JP2011140072A - 薄膜部材の曲げ加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】IIB技術で片持ち梁を曲げ加工するに際し、必要なイオン照射量を低減し、かつ、必要な照射イオンのエネルギに大きなマージンを与える。
【解決手段】薄膜部材30にあって支持層20により一部の面積領域は支持されているが、当該支持層20により支持されていない部分に、支持層20から離れ、浮いた状態で先端自由端41に向かうように形成された所定平面形状の片持ち梁40があり、この片持ち梁40を曲げ加工するに際し、少なくとも片持ち梁40の部分は二層以上の複数の薄膜層31,32が厚味方向に上下に積層された積層構造とし、かつ、上下に隣接する薄膜層31,32同士の材質は互いに異ならせる。
【選択図】図1

Description

本発明は半導体集積回路構造や微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)等に必要とされる薄膜部材のミクロンオーダからナノメータオーダにまで及ぶ微細な加工方法に関し、特にその曲げ加工に関する改良に関する。
上述のような微細寸法オーダでの加工方法として、これまでには主として三つの手法があった。すなわち、
(1) 反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を始めするドライエッチングプロセスや、酸,アルカリ溶液を用いてのウェットエッチングプロセス等のエッチング技術、
(2) 真空蒸着法やスパッタリング法に代表される成膜技術、
(3) ナノインプリント技術に認められるような微小鋳型を用いた立体構造作製法等による成形技術、
の三手法である。
しかるに、昨今、これらとは異なる第四の微細加工方法として、後述の先行技術文献中に掲げた非特許文献1に認められるような、イオン照射誘起薄膜変形(Ion Induced Bending:IIB)技術を用いる薄膜部材の曲げ加工方法が開示された。この手法に依れば、上述したそれまでの三手法のみでは構築し得なかった、10nmオーダに及ぶ極小曲率半径での曲げ加工が実現でき、複雑な微細構造を形成できるため、その応用使途は極めて広範なものとなる。
もっとも、薄膜部材の曲げ加工と言うことだけであるならば、下記非特許文献2,3に開示されている“マイクロ折り紙”や、下記非特許文献4に開示されている“応力エミッタ”における加工法がある。これらはいずれも薄膜部材の堆積形成時に生じた内部応力を解放することで曲げ加工を図る技術であって、引っ張り方向と圧縮方向に応力の異なる二種類の材質を積層し、その後、犠牲層と呼ばれる薄膜部材支持層を除去することにより、応力解放で薄膜部材を物理的に自己変形させるものである。しかし如何せん、この手法では曲げ加工の精度が桁違いに悪く、また、薄膜部材の内部応力を高精度に制御する必要があるため、適応できる材料の選択肢が非常に少ないという短所がある。実現できる曲率半径もせいぜい10ミクロンのオーダまでであって、昨今注目のナノテクノロジと呼ばれるような技術範疇には到底活用不能な技術である。
対して上述のIIB技術の可能性は大きく、以下に説明するように、高い将来性を見込むことができる。そこでまず、上掲の非特許文献1にて開示の技術に従い、薄膜部材を曲げ加工する場合の一例の基本的な工程例を図16に即して説明してみる。
まず、図16(A)に示すように、基板10上に、上記非特許文献1では犠牲層と呼んでいるが、まずは将来、加工対象薄膜部材の支持層となる支持層形成用出発層20'を成膜し、その上に将来、加工対象の薄膜部材となる薄膜部材形成用出発層30'を一連に成膜する。この薄膜部材形成用出発層30'を同図(B)に示すようにエッチング技術やフォトリソグラフィを利用して所望の平面形状にパターニングし、パタン化薄膜層30''とする。
このパターニング処理の後、パタン化薄膜層30''にあって曲げ加工したい部分の直下にある支持層形成用出発層20'のみをフォトリソグラフィと横方向エッチングで除去し、同図(C)に示すように、その周縁面21がパタン化薄膜層30''の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、その上のパタン化薄膜層30''を加工対象の薄膜部材30とする。換言すれば、加工対象の薄膜部材30は、その下に支持層20がなく、浮いた状態で先端自由端41に至る片持ち梁(カンチレバー)40を有するものであり、この片持ち梁40が実質的に曲げ加工対象となる部分であって、当該片持ち梁40は、その付け根が支持層20の周縁面21のある位置にあり、そこから空間を伸びて先端自由端41に至る形状となっている。ここでの例では、同図(D)に示すように、薄膜部材30(パタン化薄膜層30'')の平面パタン形状が三角形形状なので、片持ち梁40の先端自由端41はこの三角形形状の鋭い頂点部分となる。これは、最終的な作製目的構造体が、電界放出素子のエミッタであるような場合に適した平面パタンである。
なお、片持ち梁40の下に別な層が存在していることがあっても、それが片持ち梁40の後述する曲折動を妨げることのないものであれば、やはり片持ち梁40は空間に浮いている,ないし浮いた状態にある,と言うことができる。このような定義は、後述する本発明の説明においても援用できる。さらに言うなら、本書で言う曲げ加工対象の薄膜部材30とは、支持層20により部分的には支持されているが、支持層20により支持されていない部分もあり、少なくともその一部が所定の平面パタンで先端が自由端41となった浮いた状態の片持ち梁40となっているように加工されたものであって、当該片持ち梁40が曲げ加工の実質的対象部分となっているものを言う。
このような薄膜部材30に対し、適度に加速したイオン、例えばアルゴンイオンを照射すると、同図(E) に示すように、片持ち梁40の部分が固定の付け根から見て先端自由端41を斜め上方に指向させるかのように全体として上方に曲がって行く。さらにイオン照射量を増やせば、同図(F)に示すように、最終的には片持ち梁40が基板10に対して直立した構造も作製でき、例えば上述の電界放出素子のエミッタとして適当なる構造体となる。ただ、イオン照射条件の如何に依れば、片持ち梁40を下向きに曲げ加工することも可能である。
非特許文献1ではこのような基本工程において具体的な実証がなされており、薄膜部材の具体的材質としてタングステンシリサイドを選び、その膜厚は100nmとした実験結果が示されている。片持ち梁40の長さは0.5μmであって、支持層(犠牲層)には二酸化シリコン薄膜が、基板にはシリコン基板が用いられている。これらの材質で形成した片持ち梁にアルゴンイオン照射をなしているが、その照射エネルギを変えており、例えば25keVと比較的照射エネルギが小さい場合には、1×1016ion/cm2オーダの照射量で基板(支持層)に対し上方向に約30度の浅い角度で片持ち梁40が曲がることが示されている。イオン照射のエネルギが150keVと比較的大きい場合では、約5×1015ion/cm2オーダの照射量で基板に対し上方向ではなく逆に下方向に、約40度の浅い角度で片持ち梁が曲がっている。一方、イオン照射のエネルギを中程度、すなわち100keVとした場合には、1×1016ion/cm2オーダの照射量で基板に対し、略々直立するように片持ち梁が曲がることが示されている。
一方、下記非特許文献5ではこれにさらなる考察が施され、支持層には二酸化シリコン薄膜を、基板にはシリコン基板を用いていることは同じであるが、薄膜部材の材質はモリブデンシリサイド、タングステン、タンタル、モリブデン、アモルファスシリコンと様々に変えた場合のIIB技術に関して議論されている。片持ち梁の長さは1μmで、使用されているイオンは同じくアルゴンイオンとなっている。
