JP2011112373A - レーダ信号処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】気象エコーのドップラ速度が小さい場合でも、気象エコーの減衰を招くことなく、不要な地形エコーのみを除去可能なレーダ信号処理装置を得る。
【解決手段】時刻t1、t2での観測データDt1、Dt2を格納する観測データ格納手段1a、1bと、観測データDt1、Dt2からドップラ速度V1、V2を算出するドップラ速度算出手段2a、2bと、ドップラ速度V1、V2からドップラ0分布R1、R2を作成するドップラ0分布作成手段3a、3bと、ドップラ0分布R1、R2から補正エコー分布Rcを作成する補正エコー分布作成手段4と、観測データDt2に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDt2’を生成するクラッタ除去手段5と、観測データDt2とクラッタ除去後の観測データDt2’と補正エコー分布Rcとを合成して補償観測データDcを取得するエコー補償手段6とを備えている。
【選択図】図1

Description

この発明は、レーダ信号処理装置に関するものである。
一般に、レーダ信号処理装置として、空中にパルス状の電磁波を放射して、観測対象である気象粒子(降水粒子)によって反射された電磁波(受信信号)を受信し、その受信信号に所定の処理を施すことにより、観測対象物の位置、強度およびドップラ速度などを測定する気象レーダ装置が知られている。
この種のレーダ信号処理装置においては、クラッタ(観測対象ではない地表面や地上の構造物)からの反射波(地形エコー、地形クラッタ)を抑圧することが要求されている。
そこで、観測対象である気象エコーのみを抽出するMTI(Moving Target Indicator)処理が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1に記載のMTIにおいては、地形エコーのドップラ周波数がほぼ「0」であることを利用して、周波数解析や高域通過フィルタなどを用い、ドップラ速度がほぼ「0」である成分を除去することによって、地形エコーを抑圧している。
また、地形エコーからの反射の場合には、連続して受信されるパルス間の振幅の差が小さいが、気象エコーからの反射の場合には、上記パルス間の振幅差が大きいことを利用して、地形エコーを抑圧する方法も提案されている。
さらに、地形エコーからの反射の場合には、直交する2方向の偏波の強度の差が小さいが、気象エコーからの反射の場合には、上記2方向偏波の強度差が大きいことを利用して、地形エコーを抑圧する方法も提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
特開平5−223919号公報
青柳著、「大地クラッタの除去を可能としたMTI気象レーダシステムに関する研究」気象研究所研究報告、第33巻、第4号、1983年1月発行、p.187〜243
従来のレーダ信号処理装置は、気象レーダのMTI処理において、抑圧すべき地形エコーのドップラ速度がほぼ「0」である、という性質を用いて気象エコーを抽出しているので、無風に近い状態や、風向がビーム方向に対して垂直の状態であって、観測されるドップラ速度がほぼ「0」の場合には、抽出すべき気象エコーをも抑圧してしまうという課題があった。
また、測定する気象エコーのドップラ速度が、パルス繰り返し周波数で決まる観測可能なドップラ速度を超える場合には、ドップラ速度が折り返すことによって現れるドップラ速度が「0」の領域の気象エコーを抑圧してしまうという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、気象エコーのドップラ速度が「0」の場合であっても、気象エコーの減衰を招くことなく、不要な地形エコーのみを除去することができるレーダ信号処理装置を得ることを目的とする。
この発明に係るレーダ信号処理装置は、前回の時刻で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、現在の時刻で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、第1の観測データから第1のドップラ速度を算出する第1のドップラ速度算出手段と、第2の観測データから第2のドップラ速度を算出する第2のドップラ速度算出手段と、第1のドップラ速度から第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、第2のドップラ速度から第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成するクラッタ除去手段と、第2の観測データとクラッタ除去後の第2の観測データと補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、を備えたものである。
