ところで、特許文献1に示される受光素子では、p−i−n型受光素子に入射する光の入射角度を規定するために、半導体基板の裏面をp−i−n型受光素子の形成領域よりも広く形成し、且つ受光窓を除く裏面全面に反射層を形成している(特許文献1の図3(c)参照)。このように、特許文献1に示される構成の場合、光の入射角度を規定するために、半導体基板の裏面に、比較的広い範囲に渡って、反射層を形成する領域を確保しなくてはならないので、半導体基板の体格が増大する、という問題があった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、光の入射角度を規定することができるようにしながらも、体格の増大が抑制された受光素子を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、半導体基板と、半導体基板の一面側に形成された、光を検知して、検知した光を電気信号に変換する受光部と、を備え、受光部の形成面の裏面が光の入射面とされた受光素子であって、半導体基板の厚さ方向にトレンチが形成され、該トレンチによって、受光部の受光面と、半導体基板内に入射した光の進行方向とが成す光の入射角度を規定したことを特徴とする。
従来技術のように、半導体基板の裏面に、受光部へ入射する光の入射角度を規定する反射層が形成された構成の場合、半導体基板の裏面に対して斜め方向から入射してくる光が、半導体基板を介して受光部に入射することを抑制するために、半導体基板の裏面における、受光部から離れた領域にも反射層を形成しなくてはならない。このため、反射層の形成領域が広範囲に及ぶことになる。
これに対して、本発明では、半導体基板の厚さ方向にトレンチが形成されている。これによれば、トレンチによって、半導体基板の裏面に対して斜め方向から入射してくる光が、半導体基板を介して受光部に入射することを抑制することができる。また、半導体基板の裏面に反射層が形成された構成とは異なり、半導体基板の裏面に、比較的広い範囲に渡って反射層を形成する領域を確保する必要がなく、トレンチを形成するための面積だけを確保すれば良いので、体格の増大が抑制される。
請求項2に記載のように、トレンチが、半導体基板に複数形成された構成が好適である。これによれば、受光部に入射する光の入射角度をより効果的に規定することができる。
例えば、受光部の周囲を全て取り囲むように、複数のトレンチが形成された場合、受光部に入射する光を、受光部の受光面に対して垂直方向を中心とする、所定の範囲までの入射角を持つ光に限定することができる。
また、受光部の周囲の一部を取り囲むように、複数のトレンチが形成された場合、トレンチが形成された側から受光面に入射してくる光を、受光面に対して垂直方向から所定の範囲までの入射角を持つ光に限定することができる。なお、もちろんではあるが、トレンチが形成されていない側から受光面に入射してくる光の入射角度は、規定されない。したがって、この場合、受光部には、トレンチが形成された方向からは、トレンチによって規定された、受光面に対して垂直方向から所定の範囲までの入射角を持つ光が入射され、トレンチが形成されていない方向からは、トレンチによって入射角度が規定されない光が入射される。このように、トレンチの形成位置を適宜変更することで、トレンチが形成された側から受光面に入射する光の入射角度のみを規定することができる。
なお、受光部の受光面と、半導体基板に入射した光の進行方向とが成す角度を入射角度θとし、トレンチの受光部側の側面から、その側面とは離れた受光部の端部までの距離をa、トレンチの入射面側の端部から受光部の受光面までの距離をbとすると、上記した入射角度θは、tanθ=b/aという関係式を満たす。この入射角度θを用いると、上記した所定の範囲の入射角は90°−θと表される。
請求項3に記載のように、受光部は、半導体基板において、互いに所定の間隔を置いて複数形成され、トレンチは、半導体基板における、複数形成された受光部の間の領域に形成された構成が好適である。
以下においては、複数の受光部の内、半導体基板の一面に沿うx方向に並んで配置された2つの受光部それぞれを、第1受光部、第2受光部と示し、半導体基板における第1受光部と第2受光部との間の領域に形成されたトレンチを、第1受光部及び第2受光部それぞれに共通のトレンチなので、共通トレンチと示して、請求項3及び請求項4に記載の発明の効果を説明する。
