しかしながら、特許文献1に記載された燃料電池は、前記ガス分散室に対し、当該ガス分散室の底面の略中央部に連通された1つの燃料ガス供給管から燃料ガスを供給する構造を有しているため、当該燃料ガスは、前記燃料ガス供給管からの到達位置が遠くなる程、流速が遅くなり、当該ガス分散室の隅々まで十分に燃料ガスを到達させることが困難である。したがって、前記ガス分散室と発電室との間に配設された下部隔壁に形成されている通気孔のうち、前記ガス分散室の中央部付近に形成されている通気孔から供給される燃料ガスによって発電を行う燃料電池セルに対しては、十分な燃料ガスを供給することが可能であるが、前記ガス分散室の中央部から遠い位置に形成されている通気孔から供給される燃料ガスによって発電を行う燃料電池セルに対しては、十分な燃料ガスを供給することが困難である。このため、全ての燃料電池セルに対して燃料ガスを均等に供給することができなくなる虞がある。
また、特許文献2に記載された燃料電池は、前記ガス供給管が前記ガスマニホールドの天板の一端に接続されているため、当該燃料ガスは、当該ガスマニホールドの内側底面の燃料ガス吹き付け位置からの到達位置が遠くなる程、流速が遅くなり、当該ガスマニホールド全体にわたって燃料ガスを均等に到達させることが困難である。したがって、前記燃料ガス吹き付け位置から近い位置に配設されている燃料電池セルに対しては、十分な燃料ガスを供給することが可能であるが、前記燃料ガス吹き付け位置から遠い位置に配設されている燃料電池セルに対しては、十分な燃料ガスを供給することが困難である。このため、全ての燃料電池セルに対して燃料ガスを均等に供給することができなくなる虞がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ガスマニホールド全体にわたって反応ガスを均等に到達させることができ、全ての燃料電池セルに対し、前記反応ガスを均等に供給することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
この目的を達成するため本発明は、内部に反応ガス流路が形成されてなる複数の燃料電池セルと、内部に前記反応ガスを収容するガスマニホールドと、前記ガスマニホールドに配設されて前記複数の燃料電池セルの前記反応ガス流路方向一端を支持する共に、当該ガスマニホールド内に収容された反応ガスを前記各々の反応ガス流路に供給する貫通孔が形成された支持部材とを備え、前記ガスマニホールドの内部に、前記反応ガスを噴出する複数の噴出孔が形成された内部ガス供給配管を配設し、当該複数の噴出孔を介して、当該ガスマニホールドの内部に前記反応ガスを供給する燃料電池を提供するものである。
この構成を備えた燃料電池は、複数の噴出孔が形成された内部ガス供給配管が前記ガスマニホールドの内部に配設されているため、当該噴出孔を当該ガスマニホールド内の任意の位置に配設することができる。したがって、前記ガスマニホールド内の任意の位置に噴出孔を位置させることができるので、当該ガスマニホールド内に反応ガスを行き渡らせるために適切な位置に噴出孔を設けることができる。また、前記内部ガス供給配管内に供給された反応ガスは、当該内部ガス供給配管内を軸芯方向に進むため、供給された当初のエネルギーを保った状態で、前記複数の噴出孔から噴出されるため、当該内部ガス供給配管内に対する反応ガスの供給位置から各々の噴出孔までの距離による反応ガスの流速の変化(距離によるエネルギーのロス)を抑制することができる。したがって、各々の噴出孔から反応ガスを均等に噴出させることができる。さらに、前記反応ガスを噴出孔から噴出させることで、オリフィス効果により、反応ガスによる気流を発生させることができ、当該反応ガスを効率よく分散させることができる。以上から、反応ガスは、前記ガスマニホールド全体にわたって均等に分散された後、前記支持部材に形成された貫通孔を介して燃料電池セルの反応ガス流路に供給されるため、全ての燃料電池セルに対し、反応ガスをより均等に供給することができる。
前記支持部材は、前記マニホールドと一体的に形成されていてもよく、当該マニホールドとは別体に形成されていてもよい。
さらにまた、前記内部ガス供給配管をガスマニホールドの内部に配設したことで、ガス供給配管をガスマニホールドの外部に配設した場合に比べ、当該ガスマニホールドへの反応ガス供給時における当該反応ガスの放熱を低下させることができる。このため、燃料電池セルに高温の反応ガスを供給することができ、当該燃料電池セルの温度上昇を促進させる、あるいは、当該燃料電池セルの温度低下を抑制させることができる。
また、本発明に係る燃料電池は、前記ガスマニホールドが、前記支持部材側から見た平面視で、略長方形を有し、前記内部ガス供給配管は、その軸芯が、前記略長方形の長辺方向に沿って配設されるよう構成することができる。このように構成することで、前記ガスマニホールドの内壁と、前記内部ガス供給配管との距離を短くすることができるため、前記利点に加え、さらに前記ガスマニホールドの隅々まで反応ガスを均等に到達させることができる。なお、本願でいう「略長方形」とは、長方形の他、角部にアール(R)が付いた長方形、角部が面取りされている長方形等、長方形に準じた形状を含むものとする。
