JP2011104594A - 高温鋼板の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】上面冷却装置及び下面冷却装置を備え、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様な温度分布を得ることができるようにした、高温鋼板の冷却装置を提供すること。
【解決手段】上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、この複数個のスリットラミナーノズルが、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置されており、下面冷却装置は、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダと、前記下面冷却ヘッダからの冷却水を高温鋼板の板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板とを有している。
【選択図】図6
【解決手段】上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、この複数個のスリットラミナーノズルが、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置されており、下面冷却装置は、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダと、前記下面冷却ヘッダからの冷却水を高温鋼板の板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板とを有している。
【選択図】図6
Description
本発明は、例えば、仕上げ圧延機の直後に設置される厚鋼板の加速冷却装置として用いられ、熱間圧延あるいは熱処理が施されて通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板をその上下面に冷却水を供給して冷却する高温鋼板の冷却装置に関するものである。
図16は従来の一般的な、高温鋼板の冷却装置の構成を示す側面図である。同図に示すように、通板されている高温鋼板Aの上面冷却には、高温鋼板通板方向に対して所要間隔で配置されたスリットラミナーノズル101が用いられ、また、高温鋼板Aの下面冷却には、通板テーブルローラ102間に配置されたスプレーノズル103が用いられるようになっている。スリットラミナーノズル101は、高温鋼板の上方から板状(カーテン状)の冷却水を流下させて高温鋼板上面を冷却するためのものであり、平面視でそのノズル軸線方向が高温鋼板通板方向と直角になるように配置されている。なお、高温鋼板Aの上面冷却には、スリットラミナーノズルに代えて、円管ノズルを用いて柱状冷却水を流下させるパイプラミナー冷却を用いることも、一般的に行われている。
以下まず、上面冷却に関し、従来技術について説明する。
例えば、特開平10−58026号公報(特許文献1)、特開昭56−146830号公報(特許文献2)には、複数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板の板幅方向に対して分割配置され、かつ、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすように配置されている上面冷却装置が開示されている。これらの高温鋼板の上面冷却装置の目的は、高温鋼板上面の滞留水を速やかに排除し、鋼板板幅方向における均一な冷却を実現することにある。
このように、高温鋼板上面を冷却するためのスリットラミナーノズルを有し、高温鋼板を通板させながら冷却する従来の上面冷却装置における共通の課題(目的)として、(1)高温鋼板上面の水切りの改善、(2)冷却後の鋼板の板幅方向温度分布の均一化が挙げられる。
まず、前記(1)の「高温鋼板上面の水切りの改善」について説明する。
複数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板通板方向において所要間隔で配置され、かつ、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が直角をなすように配置されている冷却装置では、スリットラミナーノズルからの冷却水は、(a)高温鋼板通板方向における最上流側のスリットラミナーノズルの場合、当該スリットラミナーノズルからの冷却水量の約半分が、高温鋼板上面を通板方向に対して反対方向に流れる。また、(b)高温鋼板通板方向における最下流側のスリットラミナーノズルの場合、当該スリットラミナーノズルからの冷却水量の約半分が、高温鋼板上面を通板方向に対して同方向に流れる。
また、複数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板通板方向において所要間隔で配置され、かつ、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすように配置されている冷却装置でも、前記の直角をなすように配置されているものに比べて、通板方向における上流側あるいは下流側に流れる冷却水量は減少するものの、前記の直角をなすように配置されているものと同様の挙動を示す。
このため、前記(a),(b)のような、高温鋼板上面を流れる冷却水は、高温鋼板上面に滞留して、板面内の均一冷却や冷却停止温度の制御性に悪影響を及ぼすことから、速やかに水切りを行うことで上表面から排出する必要がある。
しかしながら、スリットラミナーノズルを用いるスリットラミナー冷却では、冷却ヘッダー1本当たり(スリットラミナーノズル1本当たり)の冷却水量が多いため、エアや水等の媒体を噴射する水切り装置で滞留水の排出を行う場合には、媒体の噴出能力を大幅に高める必要があり、コスト高を招くことになっていた。また、高温鋼板上面に水切りロールを設置することも知られているが、この場合もコスト高になる。
次に、前記(2)の「冷却後の鋼板の板幅方向温度分布の均一化」について説明する。
前記した特開平10−58026号公報と特開昭56−146830号公報には、前述したように、複数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板の板幅方向に対して分割配置され、かつ、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすように配置されている上面冷却装置が開示されている。しかしながら、前記複数個のスリットラミナーノズルは、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに干渉する配置となっている。
このため、前記上面冷却装置では、各々のスリットラミナーノズルからの冷却水は、流下して高温鋼板上面に衝突した後、相対するスリットラミナーノズルの方向に向かう流れとなり、次いでスリットラミナーノズル間の中央部で合流した後に、一方の板幅方向端部に向かう流れと、他方の板幅方向端部に向かう流れとになって、それぞれ、各板幅方向端部に向かう。なお、この両側の板幅方向端部に板幅方向の流れは、スリットラミナーノズルが1本の場合でも、水切りロールに冷却水が当たるため同様に生じるものである。
そして、この板幅方向端部への冷却水の流れは、板幅中央部から端部にかけてスリットラミナーノズルからの冷却水が合流してくるために、板幅方向端部に行くほど、流量が増すことで高温鋼板からの奪熱効果を増大させることになる。この結果、冷却装置を通過した冷却後の鋼板の板幅方向温度分布としては、板幅中央部を頂点とする山高をなす温度分布が形成されてしまう。
