JP2011127041A - 親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体 - Google Patents

親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体 Download PDF

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Teruaki Hasegawa
輝 明 長谷川
Natsumi Kawagoe
越 奈津美 川
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Abstract

【課題】カーボンナノチューブを可溶化し、生体内で利用可能にする機能性セルロース誘導体の提供。
【解決手段】式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体:

[式中、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z1−R1(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Z1はスペーサー基の残基を表し、R1は、親水性基の残基を表す)、基−T−Z2−R2(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Z2はスペーサー基の残基を表し、R2は、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物の残基を表す)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基を表す]。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体およびその用途、該セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる該高分子化合物の分散溶液、該セルロース誘導体と該高分子化合物とを含んでなる複合体、並びに該セルロース誘導体により被覆された該高分子化合物に関する。
従来の技術
カーボンナノチューブは、その高い導電性や内部空孔により、特に生体化学関連分野においては導電性を基にしたバイオセンサーデバイスや、内部空孔を基にしたドラッグキャリアーシステムとして注目が集まっている。しかし、このような目的のためにカーボンナノチューブを使用するためにはカーボンナノチューブへの機能性基の導入や水溶性の付与が不可欠である。また、生体内に高濃度に存在する各種タンパク質のカーボンナノチューブへの非特異吸着を抑えるため、生体適合性素材によってカーボンナノチューブ表面を被覆することの重要性も叫ばれている。
カーボンナノチューブに新規機能性を付与するための方法としては、カーボンナノチューブに対する有機化学的修飾法である「直接修飾法」が挙げられる。この方法によれば、例えば、王水によるカーボンナノチューブの酸化切断処理等によって、カーボンナノチューブのsp2炭素をカルボキシル基などに変換し、その後のアミドカップリングなどを介して様々な機能性を導入することができる。導入する機能性基の適切な選択により、カーボンナノチューブを水溶性にすること、特定のタンパク質との相互作用能を付与すること、さらには光捕集能などを付与することも可能である。しかし、この方法では、カーボンナノチューブの骨格自体を有機化学的に改変することから、カーボンナノチューブの導電性や立体構造などの大幅な変化(劣化)が避けられず、カーボンナノチューブが本来有していた特性を生かしたままでの機能性材料の開発は極めて困難であった。
そこで近年、直接修飾法に変わる新たな手法として、カーボンナノチューブに対して親和性を有する各種化合物に機能性部位を共有結合させた「被覆材」を用い、物理吸着的に基づいてカーボンナノチューブを被覆・機能化する「被覆法」が研究されるようになってきた。この被覆法では、カーボンナノチューブの表面構造を改変させていないため、得られた被覆材/カーボンナノチューブ複合体が、カーボンナノチューブが本来有していた分子特性(導電性・剛直性・高いアスペクト比など)を保持していることに大きな特徴がある。その一方で、この手法では、機能性基(例えば四級アンモニウムカチオン基)の導入を可逆的な物理吸着を用いて行っているため、希釈条件下ではカーボンナノチューブ表面からの被覆材の解離が避けられず、得られるカーボンナノチューブ複合体の安定性に大きな問題があった。また生体内に高濃度に存在する各種両親媒性分子(脂質や膜タンパク質など)によってカーボンナノチューブからの被覆分子の脱離が促進されてしまうことも解決すべき問題点であった。
これらの諸問題を解決するため、近年ではより安定な被覆材/カーボンナノチューブ複合体の形成を目的に、高分子を用いて被覆する「高分子被覆法」に大きな注目が集まりつつある。
これまで数々の高分子がカーボンナノチューブの被覆に用いられてきているが、生分解性多糖の代表例であり、植物細胞壁の主成分として自然界に最も大量に存在するバイオマスでもあるセルロースを被覆材として用いた例はほとんど存在しない。これはセルロースがそもそも水に難溶性であり、仮にカーボンナノチューブと複合化させても水溶性の多糖/カーボンナノチューブ複合体とはならないことが挙げられる。また、セルロースには各酸類やタンパク質類、さらにはβ−1,3−グルカン類などが示すような、情報保持機能・触媒機能・免疫賦活作用などの特徴的機能が存在せず、従ってセルロース/カーボンナノチューブ複合体にも特徴的機能がさほど期待できないことも挙げられる。
これまでに、膜状に成型したセルロースフィルム上にカーボンナノチューブを固定した例が報告されているが(非特許文献1)、これらの手法は単にカーボンナノチューブを固体担体上に固定しただけであり、水溶性ナノコンポジットはこれまでのところ報告されていない。
また、機能性分子をセルロースへ導入するために、セルロースの特定の水酸基に対し、完全なる位置選択性と高収率をもって、親水性や疎水性等の性質、サイズ、含有置換基等にかかわらず多様な機能性基を自在にかつ簡便に導入する一般的かつ普遍的な手法の開発が現在進められている。しかし、セルロースの6位水酸基のみを選択的にハロゲン化する方法についてはこれまでに報告されていない。
APPLIED PHYSICS LETTERS, 95, 104102 (2009)
本発明者らは、均質セルロース溶液に、トリフェニルホスフィンと四臭化炭素とを反応させることにより、セルロース分子内に存在する多数の水酸基のうち、2位および3位の水酸基は置換されず、6位の水酸基のみが特異的にブロモ基に置換されたセルロース誘導体を製造できることを見出した(実施例1)。本発明者らは、また、該セルロース誘導体を用いることにより、ヌクレオシド基とカチオン性基とが6位選択的に導入された機能性セルロース誘導体を製造できること(実施例2)、また、該機能性セルロース誘導体がカーボンナノチューブを可溶化できることを見出した(実施例3)。本発明は、この知見に基づくものである。
本発明は、親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体およびその用途、該セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる該高分子化合物の分散溶液、該セルロース誘導体と該高分子化合物とを含んでなる複合体、並びに該セルロース誘導体により被覆された該高分子化合物の提供を目的とする。
本発明によれば、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体(以下、「本発明による機能性セルロース誘導体」ということがある)が提供される:
[式中、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Zはスペーサー基の残基を表し、Rは、親水性基の残基を表す)、基−T−Z−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Zはスペーサー基の残基を表し、Rは、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物の残基を表す)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基を表し、
ここで、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく、かつ、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく(ただし、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度との合計は1以下である)、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり、
nは、2〜10000の整数を表す]。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体を含んでなる、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物の可溶化剤が提供される。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる、該高分子化合物の分散溶液が提供される。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる、複合体が提供される。
本発明によれば、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物100重量部に対して100〜100,000重量部である本発明による機能性セルロース誘導体により被覆された該高分子化合物が提供される。
