JP2011117910A - 埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システム - Google Patents

埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システム Download PDF

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Abstract

【課題】簡素な構成で塗覆装の損傷を検知できる埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システムを提供する。
【解決手段】第一埋設管10と第二埋設管20との間に交流電圧を印加し、第一埋設管10と、第二埋設管20と、第一埋設管10と第二埋設管20との間に介在する介在物とにより形成される計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測工程と、インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷の有無を判定する損傷判定工程と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、前記第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システムに関する。
地中に埋設される導電性の埋設管の腐食や損傷を防止すべく、埋設管に絶縁性の塗覆装が施される場合がある。このような構成では、塗覆装が損傷すると当該損傷箇所を中心に腐食が進行し、腐食により形成された穴から当該埋設管を流れる流体が外部に漏洩したり、又は、当該穴から土砂等が埋設管内に流入するおそれがある。そのため、塗覆装の損傷が発生した場合には迅速に修繕・交換作業を行う必要があり、簡素な構成で塗覆装の損傷を検知できる技術の開発が望まれている。
ところで、塗覆装の損傷は様々な原因により生じるが、本願は、隣接して地中に配設されている埋設管(以下、単に「隣接埋設管」という。)を流れる流体の漏洩に起因する塗覆装の損傷を検知の対象とする。このような塗覆装の損傷として、例えば、隣接埋設管としての水道管から漏洩した水が周囲の土砂を巻き込んで引き起こすサンドブラスト現象によるものがある。下記の特許文献1には、このようなサンドブラスト現象による埋設管の破損を防止する技術として、サンドブラスト現象の発生を検知するセンサを、保護の対象となる埋設管(以下、単に「対象埋設管」という。)の外周面に隣接埋設管に対向するように設ける構成が開示されている。
特開2001−221393号公報
ところで、隣接埋設管からの流体の漏洩箇所を予め正確に予測するのは困難である。そのため、上記特許文献1に記載の構成を用いて、対象埋設管に施された塗覆装の損傷を招来するサンドブラスト現象の発生を検知しようとすると、サンドブラスト現象の発生を検知するセンサを、対象埋設管の長手方向に沿って狭い間隔で連続して設ける必要がある。特に、対象埋設管と隣接埋設管とが平行に配置されている場合には、非常に多くのセンサを対象埋設管の長手方向に沿って設置する必要がある。この場合、多数のセンサが必要となる上に、多数のセンサを対象埋設管の外周面に設置するための作業が必要になり、多額の費用が必要となる。
また、埋設管の修繕・交換作業の緊急性は、埋設管に施された塗覆装が実際に損傷を受けているか否かに基づき判断されるべきであるが、上記特許文献1に記載のセンサを塗覆装が施された対象埋設管に設置したとしても、対象埋設管の塗覆装が実際に損傷しているか否かは検知されず、流動化した土砂が塗覆装に衝突していることが検知されるだけである。そのため、このような構成では、修繕・交換作業の緊急性の度合を適切に判定することが難しく、例えば、複数の箇所でサンドブラスト現象の発生が検知された場合等に、未だ塗覆装の損傷が発生していない箇所を先に修繕・交換作業の対象としてしまう等、作業順位を不適切に決定してしまうおそれがある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で塗覆装の損傷を検知できる埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システムを提供することにある。
上記目的を達成するための地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、前記第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知方法の特徴構成は、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に交流電圧を印加し、前記第一埋設管と、前記第二埋設管と、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に介在する介在物とにより形成される計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測工程と、前記インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに基づいて、前記塗覆装の損傷の有無を判定する損傷判定工程と、を備える点にある。
第一埋設管に施された塗覆装が損傷していない状態では、第一埋設管の導電性の部分と介在物との間には絶縁性の塗覆装が介在するため、計測対象回路のインピーダンスは、当該塗覆装の絶縁性の影響を大きく受けたものとなる。一方、第一埋設管に施された塗覆装が損傷している状態では、当該損傷箇所において第一埋設管の導電性の部分と介在物とが直接或いは導電性流体を介して接触するため、計測対象回路のインピーダンスは、当該塗覆装の絶縁性の影響が著しく小さいものとなる。すなわち、塗覆装が損傷しているか否かで、計測対象回路のインピーダンスは大きく異なるものとなる。
上記の特徴構成によれば、計測対象回路のインピーダンスに関するこのような性質を利用して、インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに基づいて、塗覆装の損傷の有無が判定される。よって、第一埋設管と第二埋設管との間に交流電圧を印加し、計測対象回路のインピーダンスを計測するという簡素な構成で、塗覆装の損傷を検知することができる。
ここで、前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値と所定の損傷判定指標とを比較し、前記インピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に前記塗覆装の損傷が発生していると判定すると好適である。
第一埋設管に施された塗覆装が損傷していない状態では、第一埋設管の導電性の部分と介在物との間には絶縁性の塗覆装が介在するため、計測対象回路のインピーダンスの絶対値は、当該塗覆装の絶縁性により大きなものとなる。一方、第一埋設管に施された塗覆装が損傷している状態では、当該損傷箇所において第一埋設管の導電性の部分と介在物とが直接或いは導電性流体を介して接触するため、計測対象回路のインピーダンスの絶対値は、当該塗覆装が損傷していない場合に比べ小さなものとなる。
この構成によれば、計測対象回路のインピーダンスの絶対値に関するこのような性質を利用して、塗覆装の損傷が発生しているか否かを適切に判定することができる。
