JP2011132862A - ディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を機関運転中を含め継続的に且つ正確に把握して、保守時期の提示並びに異常発見時の原因特定を行うことができ、早期の対策を実施し得るディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法を提供する。
【解決手段】ディーゼル機関10のピストンリングの摺動状態に関連する複数の計測値をオンライン入力或いはマニュアル入力にてコンピュータ20の記憶領域に保存し、該コンピュータ20の記憶領域に保存した各計測値毎にピストンリングの摺動状態に関する状態判定を行って、総合的な状態指数を算出し、該状態指数に基づいて、保守が必要となる時期を推算すると共に、異常発見時には異常原因を特定し、対処方法を抽出して、それらの情報を操作員に提示しつつ、該対処方法に見合った制御信号をディーゼル機関10の制御装置30からディーゼル機関10へ出力するよう構成する。
【選択図】図1
【解決手段】ディーゼル機関10のピストンリングの摺動状態に関連する複数の計測値をオンライン入力或いはマニュアル入力にてコンピュータ20の記憶領域に保存し、該コンピュータ20の記憶領域に保存した各計測値毎にピストンリングの摺動状態に関する状態判定を行って、総合的な状態指数を算出し、該状態指数に基づいて、保守が必要となる時期を推算すると共に、異常発見時には異常原因を特定し、対処方法を抽出して、それらの情報を操作員に提示しつつ、該対処方法に見合った制御信号をディーゼル機関10の制御装置30からディーゼル機関10へ出力するよう構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、ディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法に関するものである。
一般に、コンテナ船、バルクキャリア、カーフェリー等の大型船舶や陸上発電プラント用として、環境に優しい2サイクル、4サイクルのディーゼル機関が用いられている。
この種のディーゼル機関においては、従来、シリンダライナの摺動面近傍に複数の温度センサを設置し、該温度センサにより検出した温度を機関負荷に応じて設定された閾値と比較したり、或いは、他のシリンダとの温度偏差、温度の変動速度、温度の振幅等を監視することにより、シリンダライナに対するピストンリングの摺動異常の有無を判断していた。
又、シリンダ下部からサンプリングした潤滑油の鉄粉等の金属粉濃度を計測して、シリンダライナに対するピストンリングの摺動異常の有無を判断することも行われていた。
尚、前述の如きディーゼル機関と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
しかしながら、前述の如く、シリンダライナの温度監視によって摺動異常の有無を判断するのでは、該摺動異常を発見した場合には、既にシリンダライナ及びピストンリングに深刻な損傷を与えた状態となっていることが殆どであり、損傷前又は損傷が軽微な状態で摺動異常を発見することは困難となっていた。
又、シリンダライナの温度の情報だけでは、正確な状態診断を行って異常発見時の原因を特定することは困難となっていた。
本発明は、斯かる実情に鑑み、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を機関運転中を含め継続的に且つ正確に把握して、保守時期の提示並びに異常発見時の原因特定を行うことができ、早期の対策を実施し得るディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法を提供しようとするものである。
本発明は、ディーゼル機関のシリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を監視するディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法であって、
前記ピストンリングの摺動状態に関連する複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ピストンリングの摺動状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がピストンリング摺動状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報をコンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目に関し、計測値及び/又は計測値に基づく計算値の予め設定された通常値からの離反割合に応じた判定指数e、計測値が設定時間内に設定値以上の変化を生じた回数に応じた判定指数e、計測値の変化率に応じた判定指数eを算出し、
前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
より算出して状態指数とし、
該状態指数を記録することにより、状態指数の時間経過に対する変化の傾向を求め、状態指数が予め設定された保守必要状態指数に達する時期を予測することを特徴とするディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法にかかるものである。
