JP2011089828A - 化学的安定性評価装置 - Google Patents

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房美 三浦
Naoki Hasegawa
直樹 長谷川
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敬祐 藤田
Masayoshi Takami
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Abstract

【課題】高濃度の過酸化水素水を大量に加熱する必要がなく、過酸化水素ガスを高濃度で安定的に試験片に暴露でき、120℃以下の低温・低湿度下において迅速評価が可能な化学的安定性評価装置を提供すること。
【解決手段】蒸発容器22内に送液された過酸化水素水を加熱手段24を用いて蒸発させ、過酸化水素ガスを含むガスを発生させる過酸化水素気化部20と、蒸発容器22内に過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液部30と、蒸発容器22内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部40と、試験片を収容するための暴露容器52内に、蒸発容器22内で発生した過酸化水素ガス及びキャリアガス供給部40から供給されるキャリアガスを含む入ガスを供給する試験片暴露部50と、暴露容器52から排出される排ガスを回収する排ガス回収部60とを備えた化学的安定性評価装置10。
【選択図】図1

Description

本発明は、化学的安定性評価装置に関し、さらに詳しくは、過酸化水素ガス雰囲気下における各種材料(例えば、電解質膜、触媒層、膜電極接合体、シール材などの燃料電池の構成要素として用いられる材料)の化学的安定性を迅速に評価することが可能な化学的安定性評価装置に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
MEAは、触媒層で副生成する過酸化水素又はその分解生成物であるラジカルに対して不安定であることが知られている。例えば、電解質膜及び触媒層内電解質は、過酸化水素又はラジカルによって劣化する。触媒層内電解質が劣化すると、プロトン伝導性が低下して電池性能が低下すると言われている。また、電解質膜が劣化すると、電解質膜の穴明きや裂けに至ると言われている。
また、触媒層の炭素担体や拡散層の炭素材料も副生成する過酸化水素に攻撃され、撥水性能が低下(親水化)して出力が低下する可能性がある。
また、触媒層に用いられるPt、Ru、Pdのような貴金属材料、及び、セパレータ(バイポーラプレート)、エンドプレート、マニホールド等に用いられるステンレス鋼、Ti等の金属材料は、Cl-、F-等のハロゲンイオンと過酸化水素とが存在すると、腐食されやすくなることが知られている。
さらに、ガスシール部の樹脂プレートやシール材等の有機材料は、過酸化水素やラジカルで劣化する。有機材料が劣化すると、シール性が低下したり、シール材の劣化生成物による電極被毒で電池性能が低下すると言われている。
これらの燃料電池材料(特に、電解質)の安定性を評価する手法としては、電解質を微量の鉄イオンを存在させた過酸化水素水溶液に浸漬し、重量変化あるいは溶出した酸成分(HF、HCOOHなど)の濃度を定量する方法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法は飽和湿度下における試験であり、多くの課題が存在する。
その1つは、実際の燃料電池は低湿度下で運転することが多いため、飽和湿度下で得られた材料間の優劣や推定寿命が実際の電池寿命と必ずしも対応しないという問題である。
次に、燃料電池材料は、必ずしも高濃度の鉄イオンで汚染されることがない。そのため、材料の安定性を鉄イオンを添加することなく評価したい、あるいは、材料の劣化がごく微量の鉄イオンにどの程度影響されるか(鉄イオン感受性)を明らかにしたいという要請があった。しかしながら、上記浸漬試験では、鉄イオンをある濃度以上(通常は、溶液中に5〜20ppm)存在させないと劣化速度が著しく穏やかとなる。そのため、鉄イオン無添加の試験や低濃度の鉄イオン添加で試験を行うことは、極めて困難であった。
ところで、近年、電解質の安定性は、低湿度で促進されることが広く知られるようになった。従って、これら燃料電池材料の安定性を低湿度下において、鉄イオンを添加することなく、あるいは、微量の鉄イオン存在下で、再現性良く迅速に評価できる装置の開発が求められるようになってきた。
そこで、最近、パーフルオロ系電解質においては、
(1)過酸化水素水を入れたガラス容器内でN2等の不活性ガスをバブリングさせ、
(2)バブリングにより発生した蒸気を電解質に100℃以上の高温で暴露し、
(3)電解質の分解によって生じたHFガスをアルカリ水溶液に通じて回収する方法(いわゆるドライフェントン法)、
が試みられるようになってきた(例えば、非特許文献1、2参照)。
特開2008−180693号公報