上記のように、前記損傷判定工程が、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値と所定の損傷判定指標とを比較し、前記インピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に前記塗覆装の損傷が発生していると判定する構成において、前記損傷判定指標は、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスの絶対値であり、前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値が、前記損傷判定指標より2桁以上小さい場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定すると好適である。
また、この方法を実施する、地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、前記第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知システムでは、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に交流電圧を印加し、前記第一埋設管と、前記第二埋設管と、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に介在する介在物とにより形成される計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測手段と、前記インピーダンス計測手段にて計測された前記計測対象回路のインピーダンスを記憶する記憶手段と、前記インピーダンス計測手段にて計測されたインピーダンスに基づいて、前記塗覆装の損傷の有無を判定する損傷判定手段と、を備え、前記記憶手段は、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスである正常状態インピーダンスを記憶しており、前記損傷判定手段は、前記インピーダンス計測手段により計測されたインピーダンスの絶対値が、前記正常状態インピーダンスの絶対値より所定の桁数(例えば2桁)以上小さい場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定する構成とする。
この構成によれば、第一埋設管及び第二埋設管の双方が正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンス(正常状態インピーダンス)の絶対値に比べ、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段)により計測されたインピーダンスの絶対値が大きく低下している場合に、塗覆装の損傷が発生していると判定される。よって、仮に、気象や気温等の影響、又は経時変化等により第一埋設管や第二埋設管、或いは介在物の電気的特性(導電性や絶縁性の程度等)が変化し、第一埋設管及び第二埋設管の双方が正常状態にあるにもかかわらず、計測対象回路のインピーダンスが絶対値の小さくなる方向に多少変化した場合であっても、塗覆装の損傷が発生していると誤判定されることを抑制することができる。
また、この構成では、損傷判定指標は、固定の数値ではなく、第一埋設管、第二埋設管、及び介在物の電気的特性等によって定まる値に設定される。よって、第一埋設管、第二埋設管、及び介在物の電気的特性が、検知対象によって大きく異なる場合でも、第一埋設管及び第二埋設管の双方が正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンスを計測するだけで、損傷判定指標を設定することができる。従って、この構成によれば、損傷判定指標の設定作業を簡素なものとすることができるとともに、損傷判定指標を適切に設定することができる。
また、上記のように、前記損傷判定工程が、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値と所定の損傷判定指標とを比較し、前記インピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に前記塗覆装の損傷が発生していると判定する構成において、前記損傷判定指標は1000オームであり、前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定する構成としても好適である。
この構成では、損傷判定指標が固定の数値とされる。よって、この構成は、第一埋設管、第二埋設管、及び介在物の電気的特性が、検知対象によって大きく異ならない場合に好適に実施できる。
さて、本発明に係る塗覆装損傷検知方法においては、前記塗覆装の損傷が発生する前段階である前記第二埋設管からの前記導電性流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定工程を更に備え、前記漏洩判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの位相角と、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、前記導電性流体の前記第二埋設管からの漏洩が発生していると判定すると好適である。
また、この方法を実施する塗覆装損傷検知システムは、上記の塗覆装損傷システムの構成に加え、前記塗覆装の損傷が発生する前段階である前記第二埋設管からの前記導電性流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定手段を更に備え、前記漏洩判定手段は、前記インピーダンス計測手段において計測されたインピーダンスの位相角と、前記正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、前記導電性流体の前記第二埋設管からの漏洩が発生していると判定する構成とする。
第一埋設管と第二埋設管との間には介在物が介在しているため、計測対象回路のインピーダンスは、当該介在物の電気的特性の影響を大きく受けたものとなる。そして、第二埋設管から流体が漏洩すると、漏洩した導電性流体は介在物に含まれることとなるため、介在物の電気的特性は、第二埋設管からの流体の漏洩量に応じて変化する。ここで、第二埋設管の内部を流れる流体は導電性の流体であるため、第二埋設管から流体が漏洩すると、計測対象回路のインピーダンスは、第一埋設管と第二埋設管とが正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンスに比べ、実数成分と虚数成分との間のバランスが変化したものとなる。よって、第二埋設管から流体が漏洩すると、計測対象回路のインピーダンスの位相角は、第一埋設管及び第二埋設管の双方が正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンスの位相角から変化したものとなる。なお、この際の位相角の変化量は、第二埋設管からの流体の漏洩量と共に大きくなる。
この構成によれば、計測対象回路のインピーダンスの位相角に関するこのような性質を利用し、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段)により計測されたインピーダンスの位相角と、第一埋設管及び第二埋設管の双方が正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、導電性流体の第二埋設管からの漏洩が発生していると判定されるため、第二埋設管から導電性流体が漏洩しているか否かを適切に判定することができる。