上記構成の場合、共通トレンチによって、x方向における第2受光部側から裏面(以下、入射面と示す)に入射した光が、第1受光部に入射することが抑制され、x方向における第1受光部側から入射面に入射した光が、第2受光部に入射することが抑制される。したがって、第1受光部は、x方向において第1受光部側から入射してくる光を検出し、第2受光部は、x方向において第2受光部側の光を検出する。このように、第1受光部と第2受光部とは、x方向において、異なる入射方向の光を検出する。したがって、例えば、x方向が車両の車幅方向と一致するように、受光素子を車両に配置することで、第1受光部によって、車両の左側から受光素子に入射する太陽光を検出し、第2受光部によって、車両の右側から受光素子に入射する太陽光を検出することができる。このように、請求項3に記載の受光素子は、例えば、車両用の日射センサに適用することができる。
請求項4に記載のように、トレンチは、半導体基板における、複数形成された受光部の間の領域だけではなく、その間の領域とは異なる領域に、受光部と所定の間隔を置いて形成されても良い。これによれば、各受光部専用に設けられたトレンチによって、受光部に入射する光の入射角度をさらに規定することができる。
例えば、トレンチが、半導体基板における第1受光部と第2受光部との間の領域だけではなく、半導体基板の一面に沿い、且つx方向に対して垂直なy方向において、第1受光部の両側に所定の間隔を置いて形成され、第2受光部の両側にも所定の間隔を置いて形成された場合を説明する。この場合、共通トレンチによって、x方向における第2受光部側から入射面に入射した光が第1受光部に入射することが抑制され、x方向における第1受光部側から入射面に入射した光が第2受光部に入射することが抑制される。また、第1受光部専用に設けられた2つのトレンチによって、y方向から入射面に入射した光が第1受光部に入射することが抑制され、第2受光部専用に設けられた2つのトレンチによって、y方向から入射面に入射した光が第2受光部に入射することが抑制される。このように、各受光部それぞれに設けられた専用のトレンチによって、y方向側から入射面に入射する光が、第1受光部及び第2受光部それぞれに入射することが抑制される。したがって、各受光部のx方向側から入射面に入射する光の検出精度が向上される。
請求項9に記載のように、トレンチは、前記半導体基板の厚さ方向に溝部として形成されるものであって、その溝部内が空洞のままとしても良い。これによっても、半導体基板に形成された溝部の内壁面と空気との境界にて、半導体基板に入射した光の一部が反射され、屈折される。したがって、トレンチを介して受光部へ光が入射することが妨げられる。しかしながら、請求項5〜7に記載のように、溝部の空洞が、光を反射する反射材料、光を遮光する遮光材料、若しくは半導体基板の構成材料とは光の屈折が異なる屈折材料によって充填された構成としても良い。
例えば、溝部の空洞が反射材料によって充填された場合、半導体基板を介してトレンチに達した光が、反射材料によって反射され、その反射された光の一部が受光部に入射する。このため、受光部の検出感度を向上させることができる。
なお、上記した屈折材料としては、請求項8に記載のように、光の透過率が電圧印加によって変動する液晶材料を採用することもできる。液晶材料に印加する電圧を調整することで、トレンチを透過する光の量を調整することができる。
請求項10に記載のように、トレンチは、半導体基板の入射面側から一面側に向かって形成されても良いし、請求項11に記載のように、半導体基板の一面側から入射面側に向かって形成されても良い。請求項10に記載の構成の場合、トレンチが、入射面側から形成されるので、請求項11に記載の構成と比べて、受光部に入射する光の入射角度をより狭く規定することができる。請求項11に記載の構成の場合、トレンチを、受光部を形成する過程で形成することができるので、請求項10に記載の構成と比べて、製造工程を簡素化することができる。
請求項12に記載のように、半導体基板の入射面側に、光を遮光する遮光膜が形成された構成を採用することもできる。これによれば、トレンチと遮光膜とによって、受光部に入射する光の入射角度を規定することができる。なお、請求項1に記載のように、トレンチが、受光部に入射する光の入射角度を規定する構成となっているので、遮光膜単体によって、受光部に入射する光の入射角度を規定する構成と比べて、遮光膜を形成するための面積が小さくなる。このように、請求項12に記載の発明の場合、受光部に入射する光の入射角度を規定しつつ、半導体装置の体格が増大することが抑制される。