この非特許文献5にて開示されている事実は下記の四点である。一点目は、薄膜部材としてモリブデンシリサイド薄膜を使った実験を介しての変形角度のエネルギ依存性に関する新たな知見であって、膜厚に対して40〜50%の深さに反跳原子の分布のピークが形成されるエネルギでイオン照射を施した場合に、変形角度が極大値を取るということである。なお、「反跳原子(knock-on atom)」とは、この種のIIB技術では「イオンが衝突して動いた原子」のことを言う。本書でもこの定義を採用する。二点目は、変形角度の照射量依存性に関してであり、モリブデンシリサイド薄膜を用いた実験において照射量を増やせば増やす程、変形角度が大きくなり、最終的に90度で飽和することが開示されている。飽和するときの照射量は約1015ion/cm2オーダから1016ion/cm2オーダである。三点目は、片持ち梁を形成する薄膜部材の厚さと変形角度の関係である。アモルファスシリコンを薄膜部材の材質に用いた実験で、膜厚を200nm、100nm、50nmの三通りとした場合、膜厚を薄くする程に片持ち梁の変形角度が大きくなることが示されている。換言すれば、膜厚が薄い程、所望の変形角度に曲げるために要するイオンの照射量は少なくて済むということである。当該非特許文献5では、アモルファスシリコン薄膜の膜厚を50nmにすると、イオン照射量が5×1015ion/cm2程度で片持ち梁をほぼ垂直に曲げることができるとされている。四点目は変形角度の材質依存性に関する知見である。モリブデン、タングステン、タンタルの三種類の材質で片持ち梁を形成し、イオン照射を行った実験により、モリブデンが最も曲がり易い(言い換えると、少ない照射量で大きく曲がる)ことが示されている。このデータは、質量が軽い材質程、変形角度が大きくなり易いという傾向を示唆している。ただし、そのときの照射量は、一番良く曲がるモリブデンの場合でもそれ程少なくはなく、1016ion/cm2オーダである。
下記非特許文献6でも、IIB技術の様々な材質への応用が示されている。変形角度のイオン照射エネルギ依存性に関する結果では、モリブデン、アモルファスシリコン、モリブデンシリサイド、タングステンの四種類の材質を薄膜部材として用いた実験が示されている。片持ち梁の長さは1μm、使用されているイオンはアルゴンイオンであるが、材質の如何に依らず、膜厚に対して40〜50%の深さに反跳原子の分布のピークが形成されるエネルギでイオン照射を施した場合に、変形角度が極大値を取ることが示されている。また、変形角度のイオンの照射量依存性を示す結果では、アモルファスシリコン、モリブデンシリサイド、モリブデン、タングステン、タンタルの五種類の材質での検討結果が示されており、いずれの材質でも照射量を増やせば増やす程に変形角度は大きくなり、90度で飽和することが示されている。この中、アモルファスシリコンとモリブデンに関しては膜厚の異なるデータも示されており、膜厚が薄い方が良く曲がる(少ない照射量で大きく曲がる)ことが示されている。しかし、一番良く曲がる膜厚50nmのアモルファスシリコン薄膜部材の場合ですら、90度に曲げるために必要な照射量は約1015ion/cm2オーダが必要との結果が示されている。
一方、下記非特許文献7では、同程度の変形角度を得るにもイオン照射量を低減する方法が開示されている。薄膜部材の材質としてアモルファスシリコン、モリブデン薄膜を用いてのアルゴンイオン照射での実験例が示されているが、アモルファスシリコンで形成した長さ1μmの片持ち梁の場合、イオン照射量は5×1015ion/cm2と同じにしても、膜厚200nmでは変形角度が約20度と小さい値でしかなかったものが、膜厚50nmでは変形角度が約80度まで大きくなっていることが示されている。膜厚を40nmと20nmで実験を行っているモリブデンで形成した長さ1μmの片持ち梁の場合、膜厚40nmでは1015ion/cm2のイオン照射量で変形角度が約40度と小さいものが、膜厚20nmでは同じ量のイオン照射量で変形角度が約90度まで大きくなっている。このようなことから、原理的には膜厚を10nm、5nmと、さらに薄くして行くことで、必要なイオン照射量はさらに下げられることが略々間違いなく予想できる。しかし、実際にデバイス作製にIIB技術を応用する場合を考慮すると、膜厚を20nm以下にすることは、完成したデバイスの機械的強度を著しく低下させることになる。従って、このような膜厚低減化手法のみには頼らない、別途な手法での照射量低減化技術が望まれる。
薄膜部材の材質やイオン種に関しての研究もあり、下記非特許文献8では、アルゴンイオン使ってアモルファスシリコン、クロム、モリブデン、タンタル、タングステン、窒化チタン、モリブデンシリサイドを薄膜部材の材質に用いた実験結果と、薄膜部材としてモリブデン薄膜を用い、アルゴンイオン、ヒ素イオン、二フッ化ホウ素イオン、リンイオンを使った実験結果が示されている。薄膜材質に関しては、いずれの材質の場合にも、同様のイオンエネルギ依存性が示されており、膜厚に対して40〜50%の深さに反跳原子の分布のピークが形成されるエネルギでイオン照射を施した場合に、変形角度が極大値を取ることが示されている。イオン種の違いに関しては、いずれのイオン種を用いてもイオンエネルギ依存性に関してはやはり同様の傾向を示し、膜厚に対して40〜50%の深さに反跳原子の分布のピークが形成されるエネルギでイオン照射を施した場合に、変形角度が極大値を取ることが示されている。一方で、軽い材質を片持ち梁に用いた時程、変形角度が大きくなる傾向にあること、重いイオンを照射した場合程、変形角度が大きくなる傾向にあることも併せて示されている。
以上のようなこれまでの研究から得られる事実をまとめると、次のようなことが現在における当業界での既得知見であると言える。
1.イオンの照射エネルギーに関して:
所望の変形角度を得るためのエネルギには最適値がある。その最適値のマージンは余りなく、せいぜい10keV程度である。ただ、照射量を1015ion/cm2オーダから1016ion/cm2オーダとすると角度変化が飽和する。従って1015ion/cm2オーダ以上のイオン照射を行う場合に限れば、エネルギの最適値のマージンは大きくなり、20keV程となる。
2.イオンの照射量に関して:
イオンの照射量を増やすと変形角度は大きくなる。材質や膜厚にも依るものの、大概すれば1015ion/cm2オーダから1016ion/cm2オーダの照射量で変形角度は飽和する。例えば基板に対して垂直にイオン照射を施す場合には、基板に対して垂直の90度で変形角度は飽和する。薄膜材質に軽い元素を選び、照射イオンに重い元素を選び、膜厚を20nm程度かそれ以下に薄くした場合には、1014ion/cm2オーダの照射量で90度まで片持ち梁を曲げることはできる。しかし、この極端な膜厚低減化手法は非常に限定的であり、イオンの照射量を低減したいとの要求に応えるとするならば、この対策では不満足で、他の方法が望まれる。
3.薄膜部材の材質に関して:
薄膜部材の材質は何であっても大方曲がり得ると言える。モリブデン、タングステン、タンタル、クロム等の金属でも、シリコンに代表される半導体でも、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド、窒化チタン等の化合物でも、同様の制御法で曲げ加工が可能である。質量が軽い材質ほど良く曲がり(少ない照射量で大きな変形角度が得られ)ることも分かっている。
4.照射するイオンの種類に関して:
やはり、如何なるイオン種でも片持ち梁を曲げ得る。アルゴンイオン、リンイオン、ヒ素イオン、二フッ化ホウ素イオンにおいてIIB加工が実現可能であることが示されているが、他のイオン種でもそうであることは略々疑いない。また、質量が重いイオンを使った方が良く曲がり、少ない照射量で大きな変形角度が得られるが、ただ、重いイオンを使う程、エネルギの最適値は大きくなる。
5.薄膜部材の膜厚に関して:
薄い方が良く曲がる(少ない照射量で大きな変形角度が得られる)。上記実験中では20nmの薄膜まで開示されているが、さらに薄くすることで必要な照射量はさらに低減できる。しかし、実際にデバイスに応用することを考慮すると既に述べた通り、曲がった片持ち梁の機械的強度の観点から、薄膜化によって照射量を低減する方法には限界がある。
6.片持ち梁の長さに関して:
上記のように、これまでの研究では0.5μm、1μmの片持ち梁での実験となっているが、開示されているデータを考慮すると、片持ち梁の長さを長くした方が見かけの変形角度が大きくなることは明らかである。すなわち、曲がり部分の曲率半径の大きさにこだわらなければ、片持ち梁の長さを例えば数10μmと長くすれば、それを垂直に曲げるために必要なイオン照射量は1014ion/cm2オーダで足りる。
"Fabrication of Micro Field Emitter Tip Using Ion-Beam Irradiation-Induced Self-Standing of Thin Film", Tomoya Yoshida,Akiyoshi Baba, and Tanemasa Asano, Jpn. J. Appl. Phys. vol. 44, No. 7B, pp.5744-5748.(2005) "On the Design and Fabrication Precision of Micro-Origami Devices"Tahito Aida,Pablo O. Vaccaro,and Kazuyoshi Kubota,in proc. of theIEEE MOEMS, pp. 43-44.(2002) "Self-Assembly of Microstage Using Micro-Origami Technique on GaAs" K. Kubota, T. Fleischman, S. Saravanan, P. O. Vaccaro, and T. Aida, Jpn. J. Appl. Phys. 42 6B, 4079-4083 (2003) "Approach for a self-assembled thin film edge field emitter"J. T. H. Tsai, K. B. K. Teo, and W. I. Milne, J. Vac. Sci. Technol. B 20, 1 pp. 1-4 (2002) "Simple fabrication of gated field electron emitter using vertical thin film induced by ion beam irradiation",Tomoya Yoshida, Masayoshi Nagao, Akiyoshi Baba, Tanemasa Asano, and Seigo Kanemaru,JOURNAL OF VACUUM SCIENCE & TECHNOLOGY B,27-,pp.729-734.(2009) "Characteristics of thin-film bending technique induced by ion beam irradiation",Tomoya Yoshida, Masayoshi Nagao, and Seigo Kanemaru,Digest of Papers Microprocesses and Nanotechnology 2008,1-544,pp.1-545.(2008) "イオン照射誘起による直立薄膜エミッタ作製プロセスの膜厚依存性",吉田 知也,長尾 昌善,金丸 正剛,2008年秋季 第69回応用物理学会学術講演会,中部大学,(2008) "イオン照射誘起による薄膜変形現象の特性解明",吉田 知也,長尾 昌善,金丸 正剛,2009年春季第56回応用物理学関係連合講演会,筑波大学.(2009)
以上のような現状にあるIIB技術に対し、本発明はこれを実用化する上でより使いやすい手法、現実的な手法とすることを目的としたものである。すなわちまず、イオン照射量の低減、それも既述したような片持ち梁の厚さをひたすら薄くすると言う、機械的強度確保の上では問題となる手法には頼らず、それとは別途な手法の提案を図る。さらに、単にイオン照射量を低減し得たとしても、その量の制御に余りの神経質さが要求されるようでは実用化への障害となる。そこで、所望の変形角度を得るために必要となる照射イオンのエネルギに大きなマージンを与えることも本発明の目的の一つとなる。ただし、もちろんのことであるが、照射量の低減もエネルギ・マージンの増大も、いずれも絶対値的な目標を目指すものではなく、既存技術に対しての相対的な課題である。絶対値自体は薄膜部材の材質、用いるイオン種、薄膜部材の膜厚、片持ち梁の長さ、所望する変形角度等の条件により変化することは言うを俟たない。
本発明は上記目的を達成するため、まず基本的な構成として、
支持層により一部の面積領域は支持されているが、当該支持層により支持されていない部分に、支持層から離れ、浮いた状態で先端自由端に向かう所定平面形状の片持ち梁が形成されていて、この片持ち梁が実質的な曲げ加工対象部分となっている薄膜部材に対し、イオン照射をなすことで当該片持ち梁を曲げ加工する薄膜部材の曲げ加工方法であって;
薄膜部材にあって少なくとも片持ち梁は二層以上の複数の薄膜層が厚味方向に上下に積層された積層構造とし、上下に隣接する薄膜層同士の材質は互いに異ならせたこと:
を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法を提案する。
この基本構成を満たした上で、本発明の特定の態様では、
片持ち梁を構成する複数の薄膜層はいずれも、片持ち梁の付け根から先端自由端に至る長さ方向に沿って互いに連続する複数の部分領域から形成され;
各薄膜層内にあって隣接する部分領域同士は材質が異なり、かつ、各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に積層関係にある相手方の薄膜層の部分領域の材質とも異なったものであること;
を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法も提案する。
また、上記の隣接部分領域間での異材質性は、部分領域が極小寸法領域にまで縮小して片持ち梁長さ方向に沿い無数に存在する場合に相当する状態として、片持ち梁の長さ方向に沿って片持ち梁を構成する各薄膜層に対し、例えば連続的に不純物の打ち込み量を変えて行くこと等で実質的に連続的な材質変化としても達成でき、従って、本発明の他の態様として、
片持ち梁を構成する複数の薄膜層はいずれも、片持ち梁の付け根から先端自由端に至る長さ方向に沿って連続的に材質が異なっており;
各薄膜層は長さ方向の各位置で上下に積層関係にある相手方の薄膜層のその位置での材質とも異なる材質となっていること;
を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法も提案できる。
さらにまた、上述の構成と組み合わせることもできる本発明の他の態様として、
片持ち梁を構成する複数の薄膜層はいずれも、片持ち梁の付け根から先端自由端に至る長さ方向に沿って互いに連続する複数の部分領域から形成され;
各薄膜層内にあって隣接する部分領域同士は厚味が異なり、かつ、各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に積層関係にある相手方の薄膜層の部分領域の厚味とも異なっていること;
を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法も提案する。
厚味の低減は連続的なものでも良く、すなわち、
片持ち梁を構成する複数の薄膜層の少なくとも一層以上は、片持ち梁の付け根から先端自由端に至る長さ方向に沿ってその厚味がスロープ状に変化すること;
