JP2011103738A - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents

モータ制御装置および車両用操舵装置 Download PDF

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Abstract

【課題】回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】回転角推定部29によって演算されるロータ50の推定回転角θと、舵角センサ4によって検出されるステアリングホイール10の検出操舵角θとに基づいて推定操舵トルクTを演算する操舵トルク推定部64が備えられている。センサ故障検出部61によってトルクセンサ1の故障が検出されていない場合には、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTと、トルクセンサ1から出力され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた検出操舵トルクTとの偏差に応じて加算角αが演算される。一方、トルクセンサ1の故障が検出されている場合には、指示操舵トルクTと、操舵トルク推定部64によって演算される推定操舵トルクTとの偏差に応じて加算角αが演算される。
【選択図】図1

Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置に関する。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、一般的には、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。しかし、レゾルバは、高価であり、配線数が多く、また、設置スペースも大きい。そのため、ブラシレスモータを備えた装置のコスト削減および小型化が阻害されるという課題がある。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、磁極の位相を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開平10-243699号公報 特開2000-355281号公報 特開2006-143151号公報 特開2002-200952号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置その他の車両用操舵装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、制御上の回転角である制御角(θ)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(31〜33,34A,34B,35,36A,36B)と、前記制御角に加算すべき加算角(α)を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、前記モータによって駆動される駆動対象(2,8〜10)に加えられる、モータトルク以外のトルク(T)を検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に作用させるべき指示トルク(T:モータトルク以外のトルクの指示値)を設定する指示トルク設定手段(21)と、前記モータによって駆動される駆動対象の回転角を検出する回転角検出手段(4)と、前記モータの誘起電圧に基づいて、前記ロータの回転角を推定する回転角推定手段(28,29)と、前記回転角検出手段によって検出される前記駆動対象の回転角と、前記回転角推定手段によって推定される前記ロータの回転角とに基づいて、前記モータトルク以外のトルクを推定するトルク推定手段(64)とを含み、前記加算角演算手段は、前記トルク検出手段が故障していないときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、前記トルク検出手段によって検出される検出トルクとの偏差に基づいて加算角を演算し、前記トルク検出手段が故障しているときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、前記トルク推定手段によって推定される推定トルクとの偏差に基づいて加算角を演算するものである、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。 さらに、この発明では、駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクがトルク検出手段によって検出される。また、駆動対象に作用させるべき指示トルクが指示トルク設定手段によって設定される。また、駆動対象の回転角が回転角検出手段によって検出される。また、ロータの回転角が回転角推定手段によって推定される。さらに、回転角検出手段によって検出される駆動対象の回転角(以下、「駆動対象の検出回転角」という)と、回転角推定手段によって推定されるロータの回転角(以下、「推定ロータ回転角」という)とに基づいて、モータトルク以外のトルクが、トルク推定手段によって推定される。
加算角演算手段は、前記トルク検出手段が故障していないときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、前記トルク検出手段によって検出される検出トルクとの偏差に基づいて加算角を演算する。この場合、加算角演算手段は、たとえば、検出トルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。モータトルクは、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量である負荷角に対応する。負荷角は、制御角とロータ角との差で表される。モータトルクの制御は、負荷角を調整することによって達成され、この負荷角の調整が加算角を制御することによって達成される。
一方、トルク検出手段が故障しているときには、加算角演算手段は、指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、トルク推定手段によって推定される推定トルクとの偏差に基づいて加算角を演算する。この場合、加算角演算手段は、たとえば、推定トルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。したがって、トルク検出手段が故障しているときにおいても、モータトルク制御を正常に行なうことができるようになる。
モータの誘起電圧が小さい場合、すなわち、モータの回転速度が小さいときには、回転角推定手段によるロータ回転角の推定精度が低下するおそれがある。そこで、前記モータ制御装置は、モータの誘起電圧が所定のしきい値より小さいか否かを判別する判別手段(62)と、モータの誘起電圧が所定のしきい値より小さいと判別されたときに、当該誘起電圧が前記しきい値より小さくなる前に前記回転角推定手段によって推定されたロータ回転角を前回推定値として固定する固定手段(63)とを含み、前記トルク推定手段は、モータの誘起電圧が所定のしきい値より小さいと判別されたときに、前記固定手段によって前回推定値として固定されたロータ回転角と、前記回転角検出手段によって検出された前記駆動対象の回転角とに基づいて、モータトルク以外のトルクを推定する手段(64,図10のステップS30)を含むものであってもよい。また、前記モータ制御装置は、モータの誘起電圧が所定のしきい値より小さいと判別されたときに、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクを所定値に固定する指示トルク変更手段(66)をさらに含んでいてもよい。所定値は、たとえば、零に設定される。