セルロースは、グルコースの繰り返し単位の3位の水酸基と非還元末端側で隣接する繰り返し単位の環酸素とが水素結合することにより、グルコース残基が表裏繰り返された繊維状構造を形成する。その結果、セルロースの6位水酸基は、この繊維状構造に沿って両側に互い違いに位置する。本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースによれば、導入される機能性分子は、セルロース中に、6位選択的に、かつ繰り返し単位の数だけ導入することができる。従って、本発明による機能性セルロース誘導体は、機能性分子がセルロースの繊維状構造に沿って両側に配置されるため、例えば、カーボンナノチューブのような一次元性マテリアルと多点で効率よく相互作用することができる点で有利である。また、本発明による機能性セルロース誘導体は分子内に、カーボンナノチューブのような高分子化合物と相互作用する部分を多数有することから、相互作用部分を一つしか有さない低分子のもの(例えば、界面活性剤)と比べて、安定性が非常に高い点で有利である。さらに、本発明による機能性セルロース誘導体は、生体適合性を有するセルロースを使用していることから、生体内で利用可能なカーボンナノチューブ等を提供できる点で有利である。
発明の具体的な説明
本願明細書において、「C1−4アルキル基」は、基が直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、i−ブチル基、s‐ブチル基、t‐ブチル基等が挙げられる。
本願明細書において、「C1−4アルコキシ基」は、基が直鎖または分岐鎖のアルコキシ基を意味する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、i−プロポキシ基、n‐ブトキシ基、i−ブトキシ基、s‐ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
本願明細書において、「C1−30アシル基」は、基が直鎖または分岐鎖のアシル基を意味する。好ましくは、C1−4アシル基である。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等が挙げられる。
本願明細書において、「ポリエチレングリコール基」は、−CHCH(OCHCH)n―OHで表される基(ここで、nは1〜100の整数を表す)を意味する。nは、好ましくは、1〜50である。
本願明細書において、「ポリプロピレングリコール基」は、−(OCHCHCH)n―で表される基(ここで、nは1〜100の整数を表す)を意味する。nは、好ましくは、1〜50である。
本願明細書において、「4級アミン基」は、−N(−R)(−R)(−R)で表される基(ここで、R、R、Rは、同一または異なっていてもよく、C1−6アルキル基から選択される)を意味する。例えば、トリエチルアンモニウム基である。
本発明によるセルロース誘導体は、式(I)で表される繰り返し単位からなり、例えば、式(II)で表すことができる:
本発明によるセルロース誘導体としては、例えば、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロース、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロース、本発明による機能性セルロース誘導体が挙げられる。
[6−ハロ−6−デオキシセルロース]
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、セルロースの2位と3位の水酸基は置換されず、6位の水酸基の一部または全部が選択的にハロゲン化されたセルロース誘導体である。本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、6位水酸基のみが選択的にハロゲン化されていることから、S2反応を利用して該ハロゲン基をアジド化しても主鎖セルロース構造が維持される。よって、本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースを用いることにより、機能性セルロース誘導体の中間体として有用な6−アジド−6−デオキシセルロースを合成することができる。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ハロゲン基または水酸基であり;ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
式(I)において、X基は、ハロゲン基または水酸基であり、好ましくは、ハロゲン基である。
ハロゲン基としては、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基等が挙げられるが、好ましくは、ブロモ基である。
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、該ハロゲン基をアジド化し、続いて本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.5〜1であり、より好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
本願明細書において、「置換度」とは、セルロース誘導体に存在するすべての6位水酸基のうち、目的の置換基で置換された水酸基の割合を意味し、例えば、核磁気共鳴法や、酸加水分解後のHPLC分析を行うことで測定することができる。
式(I)において、X基におけるハロゲン基の割合は、該ハロゲン基をアジド化し、続いて本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン基の数を、水酸基の数より多くすることができる。
式(I)において、nは、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの数平均分子量は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されず、6位に存在する置換基や該置換基の置換度によって異なるが、例えば、360〜2,900,000であり、好ましくは、360〜1,500,000であり、より好ましくは、360〜290,000であり、さらに好ましくは、910〜150,000であり、さらにより好ましくは、1,800〜120,000であり、最も好ましくは、9,100〜87,000である。
本願明細書において、「数平均分子量」とは、高分子(セルロース)の平均的な分子量としてその分子数に基づいて算出された分子量を意味し、例えば、ゲル濾過法や、動的光散乱法等を行うことで測定することができる。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの重合度は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
本願明細書において、「重合度」とは、重合体(セルロース)を構成する繰り返し単位の数を意味し、数平均分子量と繰り返し単位あたりの分子量に基づいて算出することができる。例えば、ゲル濾過法や、動的光散乱法等を行うことで測定することができる。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ハロゲン基または水酸基であり;ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのより好ましい態様は、6−ブロモ−6−デオキシセルロースであって、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ブロモ基または水酸基であり;ブロモ基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、(i)均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンと四ハロゲン化炭素とを反応させる工程、を含んでなる方法により製造することができる。
工程(i)の概要は、スキーム1に示す。
スキーム1
ここで「均質セルロース溶液」は、セルロースを溶媒に均一に溶解させることにより得ることができる。
本発明に用いられるセルロースのグルコース重合度は、セルロースが溶媒に均一に溶解されれば特に限定されず、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
目的の重合度を有するセルロースは、市販されたものを入手することもできるし、公知の方法に従ってセルロースを断片化することにより得ることもできる(S. Elazzouzi-Hafraoui et al., Biomacromolecules 2008, 9, 57-65、A. Orozco et al., Process Safety and Environmental Protection 2007, 85, 446-449)。
セルロースを溶解させるのに使用可能な溶媒としては、例えば、−ジメチルアセトアミド、−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、−メチルピロリドン等の極性溶媒が挙げられるが、好ましくは、−ジメチルアセトアミドである。
セルロースを溶媒に均一に溶解させるために溶解補助剤を用いることもできる。
溶解補助剤としては、塩化リチウム、フッ化リチウム等のハロゲン化リチウムが挙げられるが、好ましくは、塩化リチウムである。
溶媒の量は、セルロースを均一に溶解することができれば特に限定されないが、例えば、セルロース1gに対して50〜500ml、好ましくは60〜100mlで添加することができる。
溶解補助剤の量は、セルロースを均一に溶解することができれば特に限定されないが、例えば、セルロース1gに対して2〜10g、好ましくは3〜5gで添加することができる。
セルロースを溶媒に溶解させる工程は、例えば、セルロースに溶媒と、場合によっては溶媒補助剤とを混合し、これを加熱攪拌に供することにより実施することができる。
溶解時間は、セルロースを均一に溶解することができればよく、例えば、0.5〜170時間であるが、好ましくは、3〜50時間である。
溶解温度は、セルロースを均一に溶解することができればよく、例えば、40〜120℃であるが、好ましくは、60〜100℃である。
セルロースが溶媒に均一に溶解されたか否かは、目視による溶液の濁度判定により判定することができる。例えば、溶液が均質に透明である場合に、セルロースが溶媒に均一に溶解されたと判定することができる。
工程(i)において、均質セルロース溶液と、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程は、例えば、均質セルロース溶液と、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを接触させ、これを磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、磁気攪拌である。