この発明によれば、気象エコーのドップラ速度が「0」の場合であっても、気象エコーの減衰を招くことなく、不要な地形エコーのみを除去することができる。
この発明の実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図である。 図1内の補正エコー分布作成手段およびエコー補償手段の動作を模式的に示す説明図である。 この発明の実施の形態2に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図である。 この発明の実施の形態3に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図である。 この発明の実施の形態4に係るレーダ信号処理装置の他の構成例を示すブロック構成図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図であり、地形エコーを除去するための信号処理部を示している。
図1において、レーダ信号処理装置は、電磁波パルスを送受信する送受信手段(図示せず)と、送受信手段に接続された並設の観測データ格納手段1a、1bと、観測データ格納手段1a、1bに個別に接続されたドップラ速度算出手段2a、2bと、ドップラ速度算出手段2a、2bに個別に接続されたドップラ0分布作成手段3a、3bと、ドップラ0分布作成手段3a、3bに接続された補正エコー分布作成手段4と、観測データ格納手段1bに接続されたクラッタ除去手段5と、観測データ格納手段1b、補正エコー分布作成手段4およびクラッタ除去手段5に接続されたエコー補償手段6と、を備えている。
送受信手段は、単一のパルス繰り返し周波数により、所定時間間隔で電磁波パルスを放射して、気象粒子(降水粒子)からの反射電磁波を受信し、観測データを観測データ格納手段1a、1bに格納する。
観測データ格納手段1aは、前回の時刻t1での第1の観測データ(以下、単に「観測データ」という)Dt1を格納する。
また、観測データ格納手段1bは、時刻t1から所定時間経過後の現在の時刻t2(>t1)での第2の観測データ(以下、単に「観測データ」という)Dt2を格納する。
ドップラ速度算出手段2aは、観測データDt1に対して周波数解析(たとえば、FFT:Fast Fourier Transform)を行い、第1のドップラ速度(以下、単に「ドップラ速度」という)V1を算出し、ドップラ速度算出手段2bは、観測データDt2に対して同様の周波数解析を行い、第2のドップラ速度(以下、単に「ドップラ速度」という)V2を算出する。
ドップラ0分布作成手段3aは、観測データDt1のドップラ速度V1から、ドップラ周波数が「0」(または、所定の幅を持つ「0」付近の値)である領域を、第1のドップラ0分布(以下、単に「ドップラ0分布」という)R1として抽出する。
同様に、ドップラ0分布作成手段3bは、観測データDt2のドップラ速度V2から、ドップラ周波数が「0」(または、所定の幅を持つ「0」付近の値)である領域を、第2のドップラ0分布(以下、単に「ドップラ0分布」という)R2として抽出する。
補正エコー分布作成手段4は、観測データDt1のドップラ0分布R1と、観測データDt2のドップラ0分布R2とを入力情報として、非クラッタ(気象エコー)であるにもかかわらずドップラ速度が「0」の領域(以下、「補正エコー分布」という)Rcを算出して、エコー補償手段6に入力する。
クラッタ除去手段5は、観測データ格納手段1b内の観測データDt2に対して、通常のクラッタ除去処理(たとえば、コヒーレントMTI、ノンコヒーレントMTIなど)を行い、クラッタ除去後の観測データDt2’をエコー補償手段6に入力する。
エコー補償手段6は、観測データDt2と、クラッタ除去手段5を介してクラッタ除去された観測データDt2’と、補正エコー分布作成手段4で作成された補正エコー分布Rcとを入力情報として、最終的なクラッタのみが除去された補償観測データDcを取得する。
具体的には、補償観測データDcは、クラッタ除去後の観測データDt2’に対して、補正エコー分布Rcと元の観測データDt2との共通部分(非クラッタであってドップラ速度が「0」の領域)を合成することにより得られる。
これにより、通常のクラッタ除去処理による観測データDt2’では、必要であるにもかかわらず除去されていた非クラッタ領域(補正エコー分布Rc)を、追加してエコー補償を行うことができる。
次に、図2を参照しながら、図1内の補正エコー分布作成手段4およびエコー補償手段6の動作について、具体的に説明する。