「固体高分子形燃料電池の劣化要因に関する研究−劣化要因の基礎的研究」、委託先 京都大学工学研究科、www.nedo.go.jp/iinkai/gijutsu/hyouka/kotai/17h/chukan_youso/youso19-21.pdf "Highly Durable MEA for PEMFC Under High Temperatue and Low Humidity Conditions", www.fuelcellseminar.com/pdf/2006/Wednesday/3B/Endoh_Eiji_0945_3B_95(rv3).pdf 2006 FC Seminar No.1, Eiji Endoh, Ph.D.eiji-endoh@agc.co.jpSatoru Honmura, Hisao Kawazoe Asahi Glass Research Center1150 Hazawacho, Kanagawaku, Yokohama, JAPAN
しかしながら、従来のドライフェントン法も以下のような課題を抱えている。
(1)劣化を促進しようとして過酸化水素水を高温(例えば、80℃以上)にすると、過酸化水素の自己分解が激しくなり、次第に過酸化水素濃度が低下する。従って、再現性のある結果が得られない。
また、劣化を促進するためには、通常、3wt%を超える高濃度の過酸化水素水を60〜80℃で大量にバブリングし続けることが必要である。しかしながら、これは、過酸化水素濃度が次第に減少する以前の問題として危険であり、安全上問題が大きい。
(2)過酸化水素水の蒸気圧は、80℃以下では沸点(濃度30wt%で約105℃)の数分の1となる。そのため、市販の高濃度の過酸化水素水(濃度30wt%)を使用しても、バブリング法では高濃度の過酸化水素蒸気を送ることができず、促進劣化が困難である。また、試験終了時に使用した大量の高濃度過酸化水素水を廃棄しなければならず、廃液処理コストが大きく経済的ではない。
(3)比較的耐久性の高い電解質に対しては、化学的安定性を短時間で調べるために過酸化水素ガスの暴露温度を高くすることが考えられる。しかしながら、120℃を超える温度では電解質の耐熱性(脱スルホン、脱カルボニル等が起きる)を主とする評価となり、通常の電池作動温度である80℃前後の劣化モードを再現しなくなる。
一方、暴露温度を低温にすると、バブリングで生成した過酸化水素蒸気が結露しやすくなる。過酸化水素水蒸気が結露すると、湿度が上昇し、劣化促進倍率が低下する。
本発明が解決しようとする課題は、高濃度の過酸化水素水を大量に加熱する必要がなく、過酸化水素ガスを高濃度で安定的に試験片に暴露でき、120℃以下の低温・低湿度下において迅速評価が可能な化学的安定性評価装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る化学的安定性評価装置は、
蒸発容器内に送液された過酸化水素水を加熱手段を用いて蒸発させ、過酸化水素ガスを含むガス発生させる過酸化水素気化部と、
前記蒸発容器内に前記過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液部と、
前記蒸発容器内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、
試験片を収容するための暴露容器内に、前記蒸発容器内で発生した前記過酸化水素ガス及び前記キャリアガス供給部から供給される前記キャリアガスを含む入ガスを供給する試験片暴露部と、
前記暴露容器から排出される排ガスを回収する排ガス回収部と
を備えていることを要旨とする。
蒸発容器内に相対的に少量の過酸化水素水を送液し、これを全量蒸発させると、試験片を高濃度の過酸化水素ガスに安定して暴露できる。また、高濃度の過酸化水素水を大量に加熱する必要がないので、安全であり、廃液処理コストも少ない。さらに、高濃度の過酸化水素ガスを安定して発生させることができるので、120℃以下の低温・低湿度下において迅速に化学的安定性を評価することができる。
本発明に係る化学的安定性評価装置の概略構成図である。 全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、回収液の電気導電率σの相対湿度RH依存性を示す図である。 全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、電解質膜の重量変化ΔWの温度依存性を示す図である。 全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、回収液の電気導電率σ及びpHの温度依存性を示す図である。 回収液の電気導電率σのFe2+濃度依存性を示す図である。 回収液の電気導電率σとF-排出速度との対応を示す図である。 暴露時の過酸化水素濃度及び温度による電解質膜の最大応力の変化を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 化学的安定性評価装置]
図1に、本発明の一実施の形態に係る化学的安定性評価装置の概略構成図を示す。図1において、化学的安定性評価装置10は、過酸化水素気化部20と、過酸化水素水送液部30と、キャリアガス供給部40と、試験片暴露部50と、排ガス回収部60とを備えている。
[1.1. 過酸化水素気化部]
過酸化水素気化部20は、後述する過酸化水素水送液部30から送液される過酸化水素水を一時的に貯留する蒸発容器22、22…と、蒸発容器22、22…内に送液された過酸化水素水を蒸発させるための加熱手段24とを備えている。過酸化水素気化部20は、高濃度の過酸化水素ガスを生成するために非常に重要な部分である。
図1に示す例において、過酸化水素気化部20は、4個の蒸発容器22、22…を備えているが、これは単なる例示であり、蒸発容器22、22…の個数は、目的に応じて任意に選択することができる。
