JP2011103834A - コラーゲン合成活性の日内変動測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のコラーゲン合成活性の日内変動測定方法は、コラーゲンをコードする遺伝子のプロモーター領域と該プロモーター領域の下流に配され発光酵素をコードする遺伝子とを有する組み換えベクターを作製する組み換えベクター作製工程と、前記ベクターを宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得る形質転換細胞作製工程と、前記形質転換細胞を前記発光酵素の基質の存在下で培養する培養工程と、前記培養工程中に発光強度を測定する発光強度測定工程とを実施することを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
本実施形態のコラーゲン合成活性の日内変動測定方法は、コラーゲンをコードする遺伝子のプロモーター領域と該プロモーター領域の下流に配され発光酵素をコードする遺伝子とを有する組み換えベクターを作製する組み換えベクター作製工程と、前記組み換えベクターを宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得る形質転換細胞作製工程と、前記形質転換細胞を前記発光酵素の基質の存在下で培養する培養工程と、前記培養工程中に発光強度を測定する発光強度測定工程とを実施するものである。
また、前記組み換えベクター作製工程では、発光酵素の細胞内半減期を短くする目的で、発光酵素のC末端に分解促進シグナルであるPEST配列(プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニンに富む配列)が融合するように遺伝子を挿入し、組み換えベクターを作製することができる。
前記組み換えベクター作製工程では、I型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子のプロモーター領域として、配列番号1に記載の塩基配列(参考文献 Human Collagen Krox Up-regulates Type I Collagen Expression in Normal and Scleroderma Fibroblasts through Interaction with Sp1 and Sp3 Transcription Factors,Magdalini Kypriotouら,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 282, NO. 44, pp. 32000-32014, November 2, 2007)を有している遺伝子を採用することが好ましく、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子を採用することがより好ましい。斯かる配列を用いることにより、より確実にコラーゲン合成活性の日内変動を測定できるという利点がある。
該長鎖DNA合成法では、合成オリゴヌクレオチド(DNAオリゴマー)プライマーを使用してDNAを合成する。プライマーの対は、プライマーの各々の3’末端に約10〜12bpの相補鎖またはオーバーラップをもつように合成され、お互いのプライマーを鋳型としてDNA合成を行う。プライマーの全長は、通常40〜100mer程度である。
該長鎖DNA合成法では、設計された塩基配列をもとにして、例えば約90塩基ごとにプライマーとしてのDNAオリゴマーを設計し、合成する。DNAオリゴマーの合成は、例えば、β-シアノエチルホスホアミダイド法によりDNA合成機を用いて行うことができる。
該長鎖DNA合成法では、まず、設計した塩基配列の中央部付近から5’側約40残基上流までの配列を用いて第1のDNAオリゴマー設計し、合成する。次に、この第1のDNAオリゴマーの3’側約10残基の配列を含み、この部分より遺伝子の3’下流側に40残基程度の長さの相補鎖オリゴマーを合成し、これを第2のDNAオリゴマーとする。また、第1のDNAオリゴマーの5’側約10残基を含み、この部分より遺伝子の5’上流側に40残基程度の長さの相補鎖オリゴマーを合成し、これを第3のDNAオリゴマーとする。さらに、第2のDNAオリゴマーの5’側(遺伝子側からみると3’側)の約10残基の配列を含み、この部分より遺伝子の3’下流側に第2のDNAオリゴマーの相補鎖を合成し、これを第4のDNAオリゴマーとする。以下同様に第5、第6のDNAオリゴマーを合成する。プロモーター領域の全部の領域をカバーできない場合は、カバーできるまでさらにDNAオリゴマーを合成する。
続いて、これらDNAオリゴマーを順番にPCR反応により結合する。詳しくは、まず、第1及び第2のDNAオリゴマーをプライマーとして用いてPCR反応を行う。次に、このPCR産物を鋳型として、第3、第4のDNAオリゴマーをプライマーとして用いてPCR反応を行う。PCR反応は、具体的には例えば、変性温度90℃程度で1分、アニール温度50℃程度で1分、伸長温度70℃程度で2分を1セットとして5サイクル反応させた後、変性温度90℃程度で1分、アニール温度60℃程度で1分、伸長温度70℃程度で2分を1セットして20サイクル反応を行うことができる。反応に使用するDNAポリメラーゼは塩基の取り込みエラー率の低い酵素を使用することが好ましい。以下、この操作を繰り返し、塩基配列を伸長し、目的の塩基配列(プロモーター領域)を得る。