また、本発明に係る塗覆装損傷検知方法においては、前記インピーダンス計測工程において前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に印加される交流電圧の周波数は500Hz以下であるとともに、前記計測対象回路のインピーダンスの位相角は時間の単位で計測され、前記漏洩判定閾値は2.5マイクロ秒であると好適である。
本発明者らは、第一埋設管と第二埋設管との間に印加される交流電圧の周波数を500Hz以下に限定し、漏洩判定閾値を時間の単位で表すと、漏洩判定閾値を比較的大きな値に設定できることを見出した。漏洩判定閾値が大きな値に設定されていると、計測対象回路のインピーダンスを計測するための構成を簡素なものとすることができる。また、一般的に、インピーダンスの位相は、度単位よりも時間単位で計測する方が簡素な構成で計測することができる。
この構成によれば、インピーダンスの位相角を時間の単位で計測すればよく、また、漏洩判定閾値が2.5マイクロ秒という比較的大きな値であるため、インピーダンス計測工程を実行する手段(インピーダンス計測手段)の構成を簡素なものとすることができる。なお、漏洩判定閾値を5マイクロ秒とすると、更に好適である。
また、本発明に係る塗覆装損傷検知方法や塗覆装損傷検知システムにおいては、前記第一埋設管はガス管であり、前記第二埋設管は水道管であると好適である。
上記のように、水道管から水が漏洩すると、周囲の土砂を巻き込んだサンドブラスト現象が発生する場合がある。本発明は、このようなサンドブラスト現象によるガス管の塗覆装の損傷を検知する塗覆装損傷検知方法や塗覆装損傷検知システムに特に適している。
本発明の実施形態に係る塗覆装損傷検知システムを概念的に示す図である。 本発明の実施形態に係る塗覆装損傷検知システムの機能ブロック図である。 本発明の試験例に係る正常状態を模擬する試験システムを示す図である。 本発明の試験例に係る漏水状態を模擬する試験システムを示す図である。 本発明の試験例に係るサンドブラスト発生状態を模擬する試験システムを示す図である。 本発明の試験例に係る試験結果を示す図である。 本発明の試験例に係る印加周波数が500Hzの場合の試験結果を示す図である。 本発明の試験例に係る印加周波数が8kHzの場合の試験結果を示す図である。 本発明の試験例に係る印加周波数が27kHzの場合の試験結果を示す図である。 本発明の試験例に係る印加周波数が83kHzの場合の試験結果を示す図である。 本発明の試験例に係る正常状態と漏水状態との間での位相角度差の試験結果を度単位で表した図である。 本発明の試験例に係る正常状態と漏水状態との間での位相角度差の試験結果を時間単位で表した図である。
本発明に係る塗覆装損傷検知方法を実施するための塗覆装損傷検知システムの実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏する構成であれば種々の改変が可能である。
ここでは、塗覆装の損傷の検知の対象となる地中埋設管がガス管であり、当該塗覆装の損傷の原因となる地中埋設管が水道管である場合を例として説明する。図1に概念的に示すように、本実施形態に係る塗覆装損傷検知システム100は、第一埋設管としてのガス管10と第二埋設管としての水道管20との間に交流電圧を印加する構成を有し、計測したインピーダンスに基づいて、ガス管10に施された塗覆装2の損傷の有無、及び、水道管20からの水の漏洩の有無を判定することに特徴を有している。これにより、簡素な構成で塗覆装2の損傷を検知することができるとともに、塗覆装2の損傷の前段階である水道管20からの水の漏洩の検知も可能となっている。なお、以下の説明において、「軸方向」は埋設管の延在方向(中心軸線)に沿った方向(図1における左右方向)を、「径方向」は当該軸方向に対して直交する方向を、「周方向」は軸方向周りの周回方向を意味するものとする。
1.塗覆装損傷検知システムの構成
図1に概念的に示すように、本実施形態に係る塗覆装損傷検知システム100は、ガス管10(第一埋設管の一例)と、水道管20(第二埋設管の一例)との間に交流電圧を印加可能な交流電源30を備えている。そして、塗覆装損傷検知システム100は、交流電源30により交流電圧を印加した状態で、ガス管10と、水道管20と、ガス管10と水道管20との間に介在する土壌(第一埋設管と第二埋設管との間に介在する介在物の一例)とにより形成される回路(以下、単に「計測対象回路」という。)のインピーダンスに基づいて、ガス管10に施された塗覆装2の損傷の有無、及び、水道管20からの水の漏洩の有無を判定する。
ガス管10は、図1に示すように、地中Gに埋設されている導電性の埋設管である。なお、本願において「導電性の埋設管」とは、少なくとも径方向における一部の領域が、軸方向の全域に亘って導電性の材質からなるものを含む概念として用いている。具体的には、本例では、ガス管10は、内部にガス(例えば、都市ガス等)を流通させる導電性の管体1と、当該管体1の外周の周方向全域に施された絶縁性の塗覆装2とを備えている。言い換えれば、ガス管10には、絶縁性の塗覆装2が施されている。管体1は、例えば、鉄鋼等の金属により形成される。塗覆装2は、例えば、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル等)により形成される。この塗覆装2により、ガス管10が防食されている。なお、このようなガス管10として、例えば、ポリエチレン被覆鋼管(PLP)を採用することができる。
水道管20は、ガス管10に隣接して地中Gに埋設されている導電性の埋設管である。本例では、水道管20は、内部に導電性流体としての水を流通させる導電性の管体3と、当該管体3の外周の周方向全域に施された絶縁性の塗覆装4とを備えている。言い換えれば、水道管20には、絶縁性の塗覆装4が施されている。管体3は、管体1と同様、例えば、鉄鋼等の金属により形成される。塗覆装4は、塗覆装2と同様、例えば、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル等)により形成される。なお、本発明においては、水道管20は、塗覆装4が施されておらず導電性の管体がむき出しになっているものであっても良い。また、水道管20として、例えば、鋳鉄管、鋼管、ポリエチレン被覆鋼管(PLP)を採用することができる。
なお、図1では、水道管20が、ガス管10に隣接して互いに平行になるように配置されている場合を例として示しているが、水道管20のガス管10に対する配置は平行配置に限定されるものではなく、ある方向から見て水道管20がガス管10に対して交差するように配置されていても良い。すなわち、本発明は、少なくともある箇所において、第一埋設管(本例ではガス管10)と第二埋設管(本例では水道管20)とが互いに近接して配置されている場合を対象とする。
そして、このようにガス管10に対して隣接して地中Gに埋設されている水道管20が何らかの原因により損傷し、当該水道管20から水が漏洩する場合がある。図1においては、水が水道管20から漏洩する様子を模式的に示している。このような水の漏洩が発生すると、漏洩した水が周囲の土壌を流動化させ、流動化した土壌がガス管10に対して激しく衝突するサンドブラスト現象が発生し、ガス管10の塗覆装2が損傷するおそれがある。塗覆装2が損傷した場合、その損傷箇所を中心に管体1の腐食が進行し、管体1に形成された穴から内部を流通するガスがガス管10の外部に漏洩したり、又は、当該穴から土壌や水がガス管10の内部に流入するおそれがある。そこで、本発明に係る塗覆装損傷検知システム100は、このような管体1の腐食につながる塗覆装2の損傷、すなわち、水道管20の内部を流れる水の漏洩に起因する塗覆装2の損傷を検知することを可能とすべく、図2に示すような構成を備えている。