請求項2記載の発明は、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するモータと、前記モータを制御する請求項1記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置である。この発明によれば、トルク検出手段が故障しているときにおいても、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するモータのトルク制御を正常に行なうことができるようになる。
前記モータ制御装置は、前記加算角を所定の制限値(ωmax)で制限する加算角制限手段をさらに含んでいてもよい。加算角に適切な制限を加えることによって、実際のロータの回転に比して過大な加算角が制御角に加算されることを抑制できる。これにより、適切にモータを制御することができる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた値であってもよい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
制限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
前記モータは、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するものであってもよい。この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するものであってもよい。また、前記回転角検出手段は、操作部材の回転角を検出するものであってもよい。また、前記トルク推定手段は、操作部材に加えられる操舵トルクを推定するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記トルク検出手段が故障していないときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される検出操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算し、前記トルク検出手段が故障しているときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク推定手段によって推定される推定トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(トルク検出手段が故障していないときには検出値が用いられ、トルク検出手段が故障しているときには推定値が用いられる)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 操舵トルクリミッタの働きを説明するための図である。 γ軸指示電流値の設定例を示す図である。 加算角リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 加算角ガードの働きを説明するためのフローチャートである。 加算角ガードの働きを説明するためのフローチャートである。 誘起電圧推定部および回転角推定部の構成を説明するためのブロック図である。 センサ故障検出部、誘起電圧監視部、前回値保持部、操舵トルク推定部、切替スイッチおよび指示操舵トルク変更部によって実行される加算角演算モードの切換処理を示すフローチャートである。 この発明の他の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 センサ故障検出部と指示電圧値変更部によって実行される指示電圧制御処理の手順を示すフローチャートである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
ステアリングホイール10と舵取り機構2とを連結するステアリング軸8には、ステアリングホイール10に加えられた操舵トルクの方向および大きさに応じてねじれを生じるトーションバー9が組み込まれている。トルクセンサ1としては、たとえば、トーションバー9の捩れを検出することにより、操舵トルクTを検出するものが用いられる。 モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θに従う実回転座標系である。このロータ角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θが導入される。制御角θは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θがロータ角θに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θを用いて行うことができる。
制御角θとロータ角θとの差を負荷角θ(=θ−θ)と定義する。
制御角θに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iとの間に、次式(1)の関係が成立する。
=Iγ・sinθ …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流I,I,I(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、制御角演算部26と、誘起電圧推定部28と、回転角推定部29と、ロータ角変位演算部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、トルク偏差監視部40と、加算角ガード41と、センサ故障検出部61と、誘起電圧監視部62と、前回値保持部63と、操舵トルク推定部64と、切替スイッチ65と、指示操舵トルク変更部66とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクTを設定する。たとえば、図4に示すように、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクTが設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクTの設定が行われる。また、指示操舵トルクTは、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の出力を所定の上限飽和値+Tmax(+Tmax>0。たとえば+Tmax=7Nm)と下限飽和値−Tmax(−Tmax<0。たとえば−Tmax=−7Nm)との間に制限する。具体的には、操舵トルクリミッタ20は、図5に示すように、上限飽和値+Tmaxと下限飽和値−Tmaxの間では、トルクセンサ1の検出操舵トルクTをそのまま出力する。また、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが上限飽和値+Tmax以上であれば、上限飽和値+Tmaxを出力する。そして、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが下限飽和値−Tmax以下であれば、下限飽和値−Tmaxを出力する。飽和値+Tmaxおよび−Tmaxは、トルクセンサ1の出力信号が安定な領域(信頼性のある領域)の境界を画定するものである。つまり、トルクセンサ1の出力信号は、上限飽和値Tmaxを超える区間、および下限飽和値−Tmaxを下回る区間では不安定であり、実際の操舵トルクに対応しなくなる。換言すれば、飽和値+Tmax,−Tmaxは、トルクセンサ1の出力特性に応じて定められる。
トルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた操舵トルクを「検出操舵トルクT」ということにする。検出操舵トルクTは、切替スイッチ65の一方の入力端子に入力される。この切替スイッチ65の他方の入力端子には、操舵トルク推定部64によって推定される操舵トルク(以下、「推定操舵トルクT」という)が入力される。操舵トルク推定部64は、舵角センサ4によって検出されるステアリングホイール10の操舵角θと、回転角推定部29によって推定されるロータ50の回転角θとに基づいて、推定操舵トルクを演算するものである。切替スイッチ65は、後述するように、トルクセンサ1の故障が検出されていないときには、検出操舵トルクTを選択してトルク偏差演算部22に出力する。一方、トルクセンサ1の故障が検出されたときには、切替スイッチ65は、推定操舵トルクTを選択してトルク偏差演算部22に出力する。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTと、切替スイッチ65から出力される検出操舵トルクTまたは推定操舵トルクT(以下、これらを総称するときには「検出操舵トルクT」という)との偏差(トルク偏差)ΔT(=T−T)を求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θに対する加算角αを演算する。したがって、前記トルクフィードバック制御手段は、加算角αを演算する加算角演算手段を構成している。
より具体的には、PI制御部23は、比例要素23aと、積分要素23bと、加算器23cとを備えている。ただし、Kは比例ゲイン、Kは積分ゲイン、1/sは積分演算子である。比例要素23aによって比例積分演算の比例項(比例演算値)が求められ、積分要素23bによって比例積分演算の積分項(積分演算値)が求められる。これらの演算結果(比例項および積分項)が加算器23cで加算されることによって、加算角αが求められる。
加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える加算角制限手段である。より具体的には、加算角リミッタ24は、所定の上限値UL(正の値)と下限値LL(負の値)との間の値に加算角αを制限する。上限値ULおよび下限値LLは、所定の制限値ωmax(ωmax>0。たとえばωmax=45度)に基づいて定められる。この所定の制限値ωmaxは、たとえば、最大操舵角速度に基づいて定められる。最大操舵角速度とは、ステアリングホイール10の操舵角速度として想定され得る最大値であり、たとえば、800deg/sec程度である。
最大操舵角速度のときのロータ50の電気角の変化速度(電気角での角速度。最大ロータ角速度)は、次式(2)のとおり、最大操舵角速度と、減速機構7の減速比と、ロータ50の極対数との積で与えられる。極対数とは、ロータ50が有する磁極対(N極とS極との対)の個数である。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
ロータ角変化量最大値=最大ロータ角速度×演算周期
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxとすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
UL=+ωmax …(4)
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θの前回値θ(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
制御角演算部26は、制御角θの前回値θ(n-1)に加算角リミッタ24から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θを演算する。そして、前演算周期における制御角θを前回値θ(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θである今回値θ(n)を求める。
誘起電圧推定部28は、モータ3の回転によって生じる誘起電圧を推定するものである。そして、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θを演算するものである。誘起電圧推定部28および回転角推定部29の具体例については、後述する。
ロータ角変位演算部30は、演算周期間の推定回転角θの変化量を求めることによって、演算周期当たりのロータ50の角変位Δθ(回転角速度に相当する値)を求める。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ およびδ軸指示電流値Iδ (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ 」という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、切替スイッチ65から出力される検出操舵トルクT(検出操舵トルクTまたは推定操舵トルクT)に基づいてγ軸指示電流値Iγ を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ の設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
電流偏差演算部32は、指示電流値生成部31によって生成されるγ軸指示電流値Iγ に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ −Iγと、δ軸指示電流値Iδ (=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ −Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、αβ/γδ変換部36Bから偏差演算部32に与えられるようになっている。
UVW/αβ変換部36Aは、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流I、V相検出電流IおよびW相検出電流I)を二相固定座標系であるαβ座標系の二相検出電流IαおよびIβ(以下総称するときには「二相検出電流Iαβ」という。)に変換する。αβ座標系は、図2に示すように、ロータ50の回転中心を原点として、ロータ50の回転平面内にα軸およびこれに直交するβ軸(図2の例ではU軸と同軸)を定めた固定座標系である。αβ/γδ変換部36Bは、二相検出電流Iαβをγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部32に与えられるようになっている。αβ/γδ変換部36Bにおける座標変換には、制御角演算部26で演算される制御角θが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部32によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成する。この二相指示電圧Vγδ が、γδ/αβ変換部34Aに与えられる。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ に変換する。この座標変換には、制御角演算部26で演算された制御角θが用いられる。二相指示電圧Vαβ は、α軸指示電圧Vα およびβ軸指示電圧Vβ からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW を生成する。三相指示電圧VUVW は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V からなる。この三相指示電圧VUVW は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51、52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部31によって設定される二相指示電流値Iγδ に近づくように制御される。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視することにより、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係を判定する。その判定結果は、加算角ガード41に与えられるようになっている。