トリフェニルホスフィンは、1以上のC1−4アルキル基(好ましくは、メチル基)またはC1−4アルコキシ基(好ましくは、メトキシ基)で置換されてもよいが、好ましくは、非置換である。
1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンの量は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、均質セルロース溶液中のセルロース1gに対して、0.1〜20g、好ましくは、3〜10gで添加することができる。
反応時間は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.08〜24時間であるが、好ましくは、0.5〜10時間、より好ましくは、1〜6時間、さらに好ましくは3〜5時間である。
反応温度は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0〜150℃であるが、好ましくは、0〜100℃、より好ましくは、0〜50℃、さらに好ましくは、15〜40℃である。
工程(i)において、均質セルロース溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程は、例えば、均質セルロース溶液と四臭化炭素とを接触させ、これを磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、磁気攪拌である。
四ハロゲン化炭素としては、四臭化炭素、四塩素化炭素、四フッ化炭素、四ヨード化炭素等が挙げられるが、好ましくは、四臭化炭素である。
四ハロゲン化炭素の量は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、均質セルロース溶液中のセルロース1gに対して、0.1〜20g、好ましくは3〜6gで添加することができる。
反応時間は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.08〜170時間であるが、好ましくは、1〜50時間、より好ましくは23〜25時間である。
反応温度は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0〜150℃であるが、好ましくは、5〜100℃、より好ましくは55〜65℃である。
工程(i)において、均質セルロース溶液にC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンを反応させる工程と、均質セルロース溶液に四ハロゲン化炭素を反応させる工程とは、それぞれ別々行ってもよいし、同時に行ってもよいが、均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンを反応させた後、四ハロゲン化炭素を反応させることが好ましい。
本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースの製造方法の好ましい態様によれば、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;および
(i−2)(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素を反応させる工程、
を含んでなる製造方法である。
本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースの製造方法のより好ましい態様によれば、
(i−1’)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応時間3〜5時間、反応温度15〜40℃で反応させる工程;および
(i−2’)(i−1’)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応時間23〜25時間、反応温度55〜65℃で反応させる工程、
を含んでなる製造方法である。
[6−アジド−6−デオキシセルロース]
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、セルロースの6位水酸基の一部または全部が選択的にアジド化されたセルロース誘導体である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、末端アルキン基を有する機能性分子と反応し、セルロースに機能性分子を導入することができる。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、6位水酸基が選択的にアジド化されていることから、機能性分子が導入される位置が明確であるため、構造が明確なセルロース誘導体を得ることができる。また、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性有機溶媒に易溶である。
よって、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースを用いることにより、反応条件(溶媒など)や共存官能基に影響されない普遍的な反応を用いて、いかなる機能性基でもセルロースの6位に導入可能な普遍的方法を確立することができる。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であり;アジド基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基またはハロゲン基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
式(I)において、X基は、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であるが、好ましくは、アジド基または水酸基であり、より好ましくは、アジド基である。
式(I)において、アジド基の繰り返し単位当たりの置換度は、アジド基が末端アルキルとカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.01〜1であり、より好ましくは、0.5〜1であり、さらにより好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、アジド基と末端アルキルとがカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、0〜1であり、好ましくは、0〜0.5であり、より好ましくは、0〜0.1である。
式(I)において、X基における、アジド基、水酸基、およびハロゲン基の割合は、アジド基と末端アルキルとがカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、アジド基の数を、水酸基の数とハロゲン基の数との和より多くすることができる。水酸基およびハロゲン基の割合は、使用目的に応じて適宜決定することができるが、例えば、水溶性を高めることを目的として、水酸基の数をハロゲン基の数より多くすることができる。
式(I)において、nは、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの数平均分子量は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されず、6位の置換基や置換基の置換度によって異なるが、例えば、370〜1,900,000であり、好ましくは、370〜940,000であり、より好ましくは、370〜190,000であり、さらに好ましくは、940〜94,000であり、さらにより好ましくは、1,900〜75,000であり、最も好ましくは、9,400〜56,000である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの重合度は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であり;アジド基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基またはハロゲン基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、(ii)工程(i)で得られたセルロース誘導体(すなわち、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロース)のハロゲン基をアジド化する工程、により得ることができる。
工程(ii)の概要は、スキーム2に示す。
スキーム2
ここで、「アジド化する工程」は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースを溶媒に溶解し、得られた溶解液とアジ化ナトリウムを反応させることにより実施することができる。
アジ化ナトリウムの量は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されないが、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、6−ハロゲン6−デオキシセルロース1gに対して、0.5〜5g、好ましくは2〜3gで添加することができる。
反応時間は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されず、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.5〜170時間であるが、好ましくは、2〜100時間、より好ましくは40〜60時間である。
反応温度は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されず、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、30〜140℃であるが、好ましくは、50〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの製造方法の好ましい態様は、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;