図2は補正エコー分布作成手段4およびエコー補償手段6の動作を模式的に示す説明図であり、図2(a)、(b)は、補正エコー分布作成手段4の動作を示し、図2(c)は、エコー補償手段6の動作を示している。また、図2において、各円内の模様は、気象レーダのPPI(Plan Position Indicator)表示画面を示している。
図2(a)において、補正エコー分布作成手段4は、観測データDt1のドップラ0分布R1と、観測データDt2のドップラ0分布R2とから、両者の共通部分を、クラッタ分布Re(地形エコー領域)として算出する。
このとき、観測データDt1のドップラ0分布R1には、クラッタ分布Re(地形エコー領域)と、ドップラ速度が「0」の気象エコー領域とが含まれており、同様に、観測データDt2のドップラ0分布R2にも、クラッタ分布Re(地形エコー領域)と、ドップラ速度が「0」の気象エコー領域とが含まれている。
一般に、気象エコー領域は、時々刻々変化しているので、観測データDt1、Dt2を取得した各時刻t1、t2の間で変化している。
一方、クラッタ分布Reは、ほとんど時間変化が生じないので、異なる時刻t1、t2での観測データDt1、Dt2の共通部分を抽出すると、図2(a)のように、クラッタ分布Re(地形エコー領域)のみが抽出される。
続いて、図2(b)において、補正エコー分布作成手段4は、観測データDt2のドップラ0分布R2と、クラッタ分布Re(地形エコー領域)との差をとって、補正エコー分布Rcを作成する。
すなわち、観測データDt2のドップラ0分布R2のうち、クラッタ分布Reである地形エコー領域は除去されるので、ドップラ速度が「0」である気象エコー領域のみが、観測データDt2の補正エコー分布Rcとして残る。
最後に、図2(c)において、エコー補償手段6は、観測データDt2に通常のクラッタ除去(MTI)処理を施して得られた観測データDt2’と、未処理の観測データDt2と、観測データDt2の補正エコー分布Rcとから、最終的な補償観測データDcを取得する。
このとき、通常のクラッタ除去処理後の観測データDt2’は、本来クラッタである領域と、ドップラ速度が「0」である気象エコー領域と、が減衰されたデータからなる。
また、図2(c)の括弧内のように、未処理の観測データDt2のエコーと、観測データDt2の補正エコー分布Rcとの共通部分をとると、ドップラ速度が「0」の気象エコー領域のみが残る。
したがって、図2(c)のように、観測データDt2’(クラッタ除去後のエコー)と、ドップラ速度が「0」の気象エコー領域とを合成することにより、ドップラ速度が「0」である気象エコー領域の減衰が回避されて、クラッタ分布Reのみを除去した気象エコー領域が、補償観測データDcとして生成される。
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図2)に係るレーダ信号処理装置は、前回の時刻t1で取得した観測データDt1を格納する観測データ格納手段1aと、現在の時刻t2で取得した観測データDt2を格納する観測データ格納手段1bと、観測データDt1からドップラ速度V1を算出するドップラ速度算出手段2aと、観測データDt2からドップラ速度V2を算出するドップラ速度算出手段2bと、ドップラ速度V1からドップラ0分布R1を作成するドップラ0分布作成手段3aと、ドップラ速度V2からドップラ0分布R2を作成するドップラ0分布作成手段3bと、ドップラ0分布R1、R2から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布Rcを作成する補正エコー分布作成手段4と、観測データDt2に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDt2’を生成するクラッタ除去手段5と、観測データDt2とクラッタ除去後の観測データDt2’と補正エコー分布Rcとを合成して、最終的な補償観測データDcを取得するエコー補償手段6と、を備えている。
上記補正エコー分布作成手段4およびエコー補償手段6により、ドップラ速度が「0」であるために減衰した気象エコー領域を、元の未処理の観測データDt2から抽出し、クラッタ除去後の観測データDt2’のエコーに合成することにより、気象エコーの減衰を抑制して、クラッタのみを減衰させることができる。
したがって、気象エコーのドップラ速度が「0」の場合であっても、気象エコーの減衰を招くことなく、不要な地形エコーのみを除去することができる。
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1、図2)では、観測データDt1、Dt2から直接ドップラ速度V1、V2を求め、ドップラ速度V1、V2からドップラ0分布R1、R2を作成したが、図3のように、クラッタ除去後の観測データDt1’、Dt2’からドップラ0分布R1、R2を作成してもよい。
図3はこの発明の実施の形態2に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図であり、地形エコーを除去するための信号処理部を示している。