図2に示すように、本実施形態では、塗覆装損傷検知システム100は、インピーダンス計測手段50と、記憶手段51と、損傷判定手段52と、漏洩判定手段53と、を備えている。なお、インピーダンス計測手段50と、記憶手段51と、損傷判定手段52と、漏洩判定手段53とは、通信線等を介して互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。
インピーダンス計測手段50は、ガス管10と水道管20との間に交流電圧を印加するための上述した交流電源30を備えており、計測対象回路のインピーダンスを計測する機能部である。本実施形態では、このインピーダンス計測手段50により、ガス管10と水道管20との間に交流電圧を印加し、計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測工程が実行される。このインピーダンス計測工程は、所定の時期に定期的に実行されたり、作業者の指示に応じて実行される。そして、インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに関する情報は、必要に応じて、記憶手段51、損傷判定手段52、漏洩判定手段53に送られる。損傷判定手段52や漏洩判定手段53は、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスに基づいて、後述する損傷判定工程や漏洩判定工程を実行する。
図2に示すように、インピーダンス計測手段50は、ガス管10及び水道管20のそれぞれと電気配線(リード線等)で電気的に接続されており、ガス管10と水道管20との間に交流電圧を印加可能となっている。なお、交流電源30は、少なくとも所定の周波数の交流電圧を発生するように構成されていれば良いが、所定の周波数範囲の中の任意の周波数の交流電圧を発生可能に構成されていても好適である。このようなインピーダンス計測手段50は、例えば、LCRメータやループチェッカーにより構成することができる。
なお、ガス管10の外周面は絶縁性の塗覆装2に覆われているため、電気配線は、ガス管10の管体1と電気的に導通するように接続される。また、水道管20についても同様であり、水道管20の外周面は絶縁性の塗覆装4で覆われているため、電気配線は、水道管20の管体3と電気的に導通するように接続される。なお、ガス管10同士が絶縁継手により絶縁的に連結されている場合には、電気配線の接続箇所より軸方向一方側の絶縁継手と、軸方向他方側の絶縁継手との間に位置する部分が、当該電気配線に対応する塗覆装損傷の検知範囲となる。
ところで、電気配線とガス管10や水道管20との接続箇所は、ガス管10同士や水道管20同士が絶縁継手により連結されている場合には、当該絶縁継手の配設箇所近傍に設けると好適である。また、ガス管10や水道管20を電気防食するための電気防食手段や、ガス管10や水道管20の位置を探査する配管探査手段が設けられている場合には、これらの手段を構成する機器やこれらの手段の配置空間を利用して、インピーダンス計測手段50を設けると好適である。
記憶手段51は、インピーダンス計測手段50にて計測された計測対象回路のインピーダンスを記憶する機能部である。本例では、ガス管10及び水道管20の双方が正常状態にある場合(以下、単に「正常状態」という。)の計測対象回路のインピーダンス(以下、単に「正常状態インピーダンス」という場合がある。)がインピーダンス計測手段50等により予め計測されており、当該正常状態インピーダンスが記憶手段51に記憶されている。なお、ガス管10や水道管20に関して正常状態とは、物理的な損傷が実質的に発生しておらず、配管を埋設した時点から電気的な特性が実質的に変化していない状態を意味する。
損傷判定手段52は、インピーダンス計測手段50にて計測されたインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷の有無を判定する機能部である。本実施形態では、この損傷判定手段52により、インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに基づき、塗覆装2の損傷の有無を判定する損傷判定工程が実行される。
また、漏洩判定手段53は、インピーダンス計測手段50にて計測されたインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷が発生する前段階である水道管20からの水の漏洩の有無を判定する機能部である。本実施形態では、この漏洩判定手段53により、塗覆装2の損傷が発生する前段階である水道管20からの水の漏洩の有無を判定する漏洩判定工程が実行される。
以上のように、塗覆装損傷検知システム100は、計測対象回路のインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷の有無や、水道管20からの水の漏洩の有無を判定する。ここで、正常状態における計測対象回路のインピーダンス(正常状態インピーダンス)と、水道管20から水が漏れている状態(以下、単に「漏水状態」という。)における計測対象回路のインピーダンスと、水道管20から漏れた水によりサンドブラスト現象が発生し、ガス管10の塗覆装2が損傷している状態(以下、単に「サンドブラスト発生状態」という。)における計測対象回路のインピーダンスについて説明する。
正常状態における計測対象回路のインピーダンスは、ガス管10、水道管20、及び、ガス管10と水道管20との間に介在する土壌の電気的特性に応じたものとなる。この時、ガス管10の導電性の部分(管体1)と土壌との間、及び、水道管20の導電性の部分(管体3)と土壌との間には、絶縁性の塗覆装2、及び絶縁性の塗覆装4が介在するため、正常状態における計測対象回路のインピーダンスは、塗覆装2,4の絶縁性の影響を大きく受けたものとなる。具体的には、正常状態においては、管体1と管体3との間にコンデンサが形成された状態となる。よって、正常状態における計測対象回路のインピーダンスは、実数成分に比べ虚数成分が支配的となり、当該インピーダンスの位相角は90度又は−90度に近いものとなる。なお、インピーダンスの位相角とは、印加した交流電圧の位相角と、流れる交流電流の位相角との位相差である。
漏水状態における計測対象回路のインピーダンスも、ガス管10、水道管20、及び、ガス管10と水道管20との間に介在する土壌の電気的特性に応じたものとなるが、漏水状態では、正常状態に比べ、特に土壌の電気的特性が異なるものとなる。すなわち、水道管20から水が漏洩すると、漏洩した水は土壌を濡らし、土壌の電気的特性は、水の水道管20からの漏洩量、言い換えれば、土壌の含水率に応じて変化する。水は、導電性の流体であるため、漏水状態における計測対象回路のインピーダンスは、正常状態における計測対象回路のインピーダンスに比べ、実数成分と虚数成分のバランスが変化したものとなり、インピーダンスの位相角は、正常状態における位相角から変化(本例では、位相角の絶対値が小さくなる方向に変化)したものとなる。また、位相角の変化量は、水道管20からの水の漏洩量と共に大きくなる。なお、水は大きな比誘電率を有するため、漏水状態は、管体1と管体3との間に、大きな静電容量を持つコンデンサが形成された状態ともいえる。
サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスも、ガス管10、水道管20、及び、ガス管10と水道管20との間に介在する土壌の電気的特性に応じたものとなる。しかし、サンドブラスト発生状態においてはガス管10の塗覆装2が損傷し、当該損傷箇所においては塗覆装2が実質的になくなっているため、ガス管10の導電性の部分(管体1)と土壌とが直接或いは水を介して接触することとなる。また、水道管20における水の漏洩箇所においても、水道管20の導電性の部分(管体3)と土壌とが直接或いは水を介して接触する。すなわち、サンドブラスト発生状態では、管体1と管体3とは、土壌と電気的に導通した状態となり、土壌を介して管体1と管体3との間を交流電流が流れる。なお、この際の電流値は、主に、土壌の電気的特性(抵抗率等)により定まるが、漏水状態では土壌の含水率が高いため、土壌の抵抗率は正常状態に比べ低くなる。よって、サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスは、塗覆装2,4の絶縁性の影響が著しく低下したものとなり、サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスの絶対値は、正常状態における計測対象回路のインピーダンスの絶対値に比べ、著しく小さいものとなる。また、サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスは、虚数成分に比べ実数成分が支配的となり、当該インピーダンスの位相角は0度に近いものとなる。
上記のように、計測対象回路のインピーダンスは、正常状態と、漏水状態、サンドブラスト発生状態とで異なるものとなる。本発明に係る塗覆装損傷検知システム100は、このような計測対象回路のインピーダンスに関する性質に着目し、塗覆装2の損傷の有無、及び、水道管20からの水の漏洩の有無を判定する構成を備えている。
すなわち、サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスの絶対値が、正常状態における計測対象回路のインピーダンスの絶対値に比べ著しく小さくなる点に着目し、本実施形態では、損傷判定手段52は、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスの絶対値と、正常状態インピーダンスの絶対値(損傷判定指標の一例)とを比較し、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスの絶対値以下である場合に、具体的には、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスの絶対値より所定の桁数以上小さい場合に、塗覆装2の損傷が発生していると判定するように構成されている。なお、所定の桁数は、ガス管10と水道管20との離間距離や、ガス管10と水道管20との間に印加する交流電圧の周波数に応じて設定すると好適であり、例えば、2桁、3桁、4桁、5桁等とすることができる。また、損傷判定手段52は、記憶手段51より正常状態インピーダンスの絶対値に関する情報を取得する。
上記のように損傷判定手段52を構成することで、正常状態インピーダンスの絶対値に比べ、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスの絶対値が大きく低下している場合に、塗覆装2の損傷が発生していると判定される。よって、仮に、気象や気温等の影響、又は経時変化等により、ガス管10や水道管20、或いは土壌の電気的特性(導電性や絶縁性の程度等)が変化し、ガス管10及び水道管20の双方が正常状態にあるにもかかわらず、計測対象回路のインピーダンスが絶対値の小さくなる方向に変化した場合であっても、塗覆装2の損傷が発生していると誤判定されることを抑制することが可能となっている。
また、上記のように損傷判定手段52を構成することで、損傷判定指標は、固定の数値ではなく、ガス管10、水道管20、及び土壌の電気的特性等によって定まる値に設定される。よって、ガス管10、水道管20、及び土壌の電気的特性が、検知対象によって大きく異なる場合でも、正常状態インピーダンスを計測するだけで、損傷判定指標を設定することができる。従って、上記のような構成とすると、損傷判定指標の設定作業を簡素なものとすることができるとともに、損傷判定指標を適切に設定することができる。
一方、漏水状態におけるインピーダンスの位相角が、正常状態におけるインピーダンスの位相角から位相角の絶対値が小さくなる方向に変化する点に着目し、本実施形態では、漏洩判定手段53は、インピーダンス計測手段50において計測されたインピーダンスの位相角と、正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、水の水道管20からの漏洩が発生していると判定するように構成されている。なお、漏洩判定閾値は、記憶手段51に記憶されている構成としても良いし、漏洩判定手段53に記憶されている構成としても良い。
詳細は後述するが、本発明者らは、ガス管10と水道管20との間に印加される交流電圧の周波数を、その実用的な周波数である500Hz以下に限定し、漏洩判定閾値を時間の単位で表すと、漏洩判定閾値を比較的大きな値である2.5マイクロ秒や5マイクロ秒に設定できることを見出した。漏洩判定閾値が大きな値に設定されていると、インピーダンス計測手段50の構成を簡素なものとすることができる。また、一般的に、インピーダンスの位相は、度単位よりも時間単位で計測する方が、インピーダンス計測手段50の構成を簡素なものとすることができる。よって、インピーダンス計測工程においてガス管10と水道管20との間に印加される交流電圧の周波数を500Hz以下に限定し、計測対象回路のインピーダンスの位相角を時間の単位で計測するように構成し、漏洩判定閾値を2.5マイクロ秒や5マイクロ秒に設定すると好適である。
2.試験例
これまで説明してきたように、本発明に係る塗覆装損傷検知システム100は、計測対象回路のインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷の有無や、水道管20からの水の漏洩の有無を判定することが可能となっている。このような本発明に係る塗覆装損傷検知システム100の効果を確かめるため試験を実施した。この試験の内容を以下に試験例として説明する。
2−1.試験概要
本試験では、地中Gに埋設されているガス管10及び水道管20を模擬する試験システムを構築し、正常状態、漏水状態、及びサンドブラスト発生状態のそれぞれにおけるインピーダンスを評価するための試験を行った。なお、本試験では、図3〜図5に示すように、ガス管10を第一試験配管61で模擬し、水道管20を第二試験配管62により模擬した。なお、第一試験配管61及び第二試験配管62の双方として、呼び径が20Aのポリエチレン被覆鋼管(PLP)を用いた。すなわち、第一試験配管61は、鋼製の管体63と、当該管体63の外周面を覆うポリエチレン製の塗覆装64とを備えている。また、第二試験配管62は、鋼製の管体65と、当該管体65の外周面を覆うポリエチレン製の塗覆装66とを備えている。