加算角ガード41は、PI制御部23が生成する加算角αに対して加算角ガード処理を施すためのものである。加算角ガード処理とは、PI制御部23によって生成された加算角αが、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係と矛盾する場合に、この矛盾を解消するように加算角αを補正する処理である。より具体的には、加算角ガード41は、必要時において、ロータ角変位演算部30によって求められるロータ角変位Δθに基づいて加算角αを補正する。
操舵トルク推定部64および切替スイッチ65の詳細な動作、ならびにセンサ故障検出部61、誘起電圧監視部62、前回値保持部63および指示操舵トルク変更部66の機能については、後述する。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角ガード41および加算角リミッタ24の機能は省略してある。
指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(Kは比例係数、Kは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に対して加算されることによって、制御角θの今回値θ(n)=θ(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θとロータ50の実際のロータ角θとの偏差が負荷角θ=θ−θとなる。
したがって、制御角θに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流I=Iγsinθとなる。このq軸電流Iがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数Kをq軸電流I(=Iγsinθ)に乗じた値が、アシストトルクT(=K・Iγsinθ)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTを舵取り機構2からの負荷トルクTから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θを更新していくことにより、負荷角θが変化し、この負荷角θに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクTに応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このようにして、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現できる。これにより、構成を簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
この実施形態では、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される。具体的には、q軸電流I=Iγsinθであるから、−90°≦θ≦90°となるように、加算角αが制御される。むろん、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αを制御することもできる。この場合、90°≦θ≦270°となるように、加算角αが制御される。PI制御部23のゲインを正にすれば正の相関領域での制御となり、PI制御部23のゲインを負にすれば負の相関領域での制御となる。
図7は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められ、加算角ガート゛41によって補正された加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められ、加算角ガート゛41によって補正された加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS1:NO)、加算角リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS3)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS3:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS4)。したがって、制御角θに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められ、加算角ガート゛41によって補正された加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS3:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図8Aは、加算角ガード処理を説明するためのフローチャートである。ただし、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される場合の処理例が示されている。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいとき(ステップS11:YES)、加算角ガード41は、PI制御部23によって求められた加算角αが、ロータ角変位演算部30によって求められた演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも所定の変化制限値A(A>0。たとえばA=7deg)だけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいとき(ステップS11:NO。ステップS16:YES)、加算角ガード41は、PI制御部23によって求められた加算角αがロータ角変位Δθよりも大きいかどうかを判断する(ステップS17)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入し(ステップS13)、加算角αをロータ角変位Δθに補正する。加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば(ステップS17:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも前記変化制限値Aだけ小さな値(Δθ−A)と比較する(ステップS18)。加算角αが当該値(Δθ−A)よりも小さいときには(ステップS18:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ−A)を代入する(ステップS19)。加算角αが当該値(Δθ−A)以上であれば(ステップS18:NO)、加算角αの補正は行われない。
また、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに等しいとき(ステップS11およびステップS16の判断がいずれも否定)、加算角αの補正は行われない。