図3において、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。また、図3内のドップラ0分布作成手段3A、3Bは、前述(図1)のドップラ0分布作成手段3a、3bに対応し、クラッタ除去手段5bは、前述のクラッタ除去手段5に対応している。
図3のレーダ信号処理装置は、前述(図1)のドップラ速度算出手段2a、2bに代えて、観測データ格納手段1a、1bに個別に接続されたクラッタ除去手段5a、5bを備えており、クラッタ除去手段5a、5bには、個別にドップラ0分布作成手段3A、3Bが接続されている。
ドップラ0分布作成手段3A、3Bは、クラッタ除去手段5a、5bを介したクラッタ除去後の観測データDt1’、Dt2’からエコーが除去された領域を抽出することにより、ドップラ0分布R1、R2を作成する。
前述と同様に、通常のクラッタ除去手段5a、5bにより減衰するエコーは、ドップラ速度が「0」のエコーである。
ドップラ0分布作成手段3Aは、クラッタ除去後の観測データDt1’から、エコーが減衰した領域を抽出することにより、観測データDt1のドップラ0分布R1を作成する。
同様に、ドップラ0分布作成手段3Bは、クラッタ除去後の観測データDt2’から、観測データDt2のドップラ0分布R2を作成する。
以下、前述と同様に、補正エコー分布作成手段4において、ドップラ0分布R1、R2を用いることにより、補正エコー分布Rcが作成され、エコー補償手段6において、クラッタ除去後の補償観測データDcを取得することができる。
以上のように、この発明の実施の形態2(図3)に係るレーダ信号処理装置は、前述と同様の観測データ格納手段1a、1bと、観測データDt1に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDt1’を生成するクラッタ除去手段5aと、観測データDt2に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDt2’を生成するクラッタ除去手段5bと、クラッタ除去後の観測データDt1’からエコーが除去された領域を抽出することにより、ドップラ0分布R1を作成するドップラ0分布作成手段3Aと、クラッタ除去後の観測データDt2’からエコーが除去された領域を抽出することにより、ドップラ0分布R2を作成するドップラ0分布作成手段3Bと、前述と同様の補正エコー分布作成手段4およびエコー補償手段6と、を備えている。
これにより、前述の実施の形態1と同様の作用効果に加えて、ドップラ速度V1、V2を算出する必要がないことから、演算規模および装置全体の構成を簡略化することができる。
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1、2(図1〜図3)では、単一のパルス繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)により、異なる時刻t1、t2で得られた観測データDf1、Df2を用いてクラッタを除去したが、図4のように、2つの異なるパルス繰り返し周波数PRF1、PRF2で得られた観測データDf1、Df2を用いて、クラッタを除去してもよい。
図4はこの発明の実施の形態3に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図4において、観測データ格納手段1Aは、第1のパルス繰り返し周波数(以下、単に「パルス繰り返し周波数」という)PRF1で取得した観測データDf1を格納する。
また、観測データ格納手段1Bは、第2のパルス繰り返し周波数(以下、単に「パルス繰り返し周波数」という)PRF2で取得した観測データDf2を格納する。各観測データDf1、Df2は、時間的に交互に得られるものとする。
ドップラ速度算出手段2A、2Bは、各観測データDf1、Df2に対して前述の周波数解析を行い、ドップラ速度V1、V2を算出してドップラ0分布作成手段3a、3bに入力する。
また、クラッタ除去手段5は、通常処理により観測データDf2からクラッタを除去した観測データDf2’を生成する。
以下、エコー補償手段6は、前述(図2)と同様に、元の観測データDf2、クラッタ除去後の観測データDf2’および補正エコー分布Rcを用いて、最終的な補償観測データDcを取得する。
図4のように、互いに異なるパルス繰り返し周波数PRF1、PRF2で取得した観測データDf1、Df2を用いた場合には、ドップラ速度V1、V2が折り返す速度値が互いに異なるので、観測データDf1、Df2の両者における共通部分は、常にドップラ速度が「0」、すなわち、クラッタと決定することができる。
