本発明者らが鋭意検討したところ、懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法において、
(1)複数回、重合開始剤を添加するものであり、
(2)初回に添加する重合開始剤Aがパーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイドから選ばれるものであり、
(3)重合転化率が60.0%以上99.5%以下に達した時点で重合開始剤Bを添加するものであり、
(4)該重合開始剤Bが水溶性重合開始剤であり、
(5)該重合開始剤Aのトルエンを用いて測定した10時間半減期温度T(A)(℃)が40℃以上62℃以下であり、
(6)該重合開始剤Aを添加してから該重合開始剤Bを添加するまでの該水系媒体の温度T(JA)(℃)とT(A)が下記式1を満たすことにより、クリーニング性が非常に高いトナー粒子を得られると共に、低温定着性に有効な低分子量のトナー粒子が得られることを見出し、本発明に至った。
(式1) T(A)+25≦T(JA)≦T(A)+36
高いクリーニング性能を有するトナー粒子を得られた理由を本発明者らは以下のように考えている。
本発明によって得られるトナー粒子は表面に凹凸形状を有しており、この表面構造がクリーニング性を非常に高めることができたキー技術であると推測している。この凹凸の表面構造形成のメカニズムは現在検討中であるが、それらから推測される推定メカニズムを下記に述べる。
このメカニズムは、簡潔に述べると「トナー粒子内外からの重合反応の開始によるトナー粒子表面の歪みによる表面の形状変形」といった過程により形成したと考えている。
重合開始剤Aとしてパーオキシジカーボネートまたはジアシルパーオキサイドを用いた場合にのみ、表面に凹凸形状を有するトナー粒子を得ることができる。これらの重合開始剤は、水に対する安定性が高いと共に、停止反応により元の重合開始剤Aを生成する場合もあるため、重合工程がある程度進んだ時期でもトナー粒子内部に重合開始剤Aが多く残存しやすいという特徴がある。
重合転化率60.0%以上95.5%以下の時点で添加する重合開始剤Bは水溶性開始剤を使用した場合にのみ、凹凸を有するトナー粒子を得ることができる。懸濁重合法において、水溶性開始剤を用いると、水溶性開始剤はトナー粒子内部に浸透せず、トナー粒子表面から重合反応を誘起する。これにより、残存する重合開始剤Aによりトナー粒子内部から重合反応が進行すると同時に、重合開始剤Bにより表面近傍から重合反応が生じる。重合開始剤Bを添加した段階から凹凸の形成は起こることが分かっている。従って、トナー粒子の内外から重合反応が進行するため、トナー粒子表面に歪みが生じ、その結果、表面に凹凸を有するトナー粒子が得られたと推測している。一方、重合開始剤Bとして油溶性重合開始剤を使用した場合、表面近傍からの重合反応が十分でないため、凹凸を有するトナー粒子を得ることができず、その結果、クリーニング性を改善することは難しい。
重合開始剤Bを添加するのは重合転化率が60.0%以上99.5%以下の時点で行う必要がある。重合転化率が60.0%未満の場合は、トナー粒子内に重合性単量体が多く存在しているため、トナー表面に生じた歪みを緩和する可能性が高く、トナー粒子表面に凹凸の形成が起こらない。一方、重合転化率が95.5%より高い場合、多くの重合性単量体が結着樹脂として固定されているために、形状の変形は起こらない。また、重合転化率が100%に達するまでに何れの開始剤も添加しなかった場合、凹凸を有するトナー粒子を得ることが出来ない。このように、重合転化率60.0%以上95.5%以下の時点で水溶性重合開始剤Bを使用することで、トナー粒子表面に凹凸形状を有し、クリーニング性を大幅に改善したトナー粒子を得ることができる。
凹凸を有するトナー粒子を得るためには、重合開始剤Bを添加する時点にトナー粒子内部に重合開始剤Aがある程度残存する必要がある。残存する重合開始剤Aの量は、トルエンを用いて測定した10時間半減期温度T(A)および、T(A)と重合温度T(JA)の関係により、制御することができる。T(JA)がT(A)+36℃より高い場合、重合開始剤Aの分解速度および失活速度が高く、重合開始剤Bの添加時期に、トナー粒子内部に残存する重合開始剤Aの量が十分でないと推測され、その結果、凹凸を有するトナー粒子を得ることができない。一方、T(JA)がT(A)+25℃未満の場合、系内のラジカル濃度が低く、重合性単量体により形成した結着樹脂が比較的高分子量であるために変形が起こりにくく、トナー粒子表面の形状変化が発生せず、その結果、凹凸を有するトナー粒子を得ることができないと考えられる。
このように、T(A)および、T(A)とT(JA)の関係を適正な範囲に保つことでトナー粒子表面に形成する凹凸形状を制御できる。
従って、本発明によって製造されたトナー粒子は、粒子表面に凹凸を有し、クリーニング性を大幅に改善することが可能であると考えられる。
本発明の製造方法により得られるトナー粒子は、クリーニング性の向上に加えて、結着樹脂の重量平均分子量Mwが比較的小さいため、低温定着性も良好である。一般的に、結着樹脂の分子量分布が低分子量傾向にあるとき、低温定着性に優れることが知られている。ここで、分子量分布が低分子量傾向とは、ピーク分子量Mpおよび重量平均分子量Mwが小さいことを意味することが多い。本発明に使用される重合開始剤はパーオキシジカーボネートまたはジアシルパーオキサイドであるため、水に対する安定性が高いため、失活する可能性が低く、その結果、有効なラジカル発生量が多い。加えて、式1で示されるように、重合開始剤の半減期温度に対して比較的高い温度で重合反応が進行するために、有効なラジカル発生量が更に多くなりやすい。また、重合反応の後半においても重合開始剤が残存するため、残存する重合性単量体が高分子量体のさらなる成長に使われる可能性が低くなり、結着樹脂の重量平均分子量Mwが大きくなりにくい。即ち、本発明により得られるトナー粒子は以上の理由から、結着樹脂の重量平均分子量Mwが小さいため、低温定着性が良好となる。
ここで、ピーク分子量Mpはテトラヒドロフラン(THF)可溶分をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して得られる値を意味する。また、重量平均分子量Mwはテトラヒドロフラン(THF)可溶分をサイズ排除クロマトグラフィーオンライン−多角度光散乱(SEC−MALLS)により測定して得られる値を意味する。Mpは汎用性の点からGPCを分析装置として採用している。また、Mwは高分子量体の量を反映しやすく、高分子量体の検出に優れるSEC−MALLSを分析装置として採用している。これらの分析方法は後述する。