前記ピストンリングの摺動状態に関連する複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ピストンリングの摺動状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がピストンリング摺動状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報をコンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目に関し、計測値及び/又は計測値に基づく計算値の予め設定された通常値からの離反割合に応じた判定指数e、計測値が設定時間内に設定値以上の変化を生じた回数に応じた判定指数e、計測値の変化率に応じた判定指数eを算出し、
前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
より算出して状態指数とし、
該状態指数を記録することにより、状態指数の時間経過に対する変化の傾向を求め、状態指数が予め設定された保守必要状態指数に達する時期を予測することを特徴とするディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法にかかるものである。
前記ディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法においては、前記ピストンリングの摺動異常の原因となる複数の摺動異常原因項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記状態診断項目に与える影響度合として求められた重み係数w2を予め設定し、この情報を前記コンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目における判定指数eを前記摺動異常原因項目における重み係数w2に乗算し、該乗算した値を摺動異常原因項目毎に積算し、その合計値を
Σ([判定指数e]×[重み係数w2])
より算出し、該摺動異常原因項目における合計値を相互に比較し、該合計値が相対的に大となる上位の摺動異常原因項目を、ピストンリングの摺動異常発見時の原因として特定することができる。
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目における判定指数eを前記摺動異常原因項目における重み係数w2に乗算し、該乗算した値を摺動異常原因項目毎に積算し、その合計値を
Σ([判定指数e]×[重み係数w2])
より算出し、該摺動異常原因項目における合計値を相互に比較し、該合計値が相対的に大となる上位の摺動異常原因項目を、ピストンリングの摺動異常発見時の原因として特定することができる。
又、前記ディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法においては、前記状態診断項目を、シリンダライナの摩耗予測値、ピストンリングのコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室圧縮圧力とすることができる。
更に又、前記ディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法においては、前記摺動異常原因項目を、シリンダライナの摩耗限界、ピストンリングのコーティング層摩耗限界、燃料への硬質異物の混入、過負荷、負荷変動、凝縮水混入、燃料噴射異常、注油量不足、2サイクルの場合の掃気温度低、4サイクルの場合の給気温度低とすることができる。
本発明のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法によれば、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を機関運転中を含め継続的に且つ正確に把握して、保守時期の提示並びに異常発見時の原因特定を行うことができ、早期の対策を実施し得、更に、前記摺動状態の正確な把握に伴い燃料並びに潤滑油の消費を最小限に抑えた運転を実現し、経済的メリットをも高め得るという優れた効果を奏し得る。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図14は本発明のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法の実施例であって、図1には該方法を実施する装置のブロック図を示しており、ディーゼル機関10のピストンリング47(図2参照)の摺動状態に関連する複数の計測値をオンライン入力或いはマニュアル入力にてコンピュータ20の記憶領域に保存し、該コンピュータ20の記憶領域に保存した各計測値毎にピストンリング47の摺動状態に関する状態判定を行って、総合的な状態指数を算出し、該状態指数に基づいて、保守が必要となる時期を推算すると共に、異常発見時には異常原因を特定し、対処方法を抽出して、それらの情報を操作員に提示しつつ、該対処方法に見合った制御信号をディーゼル機関10の制御装置30からディーゼル機関10へ出力するよう構成したものである。
図2には、本発明の方法が適用される2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10の一例を示しており、該2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10は、台板40及び架構41を固定配置してなる本体部42の上部に、シリンダジャケット43を載置し、該シリンダジャケット43に、内周面側にシリンダライナ44が装着されたシリンダ45を、該シリンダ45の下部がシリンダジャケット43内部に位置し且つシリンダ45の上部がシリンダジャケット43の上方へ突出するよう配設し、前記台板40にクランク軸46を回転自在に支持せしめ、前記シリンダ45内に、外周上部にピストンリング47が嵌着されたピストンヘッド48をその軸線方向へ摺動自在となるよう嵌挿し、該ピストンヘッド48の下面に、下端にクロスヘッドピン49が一体に形成されたピストンロッド50を、シリンダジャケット43底面を貫通して架構41側へ延びるよう取り付けると共に、該ピストンロッド50と前記クランク軸46とを連接棒51を介して連結し、前記ピストンヘッド48のシリンダ45内での往復運動をクランク軸46の回転運動に変換して伝達し得るようにしてある。尚、図2には多気筒のうち一つのシリンダ45のみを図示してある。
