法を用いることができる。表面コーティング剤の種類としては、ペイントと一般に称される油性塗料、セルロース系、アルキド、ウレタン、フッ素系に代表される溶剤系、アクリル系エマルジョン、アクリルウレタン系に代表される水系、その他、漆、カシュー樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。コーティング量は50〜500g/m2が好ましく、100〜300g/m2がより好ましい。
シリコーン樹脂のコーティング量は200〜800g/m2が好ましく、300〜600g/m2がより好ましい。
例えば、木口面遮蔽具11,11Aの遮蔽部12の形状は、正方形状に代えて、長方形状や円形等とすることもできる。
また、上述した木口面遮蔽具11においては、遮蔽部12の周囲に合計4つの突出片が設けられていたが、これに代えて、遮蔽部12の周囲に一つの突出片のみを設けたり、一対の第1突出片13,13のみを設けることもできる。また、第2突出片14,15を、第1突出片13,13と同様に木材をその両側から押圧可能な一対の突出片とすることもできる。
また、突出長さの等しい3つの突出片や4つの突出片を設けることもできる。また、隣接する突出片同士が連結し、遮蔽部12を底とする有底筒状の木口面遮蔽具とすることもできる。
また、木口面に差し込み可能な突起として、木口面遮蔽具11Aの断面円形の針16に代えて、断面形状が非円形の突起を設けることもできる。また、木口面遮蔽具は、嵌めたり、突起を木口面に差し込んだりする以外の方法により木口部に装着するものであっても良い。
図1に示す構成の乾燥装置を用い、被乾燥材として栃木産のスギから製材した製材直後の芯持柱材(芯持角材、背割りなし、断面寸法11.5cm×11.5cm、長さ300cmの正角材)161本(乾燥前含水率40〜120%)について、以下に示す乾燥スケジュールにて10回の乾燥を行った。
〔乾燥スケジュール〕
初期蒸煮工程(96℃)→第1乾燥工程(乾球温度120℃,湿球温度90℃)→第2乾燥工程(乾球温度110℃,湿球温度90℃)→第3乾燥工程(乾球温度100℃,湿球温度80℃)→第4乾燥工程(乾球温度90℃,湿球温度60℃)
10回の乾燥において、各工程の時間は含水率を監視しながら適宜に変更した。図7に各工程の典型例を示した。
乾燥は、平均含水率15%を目標として行い、モニター材の含水率が15%以下になった時点で終了した。そのため、各乾燥材ロットで乾燥時間は異なり、140〜190時間の間で調整した。
未乾燥の柱材の両木口面を、エポキシ樹脂塗料(商品名エピコン中塗、主剤/硬化剤=4/1、中国塗料(株))を刷毛にて塗布することによりシールした。塗料の塗布量は150g/m2とした。塗布後の柱材を、硬化のために1昼夜気乾放置した後、上記の乾燥試験に供した。
〔実施例2〕
未乾燥の柱材の両木口面を、シリコーン樹脂(商品名シリコーンシーラント、セメダイン800、セメダイン(株))を刷毛にて塗布することによりシールした。樹脂の塗布量は450g/m2とした。塗布後の柱材を、硬化のために1昼夜気乾放置した後、上記の乾燥試験に供した。
未乾燥の柱材の両木口面を、金属板を折曲して形成した図2に示す木口面遮蔽具でシールした。金属板は、ステンレス(SUS304)製であり、木口接地面(遮蔽部)の寸法は118mm×118mm、被せ長さはL3=40mm、L4=4mmであった。これを上記の乾燥試験に供した。
〔実施例4〕
未乾燥の柱材の両木口面を、金属板に針を溶接して形成した図5に示す木口面遮蔽具でシールした。金属板は、ステンレス(SUS304)製であり、木口接地面(遮蔽部)の寸法は115mm×115mm、針16の長さは4mmであった。これを上記の乾燥試験に供した。
未乾燥の柱材を、木口面をシールすることなく、上記の乾燥試験に供した。
〔比較例2〕
未乾燥の柱材の両木口面を、板紙(1.4mm厚、木口接地面(遮蔽部)の寸法118mm×118mm、坪量650g/m2、被せ長さ50mmでシールした。これを上記の乾燥試験に供した。
実施例1〜4及び比較例1,2の方法により乾燥を行った芯持柱材(合計161本、それぞれの本数は表1に示す)について、含水率、材面割れ及び内部割れを、それぞれ以下に示す方法により評価した。
乾燥後の含水率;柱材の両端それぞれから10cmの部位及び柱材の長手方向の中央部の合計3箇所を、50mm巾にカットしてサンプルとし、該サンプルの重量W1を測定した。そして、サンプル片を、JIS Z2201.木材の試験方法 含水率の測定方法に準じて、乾燥機中で105℃に放置し、該サンプルが恒量に達した後の重量W2を測定し、下記式(1)により乾燥後の含水率を求め、3つのサンプルの平均値を乾燥後の柱材の含水率とした。
乾燥後の含水率(%)=(W1−W2)/W2 ×100 ・・・(1)
表1に、実施例1〜4及び比較例1の方法により乾燥を行った芯持柱材について、乾燥後の含水率が10%未満のもの、含水率10%以上15%未満のもの、含水率15%以上20%未満のもの、及び含水率20%以上のものの本数を示した。
柱材の両端それぞれから10cmの位置及び柱材の長手方向の中央部の3箇所における柱材の断面を観察し、各断面において観察される内部割れの程度を下記評価基準で判定し、3箇所の断面のうちの最も悪い断面の評価を、その柱材の内部割れ評価とした。
〔評価基準〕
なし:割れが認められない。
小:最大巾が1mm以内で長さが20mm以内の割れが存在する。
中:最大巾が2mm以内で長さが50mm以内の割れが存在する。
大:最大巾が2mm超又は長さが50mm超の割れが存在する。
柱材側面の4面(木口面以外の面)を観察し、最大巾が2mm以内で且つ長さが50mm以内の割れが1面でも生じている場合を不合格とし、それ以外を合格とした。供試柱材の総数に対する合格の柱材の割合(合格率)を求め、その結果を表2に示した。また、乾燥後の柱材のうち、含水率が10%以上15%未満のものについての合格率を表3に示した。
Claims (7)
- 木材を人工乾燥によって乾燥させる方法であって、木材の木口面を、該木材の木口面からの水分の蒸発を軽減可能な遮蔽物で覆った状態で、該木材を人工乾燥する、木材の乾燥方法。
- 前記遮蔽物が、木材の木口面を覆うように、該木材の木口部に取り付け可能な木口面遮蔽具である、請求項1記載の木材の乾燥方法。
- 前記木口面遮蔽具は、木口面に密着させ得る遮蔽部と、該木口面遮蔽具を木材の木口部に固定する固定手段とを備えている、請求項2に記載の木材の乾燥方法。
- 前記固定手段は、前記遮蔽部の周囲に設けた突出片である、請求項3に記載の木材の乾燥方法。
- 前記固定手段は、木口面に差し込み可能な突起である、請求項3に記載の木材の乾燥方法。
- 前記遮蔽物が、木口割れ止め剤、目止め剤又は塗料である木材用表面コーティング剤である、請求項1記載の木材の乾燥方法。
- 前記遮蔽物が、シリコーン樹脂である、請求項1記載の木材の乾燥方法。
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