請求項13に記載のように、遮光膜が、受光部の直上に位置する、半導体基板の入射面側に形成された構成を採用することもできる。これによれば、受光部の直上とは異なる位置の入射面側に、遮光膜を形成するための面積を確保しなくとも良いので、遮光膜の形成による受光素子の体格の増大が抑制される。
請求項14に記載のように、半導体基板の一面の縁に沿って、複数の接続パッドが形成され、半導体基板は、接続パッドに設けられたハンダボールを介して、マザーボードに機械的及び電気的に接続された構成が好ましい。これによれば、半導体基板の一面(受光部の形成面)が、接続パッドと、ハンダボールと、マザーボードとによって覆われるため、外光が受光部に直接入射することが抑制される。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る受光素子の概略構成を示す上面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、受光素子に入射する光の入射角度に対する受光部の出力特性を示すグラフである。図4は、半導体基板がマザーボードに搭載された状態を示す断面図である。
以下においては、図1に示すように、半導体基板10の表面に沿い、紙面に対して左側に向かう方向を左方向、該左方向を反転した方向を右方向とする。そして、左右方向に交差して、紙面に対して上側に向かう方向を前方向、該前方向を反転した方向を後方向とする。また、図2に示すように、半導体基板10の厚さ方向に沿い、一面10aから、その裏面10bに向かう方向を上方向、該上方向を反転した方向を下方向とする。
受光素子100は、要部として、半導体基板10と、受光部20と、トレンチ30と、を有する。本実施形態に係る受光素子100は、上記した構成部材10〜30の他に、半導体基板10を搭載するマザーボード40と、マザーボード40と半導体基板10とを機械的及び電気的に接続するハンダボール50と、を有する。
図1及び図2に示すように、半導体基板10の表面10a側に受光部20が形成され、裏面10bから表面10aに向かってトレンチ30が形成されている。裏面10bが光の入射面となっており、受光部20は、半導体基板10を透過した光を受光する。本実施形態に係る半導体基板10は、シリコンによって形成されており、シリコンは、太陽光の内、赤外線を透過する性質を有する。したがって、受光部20には、赤外線が入射することとなる。以下においては、表面10aを形成面10aと示し、裏面10bを入射面10bと示す。
図4に示すように、形成面10aには、受光部20と配線パターン(図示略)を介して電気的に接続された複数の接続パッド11が形成されている。複数の接続パッド11それぞれは、半導体基板10の縁に沿って形成されており、これら接続パッド11によって、受光部20が囲まれている。複数の接続パッド11それぞれは、マザーボード40の対応するパッド41それぞれと、ハンダボール50を介して機械的及び電気的に接続される。これら半導体基板10とマザーボード40との接続部位11,50,41は、絶縁性を有する被覆樹脂51によって被覆保護される。このような接続構成を採用することで、半導体基板10と、接続パッド11と、ハンダボール50と、パッド41と、マザーボード40と、被覆樹脂51とによって、形成面10aにおける受光部20を含む空間が密閉されている。この結果、受光部20に、外光が直接入射することが抑止される。
受光部20は、光を検知して、検知した光を電気信号に変換するものである。受光部20は、形成面10aの表層に高濃度のn型埋込層が形成され、その埋込層の上に、エピタキシャル成長法によって低濃度のn型層が形成され、この低濃度層の表層にイオン注入や拡散法などによって高濃度のp型層が形成されてなるp−i−n型受光素子である。図1及び図2に示すように、受光部20は、半導体基板10の形成面10a側に形成されており、トレンチ30よりも左方向に形成された第1受光部21と、トレンチ30よりも右方向に形成された第2受光部22と、を有する。第1受光部21と第2受光部22とは、トレンチ30を介して、左右方向に対称となるように形成されている。