前記シリンダジャケット43の側部には、吸入空気Aが導入される給気室52と、該吸入空気Aをシリンダジャケット43内へ送る掃気室53とを形成し、前記給気室52の入側の給気流路54途中には、吸入空気Aを過給するための過給機55のコンプレッサ55aを設けると共に、前記給気室52内部には、吸入空気Aを冷却する空気冷却器56と、該空気冷却器56で冷却した吸入空気A中に含まれる水を分離して前記掃気室53へ導くウォータセパレータ57とを設けてある。
前記シリンダ45の下部には、前記シリンダジャケット43内から吸入空気Aが流入するように掃気ポート58を穿設し、前記シリンダ45の上部には、燃料噴射ノズル(図示せず)から該シリンダ45内への燃料噴射により着火燃焼させた燃焼排ガスを排気流路59へ排出するための排気弁60を配設し、前記排気流路59の途中には、前記過給機55のタービン55bを設けてある。
尚、前記空気冷却器56は、前記給気室52から吸入空気Aが流入する内部空間に複数の導管56aを備え、該導管56aに水等の冷媒を流して吸入空気Aを冷媒との熱交換により空気冷却するようにしている。
一方、前記シリンダジャケット43の底部には、シリンダ45を潤滑した潤滑油をドレンタンクへ導くドレン管61を接続し、該ドレン管61途中には、潤滑油中に含まれる鉄粉等の金属粉濃度を計測する金属粉濃度センサ62と、必要に応じて潤滑油を採取するサンプリングコック63とを設けてある。尚、前記金属粉濃度センサ62としては、例えば、特開2008−8885号公報に開示されている磁性体濃度計測装置を用いることができる。
又、前記ディーゼル機関10には、大気温度を検出する温度センサ64と、大気湿度を検出する湿度センサ65とを設けると共に、前記過給機55のコンプレッサ55aの出側には、過給後の空気温度を検出する温度センサ66を設け、前記掃気室53には、前記空気冷却器56通過後の過給吸入空気の温度を検出する温度センサ67と、前記空気冷却器56通過後の過給吸入空気の圧力を検出する圧力センサ68とを設け、前記シリンダ45には、シリンダライナ温度を検出する温度センサ69と、燃焼最高圧力並びに燃焼室圧縮圧力を検出するシリンダ内圧計測装置70とを設け、前記排気流路59には、前記排気弁60から排出される排ガスの温度を検出する温度センサ71と、前記過給機55のタービン55bの入側の排ガスの温度を検出する温度センサ72と、該タービン55bの出側の排ガスの温度を検出する温度センサ73とを設けてある。
図3には、本発明のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法における状態指数の算出ロジック図を示しており、ピストンリング47の摺動状態に関連する複数の状態診断項目を、シリンダライナ44の摩耗予測値、ピストンリング47のコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室圧縮圧力とし、これら複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ピストンリング47の摺動状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がピストンリング摺動状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報を前記コンピュータ20の記憶領域にデータベース化するようにしてある。
尚、吸入空気条件を
吸入空気量:Qair=420000[kg/hr]
吸入空気温度:Tair=(40+273)[K]
吸入空気相対湿度:φ=0.8
吸入空気圧力:Pair=0.1×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
Ps1=exp(18.7509−4075.16/(Tair+236.516−273))×φ×101300/760[Pa]
=5.9×103[Pa]
絶対湿度:x1=0.622×(Ps1/(Pair−Ps1))
とし、掃気条件を
掃気温度:Tsc=(41.5+273)[K]
掃気圧力:Psc=0.27×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
Ps2=exp(18.7509−4075.16/(Tsc+236.516−273))×101300/760[Pa]
=7.986×103[Pa]
絶対湿度:x2=0.622×(Ps2/(Psc−Ps2))
とすると、前記凝縮水発生率は、
x=(x1/(1+x1)−x2/(1+x2))
=0.019
より、計測値に基づく計算値として求めることができ、この値に吸入空気量Qairを掛けたものが、発生する凝縮水量となる。
吸入空気量:Qair=420000[kg/hr]
吸入空気温度:Tair=(40+273)[K]
吸入空気相対湿度:φ=0.8
吸入空気圧力:Pair=0.1×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
Ps1=exp(18.7509−4075.16/(Tair+236.516−273))×φ×101300/760[Pa]
=5.9×103[Pa]
絶対湿度:x1=0.622×(Ps1/(Pair−Ps1))
とし、掃気条件を
掃気温度:Tsc=(41.5+273)[K]