加算角αは、演算周期間の制御角θの変化量であり、γδ座標軸の演算周期当たりの角変位(回転速度に相当する。)に等しい。よって、加算角αが演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも大きければ負荷角θが大きくなり、加算角αがロータ角変位Δθよりも小さければ負荷角θが小さくなる。そして、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とに正の相関がある場合には、負荷角θが大きくなればモータトルクが大きくなり、負荷角θが小さくなればモータトルクが小さくなる。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が不足している状態である。したがって、モータトルクを増加させるために、負荷角θを増加させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8AのステップS11〜S13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以上に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθ未満であれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。たとえば、PI制御部23の応答性によっては、このような状況が生じ得る。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以上の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも大きい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ大きな値)に補正してもよい。
同様に考察すると、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が過剰となっている状態である。したがって、モータトルクを減少させるために、負荷角θを減少させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8AのステップS16,S17およびS13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以下に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθを超えていれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。たとえば、PI制御部23の応答性によっては、このような状況が生じ得る。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以下の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも小さい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ小さな値)に補正してもよい。
さらにこの実施形態では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合(ステップS11:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθに変化制限値Aを加算した値よりも大きいときは(ステップS12:NO。ステップS14:YES)、加算角αをΔθ+Aに補正することとしている(ステップS15)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に大きいと、加算角αを適値に収束させるのに時間がかかるからである。また、検出トルクTが指示トルクTよりも小さい場合において、(ステップS16:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθから変化制限値Aを減算した値よりも小さいときは(ステップS17:NO。ステップS18:YES)、加算角αをΔθ−Aに補正することとしている(ステップS19)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。このような補正を行うことにより、加算角αが適値に収束しやすくなるから、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
このように、図8Aのガード処理では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいときには、Δθ+A≧α≧Δθの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいときには、Δθ≧α≧Δθ−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに応じた妥当な値をとることができる。
負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される場合の加算角ガード処理の例を図8Bに示す。図8Bにおいて、図8Aに示された各ステップと同様の処理が行われるステップには、図8A中と同一参照符号を付して示す。
図8Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとの大小関係に応じた処理が、図8Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいとき(ステップS11A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいとき(ステップS11A:NO。ステップS16A:YES)、加算角ガード41は、加算角αがロータ角変位Δθよりも大きいかどうかを判断する(ステップS17)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入し(ステップS13)、加算角αをロータ角変位Δθに補正する。加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば(ステップS17:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも前記変化制限値Aだけ小さな値(Δθ−A)と比較する(ステップS18)。加算角αが当該値(Δθ−A)よりも小さいときには(ステップS18:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ−A)を代入する(ステップS19)。加算角αが当該値(Δθ−A)以上であれば(ステップS18:NO)、加算角αの補正は行われない。
また、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに等しいとき(ステップS11AおよびステップS16Aの判断がいずれも否定)、加算角αの補正は行われない。