蒸発容器22、22…の材質は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。しかしながら、蒸発容器22、22…としてガラス製容器を用いた場合において、これに高濃度の過酸化水素水を入れて加熱したときには、ガラス容器中のナトリウム等のアルカリが接触分解反応を促す触媒となる。そのため、蒸発容器22、22…としてガラス製容器を用いると、高濃度の過酸化水素ガスを発生させるのが困難となる。
また、蒸発容器22、22…として、ガラス、セラミックス又は金属を用いると、不純物が溶出するおそれがある。
これに対し、蒸発容器22、22…として、少なくともその内表面が樹脂からなるものを用いると、過酸化水素の接触分解反応を抑制することができる。そのため、高濃度の過酸化水素ガスを発生させるのが容易化する。
蒸発容器22、22の少なくとも内表面を構成する樹脂としては、具体的には、
(1)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素樹脂、
(2)ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの炭化水素樹脂、
などがある。
これらの樹脂の内、PP、PE、PA等では、耐熱性が不足し、不純物グレードも低い。PEEKのような半導体製造で使用されているような高純度スーパーエンプラは、蒸発容器22、22…として使用可能であるが、170℃加熱(酸化性の過酸化水素水)に耐えられる容器として市販製造されていない。
これに対し、フッ素樹脂は、過酸化水素に対する耐性及び耐熱性が高く、170℃加熱に耐えられる容器として市販製造されているので、蒸発容器22、22…を構成する材料として好適である。
なお、蒸発容器22、22…は、その全体が樹脂(特に、フッ素樹脂)からなるものでも良く、あるいは、表面のみが樹脂(特に、フッ素樹脂)からなるものでも良い。例えば、熱伝導を良好にし、熱容量を下げるために、蒸発容器22、22…は、銅やアルミ製の容器内面にETFEなどのフッ素樹脂をライニングやラミネートしたものでも良い。この点は、後述する暴露容器、回収容器、配管、継ぎ手などの過酸化水素水又は過酸化水素ガスと接触する経路を構成する部材も同様である。
加熱手段24は、蒸発容器22、22…内に送液された過酸化水素水を蒸発させ、過酸化水素ガスを発生させることが可能なものであれば良い。すなわち、加熱手段24は、過酸化水素水の沸点(過酸化水素濃度30wt%の時は、約105℃)以上、蒸発容器22、22…の耐熱温度(フッ素樹脂の場合、通常、200℃前後)以下の温度に加熱できるものであれば良い。
加熱手段24としては、具体的には、
(1)蒸発容器22、22…の外部に巻き付けられたリボンヒーター、ラバーヒーターなどのヒーター、
(2)蒸発容器22、22…と密着させるためのアルミ合金や銅などからなるヒータブロックと、ヒーターブロックに挿入されたロッドヒーターとを備えた加熱装置、
(3)蒸発容器22、22…全体を加熱するための恒温槽、
などがある。
図1に示す例において、加熱手段24には、恒温槽が用いられている。
[1.2. 過酸化水素水送液部]
過酸化水素水送液部30は、蒸発容器22、22…内に過酸化水素水を送液するためのものである。過酸化水素水送液部30は、送液装置32、32…を備え、送液装置32、32…は、配管34、34…を介して蒸発容器22、22…に接続されている。
図1に示す例において、過酸化水素水送液部20は、複数個の送液装置32、32…を備えているが、これは単なる例示であり、送液装置32、32…の個数は、目的に応じて任意に選択することができる。
送液装置32、32…は、相対的に少量の過酸化水素水を一定速度で送液(滴下)できるものが好ましい。相対的に少量の過酸化水素水を送液するのは、蒸発容器22、22…内に送液させた過酸化水素水を全量蒸発させるためである。
送液装置32、32…としては、具体的には、
(1)液体の自然落下を利用した点滴装置、
(2)チューブをしごくロータリーポンプ、
(3)ダイアフラムポンプ、
(4)スクリューポンプ、
(5)シリンジポンプ、
などがある。
これらの内、点滴装置は、
(a)空気が混入すると、一定速度で過酸化水素水を滴下することができないおそれがある、
(b)過酸化水素水の微量の滴下は、困難である、
などの問題がある。
ロータリーポンプは、
(a)チューブが次第に弾性を失い滴下速度が減少するため、一定速度で長期間送液できない、
(b)頻繁にチューブを取り替える必要がある、
(c)小径チューブでの送液に限界があり、過酸化水素水の微量の滴下は困難である、
などの問題がある。
また、ダイアフラムポンプは、過酸化水素水の微量の滴下は可能であるが、装置が複雑大型化して高価である。
さらに、スクリューポンプは、接液部を金属以外の樹脂(例えば、フッ素樹脂)にすれば過酸化水素水の送液も可能であるが、過酸化水素水の微量の滴下は困難である。
これに対し、シリンジポンプを用いて過酸化水素水を送液する方法は、
(a)シリンジ(注射器)の径と送り速度を変えることにより、0.01μL/minから10mL/min程度の広範囲の送液が可能である、
(b)ポンプ1台で複数個のシリンジを並列駆動させることができ、経済的である、
という利点がある。シリンジポンプは、いわゆるマイクロシリンジポンプが好ましい。