こうした、山高をなす板幅方向温度分布を温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布となるように改善するために、従来、スリットラミナーノズルのスリット状開口幅をノズル長手方向(ノズル軸線方向)に沿って増減させることにより、水量クラウンを付与することが知られている。
しかしながら、ノズル開口部に水量クラウンを付与したスリットラミナーノズルの場合、該スリットラミナーノズルのノズル開口部の加工に非常に高い加工精度が必要で、スリットラミナーノズルの製作に多大の手間がかかること、また、高温鋼板の板幅に応じてノズル長手方向における水量クラウンの調整が必要で、スリットラミナーノズルの使用時の管理が非常に煩雑になること、などの問題点がある。
次に、高温鋼板通板方向の冷却水量を低減させ、かつ、高温鋼板の板幅方向端部への冷却水量の増加を低減するために提案され、1本(1個)のスリットラミナーノズルを有し、このスリットラミナーノズルが平面視で高温鋼板通板方向に対してノズル軸線方向が傾斜角をなすように配置されている上面冷却装置(図14参照)の問題点について説明する。
この上面冷却装置では、単に1本のスリットラミナーノズルを前記のように斜めに配置したものであるので、板幅方向の冷却タイミングがずれること、及び、スリットラミナーノズルから流下して高温鋼板上面に衝突した後、高温鋼板上面を流れる冷却水の流動距離がノズル長手方向において異なるため、流動距離が長い側では鋼板上面の冷却水が板端部より排出されるまでに遷移沸騰冷却域が生じることから、板幅方向に傾斜した温度分布となり、板形状としてねじれが生じるという問題点がある。また、分割配置することなく、単に1本のスリットラミナーノズルを高温鋼板板幅方向全体にわたって斜めに配置したので、スリットラミナーノズルを通板方向に対して直角に配置する場合に比べて、装置長さが通板方向に長くなり、装置設置上の制約が生じるという問題点がある。
次に、下面冷却に関し、従来技術について説明する。
例えば、特開平10−263669号公報(特許文献3)には、高温鋼板下面に向けて柱状噴流冷却水を噴射する柱状噴流ノズルを用いる柱状噴流冷却を行う下面冷却装置が開示されている。また、特許3896094号公報(特許文献4)には、高温鋼板下面に向けて冷却水を噴射するスプレーノズルを用いるスプレー冷却を行う下面冷却装置が開示されている。
また、例えば、特許3089964号公報(特許文献5)、特開2002−263724号公報(特許文献6)には、高温鋼板の板幅方向端部の過冷却を抑制するため、高温鋼板の板幅方向端部の下面をマスキングする下面マスキング板を備えた冷却装置が開示されている。
このように、従来の下面冷却装置における共通の課題(目的)として、(3)下面冷却における板幅方向不均一(筋状温度分布)冷却の防止、(4)下面冷却における板幅方向端部の過冷却の抑制、が挙げられる。
前記(3)の「下面冷却における板幅方向不均一(筋状温度分布)冷却の防止」について説明する。前記のパイプラミナー冷却を下面冷却に適用した場合、配管ピッチ(冷却ヘッダに配列された円管ノズル間の間隔距離)、水量などが適切でないと、高温鋼板下面に直接冷却水が衝突することにより抜熱される温度低下の大きい部位と冷却水が直接衝突しない温度低下の小さい部位が生じるため、高温鋼板通板方向に沿う筋状の不均一冷却となることがある。種々の板厚において目標とする冷却速度と冷却停止温度を確保できるように通板冷却を行なう中で、パイプラミナー冷却では、全ての条件で前記の筋状の不均一冷却を回避することは現実的には困難である。一方、スプレー冷却では、板幅方向に広がりを持ち、かつ隣り合う冷却水が重なり、補完し合うように配置されることにより、板幅方向端部を除く板幅方向での均一冷却が実現可能である。
前記(4)の「下面冷却における板幅方向端部の過冷却の抑制」について説明する。熱間圧延では圧延前の加熱工程から圧延後の冷却工程に到達するまでに不可避的に生じる板幅方向端部の過冷却部は、冷却中の高温鋼板の上面の冷却水が板幅方向端部から排出されることに伴って維持、拡大される。その結果、材質不均一や冷却後形状不良などの不具合が生じて問題となっている。下面冷却において高温鋼板の板幅方向端部の過冷却を抑制するための手段としては、マスキング板を用いること(前記の特許3089964号公報,特開2002−263724号公報)や、スプレー冷却において板幅方向における冷却水の水量分布制御を行うことなどが提案されている。
しかしながら、前記スプレー冷却では、前述のように板幅方向端部を除く板幅方向では均一冷却が実現できるものの、板幅方向端部ではスプレーノズルによる冷却水は板幅方向に広がりを持って噴射されるため、マスキング板と鋼板下面との間に冷却水が流れ込み、マスキング板による十分な冷却水遮蔽効果が得られにくいという問題がある。また、もうひとつの板幅方向端部の過冷却防止策である前記水量分布制御については、板幅に応じて各スプレーノズルの水量調整が必要となるなど、冷却ヘッダの施工や使用する際の問題が多い。
そこで、本発明の課題は、通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板を、その上下面に冷却水を供給して冷却するに際し、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができるようにした、高温鋼板の冷却装置を提供することにある。
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
請求項1の発明は、通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板を、高温鋼板上面に冷却水を供給する上面冷却装置と高温鋼板下面に冷却水を供給する下面冷却装置とによって冷却する高温鋼板の冷却装置において、前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、この複数個のスリットラミナーノズルが、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置されており、前記下面冷却装置は、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダを有しており、隣り合う噴射口からの柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に干渉することにより高温鋼板下面に一様な水膜を形成すべく、f(q、D、h):柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に該下面に沿い流れる距離であって、噴射口1個当たりの柱状噴流冷却水量qと、噴射口1個の開口面積Dと、噴射口先端から高温鋼板下面までの距離hとの関数で定められる値、P:隣り合う噴射口の間隔距離とすると、「P/2≦f(q、D、h)」の関係を満たして前記各噴射口が配置されており、また、前記下面冷却装置は、高温鋼板の下方に設けられ、高温鋼板の板幅方向端部の下面をマスキングして、前記下面冷却ヘッダからの冷却水を高温鋼板の板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板を有していることを特徴とする高温鋼板の冷却装置である。