これらの第一試験配管61及び第二試験配管62の双方を真砂土(比抵抗279Ω・m、含水率9.7%)の中に互いに平行となるように埋設した。なお、試験に用いた第一試験配管61及び第二試験配管62の長さLは、共に50cmである。また、第一試験配管61と第二試験配管62との面間距離Dについては、5cm、10cm、15cmの3つの条件の下で試験を行った。ここで、面間距離Dとは、軸方向に直交する断面において、第一試験配管61の外周面と第二試験配管62の外周面との最小離間長さであり、図3〜図5に示す例では、第一試験配管61の図における下端と、第二試験配管62の図における上端とを上下方向に結ぶ直線の長さである。
そして、インピーダンス計測手段50により、第一試験配管61と、第二試験配管62と、第一試験配管61と第二試験配管62との間に介在する真砂土(後述する水糊60が配置されている場合には、水糊60を含む真砂土)とにより形成される回路(以下、単に「試験対象回路」という。)のインピーダンスを計測した。なお、インピーダンス計測手段50として、LCRメータHP4284A(アジレントテクノロジー社製)を用い、第一試験配管61と第二試験配管62との間に印加する交流電圧の周波数(以下、単に「印加周波数」という。)は、0.5kHz、8kHz、27kHz、83kHzの4種類とした。なお、印加した交流電圧の実効値は、数百mVのオーダーである。
図3は、正常状態を模擬する試験システムであり、第一試験配管61及び第二試験配管62の双方とも、塗覆装64,66が損傷しておらず、管体63,65の外周面の全体が塗覆装64,66に覆われている。この試験システムに対してインピーダンス計測手段50を用いて試験対象回路のインピーダンスを計測することで、正常状態における計測対象回路のインピーダンスと同様のものが得られる。
図4は、漏水状態を模擬する試験システムであり、第二試験配管62の塗覆装66の一部を剥離し、第二試験配管62の露出した管体65から第一試験配管61の塗覆装64に向かって直線状に、且つ、第二試験配管62の露出した管体65及び第一試験配管61の塗覆装64の双方と接触するように、水糊60(比抵抗0.24Ω・m)を連続的に配置した。この試験システムに対してインピーダンス計測手段50を用いて試験対象回路のインピーダンスを計測することで、漏水状態における計測対象回路のインピーダンスと同様のものが得られる。なお、第二試験配管62の塗覆装66は、軸方向における中心部(軸方向端部から25cmの部位)を中心に、軸方向に沿って略2cmの領域に亘って剥離した。また、第二試験配管62の塗覆装66は、周方向における第一試験配管61に最も近接する位置を中心に、円周の略2分の1の領域を剥離した。
図5は、サンドブラスト発生状態を模擬する試験システムであり、図4の状態からさらに第一試験配管61の塗覆装64の一部を剥離し、第一試験配管61の管体63に接触するように水糊60を配置した。この試験システムに対してインピーダンス計測手段50を用いて試験対象回路のインピーダンスを計測することで、サンドブラスト発生状態における計測対象回路のインピーダンスと同様のものが得られる。なお、第一試験配管61の塗覆装64は、軸方向における中心部(軸方向端部から25cmの部位)を中心に、軸方向に沿って略2cmの領域に亘って剥離した。また、第一試験配管61の塗覆装64は、周方向における第二試験配管62に最も近接する位置を中心に、円周の略2分の1の領域を剥離した。
2−2.試験結果
図6に、面間距離を5cm、10cm、15cmとした場合の、インピーダンスの絶対値及び位相角の試験結果を示す。なお、図6においては、「交流抵抗」がインピーダンスの絶対値を表し、「位相角」がインピーダンスの位相角を表す。また、「0.5kHz」、「8kHz」、「27kHz」、「83kHz」の数値は、印加周波数の値を表す。また、「正常」、「漏水」、「サンブラ」は、それぞれ、図3、図4、図5に示す試験システムに対応する。また、図7〜図10は、それぞれ、印加周波数が、0.5kHz、8kHz、27kHz、83kHzの場合の試験結果をグラフとして表したものである。なお、以下の説明では、正常状態を模擬した状態(図3)、漏水状態を模擬した状態(図4)、サンドブラスト発生状態を模擬した状態(図5)を、それぞれ、単に「正常状態」、「漏水状態」、「サンドブラスト発生状態」という。
まず、インピーダンスの絶対値(交流抵抗)に着目すると、何れの印加周波数に対しても、正常状態が最も大きく、次に漏水状態が大きく、サンドブラスト発生状態が最も小さくなっている。また、漏水状態では、インピーダンスの絶対値は正常状態のものと同じ桁数か、1桁小さいかであり、2桁以上は小さくなっていない。一方、サンドブラスト発生状態では、インピーダンスの絶対値が正常状態のものに比べ2桁程度以上小さくなっている。よって、この試験結果より、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスの絶対値より2桁以上小さい場合に、ガス管10の塗覆装2の損傷が発生していると判定すると好適であることが確かめられた。
なお、印加周波数が低いほど、正常状態とサンドブラスト発生状態との間のインピーダンスの絶対値の差が大きくなっているため、印加周波数を低周波(例えば、0.5kHz以下)に限定すれば、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスより3桁或いは4桁以上小さい場合に、ガス管10の塗覆装2の損傷が発生していると判定する構成としても好適であることがわかる。
また、面間距離が小さいほど、正常状態とサンドブラスト発生状態との間のインピーダンスの絶対値の差が大きくなっている。よって、印加周波数を低周波(例えば、0.5kHz以下)に限定するとともに、面間距離を小さく(例えば、呼び径20Aに対して5cm以下に)限定すれば、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスより5桁以上小さい場合に、ガス管10の塗覆装2の損傷が発生していると判定する構成としても好適であることがわかる。なお、図6に示す試験結果では、印加周波数が0.5kHzで面間距離が5cmの場合におけるサンドブラスト発生状態のインピーダンスの絶対値は93Ωであり、桁数が「3」となる100Ωに近い値となっている。そのため、印加周波数を低周波(例えば、0.5kHz以下)に限定するとともに、面間距離を小さく(例えば、呼び径20Aに対して5cm以下に)限定した場合において、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスより4桁以上小さい場合に、ガス管10の塗覆装2の損傷が発生していると判定する構成としても好適である。
また、漏水状態におけるインピーダンスの絶対値は、正常状態におけるインピーダンスの絶対値に比べ小さくなっているため、インピーダンスの絶対値に基づいて、水の水道管20からの漏洩が発生しているか否かを判定する構成とすることも可能である。しかし、正常状態と漏水状態とでは、インピーダンスの絶対値の桁数は同じか1桁違う程度である。そのため、水道管20からの水の漏洩が発生しているか否かをインピーダンスの絶対値に基づいて判定する構成とする場合、漏水状態が発生していると判定するための閾値や指標を比較的厳密に設定しないと誤判定が生じる可能性がある。
一方、インピーダンスの位相角に着目すると、何れの印加周波数に対しても、正常状態では−90度に近い値となり、サンドブラスト発生状態では0度に近い値となっている。よって、サンドブラスト発生状態となっているか否かは、インピーダンスの絶対値ではなく、インピーダンスの位相角に基づいて判定することもできる。この際、例えば、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの位相角の絶対値が所定の角度(例えば、10度、5度、2度、1度等)以下である場合に、ガス管10の塗覆装2の損傷が発生していると判定する構成とすることができる。なお、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの絶対値及び位相角の双方に基づいてガス管10の塗覆装2の損傷が発生しているか否かを判定する構成とすると、判定精度が向上され、信頼性の高い判定結果を得ることができる。