を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法も提案できる。
本発明によると、IIB技術に従い、要すれば極小曲率で片持ち梁を曲げ加工する場合にも、従来のように単層構造に限定されていた片持ち梁を曲げ加工する場合に比し、必要なイオン照射量は大きく低減でき、また、照射エネルギ制御にも豊かなマージンが生まれ、神経質な制御から解放されて、加工労力は大いに低減し、加工時間も短縮できる。
さらに、従来はイオン照射量を低減するには加工対象薄膜部材の膜厚低減化にのみ頼るしかなく、それでは機械的強度が取れなくなる問題もあったが、本発明ではそのように徒らな膜厚低減化処理は必要なく、機械的強度を保ちながら少ないイオン照射量で必要な曲げの程度を得ることができる。
また、そもそもIIB技術では、既述のように薄膜部材乃至片持ち梁を構成する材質には殆ど制約がなく、単元素材質に限らず、酸化物、窒化物等の化合物や、もっと大きな分子構造を持つ有機物であっても良いし、曲げ加工のために照射するイオン種にも制約は殆どないという大きな優位性を有するので、これに本発明をさらに適用すれば、その長所を思い切り発揮させ、極めて汎用性の高いプロセスとし得、かつ、複雑な形状の微細立体形状も比較的簡単に構築することができる。
本発明に即する薄膜曲げ加工の望ましい一実施形態における加工工程例の説明図である。 従来の単層構造のモリブデン製片持ち梁に対し、アルゴンイオンの照射エネルギを変えた場合の片持ち梁の異なる曲がり具合を例示する走査型電子顕微鏡による図面代用写真である。 従来の単層構造のモリブデン製片持ち梁に対し、アルゴンイオンの照射エネルギを変えた場合の反跳原子密度の分布をシミュレーションした説明図である。 理想的な反跳原子密度分布と考えられる場合の説明図である。 本発明に至る過程で検討された、片持ち梁を二層構造にした場合の反跳原子密度分布のシミュレーション結果例を示す説明図である。 さらに別の材質でのシミュレーション結果の説明図である。 従来例に対し、変形角度の観点からもイオン照射量の観点からも、本発明の方が優れていることを実験結果に基づき説明する説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって基板を支持層として用いる望ましい一実施形態における加工工程例の説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって一回のイオン照射で同一基板上に複数個の互いに異なる三次元形状の幾何構造体を構築する場合の望ましい一実施形態における加工工程例の説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって片持ち梁がその長さ方向にも薄膜層積層方向にも隣接し合うもの同士の相互の材質が異なる部分領域を持つ場合の望ましい一実施形態における工程の説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって片持ち梁が三層積層構造を有する場合の望ましい一実施形態における工程の説明図である。 本発明に従い三層構造に作製された片持ち梁が膜厚関係の如何によっては下向きに曲がる模様の説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって三層構造に作製された片持ち梁がその長さ方向にも薄膜層積層方向にも隣接し合うもの同士の膜厚が異なる部分領域を持つ場合の望ましい一実施形態における工程の説明図である。 図13に示したと同様の三層構造に作製された片持ち梁三層構造にあって、膜厚(膜厚比)関係を変えて異なる曲がり変形を起こさせる場合の説明図である。 本発明に即する薄膜曲げ加工にあって三層構造に作製された片持ち梁のいくつかの薄膜層の膜厚変化がスロープ的な変化となっている場合の説明図である。 従来におけるIIB技術を利用しての薄膜曲げ加工に関する基本的な工程例一例の説明図である。
図1には本発明の基本的な実施形態が示されているが、これに就き説明する前に、本発明の理解のため、図2以降に即し、本発明に至った経緯を説明する。図2は、これまで説明してきた既存のIIB技術により、膜厚40nmのモリブデン薄膜で形成した長さ1μmの片持ち梁40に対し、三通りの照射エネルギでアルゴンイオンを照射量1×1016ion/cm2で照射した場合の走査型電子顕微鏡による端面像を示している。同図(A)は照射エネルギが100keVの場合で、片持ち梁40は支持層20の形成されている基板10に向けて下方向に曲がり、先端自由端41は基板10に触れる程に、その高さ位置が低下している。同図(B)は照射エネルギが50keVの場合で、片持ち梁40は基板10に対して上方向に大きな変形角度で反り返るように曲がっている。同図(C)は照射エネルギが25keVの場合で、片持ち梁40は基板10に対し、上方向に比較的浅い変形角度で曲がっている。
結果にこのような違いの現れた理由は、各エネルギのイオン照射における反跳原子密度の分布を考慮すると上手く説明できる。図3(A)に膜厚40nmのモリブデン薄膜部材30(片持ち梁40)に三通りの照射エネルギでアルゴンイオンを照射量1×1016ion/cm2で照射した場合の反跳原子密度の分布をシミュレーションした結果を示している。片持ち梁40の表面(図2中での上面:図示していないイオン源からの照射イオンが飛来してくる方向を向いた面)の位置を図3中では符号Tf、裏面を符号Tbで表し、横軸は用いている片持ち梁40の表面Tfからの深さ位置を示している。従ってここでは当然、数値20nmの位置が深さ方向に見て当該片持ち梁40の厚味の中心部位Tcとなる。照射エネルギ100keVの時の片持ち梁深さ方向に見た反跳原子密度曲線は記号C(100)で、50keVの時のそれは記号C(50)で、そして25keVの時のそれは記号C(25)で示している。縦軸目盛は反跳原子密度を5×1023/cm3で正規化したものである。なお、このシミュレーションはTRIM(the TRansport on Ions in Matter)と呼ばれる、モンテカルロ法によりイオン注入のシミュレーションを行うソフトウエアで実施した。
これら三条件の反跳原子密度の分布を特徴づけるパラメータの一つに、ピーク位置がどこにあるか,がある。ピーク位置が片持ち梁40の厚味中心部位Tcよりも浅い表面側にあるか、深い裏面側にあるかが曲げ方向と相関がある。図2(A)に示したように、片持ち梁40が下方向に曲がった場合である照射エネルギ100keVの時の反跳原子密度分布C(100)のピーク位置Pk(100)は厚味中心部位Tcよりも深い約25nmの位置にある。一方、図2(B),(C)に示した、片持ち梁40が上方向に曲がった条件の場合、反跳原子密度のピーク位置は厚味中心部位Tc依りも浅い位置にあり、照射エネルギ50keVの時の反跳原子密度分布C(50)のピーク位置Pk(50)は概ね深さ10nmの位置、照射エネルギ25keVの時の反跳原子密度分布C(25)のピーク位置Pk(25)は概ね深さ5nmの位置にある。
従ってまず言えることは、ピーク位置が片持ち梁40の膜厚の半分の深さよりも浅い位置にある時には片持ち梁40は上方向に曲がり、逆にピーク位置が膜厚の半分よりも深い位置にあるときは片持ち梁は下方向に曲がるという関係が分る。さらに、図2(B),(C)の関係に相当する、図3(A)中での曲線C(50)とC(25)とを比べると分るように、より大きな変形角度を得るためには浅過ぎても具合が悪く、厚味中心部位Tcよりも少し浅い位置にピーク位置Pk(50)がある方が良いということが分る。もっとも、この事実は既述した非特許文献6でも明らかにされている。
