JP2011115911A - 水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置 - Google Patents

水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置 Download PDF

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Abstract


【課題】 透析装置等の高価かつ維持管理コストの高い機器を使わずに、また煩雑なメインテナンスを必要とせずに、簡便かつ低コストで水溶性加工液の機能劣化を防止できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 水に溶解したときにpH9〜11のアルカリ性を示し且つ水への溶解度が0.005〜0.5g/リットルである難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を、水溶性加工液に接触させる。難溶性マグネシウム化合物の水溶性加工液への接触質量を、水溶性加工液の容量に対して、10〜500g/Lとするとよい。難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子は、粒度が1〜50mmであるとよい。
【選択図】 図2

Description

本発明は、水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置、特に水溶性加工液の使用にともなって発生してくる浮遊スラッジを除去し、pHを弱アルカリ性に維持して、水溶性加工液の機能の劣化を防止する方法及び装置に関する。
従来、熱処理、機械加工、圧延、鍛造等の処理時に、冷却、潤滑などを目的として、さまざまな加工液が用いられている。たとえば、焼入れ液、切削油、研削油、鍛造型潤滑液、作動油等の加工液をあげることができる。特に水溶性加工液は難燃性のために広く用いられている。水溶性加工液は、グリコール類、油脂等の有機物質を主要成分とし、これらを水に溶解または分散させて形成されている。また、一般的な水溶性加工液は、そのpHが9〜11の弱アルカリ性となるように調整されている。
水溶性加工液の機能については、焼入れ油では、一般に、処理対象物の冷却及び防錆などがもとめられ、切削油では、冷却及び防錆に加えて、更に潤滑がもとめられる。冷却機能は、水溶性加工液のpHによって影響を受ける。即ち、水溶性加工液は、pHが低下すると、曇点が上昇するなどして、処理対象物を冷却する速度が低下する。このため、水溶性加工液のpHの弱アルカリ性での安定化が求められる。pHの変化は、液内にある有機物質の酸化のほか、浮遊物の発生によっても起こる。
水溶性加工液の防錆機能は、液中に錆発生を促進する有機イオン成分が生じることで、低下する。また、潤滑機能は、加工液中の潤滑剤が分解されたり、浮遊スラッジが発生することで、劣化する。
このように、水溶性加工液は、各処理に対応した機能が求められる。中でも、冷却機能は、加工液のpHに大きく依存するため、冷却機能を調整するにはpHを9〜11の範囲に調整することが必要である。
ところで、水溶性加工液を使用すると、主要成分である有機成分が酸化されて、蟻酸や酢酸等の酸性の分子に変化する。また、水溶性加工液は、外部からの各種酸成分や各種汚濁物質の持ち込みがある。これらにより、水溶性加工液のpHは次第に低下するとともに、各種汚濁物質がスラッジとなって浮遊する状態となる。このpHの低下は、防錆等の加工液の機能を低下させ、また各種バクテリア、カビ等の微生物の繁殖が起こり、加工液を腐敗させて悪臭を発生させるとともに、微生物が汚濁物質となって浮遊し、加工液の機能を一層低下させる要因になっていた。
たとえば、水溶性加工液がポリアルキレングリコールの4〜8%水溶液からなる鋼材用の焼入れ液である場合、ポリアルキレングリコール水溶液が有する曇点を利用して水溶液の冷却速度を調節しており、初期のpHは9.5前後の弱アルカリ性である。従ってこのpHを維持でき、さらに主に前段の加工工程から持ち込まれるスラッジの浮遊が防止できれば、本来の機能である冷却特性が劣化することはない。
しかし、水溶性加工液は、使用に伴ってポリアルキレングリコールの酸化や腐敗により、pHが6〜7程度まで低下することがある。また蓄積してくるスラッジは液の濁りとして観察されるように、極めて微細であり、スラッジを工程内でフィルタによってろ過することは事実上困難であった。これらの液劣化やスラッジの蓄積により、水溶性加工液の冷却特性の劣化と比較的高温になりやすいスプレーノズル・ポンプ・熱源付近でスラッジの堆積・固着が起こりやすく、配管詰まりなどの装置異常が発生し、焼入れ不良を招いていた。このため、これら水溶性加工液を安定的に長期使用するために、加工液のpHを9〜11の初期値近傍に維持するとともに、浮遊スラッジの蓄積を抑制できる水溶性加工液の機能劣化防止方法が必要となっていた。
そこで、従来、特許3093984号(特許文献1)に開示されているように、酸性物質を電気透析により除去する方法があった。また、特開2001−9458号(特許文献2)に記載された方法では、透析膜背面の陽極液をアルカリ性液とすることで、透析膜中及び透析膜表面でのpHの低下を防ぎ、酸性物質の析出を抑えている。
また、従来公知の一般的な液pH維持法は、アミン等のアルカリ剤を投入する方法である。また、特開平9−187775号(特許文献3)に記載の水質並びに底質改良用の難崩壊性苦土系pH調整剤では、水との接触によりアルカリ性を示すマグネシウム系化合物の粒子を海、河川、飼育水槽等に投入し、水質および底質のpHを9〜10前後のアルカリ性に維持することが提案されている。