該重合性単量体100質量部に対して、該重合開始剤Aが1.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。トナー粒子表面に形成される凹凸の程度は、結着樹脂の分子量に影響を受けることが分かっている。具体的には、結着樹脂の分子量が低すぎる場合、生じた歪みを緩和しやすく、高すぎる場合、歪みが生じてもトナー粒子表面に凹凸が形成されにくい。重合開始剤Aの量がこの範囲に含まれる時、重合開始剤Bを添加したときの結着樹脂の分子量が適切な範囲になりやすく、トナー粒子表面を効果的に変形させることができ、その結果、さらにクリーニング性が向上したトナー粒子を提供することができる。また、1.0質量部以上の場合、結着樹脂のピーク分子量Mpおよび重量平均分子量Mwが小さくなり、低温定着性に優れ、さらにトナー性能が向上する。10.0質量部以下の場合、トナーの帯電性が良好となりやすく、画像濃度が高くなり、その結果、さらにトナー性能が向上する。
該重合性単量体100質量部に対して、該重合開始剤Bが0.2質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤Bが0.2質量部以上の場合、トナー粒子表面を効果的に変形させることができ、その結果、さらにクリーニング性が向上したトナー粒子を提供することができる。一方、重合開始剤Bが10.0質量部以下の場合、トナー表面に凹凸を形成しつつ、比較的球形のトナーを得られるため、転写性が良好なトナー粒子を提供することができる。従って、重合開始剤Bが0.2質量部以上10.0質量部以下の場合、クリーニング性がさらに良好になるとともに、転写性が良好な、さらに優れたトナー粒子を得ることができる。
トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分をサイズ排除クロマトグラフィーオンライン−多角度光散乱(SEC−MALLS)にて測定した際の重量平均分子量Mwが5000以上25000以下であり、重量平均分子量Mwと慣性二乗半径Rwが下記式2を満たすことが好ましい。
(式2) 2.0×10-3≦Rw/Mw≦1.0×10-2
Rw/Mwは結着樹脂の高分子鎖の分岐度の指標であり、完全な直鎖の高分子量体は1に近づく。結着樹脂の分岐度により、表面の凹凸形成の程度を制御することが出来る。Rw/Mwが2.0×10-3以上の時、トナー粒子表面の変形が各所で均一に進みやすく、トナー粒子間およびトナー粒子内において凹凸の程度が均一になる。その結果、さらに転写性に優れたトナー粒子を提供することができる。一方、Rw/Mwが1.0×10-2以下の時、凹凸の程度が大きくなり、さらにクリーニング性に優れたトナー粒子を提供することができる。また、Mwが5000以上25000以下の場合、トナー粒子表面の変形の程度が大きくなりやすいと共に、生じた歪みの緩和も起こりにくいため、凹凸の程度が大きくなりやすく、さらにクリーニング性に優れたトナー粒子を提供することができる。
なお、本発明において慣性二乗半径はサイズ排除クロマトグラフィ−オンライン−多角度光散乱(SEC−MALLS)にて測定を行なうが、その理由は以下の通りである。SECで測定される分子量分布は、分子サイズであり、強度はその存在量である。それに対し、SEC−MALLS(分離手段としてSECと多角度光散乱検出器を結合し、絶対分子量及び分子の大きさ(慣性自乗半径)を測定可能となる)で得られる光散乱強度はその分子サイズにより強度が増加する。但し、SEC−MALLS測定において溶出時間によりピークが存在することは、その分子量にある分子の広がり(分子サイズ)を持ったポリマーが個数分布を持って存在することを意味するものである。
従来のSEC法では、測定する分子がカラムを通過する際、分子篩い効果を受け、分子サイズの大きいものから準じ溶出し、分子量が測定される。この場合、分子量が等しい線状ポリマーと分岐ポリマーでは前者のほうが溶液中での分子サイズが大きいので早く溶出することになる。従って、SEC法で測定される分岐ポリマーの分子量は真の分子量より小さく測定される。
一方、本発明の光散乱法では測定分子のRayleigh散乱を利用した。
散乱光の強度に及ぼす光の入射角と試料濃度の依存性を測定し、Zimm法、Berry法等で解析することで線状ポリマー、分岐ポリマー全ての分子形態において真の分子量(絶対分子量)が決定できる(本発明では、SEC−MALLS測定法により絶対分子量をZimm法により算出した(後述))。これにより、トナーの分子設計を精密に行うことが可能となった。
上述の如きRw/Mwは結着樹脂の分岐度を表しており、Rw/Mwが低い場合は結着樹脂の分岐度が高く、高い場合は結着樹脂の分岐度が低く、直鎖状の高分子量体に近いことを示す。例えば本発明の製造方法においては、所望のMwおよびRw/Mwを有する結着樹脂を得るためには、重合条件および使用する重合開始剤Aの量を調整する必要がある。具体的には、重合開始剤Aによる重合反応が進行する状況において、反応温度が高いことおよび重合開始剤Aの量が多いことにより、発生するラジカル濃度が高くなり、結着樹脂の分子量が低くなる傾向にある。即ちMwを低下させることが可能である。一方、結着樹脂が分岐構造を有するために、重合中に水素引き抜き反応等を起こさせ、これにより分岐させる等の手段がある。本発明では、重合開始剤Aのトルエンを用いて測定した10時間半減期温度T(A)と重合工程における反応温度T(JA)が下記式1を満たす反応温度条件を提案している。
(式1) T(A)+25≦T(JA)≦T(A)+36
この温度領域は半減期温度に対して比較的高めの温度であるため、水素引き抜きの発生の頻度は、反応温度に影響されにくいが、使用した重合開始剤Aの量に依存する傾向にある。従って、反応温度T(JA)および重合開始剤Aの量を制御することによりMwを、重合開始剤Aの量を調整することによりMw/Rwを、それぞれ調整することが可能である。即ち、MwおよびMw/Rwを恰も独立して制御することが可能である。
本発明のトナーは、平均円形度が0.960以上であることが好ましい。トナーの平均円形度が0.960以上だとトナーの形状は球形又はこれに近い形になり、流動性に優れ均一な摩擦帯電性を得られやすい。本発明の製造方法により製造されるトナー粒子は粒子表面に凹凸を有するが、凹凸の程度は平均円形度に現れにくい。それは、凹凸の程度が平均円形度に影響を及ぼすほどの起伏を有していないからである。従って、凹凸を有することでクリーニング性が大幅に向上すると共に、高円形度による優れた均一な摩擦帯電性の両立が可能である。