請求項2の発明は、請求項1記載の高温鋼板の冷却装置において、前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された4以上の偶数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板板幅方向において一列に配置され、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなして配置され、高温鋼板板幅方向における中央部を境とする半数のスリットラミナーノズルの各ノズル軸線の延長線と残りの半数のスリットラミナーノズルの各ノズル軸線の延長線とがこれらの4以上の偶数個のスリットラミナーノズルの鋼板通板方向上流側で交差するように配置されており、かつ、これらの4以上の偶数個のスリットラミナーノズルが、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が鋼板通板方向における上流側では互いに非干渉となるように配置されており、さらに、θ:平面視で高温鋼板通板方向とノズル軸線方向とのなす傾斜角、f(Q、B):スリットラミナーノズルで高温鋼板上面に形成される膜沸騰冷却域長さであって、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量Qとスリットラミナーノズルのノズル開口面積Bとの関数で定められる値、W:高温鋼板の幅、とすると、「cosθ×f(Q、B)≧W/2」の関係を満足することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1記載の高温鋼板の冷却装置において、前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルが高温鋼板板幅方向において並列状に複数列配置されており、前記複数列における隣り合う列のうち一方の列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなし、かつ、当該列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されており、前記隣り合う列のうち他方の列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で、高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすとともに、その各ノズル軸線の延長線と前記一方の列の各ノズル軸線の延長線とが前記一方の列と当該他方の列との間で交差し、かつ、当該列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されており、さらに、前記一方の列の各スリットラミナーノズルと前記他方の列の各スリットラミナーノズルとが、高温鋼板通板方向から見たとき、前記一方の列のスリットラミナーノズルと該スリットラミナーノズルに隣り合う前記他方の列のスリットラミナーノズルとの間に隙間が生じないように配置されており、またさらに、各列を形成する個々のスリットラミナーノズルについて、θ:平面視で高温鋼板通板方向とノズル軸線方向とのなす傾斜角、f(Q、B):当該スリットラミナーノズルで高温鋼板上面に形成される膜沸騰冷却域長さであって、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量Qとスリットラミナーノズルのノズル開口面積Bとの関数で定められる値、W:高温鋼板の幅、とすると、「cosθ×f(Q、B)≧W」の関係を満足することを特徴とするものである。
本発明の高温鋼板の冷却装置は、その上面冷却装置が、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、これら複数個のスリットラミナーノズルが、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置されている。
これにより、高温鋼板の上面冷却において、各スリットラミナーノズルからの冷却水は、それぞれ、平面視で高温鋼板上面を通板方向に対して斜めの方向に流れることとなり、当該スリットラミナーノズルより少なくとも高温鋼板通板方向上流側では、通板方向におけるいずれの位置においても板幅方向に向う水量が一様となり、この一様な水量の冷却水によって冷却がなされるので、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
また、本発明の高温鋼板の冷却装置は、その下面冷却装置が、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダを有しており、これらの各噴射口が、隣り合う噴射口からの柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に干渉することにより高温鋼板下面に一様な水膜を形成するように配置されている。また、この下面冷却装置が、前記下面冷却ヘッダからの冷却水を高温鋼板の板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板を有している。
これにより、高温鋼板の下面冷却において、板幅方向端部を除く板幅方向部位には一様な水膜を形成することができ、かつ、上面冷却では鋼板上の冷却水の板幅方向板端からの排出のために実現できないところの、板幅方向端部の冷却水遮断領域を制御して板幅方向端部の過冷却を抑制することができるので、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
このように、本発明の高温鋼板の冷却装置は、前記上面冷却装置及び前記下面冷却装置を備えているので、通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板を、その上下面に冷却水を供給して冷却するに際し、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
以下、本発明について、本発明に至る発明者らの着想(考え方)を説明しながら、さらに詳しく説明する。
まず、本発明の冷却装置における上面冷却について、以下に説明する。
上面冷却に関し、前述したところの、「高温鋼板上面の水切りの改善」と「冷却後の鋼板の板幅方向温度分布の均一化」という課題は、スリットラミナーノズルからの冷却水が高温鋼板上面を高温鋼板の通板方向に平行に流れること、かつ、各スリットラミナーノズルからの高温鋼板上面を流れる冷却水が干渉することに起因している。
そこで、この課題解決のため、本発明の冷却装置に備えられた上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、これら複数個のスリットラミナーノズルを、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置している。
熱間圧延あるいは熱処理が施された高温鋼板の冷却については、周知のように、高温側から、膜沸騰冷却域、遷移沸騰冷却域、核沸騰冷却域の3つに分けられる。均一冷却のための冷却技術上の課題は、わずかな温度低下に伴い、冷却能の小さい膜沸騰冷却域から冷却能の大きい核沸騰冷却域に急激に移行して不均一冷却を引き起こす遷移沸騰冷却域の回避にある。したがって、本発明者らは、高温鋼板の冷却が対象である本発明では、膜沸騰冷却域において高温鋼板上面を流れる冷却水を高温鋼板上面から排出することができれば、均一冷却が実現できると考えた。
なお、前記遷移沸騰冷却域については、各スリットラミナーノズルより通板方向上流側において特に問題となるが、通板方向下流側では、核沸騰冷却域まで急冷却されてしまい、遷移沸騰冷却域が生じにくいため、比較的均一な冷却の実現が可能である。当然ながら、通板方向下流側においても、各スリットラミナーノズルからの冷却水が互いに干渉することがなく、冷却水の滞留や、板幅方向の水量増加に伴う板幅方向の山高をなす温度分布を回避できることが均一冷却には望ましいことは言うまでもない。