シリンジは、ガラス製でも良い。これは、シリンジは常温で使用されるために、シリンジ内ので過酸化水素の分解速度が比較的小さいためである。しかしながら、過酸化水素の分解を抑制するには、シリンジは、少なくともその内表面が樹脂からなるものが好ましい。また、シリンジからの微量の有機、無機成分の溶出を抑制するためには、シリンジは、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなるものが好ましい。
また、金属製の注射針を通じて配管34、34…に接続することは、金属イオンの溶出を招くおそれがあるため好ましくない。そのため、樹脂製シリンジを、少なくともその内表面が樹脂からなる配管34、34…に直接接続するのが好ましい。さらに、配管34、34…は、部分的に高温に曝されるので、配管34、34…の少なくとも内表面を構成する樹脂は、特にフッ素樹脂が好ましい。
[1.3. キャリアガス供給部]
キャリアガス供給部40は、蒸発容器22、22…内にキャリアガスを供給するためのものである。キャリアガス供給部40は、キャリアガス供給源(図示せず)と、流量計42、42…とを備えている。流量計42、42…は、配管44、44…を介して蒸発容器22、22…に接続されている。
図1に示す例においては、各蒸発容器22、22…毎にキャリアガスの流量を個別に制御できるように、合計4個の流量計42、42…が設けられているが、これは単なる例示であり、1個の流量計42で複数個の蒸発容器22、22…に供給されるキャリアガスの流量を制御しても良い。
蒸発容器22、22…内で過酸化水素水を気化させると、蒸発容器22、22…内はその温度での飽和蒸気圧となっており、湿度は100%近い。キャリアガスは、蒸発容器22、22…内で発生させたガスを試験片暴露部50に送るためだけではなく、蒸発容器22、22…内で発生させたガスの湿度を下げるためにも用いられる。
キャリアガスは、特に限定されるものではなく、例えば、N2、Ar、O2、Air、CO2などを用いることができる。これらの中でも、高純度のN2、Ar等の不活性ガスは、過酸化水素の安定性を増すので、キャリアガスとして特に好適である。
キャリアガス供給源(例えば、ボンベ)以外の集中配管からのガス導入(例えば、エアーコンプレッサーを用いて大気(エアー)をキャリアガスとして用いる場合)に関しては、蒸発容器22、22…への異物(例えば、金属継ぎ手のバリなど)と不純物粒子の混入を防止するため、キャリアガス供給源と流量計42、42…との間に、フィルター(図示せず)を繋ぐのが好ましい。蒸発容器22、22…に微量不純物粒子が混入すると、過酸化水素の分解を促すおそれがある。
配管44、44…、継ぎ手(図示せず)等は、過酸化水素ガスの逆流も考慮して、少なくともその内表面が樹脂からなるものが好ましい。配管44、44…、継ぎ手等は、特に、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなるものが好ましい。
蒸発容器22、22…にキャリアガスが流入する際に蒸発容器22、22…の温度を下げることがないように、蒸発容器22、22…への導入部分(図1に示す例では、恒温槽(加熱手段24)の外側)にある配管44、44…をヒータ加熱しても良い。
また、配管44、44…内部のガスと外部との熱交換を十分に行えるように、配管44、44…を恒温槽(加熱手段24)内部で引き回しても良い。あるいは、恒温槽(加熱手段24)内にキャリアガスを一時的に貯留するためのガスバッファー容器(図示せず)を設け、これを流量計42、42…と蒸発容器22、22…の間に接続しても良い。
[1.4. 試験片暴露部]
試験片暴露部50は、試験片を収容するための暴露容器52、52…と、暴露容器52、52…を所定の温度に加熱する加熱手段54とを備えている。各暴露容器52、52…は、配管56、56…を介して各蒸発容器22、22…に接続されている。すなわち、試験片が収容された暴露容器52、52…内には、蒸発容器22、22…で発生した過酸化水素ガス及びキャリアガス供給部40から供給されるキャリアガスを含む入ガスが供給されるようになっている。
図1に示す例において、試験片暴露部50は、4個の暴露容器52、52…を備えているが、これは単なる例示であり、暴露容器52、52…の個数は、目的に応じて任意に選択することができる。
暴露容器52、52…は、過酸化水素ガスが試験片に均一に接触するように、ガス流入部(開口部)は、できるだけ拡大しておくことが好ましい。
暴露容器52、52…は、高温の過酸化水素ガスに曝されるので、少なくともその内表面が樹脂からなるものが好ましく、特にフッ素樹脂からなるものが好ましい。また、配管56、56…及び継ぎ手(図示せず)も同様であり、少なくとも過酸化水素ガスと接触する面が樹脂からなるものが好ましく、特にフッ素樹脂からなるものが好ましい。
また、入ガスの温度を下げることがないように、配管56、56…の露出部分(図1に示す例では、加熱手段24、54の外側)をヒータ加熱しても良い。
加熱手段54は、暴露容器52、52…内を所定の温度に保持するためのものである。加熱手段54は必ずしも必要ではないが、加熱手段54を設けると、暴露容器52、52…を一定の温度に保つのが容易化する。
加熱手段54は、暴露容器52、52…内を所定の温度に保持することが可能なものであればよい。
加熱手段54としては、具体的には、
(1)暴露容器52、52…の外部に巻き付けられたリボンヒーター、ラバーヒーターなどのヒーター、
(2)暴露容器52、52…と密着させるためのアルミ合金や銅などからなるヒータブロックと、ヒーターブロックに挿入されたロッドヒーターとを備えた加熱装置、
(3)暴露容器52、52…全体を加熱するための恒温槽、
などがある。