トレンチ30は、受光部20に入射する光の入射角度を規定するものである。トレンチ30は、半導体基板10を厚さ方向にエッチングすることで形成された溝部31と、該溝部31内を充填する反射材料32と、によって構成される。溝部31は、入射面10b側から形成面10a側に向かってエッチングすることで形成され、トレンチ30の開口端が入射面10b側に形成されている。反射材料32は、光を反射する材料であり、本実施形態では、アルミニウムを採用している。このアルミニウムは、スパッタリングによって、溝部31内に充填される。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るトレンチ30は、第1受光部21と第2受光部22との間に位置し、且つトレンチ30の前後方向に沿う長さが、各受光部21,22の前後方向に沿う長さよりも長くなっている。
以下、トレンチ30によって規定される光の入射角度を、図3に基づいて説明する。図3に示す横軸は、各受光部21,22の受光面21a,22aと、右方向側から半導体基板10に入射した光の進行方向が成す入射角度θ[deg]を示す。縦軸は、各受光部21,22の信号強度を示し、その単位は任意単位[a.u.]である。図3に実線で示す曲線が、第1受光部21の入射角度θに対する出力特性I1(θ)を示し、波線で示す曲線が、第2受光部22の入射角度θに対する出力特性I2(θ)を示す。
入射角度θが0°の場合、光の照射方向と、入射面10bとが平行になるので、光は半導体基板10に入射せず、各受光部21,22の信号強度はゼロのままである。しかしながら、入射角度θが0°から増大すると、半導体基板10に入射し、且つ各受光部21,22に入射する光の量も増大し始める。入射角度θが90°に達すると、各受光部21,22に入射する光の量が最大となり、各受光部21,22の信号強度が最大となる。入射角度θが90°からさらに増大すると、各受光部21,22の信号強度が減少し始め、やがてゼロとなる。このように、各受光部21,22の出力特性I1(θ),I2(θ)いずれも、入射角度90°で最高となり、入射角度が90°より増大若しくは減少するに従って減少する。
ところで、図3に示すように、各受光部21,22の出力特性I1(θ),I2(θ)それぞれは、入射角度90°を介して非対称となっている。詳しく言えば、第1受光部21は、右方向側から半導体基板10に入射する光(入射角度θが0°〜90°の光)の検出範囲よりも、左方向側から半導体基板10に入射する光(入射角度θが90°〜180°の光)の検出範囲が広くなっている。これとは反対に、第2受光部22は、左方向側から半導体基板10に入射する光の検出範囲よりも、右方向側から半導体基板10に入射する光の検出範囲が広くなっている。これは、トレンチ30によって、各受光部21,22に入射する光の入射角度が規定されるためである。
以下においては、第2受光部22の信号強度がゼロから増大し始める角度をθ1と示し、第1受光部21の信号強度がゼロから増大し始める角度をθ2と示す。入射角度θ1は、入射面10bに入射した光が、第2受光部22の受光面22aに到達し始める最小検出角度を示しており、トレンチ30に依存しない性質を有している。これに対して、入射角度θ2は、図2に示すように、トレンチ30に依存する性質を有しており、トレンチ30によって規定される最大規定角度を示している。入射角度θ2は、トレンチ30の左方向側の側面から、第1受光部21の左方向側の端面までの距離をa、入射面10bから第1受光部21の受光面21aまでの距離をbとすると、tanθ2=b/aという関係式を満たす。
上記したように、第1受光部21と第2受光部22とは、トレンチ30を介して、左右方向に対称となるように形成されている。したがって、トレンチ30の右方向側の側面から第2受光部22の右方向側の端面までの距離をcとすると、この距離cは距離aに等しく、入射面10bから第2受光部22の受光面22aまでの距離をdとすると、この距離dは距離bに等しい。したがって、上記した関係式は、tanθ2=d/cと書き直すこともできる。この関係式は、入射角度θを、各受光部21,22の受光面21a,22aと、左方向側から半導体基板10に入射した光とが成す角度と定義した場合に成立する。
