JP2011127191A - 焼結鉱解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定し、Fe原子からの距離が0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数をそれぞれNCa、NFeとして、比率=NCa/(NCa+NFe)で定義される相関指数CFCを導出する。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、結合相の量や組織形態が類似していても、強度や被還元性といった焼結鉱の諸特性が大きく異なる場合が多く、焼結プロセスを改善するための新たな評価法が必要となっていた。
なお、焼結鉱を含め、一般に固体の構造解析方法にX線を用いた技術がある(例えば、非特許文献1、2を参照)。
大気中のCa-Fe-O三元系平衡状態図において、実際の焼結鉱製造プロセスに用いられる代表的な原料配合比率付近に対応するCa-Fe-O酸化物である、CaFe2O4相およびCa2Fe9O13相の結晶構造を図1に示す。具体的に、図1(a)にCaFe2O4相を示し、図1(b)にCa2Fe9O13相を示す。また、図1において、白抜きの丸はOを表し、斜線を施した丸はCaを表し、黒で塗り潰した丸はFeを表す。図1に示すように、CaFe2O4相およびCa2Fe9O13相は、FeおよびCaの周りにO(酸素)が配位したユニット(以降、それぞれ、Fe-Oユニット、Ca-Oユニットと称する)が配列した構造となっており、両者の構造の違いはそのユニットの配列の仕方にある。すなわち、Fe-Oユニットの周りに存在する、Fe-Oユニットの数とCa-Oユニットの数とから求めたユニット比率(=Ca-Oユニットの数/(Fe-Oユニットの数+Ca-Oユニットの数))は、CaFe2O4相の方がCa2Fe9O13相よりも大きいことがわかる。つまり、CaFe2O4相の方がCa2Fe9O13相よりも、Fe-OユニットとCa-Oユニットが近い距離に存在しているのである。
結晶成長は原子の周りの環境に大きく依存する。そのため、この環境が違うと、昇降温に伴う拡散・溶融・凝固等の現象に差異が生じ、最終的に生成する鉄鉱石の組織が大きく異なる。その結果、鉄鉱石の強度や被還元性が大きく異なる。本質的には、化学的な構造環境が重要であり、その指標として、本発明者らは、FeとCaの原子相関が重要であることを見出した。
(1)焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定する結晶構造決定工程と、前記カルシウムフェライト化合物相の結晶構造に基づいて、前記カルシウムフェライト化合物相に含まれるFe原子からの距離が0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数を導出する原子数導出工程と、前記Fe原子からの距離が0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数をそれぞれNCa、NFeとして、以下の式(A)で定義される、前記焼結鉱中の結合相の結晶学的特徴を評価するための相関指数CFC(Calcium Ferrite Correlation)を導出する相関指数導出工程と、を有することを特徴とする焼結鉱解析方法。
CFC=NCa/(NCa+NFe) ・・・(A)
(2)前記相関指数導出工程は、複数の前記カルシウムフェライト化合物相それぞれについて相関指数CFCを求め、それぞれの相関指数CFCに、前記複数のカルシウムフェライト化合物相それぞれのモル分率を掛けたものを加算することにより、前記複数のカルシウムフェライト化合物相全体の前記相関指数CFCを決定することを特徴とする(1)に記載の焼結鉱解析方法。
(3)前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相をX線回折法により測定する測定工程を有し、前記結晶構造決定工程は、前記X線回折法により測定された結果に基づいて、前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定することを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結鉱解析方法。
(4)前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相に含まれるFe原子の周りの動径分布関数をXAFS法により決定する動径分布関数決定工程を有し、前記結晶構造決定工程は、前記動径分布関数に基づいて、前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定することを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結鉱解析方法。
本実施形態による焼結鉱の評価方法では、焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定し、以下の指標:Fe原子とCa原子の相関指数CFC(Calcium Ferrite Correlation)により、焼結鉱の結晶構造を評価すればよい。なお、ここでいう「カルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定する」とは、カルシウムフェライト化合物相を構成する原子の配列について、最低限、Fe原子とCa原子の互いの原子相関に関する情報を求めることを意味する。すなわち、本実施形態による焼結鉱の評価方法は、カルシウムフェライト化合物相の結晶性に関係なく、実施可能である。カルシウムフェライト化合物相の結晶性が高い場合には、結晶の単位胞(ユニットセル)の構造を決めることも可能になる。一方、カルシウムフェライト化合物相の結晶性が低い場合、すなわち、カルシウムフェライト化合物相に非晶質成分が含まれる場合では、結晶の単位胞(ユニットセル)の構造を決めるのは原理的に困難になるが、構成原子の原子相関に関する情報を決定することは可能である。よって、本実施形態による焼結鉱の評価方法は、カルシウムフェライト化合物相の結晶性が低くても実施可能である。