図3(B)には、図3(A)中にあって照射エネルギが50keVの場合の反跳原子密度分布C(50)を抜き出して示している。領域Rfは片持ち梁40の厚味中心部位TCより表面側の反跳原子密度の積を示しており、領域Rbは厚味中心部位TCより裏面側の反跳原子密度の積を示している。ここで、イオン照射によって反跳された原子が片持ち梁40を構成している膜内に応力を発生させると考えると、領域Rf及び領域Rbではその面積に比例する応力がそれぞれ発生すると言える。領域Rfで発生した応力は上向きに曲がる力となり、領域Rbで発生した応力は下向きに曲がる力となる。この例では面積比でRf>Rbなので、上向きに曲がる力の方が大きく、その結果として、片持ち梁40は上向きに大きく曲がったと考えられる。一方、図2(A)に示した結果に相当する、100keVでイオン照射したときの反跳原子密度の分布の領域Rfと領域Rbとの関係を対応的に考えてみると、図3(A)中からして、Rf<Rbとなっていることが分る。その結果、片持ち梁40は下向きに曲がったと考えられる。すなわち、片持ち梁が変形する角度を決めているのは、厚味中心部位Tcを挟んでの表面側領域Rfと裏面側領域Rbの面積比関係だと言うことになる。
本発明者は、このような考察から、理想的な反跳原子密度分布を考えた。図4がそのような場合で、理想的な反跳原子密度の分布、すなわち少ない照射量でも上方向に大きく曲げるために適した分布は、厚味中心部位Tcから表面側の領域Rfは大きいままで、裏面側の領域Rbを極力小さくすることである。これは上方向に大きく曲げたい場合であるが、逆に下方向に曲げたい場合は厚味中心部位Tcの線に関し、領域Rf,Rbを線対称にした関係とすれば良い。
この考えを推し進めた結果、本発明者は、このような図4に示す理想的な反跳原子密度分布を実現するためには、片持ち梁40を積層構造にするしかないという発明的発想に至った。すなわち、図4中の領域Rfに相当する表面側には密度の高い元素材質の薄膜層を、領域Rbには密度の低い元素材質の薄膜層を互いに積層した関係の二層構造にすると、このような分布を実現できると考えたのである。
そこで試みに、密度の高い元素としてイリジウム(Ir)を、密度の低い元素としてリチウム(Li)を選び、反跳原子密度分布のシミュレーションを行った。このシミュレーションにもTRIM法によりイオン注入のシミュレーションを行うソフトウエアを用いた。図5にその結果が示されており、片持ち梁40としての膜厚は40nmであるが、その厚味の半分から表面側には膜厚20nmのイリジウム薄膜層を、その下、すなわち裏面側には膜厚20nmのリチウム薄膜層を配し、キセノンイオンを照射量5×1015ion/cm2で照射するとの想定で、図4に示した理想的な形態に近い反跳原子密度分布が得られた。なお、照射エネルギは250keVとした。
さらに、微細加工技術でよく用いられている材質の中から比較的密度の低い材質としてシリコン(Si)を、比較的密度の高い材質としてタングステン(W)を選び、アルゴンイオンを照射する場合について同様のシミュレーションを行った。その結果は図6に示す通りとなり、照射エネルギを25keV,50keV,100keVと変えた場合のそれぞれに対応する反跳原子密度分布曲線C(25),C(50),C(100)に見られるように、先の図5に示された場合程ではないが、図4に近い反跳原子密度分布を得ることができた。エネルギ・マージンの広がったことも良く分かる。
一般化すれば、反跳原子密度はイオン照射飛程と関係する。イオン照射飛程が短い程、反跳原子密度は高くなり、イオン照射飛程が長い程、反跳原子密度は低くなる。また、イオン照射飛程は材質密度と関係する。材質密度が低い程、イオン照射飛程は長くなり、材質密度が高い程、イオン照射飛程は短くなる。従って、やはり材質密度が高い程、反跳原子密度は高くなり、材質密度が低い程、反跳原子密度は低くなると言える。そこで、例えば図4に示したような望ましい反跳原子密度分布を得るためには、二種類の材質の密度の高低関係が重要である。図5示した実験例での密度関係はイリジウム>リチウムとなっている。一方、図6に示した実験例でのそれはタングステン>シリコンとなっている。そこで例えば、シリコンとリチウムを組み合わせたとすると、この場合にはシリコン>リチウムとなる。つまり、相対的な問題であって、図6に示した実験例ではシリコンは密度が低い材質として扱われているが、このようにリチウムとの組み合わせを考えると、その場合にはシリコンは密度が高い材質として扱うことになる。
本発明はこのような基礎的解析に基づいて成されたもので、その望ましい実施形態の一つが図1に示されている。本発明における曲げ加工対象の薄膜部材30は、図1(C),(D)に示されているようなもので、一般には適当な基板10上に形成された支持層20により、一部の面積領域は支持されているが、支持層20により支持されていない部分に、支持層20から離れ、浮いた状態で先端自由端41に向かう所定平面形状の片持ち梁40が形成されていて、この片持ち梁40が実質的な曲げ加工対象部分となっている薄膜部材30である。このような形状の薄膜部材30を得るには、図1(A),(B)に示すような前工程を経ることができる。
すなわち、図1(A)に示すように、基板10の大域的面積領域上に、最終的に加工対象薄膜部材の支持層となる支持層形成用出発層20'を形成し、当該支持層形成用出発層20'のやはり大域的面積領域上に、将来、加工対象の薄膜部材30を形成するための薄膜部材形成用出発層30'を堆積する。しかし、本発明で特徴的なのは、この薄膜部材形成用出発層30'を決して従前におけるような単層構造ではなく、二層以上の複数層の積層構造とすることである。もっとも、後述の本発明における曲げ加工原理から明らかなように、薄膜部材形成用出発層30'の大域的面積領域の全てが複数層の積層構造である必要はなく、少なくとも後述する曲げ加工対象部分である片持ち梁40の部分だけが複数層の積層構造となっていれば良いが、一般には図示のように、薄膜部材形成用出発層30'の全体が積層化されているように作製するのが簡単、便利である。
この実施形態では積層数は2としており、すなわち、支持層形成用出発層20'上に第一の材質の第一薄膜層31を形成し、その上に当該第一の材質とは異なる第二の材質の第二薄膜層32を形成することで、厚味方向上下に隣接し、互いに材質の異なる二層構造の薄膜部材形成用出発層30'としている。
次いで、曲げ加工対象部分である片持ち梁40を所望する平面形状に加工するべく、図1(B)に示すように薄膜部材形成用出発層をパターニングしてパタン化薄膜層30''とし、さらに図1(C)に示すように、先の支持層形成用出発層20'を横方向エッチングで除去することでその周縁面21がパタン化薄膜層30''の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、これにより、上述したパタン化薄膜層30''を加工対象の薄膜部材30とする。繰り返すが、本発明においての加工対象となる薄膜部材30は、その下に支持層20がなく、浮いた状態で先端自由端41に至る片持ち梁40を有するものである。そして、この片持ち梁40が実質的に曲げ加工対象となる部分であり、その付け根は支持層20の周縁面21の位置と同じ位置にあり、そこから空間を伸びて先端自由端41に至る形状となっている。ここでの例では、同図(D)に示すように、薄膜部材30(パタン化薄膜層30'')の平面パタン形状は三角形形状としているので、片持ち梁40の先端自由端41はこの三角形形状の鋭い頂点部分となる。
このような薄膜部材30(片持ち梁40)に対し、図面上では上方から適当なイオンを照射すると、図1(E)に示すように、片持ち梁40を例えば斜め上方に向けて立ち上げるように曲げ加工できる。既に述べた所から理解できるように、薄膜部材30の表面側に位置する第二薄膜層32,裏面側に位置する第一薄膜層31に用いる材質関係や、イオン照射エネルギを適選することで、同図(F)に示すように、片持ち梁40を略々直角に曲げ加工することもできるし、図示していないが逆に下向きに曲げることも可能である。しかも、これに要するイオン照射量は、従前のように片持ち梁が単層薄膜構成でしかない場合に比して大きく低減でき、また、その量の制御にも豊かなマージンが生まれ、神経質な制御から解放されて、加工労力は大いに低減し、加工時間も短縮できる。