そしてまた、本発明に係る燃料電池において、前記支持部材は、前記ガスマニホールドの上部に配設されており、前記内部ガス供給配管が、前記ガスマニホールドの前記支持部材と対向する対向壁と所定の間隔をおいて配設され、且つ、前記内部ガス供給配管と前記支持部材との距離が、前記内部ガス供給配管と前記対向壁との距離よりも長くなる位置に配設されるよう構成することができる。ここで、前記噴出孔から噴出された反応ガスは、前記ガスマニホールド内を分散しながら上昇し、前記支持部材に形成された貫通孔を介して、燃料電池セルの反応ガス流路に供給されるが、前記内部ガス供給配管をこの位置に配設することで、当該内部ガス供給配管よりも上部側に、反応ガスを分散させるために十分な空間を確保することができるため、前記ガスマニホールド内に当該反応ガスを、さらに均等に分散させることができる。また、前記内部ガス供給配管と前記対向壁とが離間していることで、前記反応ガスは、当該内部ガス供給配管に邪魔されることなく、前記対向壁に沿って分散することができる。そしてまた、前記内部ガス供給配管を流通する反応ガスの熱が前記対向壁に奪われることを抑制することもできる。
また、本発明に係る燃料電池は、前記ガスマニホールドの内部に、前記内部ガス供給配管を複数備えてなり、当該各々の内部ガス供給配管を互いに間隔をおいて並設した構成を有することもできる。このように構成することで、前記噴出孔からガスマニホールドの内壁までの距離をさらに短くすることができるため、さらに前記ガスマニホールドの隅々まで反応ガスを十分に到達させることができる。また、前記内部ガス供給配管と前記ガスマニホールドの内壁との間、及び前記内部ガス供給配管同士の間を通って、前記支持部材の貫通孔に向かう反応ガスの流れを作り出すことができるため、前記利点に加え、前記内部ガス供給配管の並設方向にも反応ガスを効率よく到達させることができる。したがって、前記ガスマニホールドの隅々まで反応ガスをさらに均等に分散させることができる。
そしてまた、本発明に係る燃料電池は、前記複数の内部ガス供給配管と同数の改質器をさらに備え、前記各々の内部ガス供給配管は、1本の配管を介して、前記各々の改質器に接続されてなる構成を有することができる。このように構成することで、例えば、1本の配管を分岐させて、前記複数の内部ガス供給配管の各々に対し前記反応ガスを供給する場合に比べ、前記内部ガス供給配管の各々に対し、前記反応ガスをより均等に供給することができる。したがって、前記ガスマニホールドの隅々まで反応ガスをさらに均等に分散させることができる。
また、本発明に係る燃料電池は、前記支持部材が前記ガスマニホールドの上部に配設されており、前記噴出孔は、前記反応ガスが、少なくとも当該支持部材と対向する対向壁に対し垂直に向かう速度成分を持って噴出するよう形成することもできる。このように構成することで、前記噴出孔から噴出された反応ガスは、先ず、前記対向壁に向けて下方に噴出された後、分散しながら前記支持部材(上方)に向けて流れることになる。したがって、前記反応ガスを前記ガスマニホールド全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
さらにまた、この構成の場合、前記噴出孔は、前記反応ガスが、前記対向壁に平行な速度成分を持って噴出するよう形成することもできる。このように構成することで、前記噴出孔から噴出された反応ガスは、前記対向壁に向けて斜め外側下方に勢いよく噴出されるため、上昇する際に、前記支持部材に沿って中央に向かう流れを作ることができる。したがって、前記反応ガスを前記ガスマニホールド全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
そしてまた、この構成の場合、前記噴出孔は、前記対向壁側から見た平面視で、前記内部ガス供給配管の軸芯方向に沿って且つ当該内部ガス供給配管の軸芯に対応する線に対し間隔をおいた両側に交互に形成することもできる。このように構成することで、各々の噴出孔から噴出された反応ガスが上昇する際に形成される前記支持部材に沿って中央に向かう流れ同士が衝突し、この領域に反応ガスが滞留することを抑制することができる。したがって、前記反応ガスを前記ガスマニホールド全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
また、本発明に係る燃料電池は、前記内部ガス供給配管に、前記反応ガスが前記支持部材に向かう速度成分を持って噴出される複数の噴出孔をさらに形成することもできる。このように構成することで、反応ガスが比較的到達し難いと考えられる内部ガス供給配管の直上や、上部四隅付近にも、前記反応ガスをさらに効率よく到達させることができる。したがって、前記反応ガスを前記ガスマニホールド全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
そしてまた、この構成の場合、前記支持部材に向かう速度成分を持った反応ガスが噴出される噴出孔は、当該噴出孔から噴出された反応ガスが、前記ガスマニホールドの内壁に衝突し、当該ガスマニホールド内に分散するよう形成することもできる。このように構成することで、前記貫通孔に直接供給される反応ガスと、分散された後に前記貫通孔に供給される反応ガスとが混在することがないため、全ての燃料電池セルに対し、反応ガスをより均等に供給することができる。