また、何れの印加周波数に対しても、漏水状態におけるインピーダンスの位相角の絶対値は、正常状態におけるインピーダンスの位相角の絶対値に比べ小さくなっている。よって、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)において計測されたインピーダンスの位相角と、正常状態におけるインピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、水の水道管20からの漏洩が発生していると判定する構成とすることができる。
図11は、漏水状態におけるインピーダンスの位相角の試験結果と、正常状態におけるインピーダンスの位相角の試験結果との差の絶対値を位相角度差として、それぞれの印加周波数に対して表したものである。図11をみると、位相角度差は、印加周波数に大きく依存することがわかる。具体的には、印加周波数が大きくなると、位相角度差も大きくなる。よって、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの位相角と、正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、水の水道管20からの漏洩が発生していると判定する構成は、印加周波数が高い場合に特に好適であるといえる。なぜなら、漏洩判定閾値が大きい程誤判定が生じる確立を低く抑えることができるとともに、漏洩判定閾値が大きい程インピーダンスの位相角の検出精度を低くすることができ、インピーダンス計測手段50の構成を簡素なものとすることができるからである。例えば、印加周波数を83kHz以上に限定した場合、漏洩判定閾値を10度や15度と比較的大きな値とすることができる。また、印加周波数を83kHz以上とするとともに、面間距離を小さく(例えば、呼び径20Aに対して10cm以下に)限定すれば、漏洩判定閾値を20度にすることも可能である。
一方、印加周波数が低い場合には、位相角度差の絶対値が小さくなる。よって、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの位相角と、正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、水の水道管20からの漏洩が発生していると判定する構成を印加周波数が低い場合に採用する際には、漏洩判定閾値を厳密に設定する必要があるとともに、インピーダンスの位相角を精度良く測定する必要がある。
しかしながら、本発明者らは、位相角度差を時間の単位で表すと、印加周波数が低いほど位相角度差が大きくなることを見出した。図12は、時間の単位で表した位相角度差の絶対値を、それぞれの印加周波数に対して表したものである。なお、図12に示す時間単位の位相角度差は、図11における度の単位で表された位相角度差に、印加周波数に対応する周期を乗じ、360度で除することで得られたものである。
図12に示すように、印加周波数が低いほど位相角度差(時間単位)が大きくなっているため、印加周波数を例えば0.5kHz以下に限定すると、漏洩判定閾値を2.5マイクロ秒に設定できることがわかる。なお、面間距離Dを小さく(例えば、呼び径20Aに対して10cm以下に)限定すれば、漏洩判定閾値を5マイクロ秒とすることもできる。
よって、インピーダンス計測工程(インピーダンス計測手段50)により計測されたインピーダンスの位相角と、正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、水の水道管20からの漏洩が発生していると判定する構成は、印加周波数が低い場合にも好適であることが確かめられた。そして、このような構成において、印加周波数を0.5kHz以下に限定するとともに、漏洩判定閾値を2.5マイクロ秒や5マイクロ秒とすると好適であることも確かめられた。
なお、上記の試験は、4つの印加周波数(0.5kHz、8kHz、27kHz、83kHz)と3つの面間距離(5cm、10cm、15cm)に対して行ったものであるが、これら以外の印加周波数や面間距離の場合には、補間法(線形補間法等)によりインピーダンスの絶対値や位相角を予測することが可能である。また、上記の試験は、呼び径が20Aの管を用いて行ったものであるが、例えば、10倍の管径の管を用い、面間距離も10倍した場合には、同様の結果が得られるものと考えられる。さらに、上記の試験では、ポリエチレン被覆鋼管(PLP)と真砂土を用いたが、上記の試験で得られた計測対象回路のインピーダンスの絶対値や位相角に関する知見(例えば、正常状態とサンドブラスト発生状態との間のインピーダンスの絶対値の差異は、印加周波数が低いほど大きくなり、また、面間距離が小さいほど大きくなるという知見や、正常状態と漏水状態との間のインピーダンスの位相角の差異である位相角度差は、度単位では印加周波数が高いほど大きくなるが、時間単位では印加周波数が低いほど大きくなるという知見)は、管の材質や土壌の種類が異なる場合でも成立するものと考えられる。よって、本発明は、ガス管10や水道管20が呼び径20Aのポリエチレン被覆鋼管(PLP)以外の管である場合、土壌が真砂土でない場合、ガス管10と水道管20との面間距離が5cm、10cm、15cm以外の場合、印加周波数が0.5kHz、8kHz、27kHz、83kHz以外の場合においても当然に適用可能である。
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、損傷判定指標が、ガス管10及び水道管20の双方が正常状態にある場合の計測対象回路のインピーダンス(正常状態インピーダンス)の絶対値であり、損傷判定手段52は、インピーダンス計測手段50にて計測されたインピーダンスの絶対値が、正常状態インピーダンスの絶対値より所定の桁数以上小さい場合に、塗覆装2の損傷が発生していると判定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、損傷判定指標が予め定められた所定の数値であり、損傷判定手段52は、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスの絶対値が当該所定の数値以下である場合に、塗覆装2の損傷が発生していると判定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この構成は、ガス管10、水道管20、土壌の電気的特性が、検知対象によって大きく異ならない場合に好適に実施できる。なお、図6に示す試験結果より、上記所定の数値として、例えば、1000オームとすると好適であることがわかる。