ここで、本発明の有用性を明らかにする一実験例に就いて述べると、基板10にはシリコンを用い、その上に二酸化シリコン膜を堆積してこれを支持層20とした。支持層20の上に薄膜部材30の第一薄膜層31としてアモルファスシリコンを約60nmの厚さに堆積し、さらにその上に薄膜部材30の表面側の第二薄膜層32としてタングステンを約20nmの厚さに堆積した。従って、薄膜部材30の厚味は、機械強度的に文句のない80nmとなっている。その後、既述したパターニング処理、エッチング処理で所定平面形状の片持ち梁40を形成し、これにアルゴンイオンを照射した。
図7にその実験結果がアルゴンイオン照射エネルギを横軸に、変形角度を縦軸に取って示されている。二重丸で示すデータが本発明の場合(W=20nm + Si=60nm)であって、白丸で示すデータは比較のために従前の通りの単層構造アモルファスシリコン製片持ち梁で厚さ80nmの場合(Si=80nm)、黒丸は膜厚40nmとした単層タングステン製の片持ち梁の場合である。片持ち梁の長さはいずれも1μmとし、照射イオンにはアルゴンを用い、照射量はいずれも3×1015ion/cm2である。
明らかなように、照射エネルギが25keVから150keVの広い範囲に亘り、本発明の積層構造片持ち梁の場合には従前の単層構造片持ち梁に比し、非常に大きな変形角度が得られていることが分る。エネルギ・マージンも極めて広い。従って、逆に言えば、従前と同じ程度の変形量を得るのであれば、イオン照射量は大幅に低減できること、しかも照射エネルギのマージンも十分に広げ得ることが理解される。さらに、ただ単に加工対象薄膜部材の膜厚低減化にのみ頼る必要もない。片持ち梁の厚さは、要すれば十分な機械的強度の保てる厚味に留めることができる。
既に述べたように、従来の単層構造の片持ち梁に対するIIB技術では、専ら1015ion/cm2オーダ以上のイオン照射量が必要で、しかも10keV程度の狭いエネルギ・マージンしか取れなかった。もちろん、片持ち梁の材質や膜厚、イオンの種類等を上手く選ぶとか、所望の変形角度が浅くて良ければ、1014ion/cm2オーダのイオン照射量での加工も可能ではあったし、また、1016ion/cm2オーダー以上のイオン照射量で加工を行えば、数10keVのエネルギ・マージンを確保することも可能ではあった。しかし、それでは、材質やイオン種等を限定してしまい、汎用性の低いプロセスになってしまって、半導体素子やMEMS素子の作製プロセスへの採用はごく限られた範囲に留まる。IIB技術の高い将来性を保証することはできない。
これに対し、片持ち梁を複数層の積層構造にするという端的な工夫をなした本発明によれば、それだけで飛躍的にイオン照射量を低減でき、エネルギ・マージンも大きくなる。特筆すべき点は、低密度薄膜として本発明において利用が考えられる材質の中には、シリコンや二酸化シリコン等、半導体素子やMEMS素子で標準的に使われている材質がある点である。これらの材質の堆積技術やパターニング技術などは成熟した技術であるため、容易に本発明を実施することが可能である。高密度材質として利用が考えられる材質もまた、半導体素子やMEMS素子で一般的に使われている材質が数多く存在する。タングステンやモリブデン、タンタルなどがその例である。
また、本発明の適用可能な片持ち梁材質としては、上述した単元素材質に限らず、酸化物、窒化物等の化合物や、もっと大きな分子構造を持つ有機物をも挙げられる。つまり、本発明は殆ど材質を選ばない技術である。積層関係に置く複数の薄膜層が互いに密度の異なったものであれば良い(材質が異なれば密度も異なるが)。本発明により得られる材質非限定性は、この種の技術の適用範囲を大幅に広め、各種の微細構造を実現することができる。
図8には本発明の他の実施形態が示されている。他の図面におけると同一の符号は同一もしくは対応する構成要素を示し、従って特に必要のない場合には他でなされた説明を援用する。この点は以降の実施形態のどれにおいても同様である。
この実施形態は、基板10を実質的に薄膜部材30の支持層20として流用したものである。すなわち、まずは前工程として、図8(A),(B)に示すように、基板10上の局所的な面積領域に、例えばリアクティブ・エッチング等を利用して、少なくとも周側面61の一部が斜面になった犠牲層丘60を形成する。この犠牲層丘60上を含めて基板10の大域的面積領域上に同図(C),(D)に示すように、本発明に従い複数層、この場合は互いに異材質の第一薄膜層31と第二薄膜層32の二層の積層構造から成る薄膜部材形成用出発層30'を形成する。
次いで同図(E),(F)に示すように、薄膜部材形成用出発層30'を所望形状にパターニングしてパタン化薄膜層30''とする。図示の例では、同図(F)に見られる通り、犠牲層丘60の斜面61に乗っている部分が細長い条片(ストリップ)状に加工されており、それが一定の距離を置き、向かい合って一対、形成されている。その後、適当なエッチング技術を援用し、犠牲層丘60を除去すると、同図(G),(H)に示すように、基板10を兼ねる支持層20から浮いた、本発明における曲げ加工対象部分である二層積層構造の片持ち梁40を持つ薄膜部材30が形成される。片持ち梁40の付け根は基板10の表面に接する部位となる。このような片持ち梁40に適当なるイオンを照射すれば、既に述べた本発明のメカニズムに従い、この片持ち梁40を任意角度に上にも下にも曲げ加工でき、例えば同図(I),(J)に示すように、従来よりも少ないイオン照射量で、あるいはまた広いエネルギ・マージンを以て、支持層20(基板10)に対して直角に起ち上がった片持ち梁40(図示の場合は同一基板上に一対の)を得ることもできる。
図9は、また別な本発明実施形態を示している。基板10上に形成されている支持層形成用出発層20'の上に、同図(A)に示すように、部分的に第一薄膜層31と第二薄膜層32の膜厚比の異なる二層積層構造から成る薄膜部材形成用出発層30'を形成する。このような構造は、例えば支持層20上の大域的面積領域上に一定膜厚の第一薄膜層31を形成した後、当該第一薄膜層31の一部の面積領域をのみフォトレジスト等で覆い、少しだけエッチングして厚味を削ることで得られる。
部分的に膜厚の異なる領域を有する第一薄膜層31の上には、一連に同じ膜厚に異材質の第二薄膜層32を形成しても、第一薄膜層31の薄い部分に乗っている所と厚い部分に乗っている所とでは、上下に隣接する第一、第二薄膜層31,32の膜厚比が異なることになる。もちろん、要すれば第二薄膜層32に関しても厚味を異ならせることも既存技術で簡単にできる。
その後、同図(B)に示すように、相対的に厚い第一薄膜層31の部分領域と薄い部分領域とに必要なパターニング処理を施しながら切り分け、それぞれにパタン化薄膜層30''を形成し、さらに同図(C)に示すように各部分領域のパタン化薄膜層30''下の支持層形成用出発層20'を横方向エッチングする等して支持層20となし、その上の薄膜部材30にそれぞれに片持ち梁40を形成し、その後にイオン照射をすると、それら部分領域毎に片持ち梁40の変形量(曲がりの程度)は、一回イオン照射工程における同じイオン照射量でも、同図(D)に示すように、異なるようにすることができる。つまり、一回のイオン照射で同一基板上に複数個の互いに異なる三次元形状の幾何構造体を構築することができる。
例えば第一薄膜層31にアモルファスシリコン等、密度の低い軽い材質を、第二薄膜層32にタングステン等、密度の高い重い材質を選ぶと、同図(E)に示すように、薄い第一薄膜層31を有する片持ち梁40が略々垂直にまで変形する時に、厚い第一薄膜層31を有する片持ち梁は途中で変形を止めたような曲がり形状にすることができる。厚い第一薄膜層31に対して第二薄膜層32の厚味が三分の一程度である場合、薄膜部材30としての反跳原子密度分布は薄膜部材表面側に偏るので、薄い第一薄膜層31とその上の第二薄膜層32との膜厚比が一対一であるときにそちらの片持ち梁が垂直にまで曲がり変形を起こしても、厚い第一薄膜層31を有する片持ち梁40は緩い変形角度に留まるのである。