本発明により製造されるトナー粒子の重量平均粒径(D4)は3.0μm以上9.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0μm以上10.0μm以下である。重量平均粒径(D4)が3.0μm以上12.0μm以下であると良好な流動性が得られ、潜像に忠実に現像することが出来る。このため、ドット再現性に優れた良好な画像を得ることが出来る。
本発明により製造されるトナー粒子は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のピーク分子量(Mp)が4000以上60000以下であることが好ましい。
ピーク分子量(Mp)が4000以上60000以下であると、定着時のトナーの可塑・変形が促進され、低温定着性が良好なものとなる。また、凹部での定着性も良好となることからオフセットも生じ難くなり、より好ましい。また、耐久後半においてもトナー劣化による濃度低下、かぶりの増大等も抑制できる。
本発明により製造されるトナー粒子は、定着性の更なる向上の為、結着樹脂100質量部に対し1質量部以上30質量部以下の離型剤を有することが好ましく、その吸熱ピークのピークトップが50℃以上90℃以下であることがより好ましい。また、添加する離型剤の添加量が、結着樹脂100質量部に対して1質量部未満では離型剤の添加効果が低くなる。一方、30質量部を超えてしまうと長期間の保存性が悪化すると共に、トナー表面への染み出し等によりトナーの帯電均一性が劣るものとなり好ましくない。
さらに添加する離型剤としては公知の離型剤を用いることができ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
本発明により製造されるトナー粒子には、帯電特性向上のために必要に応じて荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、帯電スピードが速く、且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が特に好ましい。荷電制御剤のうち、ネガ系荷電制御剤として具体的には、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体、スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
本発明の製造法において、荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、造粒前に重合性単量体組成物中に荷電制御剤を添加する方法が一般的である。また、水中で油液滴を形成し重合を行っている最中、又は重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加えることによりシード重合を行い、トナー表面を均一に覆うことも可能である。
これらの荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるものであり、一義的に限定されるものではない。しかし、トナー粒子に内部添加する場合、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲で用いられる。また、トナー粒子に外部添加する場合、トナー100質量部に対し、好ましくは0.005質量部以上1.000質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上0.30質量部以下である。
本発明により製造されるトナー粒子は、目的の色味に合わせた着色剤を含有する。本発明により製造されるトナー粒子に用いられる着色剤としては公知の有機顔料又は染料、カーボンブラック、磁性体等のいずれも用いることができる。
具体的には、シアン系着色剤として、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1,C.I.ピグメントブルー7,C.I.ピグメントブルー15,C.I.ピグメントブルー15:1,C.I.ピグメントブルー15:2,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:4,C.I.ピグメントブルー60,C.I.ピグメントブルー62,C.I.ピグメントブルー66等が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2,C.I.ピグメントレッド3,C.I.ピグメントレッド5,C.I.ピグメントレッド6,C.I.ピグメントレッド7,C.I.ピグメントバイオレット19,C.I.ピグメントレッド23,C.I.ピグメントレッド48:2,C.I.ピグメントレッド48:3,C.I.ピグメントレッド48:4,C.I.ピグメントレッド57:1,C.I.ピグメントレッド81:1,C.I.ピグメントレッド122,C.I.ピグメントレッド144,C.I.ピグメントレッド146,C.I.ピグメントレッド166,C.I.ピグメントレッド169,C.I.ピグメントレッド177,C.I.ピグメントレッド184,C.I.ピグメントレッド185,C.I.ピグメントレッド202,C.I.ピグメントレッド206,C.I.ピグメントレッド220,C.I.ピグメントレッド221,C.I.ピルメントレッド254等が挙げられる。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アントラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12,C.I.ピグメントイエロー13,C.I.ピグメントイエロー14,C.I.ピグメントイエロー15,C.I.ピグメントイエロー17,C.I.ピグメントイエロー62,C.I.ピグメントイエロー74,C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー93,C.I.ピグメントイエロー94,C.I.ピグメントイエロー95,C.I.ピグメントイエロー97,C.I.ピグメントイエロー109,C.I.ピグメントイエロー110,C.I.ピグメントイエロー111,C.I.ピグメントイエロー120,C.I.ピグメントイエロー127,C.I.ピグメントイエロー128,C.I.ピグメントイエロー129,C.I.ピグメントイエロー147,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154,C.I.ピグメントイエロー155,C.I.ピグメントイエロー168,C.I.ピグメントイエロー174,C.I.ピグメントイエロー175,C.I.ピグメントイエロー176,C.I.ピグメントイエロー180,C.I.ピグメントイエロー181,C.I.ピグメントイエロー191,C.I.ピグメントイエロー194等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独で又は2種以上を混合し、更には固溶体の状態でも用いることができる。本発明により製造されるトナー粒子に用いられる着色剤は、色相角,彩度,明度,耐光性,OHP透明性,トナー粒子への分散性の点から適宜選択される。また、着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1.0質量部以上20.0質量部以下が好ましい。