(2)上記の実施形態では、損傷判定手段52及び漏洩判定手段53が、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスに基づいて、塗覆装2の損傷の有無や水道管20からの水の漏洩の有無を判定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、インピーダンス計測手段50により計測されたインピーダンスを人が確認できるような出力手段を備え、計測されたインピーダンスに基づいて人が塗覆装2の損傷の有無や水道管20からの水の漏洩の有無を判定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(3)上記の実施形態では、塗覆装損傷検知システム100が、漏洩判定手段53を備える場合を例として説明したが、漏洩判定手段53を備えない構成とすることも当然に可能である。
(4)上記の実施形態では、第一埋設管がガス管10であり、第二埋設管が水道管20である場合と例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、地中に埋設されるあらゆる導電性の埋設管に本発明を適用することができる。
本発明は、地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、当該第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知方法及び埋設管の塗覆装損傷検知システムに好適に利用することができる。
2:塗覆装
10:ガス管(第一埋設管)
20:水道管(第二埋設管)
50:インピーダンス計測手段
51:記憶手段
52:損傷判定手段
53:漏洩判定手段
100:塗覆装損傷検知システム

Claims (10)

  1. 地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、前記第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知方法であって、
    前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に交流電圧を印加し、前記第一埋設管と、前記第二埋設管と、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に介在する介在物とにより形成される計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測工程と、
    前記インピーダンス計測工程にて計測されたインピーダンスに基づいて、前記塗覆装の損傷の有無を判定する損傷判定工程と、を備える埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  2. 前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値と所定の損傷判定指標とを比較し、前記インピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に前記塗覆装の損傷が発生していると判定する請求項1記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  3. 前記損傷判定指標は、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスの絶対値であり、
    前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値が、前記損傷判定指標より2桁以上小さい場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定する請求項2記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  4. 前記損傷判定指標は1000オームであり、
    前記損傷判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの絶対値が前記損傷判定指標以下である場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定する請求項2記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  5. 前記塗覆装の損傷が発生する前段階である前記第二埋設管からの前記導電性流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定工程を更に備え、
    前記漏洩判定工程は、前記インピーダンス計測工程により計測されたインピーダンスの位相角と、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、前記導電性流体の前記第二埋設管からの漏洩が発生していると判定する請求項1から4の何れか一項記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  6. 前記インピーダンス計測工程において前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に印加される交流電圧の周波数は500Hz以下であるとともに、前記計測対象回路のインピーダンスの位相角は時間の単位で計測され、
    前記漏洩判定閾値は2.5マイクロ秒である請求項5記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  7. 前記第一埋設管はガス管であり、前記第二埋設管は水道管である請求項1から6の何れか一項記載の埋設管の塗覆装損傷検知方法。
  8. 地中に埋設されている導電性の第一埋設管に施された絶縁性の塗覆装の、前記第一埋設管に隣接して地中に埋設されている導電性の第二埋設管の内部を流れる導電性流体の漏洩に起因する損傷を検知する埋設管の塗覆装損傷検知システムであって、
    前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に交流電圧を印加し、前記第一埋設管と、前記第二埋設管と、前記第一埋設管と前記第二埋設管との間に介在する介在物とにより形成される計測対象回路のインピーダンスを計測するインピーダンス計測手段と、
    前記インピーダンス計測手段にて計測された前記計測対象回路のインピーダンスを記憶する記憶手段と、
    前記インピーダンス計測手段にて計測されたインピーダンスに基づいて、前記塗覆装の損傷の有無を判定する損傷判定手段と、を備え、
    前記記憶手段は、前記第一埋設管及び前記第二埋設管の双方が正常状態にある場合の前記計測対象回路のインピーダンスである正常状態インピーダンスを記憶しており、
    前記損傷判定手段は、前記インピーダンス計測手段により計測されたインピーダンスの絶対値が、前記正常状態インピーダンスの絶対値より所定の桁数以上小さい場合に、前記塗覆装の損傷が発生していると判定する埋設管の塗覆装損傷検知システム。
  9. 前記塗覆装の損傷が発生する前段階である前記第二埋設管からの前記導電性流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定手段を更に備え、
    前記漏洩判定手段は、前記インピーダンス計測手段において計測されたインピーダンスの位相角と、前記正常状態インピーダンスの位相角との差の絶対値が、所定の漏洩判定閾値以上である場合に、前記導電性流体の前記第二埋設管からの漏洩が発生していると判定する請求項8記載の埋設管の塗覆装損傷検知システム。
  10. 前記第一埋設管はガス管であり、前記第二埋設管は水道管である請求項8又は9記載の埋設管の塗覆装損傷検知システム。
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