Fe-OユニットとCa-Oユニットの配置を示す指標として、Fe原子からの距離rが、一定の範囲にあるCaとFeの原子数の存在数をそれぞれNCa、NFeとしたときの比率(=NCa/(NCa+NFe))である相関指数CFCを用いれば、簡便にかつ本質的に結合相に含まれるCF相を評価することができる。これは、Fe原子とCa原子との相関は、Fe-OユニットとCa-Oユニットとが近い距離にどの程度存在するか、すなわち、両ユニット間の相互作用(空間的配置)を簡便に評価できる指数であるからである。その結果、相関指数CFCは、両ユニットの相互作用の結果として発現する焼結鉱の諸特性(例えば、機械的強度や被還元性)との関連性が高い有用な評価法となる。
結晶中のFe原子の大きさはその価数により異なり、Fe(II)は半径が約0.082nm、Fe(III)は約0.067nmである。よって、Fe原子からの距離rが0.067nm以下の領域には、他の原子が存在できない。そこで、Fe原子からの距離rを0.067nm超とした。また、FeとCaの原子相関を評価する場合には、直接近接するFe-OユニットとCa-Oユニットとの相関が重要である。そのため、Fe原子からの距離rの上限は、Fe原子から第一近接ユニット(Fe原子に最も近接しているユニット)までの距離よりも大きく、第二近接ユニット(第一近接ユニットの次にFe原子に近接しているユニット)までの距離よりも小さいことが望ましい。Fe原子と、Fe原子に隣接するO(酸素)との距離は約0.20〜0.21nm、Ca原子と、Ca原子に隣接するO(酸素)との距離は約0.24nmであるので、Fe-OもしくはCa-Oの距離の2倍超3倍以下の距離である0.6nmを目安とし、Fe原子からの距離rを0.6nm以下とした。
(相関指数CFCの第1の決定方法)
まず、焼結鉱に含有されるCF相を構成する複数の相を、X線回折法により測定し、それぞれの相の結晶構造を決定することにより、相関指数CFCを求める方法を例に挙げて以下に述べる。
X線回折法を用いると、材料中の原子の配列が評価でき、結晶の空間群と単位胞における構成原子の位置とを決定できる(例えば、非特許文献1の1章を参照)。以下、具体的な方法を述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。焼結鉱から採取した試料について、X線ディフラクトメーターによる粉末回折図形の測定を行う。その結果から、焼結鉱に含有されるCF相の結晶構造を決定する。
次に、相関指数CFCを具体的に決定する他の方法として、焼結鉱に含有されるCF相に含まれるFe原子の周りの動径分布関数をXAFS法により決定することにより、相関指数CFCを求める方法を以下に述べる。
XAFS(X-ray Absorption Fine-structures:X線吸収微細構造)法は、X線吸収スペクトル法の一つである。X線のエネルギーを増加させながら材料の吸収率を測定すると、X線のエネルギーの増加に対応して材料の吸収率は減少するが、特定のX線のエネルギー(吸収端エネルギー)において、その吸収率が急激に増加する。X線の吸収によって発生した光電子の一部が、複数の原子による散乱と干渉とによって、X線の吸収量に対する構造情報として反映される。つまり、特定原子の吸収端エネルギー近傍のX線の吸収量をモニタすれば、その原子の周りの原子配置(動径分布関数)に関する情報が得られる(例えば、非特許文献2を参照)。以下、具体的な方法を述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
表1に示す焼結用原料を、表1に示す割合で配合した。このとき、石灰石や蛇紋岩、珪石等のその他の副原料の割合を調整して、焼結鉱のSiO2、CaO/SiO2、MgOの割合(比)を大きく変化させないようにした。このように調整した焼結用原料を焼結鍋試験で焼結して焼結鉱を生成し、冷間強度を測定した。冷間強度は、塊状(例えば、直径10〜30cm程度)の焼結鉱を高さ2mから落下させ、粒径が10mm以上の粒子の質量比率により求めた。
X線回折図形の測定の結果、配合1の焼結鉱は、[A相]=CaFe2O4相に近い結晶構造を有する相、および[B相]Ca2Fe9O13相に近い結晶構造を有する相、の二相から構成され、その比率が、[A相]=31.5mass%、[B相]=68.5mass%、となった。[A相]および[B相]のそれぞれについて、Fe原子の周りに存在する元素について、その種類・距離・平均的な存在数を求めた。[A相]には二種類のFe原子が存在していた。図3に、そのうちの一種類のFe原子の周りに存在する原子の種類(原子種)・当該Fe原子からの距離・平均的な存在数(平均個数)の調査結果に示す。これら、Fe原子の周りに存在する元素について、当該Fe原子からの距離rが0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数(原子数)をそれぞれ求めた。同様のことを、もう一種類のFe原子についても行った。さらに、[B相]についても同様の手順で、Fe原子の周りに存在する元素について、当該Fe原子からの距離rが0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数(原子数)をそれぞれ求めた。[A相]および[B相]、それぞれについて、比率(NCa/(NCa+NFe))を各相の相関指数CFCとして決定した。そして、これら、[A相]および[B相]の相関指数CFCに、[A相]=31.5mass%、[B相]=68.5mass%から計算したそれぞれのモル分率を掛けたものを加算することにより全体の相関指数CFCを決定した。