なお、パルス繰り返し周波数PRF1、PRF2の選定については、公知文献(たとえば、楠他著『2つのパルス繰り返し周波数によるデータを用いたドップラ速度折り返し補正のための「複合アルゴリズム」』天気、43(10)、1996年10月発行、p.681〜690)に記載された方式を用いればよい。
この発明の実施の形態3(図4)に係るレーダ信号処理装置は、パルス繰り返し周波数PRF1で取得した観測データDf1を格納する観測データ格納手段1Aと、パルス繰り返し周波数PRF1とは異なるパルス繰り返し周波数PRF2で取得した観測データDf2を格納する観測データ格納手段1Bと、観測データDf1からドップラ速度V1を算出するドップラ速度算出手段2Aと、観測データDf2からドップラ速度V2を算出するドップラ速度算出手段2Bと、前述と同様のドップラ0分布作成手段3a、3b、補正エコー分布作成手段4、クラッタ除去手段5、エコー補償手段6と、を備えている。
前述の実施の形態1、2(図1〜図3)では、観測データDt1、Dt2のエコーの分布状況が時刻tによって変化することを利用して気象エコーを弁別しているので、気象エコーの分布状況に時間変化が全くない場合には、気象エコーを見分けることができないが、図4に示したこの発明の実施の形態3によれば、気象エコーの時間変化の有無にかかわらず、気象エコーを見分けることができるという利点がある。
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図4)においては、図1の構成に対して、異なるパルス繰り返し周波数PRF1、PRF2を適用したが、図5に示すように、前述の実施の形態2(図3)の構成に適用することも可能である。
図5はこの発明の実施の形態4に係るレーダ信号処理装置を示すブロック構成図であり、前述(図3、図4参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
また、図5において、クラッタ除去手段5A、5Bは、前述(図3)のクラッタ除去手段5a、5bに対応している。
この発明の実施の形態4(図5)に係るレーダ信号処理装置は、前述(図4)と同様の観測データ格納手段1A、1Bと、観測データDf1に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDf1’を生成するクラッタ除去手段5Aと、観測データDf2に対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の観測データDf2’を生成するクラッタ除去手段5Bと、前述(図4)と同様のドップラ0分布作成手段3A、3B、補正エコー分布作成手段4およびエコー補償手段6と、を備えている。
上記構成によれば、異なるパルス繰り返し周波数PRFで取得した観測データDf1、Df2から、直接ドップラ速度を算出せずに、クラッタ除去を行うことができるので、前述の実施の形態2と同様に、演算規模および装置全体の構成を簡略化することができる。
実施の形態5.
なお、上記実施の形態3、4(図4、図5)では、気象エコーの分布状況に時間変化がない(または、少ない)という条件下でクラッタを除去することが可能であるが、パルス繰り返し周波数PRF1、PRF2を用いた場合に計測可能なドップラ速度V1、V2の上限は大きくなるものの限界が存在するので、突風などの強風により気象エコー分布に大きな時間変化が生じた場合には、ドップラ0分布R1、R2を正確に捉えることが困難となる。
そこで、あらかじめ観測データから観測領域内の概算的なドップラ速度を算出し、ドップラ速度の概算値が所定値よりも高い場合には、前述の実施の形態3、4(図4、図5)ではドップラ0分布R1、R2が正確に求まらないので、前述の実施の形態1、2(図1、図3)を使用し、ドップラ速度の概算値が所定値以下の場合には、図4、図5の構成を使用することが望ましい。
この場合、図示しないが、観測データ格納手段の前段側に、観測データから観測領域中のドップラ速度の概算値を算出するドップラ速度概算値算出手段と、ドップラ速度の概算値と所定値との比較結果に応じた観測データを生成する観測データ切換手段と、を追加挿入すればよい。
すなわち、観測データ切換手段は、ドップラ速度の概算値が所定値よりも高い場合には、前回の時刻t1で取得した観測データDt1と、現在の時刻t2で取得した観測データDt2とを生成し、ドップラ速度の概算値が所定値以下の場合には、パルス繰り返し周波数PRF1で取得した観測データDf1と、パルス繰り返し周波数PRF2で取得した観測データDf2とを生成することになる。
これにより、観測データの取得状況に応じて、最適な処理を行うことができる。
また、ドップラ速度V1(または、V2)の概算値と所定値との比較に基づく上記場合分け処理は、所定の1単位観測(1仰角または複数仰角の繰り返し周波数PRF)ごとに行うのではなく、特定の方位角に対してのみ行うことが望ましい。
実施の形態6.