さらに、特開2008−279391号(特許文献4)に記載のスカムの発生抑制方法では、粒子径が0.75mm以下の硬焼酸化マグネシウム粉末を汚泥が堆積している河川に投入し、底質を弱アルカリ性に改質して腐敗を防止し、底質の腐敗が原因で浮上するスカムを防止する方法が提案されている。
また、浮遊スラッジの除去には、一般に硫酸アルミニウム、硫酸第二鉄などの無機塩やポリアクリル酸ソーダなどの高分子凝集剤を用いて、スラッジを凝集させ、スカムとして沈殿させ回収する方法や目の細かいフィルタを設置し、ろ過する方法がある。
特許第3093984号公報 特開2001−9458号公報 特開平9−187775号公報 特開2008−279391号公報 特開2007−75697号公報
しかしながら、特許第3093984号公報及び特開2001−9458号公報には、電気透析法で酸性物質を加工液から除去することは開示されているが、浮遊スラッジを除去する点については言及していない。
また、アミン等のアルカリ剤を投入する従来の液pH維持法では、添加量が過剰とならないように、厳密なpHモニタリングが必要であり、しかもアルカリ剤の投入は頻繁に行わなければならず、焼入れ現場における作業としては極めて煩雑であるばかりではなく、浮遊スラッジの減少には繋がらないという問題点があった。
また、特開平9−187775号に記載の水質及び底質改良用の難崩壊性苦土系pH調整剤、並びに特開2008−279391号に記載のスカムの発生を抑制して河川の底質を改良する方法を、水溶性加工液に適用することが考えられる。この場合、水溶性加工液のアルカリ化は起こるものと予測されるが、その適用条件、および水溶性加工液中に浮遊するスラッジの状態がどうなるか、水溶性加工液の機能への影響がどうなるのかは全く開示されておらず、これをそのまま水溶性加工液の機能劣化防止方法に適用するのは困難であった。水溶性加工液には、水質及び底質の改良とは異なって、冷却特性などの特別な性能が要求される。そのため、pH及び液浄化の管理要求度が厳しい。また、水溶性加工液の成分及び工程中に混入する夾雑物も、河川、海などの水質成分や底質成分とは異なる。ゆえに、河川などの水質及び底質改良に用いられる上記特開平9−187775号及び特開2008−279391号に記載の技術をそのまま、水溶性加工液の機能劣化防止に用いることはできない。
また、特開2007−75697号(特許文献5)では、ポリ硫酸第二鉄及び硫酸を含有し、さらに酸化マグネシウムや酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムを含有してなる水質浄化剤が記載されているが、記載の酸化マグネシウム濃度では、pHを9.5に維持することは困難であった。
また、浮遊スラッジについては、硫酸アルミニウムではpH9.5で凝集できない、硫酸第二鉄では、酸性であるため、添加が過剰にならないようにする必要があり、焼入れ現場における作業としては煩雑になる、ポリアクリル酸ソーダなどの高分子凝集剤は、水溶性焼入れ液中の成分や溶け込んだ鉄イオンなどで効果が見られないという問題があった。
また、フィルタで浮遊スラッジを除去するためには、非常に目の細かいフィルタを使用する必要がある。このため、フィルタの目詰まりが頻発し、フィルタ交換のコスト負担が大きくなる。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、透析装置等の高価かつ維持管理コストの高い機器を使わずに、また煩雑なメインテナンスを必要とせずに、簡便かつ低コストで水溶性加工液の機能劣化を防止できる方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止方法は、アルカリ性を示す水溶性加工液の機能の劣化を防止する方法であって、
水に溶解したときにpH9〜11のアルカリ性を示し且つ水への溶解度が0.005〜0.5g/リットルである難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を、前記水溶性加工液に接触させることを特徴とする。
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止装置は、アルカリ性を示す水溶性加工液の機能の劣化を防止する装置であって、
水に溶解したときにpH9〜11のアルカリ性を示し且つ水への溶解度が0.005〜0.5g/リットルである難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を備えており、該粗粒子を前記水溶性加工液に接触させることを特徴とすることを特徴とする。
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置によれば、pH9〜11のアルカリ性を示しかつ水への溶解度が小さい難溶性マグネシウム化合物を粗粒子として用いている。難溶性マグネシウム化合物は、長期間にわたって微量のマグネシウムイオンを発生させ、水溶性加工液のpHを9.5前後の初期値に維持する。
また、スプレーノズルなどの詰まりの原因とされる浮遊スラッジをフロック化して粗粒子表面に付着させて、水溶性加工液から除去することにより、水溶性加工液を清浄化する。これにより、水溶性加工液が、例えば焼入れ液の場合、曇点の変化が防止され、代表的な機能である調節された冷却機能の劣化を防止することができる。また、この難溶性マグネシウム化合物を焼入れ液の浮遊スラッジ除去・ろ過装置に組み込むことで、スプレーノズル詰まりなどが原因である装置異常を簡便に防止することができる。