また、本発明に係る燃料電池は、前記内部ガス供給配管に、当該内部ガス供給配管と連通し且つ当該内部ガス供給配管から延出する枝管を配設し、当該枝管に前記反応ガスを噴出させる噴出孔を形成することもできる。このように構成することで、前記噴出孔からガスマニホールドの内壁までの距離をより一層短くすることができるため、さらに前記ガスマニホールドの隅々まで反応ガスを十分に到達させることができる。
そしてまた、本発明に係る燃料電池は、前記内部ガス供給配管が、当該内部ガス供給配管の軸芯方向に垂直な断面形状が非円形を有し、当該断面形状における前記支持部材と平行な方向の長さが最大となる位置が、当該断面形状の前記支持部材側端と前記対向壁側端との中点よりも当該対向壁側となるよう構成することができる。このように構成することで、前記内部ガス供給配管と支持部材との間に、反応ガスを分散させるために十分な空間を確保することができる。したがって、反応ガスが比較的到達し難いと考えられる内部ガス供給配管の直上にも、前記反応ガスをさらに効率よく到達させることができる。したがって、前記反応ガスを前記ガスマニホールド全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
本発明によれば、ガスマニホールド全体にわたって反応ガスを均等に到達させることができ、全ての燃料電池セルに対し、前記反応ガスを均等に供給することが可能であり、発電を効率よく行うことができ、寿命が長く、信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
次に、本発明の実施形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池を含む燃料電池システムを示す全体構成図、図2は、図1に示す燃料電池の燃料電池モジュールを示す正面断面図、図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図、図4は、図2に示す燃料電池の構成要素である燃料電池セルユニットを示す部分断面図、図5は、図4に示す複数の燃料電池セルユニットから構成された燃料電池セルスタックを示す斜視図、図6は、図2に示す燃料電池の構成要素であるガスマニホールドを示す斜視図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
図1に示す燃料電池システムFCSは、燃料電池1と、補機ユニット4とを備えて構成されている。
燃料電池1は、燃料電池モジュール2と、燃料電池モジュール2に接続され且つ燃料電池モジュール2から排出された排気ガスが供給される温水製造装置50と、温水製造装置50に接続され且つ温水製造装置50に水道水を供給する水供給源24と、燃料電池モジュール2に配設され、燃料電池モジュール2に供給される燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52と、燃料電池モジュール2に接続され且つ燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54とを備えている。なお、温水製造装置50では、水供給源24から供給された水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンク26から供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28と、都市ガス等の燃料ガス(被改質ガス)を供給する燃料供給源30と、燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、前記燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、前記燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38と、酸化剤である空気を供給する空気供給源40と、空気供給源40から供給される空気を遮断する電磁弁42と、前記空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45と、燃料流量調整ユニット38から供給された燃料ガスと改質用空気流量調整ユニット44から供給された改質用空気とを混合する混合部46とを備えている。
なお、本実施形態に係る燃料電池システムでは、改質器20に供給される改質用空気や発電室10に供給される発電用空気を加熱して起動時の昇温を効率よく行うためのヒータ等の加熱手段や、改質器20を別途加熱する加熱手段は設けられていない。
次に、燃料電池モジュール2の内部構造について説明する。燃料電池モジュール2は、図1〜図3に示すように、ハウジング6を備え、このハウジング6の内部は、密封空間8となっている。この密封空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガス(改質ガス)と酸化ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。また、密封空間8の発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18では、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の空気とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。この燃焼室18の上方には、燃料ガス(被改質ガス)を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。また、密封空間8の発電室10の下方には、ガスマニホールド66が形成されている。
燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14を備えている。この燃料電池セルスタック14は、図5に示すように、16本の燃料電池セルユニット16を備えており、この構成により、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有することになる。また、燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側は、セラミック製の支持部材68及び100により各々支持されている。これらの支持部材68及び100には、後述する内側電極端子86が貫通可能な貫通孔68a及び100aが各々形成されている。
燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部に各々接続された内側電極端子86とを備えている。燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極(アノード極)であり、外側電極層92は、空気と接触する空気極(カソード極)となっている。内側電極端子86の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを有している。この内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して外周面90bと接続され、上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。また、内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
また、各々の燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
改質器20には、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と、改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられている。改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20a、改質部20bが形成されており、改質部20bには、改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。また、この改質器20の下流端側には、下方に延びる燃料ガス供給管64が接続されている。
空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a、74b、74c、74d、74e、74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。この空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。空気分配室72の各々には、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
ガスマニホールド66は、特に図6に示すように、底面67が略長方形状を呈する略直方体形状を有しており、このガスマニホールド66の上部には、燃料電池セルスタック14を支持するための板状の支持部材68が配設されている。この支持部材68には、ガスマニホールド66に収容された燃料ガスを各々の燃料電池セル84の燃料ガス流路88に供給するための貫通孔69が形成されている。なお、支持部材68は、底面67に対向して配設されており、これにより底面67は、支持部材68に対向配置された対向壁となっている。
また、ガスマニホールド66の内部には、ガスマニホールド66内に燃料ガスを供給するための内部ガス供給配管63が、底面67及び支持部材68の各々と所定の間隔をおいて配設されている。この内部ガス供給配管63は、軸芯方向に垂直な断面形状が円形を有し、当該軸芯が、ガスマニホールド66の長手方向(前記略長方形の長辺方向)に沿って、底面67と平行に延びており、図2、図3及び図7に示すように、支持部材68からの距離が、底面67からの距離よりも長くなる位置(高さ)に配設されている。また、内部ガス供給配管63の一端は、図2に示すように、改質器20の下流端側に接続された燃料ガス供給管64に接続されており、内部ガス供給配管63には、改質器20から燃料ガス供給管64を介して燃料ガスが供給されるようになっている。一方、内部ガス供給配管63の他端は、図2及び図6に示すように、ガスマニホールド66の内壁(図2でいう右側の内壁)に固定されている。