(i−2)工程(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程;および
(ii)工程(i−2)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程
を含んでなる方法である。
[機能性セルロース誘導体]
本発明による機能性セルロース誘導体は、セルロースの6位の一部または全部に選択的に機能性分子が導入されたセルロース誘導体である。
本発明による機能性セルロース誘導体は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z−R、基−T−Z−R、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1より小さく、かつ、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1より小さく(ただし、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度との合計が1以下である)、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
式(I)において、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z−R、基−T−Z−R、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり、好ましくは、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z−R、基−T−Z−Rまたは水酸基であり、より好ましくは、基−T−Z−Rまたは基−T−Z−Rである。
式(I)において、基−T−Z−Rは、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(I)において、基−T−Z−Rは、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(I)において、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、本発明による機能性セルロース誘導体が目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)と親和性を有するように相互作用できればよく、例えば、0より大きく1より小さく、好ましくは、0.3〜0.8であり、より好ましくは、0.4〜0.7であり、さらにより好ましくは、0.5〜0.7であり、最も好ましくは、0.6〜0.7である。
式(I)において、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、本発明による機能性セルロース誘導体が目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)と親和性を有するように相互作用できればよく、例えば、0より大きく1より小さく、好ましくは、0.1〜0.7であり、より好ましくは、0.3〜0.6であり、さらにより好ましくは、0.3〜0.5であり、最も好ましくは、0.3〜0.4である。
式(I)において、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度との合計は、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.1〜1であり、より好ましくは、0.5〜1であり、さらにより好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
式(I)において、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と比は、例えば、1:0.3〜2.5であり、好ましくは、1:0.3〜2であり、より好ましくは、1:0.4〜1.5であり、さらにより好ましくは、1:0.4〜1であり、特に好ましくは、1:0.4〜0.8であり、最も好ましくは、1:0.4〜0.6である。
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、本発明による機能性セルロース誘導体が目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)と親和性を有するように相互作用できればよく、例えば、0〜0.5であり、好ましくは、0〜0.2であり、より好ましくは、0〜0.1である。
式(I)において、アジド基の繰り返し単位当たりの置換度は、本発明による機能性セルロース誘導体が目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)と親和性を有するように相互作用できればよく、例えば、0〜0.5であり、好ましくは、0〜0.2であり、より好ましくは、0〜0.1である。
式(I)において、X基における、基−T−Z−R、基−T−Z−R、水酸基、ハロゲン基、およびアジド基の割合は、本発明による機能性セルロース誘導体が目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)と親和性を有するように相互作用できればよく、例えば、基−T−Z−Rの数と基−T−Z−Rの数との和は、水酸基の数とハロゲン基の数とアジド基の数との和より多くすることができる。水酸基、ハロゲン基、およびアジド基の割合は、使用目的に応じて適宜決定することができるが、例えば、水溶性を高めることを目的として、水酸基の数をハロゲン基の数とアジド基の数との和より多くすることができる。
式(I)において、nは、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
本発明による機能性セルロース誘導体の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば、500〜300,000であり、好ましくは、1,000〜200,000であり、より好ましくは、2,000〜150,000であり、さらに好ましくは、3,000〜120,000であり、さらにより好ましくは、5,000〜100,000であり、最も好ましくは、10,000〜50,000である。
本発明による機能性セルロース誘導体の重合度は、特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
式(I)において、R基は、機能性セルロース誘導体に水溶性を付与するためにセルロースに導入される機能性分子の残基である。
式(I)において、R基は、アジド基とアルキン基とのカップリング反応によりセルロースに導入することができる分子であり、かつ、親水性基である。
親水性基としては、イオン性基(例えば、カチオン性基、アニオン性基)、ノニオン性基、および両性イオン性基が挙げられるが、好ましくは、イオン性基であり、より好ましくは、カチオン性基である。
カチオン性基としては、例えば、1〜3級アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)、4級アンモニウム塩基(例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基等)等が挙げられるが、好ましくは、4級アンモニウム塩基である。
アニオン性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、これらのアルカリ金属塩基またはアンモニウム塩基等が挙げられるが、好ましくは、硫酸基である。
ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基等)、多価アルコール基、アミド基等が挙げられるが、好ましくは、ポリオキシアルキレン基である。
式(I)において、R基は、カーボンナノチューブと相互作用し、機能性セルロース誘導体に目的の高分子化合物(例えば、カーボンナノチューブ)との親和性を付与するためにセルロースに導入される機能性分子の残基である。
基は、アジド基とアルキン基とのカップリング反応によりセルロースに導入することができる分子であり、かつ、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物から選択することができる。
本発明による機能性セルロース誘導体において、セルロースの6位選択的に導入された、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物は、π平面性構造を有し、セルロース骨格に沿って配置される。一方、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物は、表面に多数のπ平面性構造(カーボンナノチューブであれば、炭素6員環)を有する。このように、本発明による機能性セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とは、それぞれ多数のπ平面性構造を、同じような線形状で有するため、多点でπ−π間相互作用することができ、よって高い親和性を有することができる。
本願明細書において、「π電子系環」とは、非局在化したπ電子系を有する共役二重結合系により形成された環を意味する。また、「π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物」としては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。π電子系環の集合体は、好ましくは、π電子系環が線状に配置されたものであり、例えば、カーボンナノチューブである。
本願明細書において、「π平面性構造」とは、π電子系環において、π電子の数が4j+2個(ここで、jが正の整数)である場合に分子がとる平面構造を意味する。
本願明細書において、「π−π間相互作用」とは、π平面性構造をとる化合物の間、すなわち、π平面間に働く分散力を意味する。π平面同士が互いに平行に位置する場合に、π−π間相互作用は強く働くことができる。
π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物としては、芳香族性の環を含んでなる化合物が挙げられる。