先ず、右方向側から半導体基板10に光が入射する場合(入射角度θが0°〜90°の場合)を考える。入射角度θが最小検出角度θ1よりも小さい場合、光は、形成面10a(受光面21a,22a)に到達せず、各受光部21,22の信号強度はゼロのままである。入射角度θが徐々に増大して、最小検出角度θ1に到達すると、第2受光部22の受光面22aに光が到達し始め、第2受光部22の信号強度がゼロから徐々に増大し始める。一方、第1受光部21の信号強度は、以前ゼロのままである。これは、入射面10bから第1受光部21の受光面21aに向かう光がトレンチ30によって完全に遮断されるためである。入射角度θがさらに増大して、最大規定角度θ2に達すると、入射面10bから受光面21aに向かう光の一部がトレンチ30によって遮断されるものの、受光面21aにも光が到達し始め、第1受光部21の信号強度もゼロから徐々に増大し始める。以下、入射角度θが90°に達するまで各受光部21,22の信号強度は増大し、入射角度θが90°に達すると、その信号強度が最大となる。上記したように、入射角度θが0°〜90°の範囲では、入射面10bから受光面21aに向かう光の一部がトレンチ30によって遮断されるために、第1受光部21の受光面21aに入射する光の量は、第2受光部22の受光面22aに入射する光の量と比べて少ない。したがって、第1受光部21の信号強度は、第2受光部22の信号強度と比べて小さくなる。なお、光の入射角度θが90°の場合、入射面10bから受光面21a,22aに向かういずれの光も、トレンチ30によって遮断されないので、各受光部21,22の信号強度は同一となる。
次に、左方向側から半導体基板10に光が入射する場合(入射角度θが90°〜180°の場合)を考える。入射角度θが90°から増大すると、各受光部21,22の受光面21a,22aに入射する光の量が減少し始め、各受光部21,22の信号強度が減少し始める。入射角度θが90°〜180°の範囲では、入射面10bから受光面22aに向かう光の一部がトレンチ30によって遮断されるため、第2受光部22の受光面22aに入射する光の量は、第1受光部21の受光面21aに入射する光の量と比べて少なくなる。したがって、第2受光部22の信号強度は、第1受光部21の信号強度と比べて小さくなる。入射角度θがさらに増大して、180−θ2°に達すると、入射面10bから第2受光部22の受光面22aに向かう光がトレンチ30によって完全に遮断され、第2受光部22の信号強度がゼロとなる。そして、入射角度θが、180−θ1°に達すると、第1受光部21の受光面22aに達する光もゼロとなり、第1受光部21の信号強度もゼロとなる。
ところで、トレンチ30は、溝部31内が反射材料32によって充填されたものなので、トレンチ30に入射した光は、反射材料32によって反射される。したがって、反射材料32によって反射された光の一部は、入射角度θがθ1〜90°の場合、第2受光部22に入射し、入射角度θが90°〜180−θ1°の場合、第1受光部21に入射する。このように、入射角度θがθ1〜90°の場合、第2受光部22には、半導体基板10を介した光だけではなく、半導体基板10を介して反射材料32によって反射された光が入射される。また、入射角度θが90°〜180−θ1°の場合、第1受光部21には、半導体基板10を介した光だけではなく、半導体基板10を介して反射材料32によって反射された光が入射される。
以上、示したように、第1受光部21と第2受光部22との間に位置するトレンチ30によって、左右方向における、第1受光部21へ入射する光の入射角度が、第2受光部22よりも左方向に規定され、第2受光部22へ入射する光の入射角度が、第1受光部21よりも右方向に規定される。
次に、本実施形態に係る受光素子100の作用効果を説明する。上記したように、本実施形態では、受光部20へ入射する光の入射角度を規定するトレンチ30が、半導体基板10の厚さ方向に形成されている。これによれば、入射面10bに対して斜め方向から入射してくる光が、半導体基板10を介して受光部20に入射することが、トレンチ30によって抑制される。また、反射層が入射面に形成された構成とは異なり、入射面10bに、比較的広い範囲に渡って反射層を形成する領域を確保する必要がなく、トレンチ30の形成面積のみを確保すれば良い。これにより、受光素子100の体格の増大が抑制される。
本実施形態では、受光部20が、トレンチ30よりも左方向に形成された第1受光部21と、トレンチ30よりも右方向に形成された第2受光部22と、を有する。これによれば、第1受光部21と第2受光部22との間に位置するトレンチ30によって、第1受光部21へ入射する光の入射角度が、第2受光部22よりも左方向に規定され、第2受光部22へ入射する光の入射角度が、第1受光部21よりも右方向に規定される。したがって、第1受光部21と第2受光部22それぞれの出力信号に基づいて、光が左方向側から入射面10bに入射しているのか、それとも右方向側から入射面10bに入射しているのかを、判定することができる。例えば、第1受光部21の信号強度が第2受光部22の信号強度よりも大きい場合、左方向側から受光素子100に光が入射していると判定される。これとは反対に、第2受光部22の信号強度が第1受光部21の信号強度よりも大きい場合、右方向側から受光素子100に光が入射していると判定される。なお、第1受光部21と第2受光部22それぞれの信号強度が同一の場合、前後方向、若しくは上方向から受光素子100に光が入射していると判定される。