本発明による冷却装置の上面冷却装置では、スリットラミナーノズルを平面視で高温鋼板通板方向に対してノズル軸線方向が傾斜角をなすように配置し、いわゆる「斜めスリットラミナー冷却」を行っている。
前述したように、1本のスリットラミナーノズルを用いて斜めスリットラミナー冷却を行うと、板形状としてねじれが生じる。このねじれが生じる原因である鋼板の板幅方向の傾斜した温度分布は、板幅方向の冷却タイミングがずれること、及び、スリットラミナーノズルからの高温鋼板上面を流れる冷却水の流動距離がノズル長手方向において異なるため、流動距離が長い側では鋼板上面の冷却水が板端部より排出されるまでに遷移沸騰冷却域が生じることに起因していると考えられる。
したがって、本発明者らは、斜めに配置された前記1本のスリットラミナーノズルは、ねじれが生じない程度の冷却タイミングのずれですむように高温鋼板板幅方向に対して分割する必要があると考え、本発明による冷却装置の上面冷却装置では、板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有している。
また、本発明者らは、前述した、スリットラミナーノズルからの高温鋼板上面を流れる冷却水の流動距離が最も長い場合に遷移沸騰冷却域が生じることに対しては、スリットラミナーノズルからの冷却水が流動しなければならない距離に上限を設定し、高温鋼板上面に遷移沸騰冷却域が生じないようにする必要があると考えた。
すなわち、スリットラミナーノズルの傾斜角θが小さいほど、あるいは冷却水量Qが大きいほど、膜沸騰冷却域長さの板幅方向投影距離Lが長くなり、高温鋼板上面を流れる冷却水が板幅方向板端から排出されやすくなることから、スリットラミナーノズルの傾斜角θと、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量との組合せについて、制約を設ける必要があると考えた。
図7は本発明における上面冷却に係る「膜沸騰冷却域長さの板幅方向投影距離」を説明するための平面図である。
図7において、θはスリットラミナーノズルのノズル軸線と高温鋼板の通板方向とのなす傾斜角である。スリットラミナーノズルによって形成される膜沸騰冷却域長さf(Q、B)は、スリットラミナーノズルによる冷却水量Qと、スリットラミナーノズルのノズル開口面積B(B=スリット状開口幅D×スリット状開口長さS)とで定められる(図8参照)。
スリットラミナーノズルによる冷却水は、膜沸騰冷却域長さf(Q、B)が冷却水最大流動距離より短い場合、高温鋼板上面に滞留することとなる。この滞留を防ぐためには、膜沸騰冷却域長さf(Q、B)の高温鋼板板幅方向への投影距離L(L=cosθ×f(Q、B))が高温鋼板板幅W以上となるように条件を設定する必要がある。すなわち、「cosθ×f(Q、B)≧W」という式(1)の関係を満たすよう設定すればよい(後述の図6)。
なお、後述する図2に示すように、全てのスリットラミナーノズルの傾斜角θの値が同一な場合において、高温鋼板の板幅方向中央部を境として、半数のスリットラミナーノズルの各ノズル軸線の延長線と、残りの半数の各ノズル軸線の延長線とが、これらのスリットラミナーノズルの鋼板通板方向上流側で交差するように配置される場合は、前記の膜沸騰冷却域長さの板幅方向投影距離LがW/2以上となるように設定すればよい。すなわち、「cosθ×f(Q、B)≧W/2」という式(2)の関係を満たすよう設定すればよい。
このように、発明者らは、スリットラミナーノズルからの冷却水を高温鋼板上面に滞留させることなく高温鋼板上から排出し、均一な板幅方向温度分布を確保するためには、スリットラミナーノズルの傾斜角θ、冷却水量Q及びノズル開口面積Bを適切に設定することが不可欠と考えたのである。
そこで、まず、スリットラミナーノズル1本(1個)当たりの冷却水量Qと膜沸騰冷却域長さf(Q、B)の関係を定量化することを検討した。その結果、膜沸騰冷却域長さf(Q、B)は、冷却水量Qとノズル開口面積Bとの商(Q/B)の2次関数で表せることを見出した(図8参照)。なお、関数の形自体は本発明を制約するものではない。この膜沸騰冷却域長さf(Q、B)とスリットラミナーノズルの傾斜角θとから算出される値である、前記膜沸騰冷却域長さの板幅方向投影距離Lが、前述したように、前記の式(1)、あるいは式(2)を満たすように設定すれば、少なくとも鋼板通板方向における上流側では高温鋼板上に遷移沸騰冷却域を生じさせないようにすることができる。
本発明による冷却装置の上面冷却装置では、板幅方向に対して分割配置されるスリットラミナーノズルの個数(分割数)n:3個以上、スリットラミナーノズルの傾斜角θ:20〜60°、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量Q×n:5m3 /min以上、スリットラミナーノズルのノズル開口面積B:0.02m2 以上、Q/B:80m/min以上、が好ましい。
図8はスリットラミナーノズルの単位ノズル開口面積当たりの冷却水量と膜沸騰冷却域長さとの関係の一例を示すグラフである。
図8に示すように、膜沸騰冷却域長さf(Q、B)[単位:m]は、冷却水量Q[単位:m3 /min]とノズル開口面積B[単位:m2]との商(Q/B)の2次関数で表せることがわかり、「f(Q、B)=0.000378×(Q/B)2+0.005907×(Q/B)」という関係式(式(3))を得た。
なお、膜沸騰冷却域長さの測定は、次の手順で行った。1)小型冷却実験装置および実機冷却装置の機側にメジャーを設置して冷却を開始する。2)冷却中の高温鋼板上面上の冷却水の挙動を目視観察し、おおよそ冷却水が滞留している位置を見極めた上で、メジャーが視野に入るように機側から冷却状況をビデオ撮影する。3)記録したビデオ撮影画像から冷却水の滞留位置をメジャーに基づき読み取って記録する。
また、本発明による冷却装置の上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルが高温鋼板板幅方向において並列状に複数列配列されているものでは、例えば、並列状に第1列と第2列との二列に配置されているものでは、以下のイ)及びロ)ように構成してある(図6参照)。
イ)まず、隣り合う前記二列のうち高温鋼板通板方向上流側に位置する第1列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなし、かつ、当該第1列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されている。また、前記第1列の高温鋼板通板方向下流側に位置する第2列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で、高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすとともに、その各ノズル軸線の延長線と前記第1列の各ノズル軸線の延長線とが互いに相対するもの同士において前記第1列と当該第2列との間で交差し、かつ、当該第2列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されている。
このように、隣り合う第1列と第2列との各スリットラミナーノズルが、平面視で、第1列の各ノズル軸線の延長線と第2列の各ノズル軸線の延長線とが互いに相対するもの同士において第1列と第2列との間で交差するように配置されている。したがって、前記各スリットラミナーノズルからの冷却水のうち高温鋼板上面において第1列と2列との間で衝突した冷却水は、高温鋼板板幅方向のベクトルを持つ水流となるので、高温鋼板上面に滞留せずに板幅方向板端から排出されることとなる。