ここで、「芳香族性の環」は、環内に隣接したπ電子の数が4j+2個(ここで、jが正の整数)である環である。jは1〜6の整数、より好ましくは、jは1〜5の整数である。
具体的には、6π電子系環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、2H−ピラン環、4H−チオピラン環、ピリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環等が挙げられる。10π電子系環としては、例えば、ナフタレン環、アズレン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、1−ベンゾチオフェン環、2−ベンゾチオフェン環、インドール環、イソインドール環、2H−クロメン環、1H−2−ベンゾピラン環、キノリン環、イソキノリン環、1,8−ナフチリジン環、ベンゾイミダゾール環、1H−インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、プリン環、フタラジン環が挙げられる。14π電子系環としては、例えば、ピレン環、フェナントレン環、アントラセン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、1,10−フェナントロリン環、フェナジン環、フェナルサジン環、テトラチアフルバレン環を挙げられる。18π電子系環としては、例えば、ポルフィリン環、フタロシアニン環、トリフェニレン環、クリセン環、ナフタセン環、プレイアデン環を挙げられる。22π電子系環としては、例えば、ピセン環、ペンタフェン環、ペンタセン環を挙げられる。26π電子系環としては、例えば、ヘキサフェン環、ヘキサセン環、ルビセン環等が挙げられる。
π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物としては、芳香族化合物またはその誘導体が挙げられる。芳香族化合物は、例えば、5〜7員の単環式芳香族炭素環もしくは複素環、または9〜40員の多環式炭素環もしくは複素環を含んでなる化合物が挙げられる。芳香族化合物の誘導体としては、例えば、核酸塩基系化合物、芳香族アミノ酸、ポルフィリン様の大環状構造を有する化合物等が挙げられる。
5〜7員の単環式芳香族炭素環は、炭素数5〜7員の単環式芳香族炭素環を意味する。例えばベンゼン、シクロペンタジエニルアニオン等が挙げられる。
5〜7員の単環式芳香族複素環は、1〜3個の異種原子を含有していてもよい、5〜7員の単環式芳香族複素環を意味する。異種原子は、同一または異なっていてもよく、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択される。例えば、チアゾール、チオフェン、フラン、2H−ピラン、4H−チオピラン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、オキサゾール等が挙げられる。
9〜40員の多環式芳香族炭素環としては、例えば、ナフタレン、アズレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、プレイアデン、ピセン、ペンタフェン、ペンタセン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン等が挙げられる。
9〜40員の多環式芳香族複素環は、1〜5個の異種原子を含有していてもよい、9〜40員の多環式芳香族複素環を意味する。異種原子は、同一または異なっていてもよく、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択される。例えば、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、2−クロメン、キサンテン、イソインドール、インドール、1H−インダゾール、ベンゾオキサゾール、プリン、ベンゾピラン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、ペリメジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン等が挙げられる。
芳香族化合物は、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。
芳香族アミノ酸としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンが挙げられる。芳香族アミノ酸は、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。
核酸塩基系化合物としては、例えば、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド等が挙げられる。
核酸塩基としては、例えば、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシンが挙げられる。
ヌクレオシドとしては、例えば、ピリミジンヌクレオシド、プリンヌクレオシド等が挙げられるが、好ましくは、ピリミジンヌクレオシドである。ピリミジンヌクレオシドとしては、例えば、リボチミジン、ウリジン、シチジン等のリボヌクレオシド、チミジン、デオキシウリジン、デオキシジチジン等のデオキシリボヌクレオシドが挙げられる。プリンヌクレオシドとしては、例えば、アデノシン、グアノシン、イノシン、キサントシン等のリボヌクレオシド、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシイノシン、デオキシキサントシン等のデオキシリボヌクレオシドが挙げられる。
ヌクレオチドとしては、例えば、ピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチド等が挙げられるが、好ましくは、ピリミジンヌクレオチドである。ピリミジンヌクレオチドとしては、例えば、ウリジン1〜3リン酸、シチジン1〜3リン酸等のリボヌクレオチド、チミジン1〜3リン酸、デオキシウリジン1〜3リン酸、デオキシジチジン1〜3リン酸等のデオキシリボヌクレオシドが挙げられる。プリンヌクレオシドとしては、例えば、アデノシン1〜3リン酸、グアノシン1〜3リン酸等のリボヌクレオチド、デオキシアデノシン1〜3リン酸、デオキシグアノシン1〜3リン酸等のデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。
核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドは、それぞれ、水酸基または核酸塩基部位が化学的修飾(例えば、アセチル化、ベンゾイル化、ベンジル化等)されたものであってもよい。
ポルフィリン様大環状化合物は、π平面性の構造を有し、かつ、ポルフィリン様の大環状構造を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいポルフィリン、フタロシアニン等が挙げられる。例えば、ポルフィリンをセルロースに導入すると、セルロースを鋳型にしてポルフィリンが層状に積層した構造が得ることがでる。
本発明による機能性セルロース誘導体において、機能性分子は、スペーサー基を介してセルロースに導入することができる。
基のスペーサー基(Z)は、R基が有するπ平面と高分子化合物(カーボンナノチューブであれば炭素6員環)が有するπ平面とのπ−π相互作用を妨げないようにR基をセルロースに導入することができる化学構造であればよく、例えば、基−(CH−Y−で表すことができる。
式(I)において、kは、例えば、0〜12、好ましくは、0〜10、より好ましくは、0〜8、さらにより好ましくは、0〜6の整数であり、最も好ましくは0である。
式(I)において、Yは、例えば、単結合、アミド基、ホスホジエステル基、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択され、好ましくは単結合である。
本発明において、スペーサー基の具体的な例としては、以下の構造が挙げられる。
(ここで、kは0〜12である。)
基のスペーサー基(Z)は、R基が有するπ平面と高分子化合物(カーボンナノチューブであれば炭素6員環)が有するπ平面とのπ−π相互作用を妨げないようにR基をセルロースに導入することができる化学構造であればよく、例えば、基−(CH−Y−で表すことができる。
式(I)において、mは、例えば、0〜12、好ましくは、0〜10、より好ましくは、0〜8、さらにより好ましくは、0〜6の整数であり、最も好ましくは、0である。
式(I)において、Yは、好ましくは、単結合、アミド基、ホスホジエステル基、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択され、好ましくは、単結合である。
本発明において、スペーサー基の具体的な例としては、以下の構造が挙げられる。
(ここで、mは0〜12である。)
式(I)において、Tが表すトリアゾールは、1,2,3−トリアゾールであり、例えば、式(III)で表すことができる。
本発明による機能性セルロース誘導体の好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Y−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Yは、単結合を表し、Rは、カチオン性基、アニオン性基、ノニオン性基、および両性イオン性基からなる群から選択される親水性基の残基を表し、kは0を表す)、基−T−(CH−Y−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Yは、単結合を表し、Rは、芳香属性の環を含んでなる化合物の残基を表し、mは0を表す)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基を表し、
ここで、基−T−(CH−Y−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく、かつ、基−T−(CH−Y−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく(ただし、基−T−(CH−Y−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−(CH−Y−Rの繰り返し単位当たりの置換度との合計は1以下である)、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり、nは、5〜1000の整数を表す、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