また、黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用いて黒色に調色されたものが利用される。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いた場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対し1.0質量部以上20.0質量部以下である事が好ましい。
また、本発明により製造されるトナー粒子を磁性トナーとして用いる場合、着色剤として磁性体を用いることも可能である。黒色着色剤として磁性体を用いた場合、磁性体は結着樹脂100質量部に対して20.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。磁性体の添加量が20.0質量部未満であると、定着性は良好になるもののトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、150.0質量部を超えると、定着性が悪化すると共にトナー担持体の磁力による保持力が強まって現像性が低下してしまうことがあり、好ましくない。
なお、トナー粒子中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性体量とする。
本発明において、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。そこで、着色剤は表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。特に、染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有するものが多いので使用の際に注意を要する。カーボンブラックについては、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサン等で処理を行っても良い。
本発明により製造されるトナー粒子に磁性体を用いる場合、磁性体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2.0m2/g以上30.0m2/g以下であることが好ましく、3.0m2/g以上28.0m2/g以下であることがより好ましい。
磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性体は、体積平均粒径(D3)が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。一般に、磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなり、トナー中での磁性体の均一分散性が劣り易くなる。また、体積平均粒径(D3)が0.10μm未満では磁性体自身が赤味を帯びた黒となるため、特にハーフトーン画像において赤味の目立つ画像となりやすい。一方、体積平均粒径(D3)が0.40μmより大きいとトナーの着色力が不足すると共に、本発明のトナー粒子の製造方法である懸濁重合法(後述)においては均一分散が難しくなる傾向にある。
なお、磁性体の体積平均粒径(D3)は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、体積平均粒径(D3)の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明により製造されるトナー粒子に用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7.0以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5.0以上10.0以下に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5.0未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、本発明により製造されるトナー粒子において、着色剤として磁性体を使用する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて疎水化処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤を用いて疎水化処理を行う。湿式にて疎水化処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、疎水化処理を行う。具体的には、再分散液を十分撹拌しながらカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、或いは、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することで疎水化処理を行う。この中でも、均一な疎水化処理を行うという観点から、酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリー化し、疎水化処理を行うことが好ましい。
磁性体の疎水化処理を湿式で、すなわち水系媒体中において磁性体をカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性体を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根等で撹拌する。次いで上記分散液に任意量のカップリグ剤を投入し、カップリング剤を加水分解しながら疎水化処理するが、この時も撹拌を行いつつピンミル、ラインミルなどの装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ疎水化処理を行うことがより好ましい。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調製剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、水100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。pH調整剤としては、塩酸等の無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