さらに本発明では、煩雑なメインテナンスを必要としないため、低コストで液管理を行うことができる。
以上のように、本発明によれば、透析装置等の高価かつ維持管理コストの高い機器を使わずに、また煩雑なメインテナンスを必要とせずに、簡便かつ低コストで水溶性加工液の機能劣化を防止することができる。
本発明における、マグネシアクリンカーの写真撮影図である。 実施例1の加工液の機能劣化防止装置の説明図である。 実施例2の加工液の機能劣化防止装置の説明図である。 実施例3の加工液の機能劣化防止装置の説明図である。
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置は、水溶性加工液の使用にともなう機能の劣化を抑制する。水溶性加工液は、熱処理、機械加工、圧延、鍛造等の処理時に用いられる。例えば、焼入れ液、切削油、研削油、鍛造型潤滑液、作動油等の加工液をあげることができる。水溶性加工液は、そのpHが9〜11の弱アルカリ性となるように調整されている。
本発明は、中でも、焼入れ液として用いられる水溶性加工液の機能の劣化を抑制する方法に適している。焼入れ液は、鋼材などの焼き入れ材料の焼入れの際に用いられる。焼入れ液は、焼入れ材料の安定した品質を確保するために、冷却機能が調整されていることが必要である。冷却機能は、液のpHが低下すると、曇点の変化などによって低下する。本発明は、加工液のpHを弱アルカリ性に維持することができ、しかも、pH低下につながる浮遊スラッジの発生を効果的に抑制することができる方法であるため、焼入れ液の機能劣化を効果的に抑制できる。
また、スラッジ発生を抑制でき、スラッジを除去することができるため、加工液を長期間使用することができる。ゆえに、加工液の冷却機能、潤滑機能などの機能の劣化を効果的に抑えることができる。
水溶性加工液は、グリコール類、油脂等の有機物質を主要成分とし、これらを水に溶解または分散させることで調製される。水溶性加工液が焼入れ液である場合には、ポリエチレングリコールなどを主成分とする人工油脂が、水に混合されて調製される。
本発明においては、pH9〜11のアルカリ性を示しかつ水への溶解度が小さい難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子に、水溶性加工液を接触させている。このため、マグネシウム化合物の溶解消耗が少なく、pH維持作用が長期に亘るとともに、マグネシウム化合物自体が浮遊スラッジになることはなく、加工液、特に焼入れ液の冷却性能を劣化させることを抑えている。浮遊スラッジは、外部から持ち込まれる各種汚濁物質や腐敗成分、微生物などを含む。さらに粗粒子の表面には、浮遊スラッジが凝集してフロックとなって付着し、浮遊スラッジが減少するため、冷却性能の劣化及び配管詰まりなども同時に防止できる。
浮遊スラッジが難溶性マグネシウム化合物粗粒子に付着するメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。すなわち、一般に浮遊スラッジの微粒子は負に帯電して、お互いに反発しているが、マグネシウム化合物粗粒子の表面は正に帯電したマグネシウムイオンが濃化しており、浮遊スラッジはマグネシウム化合物粗粒子表面で電気的に中和されてフロック化し、付着するものと推定される。
また、使用後の加工液には、加工液の主要成分及び汚濁物質の分解生成物である酸成分が溶解しており、液のpHを下げる原因となっている。しかし、マグネシウム化合物を加工液に接触させることで、弱アルカリ性のマグネシウム化合物が微量ずつ溶解して、酸成分による加工液のpHの低下を抑えられる。
(難溶性マグネシウム化合物)
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止方法及び装置で使用できる難溶性マグネシウム化合物は、pH9〜11のアルカリ性を示し、かつ水への溶解度が小さいことが必要である。「難溶性」とは、水溶性加工液に溶けにくい性質をいう。水溶性加工液にまったく溶解しないのではなく、溶解の程度が微量であり、例えば、水溶性加工液に多く含まれる水に対する溶解度で具体的に規定することができる。適切な溶解度の範囲は、マグネシウム化合物のもつアルカリ性の度合いによって変わる。
水溶性加工液のpHを9〜11の範囲に調整するには、難溶性マグネシウム化合物の水に対する溶解度が0.005〜0.5g/Lであることが必要であり、好ましくは0.01〜0.2g/L、より好ましくは0.01〜0.1g/Lである。なお、溶解度は、水温25℃の水に対する溶解度をいう。
溶解度が0.005g/L未満の難溶性マグネシウム化合物を使用する場合は、水溶性加工液への溶解消耗が少なくなる反面、水溶性加工液のpHが下がり、pH9〜11のアルカリ性に維持することが困難になる。一方、溶解度が0.5g/Lを越えるマグネシウム化合物を使用する場合は、溶解消耗が激しく、補充を頻繁に行わなくてはならない不便さがあり、また多量の溶解物が水溶性加工液のpHを上昇させすぎて、水溶性加工液の機能に悪影響を及ぼすおそれもある。
水溶性加工液に対する難溶性の程度は、マグネシウム化合物の種類によって異なる。溶解度が上記条件を満足する難溶性マグネシウム化合物を例示すると,水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウムなどが挙げられる。また、難溶性マグネシウム化合物は、マグネシウム以外の金属元素を含む化合物であってもよく、例えば、マグネシアカルシア、炭酸マグネシウムカルシウム(ドロマイト)等であってもよい。