本発明による機能性セルロース誘導体は、(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体(すなわち、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロース)に、HC≡C−Q[ここで、Qは、基−Z―Rを表す(ここで、ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)]とHC≡C−W[ここで、Wは、基−Z―Rを表す(ここで、ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程を含んでなる方法により製造することができる。
工程(iii)の概要は、スキーム3およびスキーム4に示す。
スキーム3
Q:基−Z―R
(ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)
スキーム4
W:基−Z―R
(ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)
ここで「反応させる」とは、カップリング反応を行うことを意味する。
本願明細書において、「カップリング反応」とは、末端アルキンを有する分子とアジド基を有する分子との、Cu存在下での環化付加反応を意味する(L.V.Lee, M.L.Mitchel, S-J.Huang, V.V.Fokin, K.B.Sharpless, and C.-H.Wong, J.Am.Chem.Soc., 125, 9588(2003)、C.W.Tornoe, C.Christensen, and M.Meldal, J.Org, Chem., 67, 3057(2002))。
この反応は、(1)いかなる共存官能基の影響も受けずに非常に化学選択的に進行する。また、(2)副反応なく定量的に進行する。さらに、(3)DMSO等の極性有機溶媒中でも進行する。
従って、この反応を利用することにより、極めて容易にかつ効率的に、セルロースの6位に選択的に機能性分子を導入することができる。また、様々な構造を有する分子(例えば、親水性/疎水性・イオン性/非イオン性等)に対して良溶媒である極性有機溶媒を使用することができることから、セルロースに導入する機能性分子に制限がないことが予想できる。さらに、導入する機能性分子のサイズにたいする制限もないことが容易に推測できる。
本発明において実施される「カップリング反応」は、公知の方法に従って行うことができる(M.C.Bryan, F.Fazio, H.-K.Lee, C.-Y.Huang, A.Chang, M.D.Best, D.A.Calarese, O.Blixt, J.C.Paulson, D.Burton, L.A.Wilson, and C.-H.Wong, J.Am.Chem.Soc., 126, 8640(2004)、B.Helms, J.L.Mynar, C.J.Hawker, and J.M.Frechet, J.Am.Chem.Soc., 126, 15020(2004)、J.A.Opsteen and J.C.M.van Hest, Chem. Commun., 35, 57(2005))。
当業者であれば、好適な反応条件を適宜決定することができる。
工程(iii)において、6−アジド−6−デオキシセルロースにHC≡C−Qを反応させる工程と、6−アジド−6−デオキシセルロースにHC≡C−Wを反応させる工程とは、同時に行ってもよいし、それぞれ別々行ってもよいが、同時に行うことが好ましい。
HC≡C−QまたはHC≡C−Wで表される化合物は、セルロースに導入する機能性分子と、スペーサー基がそれぞれ決定されれば、公知の合成方法や三重結合の導入方法に従って、容易に合成することができる。
本発明による機能性セルロース誘導体の製造方法の好ましい態様は、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;
(i−2)工程(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程;
(ii)工程(i−2)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程;および
(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体のアジド基に、HC≡C−Q[ここで、Qは、基−Z―Rを表す(ここで、ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)]とHC≡C−W[ここで、Wは、基−Z―Rを表す(ここで、ZおよびRは上記で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程
を含んでなる方法である。
本発明による機能性セルロース誘導体と高分子化合物とは、π平面を介して多点で相互作用するため高い親和性を有する。従って、本発明による機能性セルロース誘導体は、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物の可溶化剤として用いることができる。
本願明細書において、「π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物の可溶化剤」とは、該高分子化合物を溶媒に分散させることを可能にする物質を意味する。
π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物を分散させる溶媒としては、例えば、極性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水等)が挙げられるが、好ましくは、水である。これら溶媒は、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明による機能性セルロース誘導体は、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物の被覆材として用いることができる。
[機能性セルロース誘導体とπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物との相互作用]
本願明細書において、「π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物」としては、例えば、カーボンナノチューブが挙げられる。
本願明細書において、「カーボンナノチューブ」とは、炭素6員環からなるグラファイトシートが円筒状になった物質を意味する。
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等が挙げられるが、好ましくは、単層カーボンナノチューブである。
カーボンナノチューブの平均直径は、0.4〜200nm、好ましくは、0.6〜100nm、より好ましくは、1〜10nmである。カーボンナノチューブの平均直径は、公知の方法を用いて測定することができ、例えば、原子間力顕微鏡等により測定することができる。
カーボンナノチューブの平均粒径は、0.05〜10μm、好ましくは、0.1〜5μm、より好ましくは、0.2〜1μmである。カーボンナノチューブの平均粒径は、公知の方法を用いて測定することができ、例えば、原子間力顕微鏡等により測定することができる。
カーボンナノチューブの長さは、50〜100,000nm、好ましくは、100〜10,000nm、より好ましくは、200〜1,000nmである。カーボンナノチューブの長さは、公知の方法を用いて測定することができ、例えば、原子間力顕微鏡等により測定することができる。
カーボンナノチューブのアスペクト比は、10〜200,000、好ましくは、100〜10,000、より好ましくは、500〜5,000である。カーボンナノチューブのアスペクト比は、公知の方法を用いて測定することができ、例えば、原子間力顕微鏡等により測定することができる。
カーボンナノチューブは、公知の方法を用いて製造することができる。公知の方法としては、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法等が挙げられる。カーボンナノチューブは市販のものを使用することもできる。
カーボンナノチューブは、物理的処理(例えば、ボールミル、ホモジナイザー等)や化学的処理(例えば、強酸による処理、玉水による処理等)を施したものを使用することができる。
本発明による機能性セルロース誘導体が被覆された高分子化合物は、(iv)工程(iii)で得られた機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを反応させる工程を含んでなる方法により製造することができる。
また、本発明による機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを含んでなる高分子化合物分散溶液は、(iv)工程(iii)で得られた機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを反応させる工程を含んでなる方法により製造することができる。
ここで「反応させる」とは、機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを混合させることを意味する。混合させる方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、高速振動粉砕法、超音波法、メカニカルスターラー法、マグネティックスターラー法等が挙げられるが、好ましくは、高速振動粉砕法である。
高分子化合物は、あらかじめ溶媒(例えば、水)に懸濁させたものを反応に供することができる。