掃気圧力:Psc=0.27×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
Ps2=exp(18.7509−4075.16/(Tsc+236.516−273))×101300/760[Pa]
=7.986×103[Pa]
絶対湿度:x2=0.622×(Ps2/(Psc−Ps2))
とすると、前記凝縮水発生率は、
x=(x1/(1+x1)−x2/(1+x2))
=0.019
より、計測値に基づく計算値として求めることができ、この値に吸入空気量Qairを掛けたものが、発生する凝縮水量となる。
前記重み係数w1並びに確度係数rの具体的数値は、例えば、図4に示すようなものとなる。
ここで、前記各状態診断項目にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン0〜パターン5までの計六種類の状態判定パターンのいずれかを割り振るようにしてある。
前記パターン0は、例えば、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価を例に取ると、図7に示す如く、日付(又は運転時間)を横軸に取り、縦軸に全アルカリ価を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における通常値(この例では35[mg])を登録しておくと共に、上限値(この例では70[mg])と下限値(この例では10[mg])とを登録しておき、このグラフに、計測値(この例では28[mg])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、日付(又は運転時間)を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では−28%)をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が−28%であるため、判定指数eは「4」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、上位の値が5%である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、上位の値が10%である場合、判定指数eに「3」と「4」が割り当てられ、上位の値が20%である場合、判定指数eに「5」と「6」が割り当てられ、上位の値が30%である場合、判定指数eに「7」と「8」が割り当てられ、下位の値が−70%である場合、判定指数eに「8」と「9」と「10」が割り当てられているが、上位の値が5%である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、上位の値が10%である場合には、「3」ではなく条件として厳しくなる「4」を判定指数eとして選択し、上位の値が20%である場合には、「5」ではなく条件として厳しくなる「6」を判定指数eとして選択し、上位の値が30%である場合には、「7」ではなく条件として厳しくなる「8」を判定指数eとして選択し、下位の値が−70%である場合には、「8」や「9」ではなく条件として厳しくなる「10」を判定指数eとして選択するようにしてある。又、前記潤滑油中の全アルカリ価とは、1[g]の試料中に含まれる塩基性成分を中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウムの[mg]数のことである。
前記パターン1は、例えば、各シリンダライナ温度を例に取ると、図8に示す如く、負荷を横軸に取り、縦軸に各シリンダライナ温度を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における各負荷(この例では50%負荷、75%部分負荷、85%通常負荷、100%最大負荷)での通常値(この例では170[℃]、180[℃]、190[℃]、220[℃])を登録しておくと共に、各負荷での上限値(この例では200[℃]、210[℃]、230[℃]、250[℃])と下限値(この例では150[℃]、155[℃]、165[℃]、185[℃])とを登録しておき、判定負荷は50%以上で、通常値の間、上限値の間、下限値の間はそれぞれ二次曲線で補完し、このグラフに、計測値(この例では通常負荷において201[℃])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、負荷を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では28%)をプロットし、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が28%であるため、判定指数eは「4」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。
前記パターン2は、例えば、燃焼室圧縮圧力を例に取ると、図9に示す如く、過給機回転数を横軸に取り、縦軸に燃焼室圧縮圧力を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における各負荷の過給機回転数(9000[rpm]、11500[rpm]、12500[rpm]、13500[rpm])に対する通常値(この例では8.0[MPa]、10.4[MPa]、11.7[MPa]、13.7[MPa])を登録しておくと共に、各負荷の過給機回転数に対する上限値(この例では9.0[MPa]、11.4[MPa]、12.7[MPa]、14.7[MPa])と下限値(この例では7.0[MPa]、9.4[MPa]、10.7[MPa]、12.7[MPa])とを登録しておき、判定過給機回転数は9000[rpm]以上で、通常値の間、上限値の間、下限値の間はそれぞれ二次曲線で補完し、このグラフに、計測値(この例では過給機回転数が12500[rpm]において11.2[MPa])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、過給機回転数を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では−50%)をプロットし、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が−50%であるため、判定指数eは「5」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。