難溶性マグネシウム化合物の形態は、粗粒子である。粗粒子は、加工液中で浮遊しにくく沈降する程度の粒度をもつ比較的大きな粒子であるとよい。難溶性マグネシウム化合物がこのような粗粒子であると、マグネシウム化合物の水溶性加工液への過度の溶出を抑え、9〜11の範囲を超える強アルカリ性になることを抑制することができる。
また、難溶性マグネシウム化合物が粗粒子であるため、難溶性マグネシウム化合物を、メッシュなどを用いた容器内に保持させやすい。また、容器内の難溶性マグネシウム化合物の粗粒子間の隙間が大きいため、容器内の流通抵抗を低く抑えることができる。また、容器内で目詰まりも生じにくくなり、長期間にわたって連続的に水溶性加工液を清浄することができる。また、液槽に、水溶性加工液とともに、粗粒子である難溶性マグネシウム化合物を投入した場合には、難溶性マグネシウム化合物は、水溶性加工液中の浮遊スラッジなどを付着させながら、徐々に液槽底部に沈降する。ゆえに、液槽内の上澄み液を回収することで、加工液を清浄することができる。
難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の粒度は、1〜50mmであることが好ましく、更には2〜40mmであり,より望ましくは5〜30mmである。ここで、「粒度」とは、難溶性マグネシウム化合物からなる個々の粗粒子の直径をいい、該当する目開きのメッシュで分級することにより測定される。本発明で用いる難溶性マグネシウム化合物粗粒子のすべての粒度が、1〜50mmの範囲にあることがよい。単位重量当たりの性能を保証するためには、粗粒子の粒度のバラツキが小さいことが望ましい。
粒度が1mm未満の小径粒子では、浮遊スラッジがフロック化して粒子表面に付着した場合に、隣り合う粒子との間が塞がれ、言わば目詰まり状態となって加工液の流通接触が行われなくなる恐れがあり、一方、50mmを越える粗粒子の場合には、単位質量当りの表面積が小さくなり、表面から僅かに溶解して加工液のpHを9〜11の弱アルカリ性に維持する作用にかなりの遅れを生じるようになる。
上記の粒度を満足するマグネシウム化合物は、一般にクリンカー(塊状物)として流通しており、焼結法や電融法で作られたクリンカー、もしくは天然鉱物の砕石が好適に使用できる。具体的には、宇部マテリアルズ株式会社製のマグネシアクリンカーやタテホ化学工業株式会社製の電融マグネシア、また天然産では栃木県葛生のドロマイト砕石等が好適に使用できる。
上記難溶性マグネシウム化合物粗粒子の水溶性加工液と接触させる質量割合は、所望するpH、および外部持込による浮遊スラッジの量によって変わるため一概には決まらないが、水溶性加工液の容量に対する質量で、10〜500g/Lである。しかし、粗粒子の粒度によって単位質量当りの表面積、および隣り合う粒子との隙間が変わるため、使用する難溶性マグネシウム化合物粗粒子の粒度が2〜40mmの場合には、10〜400g/Lの範囲、さらに粒度が5〜30mmの場合には、20〜300g/Lの範囲が好ましい。水溶性加工液と接触させる難溶性マグネシウム化合物粗粒子の量が10g/L未満では、粒度が1mmと小さい場合であっても粒子の表面積が不足し、表面から僅かに溶解して水溶性加工液のpHを9〜11の弱アルカリ性に維持する作用に遅れを生じるようになる。一方、500g/Lを越えると、水溶性加工液のpHを9〜11の弱アルカリ性に維持する作用、およびフロック化した浮遊スラッジの付着作用に問題は生じないが、不経済であり、またその収納スペースの確保上からも不都合が生じる。
(接触方法・装置)
上記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を水溶性加工液と接触させる方法は、隣り合う粗粒子との間を水溶性加工液が流通できれば特に制限はない。かかる接触方法・装置としては、例えば、以下に述べるi)連続式とii)バッチ式があげられる。
(i)連続式
例えば、難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の流出を阻止しつつ水溶性加工液を流出させる流出部をもつ容器に粗粒子を収容し、水溶性加工液を容器内の粗粒子に流通させて流出部から流出させる方法がある。この方法は、加工液の連続的な劣化防止処理に適している。この方法は、難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子は、粗粒子の流出を阻止しつつ水溶性加工液を流出させる流出部をもつ容器に収容されており、容器は、水溶性加工液の流路に配設されている水溶性加工液の機能劣化防止装置に適用することができる。この方法及び装置は、一般に、連続して加工液を浄化できるため、連続式と称される。
水溶性加工液の流路は、加工液の使用される焼入れなどの各種加工装置と配管などでつながり、加工装置で使用された水溶性加工液は、容器内に連続的に流れ込む。容器内の難溶性マグネシウム化合物は、水溶性加工液に接触して、加工液のpHを9〜11の範囲に調整するとともに、浮遊スラッジなどを水溶性加工液から除去する。
容器内の難溶性マグネシウム化合物は粗粒子の形態をとっているため、粗粒子間には比較的大きな隙間が確保されている。このため、容器内を流通する水溶性加工液の流通速度が大きく、また粒子間で目詰まりも生じにくい。ゆえに、長期間にわたって、難溶性マグネシウム化合物を取り替えることなく、連続的に水溶性加工液の劣化防止処理を行うことができる。難溶性マグネシウム化合物の粗粒子表面には、使用にともなって浮遊スラッジが付着するため、粗粒子を容器から適宜取り出して、水などで洗浄するとよい。
連続式に用いる難溶性マグネシウム化合物の粗粒子の粒度は、容器内での水溶性加工液の流通速度を考慮して、1〜20mmであるとよく、更には、3〜5mmであるとよい。