具体的には、前記培養工程では、例えば、前記形質転換細胞を前記発光酵素としてのルシフェラーゼの基質であるルシフェリンの存在下で培養する。
前記発光酵素の基質は、培養中に形質転換細胞へ容易に浸透するものであり、発光酵素により発光物質になり得るものである。
なお、産生されるルシフェラーゼが非分泌型ルシフェラーゼであれば、培養された形質転換細胞内で酵素反応が起きていると考えられ、主に形質転換細胞から発光が生じる。
具体的には、前記発光強度測定工程では、例えば、恒温に保てる培養設備及び光検出器を装備したリアルタイムレポーターアッセイ用発光測定装置(実施例に記載)を用いて、発光強度を測定することができる。この場合、培養に用いるディッシュ自体の発光強度を測定し、各測定値からこの測定値を差し引くことにより、測定結果を補正することができる。
また、前記発光強度測定工程では、分泌型の発光酵素をコードする遺伝子を用いた場合、形質転換細胞の培養物又は培養上清と基質との混合物を、ルミノメーターを用いた発光測定に供し、相対発光強度(RLU)によりコラーゲン合成活性を測定することができる。
また、前記発光強度測定工程では、分泌型の発光酵素をコードする遺伝子を用いた場合、コラーゲン合成活性の測定値を補正して標準化すべく、培養液又は培養上清の濁度(例えば600nmにおける吸光度)を測定し、相対発光強度を濁度で除することによって補正した値(RLU/OD)を、コラーゲン合成活性値にすることができる。
また、前記発光強度測定工程では、相対発光強度を標準化すべく、形質転換細胞に含まれるATP量を測定し、この測定値で相対発光強度を除する方法を採用することができる。
また、前記発光強度測定工程では、基質や発光スペクトルが異なるなど、発光を区別できる複数の発光酵素を発現させて、一方の発光酵素由来の発光強度で他方の発光強度を除することにより、発光強度を補正することができる。
ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼ(非分泌型ルシフェラーゼ)をコードする遺伝子をあらかじめ含むルシフェラーゼ発光ベクター[商品名「pEluc(PEST)-test」(東洋紡社製 #ELV-201)PEST配列付加済]にヒトI型コラーゲンα1鎖遺伝子プロモーター領域(hCOL1a1 配列番号1)を挿入した組み換えベクターを作製し、組み換えベクター作製工程を実施した。
詳しくは、組み換えベクター作製工程では、一般的に行われているPCRを用いた長鎖DNA合成法(上述)によって2本鎖DNA(hCOL1a1)を人工的に合成した。より詳しくは、合成する遺伝子配列を40bpずつ区切ったDNAオリゴマーを、相補鎖(逆鎖)が正鎖のDNAオリゴマーを橋渡しするように合成した。PCR反応を用いて各DNAオリゴマーから2本鎖DNAを合成した。
また、下記のプライマー:
5'- ctcgagttggggaaatttggagaaggag -3' (primer1)
3'- gtctagaccctagacatgtagatcgaattc -5' (primer2)
及び下記の試薬等を用いて下記のPCR条件により該2本鎖DNAを増幅しPCR産物を得た。試薬濃度、操作の詳細は次の通りである。
5×PrimeSTAR Buffer(Mg2+ plus)(タカラバイオ社製)を終濃度1×、
dNTP Mixture(2.5 mM each)を終濃度200μM、
各プライマーを終濃度0.25μM、
鋳型遺伝子を200ng程度、
「PrimeSTAR HS DNA Polymerase」(タカラバイオ社製)1.25U、
これらを滅菌蒸留水で50μlになるように反応液を調製、
このようにして調製した反応液を用いて、98°C10秒、55°C15秒、72°C3分の条件でPCRを行った。また、この3段階の各工程を30サイクルおこなった。
斯かる反応後のPCR反応液を「Mighty TA-cloning Kit for PrimeSTAR」(タカラバイオ社製 6029)を用いて、プロトコールどおりに精製し、PCR産物にdA付加反応を行い、これを「T-Vector pMD19simple」(タカラバイオ社製 #3271)にTAクローニングを行った。
具体的には、PCR反応液を Micropure-EZのフィルターカップに移し、12,000〜15,000rpmで30秒〜1分間遠心した。その後、濾液9μl、dATP 0.5μl、A-overhang enzyme0.5μをマイクロチューブ内で混和して調製し、65℃で10分間反応した。
斯かる反応後の産物1μlと、「T-Vector pMD19simple」(タカラバイオ社製 #3271)1μlと、滅菌蒸留水3μlとを混合した。これに、Ligation Mighty Mixを5μl加え、穏やかに混合した後、16℃で30分間インキュベートして、TAクローニングを行い、常法に従い、シークエンス解析をおこなった。その結果、配列が正しいことを確認した。そして、人工的に合成した2本鎖DNAを上記「pEluc(PEST)-test」のマルチクローニングサイトに対して、制限酵素5’Xhol、制限酵素3’EcoRI、及びリガーゼ(T4 DNA Ligase)を用いて挿入した。