ロ)ところで、高温鋼板板幅方向に対してスリットラミナーノズルを分割配置した場合、高温鋼板通板方向から見て隣り合うスリットラミナーノズル間に隙間が生じるもの(図2参照)では、それによって冷却水の隙間が生じるため該隙間が大きいものでは冷却後に筋状の「温度むら」が生じることがある。
そこで、本発明による冷却装置(請求項3に係る冷却装置)の上面冷却装置では、前記第1列の各スリットラミナーノズルと前記第2列の各スリットラミナーノズルとが、高温鋼板通板方向から見たとき、第1列のスリットラミナーノズルと該スリットラミナーノズルに隣り合う第2列のスリットラミナーノズルとの間に隙間が生じないように配置されている(図6参照)。したがって、前記の「筋状の温度むら」を抑制することができる。
次に、本発明の冷却装置における下面冷却について、以下に説明する。
本発明による冷却装置の下面冷却装置は、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダを有しており、柱状噴流冷却水による柱状噴流冷却を採用している。
さて、下面冷却に関し、前述した「下面冷却における板幅方向不均一(筋状温度分布)冷却の防止」という課題は、各噴出口(各ノズル口)噴射された柱状噴流冷却水が、高温鋼板下面に衝突後に重力の働きで落下することにより、高温鋼板下面に衝突してから該下面に沿い流れる領域が断続的になることに起因している。このため、この課題の解決には高温鋼板下面に一様な水膜を形成させるために、隣り合う噴射口からの柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に干渉するような間隔距離で各噴出口を配置することが必要になる。
そこで、各噴出口に関して、柱状噴流冷却水量が多いほど、噴出口の開口面積が小さいほど、あるいは噴射口先端から高温鋼板下面までの距離が短いほど、高温鋼板下面に衝突する柱状噴流冷却水の圧力は大きくなることから、衝突後に高温鋼板下面を沿い流れる柱状噴流冷却水の距離は大きくなり、適正な隣り合う噴射口の間隔距離Pは大きくできるものと考えた。すなわち、各噴出口に関して、隣り合う噴射口の間隔距離は、柱状噴流冷却水量、噴出口の開口面積及び噴射口先端から高温鋼板下面まで距離による制約を設けるものと考えた。
図9は本発明の冷却装置における下面冷却を説明するための図である。
図9からわかるように、柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に該下面に沿い流れる距離(単に「鋼板下面沿い流れ距離」ともいう)f(q、D、h)は、噴射口1個当たりについての、柱状噴流冷却水量q、噴射口開口面積D、及び噴射口先端から高温鋼板下面までの距離(単に、「噴射口鋼板下面間距離」ともいう)hにより定まり、隣り合う噴射口の間隔距離をPとすると、P/2≦f(q、D、h)の場合に、高温鋼板下面を均一冷却できる水膜が一様に形成されることとなる。
そこで、高温鋼板下面に柱状噴流冷却水による水膜を一様に形成するため、前記の柱状噴流冷却水量q、前記の噴射口開口面積D及び前記の噴射口鋼板下面間距離hを適切に設定すべく、これらの関係を定量化することを検討した。その結果、鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)は、後述する式(4)のように、柱状噴流冷却水量qと噴射口開口面積Dの商(q/D)の2次関数と噴射口鋼板下面間距離hの1次関数との和にて表せることを見出した。なお、関数の形自体は本発明を制約するものではない。本発明による冷却装置の下面冷却装置では、柱状噴流冷却水量q:0.5m3/hr以上、噴射口開口面積D:0.00001m2以上、噴射口鋼板下面間距離h:0.02〜0.5m、が好ましい。
図10は、噴射口鋼板下面間距離hをパラメータとしたときの、鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)と、柱状噴流冷却水量qと噴射口開口面積Dの商(q/D)との関係の一例を示すグラフである。また、図11は、噴射口1当たりの、柱状噴流冷却水量qと噴射口開口面積Dの商(q/D)をパラメータとしたときの、鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)と噴射口鋼板下面間距離hとの関係の一例を示すグラフである。
図10から、鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)[単位:m]は、柱状噴流冷却水量q[単位:m3/hr]と噴射口開口面積D[単位:m2]の商(q/D)の2次式と良い相関があり、また、図11から、噴射口鋼板下面間距離h[単位:m]の1次式と良い相関があり、式による定量化を行えることがわかる。
その結果、この例では、「f(q、D、h)=−2.308×10−10×(q/D)2+6.495×10−6×(q/D)−0.08604×h−0.01245+d/2」という関係式(式(4))を得た。ここで、dは噴射口内径(単位:m)である。この式(4)で算出される値である鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)が、隣り合う噴射口の間隔距離Pの1/2以上となるようにすれば、高温鋼板下面に一様な水膜が形成されて、筋状の不均一冷却は生じないこととなる。
なお、図10,図11のデータを得るに際し、鋼板下面沿い流れ距離の測定は、次の手順で行った。1)小型冷却実験装置および実機冷却装置の下面冷却ヘッダ上の搬送テーブルにアクリル板を設置し各条件にて噴射口から柱状噴流冷却水を噴射する。2)柱状噴流冷却水を噴射中のアクリル板上にはメジャーを設置し衝突する柱状噴流冷却水とメジャーが同一視野に入るようにビデオ撮影する。3)記録したビデオ撮影画像から鋼板下面沿い流れ距離をメジャーに基づき読み取り、記録する。
次に、「板幅方向端部の過冷却の抑制」という課題は、上面冷却における板上面の冷却水排出制御ではその対応が困難なため、下面冷却において板幅方向端部での冷却水制御によって温度低下を抑制し、板幅方向端部の過冷却を改善することが必要となる。そこで、下面マスキング板により、下面冷却ヘッダからの冷却水を板幅方向端部において遮蔽して抜熱を抑えることができれば、板幅方向温度分布は均一になるものと考えた。すなわち、下面冷却については、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダと、下面マスキング板とを併用することにより、下面マスキング板と高温鋼板下面の間に冷却水が流れ込むことなく、確実に板幅方向端部の過冷却を抑えるようにしている。
図1は本発明の第1実施形態による高温鋼板の冷却装置の構成を概略的に示す平面図である。
この第1実施形態による高温鋼板の冷却装置は、上面冷却ヘッダ10を備えて高温鋼板Aの上面に冷却水を供給する上面冷却装置と、下面冷却ヘッダ40及び下面マスキング板50を備えて高温鋼板Aの下面に冷却水を供給する下面冷却装置によって構成されている。
図1に示すように、高温鋼板Aの通板方向に沿って多数の通板テーブルローラ1が配列されており、これらの通板テーブルローラ1における通板テーブルローラ12の上方に上面冷却ヘッダ10が設けられている。また、高温鋼板Aの下方であって、この実施形態では、通板テーブルローラ11と通板テーブルローラ12の間、及び通板テーブルローラ12と通板テーブルローラ13の間には、下面冷却ヘッダ40及び斜線下面マスキング板50が設けられている(図1では、下面マスキング板50はハッチングを施してある)。
まず、図2を参照して、上面冷却装置について説明する。図2は図1における上面冷却ヘッダの構成を概略的に示す平面図である。