容器の流出部では、難溶性マグネシウム化合物の粗粒子を容器内に留めつつ、水溶性加工液を外部に流出させる。難溶性マグネシウム化合物は粗粒子であるため、流出部は、比較的目の粗いものであっても、難溶性マグネシウム化合物を容器内部に留めることができる。また、流出部の目を大きくすることができるため、流出部で目詰まりが生じることも防止できる。
粗粒子にスラッジが過度に付着した場合には、粗粒子から付着スラッジを除去するのが好ましく、その作業を行いやすい方法で水溶性加工液と接触させるのがよい。例えば、難溶性マグネシウム化合物粗粒子が通過しない目開きのステンレス製カゴやプラスチックネットの袋等の容器に必要量の粗粒子を詰めてもよい。
難溶性マグネシウム化合物の粒子の粒度が上記範囲よりも小さいか、又は流出部の目開きが小さすぎる場合には、容器内又は流出部で目詰まりが生じやすい。この場合、例えば、装置を多段式、即ち、底部に流出部を設けて内部に難溶性マグネシウム化合物を充填した有底筒体からなる複数の容器を階段状に配置して、上流側の容器上縁から溢れ出る水溶性加工液を下流側の容器に流下させる方式とする必要がある。本発明では、容器内又は流出部での目詰まりが生じにくいため、複雑な多段式とする必要はない。
容器から流出した水溶性加工液は、沈殿分離槽に貯留させることが好ましい。容器の下流側には、容器から流出した水溶性加工液を貯留させる沈殿分離槽が配設されていることがよい。浮遊スラッジは、マグネシウム化合物の粗粒子表面に付着した後に、剥がれ落ちる場合がある。剥がれ落ちたスラッジは、粗粒子表面に付着する前よりも大きく凝集しており、沈降しやすくなっている。このため、容器の下流側に沈殿分離槽を配置して、一旦加工液を貯留させる。その間に、加工液中の凝集したスラッジが、沈殿分離槽の底部に沈殿する。そして、沈殿分離槽の上部から加工液の上澄みを回収して、加工装置に繋がる配管に流せばよい。
容器自体が、バグフィルタなどのフィルタであってもよい。マグネシウム化合物とフィルタの双方によって、浮遊スラッジを除去することができる。この場合、フィルタの目開きは、マグネシウム化合物の粗粒子を保持できる程度の、比較的大きなものであってよい。浮遊スラッジは、マグネシウム化合物によって凝集して、容器内に流入する前よりも大きくなっている。このため、目開きの大きいフィルタに、凝集したスラッジが捕集され、加工液からスラッジを除去することができる。
また、容器の下流側に、フィルタを配設するとよい。この場合には、加工液中の残存スラッジを回収することができる。また、機能劣化防止装置を加工液の循環経路に設けた場合には、フィルタから流出した加工液にはスラッジが含まれておらず、循環経路を一巡したときに、スラッジが粗粒子の表面に過度に付着するのを遅らせることができる。フィルタは、比較的目の粗いものでよく、例えば5μm以上の目の大きさのものでよい。フィルタとしては、バグフィルタ、メッシュフィルタを用いることができる。なお、バグフィルタとは、フェルト又は布で形成された円筒濾過体をいう。
(ii)バッチ式
バッチ式としては、加工液を粗粒子とともに一旦液槽に貯留させる方式がある。具体的には、液槽に、水溶性加工液を、難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子とともに入れた後、所定時間経過後に液槽内の水溶性加工液の上澄みを回収する方法がある。この方法は、水溶性加工液を、難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子とともに貯留させる液槽を設けている加工液の機能劣化防止装置に適用される。この方法では、加工液を一旦液槽に貯留させて、粗粒子表面に加工液内の浮遊スラッジを凝集させて粗粒子とともに底部に沈殿させた後に、上澄みを適宜回収する。
バッチ式の場合、難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の粒度は、1〜50mmであることがよく、更には2〜40mmであることが望ましい。この場合には、加工液のpHの回復に大幅な遅れを生じさせることがない。一方、液槽内で粗粒子が比較的速やかに且つ確実に沈降するので、粗粒子表面に付着したスラッジの回収が容易となる。
本発明の水溶性加工液の機能劣化防止装置と、加工装置との間には、両装置間を水溶性加工液が循環するように、循環経路を介在させるとよい。また、循環経路の中に、使用後の水溶性加工液を貯留させる貯水槽を設けてもよい。この場合、貯水槽の入口近傍又は出口近傍のいずれに本装置を配置してもよいが、入口近傍に配設した方が、貯水槽でのスラッジの蓄積を抑制できる。本装置は、加工装置の出口近傍に設けるよりも、出口から離れた部分に配設するとよい。加工装置の出口近傍では、水溶性加工液の温度が比較的高く、難溶性マグネシウム化合物が溶出しやすく、消耗量が多くなるからである。本装置は、貯水槽の液中に浸漬してもよいし、水溶性加工液が降り注ぐ場所に露出させて置いてもよい。
<実験1>
水溶性加工液(以下、「加工液」という。)として、ポリアルキレングリコールの6%水溶液からなる鋼材用の焼入れ液を対象に、難溶性マグネシウム化合物を接触させることによる機能劣化防止効果を調査した。