磁性体の疎水化処理に用いる事が出来るカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(1)で示されるものである。
RmSiYn (1)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(1)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
この中で、高い疎水性を磁性体に付与するという観点では、下記一般式(2)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 (2)
[式中、pは2から20の整数を示し、qは1から3の整数を示す。]
上記式におけるpが2より小さいと、磁性体に疎水性を十分に付与することが困難であり、またpが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性体同士の合一が多くなり好ましくない。更に、qが3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われ難くなる。よって、式中のpが2から20の整数(より好ましくは、3から15の整数)を示し、qが1から3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが好ましい。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性体100質量部に対して0.5質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明により製造されるトナー粒子において、磁性体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
本発明により製造されるトナー粒子のガラス転移温度(Tg)は40.0℃以上70.0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が40.0℃未満では保存安定性が低下すると共に、長期使用においてトナー劣化しやすく、70.0℃よりも高いと定着性が悪化する。よって、定着性と保存安定性、そして現像性のバランスを考えるとトナーのガラス転移温度は40.0℃以上70.0℃以下であることが好ましい。
本発明により製造されるトナー粒子にシェル層をつける場合、本発明の効果を損なわないために下記に説明するシェル層とすることが好ましい。
本発明により製造されるトナー粒子は保存安定性の向上、現像性の更なる向上のためにコア−シェル構造を有していることが好ましい。これは、シェル層を有することによりトナーの表面性が均一になり、流動性が向上すると共に帯電性が均一になるためである。
また、高分子量体のシェルが均一に表層を覆うため、長期保存においても低融点物質の染み出し等が生じ難く保存安定性が向上する。
このため、シェル層には非晶質の高分子量体を用いることが好ましく、帯電の安定性と言う観点から酸価は5.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることが好ましい。
シェルを形成させる具体的手法としては、コア粒子にシェル用の微粒子を埋め込んだり、水系媒体中でトナーを製造する場合はコア粒子にシェル用の微粒子を付着させ、乾燥させることによりシェル層を形成させることが可能である。
本発明により製造されるトナー粒子は、懸濁重合法においてシェル用の高分子量体の親水性を利用し、水との界面、即ち、トナー表面近傍にこれら高分子量体を偏在せしめ、シェルを形成することが可能である。さらには、所謂シード重合法によりコア粒子表面にモノマーを膨潤させ、重合することによりシェルを形成することができる。
シェル層用の高分子量体としては例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ポリエステル共重合体、ポリ(メタ)アクリレート−ポリエステル共重合体、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂等があり、これらを単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、これらポリマー中にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等の官能基を導入しても良い。
これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対し総量で1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
これらの樹脂の中でも特にポリエステルが上記効果が大きく発現され好ましい。本発明に使用されるポリエステル樹脂は、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノール誘導体などが挙げられる。
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6から18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
さらに、多価アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、多価酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂の中では、帯電特性、環境安定性が優れておりその他の電子写真特性においてバランスのとれた前記のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく使用される。この化合物の場合には、定着性やトナーの耐久性の点においてアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2.0モル以上10.0モル以下であることが好ましい。
また、シェルを形成する高分子量体の数平均分子量(Mn)は2500以上20000以下が好ましく用いられる。数平均分子量(Mn)が2500未満では現像性、耐ブロッキング性、耐久性が悪化する傾向にある。一方、数平均分子量(Mn)が20000を超えると現像性、耐久性は良化するものの低温定着性を阻害し易くなる。なお、数平均分子量(Mn)はGPCにより測定できる。