図1に示す例において、加熱手段54には、恒温槽が用いられている。
[1.5. 排ガス回収部]
排ガス回収部60は、暴露容器52から排出される排ガスを回収するためのものである。排ガス回収部60は、回収容器62、62…と、冷却手段64とを備えている。各回収容器62、62…は、配管66を介して各暴露容器52、52…に接続されている。
図1に示す例において、排ガス回収部60は、4個の回収容器62、62…を備えているが、これは単なる例示であり、回収容器62、62…の個数は、目的に応じて任意に選択することができる。
回収容器62、62…を用いて排ガスを回収する方法としては、
(a)回収容器62、62…に排ガスを直接、捕集する第1の方法、
(b)回収容器62、62…に溶媒を入れ、そこへ排ガスをバブリングさせ、排ガス中の成分(例えば、酸成分)を溶媒に溶解させる第2の方法、
などがある。
回収容器62、62…は、過酸化水素ガスを含む排ガス又は過酸化水素を含む回収液と接触する。従って、回収容器62、62…は、少なくとも内表面が樹脂からなるものが好ましく、特にその内表面がフッ素樹脂から成るものが好ましい。
排ガスの回収方法として第1の方法を用いた場合、通常、回収容器62、62…内で水蒸気を含む排ガスの全部又は一部が凝縮して、回収液が得られる(回収手段)。
同様に、排ガスの回収方法として第2の方法を用いた場合、排ガス中の成分を含んだ回収液が得られる(回収手段)。排ガス中の成分を溶解させるための溶媒は、目的に応じて最適なものを選択する。溶媒としては、具体的には、
(a)純水、
(b)NaOHやKOHなどのアルカリを溶解させたアルカリ水溶液、
などがある。
特に、アルカリ水溶液を溶媒として用いると、HFやHCOOHなどの揮発性酸成分の回収率を上げることができる。
回収容器62、62…に排ガス中の成分を含む回収液が得られる場合において、回収容器62、62…にpH、電気伝導率、イオン成分濃度などを測定する手段(測定手段)を設けると、回収液のpH、電気伝導率、イオン成分濃度などを測定することができる。回収容器62、62…は、これらの測定手段のいずれか1つを備えていても良く、あるいは、2以上を備えていても良い。また、回収容器62、62…毎に、異なる測定手段を備えていても良い。
例えば、フッ素系電解質を過酸化水素ガスに曝すと、分解生成物としてフッ化水素酸が生成する。これを溶媒に溶解させ、得られた回収液中のF-濃度をイオン選択性電極やイオンクロマトグラフ装置で測定すると、F-イオン排出量を定量することができる。
同様に、試験片が電解質を含む場合において、排ガス中の成分を純水中に溶解させ、公知の方法を用いて回収液のpHや電気導電率を測定すると、電解質の劣化の程度を知ることができる。すなわち、測定されたpHや電気導電率は、電解質の劣化指標となる。
冷却手段64は、回収容器62、62…を冷却するためのものである。冷却手段64は、必ずしも必要ではないが、冷却手段64を設けると、排ガスの回収率を向上させることができる。
冷却手段64としては、具体的には、氷浴、ペルティエ素子による冷却、冷凍機(水や冷媒を用いる)、水冷管を回収容器62、62…に巻き付けることによる冷却などがある。
[1.6. 過酸化水素ガスと接触する経路]
上述したように、過酸化水素ガスと接触する経路に過酸化水素を分解させる作用がある材料(例えば、ガラス)を用いると、過酸化水素が途中で分解し、高濃度の過酸化水素ガスを発生させるのが困難となる。
従って、少なくとも蒸発容器22、22…は、少なくともその内表面が樹脂からなるものが好ましい。特に、蒸発容器22、22…は、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなるものが好ましい。
さらに、過酸化水素ガスと接触する経路の全部は、少なくともその内表面が樹脂からなる部材で構成するのが好ましい。特に、高温に曝される部位には、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなる部材で構成するのが好ましい。
特に、過酸化水素ガスと接触する経路の中でも、過酸化水素気化部20−試験片暴露部50−排ガス回収部60間の経路(容器、配管、継ぎ手など)は、高濃度の過酸化水素水又は過酸化水素ガスに曝されるので、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなるものが好ましい。
[2. 化学的安定性評価方法]
本発明に係る化学的安定性評価装置を用いた化学的安定性評価は、以下のようにして行う。
[2.1. 試験片]
まず、暴露容器52、52…内に試験片を挿入する。試験片は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。特に、試験片として燃料電池の構成要素を用いると、燃料電池作動環境下における構成要素の化学的安定性を迅速かつ正確に評価することができる。
試験片は、適当な大きさに切断して暴露容器52、52…内に装着する。必要に応じて、試験片をセラミックス又はフッ素樹脂製のフィルターで挟んでも良い。
ここで、「燃料電池の構成要素」とは、
(a)電解質膜、触媒層、MEA、シール材などの有機材料を含む燃料電池の構成要素、
(b)拡散層、セパレータ、エンドプレート、マニホールド、配管などに用いられる炭素材料や金属材料、
などがある。
特に、有機材料は、過酸化水素により劣化しやすいので、これを含む燃料電池の構成要素は、試験片として特に好適である。