使用した焼入れ液は工場の高周波焼入れ工程で使用されるもので、pH9.6の未使用の新液、および使い込まれて、浮遊スラッジが発生するとともに、pHが8.2、7.2および6.0まで低下した使用液である。これらの焼入れ液1Lを使い、マグネシアの粗粒子であるクリンカーと接触させた。マグネシアクリンカーは宇部マテリアル株式会社製のUBE 98HDを用いた。マグネシアクリンカーは、二酸化炭素を溶解していない水に溶解したときのpHが10.5であり、その溶解度は0.09g/リットルである。粒度は10〜20mmおよび3〜5mmの2種類である。それらの外観を図1に示す。図1の右側の粒子は、粒度が3〜5mmのクリンカーを示し、左側の粒子は、粒度が10〜20mmのクリンカーを示す。いずれのクリンカーも、おおむね偏平な長方形で、角張った形状をしている。
このマグネシアクリンカーの所定量をステンレス製の網カゴに納め、焼入れ液1Lを入れたビーカーの上部に設置した。このとき、クリンカーは完全に焼入れ液に浸るようにした。このビーカーを高温槽で35℃に保温しながらマグネティックスタラーで攪拌させて、pH測定と所定時間後の焼入れ液の腐食状況の測定、冷却性能を調査した。
pHの測定には市販のpHメータを使用した。焼入れ液の腐敗状況の測定、すなわち生菌および真菌数の測定には、BIOSAN LABOLATORIES,INC製の簡易キット SANI CHECK BFを使用した。また焼入れ液の代表的な機能である冷却性能は、JIS-K2242で規定された銀棒試験により測定した。焼入れ液のpH、浮遊スラッジ、および菌数の測定結果を表1に示す。
表1より、加工液は、サンプルNo.2〜7のマグネシアクリンカーの接触により、7日以内にpHが9.0以上に回復し、14日後にはpH9.3〜9.6でほぼ安定した。マグネシアクリンカーの表面は当初、白色であったが、浮遊スラッジがフロック化して付着し、黄褐色に変化した。これに伴い、当初濁っていた液はほぼ透明の清浄液に変化した。また生菌数および真菌数は大幅に減少し、ほぼ完全に腐敗が抑制されたことが明確となった。
なお、黄褐色に変化したマグネシアクリンカーを液から引き上げ、流水で洗浄したところ、フロック化して付着していたスラッジは洗い流され、再び白色の表面状態に戻り、繰り返し使用が可能であることも分かった。
新液のサンプルNo.1では14日後でも初期pHと大差ないpH9.7を維持し、マグネシアクリンカーが過剰なpH上昇作用を持たないことも分かった。これに対し、マグネシアクリンカーの接触量が少ないサンプルNo.8および9では、pHは上昇したが14日後にもpHは9.0以上には回復せず、液の濁りも解消せず、菌数も多く、腐敗状態のままであることを示していた。
また、加工液は、マグネシアクリンカーとの接触量が多いほど、pH上昇率が大きく、また生菌数抑制効果が高かった。特に、1〜2日経過後に、これらの効果が顕著であった。
クリンカーの接触質量が同じとき(例えば、100g/Lのとき)、クリンカーの粒度が10〜20mmである場合(サンプルNo.3)は、粒度が3〜5mmである場合(サンプルNo.7)よりも、1日経過時のpHの上昇率が低かった。また、サンプルNo.5は、サンプルNo.2に比べて、接触量が小さいが粒度が小さく、いずれもpHの上昇率及び生菌抑制効果はほぼ同等であった。これは、粒度が大きいクリンカーは、粒度が小さいクリンカーよりも、単位質量あたりの加工液との接触が少ないためであると考えられる。
一方、焼入れ液の冷却性能を銀棒試験により測定した結果、 浮遊スラッジが発生し且つpHが8.2、7.2、6.0まで低下した使用液では、800℃から200℃までの冷却時間が新液に比べて15〜20%増加し、冷却性能の劣化が認められた。サンプルNo.2〜7では、14日後に液の清浄度およびpHが新液と同等まで回復し、冷却時間が新液と同等まで短縮され、冷却性能が回復したことが確認された。また新液からスタートしたサンプルNo.1では800℃から200℃までの冷却時間がそのまま維持され、マグネシアクリンカー接触による弊害がないことも確認された。
上記サンプルはいずれも、加工液の新液のpHに近いpHを示すマグネシアクリンカーを用いている。新液のpHよりも低いpHを示すマグネシウム化合物を用いた場合には、新液よりもpHが低く留まり、新液のpHよりも高いpHを示すマグネシウム化合物を用いた場合には、新液よりもpHが高くなることは、大方予想されるものである。
(実施例1)
本例の加工液の機能劣化防止装置19は、図2に示すように、第1フィルタ部1と、第2フィルタ部2とからなる。第1フィルタ部1は、容器10の中に、難溶性マグネシウム化合物からなる粒度3〜5mmの粗粒子7を充填したものである。この難溶性マグネシウム化合物は、マグネシアクリンカーである。容器10は、円筒形側のステンレス容器であり、上部の径が下部の径よりも広い。容器10の上部は、開放しており、鋼材の焼入れ装置に連結されている導入パイプ31から加工液4が流下して容器10内に導入されるようになっている。容器10の下部は、金網11(流出部)で塞がれている。金網11の目は、目開き2mmであり、粗粒子7よりも小さい。容器10の中には、容器10の内部容積の約半分の容積まで粗粒子7が充填されている。加工液4を容器10の中に導入したときには、容器内10で加工液4が粗粒子7よりも上方の高さまで貯留し、粗粒子7は、加工液4内で完全に沈降した状態で、加工液4と十分な接触機会をもつようになっている。
第2フィルタ2は、目開き5μm及び25μmの濾布で有底円筒形状に形成されたバグフィルタからなる。第2フィルタ2は、第1フィルタ1の直下に配置され、第2フィルタ2の底部側約半分の長さまで、貯水槽3の中に浸漬されている。貯水槽3は、加工液を貯留させるための水槽であり、底部近傍の側壁には、焼入れ加工装置に連結されている送出パイプ32が接続されている。送出パイプ32の貯水槽3への接続部近傍には、開閉弁が設けられ、必要に応じて適宜適量の加工液4が加工装置に還流されるようになっている。