以下に懸濁重合法について述べる。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.960以上という本発明に好適な物性要件を満たすトナーが得られやすい。更にこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナー粒子の製造方法は重合開始剤を複数回添加するものである。
本発明のトナー粒子の製造方法において初回に添加される重合開始剤Aとしては、パーオキシジカーボネート系重合開始剤、ジアシルパーオキサイド系重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤Aの具体的な例としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート系重合開始剤、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系重合開始剤が挙げられる。
本発明のトナー粒子の製造法において、重合転化率60.0%以上95.5%以下の時点で添加される水溶性重合開始剤Bとしては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素が挙げられる。
本発明のトナー粒子の製造方法には架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上10.00質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物、例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物、及び3個以上のビニル基を有する化合物、が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナー粒子の製造法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。初回に添加する重合開始剤Aの添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明のトナー粒子の製造方法において、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.20質量部以上20.00質量部以下の量を用いる事が好ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、重合性単量体100質量部に対して、0.0001質量部以上0.1000質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
また、本発明においては重合開始剤Aのトルエンを用いて測定した10時間半減期温度T(A)(℃)と、重合開始剤Aを添加してから重合開始剤Bを添加するまでの水系媒体の温度T(JA)(℃)が下記式1を満たすように、温度T(JA)を反応温度とする必要がある。
(式1) T(A)+25≦T(JA)≦T(A)+36
ここで、上記水系媒体の温度T(JA)とは、実際の反応温度に相当する温度を示しており、所定の温度に昇温するなどの温度変更に伴う温度域は含まない。
上記重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、トナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
本発明により製造されるトナー粒子は、無機微粉体を必要に応じて混合して上記トナー粒子の表面に付着させることが好ましい。
無機微粉体としては個数平均1次粒径(D1)が4nm以上80nm以下、より好ましくは6nm以上40nm以下である事が好ましい。
無機微粉体の個数平均1次粒径(D1)が4nm以上80nm以下であるとトナーの流動性が優れたものとなり、均一な帯電性を得る事が出来ると共に、長期使用においても均一な画像を得る事が出来る。
無機微粉体の個数平均1次粒径(D1)の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。シリカ微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。しかし、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
本発明により製造されるトナー粒子に使用される無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である事が好ましい。無機微粉体の添加量上記範囲であると、トナーに良好は流動性を与える事が出来、定着性も阻害しないので好ましい。
なお、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明により製造されるトナー粒子において、無機微粉体は疎水化処理された物であることが、トナーの環境安定性を向上させることができるため好ましい。無機微粉体の疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記処理剤の中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時に又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものがより好ましい。このような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行いシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
本発明により製造されるトナー粒子において、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤、ケーキング防止剤、または逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤の表面を疎水化処理して用いることも可能である。
次に、本発明のトナー粒子の製造方法により得られるトナー粒子に係る各物性の測定方法に関して記載する。
(1)重合転化率の測定
サンプル瓶にトナー懸濁液約500mgを精秤し、これに精秤した約15gのアセトンを加えた後よく混合し、超音波洗浄機にて超音波を30分間照射する。その後メンブランフィルター(例えばアドバンテック東洋(株)製 ディスポーザブルメンブランフィルター 25JP020AN)を用いてろ過を行い、濾液2μLをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予めスチレン等のモノマーを用いて作成した検量線により、重合転化率を算出する。