負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とに負の相関がある場合には、負荷角θが大きくなればモータトルクが小さくなり、負荷角θが小さくなればモータトルクが大きくなる。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が過剰な状態である。したがって、モータトルクを減少させるために、負荷角θを増加させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8BのステップS11A〜S13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以上に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθ未満であれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以上の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも大きい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ大きな値)に補正してもよい。
同様に考察すると、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が不足している状態である。したがって、モータトルクを増加させるために、負荷角θを減少させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8BのステップS16A,S17およびS13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以下に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθを超えていれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以下の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも小さい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ小さな値)に補正してもよい。
さらに図8Bの処理では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合(ステップS11A:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθに変化制限値Aを加算した値よりも大きいときは(ステップS12:NO。ステップS14:YES)、加算角αをΔθ+Aに補正することとしている(ステップS15)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に大きいと、加算角αを適値に収束させるのに時間がかかるからである。また、検出トルクTが指示トルクTよりも大きい場合において、(ステップS16A:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθから変化制限値Aを減算した値よりも小さいときは(ステップS17:NO。ステップS18:YES)、加算角αをΔθ−Aに補正することとしている(ステップS19)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。このような補正を行うことにより、加算角αが適値に収束しやすくなるから、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
このような処理が行われることによって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいときには、Δθ+A≧α≧Δθの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいときには、Δθ≧α≧Δθ−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに応じた妥当な値をとることができる。
図9は、誘起電圧推定部28および回転角推定部29の構成を説明するためのブロック図である。誘起電圧推定部28は、二相検出電流Iαβと二相指示電圧Vαβ とに基づいて、モータ3の誘起電圧を推定する。より具体的には、誘起電圧推定部28は、モータ3の数学モデルであるモータモデルに基づき、モータ3の誘起電圧を外乱として推定する外乱オブザーバとしての形態を有している。モータモデルは、たとえば、(R+pL)−1と表すことができる。ただし、Rは電機子巻線抵抗、Lはαβ軸インダクタンス、pは微分演算子である。モータ3には、二相指示電圧Vαβ と誘起電圧Eαβ(α軸誘起電圧Eαおよびβ軸誘起電圧Eβ)とが印加されると考えることができる。
誘起電圧推定部28は、二相検出電流Iαβを入力としてモータ電圧を推定する逆モータモデル(モータモデルの逆モデル)65と、この逆モータモデル65によって推定されるモータ電圧と二相指示電圧Vαβ との偏差を求める電圧偏差演算部66とで構成することができる。電圧偏差演算部66は、二相指示電圧Vαβ に対する外乱を求めることになるが、図9から明らかなとおり、この外乱は誘起電圧Eαβに相当する推定値E^αβ(α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^β(以下、まとめて「推定誘起電圧E^αβ」という。)になる。逆モータモデル65は、たとえば、R+pLで表される。
誘起電圧Eαβは、次の(6)式で表すことができる。ただし、Kは誘起電圧定数、θはロータ角、ωはロータ回転角速度である。
Figure 2011103738
したがって、推定誘起電圧E^αβが求まれば、次の(7)式に従って、推定回転角θが求まる。この演算が、回転角推定部29によって行われる。
Figure 2011103738
操舵トルク推定部64および切替スイッチ65の詳細な動作ならびにセンサ故障検出部61、誘起電圧監視部62、前回値保持部63および指示操舵トルク変更部66の機能について、説明する。
センサ故障検出部61は、トルクセンサ1の故障を検出する。具体的には、トルクセンサ1の出力信号を監視することによって、トルクセンサ1の信号線の断線、短絡、地絡などを検出する。
誘起電圧監視部62は、センサ故障検出部61によって、トルクセンサ1の故障が検出されているときに、誘起電圧推定部28によって演算される推定誘起電圧を監視する。誘起電圧が小さいときには、すなわち、モータ3の回転速度が小さいときには、回転角推定部29による回転角推定精度が低下する。そこで、誘起電圧監視部62は、誘起電圧推定部28によって演算される推定誘起電圧が所定のしきい値より小さいか否かを判別することにより、回転角推定部29によって演算される推定回転角が信頼できるものであるか否かを判定する。
前回値保持部63は、回転角推定部29によって演算される推定回転角θの前回値を保持する。具体的には、誘起電圧監視部62により、誘起電圧推定部28によって演算された推定誘起電圧が所定のしきい値以上であると判別されている場合には、前回値保持部63は、回転角推定部29によって今回演算された推定回転角を、前回値として保存するとともに、操舵トルク推定部64に与える。一方、誘起電圧監視部62により、誘起電圧推定部28によって演算された推定誘起電圧が所定のしきい値より小さいと判別されている場合には、前回値保持部63は、現在保持している推定回転角(前回値)を前回値として固定するとともに、前回値として固定した推定回転角を操舵トルク推定部64に与える。