反応させる機能性セルロース誘導体と高分子化合物とは、例えば高分子化合物100重量部に対して機能性セルロース誘導体1〜1,000,000重量部とすることができることができるが、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して機能性セルロース誘導体100〜100,000重量部、より好ましくは、高分子化合物100重量部に対して機能性セルロース誘導体200〜5,000重量部、さらにより好ましくは、高分子化合物100重量部に対して機能性セルロース誘導体200〜500重量部である。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを含んでなる高分子化合物の分散溶液が提供される。高分子化合物が分散される溶媒としては、例えば、極性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水)等が挙げられるが、好ましくは水である。これら溶媒は、2種以上を組み合わせてもよいが、好ましくは含水溶媒である。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体と高分子化合物とを含んでなる複合体が提供される。本発明による複合体は、液体であってもよいし、固体であってもよいが、好ましくは、液体である。本発明による複合体は、本発明による高分子化合物分散溶液を凍結乾燥することによって得ることもできる。
本発明によれば、本発明による機能性セルロース誘導体により被覆された高分子化合物が提供される。
以下、実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
実施例1:6−アジド−6−デオキシセルロースの製造
(1)6−ブロモ−6−デオキシセルロースの製造
セルロース(FMC BioPolymer社製、商品名Avicel、重合度280程度)2.05gを、窒素雰囲気下、塩化リチウム存在下で、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)150ml中で80℃にて加熱攪拌し、均一溶解させた。溶液の温度が室温程度になるまで放冷したのち、反応溶液に、DMAc40mlに溶解させたトリフェニルホスフィン12.2gを加え、室温にて4時間磁気攪拌した。さらにDMAc10mlに溶解させた四臭化炭素10.5gを加えた後、60℃にて24時間磁気攪拌した。反応溶液に水を加えて再沈殿を行い、遠心分離によって沈殿物を回収したのち、沈殿をメタノールで洗浄することでブロモ化セルロース(6−ブロモ−6−デオキシセルロース:Cel−Br)を得た。
13C NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d,60℃):101.82,79.84,73.60,73.38,72.78,44.24
13C NMRスペクトル測定の結果、多糖の6位水酸基(−−OH)に該当するピークが消失し、ブロモメチル基(−−Br)由来のピークが新たに観測されたことから、セルロースの6位水酸基が全てブロモ化されたことが示された。また、6位炭素以外のセルロース炭素ピークに、ブロモ化による明確な化学シフト値の変化は認められなかった。
以上の結果から、水酸基のブロモ化が6位特異的に、置換度が1で進行したことが示された。
(2)6−アジド−6−デオキシセルロースの製造
実施例1(1)で得られた6−ブロモ−6−デオキシセルロース2gをDMAc150mlに溶解させ、アジ化ナトリウム5.05gとともに85℃にて磁気攪拌することでブロモ基からアジド基への変換を行った。DMAcを溶媒として反応を進行させると、反応の進行に伴い生成物の沈殿が生じた。これは一部の6位がアジド化されたセルロース誘導体がDMAcに難溶であるためと考えられる。そこで、反応溶液にジメチルスルホキシド(DMSO)を適時添加することにより、反応溶液を均一に保ったままアジド化を完遂させた。42時間の加熱攪拌が終了した後、反応溶液を大量の水に加えて再沈殿を行い、その後遠心分離を行った。得られた沈殿をメタノールで洗浄することによりアジド化セルロース(6−アジド−6−デオキシセルロース:Cel−N)を得た。
IRスペクトル(KBr、cm−1):2101
13C NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d,60℃):101.76,79.00,73.62,72.69,72.63,50.66
赤外吸収(IR)スペクトル測定の結果、2100cm−1付近にアジド基由来の吸収が確認でき、セルロースへのアジド基の導入が確認された(図1)。
また、13C NMRスペクトル測定の結果、多糖の6位水酸基(−−OH)やブロモメチル基(−−Br)由来のピークは全く観測されない一方で、新たにアジドメチル基(−−N)のピークの出現が観測されたことから、セルロースの6位水酸基が全てアジド化されたことが示された(図2)。また、6位炭素以外のセルロース炭素ピークに化学シフト値の変化は認められなかった(図2)。
以上の結果から、ブロモ基のアジド化が6位特異的に、置換度が1で進行したことが示された。また、得られたアジド化セルロースの13C NMRは非常に単純で、主要なピーク(図2の黒丸)は6本しか観測されなかった。このことは、6位水酸基のみが位置特異的にアジド化されたセルロース誘導体が得られたことを示している。
実施例2:ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロース誘導体の製造
(1)末端アルキンを有するヌクレオチド誘導体の合成
セルロースにヌクレオシド基を導入するための末端アルキンを有するデオキシチミジン誘導体の合成を行った。
デオキシチミジン(和光純薬工業社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)およびプロパルギルブロマイドを加えて70℃で1.5時間処理することにより、5‘−プロパルギル−デオキシチミジンを合成した。
(2)末端アルキンを有する四級アンモニウムカチオン誘導体の合成
セルロースにカチオン性基を導入するための末端アルキンを有する四級アンモニウムカチオン誘導体の合成を行った。
トリメチルアミン塩酸塩をDMF中、60℃で処理して溶解させたのち、トリエチルアミンおよびプロパルギルブロマイドを加えて室温にて一晩磁気攪拌することによりN,N,N−トリメチル−N−プロパルギルアンモニウムブロマイドを合成した。
(3)ヌクレオシド基およびカチオン性基の6−アジド−6−デオキシセルロースへの導入
実施例1で得られた6−アジド−6−デオキシセルロース(20mg)をサンプル瓶に入れ、そこにDMSO(500ml)を加えた後、60℃にて一晩インキュベーションして6−アジド−6−デオキシセルロースを完全溶解させた。この反応溶液に実施例2の(1)で得られた5‘−プロパルギル−デオキシチミジン(135mg)、実施例2の(2)で得られたN,N,N−トリメチル−N−プロパルギルアンモニウムブロマイド(15mg)、CuBr(11mg)、アスコルビン酸(17mg)およびプロピルアミン(15ml)を加え、室温にて一晩静置した。
反応終了後、反応溶液に水を加えて希釈し、その後透析(MWCO8000、水)を行うことにより精製を行った。得られた水溶液を凍結乾燥することにより、白色〜淡黄色粉末としてヌクレオシド基/イオン性基導入セルロースを得た(収率48%)。
赤外吸収(IR)スペクトル(ATR、cm−1):3419,1636,1474
IRスペクトルを測定の結果、2100cm−1付近のアジド基由来の吸収が消失しており、セルロースへのデオキシチミジン基および四級アンモニウムカチオン基の導入が確認できた(図3)。
また、デオキシチミジン基のみが導入されたセルロース誘導体(以下、Cel−dTということがある)の13C NMRスペクトル測定の結果、アジドメチル基(−−N)由来のピークが全く観測されない一方で、1,4−トリアゾール基に由来するピークの出現が観測された(図4)。また、セルロース主鎖のピークの他に、デオキシチミジン部位のピークも明確に観測された(図4)。さらに、観測された全てのピークが容易に帰属可能であり、帰属不可能なピークは全く確認されなかった。
以上の結果から、セルロースの全ての6位に1,4−トリアゾールを介してデオキシチミジン基あるいは四級アンモニウムカチオン基が導入されたセルロース誘導体(以下、Cel−dT/Nという)が合成されたことが確認できた。
(4)ヌクレオシド基とカチオン性基との導入比の評価
デオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比について、実施例2の(3)の反応において使用される末端アルキン修飾デオキシチミジン誘導体および末端アルキン修飾四級アンモニウムカチオン誘導体の仕込み比を様々に変化させて確認した。セルロース誘導体中のデオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比は、それぞれのセルロース誘導体のH NMR(DMSO−d、60℃)における3.1ppmおよび1.8ppm付近のピーク席分比より算出した(図5)。
その結果、仕込み比に伴い、デオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比が6:94〜67:33であるセルロース誘導体が得られたことが確認された(表1)。
表1.セルロース修飾反応における末端アルキン修飾デオキシチミジン誘導体(dT−yn)および末端アルキン修飾アンモニウムカチオン誘導体(N −yn)の仕込み比と得られたセルロース誘導体中の導入比について
仕込み比と導入比との関係は、図6に示す通りである。
また、末端アルキン修飾デオキシチミジン誘導体、末端アルキン修飾四級アンモニウムカチオン誘導体のいずれかのみを反応に用いることにより、デオキシチミジン基のみが導入されたセルロース誘導体(Cel−dT)、あるいは四級アンモニウムカチオン基のみが導入されたセルロース誘導体(以下、Cel−Nということがある)も合成であることが確認された。
(5)各種セルロース誘導体の水溶性の評価
実施例2の(4)で得られたセルロース誘導体が水溶性を有していることを確認するため、飽和水溶液調製とその後のフェノール硫酸法による濃度定量を組み合わせた手法により、最大溶解度測定を行った(生物化学実験法1(福井作臟著):還元糖の定量法)。具体的には、エッペンチューブにイオン交換水(10μl)を加え、過剰量になるようにサンプルを加え60℃の恒温槽にて3時間静置した。その後ソニケーションを5分間かけ飽和状態とし、遠心した(4℃、9000rpm、1時間)。得られた溶液が飽和水溶液であることを保証するため、沈殿物があることを確認した後、上澄みをフェノール硫酸法により測定した。