前記上面冷却ヘッダ10は、冷却水供給源から冷却水が供給される上面冷却ヘッダ本体10aと、この上面冷却ヘッダ本体10aの下部に取り付けられた6個のスリットラミナーノズル11〜16とを有している。これら6個のスリットラミナーノズル11〜16は、ともに、同一のスリット状開口幅及びスリット状開口長さを有している。また、上面冷却ヘッダ本体10aから6個のスリットラミナーノズル11〜16に、ともに同一の冷却水量が与えられるようになっている。
4以上の偶数個、この実施形態では、6個のスリットラミナーノズル11〜16が、高温鋼板板幅方向において一列をなして分割配置されるとともに、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向(各ノズル軸線)が同一の傾斜角θをなして配置され、かつ、高温鋼板板幅方向における中央部を境とする半数のスリットラミナーノズル11〜13の各ノズル軸線の延長線と残りの半数のスリットラミナーノズル14〜16の各ノズル軸線の延長線とがこれらのスリットラミナーノズル11〜16の鋼板通板方向上流側で交差するように配置されている。
さらに、これら6個のスリットラミナーノズル11〜16は、これらのスリットラミナーノズル11〜16による高温鋼板上を流れる冷却水が鋼板通板方向における上流側では互いに非干渉となるように配置されている。
すなわち、前記半数のスリットラミナーノズル11〜13は、それらのノズル軸線CL11〜CL13方向と直角をなす方向から見て、隣り合うスリットラミナーノズル11,12及び12,13が互いに重ならず、かつ連続するように配置されている。また、前記残りの半数のスリットラミナーノズル14〜16は、それらのノズル軸線CL14〜CL16方向と直角をなす方向から見て、隣り合うスリットラミナーノズル14,15及び15,16が互いに重ならず、かつ連続するように配置されている。
このように、この第1実施形態による冷却装置における上面冷却装置は、6個のスリットラミナーノズル11〜16が前記のように配置されるとともに、各スリットラミナーノズルについて、前記の式(2)の関係を満たすように設定されている。
これにより、高温鋼板Aの上面冷却において、各スリットラミナーノズル11〜16からの冷却水は、それぞれ、平面視で高温鋼板上面を通板方向に対して斜めの方向に流れることとなり、当該スリットラミナーノズル11〜16より少なくとも高温鋼板通板方向上流側では、通板方向におけるいずれの位置においても板幅方向に向う水量が一様となり、この一様な水量の冷却水によって冷却がなされるとともに、各スリットラミナーノズル11〜16からの高温鋼板A上面を流れる冷却水が滞留することなく確実に板幅方向板端から排出されることとなる。よって、後述する下面冷却装置による下面冷却と相俟って、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
次に、図3,図4を参照して、前記下面冷却装置について説明する。図3は図1における下面冷却ヘッダの構成を概略的に示す平面図、図4は図1における高温鋼板通板方向から見た下面冷却ヘッダ及び下面マスキング板の構成を概略的に示す正面図である。
図3に示すように、下面冷却装置の下面冷却ヘッダ40は、中空矩形状をなし、冷却水供給源から冷却水が供給される下面冷却ヘッダ本体40aと、この下面冷却ヘッダ本体40aの上面部に千鳥状配置され、高温鋼板A下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する多数の噴射口41とを有している。これらの各噴射口41は、円形をなし、ともに同一の噴射口開口面積Dを有しており、これらの各噴射口41には、ともに同一の柱状噴流冷却水量qが与えられるようになっている。これら多数の噴射口41は、高温鋼板板幅方向においてピッチ(隣り合う噴射口41の間隔距離)Pが一定値にて千鳥状配置されている(高温鋼板板幅方向が千鳥状配置)。
また、図4に示すように、下面冷却装置は、高温鋼板Aの下方に設けられ、高温鋼板Aの板幅方向端部の下面をマスキングして、前記下面冷却ヘッダ40からの冷却水を高温鋼板Aの板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板50を有している。下面マスキング板50は、高温鋼板Aの両側の板幅方向端部に対してそれぞれ設けられている。これらの各下面マスキング板50は、板幅方向へ移動自在に駆動される支持アーム51によってそれぞれ支持されている。
このように、この第1実施形態による冷却装置における下面冷却装置は、前記下面冷却ヘッダ40及び前記下面マスキング板50を有するとともに、前述した「P/2≦f(q、D、h)」の関係を満たすように設定されている。
これにより、高温鋼板Aの下面冷却において、板幅方向端部を除く板幅方向部位には一様な水膜を形成することができ、かつ、上面冷却では高温鋼板上の冷却水の板幅方向板端からの排出のために実現できないところの、板幅方向端部の冷却水遮断領域を制御して板幅方向端部の過冷却を抑制することができるので、前記上面冷却装置による上面冷却と相俟って、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
このように、この第1実施形態による高温鋼板の冷却装置は、前記上面冷却装置及び前記下面冷却装置を備えているので、通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板を、その上下面に冷却水を供給して冷却するに際し、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
次に、第2実施形態による高温鋼板の冷却装置について説明する。図5は本発明の第2実施形態による高温鋼板の冷却装置の構成を概略的に示す平面図、図6は図5における上面冷却ヘッダの構成を概略的に示す平面図である。下面冷却装置については前記第1実施形態による冷却装置での構成と同一なので、該同一部分には同一の符号を付して説明を省略し、前記第1実施形態とは異なるところの上面冷却装置について説明する。
図5に示すように、高温鋼板Aの通板方向に沿って多数の通板テーブルローラ1が配列されており、この実施形態では、これらの通板テーブルローラ1における通板テーブルローラ11の上方に第1上面冷却ヘッダ20が設けられ、通板テーブルローラ13の上方に第2上面冷却ヘッダ30が設けられている。上面冷却装置は、前記の上面冷却ヘッダ20,30を備えている。なお、この実施形態では、通板テーブルローラ11と通板テーブルローラ12の間、及び通板テーブルローラ12と通板テーブルローラ13の間には、下面冷却ヘッダ40及び斜線下面マスキング板50が設けられている。
図6に示すように、高温鋼板板幅方向において該方向に延びるようにして二つの上面冷却ヘッダ20,30が所定間隔を有して並列配置されている。高温鋼板通板方向上流側に位置する第1上面冷却ヘッダ20は、冷却水供給源から冷却水が供給されるその上面冷却ヘッダ本体20aの下部に、第1列を形成する4個のスリットラミナーノズル21〜24が高温鋼板板幅方向に対して分割配置された状態で取り付けられている。また、第1上面冷却ヘッダ20の下流側に位置する第2上面冷却ヘッダ30は、その上面冷却ヘッダ本体30の下部に第2列を形成する4個のスリットラミナーノズル31〜34が高温鋼板板幅方向に対して分割配置された状態で取り付けられている。第1列のスリットラミナーノズル21〜24と第2列のスリットラミナーノズル31〜34とは、同一のスリット状開口幅及びスリット状開口長さを有している。第1上面冷却ヘッダ20から各スリットラミナーノズル21〜24に同一の冷却水量が与えられるようになっており、該冷却水量と同一の冷却水量が、第2上面冷却ヘッダ30から各スリットラミナーノズル31〜34に与えられるようになっている。