前記パターン3は、例えば、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差を例に取ると、図10に示す如く、各シリンダについてシリンダライナ温度を計測し、該計測値(この例では、NO.1シリンダのシリンダライナ温度が315[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度が287[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度が293[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度が310[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度が285[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度が310[℃])に基づいてその平均値(この例では、300[℃]=(315+287+293+310+285+310)/6)を求め、縦軸にシリンダライナ温度を取ったグラフにおいて、前記計測値をプロットすると共に、各シリンダ毎に予め設定された製造時のバラツキを考慮した前記各シリンダ平均値からの通常偏差値(この例では、NO.1シリンダで10[℃]、NO.2シリンダで−15[℃]、NO.3シリンダで3[℃]、NO.4シリンダで12[℃]、NO.5シリンダで−20[℃]、NO.6シリンダで10[℃])を基準とした上限値(この例では、いずれのシリンダも20[℃]であるため、NO.1シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+10+20=330[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300−15+20=305[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+3+20=323[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+12+20=332[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300−20+20=300[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+10+20=330[℃])及び下限値(この例では、いずれのシリンダも−20[℃]であるため、NO.1シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+10−20=290[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300−15−20=265[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+3−20=283[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+12−20=292[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300−20−20=260[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+10−20=290[℃])を、棒グラフ的に表示し、続いて、前記通常偏差値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換した場合の前記計測値を%に変換した値(この例では、NO.1シリンダで25%、NO.2シリンダで10%、NO.3シリンダで−50%、NO.4シリンダで−10%、NO.5シリンダで25%、NO.6シリンダで0%)を求め、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである(このグラフは各シリンダ毎に作成されるものであるが、図10にはNO.2シリンダの例のみを示してある)。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値がNO.2シリンダで10%であるため、該NO.2シリンダにおける判定指数eは「2」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。又、この例においては、判定指数テーブルには、上位の値が10%である場合、或いは下位の値が−10%である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられているが、このように上位の値が10%である場合、或いは下位の値が−10%である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択するようにしてある。