また、電解質膜、触媒層、MEAなどの電解質を含む試験片の場合、予め電解質のイオン交換を行い、これを試験片として用いても良い。このような試験片を用いると、化学的安定性に及ぼす金属イオンの影響を調べることができる。
金属イオンの中でも、II価のFeイオン(Fe2+)は、中性〜弱酸性下でも溶解度が高く、イオン交換により電解質内に導入しやすく、フェントン活性を高める作用がある。従って、電解質をFe2+イオンによりイオン交換すると、電解質の劣化を促進し、短時間での評価が可能である。
但し、III価のFeイオン(Fe3+)は、溶解度が小さく、イオン交換により電解質内に導入されにくい。また、フェントン活性を高める作用がある他の金属イオンは、一般に、高価であり、経済的ではない。
[2.2. 過酸化水素水の送液]
暴露容器52、52…内に試験片を装着した後、所定の温度に加熱された蒸発容器22、22…内に過酸化水素水を送液する。
[2.2.1. 過酸化水素濃度]
蒸発容器22、22…に供給される過酸化水素水の過酸化水素濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、過酸化水素濃度が高くなるほど、短時間で試験片の劣化が進行するので、試験を迅速に行うことができる。試験を効率よく行うためには、過酸化水素濃度は、0.03wt%以上が好ましい。過酸化水素濃度は、さらに好ましくは、0.3wt%以上である。
一方、過酸化水素濃度が高くなりすぎると、試験片の劣化は促進されるが、安全性や経済性に劣る。従って、過酸化水素濃度は、30wt%以下が好ましい。
本発明では、過酸化水素水の全量気化方式を採用しているので、過酸化水素濃度が3wt%以下であっても、入ガス中の過酸化水素濃度をバブリング方式よりも高めることができる。そのため、劣化が促進され、短時間での評価が可能である。また、高濃度の過酸化水素水を必ずしも用いる必要がないので、経済的であり、安全性も高い。
[2.2.2. 送液速度]
蒸発容器22、22…への過酸化水素水の送液速度は、暴露容器52、52…の空間体積(試験片の大きさに関係する)と、蒸発容器22、22…の大きさに応じて、適時適量を選択する。通常、一定速度で過酸化水素水を送液するが、目的に応じて送液速度を変動させても良い。
一般に、送液速度が遅すぎると、過酸化水素ガスの濃度が低下し、試験片を促進劣化させることができない。そのため、試験に長時間を要する。
一方、送液速度が速すぎると、気化潜熱が大きくなり、全量をスムーズに気化できなくなるおそれがある。また、相対的に多量の過酸化水素水を全量気化させるためには、巨大な蒸発容器22、22…が必要となったり、あるいは、蒸発容器22、22…の加熱温度が蒸発容器22、22…を構成する材料の常用耐熱限界を超えるおそれがある。
例えば、空間体積が10mL程度である場合、送液速度は、0.05〜0.5mL/minが好ましい。
[2.2.3. 加熱温度]
蒸発容器22、22…の加熱温度は、蒸発容器22、22…の材料、過酸化水素水の送液速度等に応じて、最適な温度を選択する。蒸発容器22、22…内に供給された過酸化水素水を短時間で全量気化させるためには、蒸発器22、22…の加熱温度は、過酸化水素水の沸点以上の温度が好ましい。一般に、高温で加熱するほど、気化速度が増すので、比較的多量の過酸化水素水を送液する場合には、できるだけ高温で加熱することが好ましい。ヒーターの加熱温度(恒温槽制御温度)は、140〜170℃が好ましい。
なお、従来のドライフェントン装置では、バブリング方式を用いており、バブリングに用いる過酸化水素水の量は、一般に500mL前後である。一方、本発明に係る装置は、全量気化方式を採用しているので、蒸発容器22、22…内にはごく少量の過酸化水素水しかないので、安全性が高い。
[2.3. キャリアガスの供給]
所定の温度に加熱された蒸発容器22、22…に所定量の過酸化水素水を送液すると、蒸発容器22、22…内に、水蒸気及び過酸化水素ガスを含むガスが発生する。次いで、蒸発容器22、22内に、キャリアガス供給部40からキャリアガスを供給すると、過酸化水素ガス及びキャリアガスを含む入ガスが暴露容器52、52…に供給される。
キャリアガスの流量は、目的に応じて最適な流量を選択する。一般に、キャリアガスの供給速度が遅すぎると、入ガスの湿度が80%を超える。入ガスの湿度が80%を超えると、飽和湿度下で試験をしているのと大差がなく、劣化を促進させるのが困難となる。従って、キャリアガスの供給速度は、0.05L/min以上が好ましい。
一方、キャリアガスの供給速度が速すぎると、キャリアガスによる冷却で蒸発容器22、22…の温度が下がりやすくなる。また、湿度が10%未満になると、僅かな湿度変化で劣化速度がばらつきやすくなり、再現性のある試験を行うのが困難となる。従って、キャリアガスの供給速度は、1L/min以下が好ましい。
[2.4. 暴露容器の湿度及び温度]
蒸発容器22、22…に所定量のキャリアガスを供給すると、暴露容器52、52…内には、所定の湿度を有する入ガスが供給される。暴露容器52、52…内の湿度及び温度は、目的に応じて最適なものを選択する。
一般に、暴露容器52、52…内の湿度が低すぎると、劣化速度にばらつきが生じやすくなる。従って、暴露容器52、52…内の湿度は、10%以上が好ましい。
一方、暴露容器52、52…内の湿度が高すぎると、劣化を促進させるのが困難となる。従って、暴露容器52、52…内の湿度は、80%以下が好ましい。暴露容器52、52…内の湿度は、さらに好ましくは、60%以下である。