さらにまた、内部ガス供給配管63には、内部ガス供給配管63内に供給された燃料ガス(改質された燃料ガス)を底面67に向けて垂直に噴出するための複数の噴出孔65が形成されている。これらの噴出孔65は、図2、図3及び図7に示すように、内部ガス供給配管63の下面に、互いに間隔をおいて軸芯方向に沿って一直線上に形成されている。
なお、このガスマニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されており、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80(図3参照)が形成されている。この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、温水製造装置50に接続されている。そしてまた、燃焼室18には、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が設けられている。
本実施形態における燃料電池システムFCSの起動モードにおいては、燃焼運転と、部分酸化改質反応(POX)と、第1オートサーマル改質反応(ATR1)と、第2オートサーマル改質反応(ATR2)と、水蒸気改質反応(SR)とを順次切り替えながら改質反応を進行している。
部分酸化改質反応(POX)は、改質器20に被改質ガスと空気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(1)に示す反応が進行する。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応(POX)は発熱反応であるので起動性が高く、燃料電池システムFCSの起動当初において好適な改質反応である。但し、部分酸化改質反応(POX)は、水素収率が理論上少なく、発熱反応を制御するのも難しいことから、燃料電池モジュール2へ熱供給が必要な起動当初においてのみ利用されるのが好ましい改質反応である。
水蒸気改質反応(SR)は、改質器20に被改質ガスと水蒸気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(2)に示す反応が進行する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
水蒸気改質反応(SR)は、水素収率が最も高く、高効率な反応である。ただし、水蒸気改質反応(SR)は、吸熱反応であるので熱源が必要であり、燃料電池システムFCSの起動当初よりはある程度温度が上昇した段階において好適な改質反応である。
第1オートサーマル改質反応(ATR1)と第2オートサーマル改質反応(ATR2)とからなるオートサーマル改質反応(ATR)は、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)とが併用された改質反応であって、改質器20に被改質ガスと空気と水蒸気とを供給して行われる改質反応であり、化学反応式(3)に示す反応が進行する。
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
オートサーマル改質反応(ATR)は、水素収率が部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)との併用であり、反応熱のバランスが取り易く、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)とを繋ぐ反応として好適な改質反応である。なお、本実施形態では、水を少なく供給して部分酸化改質反応(POX)により近い第1オートサーマル改質反応(ATR1)を先に行い、温度が上昇した後に水を増やすように供給して水蒸気改質反応(SR)により近い第2オートサーマル改質反応(ATR2)を後に行っている。
次に、燃料電池システムFCSの起動モードについて説明する。先ず、改質用空気を増やすように発電用空気流量調整ユニット45、電磁弁42及び混合部46を制御し、改質器20に空気を供給する。また、発電室10には、前述したように、空気導入管76から発電用の空気が供給される。そしてまた、燃料ガスの供給を増やすように燃料流量調整ユニット38、及び混合部46を制御し、改質器20に被改質ガスを供給し、改質器20へ送り込まれた被改質ガス及び改質用空気は、改質器20、燃料ガス供給管64、内部ガス供給配管63、ガスマニホールド66を介して、各々の貫通孔69から各燃料電池セルユニット16内に送り込まれる。各燃料電池セルユニット16内に送り込まれた被改質ガス及び改質用空気は、各燃料電池セルユニット16の下端に形成されている燃料ガス流路98から燃料ガス流路88を通過し、上端に形成されている燃料ガス流路98から夫々流出する。その後、点火装置83によって、燃料ガス流路98上端から流出した被改質ガスに着火して燃焼運転を実行する。これにより、燃焼室18内で被改質ガスが燃焼され、上述した部分酸化改質反応(POX)が発生する。
その後、改質器20の温度が約600℃以上になり、且つ燃料電池セル集合体12の温度が約250℃を超えたことを条件として、前述した第1オートサーマル改質反応(ATR1)へと移行させ、燃料電池セル集合体12の温度が約400℃を超えたことを条件として、第2オートサーマル改質反応(ATR2)へと移行させる。この時、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、被改質ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。次いで、改質器20の温度が650℃以上となり、且つ燃料電池セル集合体12の温度が約600℃を超えたことを条件として、水蒸気改質反応(SR)へと移行させる。