操舵トルク推定部64は、センサ故障検出部61によって、トルクセンサ1の故障が検出されているときに、舵角センサ4によって検出されるステアリングホイール10の操舵角(以下、「検出操舵角θ」という)と、前回値保持部63を介して与えられるロータ50の推定回転角θとに基づいて、推定操舵トルクを演算する。具体的には、操舵トルク推定部64は、舵角センサ4によって検出される検出操舵角θをトーションバー9の上端側の回転角とみなすとともに、回転角推定部29によって推定される推定回転角θからトーションバー9の下端側の回転角を算出し、両回転角の差からトーションバー9の捩れに応じた操舵トルクを推定する。トーションバー9の下端側の回転角は、回転角推定部29によって推定される推定回転角θを、減速機構7の減速比Nとロータ50の極対数Pとの積N・Pで除算することにより求められる。したがって、操舵トルク推定部64は、トーションバー9のばね定数をkとすると、次式(8)に基づいて、推定操舵トルクTを演算する。
=k{(θ/N・P)−θ} …(8)
切替スイッチ65は、センサ故障検出部61によって、トルクセンサ1の故障が検出されていないときには、操舵トルクリミッタ20から入力される検出操舵トルクTをトルク偏差演算部22に与える。一方、センサ故障検出部61によってトルクセンサ1の故障が検出されているときには、操舵トルク推定部64から入力される推定操舵トルクTをトルク偏差演算部22に与える。
指示操舵トルク変更部66は、センサ故障検出部61によってトルクセンサ1の故障が検出されており、かつ、誘起電圧監視部62によって、誘起電圧推定部28によって演算される推定誘起電圧が所定のしきい値より小さいと判別されているときに、指示操舵トルク設定部21によって設定された指示操舵トルクを所定値に設定変更する。この所定値は、比較的小さい値に設定される。この実施形態では、この所定値は、0に設定される。
図10は、センサ故障検出部61、誘起電圧監視部62、前回値保持部63、操舵トルク推定部64、切替スイッチ65および指示操舵トルク変更部66によって実行される加算角演算モードの切換処理を示すフローチャートである。この処理は、演算周期毎に繰り返し実行される。
センサ故障検出部61によって、トルクセンサ1の故障が検出されていないときには(ステップS21:NO)、切替スイッチ65は、トルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた検出操舵トルクTを選択して出力するように制御される(ステップS22)。したがって、この場合には、PI制御部23は、指示操舵トルク設定部21によって設定された指示操舵トルクTと、トルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた検出操舵トルクTとの偏差に応じて、加算角αを演算する(ステップS23)。このような加算角の演算モードを、「第1演算モード」ということにする。
一方、センサ故障検出部61によって、トルクセンサ1の故障が検出されているときには、切替スイッチ65は、操舵トルク推定部64によって演算された推定操舵トルクTを選択して出力するように制御される(ステップS24)。そして、誘起電圧監視部62は、誘起電圧推定部28によって演算される推定誘起電圧E^αβが所定のしきい値Ethより小さいか否かを判別する(ステップS25)。具体的には、α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^βのうちの両方が、しきい値Ethより小さいか否かを判別する。
推定誘起電圧E^αβがしきい値Eth以上である場合、すなわち、α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^βのいずれか一方がしきい値Eth以上である場合には(ステップS25:NO)、回転角推定部29によって今回演算された推定回転角θが、前回値保持部63に前回値として保存されるとともに、操舵トルク推定部64に与えられる。これにより、操舵トルク推定部64は、回転角推定部29によって今回演算された推定回転角θと、舵角センサ4によって検出されたステアリングホイール10の検出操舵角θに基づいて、前記式(8)を用いて推定操舵トルクTを演算する(ステップS26)。
したがって、PI制御部23は、指示操舵トルク設定部21によって設定された指示操舵トルクTと、操舵トルク推定部64によって演算された推定操舵トルクTとの偏差に応じて、加算角αを演算する(ステップS27)。ただし、推定操舵トルクTは、今回演算された推定回転角θと検出操舵角θとに基づいて演算される。このような加算角の演算モードを、「第2演算モード」ということにする。
前記ステップS25において、誘起電圧監視部62によって、推定誘起電圧E^αβがしきい値Ethより小さいと判別された場合、すなわち、α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^βの両方がしきい値Ethより小さいと判別された合には(ステップS25:YES)、指示操舵トルク変更部66は、指示操舵トルク設定部21によって設定された指示操舵トルクを零に設定変更する(ステップS28)。また、前回値保持部63は、現在保持している推定回転角(前回値)θを前回値として固定するとともに、前回値として固定された推定回転角θを操舵トルク推定部64に与える(ステップS29)。つまり、この場合、操舵トルク推定部64に与えられる推定回転角θは、更新されない。これにより、操舵トルク推定部64は、前回値として固定された推定回転角θと、舵角センサ4によって検出されたステアリングホイール10の検出操舵角θに基づいて、前記式(8)を用いて推定操舵トルクTを演算する(ステップS30)。
したがって、PI制御部23は、指示操舵トルク変更部66によって零に設定変更された指示操舵トルクTと、操舵トルク推定部64によって演算された推定操舵トルクTとの偏差に応じて、加算角αを演算する(ステップS31)。ただし、推定操舵トルクT前回値として固定された推定回転角θと検出操舵角θとに基づいて演算されている。このような加算角の演算モードを、「第3演算モード」ということにする。
以上をまとめると、次のようになる。トルクセンサ1の故障が検出されていない場合には、加算角演算モードは第1演算モードとなる。したがって、指示操舵トルクTとトルクセンサ1の出力から得られる検出操舵トルクTとの偏差に応じて加算角αが演算される。
トルクセンサ1の故障が検出されている場合において、推定誘起電圧E^αβがしきい値Eth以上あるときには、加算角演算モードは第2演算モードなる。したがって、指示操舵トルクTと操舵トルク推定部64によって演算される推定操舵トルクTとの偏差に応じて加算角αが演算される。この場合、回転角推定部29によって演算される推定回転角θは、信頼性の高いものであるため、操舵トルク推定部64は、今回演算された推定回転角θと検出操舵角θとに基づいて推定操舵トルクTを演算する。
トルクセンサ1の故障が検出されている場合において、推定誘起電圧E^αβがしきい値Ethより小さいときには、すなわち、モータ3の回転速度(操舵速度)が小さいときには、加算角演算モードは第3演算モードなる。したがって、指示操舵トルクTと操舵トルク推定部64によって演算される推定操舵トルクTとの偏差に応じて加算角αが演算される。ただし、この場合には、回転角推定部29によって演算される推定回転角θは、信頼性の低いものであるため、指示操舵トルクTが小さい値(この実施形態では零)に設定変更されるとともに、推定回転角θは更新されない。つまり、操舵トルク推定部64は、推定誘起電圧E^αβがしきい値Ethより小さくなる直前に回転角推定部29によって推定されて前回値保持部63に前回値として保持された推定回転角θと、検出操舵角θとに基づいて推定操舵トルクTを演算する。