その結果、デオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比が0:100〜67:33であるセルロース誘導体は水溶性であることが確認され、特にデオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比が35:65であるセルロース誘導体で最も高い水溶性を示すことが確認された(表2)。
表2.dT/N 存在率と水への溶解度について
導入比と水溶性との関係は、図7に示す通りである。
実施例3:セルロース誘導体とカーボンナノチューブとの相互作用についての評価
(1)セルロース誘導体のカーボンナノチューブ可溶化作用についての評価
実施例2で得られたセルロース誘導体とカーボンナノチューブとを相互作用させることにより、該セルロース誘導体がカーボンナノチューブを可溶化させることが可能であるか確認した。
バイアル瓶に単層カーボンナノチューブ(SWNT)(東洋大学の大熊廣一氏より提供された、1mg)、イオン交換水(4ml)を入れ、5分間ソニケーションしたものをSWNT溶液とし、以下の試験例1〜7を調製した。
試験例1:SWNT溶液(500μl)のみ
試験例2:SWNT溶液(500μl)とCel−dT(60%)/N(40%)(50mg)
試験例3:SWNT溶液(500μl)とCel−dT(50mg)
試験例4:SWNT溶液(500μl)とN(50mg)
試験例5:SWNT溶液(500μl)とCel−dT(80%)/N(20%)(50mg)
試験例6:SWNT溶液(500μl)とデオキシチミジン(dT)(50mg)
試験例7:SWNT溶液(500μl)と未修飾セルロース(Cel)(50mg)
試験例1〜7をソニケーションした後、SWNTの分散の様子を観察した。
その結果、試験例1、3、4、6および7では、SWNTの凝集が起こっていることが観察された。一方、Cel−dT/Nを加えた試験例2および5では、SWNTが凝集することなく分散していることが観察された(図8)。
以上のことから、セルロース誘導体(Cel−dT/N)とカーボンナノチューブとが相互作用し、カーボンナノチューブを水溶化させることが確認された。
未修飾のセルロースを混合させた場合では、SWNTの分散が観察されなかったことから(試験例7)、セルロース誘導体とカーボンナノチューブとの相互作用は、セルロース主鎖とカーボンナノチューブとの直接相互作用に基づくものではなく、芳香族性のデオキシチミジン基とカーボンナノチューブとの相互作用に基づくものであることが認められた。一方、デオキシチミジンのみを導入したセルロース誘導体(Cel−dT)ではSWNTを可溶化できなかったことから(試験例3)、可溶化にはセルロース誘導体中のアンモニウムカチオン基が重要であることが認められた。
(2)原子間力顕微鏡によるヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースとカーボンナノチューブとを含んでなる複合体の観察
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、水中で分散しているヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースとカーボンナノチューブとを含んでなる複合体の直接観察を行った。
ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースとカーボンナノチューブとを含んでなる複合体の分散水溶液をマイカ基板上にキャストし、このマイカ基板のAFM観察を行ったところ、該複合体が比較的良好に分散している様子が観察された(図9(A))。
次に、これらの像の高さを断面プロファイルによって解析してみると、その高さは10〜120nmあり、カーボンナノチューブがバンドルした状態で分散していることが示唆された。対照として、セルロース誘導体と混合していないカーボンナノチューブを直接AFMで観察したところ、よりカーボンナノチューブが凝集した大きな塊が観察された(図9(B))。
ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースとカーボンナノチューブとを含んでなる複合体は、セルロース誘導体と混合していないカーボンナノチューブに比べて粒子系が大幅に小さくなっており、カチオン性ヌクレオチド修飾セルロースによってカーボンナノチューブの凝集が抑制され、それによって水への分散能が向上したことが示唆された。
図1は、6−アジド−6−デオキシセルロースのIRスペクトル(ATR測定)の結果を示した図である。 図2は、6−アジド−6−デオキシセルロースの13C NMRスペクトルの結果を示した図である。 図3は、ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースのIRスペクトル(ATR測定)の結果を示した図である。 図4は、ヌクレオシド基導入セルロースの13C NMRスペクトル(Cel−dT)の結果を示した図である。 図5は、ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースのH NMRスペクトル(Cel−dT/N)の結果を示した図である。 図6は、末端アルキン修飾デオキシチミジン誘導体と末端アルキン修飾四級アンモニウムカチオン誘導体との仕込み比と、得られたセルロース誘導体中のデオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比との関係を示した図である。 図7は、ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロース中のデオキシチミジン基と四級アンモニウムカチオン基との導入比と、水溶性との関係を示した図である。 図8は、試験例1〜7の分散の様子を示した図である。 図9は、原子間力顕微鏡によるイメージを示した図である。(A)ヌクレオシド基/カチオン性基導入セルロースにより被覆されたカーボンナノチューブ。(B)市販のカーボンナノチューブ。 図10は、セルロース誘導体(Cel−dT/N)により被覆された、カーボンナノチューブの模式図である。

Claims (11)

  1. 式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体:
    [式中、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−Z−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Zはスペーサー基の残基を表し、Rは、親水性基の残基を表す)、基−T−Z−R(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、Zはスペーサー基の残基を表し、Rは、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物の残基を表す)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基を表し、
    ここで、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく、かつ、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度は、0より大きく1より小さく(ただし、基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度との合計は1以下である)、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり、
    nは、2〜10000の整数を表す]。
  2. 基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度と基−T−Z−Rの繰り返し単位当たりの置換度との比が、1:0.3〜2.5である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
  3. nが、5〜1000である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
  4. の親水性基が、カチオン性基、アニオン性基、ノニオン性基、および両性イオン性基からなる群から選択される、請求項1に記載のセルロース誘導体。
  5. のπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物が、芳香族性の環を含んでなる化合物である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
  6. 芳香族性の環が、4j+2個(ここで、jは1〜5の整数である)のπ電子を有する環である、請求項5に記載のセルロース誘導体。
  7. のπ電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とπ−π相互作用する化合物が、5〜7員の単環式芳香族炭素環もしくは複素環、9〜40員の多環式芳香族炭素環もしくは複素環を含んでなる化合物、またはそれらの誘導体である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
  8. 請求項1〜7に記載のセルロース誘導体を含んでなる、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物の可溶化剤。
  9. 請求項1〜7に記載のセルロース誘導体と、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる、該高分子化合物の分散溶液。
  10. 請求項1〜7に記載のセルロース誘導体と、π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物とを含んでなる、複合体。
  11. π電子系環の集合体からなる骨格構造を有する高分子化合物100重量部に対して100〜100,000重量部である請求項1〜7に記載のセルロース誘導体により被覆された該高分子化合物。
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