一般に、暴露容器52、52…内の温度が低すぎると、試験に長時間を要する。従って、暴露容器52、52…内の温度は、90℃以上が好ましい。
一方、暴露容器52、52…内の温度が高すぎると、分解が激しく進行し、燃料電池の作動環境を反映しない過剰な試験となるおそれがある。従って、試験温度は、120℃以下が好ましい。
暴露容器52、52…内の湿度は、キャリアガス流量、過酸化水素水の送液速度などにより制御することができる。また、暴露容器52、52…内の温度は、暴露容器52、52…を加熱する加熱手段54の温度、入ガスの温度(蒸発容器22、22…を加熱する加熱手段24の温度)などにより制御することができる。
[2.5. 評価]
試験片を入ガスに暴露した後、暴露容器52、52…から試験片を回収する。また、回収容器62、62…から回収液を回収する。
暴露試験後の試験片は、試験目的に応じて、機械的性質の変化、重量変化、分子量変化などの測定に共される。
機械的性質の変化としては、例えば、
(1)引張試験による破断強度、弾性率、伸び等の測定、
(2)硬度計による硬さ測定、
(3)粘弾性測定、
などがある。
また、回収液は、試験目的に応じて、pH、電気導電率、イオン成分濃度などの測定に共される。
例えば、フッ素系電解質を含む試験片を評価した場合、回収液には、F-イオンが含まれる。従って、回収液に含まれるF-濃度を測定することにより、電解質の劣化の程度を知ることができる。
一方、炭化水素系電解質を含む試験片を評価した場合、一般に回収液にはF-イオンは含まれない。しかしながら、回収液の電気導電率やpHを測定することにより、電解質の劣化の程度を知ることができる。
[3. 化学的安定性評価装置の作用]
過酸化水素水を気化させる方法としては、例えば、バブリング法、超音波振動法などが考えられる。しかしながら、バブリング法や超音波振動法では、相対的に多量の過酸化水素水が必要であり、経済的ではない。また、バブリング法や超音波振動法では、過酸化水素濃度の高いガスを発生させることができない。そのため、劣化の促進倍率が低く、評価には長時間を要する。さらに、多量の過酸化水素水を扱うため、安全性にも問題がある。
これに対し、蒸発容器22、22…内に相対的に少量の過酸化水素水を送液し、これを全量蒸発させると、試験片を過酸化水素ガスに安定して暴露できる。また、蒸発容器22、22…内に送液された過酸化水素水が直ちに気化するので、過酸化水素を無駄なく使用でき、経済的である。
また、過酸化水素水を長時間加熱することがないため、長時間の加熱期間中に過酸化水素が分解して、過酸化水素水中の過酸化水素濃度が低下するのを防ぐことができる。この時、蒸発容器22、22…として、少なくともその内表面が樹脂(特に、フッ素樹脂)であるものを用いると、過酸化水素の分解をさらに抑制することができる。
また、過酸化水素水は沸騰気化しているため、過酸化水素水をバブリングしたり、超音波振動子で気化させる場合に比べて、試験片を高濃度(高いガス分圧)の過酸化水素ガスに暴露することができる。そのため、劣化の促進倍率が高く、短時間で評価を行うことができる。しかも、高濃度の過酸化水素水を大量に加熱する必要がないので、安全であり、廃液処理コストも少ない。
さらに、高濃度の過酸化水素ガスを安定して発生させることができるので、120℃以下の低温・低湿度下において迅速に化学的安定性を評価することができる。
(実施例1、比較例1)
[1. 試験方法(実施例1)]
[1.1. 暴露試験]
図1に示す化学的安定性評価装置を用いて、電解質膜の評価を行った。暴露容器52、52…には、外径120φ、内径90φのPTFE製容器を用いた。蒸発容器22、22…には、内容積500mLのPTFE製容器を用いた。回収容器62、62…には、内容積500mLのPE製容器を用いた。
湿度コントロール用のN2ガスを、ニードルバルブ付きの流量計42、42…を通して蒸発容器22、22…に送った(N2=0.1L/min〜1.0L/min)。
送液装置32には、テルモ社製のPE製注射器(60mL)と、KD Scientific社製シリンジポンプ2台(1台に2本の注射器をセット)とを用いた。配管34、34…には、外径2φのPTFEチューブを用いた。過酸化水素水の濃度は1wt%、送液速度は0.12mL/min、送液量と時間は36mL/5hrとした。
試料の炭化水素系電解質膜(60mm×60mm□)は、PTFE製の網2枚で挟んで、暴露容器52、52…内部に固定した。評価装置のパイプ及び継ぎ手は、すべてPTFE製とした。また、ガスが通過する恒温槽24、54の外側にある配管56、56…は、リボンヒータで125℃に加熱した。
[1.2. 評価]
暴露容器52、52…を通過したガスを、超純水(σ<1μScm-1)100mLを入れた回収容器62、62…にバブリングさせ、酸性ガス成分を捕集した。回収率は約95%、回収液総量は約130mL(初期水量100mL+回収過酸化水素水30mL)であった。酸性ガス成分及びH22ガスの回収率を上げるため、回収容器62、62…を断熱材で囲まれた氷浴64中に沈めた。
捕集された酸成分の量に対応する指標として、回収液の導電率を簡易導電率計(堀場製作所製;Twin cond B-173)で、pHをpHメータ(堀場製作所製;F−7、緩衝溶液pH4.0とpH2.0で較正)で調べた。
さらに、試験前後で80℃×2hrの真空乾燥処理を施して膜重量を計測し、重量変化ΔWを求めた。
[2. 試験方法(比較例1)]
[2.1. 暴露試験]