上記実施形態によれば、トルクセンサ1が故障した場合においても、操舵トルク推定部64によって操舵トルクを推定することが可能となるから、操舵トルク推定部64によって推定される操舵トルクと指示操舵トルクとに基づいて加算角αを演算することができるようになる。これにより、トルクセンサ1が故障した場合においても、モータ3のトルク制御を正常に行なえるようになる。
また、誘起電圧推定部28によって推定される推定誘起電圧がしきい値Ethより小さいときには、操舵トルク推定のために用いられる推定回転角θの推定精度が低くなり、それを用いて操舵トルクを推定した場合には、推定操舵トルクの推定精度も低くなる。この実施形態では、推定誘起電圧がしきい値Ethより小さいときには、指示操舵トルクTが小さい値(この実施形態では零)にされるとともに、操舵トルク推定のために用いられる推定回転角θが更新されないようにされる。このため、推定精度の低い操舵トルクを用いて加算角が演算されるのを回避することができる。また、このような場合には、すなわち、トルクセンサ1が故障しており、かつ操舵速度が小さいときには、操舵トルクが小さくなるように、モータトルク(アシストトルク)を制御することができるようになる。
図11は、この発明の他の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図である。この図11において、前述の図1に示された各部に対応する部分には同一参照符号を付して示す。
この実施形態では、センサ故障検出部71と、指示電圧値変更部72とが、マイクロコンピュータ11の機能処理部として備えられている。
センサ故障検出部71は、電流検出部13の故障を検出して、指示電圧値変更部72に通知する。具体的には、センサ故障検出部71は、電流検出部13の出力信号を監視し、たとえば、電流検出用抵抗のショートまたはオープンなどを検出する。
指示電圧値変更部72は、センサ故障検出部71から電流検出部13の故障が通知されると、PI制御部33から出力される二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を所定値に固定する。具体的には、γ軸指示電圧Vγ を第1の所定値に固定するとともに、δ軸指示電圧Vδ を第2の所定値に固定する。
PI制御部33は、電流検出部13によって検出される三相検出電流IUVWに対応する二相検出電流Iγδと、指示電流値生成部31によって生成される二相指示電流値Iγδ との偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成している。したがって、電流検出部13に故障が発生した場合には、そのままでは、正常なトルク制御を行なうことができないため、モータ制御を継続させることができなくなる。
そこで、この実施形態では、センサ故障検出部71によって電流検出部13の故障が検出された場合には、指示電圧値変更部72によって、二相指示電圧Vγδ を所定値に固定するようにしている。二相指示電圧Vγδ を所定値に固定した場合には、γ軸およびδ軸の電流値が変動してしまう。しかし、所定値に固定された二相指示電圧Vγδ は、制御角θを用いて三相指示電圧VUVW に変換され、この三相指示電圧VUVW に応じてモータ3が駆動され、制御角θは、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに一致するようにフィードバック制御されるため、γ軸およびδ軸の電流値変動はトルクのフィードバック制御によって吸収される。言い換えれば、γ軸およびδ軸の電流値は変動するが、検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとの偏差に応じたアシストトルクがモータ3から発生するように、制御角θが制御される。したがって、トルク制御が正常に行なわれるようになる。これにより、モータ制御を継続させることができるようになる。
図12は、センサ故障検出部71と指示電圧値変更部72によって実行される指示電圧制御処理の手順を示すフローチャートである。
センサ故障検出部71によって電流検出部13の故障が検出されていない場合には(ステップS41:NO)、指示電圧値変更部72はPI制御部33によって生成される二相指示電圧Vγδ をそのまま出力する(ステップS42)。この場合には、電流検出部13によって検出される三相検出電流IUVWに対応する二相検出電流Iγδが、指示電流値生成部31によって生成される二相指示電流値Iγδ に一致するように、電流フィードバック制御が実行される。
一方、センサ故障検出部71によって電流検出部13の故障が検出された場合には(ステップS41:YES)、指示電圧値変更部72は、二相指示電圧Vγδ を所定値に固定する(ステップS43)。具体的には、指示電圧値変更部72は、γ軸指示電圧Vγ を第1の所定値に固定するとともに、δ軸指示電圧Vδ を第2の所定値に固定する。この場合には、前記電流フィードバック制御が行なわれないため、γ軸およびδ軸の電流値は変動するが、前述したようにトルクフィードバック制御により、電流変動が吸収されるため、トルク制御は正常に行なわれる。 なお、トルクセンサ1、電流検出部13等のセンサの故障が検出されたときに、車両が高速(たとえば、60km/h以上の速度)で走行できないようにするために、車速の上限、エンジン回転速度の上限およびトランスミッションの変更のうちのいずれかを制限するようにしてもよい。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部31において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ を発生させるようにすればよい。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…トルクセンサ、3…モータ、5…モータ制御装置、11…マイクロコンピュータ、26…制御角演算部、50…ロータ、51,52,53…ステータ巻線、55…ステータ、65…切替スイッチ

Claims (2)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
    前記駆動対象に作用させるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    前記モータによって駆動される駆動対象の回転角を検出する回転角検出手段と、
    前記モータの誘起電圧に基づいて、前記ロータの回転角を推定する回転角推定手段と、
    前記回転角検出手段によって検出される前記駆動対象の回転角と、前記回転角推定手段によって推定される前記ロータの回転角とに基づいて、前記モータトルク以外のトルクを推定するトルク推定手段とを含み、
    前記加算角演算手段は、前記トルク検出手段が故障していないときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、前記トルク検出手段によって検出される検出トルクとの偏差に基づいて加算角を演算し、前記トルク検出手段が故障しているときには、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと、前記トルク推定手段によって推定される推定トルクとの偏差に基づいて加算角を演算するものである、モータ制御装置。
  2. 車両の舵取り機構に駆動力を付与するモータと、
    前記モータを制御する請求項1記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016145036A (ja) * 2013-01-29 2016-08-12 日本精工株式会社 電動パワーステアリング装置

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