前記パターン4は、例えば、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅を例に取ると、図11に示す如く、設定時間内における設定温度以上の変化の回数をカウントすることにより、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、設定時間(図の例では、1200[sec])内における設定温度(この例では、5[℃])以上の変化の回数が3回あったため、判定指数eは「6」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が1回である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が2回である場合、判定指数eに「3」と「4」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が3回である場合、判定指数eに「5」と「6」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が4回である場合、判定指数eに「7」と「8」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が5回である場合、判定指数eに「9」と「10」が割り当てられているが、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が1回である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が2回である場合には、「3」ではなく条件として厳しくなる「4」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が3回である場合には、「5」ではなく条件として厳しくなる「6」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が4回である場合には、「7」ではなく条件として厳しくなる「8」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が5回である場合には、「9」ではなく条件として厳しくなる「10」を判定指数eとして選択するようにしてある。
前記パターン5は、例えば、各シリンダライナ温度の変化率を例に取ると、図12に示す如く、設定時間当たりの変化量を連続的に計測することにより、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、設定時間(図の例では、5[sec])当たりの変化量(この例では、5[℃])であるため、判定指数eは「2」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、5[sec]の間における温度変化が5[℃]である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、5[sec]の間における温度変化が7[℃]である場合、判定指数eに「4」と「5」が割り当てられ、5[sec]の間における温度変化が15[℃]である場合、判定指数eに「8」と「9」が割り当てられているが、5[sec]の間における温度変化が5[℃]である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、5[sec]の間における温度変化が7[℃]である場合には、「4」ではなく条件として厳しくなる「5」を判定指数eとして選択し、5[sec]の間における温度変化が15[℃]である場合には、「8」ではなく条件として厳しくなる「9」を判定指数eとして選択するようにしてある。
そして、例えば、一日に一回行われる状態診断時には、前記各状態診断項目にそれぞれ割り振られたパターン0〜パターン5のいずれかにより、その状態を見極める上での目安となる判定指数eがコンピュータ20の演算処理部において算出されるが、該判定指数eの具体的数値は、例えば、図5に示すようなものとなる。
続いて、図6に示す如く、前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択(図6の例では、※印を付けた、ピストンリング47のコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差の五項目を選択)し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
=(36+72+56+48+42)/(7+7+9+6+6)
=254/35
=7.26
より算出して状態指数とするようにしてある。尚、前記状態診断項目が仮に五項目以下の場合は、全ての状態診断項目を対象とし、又、最下位に同じ確度係数rとなる状態診断項目が複数ある場合は、該複数ある状態診断項目の[重み係数w1]×[判定指数e]の値の平均値を使うものとする。
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
=(36+72+56+48+42)/(7+7+9+6+6)
=254/35
=7.26
より算出して状態指数とするようにしてある。尚、前記状態診断項目が仮に五項目以下の場合は、全ての状態診断項目を対象とし、又、最下位に同じ確度係数rとなる状態診断項目が複数ある場合は、該複数ある状態診断項目の[重み係数w1]×[判定指数e]の値の平均値を使うものとする。
更に、図13に示す如く、日付(又は運転時間)を横軸に取ったグラフに、前記状態指数をプロットして記録することにより、状態指数の時間経過に対する変化の傾向を求め、状態指数が予め設定された保守必要状態指数に達する時期を予測するようにしてある。この情報に基づいて、ある時期に、例えば、ピストンリング47の交換を行った場合、プロットされる状態指数をつなぐ近似直線はリセットされるようにしてある。