したがって、例えば、左右方向が車両の車幅方向と一致するように、受光素子100を車両に配置することで、第1受光部21によって、車両の左側から受光素子100に入射する太陽光を検出し、第2受光部22によって、車両の右側から受光素子100に入射する太陽光を検出することができる。このように、本実施形態に係る受光素子100を、例えば、車両用の日射センサに適用することができる。
本実施形態に係るトレンチ30は、半導体基板10を厚さ方向にエッチングすることで形成された溝部31と、溝部31内を充填する反射材料32とによって構成されている。したがって、トレンチ30に入射した光は、反射材料32によって反射され、その反射された光の一部が受光部20に入射するので、受光部20の検出感度を向上することができる。
本実施形態では、トレンチ30が、入射面10b側から形成された例を示した。トレンチ30によって規定される最大規定角度θ2は、トレンチ30の入射面10b側の部位から各受光部21,22の受光面21a,22aまでの距離に依存するので、トレンチ30が形成面10a側から形成された構成と比べて、光の入射角度をより狭く規定することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
以下、図5〜図12に基づいて、受光素子の変形例を示す。なお、図5は、受光素子の変形例を示す上面図である。図6は、図5のVI−VI線に沿う断面図である。図7〜図10は、受光素子の変形例を示す上面図である。図11及び図12は、受光素子の変形例を示す断面図である。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、トレンチ30が、半導体基板10における、第1受光部21と第2受光部22との間の領域に形成された例を示した。しかしながら、トレンチ30を、半導体基板10における、第1受光部21と第2受光部22との間の領域だけではなく、その間の領域とは異なる領域に、各受光部21,22と所定の間隔を置いて形成しても良い。これによれば、各受光部21,22専用に設けられたトレンチ30によって、各受光部21,22に入射する光の入射角度をさらに規定することができる。
例えば、図5及び図6に示すように、トレンチ30が、半導体基板10における、第1受光部21と第2受光部22との間の領域だけではなく、前後方向において、第1受光部21の両側に所定の間隔を置いて形成され、第2受光部22の両側に所定の間隔を置いて形成された構成を採用することができる。
以下、図5及び図6に示す構成の効果を説明するために、第1受光部21と第2受光部22との間に形成されたトレンチ30を共通トレンチ33、第1受光部21専用に設けられた2つのトレンチ30をトレンチ34a,34b、第2受光部22専用に設けられた2つのトレンチ30をトレンチ35a,35bと示す。
図5及び図6に示す構成の場合、共通トレンチ33によって、右方向側から入射面10bに入射した光が第1受光部21に入射することが抑制され、左方向側から入射面10bに入射した光が第2受光部22に入射することが抑制される。また、第1受光部21専用に設けられた2つのトレンチ34a,34bによって、前後方向から入射面10bに入射した光が第1受光部21に入射することが抑制され、第2受光部22専用に設けられた2つのトレンチ35a,35bによって、前後方向から入射面10bに入射した光が第2受光部22に入射することが抑制される。このように、各受光部21,22それぞれに設けられた専用のトレンチ34a〜35bによって、前後方向側から入射面10bに入射する光が、各受光部21,22に入射することが抑制されるので、各受光部21,22の左右方向側から入射面10bに入射する光の検出精度が向上される。また、各受光部21,22の信号強度が同一の場合、上方向側から入射面10bに光が入射していると判定することもできる。
本実施形態では、受光部20が、第1受光部21と、第2受光部22と、を有する例を示した。しかしながら、図7〜図10に示すように、受光部20の数は2個に限定されず、単数でも、3つ以上でも良い。