先にも少し述べたが、本発明で曲げ加工対象とする部分は薄膜部材30の片持ち梁40である。従ってこれも既に述べたように、薄膜部材30の大域的面積領域の全てが複数層の積層構造である必要は原理的にはなく、少なくとも片持ち梁40がそのような複数の異材質薄膜層の積層構造になっていれば良い。この考えをさらに展開すると、単一工程のイオン照射で実に複雑な形状への加工も可能となる。そのような場合の一例が図10に示されている。
この実施形態に就き、工程を追って説明すると、まず図10(A),(B)に示すように、基板10上に形成した支持層形成用出発層20'上に第一の材質から成る第一材質層35を所定のパタンに堆積する。この第一材質層35は例えば、相対的に高密度で重い材質の薄膜とする。これを覆う形で、同図(C),(D)に示すように、支持層20上に一連に第一材質層35の材質とは異なり、例えば相対的にそれより軽い材質の第二材質層36を堆積する。その上にもう一度、同図(E),(F)に示すように、第二材質とは異なる他の材質、例えば第一材質と同じ材質でも異なる材質でも良い第三材質層37を堆積し、その後、フォトリソグラフィとエッチングを応用し、あるいはCMP(Chemical Mechanical Polishing - 化学機械研磨)を援用して積層構造の上面を平坦化し、同図(G),(H)に示す構造を得る。
次いで、これまで説明してきたと同様、パターニング処理をしてから支持層形成用出発層20'を横方向エッチングして第一材質層35を越えて第二材質層36の所まで引っ込んだ周縁面21を形成し、その下に支持層のない片持ち梁40を形成すると、この片持ち梁40は、これまで説明してきた片持ち梁同様、積層構造であることは同じであるが、積層関係にある第一薄膜層31においても第二薄膜層32においても、同図(I),(J)に示されるように、片持ち梁40の付け根から先端自由端41に至る長さ方向に沿って互いに連続する複数の(この場合は三つの)部分領域31-1〜31-3:32-1〜32-3が形成され、しかも、同一薄膜層31,32内にあって隣接する部分領域同士31-1と31-2、31-2と31-3、そして32-1と32-2、32-2と32-3は材質が異なるようになり、かつ、各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に積層関係にある相手方の薄膜層32,31の部分領域の材質とも異なったものとなる。すなわち、第一薄膜層31の例えば第一部分領域31-1は片持ち梁長さ方向で同じ位置にあるその上の第二薄膜層32の第一部分領域32-1の材質とは異なった材質となり、同様に他の部分領域についてもそのようになる。
このように、断面端面でみると縞々模様で表した片持ち梁40にイオン照射を施すと、実に複雑な形状を得ることができ、例えば同図(K),(L)で示すように、片持ち梁40の先端自由端41に向かう長さ方向に沿って上に曲がろうとする部分領域と下に曲がろうとする部分領域があるがために、それらが相まって蛇状にうねった形状や、同図(M),(N)に示すように、階段状に折れ曲がった立体構造を構築することができる。これは、これまでの微細加工技術では考えられなかった加工結果である。
もちろん、部分領域31-n,32-n(nは1以上の整数)の総数は減らしても増やしても、それは必要に応じての問題である。また、各部分領域31-n,32-nの片持ち梁長さ方向にも積層方向にも隣接し合うもの同士の相互の材質を変えることは、部分的、あるいは連続的な不純物の打ち込み量(導入量)可変でなすこともできる。部分的に変える場合には、上記のようにディスクリートに各部分領域を有する場合と結果においては実質的に同じであるが、連続的に不純物の打ち込み量を変えていって構成された各薄膜層31,32は、当該各部分領域31-n,32-nが極小寸法領域にまで縮小し、それが片持ち梁長さ方向に沿い、無数に存在する場合に相当すると見ることもできる。この材質連続可変手法でも、各薄膜層31,32は長さ方向の各位置で上下に積層関係にある相手方の薄膜層32,31のその位置での材質と異なる材質となっているように構成できる。
さらに、片持ち梁40はこれまで述べてきた二層積層構造に限らず、三層以上の多層積層構造に展開でき、これにより、もっと複雑な加工形状を得ることもできる。図11はそのような場合の本発明一実施形態を三層積層構造とする場合に関して示している。
説明するに、まずは前工程として、図11(A)に示すように、基板10の大域的面積領域上に、最終的に加工対象薄膜部材の支持層となる支持層形成用出発層20'を形成し、当該支持層形成用出発層20'のやはり大域的面積領域上に、将来、加工対象となる薄膜部材の薄膜部材形成用出発層30'を形成する。本発明に従い、この薄膜部材形成用出発層30'は複数層の積層構造とされ、特に、ここでは支持層形成用出発層20'に接する部分から上方に見て順に、第一の材質の第一薄膜層31、当該第一の材質とは異なる第二の材質の第二薄膜層32、そして第二の材質と異なる第三の材質(第二の材質と異なっていればよいので、第一の材質と同じ材質であっても良い)の第三薄膜層33の三層積層構造となっている。三層以上に積層する場合、上述の通り、要は上下に直接に接し合う関係の隣接薄膜層同士の材質が異なっていれば良く、接し合わない薄膜層同士の材質は同じであっても良い。
次いで、先の実施形態におけると同様、曲げ加工対象部分である片持ち梁40を所望する平面形状に加工するべく、同図(B)に示すように薄膜部材形成用出発層30'をパターニングしてパタン化薄膜層30''とし、さらに同図(C)に示すように、先の支持層形成用出発層20'を横方向エッチングで除去することでその周縁面21がパタン化薄膜層30''の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、これにより、上述したパタン化薄膜層30''を、曲げ加工対象部分である片持ち梁40を有する加工対象の薄膜部材30とする。
このような薄膜部材30に対し、適当なイオンを照射すると、例えば同図(D)に示すように、片持ち梁40を例えば斜め上方に向けて立ち上げたり、同図(E)に示すように、基板10に対して垂直に起ち上げるように曲げ加工できる。もちろん、先と同様、このような加工に要するイオン照射量は、従前のように片持ち梁が単層薄膜構成でしかない場合に比して大きく低減でき、また、その量の制御にも広いマージンが生まれる他、三層構造であるが故に、各膜厚、材質に基づき、さらに様々な制御性やパラメータを提示できる。
例えば、第一〜第三薄膜層31〜33を、下から順に高密度材質/低密度材質/高密度材質となる関係に積層すれば、二回、三回等、折り曲げ回数を多くしたときの曲げ角度の制御性を向上できる。また、低密度材質/高密度材質/低密度材質という三層積層構造にすると、全面一括処理のイオン照射に対して変形を生じない箇所を作ることができ、より複雑な三次元構造を一回のイオン照射で形成できることになる。
さらなる変形例を種々挙げるならば、例えば図12(A)に断面端面を示すように、図11に示した実施形態におけると同様、三層積層構造で同じ材質条件でも、膜厚関係の如何により曲がり方向も制御できる。例えば第二薄膜層32を一番薄くし、第一薄膜層31はそれより厚く、第三薄膜層33は最も厚いような薄膜部材30ないし片持ち梁40を作製すれば、片持ち梁40の曲がりの向きは図12(B)に示すように、基板10上に向いて頭を下げるかのような、下方向への曲がり変形にもできる。