上述したように着火から燃焼工程の進行に合わせて改質工程を切り替えていくことで、発電室10内の温度が徐々に上昇する。発電室10の温度が、燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度(約700℃)よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む電気回路を閉じる。それにより、燃料電池モジュール2は発電を開始し、回路に電流が流れて外部に電力を供給することができる。燃料電池セル84の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度が上昇するため、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば700〜800℃になる。
この着火から燃焼工程において、燃料ガス供給管64を介して、内部ガス供給配管63に供給された被改質ガス及び改質ガス(燃料ガス)は、各々の噴出孔65からガスマニホールド66内に噴出される。この時、内部ガス供給配管63は、ガスマニホールド66の内部に配設されており、ガスマニホールド66内は、外部よりも高温となっているため、ガス供給配管をガスマニホールドの外部に配設した場合に比べ、燃料ガスの放熱を低下させることができる。したがって、当該ガスマニホールドへの反応ガス供給時における当該反応ガスの放熱を低下させることができる。このため、燃料電池セル84に高温の燃料ガスを供給することができ、燃料電池セル84の温度上昇を促進させる、あるいは、温度低下を抑制させることができるため、発電を効率よく行わせることができる。
また、内部ガス供給配管63は、その軸芯が、ガスマニホールド66の長手方向に沿って、底面67と平行に延びているため、噴出孔65からガスマニホールド66の内壁までの距離を短くすることができ、燃料ガスをガスマニホールド66の隅々まで到達させることができる。そしてまた、内部ガス供給配管63は、支持部材68からの距離が、底面67からの距離よりも長くなる位置(高さ)に配設されているため、内部ガス供給配管63よりも上部側に、燃料ガスを分散させるために十分な空間を確保することができ、噴出孔65から噴出された燃料ガスは、ガスマニホールド66内を上昇する際に、さらに均等に分散することができる。また、内部ガス供給配管63と底面67とが離間しているため、内部ガス供給配管63に邪魔されることなく燃料ガスを底面67に沿って分散させることができると共に、内部ガス供給配管63を流通する燃料ガスの熱が底面67に奪われることを抑制することもできる。さらにまた、図7に示すように、燃料ガスは、底面67に向けて垂直に噴出される(即ち、底面67に向かう速度成分を持って噴出される)ため、噴出孔65から噴出された燃料ガスは、先ず、底面67に向けて下方に噴出された後、分散しながら支持部材68に向けて流れることになる。したがって、燃料ガスをガスマニホールド66全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
また、燃料ガスは、内部ガス供給配管63に供給された当初のエネルギーを保った状態で、内部ガス供給配管63の内部を軸芯方向に進むため、内部ガス供給配管63に供給された当初の流速を維持したまま、各々の噴出孔65から噴出される。このため、各々の噴出孔65から燃料ガスを均等に噴出させることができる。また、各々の噴出孔65は、比較的小さな孔であり、燃料ガスを噴出孔65から噴出させることで、オリフィス効果により、ガスマニホールド66内に燃料ガスによる気流を発生させることができ、燃料ガスをガスマニホールド66全体にわたって効率よく分散させることができる。
このように、例えば、燃料ガスの供給圧力を上げたり、供給量を増加したりすることなく、燃料ガスをガスマニホールド66内全体にわたって均等に分散することができる。そして、この燃料ガスは、支持部材68に形成されている各々の貫通孔69から各々の燃料電池セル84の燃料ガス流路88に均等に供給される。したがって、全ての燃料電池セル84に対し、燃料枯れや発熱温度ムラが生じることを抑制することができ、燃料電池セル84の寿命を向上することができる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下した時、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応(SR)を終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