例えば、図7に示すように、受光部20が、第1受光部21と第2受光部22の他に、前後方向において、第2受光部22と並んで形成される第3受光部23を有する構成を採用することもできる。この場合、半導体基板10における、第2受光部22と第3受光部23との間の領域にトレンチ30が新たに設けられる。新たに設けられたトレンチ30によって、第2受光部22と第3受光部23とに入射する、前後方向側から入射面10bに入射する光の入射角度が規定されるので、第2受光部22と第3受光部23それぞれの出力信号に基づいて、光が前方向側から入射面10bに入射しているのか、それとも後方向側から入射面10bに入射しているのかを、判定することができる。
また、図8に示すように、受光部20が、第1受光部21〜第3受光部23の他に、前後方向において第1受光部21と並び、左右方向において第3受光部23と並ぶように形成された第4受光部24を有する構成を採用することもできる。この場合、半導体基板10における、第3受光部23と第4受光部24との間の領域と、第4受光部24と第1受光部21との間の領域とにトレンチ30が新たに設けられる。これによれば、左前方向側から入射面10bに入射する光を第4受光部24によって検出し、右前方向側から入射面10bに入射する光を第3受光部23によって検出し、右後方向側から入射面10bに入射する光を第2受光部22によって検出し、左後方向側から入射面10bに入射する光を第1受光部21によって検出することができる。
なお、図9に示すように、図8に示す複数のトレンチ30を、1つに連結しても良い。これによれば、トレンチ30によって、各受光部21〜24が分離されるので、トレンチ30による光の入射角度の規定をより確実とすることができる。
また、受光部20の周囲を全て取り囲むように、複数のトレンチ30が形成された構成を採用することもできる。この場合、受光部20に入射する光を、受光部20の受光面に対して垂直方向を中心とする、所定の範囲までの入射角を持つ光に限定することができる。したがって、受光部20を、例えば、周囲の照度を検出する照度センサに適用することができる。上記した構成としては、例えば、図10に示す構成が採用される。図10では、半導体基板10における、受光部20に対する四方に位置する4つの領域全てにトレンチ30が形成されている。
図11に示すように、受光部20の直上の入射面10bに、遮光膜60が形成された構成を採用することもできる。これによれば、トレンチ30と遮光膜60とによって、受光部20に入射する光の入射角度θをさらに大きくすることができる。すなわち、入射角度θをより狭くすることができる。また、受光部20の直上に位置する入射面10bに遮光膜60が形成されるので、受光部20の直上とは異なる位置の入射面10bに遮光膜60が形成される構成と比べて、遮光膜60の形成による受光素子100の体格の増大が抑制される。
本実施形態では、トレンチ30が、入射面10b側から形成される例を示した。しかしながら、図12に示すように、トレンチ30を、形成面10aから形成しても良い。これによれば、トレンチ30を、受光部20を形成する過程で形成することができるので、製造工程を簡素化することができる。
本実施形態では、トレンチ30が、溝部31と、反射材料32とによって構成される例を示した。しかしながら、溝部31を充填する材料としては、反射材料32に限定されず、例えば、光を遮光する遮光材料、若しくは半導体基板10の構成材料であるシリコンとは光の屈折が異なる屈折材料を採用することができる。溝部31が遮光材料によって充填された構成の場合、半導体基板10を介してトレンチ30に達した光を、遮光材料によって遮断することができる。溝部31が屈折材料によって充填された構成の場合、半導体基板10を介してトレンチ30に達した光を、屈折材料によって屈折することができる。なお、屈折材料としては、光の透過率が電圧印加によって変動する液晶材料を採用することができる。液晶材料に印加する電圧を調整することで、トレンチ30を透過する光の量を調整することができる。
トレンチ30を、溝部31のみによって構成しても良い。すなわち、溝部31内を空洞としても良い。この場合においても、トレンチ30(溝部31)を構成する半導体基板10の内壁面と空気との境界にて、半導体基板10に入射した光の一部が反射され、屈折される。したがって、トレンチ30を介して受光部20へ光が入射することが妨げられる。