実施例1と同様の試料(表1を参照)を用いて、CF相の結晶構造をXAFS法により決定した。前述したようにして得られた焼結鉱を粉砕して、透過法によりXAFSスペクトルを測定した。放射光X線を線源として、X線をSi結晶で分光することによりエネルギーを変えたX線を試料に照射し、透過前後のX線の強度をイオンチャンバーで測定し、吸収率の変化からXAFSスペクトルを得た。得られたXAFSスペクトルについて、バックグランドを除去した振動成分を求め、その距離に関するフーリエ変換から、Fe原子の周りの動径分布関数を求めた。動径分布関数のそれぞれのピークは、Fe,Ca,Oの存在比率(配位数)に相当するものである。試料中には結合相とFe2O3相とが共存しているので、結晶構造が既知のFe2O3相からの動径分布関数への寄与を差し引いて、結合相の動径分布関数を得た。また、結合相中、FeおよびCaに対応するピークが一部重なる際の、距離および配位数を仮定した結晶構造モデルにより、FeおよびCaに対応するピークを計算し、実測と一致したときの結晶構造モデルの距離および配位数を採用した。そして、動径分布関数のなかで、Fe原子からの距離rが0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するFe原子およびCa原子に対応するピークの比率から、 Ca原子とFe原子の存在数(原子数)をそれぞれNCa、NFeとしたときの、比率(=NCa/(NCa+NFe))から相関指数CFCを決定した。図4に、配合2の鉄鉱石のXAFSスペクトルから求めた動径分布関数g(r)の測定例を示す。
実施例1と同様の試料を用いて、結合相を光学顕微鏡で観察した。試料を樹脂に埋め込み断面を研磨した後、光学顕微鏡で結合相の比率を測定した。
(比較例2)
実施例1と同様の試料を用いて、平衡状態図を用いて結合相の量を推定した。機器分析および化学分析から試料の組成を決定し、Ca-Fe-O三元系状態図から結合相の比率を推定した。
今回の試料の結合相では、結晶構造および組成の異なる2〜3種類のCF相が確認された。各相の結晶構造が異なるため、昇降温に伴う拡散・溶融・凝固等の現象に差異が生じ、結合相中での冷間強度に及ぼす効果(寄与率)が異なる。相関指数CFCは、各相の原子配置に基づく指標であるため、各相の効果(寄与率)を正しく見積もることが可能となり、こうした複合効果の結果であるマクロ特性(冷間強度)と良い相関を示した。このように本発明者らは、原子配置の本質的特徴を抽出する相関指数CFCを見出し、この相関指数CFCにより複合効果を科学的合理性に基づいて定量的に評価できるようになった。よって、相関指数CFCを用いることにより、高炉原料用の焼結鉱に含有される結合相の結晶構造を簡便かつ定量的に評価することができる。
また、従来法(比較例2)では、焼結鉱全体の平均組成からCa-Fe-O三元系平衡状態図から結合相の量を推定した。しかしながら、焼結プロセスにおいて、CF相が形成される条件(温度、局所の材料中の構成元素濃度、ガス雰囲気)は、極短時間で試料全体にわたり平衡状態になるわけではない。そのため、結合相の組成は、焼結鉱全体の平均組成から大きく異なっているのが普通である。よって、こうした従来法(比較例2)による結合相の量を推定する方法で得られた指標は、マクロ特性(冷間強度)との相関を示さなかったと考えられる。
Claims (4)
- 焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定する結晶構造決定工程と、
前記カルシウムフェライト化合物相の結晶構造に基づいて、前記カルシウムフェライト化合物相に含まれるFe原子からの距離が0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数を導出する原子数導出工程と、
前記Fe原子からの距離が0.067nm超0.6nm以下の範囲に存在するCa原子とFe原子の存在数をそれぞれNCa、NFeとして、以下の式(A)で定義される、前記焼結鉱中の結合相の結晶学的特徴を評価するための相関指数CFC(Calcium Ferrite Correlation)を導出する相関指数導出工程と、を有することを特徴とする焼結鉱解析方法。
CFC=NCa/(NCa+NFe) ・・・(A) - 前記相関指数導出工程は、複数の前記カルシウムフェライト化合物相それぞれについて相関指数CFCを求め、それぞれの相関指数CFCに、前記複数のカルシウムフェライト化合物相それぞれのモル分率を掛けたものを加算することにより、前記複数のカルシウムフェライト化合物相全体の前記相関指数CFCを決定することを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱解析方法。
- 前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相をX線回折法により測定する測定工程を有し、
前記結晶構造決定工程は、前記X線回折法により測定された結果に基づいて、前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱解析方法。 - 前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相に含まれるFe原子の周りの動径分布関数をXAFS法により決定する動径分布関数決定工程を有し、
前記結晶構造決定工程は、前記動径分布関数に基づいて、前記焼結鉱に含有されるカルシウムフェライト化合物相の結晶構造を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱解析方法。
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