さらに、これは先の二層構造の場合にも適用可能あるが、各薄膜層31〜33の少なくとも一層以上の膜厚を片持ち梁40の長さ方向に沿って変えれば、全面一括処理のイオン照射で様々な角度に曲げた薄膜を形成することも可能である。また、互いに異なる多数の材質を適選し、何通りかの膜厚比で多層膜を形成しておけば、より複雑な立体形状を一括処理で形成できる。
例えば、図13(A)に示すように、作製工程途中においてフォトリソグラフィとエッチング、さらにはまたCMP等を適宜に援用し、片持ち梁40を構成している積層関係にあって第一薄膜層31においても第二薄膜層32においても、そして第三薄膜層33においても、片持ち梁40の付け根から先端自由端41に至る長さ方向に沿って互いに連続する部分領域(図示の場合三つ)31-1〜31-3:32-1〜32-3:33-1〜33-3があって、片持ち梁40を構成している各同一薄膜層31,32,33内にあって隣接する部分領域同士31-1と31-2、31-2と31-3、32-1と32-2、32-2と32-3、そして33-1と33-2、33-2と33-3は厚味が異なるように形成し、かつ、各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に隣接関係にある相手方の薄膜層の部分領域の厚味とも異なっているような(膜厚比が異なる)構造とすると、イオン照射により、同図(B)に示すように、片持ち梁40の曲がり変形の曲率が、先端自由端41に至る過程で変わって行く加工を行うことができる。
同じ部分領域毎の膜厚ないし膜厚比変化でも、図14(A)に示すように、第三薄膜層33にあって例えば片持ち梁40の先端自由端41を含む第三薄膜層33の部分領域33-3が最も厚く、第二、第一部分領域33-2,33-3の順で厚味が薄くなるようにし、逆に支持層20に接する第一薄膜層31では、片持ち梁40の付け根を含む第一部分領域33-1が最も厚く、第二部分領域31-2を経て片持ち梁40の先端自由端41を含む第三部分領域33-3に行くに連れ、薄くなるようにし、第二薄膜層32は概ねどの部分領域32-1〜32-3でも同じ厚味を保つような構造にすると、同図(B)に示すように、鋭角的な上方向への曲がりを呈した後、先端自由端41を含む部分領域の所で急激に下向きに曲がるような形状も得ることができる。
部分領域毎の膜厚ないし膜厚比変化は、上述のような言わばデジタル的な階段状変化だけではなく、スロープ状のアナログ的な変化にもできる。例えば図15(A)に示すように、厚さ方向へのテーパ・エッチング技術を利用すれば、片持ち梁40を構成する例えば三層の薄膜層31〜33にあって、少なくとも一層以上の薄膜層の厚味が片持ち梁40の付け根から先端自由端41に行くに従って段階的ではなくスロープ状に連続的に変化している構造を得ることができる。ここでは第一薄膜層31と第三薄膜層33の厚味が片持ち梁長さ方向に沿ってスロープ状変化を示し、第二薄膜層32は姿勢として頭を斜めに下げる形状の断面ではあるが、その厚味には片持ち梁長さ方向に沿っての変化はない。もっともこの場合にも、極小部分領域の連続という概念からしてみれば、やはり、各薄膜層31〜33は片持ち梁40の長さ方向に沿って厚味の異なる部分領域から構成されていることに変わりはない。このような構造にイオン照射をすれば、例えば同図(B)と同図(C)に示す関係から分るように、片持ち梁40の長さ方向に沿って曲率変化や曲がりの方向が異なる、より複雑な薄膜部材立体形状を得ることができる。
なお、二層構造の場合にもこのような部分領域毎の膜厚変化構造は採用できるし、さらに言えば、積層数に関わらず、膜厚変化に加えて既に図10に即して説明した技術思想に準じ、長さ方向にも、また上下積層方向にも、互いに隣接し合う部分領域相互の材質を異ならせることもできる。
いずれにしても、本発明の開示されたことの意味は大きく、例えば半導体素子の分野では立体配線や三次元実装化を従来よりも少ない工程、少ない材質で実現でき、一層の小型化や高機能化、コストパフォーマンスの向上が期待できる。また、光MEMS、RF-MEMS、センサMEMS、バイオMEMS等のMEMS分野では、従来、厚膜形成技術やエッチングの繰り返し工程数の多いプロセスで作製していた立体構造の作製を、少ない工程数、少ない材質で実施できるようになる。しかも、それぞれのMEMSが他のMEMSやCMOS-LSIなどの半導体回路と一体集積化され得るので、さらなる高機能集積化が実現できる。
以上、本発明を望ましい実施形態に即し説明したが、本発明の要旨構成に即する限り、任意の改変は自由である。
10 基板
20 支持層
21 支持層の周縁面
30 薄膜部材
31 第一薄膜層
31-1〜31-3 第一薄膜層の部分領域
32 第二薄膜層
32-1〜32-3 第二薄膜層の部分領域
33 第三薄膜層
33-1〜33-3 第三薄膜層の部分領域
35 第一材質層
36 第二材質層
37 第三材質層
40 片持ち梁
41 片持ち梁の先端自由端

Claims (5)

  1. 支持層により一部の面積領域は支持されているが、該支持層により支持されていない部分に、該支持層から離れ、浮いた状態で先端自由端に向かう所定平面形状の片持ち梁が形成されていて、該片持ち梁が実質的な曲げ加工対象部分となっている薄膜部材に対し、イオン照射をなすことで該片持ち梁を曲げ加工する薄膜部材の曲げ加工方法であって;
    上記薄膜部材にあって少なくとも上記片持ち梁は二層以上の複数の薄膜層が厚味方向に上下に積層された積層構造とし、上下に隣接する該薄膜層同士の材質は互いに異ならせたこと:
    を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法。
  2. 請求項1記載の薄膜部材の曲げ加工方法であって;
    上記片持ち梁を構成する複数の上記薄膜層はいずれも、該片持ち梁の付け根から上記先端自由端に至る長さ方向に沿って互いに連続する複数の部分領域から形成され;
    上記各薄膜層内にあって隣接する該部分領域同士は材質が異なり、かつ、該各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に積層関係にある相手方の上記薄膜層の上記部分領域の材質とも異なったものであること;
    を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法。
  3. 請求項1記載の薄膜部材の曲げ加工方法であって;
    上記片持ち梁を構成する複数の上記薄膜層はいずれも、該片持ち梁の付け根から上記先端自由端に至る長さ方向に沿って連続的に材質が異なっており;
    該各薄膜層は長さ方向の各位置で上下に積層関係にある相手方の上記薄膜層のその位置での材質とも異なる材質となっていること;
    を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法。
  4. 請求項1記載の薄膜部材の曲げ加工方法であって;
    上記片持ち梁を構成する複数の上記薄膜層はいずれも、該片持ち梁の付け根から上記先端自由端に至る長さ方向に沿って互いに連続する複数の部分領域から形成され;
    該各薄膜層内にあって隣接する該部分領域同士は厚味が異なり、かつ、該各部分領域は同じ長さ方向位置で上下に積層関係にある相手方の上記薄膜層の上記部分領域の厚味とも異なっていること;
    を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法。
  5. 請求項1記載の薄膜部材の曲げ加工方法であって;
    上記片持ち梁を構成する複数の上記薄膜層の少なくとも一層以上は、該片持ち梁の付け根から上記先端自由端に至る長さ方向に沿ってその厚味がスロープ状に変化すること;
    を特徴とする薄膜部材の曲げ加工方法。
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