加工液4は、導入パイプ31から容器10内に流入すると、容器10内のマグネシアクリンカーからなる粗粒子7に接触して、加工液4中の浮遊スラッジを付着させ、またpHを新液の値に近づける。容器10から流出した加工液4は、第2フィルタ2に入り、第2フィルタ2で再度濾過される。ここで、加工液4の中には、粗粒子7表面から剥がれ落ちたスラッジが含まれていることが有る。このスラッジは、第2フィルタ2で大部分が回収される。第2フィルタ2を経た加工液4は、貯水槽3に貯留されて、送出パイプ32より加工装置に適宜送り出される。
(実施例2)
本例の加工液の機能劣化防止装置19は、図3に示すように、容器14の中に、粒度10〜20mmの難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子7を充填したものである。容器14は、目の大きさが目開き25μm及び100μmである濾布で有底円筒形状に形成されたバグフィルタである。容器14内には、所定量の容積の粗粒子7を充填している。
容器14は、貯水槽3の中の上部に設置されている。容器14の上部は、導入パイプ31が接続されており、容器14の下部は、貯水槽3内の加工液4に浸漬されている。貯水槽3内の加工液4は、液面が容器14内の粗粒子7よりも上方に位置するように貯水量が調整されている。貯水槽3の底部近傍の側壁には、実施例1と同様に、送出パイプ32が接続されている。
加工液4は、容器14の中のマグネシアクリンカーからなる粗粒子7と接触することにより、浮遊スラッジの除去及びpH回復が行われ、更に容器14であるバグフィルタの濾布によっても、更にスラッジが濾過される。
(実施例3)
本例の加工液の機能劣化防止装置19は、図4に示すように、貯水槽3の下流側に配設されており、フィルタ部15と、沈殿分離槽5とからなる。貯水槽3の上部には、加工装置に接続した導入パイプ31が接続されており、下部には第1連結パイプ33が接続されている。フィルタ部15は、タンク17の中に網かご18を設置したものであり、網かご18の中には、粒度10〜20mmのマグネシアクリンカーからなる粗粒子7が収容されている。網かご18は、目開きが2〜3mmであり、タンク17の中の高さ方向の中央部に取付けられている。
タンク17の上部近傍の側壁には、第2連結パイプ34が接続されており、第2連結パイプ34を通じて沈殿分離槽5に加工液4が流通するようになっている。沈殿分離槽5の第2連結パイプ34が接続されている位置よりも低い位置には、送出パイプ32が接続されており、沈殿分離槽5から流出した加工液4は送出パイプ32を通じて焼入れ加工装置に還流される。
加工液4は、導入パイプ31を通じて貯水槽3からフィルタ部15に導入される。フィルタ部15のタンク17内では、加工液4は、下方から上方に流通して、途中のマグネシアクリンカーからなる粗粒子7と接触して、pH回復と清浄化がなされる。その後、加工液4は、第2連結パイプ34を通じて沈殿分離槽5に流入する。加工液4には、タンク17内の粗粒子7表面から剥がれ落ちたスラッジが混入することがある。このスラッジは、粗粒子7に接触する前よりも大きく凝集している。スラッジは、沈殿分離槽5に流入したときに、槽の底部に沈降する。ゆえに、加工液の上澄みを、底部よりも上方に位置する送出パイプ32により適宜回収して、加工装置に還流させる。
<実験2>
実験2では、上記実施例1〜3の機能劣化防止装置について、実験1と同様に、pH、浮遊スラッジの有無、生菌数、真菌数、冷却特性を測定した。サンプルNo.11、12は、実施例1の装置を用い、サンプルNo.13,14は実施例2の装置を用い、サンプルNo.15は実施例3の装置を用いて、加工液の機能劣化防止処理を施した。各サンプルでは、表2に示すように、各装置で用いるマグネシアクリンカーの接触量及び粒径と、バグフィルターの目開きと、加工液の温度及び流量とを変えた。
その結果、表3に示すように、実施例1〜3のいずれの装置においても、実験1の新液(サンプルNo.1)と同レベルまで、pHが回復し、浮遊スラッジが除去され、また15日経過後の生菌数及び真菌数も10未満と少なかった。また、冷却特性も、実験1の新液と同等に優れていた。
<実験3>
実験1のサンプルNo.3とNo.7は、マグネシアクリンカーの接触質量がいずれも100g/リットルであり、粒度が相違している。この2つのサンプルを実施例1の機能劣化防止装置19に用いて、容器10内を流通する加工液の流通速度を測定した。その結果、粒度が10〜20mmのサンプルNo.3を充填した容器の方が、粒度が3〜5mmのサンプルNo.3を充填した容器よりも、加工液の流通速度が速かった。
<実験4>
粒度が0.5mm以上1mm未満の小粒子のマグネシアクリンカーと、粒度が50mmを超えて大きく70mm以下の大粒子のマグネシアクリンカーとを、それぞれ実施例1の機能劣化防止装置の第1フィルタ部1の容器10の中に充填して、加工液を流通させた。その結果、小粒子のクリンカーでは、容器内で加工液の目詰まりが生じてしまい、連続的に加工液を流通させることができなかった。一方、大粒子のクリンカーでは、加工液との接触面積が小さいため、pHの上昇に時間がかかった。また、スラッジの回収にも時間がかかり、第2フィルタ部2への負荷が大きくなった。また、浮遊スラッジが付着しにくく、容器10から白濁した加工液が流出してきた。
1:第1フィルタ部、2:第2フィルタ部、3:貯水槽、4:加工液、5:沈殿分離槽、7:粗粒子、10、14:容器、15:フィルタ部、11:金網、18:網かご、19:加工液の機能劣化防止装置、31:導入パイプ、32:送出パイプ、33:第1連結パイプ、34:第2連結パイプ。

Claims (18)