一方、図14には、本発明のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法におけるピストンリング47の摺動異常発見時の原因特定ロジック図を示しており、前記ピストンリング47の摺動異常の原因となる複数の摺動異常原因項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記状態診断項目に与える影響度合として求められた重み係数w2を予め設定し、この情報を前記コンピュータ20の記憶領域にデータベース化しておき、該コンピュータ20の演算処理部において、前記状態診断項目における判定指数eを前記摺動異常原因項目における重み係数w2に乗算し、該乗算した値を摺動異常原因項目毎に積算し、その合計値を
Σ([判定指数e]×[重み係数w2])
より算出し、該摺動異常原因項目における合計値を相互に比較し、該合計値が相対的に大となる上位の摺動異常原因項目を、ピストンリング47の摺動異常発見時の原因として特定するようにしてある。
Σ([判定指数e]×[重み係数w2])
より算出し、該摺動異常原因項目における合計値を相互に比較し、該合計値が相対的に大となる上位の摺動異常原因項目を、ピストンリング47の摺動異常発見時の原因として特定するようにしてある。
図14に示す例では、前記摺動異常原因項目は、シリンダライナ44の摩耗限界、ピストンリング47のコーティング層摩耗限界、燃料への硬質異物の混入、過負荷、負荷変動、凝縮水混入、燃料噴射異常、注油量不足、掃気温度低としてあり、燃料への硬質異物の混入における前記合計値が「120」と突出していることから、該燃料への硬質異物の混入が異常の原因である可能性が高いと言える。
更に、前記摺動異常原因項目毎に、
シリンダライナ摩耗限界→→→シリンダライナ44を交換
ピストンリング47のコーティング層摩耗限界→→→ピストンリング47を交換
燃料への硬質異物の混入→→→清浄機の並列運転により機関負荷を低下させる、或いは燃料フィルタを点検
過負荷→→→負荷低減
急激な負荷変動→→→出力を低減し、急激な負荷変動に対して余裕を持たせる
凝縮水混入→→→掃気温度を上げる、或いは凝縮水排出系統の詰りの有無をチェック
燃料噴射異常→→→燃料噴射時期を確認、或いは燃料噴射弁の噴射状態を確認
注油量不足→→→注油量増量
掃気温度低→→→掃気温度を上げる
といった対処方法を予め設定しておくことにより、異常発見時の原因特定と、それに対する早期の対策を実施することが可能となる。
シリンダライナ摩耗限界→→→シリンダライナ44を交換
ピストンリング47のコーティング層摩耗限界→→→ピストンリング47を交換
燃料への硬質異物の混入→→→清浄機の並列運転により機関負荷を低下させる、或いは燃料フィルタを点検
過負荷→→→負荷低減
急激な負荷変動→→→出力を低減し、急激な負荷変動に対して余裕を持たせる
凝縮水混入→→→掃気温度を上げる、或いは凝縮水排出系統の詰りの有無をチェック
燃料噴射異常→→→燃料噴射時期を確認、或いは燃料噴射弁の噴射状態を確認
注油量不足→→→注油量増量
掃気温度低→→→掃気温度を上げる
といった対処方法を予め設定しておくことにより、異常発見時の原因特定と、それに対する早期の対策を実施することが可能となる。
尚、前記硬質異物とは、原油から燃料となる重油を精製する際に使用されるFCC触媒(FCC:Fluid Catalyst Cracking)中に含まれるアルミナやシリカ等である。
又、前記過負荷とは、(出力/回転数)∝シリンダ平均有効圧力Pmeの関係になり、該シリンダ平均有効圧力Pmeが通常の定格最大負荷100%での圧力を超えることを意味し、一つは、負荷が定格最大負荷100%より大きい場合であり、もう一つは、前記回転数に対して出力が大きい場合でも、過負荷状態になる。
更に又、前記急激な負荷変動とは、数秒間(2〜3秒間)で5%程度以上の負荷変動のことであり、船舶の場合、海が荒れるとプロペラにかかる力が大きく変動し、これにより機関の回転数も大きく変動するが、機関の回転数が低下すると、前記シリンダ平均有効圧力Pmeが大きくなり、このとき、もともとの出力が大きいとシリンダ平均有効圧力Pmeが容易に定格最大負荷100%での圧力を超えてしまい、これを避けるために、出力を低減し、急激な負荷変動に対して余裕を持たせることが急激な負荷変動の対策として有効となる。
こうして、シリンダライナ44に対するピストンリング47の摺動状態を機関運転中を含め継続的に且つ正確に把握して、保守時期の提示並びに異常発見時の原因特定を行うことができ、早期の対策を実施し得る。
図15には4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10の一例を示しており、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、該4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10では、2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10における掃気ポート58の代わりに、吸入空気Aをシリンダ45内へ導入するための吸気弁74をシリンダヘッド75に設けている一方、シリンダ45を潤滑した潤滑油中に含まれる鉄粉等の金属粉濃度を計測する金属粉濃度センサ62と、必要に応じて潤滑油を採取するサンプリングコック63とが設けられたドレン管61の先端を、クランク軸46の下方に形成されるオイル溜まりに潤滑油が戻されるよう、クランクケース76に接続してある。