具体的には、下記の条件により分析を行う。
GC:HP社 6890GC
カラム:HP社 INNOWax(200μm×0.40μm×25m)
キャリアーガス:He(コンスタントプレッシャーモード:20psi)
オーブン:50℃:10分ホールド、10℃/分で200℃まで昇温、200℃:5分ホールド。
INJ:200℃、パルスドスプリットレスモード(20→40psi、until0.5分)
スプリット比:5.0:1.0
DET:250℃(FID)
(2)サイズ排除クロマトグラフィーオンライン−多角度光散乱(SEC−MALLS)
トナー粒子0.03gをテトラヒドロフラン10mlに分散し溶解後、25℃で24時間振投機で振投し、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:25℃
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器1 :多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN エチレンオキサイドS
検出器2 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
[測定理論]
(LS)=(dn/dc)2×C×Mw×KLS (1)
(LS);検出器の測定電圧値(V)
(dn/dc);試料1gあたりの屈折率の増分(ml/g)
C ;濃度(g/ml)
KLS ;測定電圧と散乱強度(還元レイリー比)の係数(装置定数)
(dn/dc)は本発明はポリスチレンの文献値から0.068ml/gとした。
SEC−MALLSでは、SECカラムの分子篩いにより分子サイズで分離され、Mw(絶対分子量)とC(濃度)が刻々変化し溶出されてくるため別途濃度検出器をMALLSと組み合わせ測定する必要がある。その信号強度を濃度Cに換算し分子量Mwを求める。本発明では、濃度検出器として示差屈折率検出器(RI)を使用し、RI検出器の信号強度(RI)を濃度Cに換算し用いる。
(RI)=(dn/dc)×C×KRI (2)
KRI;測定電圧と屈折率の係数(RI定数 ポリスチレン標準にて校正)
分子サイズ(慣性半径)はDebye Plotにより算出した。
(3)トナーの平均粒径及び粒度分布
本発明の製造方法により製造されるトナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
(4)トナー粒子の平均円形度
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間核でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.19μm×0.19μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
(6)テトラヒドロフラン(THF)可溶分のピーク分子量(Mp)
トナー粒子のTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナー粒子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
温度:25℃
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部を示す。
<磁性体Aの製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整する。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し1.6部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして疎水化処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体Aを得た。
<トナー粒子1の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 74.00部
・n−ブチルアクリレート 26.00部
・ジビニルベンゼン 0.52部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.50部
・磁性体A 90.0部
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイドエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られる飽和ポリエステル樹脂 Mn=5000、酸価=12mgKOH/g、Tg=68℃)
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(東洋ペトロライト社製;HNP−9、融点75℃)15.0部を添加混合し、溶解した溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後、重合開始剤Aとしてジーsec−ブチルパーオキシジカーボネートを4.0部添加し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ反応温度T(JA)を70℃に保ち、重合転化率が80.0%に達した時点で過硫酸カリウムを1.0部添加し、さらに3時間反応させた。
反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥して、重量平均粒径(D4)が7.1μm、結着樹脂100部を含有するトナー粒子1を得た。トナー粒子1の物性を表2に示す。
このトナー粒子1の100部と個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.0部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、トナー1を得た。
<トナー粒子2の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 74.00部
・n−ブチルアクリレート 26.00部
・ジビニルベンゼン 0.52部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.50部
・磁性体A 90.0部
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイドエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られる飽和ポリエステル樹脂 Mn=5000、酸価=12mgKOH/g、Tg=68℃)