なお、本実施形態では、ガスマニホールド66内に1本の内部ガス供給配管63を配設した場合について説明したが、これに限らず、ガスマニホールド66内には、例えば、図8に示すように、複数本の内部ガス供給配管63(図8では、2本の内部ガス供給配管63を記載してある)を、互いに間隔をおいて並設してもよい。この構成の場合、噴出孔65からガスマニホールド66の内壁までの距離をさらに短くすることができるため、さらに燃料ガスをガスマニホールド66の隅々まで十分に到達させることができる。また、この構成の場合、内部ガス供給配管63とガスマニホールド66の内壁との間を通って支持部材68の貫通孔69に向かう燃料ガスの流れや、内部ガス供給配管63同士の間を通って支持部材68の貫通孔69に向かう燃料ガスの流れを作り出すことができるため、内部ガス供給配管63の並設方向にも燃料ガスを効率よく到達させることができる。したがって、ガスマニホールド66の隅々まで燃料ガスをさらに均等に分散させることができる。
また、図8に示すように複数(例えば、2本)の内部ガス供給配管63をガスマニホールド66内に配設した場合、図10及び図11に示すように、内部ガス供給配管63と同数の改質器20を配設し、それぞれ別々の燃料ガス供給管64を介して、各々の内部ガス供給配管63に燃料ガスを供給してもよい。このように構成することで、1本の燃料ガス供給管64を分岐させて、複数の内部ガス供給配管63の各々に対し燃料ガスを供給する場合に比べ、内部ガス供給配管63の各々に対し、燃料ガスをより均等に供給することができる。したがって、燃料ガスをガスマニホールド66の隅々までさらに均等に分散させることができる。
そしてまた、本実施形態では、内部ガス供給配管63の下面に噴出孔65を、軸芯方向に沿って互いに間隔をおいて一直線上に形成し、燃料ガスを底面67に向けて垂直に噴出する場合について説明したが、これに限らず、燃料ガスが、底面67に向かう速度成分に加え、底面67に平行な速度成分を持って噴出するよう(即ち、底面67に対し斜めに噴出されるよう)、内部ガス供給配管63に噴出孔65を形成してもよい。具体的には、例えば図9に示すように、内部ガス供給配管63の軸芯方向に沿って且つ内部ガス供給配管63の軸芯に対応する線Oに対し間隔をおいた両側に交互に形成することもできる。噴出孔65をこのように形成することで、各々の噴出孔65から噴出された燃料ガスがガスマニホールド66内を上昇する流れ(支持部材68に沿って中央に向かう流れ)同士が衝突することを抑制することができる。したがって、内部ガス供給配管63上に燃料ガスが滞留することを抑制することができるため、燃料ガスをガスマニホールド66全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
さらにまた、本実施形態では、軸芯方向に垂直な断面が円形である内部ガス供給配管63を配設した場合について説明したが、これに限らず、内部ガス供給配管63は、任意の断面形状(非円形)を有していてもよい。この場合、例えば図12及び図13に示すように、軸芯方向に垂直な断面形状における支持部材68と平行な方向の長さが最大の長さLとなる位置P1が、当該断面形状の支持部材68側端Aと底面67側端Bとの中点P2よりも底面67側となるよう構成することができる。このように構成することで、内部ガス供給配管63と支持部材68との間に、燃料ガスを分散させるために十分な空間を確保することができる。したがって、燃料ガスが比較的到達し難いと考えられる内部ガス供給配管63の直上にも、燃料ガスをさらに効率よく到達させることができる結果、燃料ガスをガスマニホールド66全体にわたって、さらに均等に分散させることができる。
また、本実施形態では、内部ガス供給配管63に、底面67に向けて燃料ガスを噴出する噴出孔65を形成した場合について説明したが、これに限らず、内部ガス供給配管63には、例えば図14及び図15に示すように、支持部材68に向かう速度成分(支持部材68に対し垂直な成分及び斜め成分)を持って噴出される複数の噴出孔165をさらに形成することもできる。このように構成することで、燃料ガスが比較的到達し難いと考えられる内部ガス供給配管63の直上や、上部四隅付近にも、燃料ガスをさらに効率よく到達させることができる。この構成の場合、噴出孔165から噴出された燃料ガスは、図15に示すように、ガスマニホールド66の内壁に衝突し、ガスマニホールド66内に分散することができる。このように構成することで、燃料ガスが直接供給される貫通孔69と、直接供給されない貫通孔69とが混在することがないため、燃料電池セル84に対し燃料ガスの供給ムラが生じることを防止することができる。
そしてまた、本実施形態では、例えば図16に示すように、内部ガス供給配管63の両端部に、内部ガス供給配管63と連通し且つ内部ガス供給配管63の軸芯方向に垂直な方向に延出する枝管163を設け、これらの枝管163に噴出孔65を形成してもよい。また、これらの枝管163に噴出孔65及び165を形成してもよい。このように構成することで、噴出孔65(165)からガスマニホールド66の四隅までの距離をより一層短くすることができるため、さらにガスマニホールド66の隅々まで燃料ガスを十分に到達させることができる。
さらにまた、本実施形態では、内側電極層90が燃料極(アノード極)であり、外側電極層92が空気極(カソード極)である燃料電池セル84を配設した場合について説明したが、これに限らず、所望により、内側電極層90が空気極(カソード極)であり、外側電極層92が燃料極(アノード極)である燃料電池セルを配設してもよい。そして、この場合は、内部ガス供給配管63に空気(酸化剤ガス)を供給すればよい。