前記の第1列のスリットラミナーノズル21〜24は、図6に示すように、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向(各ノズル軸線)が同一の傾斜角θ1をなして配置されている。また、当該第1列のみの場合、各スリットラミナーノズル21〜24による高温鋼板A上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されている。すなわち、第1列のスリットラミナーノズル21〜24は、それらのノズル軸線CL21〜CL24方向と直角をなす方向から見て、隣り合うスリットラミナーノズル21,22、22,23及び23,24が互いに重ならないように配置されている。
一方、第2列のスリットラミナーノズル31〜34は、平面視で、高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向(各ノズル軸線)が同一の傾斜角θ2をなすとともに、その各ノズル軸線CL31〜CL34の延長線と前記第1列の各ノズル軸線CL21〜CL24の延長線とが互いに相対するもの同士において前記第1列と当該第2列との間で交差するように配置されている。本実施形態では、前記傾斜角θ1と前記傾斜角θ2とは同一角度に設定されている(θ1=θ2=θ)。また、当該第2列のみの場合、各スリットラミナーノズル31〜34による高温鋼板A上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されている。すなわち、第2列のスリットラミナーノズル31〜34は、それらのノズル軸線CL31〜CL34方向と直角をなす方向から見て、隣り合うスリットラミナーノズル31,32、32,33及び33,34が互いに重ならないように配置されている。
このように、隣り合う第1列と第2列との各スリットラミナーノズル21〜24,31〜34が、平面視で、第1列の各ノズル軸線CL21〜CL24の延長線と第2列の各ノズル軸線CL31〜CL34の延長線とが互いに相対するもの同士において第1列と第2列との間で交差するように配置されている。したがって、前記各スリットラミナーノズル21〜24,31〜34からの冷却水のうち高温鋼板A上面において第1列と2列との間で衝突した冷却水は、高温鋼板板幅方向のベクトルを持つ水流となるので、高温鋼板A上面に滞留せずに板幅方向板端から排出されることとなる。
そしてさらに、図6に示すように、第1列の各スリットラミナーノズル21〜24と第2列の各スリットラミナーノズル31〜34とが、高温鋼板通板方向から見たとき、第1列のスリットラミナーノズルと該スリットラミナーノズルに隣り合う第2列のスリットラミナーノズルとの間に隙間が生じないように配置されている。したがって、高温鋼板板幅方向において冷却水の隙間を生じることがなく、板幅方向における「筋状の温度むら」を抑制することができる。
このように、この第2実施形態による冷却装置における上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置され、第1列を形成するスリットラミナーノズル21〜24と、同じく高温鋼板板幅方向に対して分割配置され、第2列を形成するスリットラミナーノズル31〜34とが、高温鋼板板幅方向において二列に前記のようにして配置されるとともに、各列を形成する個々のスリットラミナーノズルについて前記の式(1)の関係を満たすように設定されている。
これにより、高温鋼板Aの上面冷却において、各スリットラミナーノズル21〜24,31〜34からの冷却水は、それぞれ、平面視で高温鋼板上面を通板方向に対して斜めの方向に流れることとなり、当該スリットラミナーノズル31〜34より少なくとも高温鋼板通板方向上流側では、通板方向におけるいずれの位置においても板幅方向に向う水量が一様となり、この一様な水量の冷却水によって冷却がなされるとともに、各スリットラミナーノズル21〜24,31〜34からの高温鋼板A上面を流れる冷却水が滞留することなく確実に板幅方向板端から排出されることとなる。よって、前記下面冷却装置による下面冷却と相俟って、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として温度変動が少なく一様(平坦)な温度分布を得ることができる。
次に、実施例と比較例について説明する。
まず、本発明の冷却装置における上面冷却装置による効果を確かめるための試験を実施した。
板厚30mm、板幅4000mmで温度800℃の高温鋼板を、表1に示す条件で、スリットラミナーノズルを用いて400℃となるように水冷し、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布を測定した。使用したスリットラミナーノズルの長細い矩形形状をなすスリット状開口幅は10mmであり、分割配置されるスリットラミナーノズルの合計のスリット状開口長さが約4600mm程度となるようにした。なお、下面冷却については、後述の表3における比較例6(マスキング無し)の条件で行った。
スリットラミナーノズルの配置については、実施例1は前記図2に示す配置であり、実施例2は前記図6に示す配置である。
また、図14は比較例3におけるスリットラミナーノズルの配置を示す平面図、図15は比較例4におけるスリットラミナーノズルの配置を示す平面図である。同14に示すように、比較例3では、1本のスリットラミナーノズル41が傾斜角θ=45°で配置されている。また、図15に示すように、比較例4では、3本のスリットラミナーノズル51〜53は、高温鋼板Aの板幅方向に対して一列をなして分割配置されるとともに、傾斜角θ=30°にて配置され、かつ、高温鋼板上を流れる冷却水が互いに干渉する配置となっている。
なお、この試験では、エアによる水切り装置は、冷却ゾーンの上流側及び下流側の両方にそれぞれ設置されている。
試験結果を表1、表2及び図12に示す。図12は上面冷却についての実施例及び比較例における冷却後の板幅方向温度分布を示す図である。ここで、表1の「膜沸騰冷却域長さ」の欄における「測定不可」という記載は、スリットラミナーノズルからの高温鋼板上面を流れる冷却水が板幅方向板端より排出されて、冷却水の滞留が観察されなかったためである(冷却水の滞留なし)。また、表1の「cosθ×f(Q、B)」は、前記の式(3)による値である。
試験結果に示されるように、実施例1,2は、良好な結果が得られており、水切り装置に必要なエアの供給圧力を比較例2に比べて大幅に低減できており、水切り装置自体の簡素化を図れることが可能であった。また、図12からわかるように、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として一様な温度分布を得ることができた。
一方、比較例1,2では、1本のスリットラミナーノズルを平面視で高温鋼板通板方向に対してノズル軸線が直角をなすように配置してある。このため、スリットラミナーノズルからの冷却水が水切り装置によって板幅方向に強制的に排出されることで、板幅方向に向う冷却水の流量が増加し、その結果、高温鋼板の板幅方向端部付近が過冷却されることにより、一様な温度分布を得ることができず、「山高の温度分布」となってしまった(図12の比較例1参照)。
比較例3では、1本のスリットラミナーノズルを平面視で高温鋼板通板方向に対してノズル軸線が45°の傾斜角をなすように配置してある。このため、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として一様な温度分布を得ることができず、図12の比較例3に示すように、板幅方向に傾斜した温度分布となってしまった。