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(東洋ペトロライト社製;HNP−9、融点75℃)15.0部を添加混合し、溶解した溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後、重合開始剤Aとしてジ−イソプロピルパーオキシジカーボネートを4.0部添加し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ反応温度T(JA)を70℃に保った。重合転化率が40.0%に達した時点で、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート1.0部を添加した。さらに、重合転化率が80.0%に達した時点で過硫酸アンモニウムを1.0部添加し、さらに3時間反応させた。
反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥して、重量平均粒径(D4)が7.1μm、結着樹脂100部を含有するトナー粒子2を得た。トナー粒子2の物性を表2に示す。
このトナー粒子2の100部と個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.0部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、トナー2を得た。
<トナー粒子3乃至23の製造>
トナー粒子1の製造において、表1記載の通りに、重合開始剤Aおよびその量、重合開始剤Bおよびその量、重合開始剤Bの添加時期、反応温度T(JA)を変更し、トナー粒子3乃至23を得た。トナー粒子3乃至23の物性を表2に示す。さらに、トナー1の製造と同様にして、トナー3乃至23を得た。
<トナー粒子24、25の製造>
トナー粒子1の製造において、表1記載の通りに、重合開始剤Aおよびその量、重合開始剤Bおよびその量、重合開始剤Bの添加時期、反応温度T(JA)を変更し、トナー粒子24、25を得た。トナー粒子24、25の物性を表2に示す。さらに、トナー1の製造と同様にして、トナー24、25を得た。
<トナー粒子26の製造>
トナー粒子1の製造において、重合開始剤Bを油溶性のジ−イソプロピルパーオキシジカーボネートに変え、トナー粒子26を得た。トナー粒子26の物性を表2に示す。さらに、トナー1の製造と同様にして、トナー26を得た。
<トナー粒子27乃至34の製造>
トナー粒子1の製造において、表1記載の通りに、重合開始剤Aおよびその量、重合開始剤Bおよびその量、重合開始剤Bの添加時期、反応温度T(JA)を変更し、トナー粒子27乃至34を得た。トナー粒子27乃至34の物性を表2に示す。さらに、トナー1の製造と同様にして、トナー27乃至34を得た。
<実施例1>
(画像形成装置)
画像形成装置として、LBP−3410(キヤノン社製)をトナーの評価に用いた。
(クリーニング性試験)
クリーニング性試験を以下の条件で行った。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)において、印字率4%の縦線のみからなる画像にて連続モードで9000枚の画出し試験を行い、下記に示す判断基準に則り、クリーニング不良のレベルを判断した。なお、メディアとしてはLetterの75g/m2の紙を使用した。この条件を用いてトナー1を評価したところ、9000枚耐久後においてもクリーニング不良は発生せず、良好な画像が得られた。評価結果を表3に示す。
(定着試験)
定着試験を以下の条件で行った。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)で評価を行った。メディアとしてはFRB90g紙を用い、ハーフトーン画像の画像濃度が0.80乃至0.85となるように現像バイアスを設定した。次いで、定着器を室温まで冷却し、定着器のヒーター温度を設定し(以後、定着温度と呼ぶ)、通電したのち6秒後に画像を通紙し、定着させた。その後、50g/cm2の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が15%となる温度を定着開始温度とした。この条件を用いてトナー1を評価したところ、定着温度は185℃と低かった。評価結果を表3に示す。
(転写性試験)
転写性試験を以下の条件で行った。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)で評価を行った。ベタ画像形成時の感光体電子写真感光体ドラム上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープによりテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差をそれぞれ算出した。この条件を用いてトナー1を評価したところ、転写性はランクAと非常に良好であった。評価結果を表3に示す。
本発明の実施例及び比較例で行った各評価の評価方法とその判断基準について以下に述べる。
[画像濃度]
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
[クリーニング性]
クリーニング性の評価は、常温常湿環境下における9000枚の耐久中に渡り、ベタ白画像上の汚れの程度及び、ベタ白画像画出し後の静電潜像担持体の汚れの程度を評価した。
A:画像上全く問題のない鮮明な画質であり、像担持体に全く汚れが見られないクリーニング性。
B:画像上全く問題のない画質が得られるが、像担持体上に稀に汚れがみられるクリーニング性。
C:画像上にクリーニング不良由来の汚れが稀に見られるが、発生頻度が低いクリーニング性。
D:画像上にクリーニング不良由来の汚れが見られるが、認識しづらい程度の画像であるため、実用上全く問題のないクリーニング性。
E:画像クリーニング不良由来の汚れが見られ、実用上好ましくないクリーニング性。
[転写性]
A:0.05未満で非常に良好である転写性
B:0.05以上0.10未満で良好である転写性
C:0.10以上0.15未満であり実用的には問題の無い転写性
D:0.15以上であり、実用上好ましくない転写性
<実施例2乃至23>
トナー2乃至23を用いたこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーも実用上問題ないレベル以上の画像が得られた。評価結果を表3に示す。
<比較例1乃至11>
トナー24〜34を用いたこと以外は、実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、クリーニング不良が発生しており、低温定着性も一部悪かった。評価結果を表3に示す。