そして、図15に示すような4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10に対しても、本発明の方法を適用することにより、シリンダライナ44に対するピストンリング47の摺動状態を機関運転中を含め継続的に且つ正確に把握して、保守時期の提示並びに異常発見時の原因特定を行うことができ、早期の対策を実施し得る。
但し、この場合、図14に示した摺動異常原因項目のうち2サイクルの場合の「掃気温度低」は、「4サイクルの場合は給気温度低」と置き換え、又、凝縮水混入に対する対処方法としては、「給気温度を上げる、或いは凝縮水排出系統の詰りの有無をチェック」と置き換えることは必要となる。
尚、本発明のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
10 ディーゼル機関
20 コンピュータ
30 制御装置
44 シリンダライナ
45 シリンダ
47 ピストンリング
48 ピストンヘッド
55 過給機
55a コンプレッサ
55b タービン
56 空気冷却器
57 ウォータセパレータ
58 掃気ポート
61 ドレン管
62 金属粉濃度センサ
63 サンプリングコック
64 温度センサ
65 湿度センサ
66 温度センサ
67 温度センサ
68 圧力センサ
69 温度センサ
70 シリンダ内圧計測装置
71 温度センサ
72 温度センサ
73 温度センサ
A 吸入空気
20 コンピュータ
30 制御装置
44 シリンダライナ
45 シリンダ
47 ピストンリング
48 ピストンヘッド
55 過給機
55a コンプレッサ
55b タービン
56 空気冷却器
57 ウォータセパレータ
58 掃気ポート
61 ドレン管
62 金属粉濃度センサ
63 サンプリングコック
64 温度センサ
65 湿度センサ
66 温度センサ
67 温度センサ
68 圧力センサ
69 温度センサ
70 シリンダ内圧計測装置
71 温度センサ
72 温度センサ
73 温度センサ
A 吸入空気
Claims (4)
- ディーゼル機関のシリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を監視するディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法であって、
前記ピストンリングの摺動状態に関連する複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ピストンリングの摺動状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がピストンリング摺動状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報をコンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目に関し、計測値及び/又は計測値に基づく計算値の予め設定された通常値からの離反割合に応じた判定指数e、計測値が設定時間内に設定値以上の変化を生じた回数に応じた判定指数e、計測値の変化率に応じた判定指数eを算出し、
前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
より算出して状態指数とし、
該状態指数を記録することにより、状態指数の時間経過に対する変化の傾向を求め、状態指数が予め設定された保守必要状態指数に達する時期を予測することを特徴とするディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法。 - 前記ピストンリングの摺動異常の原因となる複数の摺動異常原因項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記状態診断項目に与える影響度合として求められた重み係数w2を予め設定し、この情報を前記コンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目における判定指数eを前記摺動異常原因項目における重み係数w2に乗算し、該乗算した値を摺動異常原因項目毎に積算し、その合計値を
Σ([判定指数e]×[重み係数w2])
より算出し、該摺動異常原因項目における合計値を相互に比較し、該合計値が相対的に大となる上位の摺動異常原因項目を、ピストンリングの摺動異常発見時の原因として特定する請求項1記載のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法。 - 前記状態診断項目を、シリンダライナの摩耗予測値、ピストンリングのコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室圧縮圧力とした請求項1又は2記載のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法。
- 前記摺動異常原因項目を、シリンダライナの摩耗限界、ピストンリングのコーティング層摩耗限界、燃料への硬質異物の混入、過負荷、負荷変動、凝縮水混入、燃料噴射異常、注油量不足、2サイクルの場合の掃気温度低、4サイクルの場合の給気温度低とした請求項2記載のディーゼル機関のピストンリング摺動状態監視方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2009-12-24 JP JP2009292152A patent/JP2011132862A/ja active Pending
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