なお、上記実施の形態1、2(図1〜図3)では、前回の時刻t1と現在の時刻t2とにおけるドップラ0分布R1、R2の形状が異なることを利用して補正エコー分布Rcを作成したが、各時刻t1、t2の間隔が小さい場合や、風の変化が小さい場合には、気象エコーであっても、ドップラ0分布R1、R2の形状差は小さくなる。
しかし、ドップラ0分布R1、R2の間に少しでも領域差が存在する場合には、差のある領域を気象エコーとし、この領域に連結するドップラ0分布も気象エコーと考えることができる。
したがって、或る補正エコー分布Rcに連結するために、補正エコー分布Rcに含まれていないドップラ0分布R1、R2を、補正エコー分布Rcに含めることが望ましい。
この発明の実施の形態6においては、ドップラ0分布R1またはR2が、或る補正エコー分布に連結する補正エコー分布に含まれない場合には、そのドップラ0分布を、補正エコー分布に含めるようにする。
これにより、気象エコー分布の形状変化が小さい場合であっても、正確に補正エコー分布Rcを求めることができる。
1a、1b、1A、1B 観測データ格納手段、2a、2b、2A、2B ドップラ速度算出手段、3a、3b、3A、3B ドップラ0分布作成手段、4 補正エコー分布作成手段、5、5a、5b、5A、5B クラッタ除去手段、6 エコー補償手段、Dc 補償観測データ、Df1、Df2、Dt1、Dt2 観測データ、PRF1、PRF2 パルス繰り返し周波数、R1、R2 ドップラ0分布、Rc 補正エコー分布、Re クラッタ分布(地形エコー分布)、t1、t2 時刻、V1、V2 ドップラ速度。

Claims (9)

  1. 前回の時刻で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    現在の時刻で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データから第1のドップラ速度を算出する第1のドップラ速度算出手段と、
    前記第2の観測データから第2のドップラ速度を算出する第2のドップラ速度算出手段と、
    前記第1のドップラ速度から第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記第2のドップラ速度から第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成するクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備えたレーダ信号処理装置。
  2. 前回の時刻で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    現在の時刻で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第1の観測データを生成する第1のクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成する第2のクラッタ除去手段と、
    前記クラッタ除去後の第1の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記クラッタ除去後の第2の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備えたレーダ信号処理装置。
  3. 第1のパルス繰り返し周波数で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    前記第1のパルス繰り返し周波数とは異なる第2のパルス繰り返し周波数で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データから第1のドップラ速度を算出する第1のドップラ速度算出手段と、
    前記第2の観測データから第2のドップラ速度を算出する第2のドップラ速度算出手段と、
    前記第1のドップラ速度から第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記第2のドップラ速度から第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成するクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備えたレーダ信号処理装置。
  4. 第1のパルス繰り返し周波数で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    前記第1のパルス繰り返し周波数とは異なる第2のパルス繰り返し周波数で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第1の観測データを生成する第1のクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成する第2のクラッタ除去手段と、
    前記クラッタ除去後の第1の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記クラッタ除去後の第2の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備えたレーダ信号処理装置。
  5. 観測データから観測領域中のドップラ速度の概算値を算出するドップラ速度概算値算出手段と、