次に、Minimum Esssential Medium-alpha(GIBCO社製 12571)に牛胎仔血清を加え10%の牛胎仔血清を含有するように調製した培地(以下、「10%牛胎仔血清含有MEM-alpha培地」という)でヒト正常線維芽細胞NHDF(理化学研究所 バイオリソースセンター製 RCB0222)を前培養し、このヒト正常線維芽細胞に、組み換えベクター作製工程で作製したベクターをトランスフェクションし、形質転換細胞作製工程を実施した。なお、トランスフェクションは、リポフェクション法により行った。具体的には、トランスフェクション試薬「FuGENE6」(Roche社製 #11 815 091 001)を用いて、Minimum Esssential Medium-alpha 97μlに「FuGENE6」を3μl添加し、5分間静置後、プラスミド1μgを添加し、さらに20分静置した。この全量を35mmディッシュに添加し、16時間以上培養した。
続いて、0.1μM濃度となるようにデキサメタゾンを10%牛胎仔血清含有MEM-alpha培地に加えて2時間反応した後、0.1mM濃度となるようにD-ルシフェリン(東洋紡社製 #MRL-101)をさらに培地に添加して、リアルタイムレポーターアッセイ用発光測定装置「Kronos Dio」(アトー社製 #AB-2550)中で培養をおこない、培養工程を実施した。培養条件は、5%の二酸化炭素を含む環境下で37℃に設定した。
培養工程を実施している間、リアルタイムレポーターアッセイ用発光測定装置「Kronos Dio」(アトー社製 #AB-2550)を用いて培養中の発光強度を測定し、発光強度測定工程を実施した。発光強度の測定は、経時的に(測定間隔10分間、測定時間1分間)おこなった。また、培養に用いるディッシュ自体の発光強度を測定し、各測定値からこの測定値を差し引くことにより、測定結果を補正した。
結果を図1に示す。なお、図1における縦軸は、発光量の前後12時間の移動平均を各発光量から引いたDetrend bioluminescenceを示し、横軸は、デキサメタゾン添加からの経過時間を示す。
概日リズム(体内時計)をつかさどるヒト時計遺伝子の1つであるhBMAL1のプロモーター領域を、ルシフェラーゼ発光ベクター[商品名「pEluc(PEST)-test」(東洋紡社製 #ELV-201)]に挿入した組み換えベクターを作製した点以外は、実施例1と同様にして測定した。その結果を図2に示す。
また、図1から、培養細胞のコラーゲン合成活性には、図2におけるhBMAL1遺伝子の発現と同様に、約24時間周期の発現リズム(概日リズム)があることが認識できる。
また、図1を図2と比較することによって、コラーゲンを合成する遺伝子にも、時計遺伝子と同様な約24時間周期の発現リズム(概日リズム)があることが確認できる。詳しくは、コラーゲンを合成する遺伝子は、夜に活性化するとされているhBMAL1遺伝子とは反対の活性化リズムを有していることが、図1及び図2から認識できる。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして測定をおこなった。
培地にデキサメタゾンを添加しなかった点以外は、実施例1と同様にして測定をおこなった。
培地にデキサメタゾンを添加しなかった点、0.25重量%となるように下記の加水分解酵母エキスを培地に添加した点以外は、実施例1と同様にして測定をおこなった。
「加水分解酵母抽出エキス」
サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母100gを3重量%塩酸1Lに懸濁させ、温度50℃にて5時間、撹拌しながら加水分解処理を行った。加水分解処理終了後、アルカリを用いて中和し、遠心分離してろ過することにより、加水分解酵母抽出エキスを得た。このエキスの固形分は7.5重量%であった。
一方、被験物質を添加しなかった場合(実施例3)には、デキサメタゾンを添加した場合(実施例2)のような約24時間周期の発現リズム(概日リズム)が認識できなかった。
Claims (3)
- コラーゲンをコードする遺伝子のプロモーター領域と該プロモーター領域の下流に配され発光酵素をコードする遺伝子とを有する組み換えベクターを作製する組み換えベクター作製工程と、前記組み換えベクターを宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得る形質転換細胞作製工程と、前記形質転換細胞を前記発光酵素の基質の存在下で培養する培養工程と、前記培養工程中に発光強度を測定する発光強度測定工程とを実施することを特徴とするコラーゲン合成活性の日内変動測定方法。
- 前記組み換えベクター作製工程では、コラーゲンをコードする遺伝子のプロモーター領域としてI型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子のプロモーター領域を用いる請求項1記載のコラーゲン合成活性の日内変動測定方法。
- 前記組み換えベクター作製工程では、I型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子のプロモーター領域として配列番号:1に記載の塩基配列を有する遺伝子を用いる請求項2記載のコラーゲン合成活性の日内変動測定方法。
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