また、比較例4では、スリットラミナーノズル51〜53が、高温鋼板上を流れる冷却水が干渉する配置となっている。このため、隣り合うスリットラミナーノズル間で冷却水の滞留が起こり、その後、水切り装置によって高温鋼板上面の冷却水が板幅方向に強制的に排出されることで、板幅方向に向う冷却水の流量が増加する。その結果、高温鋼板の板幅方向端部付近が過冷却されることにより、板幅方向温度分布として「山高の温度分布」となってしまった(図12の比較例4参照)。
次に、本発明の冷却装置における下面冷却装置による効果を確かめるための試験を実施した。
板厚30mm、板幅4000mmで温度800℃の高温鋼板を、表3に示す条件で、400℃となるように水冷し、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布を測定した。使用した下面冷却ヘッダは、噴出口内径15mm又は20mmであり、長さ4600mmである。また、表3においてマスキング有りの場合は、マスキング幅(片側)250mmで、高温鋼板の両側の板幅方向端部をマスキングした。なお、上面冷却については、前記表1における実施例1の条件で行った。
試験結果を表3及び図13に示す。図13は下面冷却についての実施例及び比較例における冷却後の板幅方向温度分布を示す図である。ここで、表3での鋼板下面沿い流れ距離f(q、D、h)は、前記の式(4)による値である。
試験結果に示されるように、実施例3〜5は、良好な結果が得られており、冷却後の鋼板の板幅方向温度分布として一様な温度分布を得ることができた(図13の実施例3参照)。一方、比較例5,6は、板幅方向端部に過冷却域を持つ山高な温度分布となった(図13の比較例5,6参照)。
1,11,12,13…通板テーブルローラ
10…上面冷却ヘッダ 10a…上面冷却ヘッダ本体
11〜16…スリットラミナーノズル
20…第1上面冷却ヘッダ 20a…上面冷却ヘッダ本体
21〜24…スリットラミナーノズル
30…第2上面冷却ヘッダ 30a…上面冷却ヘッダ本体
31〜34…スリットラミナーノズル
40…下面冷却ヘッダ、
40a…下面冷却ヘッダ本体、
41…噴射口
50…下面マスキング板
51…支持アーム
10…上面冷却ヘッダ 10a…上面冷却ヘッダ本体
11〜16…スリットラミナーノズル
20…第1上面冷却ヘッダ 20a…上面冷却ヘッダ本体
21〜24…スリットラミナーノズル
30…第2上面冷却ヘッダ 30a…上面冷却ヘッダ本体
31〜34…スリットラミナーノズル
40…下面冷却ヘッダ、
40a…下面冷却ヘッダ本体、
41…噴射口
50…下面マスキング板
51…支持アーム
Claims (3)
- 通板テーブルローラ上を通板されている高温鋼板を、高温鋼板上面に冷却水を供給する上面冷却装置と高温鋼板下面に冷却水を供給する下面冷却装置とによって冷却する高温鋼板の冷却装置において、
前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルを有し、この複数個のスリットラミナーノズルが、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が傾斜角をなし、かつ、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が高温鋼板通板方向における少なくとも上流側では互いに非干渉となるように配置されており、
前記下面冷却装置は、高温鋼板下面に向けて垂直上向きに柱状噴流冷却水を噴射する千鳥状配置の多数の噴射口を有する下面冷却ヘッダを有しており、隣り合う噴射口からの柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に干渉することにより高温鋼板下面に一様な水膜を形成すべく、f(q、D、h):柱状噴流冷却水が高温鋼板下面に衝突後に該下面に沿い流れる距離であって、噴射口1個当たりの柱状噴流冷却水量qと、噴射口1個の開口面積Dと、噴射口先端から高温鋼板下面までの距離hとの関数で定められる値、P:隣り合う噴射口の間隔距離とすると、「P/2≦f(q、D、h)」の関係を満たして前記各噴射口が配置されており、
また、前記下面冷却装置は、高温鋼板の下方に設けられ、高温鋼板の板幅方向端部の下面をマスキングして、前記下面冷却ヘッダからの冷却水を高温鋼板の板幅方向端部において遮蔽する下面マスキング板を有していることを特徴とする高温鋼板の冷却装置。 - 前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された4以上の偶数個のスリットラミナーノズルが、高温鋼板板幅方向において一列に配置され、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなして配置され、高温鋼板板幅方向における中央部を境とする半数のスリットラミナーノズルの各ノズル軸線の延長線と残りの半数のスリットラミナーノズルの各ノズル軸線の延長線とがこれらの4以上の偶数個のスリットラミナーノズルの鋼板通板方向上流側で交差するように配置されており、
かつ、これらの4以上の偶数個のスリットラミナーノズルが、これらのスリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が鋼板通板方向における上流側では互いに非干渉となるように配置されており、
さらに、θ:平面視で高温鋼板通板方向とノズル軸線方向とのなす傾斜角、f(Q、B):スリットラミナーノズルで高温鋼板上面に形成される膜沸騰冷却域長さであって、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量Qとスリットラミナーノズルのノズル開口面積Bとの関数で定められる値、W:高温鋼板の幅、とすると、「cosθ×f(Q、B)≧W/2」の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の高温鋼板の冷却装置。 - 前記上面冷却装置は、高温鋼板板幅方向に対して分割配置された複数個のスリットラミナーノズルが高温鋼板板幅方向において並列状に複数列配置されており、
前記複数列における隣り合う列のうち一方の列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなし、かつ、当該列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されており、
前記隣り合う列のうち他方の列の複数個のスリットラミナーノズルは、平面視で、高温鋼板通板方向に対して各ノズル軸線方向が同一の傾斜角をなすとともに、その各ノズル軸線の延長線と前記一方の列の各ノズル軸線の延長線とが前記一方の列と当該他方の列との間で交差し、かつ、当該列のみの場合、各スリットラミナーノズルによる高温鋼板上を流れる冷却水が互いに非干渉となるように配置されており、
さらに、前記一方の列の各スリットラミナーノズルと前記他方の列の各スリットラミナーノズルとが、高温鋼板通板方向から見たとき、前記一方の列のスリットラミナーノズルと該スリットラミナーノズルに隣り合う前記他方の列のスリットラミナーノズルとの間に隙間が生じないように配置されており、
またさらに、各列を形成する個々のスリットラミナーノズルについて、θ:平面視で高温鋼板通板方向とノズル軸線方向とのなす傾斜角、f(Q、B):当該スリットラミナーノズルで高温鋼板上面に形成される膜沸騰冷却域長さであって、スリットラミナーノズル1本当たりの冷却水量Qとスリットラミナーノズルのノズル開口面積Bとの関数で定められる値、W:高温鋼板の幅、とすると、「cosθ×f(Q、B)≧W」の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の高温鋼板の冷却装置。
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