    前記ドップラ速度の概算値と所定値との比較結果に応じた第1および第2の観測データを生成する観測データ切換手段と、
    前記第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    前記第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    第1のパルス繰り返し周波数で取得した第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    前記第1のパルス繰り返し周波数とは異なる第2のパルス繰り返し周波数で取得した第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データから第1のドップラ速度を算出する第1のドップラ速度算出手段と、
    前記第2の観測データから第2のドップラ速度を算出する第2のドップラ速度算出手段と、
    前記第1のドップラ速度から第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記第2のドップラ速度から第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成するクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備え、
    前記観測データ切換手段は、
    前記ドップラ速度の概算値が前記所定値よりも高い場合には、前回の時刻で取得した観測データを第1の観測データとし、現在の時刻で取得した観測データを第2の観測データとして生成し、
    前記ドップラ速度の概算値が前記所定値以下の場合には、第1のパルス繰り返し周波数で取得した観測データを第1の観測データとし、前記第1のパルス繰り返し周波数とは異なる第2のパルス繰り返し周波数で取得した観測データを第2の観測データとして生成することを特徴とするレーダ信号処理装置。
  6. 観測データから観測領域中のドップラ速度の概算値を算出するドップラ速度概算値算出手段と、
    前記ドップラ速度の概算値と所定値との比較結果に応じた第1および第2の観測データを生成する観測データ切換手段と、
    前記第1の観測データを格納する第1の観測データ格納手段と、
    前記第2の観測データを格納する第2の観測データ格納手段と、
    前記第1の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第1の観測データを生成する第1のクラッタ除去手段と、
    前記第2の観測データに対して通常のクラッタ除去処理を行い、クラッタ除去後の第2の観測データを生成する第2のクラッタ除去手段と、
    前記クラッタ除去後の第1の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第1のドップラ0分布を作成する第1のドップラ0分布作成手段と、
    前記クラッタ除去後の第2の観測データからエコーが除去された領域を抽出することにより、第2のドップラ0分布を作成する第2のドップラ0分布作成手段と、
    前記第1および第2のドップラ0分布から、非クラッタ領域に対応した補正エコー分布を作成する補正エコー分布作成手段と、
    前記第2の観測データと前記クラッタ除去後の第2の観測データと前記補正エコー分布とを合成して、最終的な補償観測データを取得するエコー補償手段と、
    を備え、
    前記観測データ切換手段は、
    前記ドップラ速度の概算値が前記所定値よりも高い場合には、前回の時刻で取得した観測データを第1の観測データとし、現在の時刻で取得した観測データを第2の観測データとして生成し、
    前記ドップラ速度の概算値が前記所定値以下の場合には、第1のパルス繰り返し周波数で取得した観測データを第1の観測データとし、前記第1のパルス繰り返し周波数とは異なる第2のパルス繰り返し周波数で取得した観測データを第2の観測データとして生成することを特徴とするレーダ信号処理装置。
  7. 前記ドップラ速度概算値算出手段は、所定の方位角ごとに前記ドップラ速度の概算値を算出することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のレーダ信号処理装置。
  8. 前記補正エコー分布作成手段は、前記第1のドップラ0分布と前記第2のドップラ0分布との共通部分を抽出して、クラッタ領域に対応した地形エコー分布を作成する地形エコー分布作成手段を含み、前記第2のドップラ0分布および前記地形エコー分布を合成することにより前記補正エコー分布を作成し、
    前記エコー補償手段は、前記第1および第2の観測データと前記地形エコー分布とを用い、前記地形エコー分布と前記第1または第2の観測データとの非共通部分のエコーを、前記第2または第1の観測データから抽出して、前記第1または第2の観測データに付加することにより、前記補償観測データを取得することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
  9. 前記第1または第2のドップラ0分布が、或る補正エコー分布に連結する補正エコー分布に含まれない場合には、前記第1または第2のドップラ0分布を、前記補正エコー分布に含めることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
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