  1. アルカリ性を示す水溶性加工液の機能の劣化を防止する方法であって、
    水に溶解したときにpH9〜11のアルカリ性を示し且つ水への溶解度が0.005〜0.5g/リットルである難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を、前記水溶性加工液に接触させることを特徴とする水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  2. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の粒度が、1〜50mmであることを特徴とする請求項1記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  3. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の粒度が、2〜40mmであることを特徴とする請求項1記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  4. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の粒度が、5〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  5. 前記難溶性マグネシウム化合物の前記水溶性加工液への接触質量を、前記水溶性加工液の容量に対して、10〜500g/Lとすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  6. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子が、焼結もしくは電融法で作られたクリンカー、または天然鉱物の砕石であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  7. 前記水溶性加工液が、焼入れ液であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  8. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子の流出を阻止しつつ前記水溶性加工液を流出させる流出部をもつ容器に該粗粒子を収容し、該水溶性加工液を該容器内の該粗粒子に流通させて該流出部から流出させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  9. 前記容器の前記流出部は、メッシュから構成されていることを特徴とする請求項8記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  10. 前記容器から流出した前記水溶性加工液を沈殿分離槽に貯留させることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  11. 液槽に、前記水溶性加工液を、前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子とともに入れた後、所定時間経過後に該液槽内の該水溶性加工液の上澄みを回収することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止方法。
  12. アルカリ性を示す水溶性加工液の機能の劣化を防止する装置であって、
    水に溶解したときにpH9〜11のアルカリ性を示し且つ水への溶解度が0.005〜0.5g/リットルである難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子を備えており、該粗粒子を前記水溶性加工液に接触させることを特徴とする水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  13. 前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子は、該粗粒子の流出を阻止しつつ前記水溶性加工液を流出させる流出部をもつ容器に収容されており、該容器は、前記水溶性加工液の流路に配設されていることを特徴とする請求項12記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  14. 前記容器の前記流出部は、メッシュから構成されていることを特徴とする請求項13記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  15. 前記容器は、バグフィルタであることを特徴とする請求項13記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  16. 前記容器の下流側には、フィルタが設けられていることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  17. 前記容器の下流側には、該容器から流出した前記水溶性加工液を貯留させる沈殿分離槽が配設されていることを特徴とする請求項12乃至請求項16のいずれか1項に記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
  18. 前記水溶性加工液を、前記前記難溶性マグネシウム化合物からなる粗粒子とともに貯留させる液槽を設けていることを特徴とする請求項12記載の水溶性加工液の機能劣化防止装置。
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