試料の炭化水素系電解質膜(60mm×60mm□)は、PTFE製の網2枚で挟んで、暴露容器内部に固定した。蒸発容器に濃度1wt%の過酸化水素水500mLを入れ、80℃に加熱した。蒸発容器内の過酸化水素水にN2ガスを0.3L/minの速さでバブリングし、得られた過酸化水素ガスを、100℃に加熱した暴露容器に送った。暴露時間は、5時間とした。
[2.2. 評価]
実施例1と同様の手順に従い、評価を行った。
[3. 結果]
[3.1. 回収液の電気導電率]
図2に、全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、回収液の電気導電率σの相対湿度RH依存性を示す。また、図3に、全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、電解質膜の重量変化ΔWの温度依存性を示す。さらに、図4に、全量気化方式を用いて暴露試験を行ったときの、回収液の電気導電率σ及びpHの温度依存性を示す。
図2〜図4より、以下のことがわかる。
(1)バブリング方式(比較例1)の場合、回収液のσ=1μScm-1、pH=5.9であるのに対し、全量気化方式(実施例1)の場合、100℃、RH=30%の条件下(図2)では、回収液のσ=4μScm-1、pH=5.3であった。すなわち、バブリング方式では、酸性成分の排出が小さく、劣化速度が小さいことが判明した。
(2)湿度60%以下では、劣化が進み、酸性成分の放出が著しくなる(図2)。
(3)N2ガス流量=0.3L/minの場合、暴露温度120℃では、分解が激しくなり、重量変化が極端に大きくなる(図3)。120℃を超える暴露温度は、試験温度としてはやや過剰である。
(4)N2ガス流量=0.3L/minの場合(相対湿度31〜47%に相当)、暴露温度が高くなるほど、電解質の劣化が激しくなる。その結果、回収液の電気導電率σの上昇と、酸性成分排出量の増加によるpHの低下が起こる(図4)。
(実施例2)
[1. 試験方法]
[1.1. 試料]
実施例1とは別の炭化水素系電解質膜(9×55mm)を用意し、酸基の10%を各種イオンでイオン交換した。すなわち、膜を各種金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、又は、リン酸水素塩の水溶液50mLに80℃×8hr浸漬した。例えば、Fe2+を2.1ppm含む水溶液50mLに膜を浸漬する場合、膜中の酸基置換量は10%に相当する。金属イオンを含む水溶液に浸漬した後、膜を超純水で2回以上洗浄した。
[1.2. 暴露試験]
試料を110℃に加熱した暴露容器に固定し、図1に示す装置を用いて暴露試験を行った。過酸化水素水濃度=1wt%、N2=0.3L/min、送液加速度=0.12mL/min、暴露時間=1hrとした。
[1.3. 評価]
実施例1と同様の手順に従い、回収液の電気導電率σ及び膜の重量変化ΔWを測定した。
[2. 結果]
表1に、結果を示す。表1より、以下のことがわかる。
(1)炭化水素系電解質をテトラブチルアンモニウムでイオン交換した場合、入手ままに比べて化学的安定性か改善される。
(2)炭化水素系電解質をFe2+、Cu2+、Pd2+、Ru3+などの遷移金属イオンでイオン交換した場合、入手ままに比べて化学的安定性が悪化する。
Figure 2011089828
(実施例3)
[1. 試験方法]
[1.1. 試料]
実施例2で用いた炭化水素系電解質(HC系膜)と、パーフルオロ系電解質膜(F系膜、大きさ9×55mm)とを用意した。これらの膜について、Fe2+イオン濃度を変えた以外は、実施例2と同様にして、イオン交換を行った。
[1.2. 暴露試験]
図1に示す装置を用いて、暴露試験を行った。過酸化水素水濃度=3wt%、送液速度=0.12mL/min、相対湿度=55%(N2=0.1L/min)、暴露温度×時間=120℃×5hrとした。
[1.3. 評価]
実施例1と同様の手順に従い、回収液の電気導電率σを測定した。
[2. 結果]
図5に、回収液の電気導電率σのFe2+濃度依存性を示す。HC系膜では、F系膜で見られる式(1)で表す高濃度鉄イオン導入による・OHラジカル安定化作用は見られなかった。
Fe2++・OH→Fe3++OH- ・・・(1)
(実施例4)
[1. 試験方法]
外径18mmφのガラス製試験管と、PTFE製試験管を用意し、各々0.3wt%の過酸化水素水を5mL加えた。これらをアルミ製サーモブロックにいれ、107℃沸騰加熱(空気冷却還流)させた。その後、過酸化水素水を冷却し、KI法で過酸化水素濃度の維持率を調べた。
[2. 結果]
ガラス製試験管の維持率は92%であるのに対し、PTFE製試験管の維持率は99%であった。この事から、沸騰気化式の過酸化水素蒸気暴露試験機の蒸発容器には、ガラス製品は不適当であると判断した。
(実施例5)
[1. 試験方法]
実施例1で用いたシリンジポンプ、及び、メタロールポンプ(しごきポンプ)を用いて、濃度1wt%の過酸化水素水を送液した。送液速度は、0.12mL/minとし、送液時間は、5hr/日とした。また、過酸化水素水を5hr送液する毎に、膜の劣化速度を評価した。その他の試験条件は、実施例1と同様とした。
[2. 結果]
メタロールポンプで送液した場合、送液速度は次第に低下し、10日目には0.09mL/minまで低下した。これに伴い、膜の劣化速度も低下した。さらに、14日目には、外径2φのPTFEチューブに穴が開き、試験を行うことが不可能になった。
一方、シリンジポンプで送液した場合、10日経過後も送液速度は0.12mL/minと一定であった。また、膜の劣化速度に低下は見られなかった。
(実施例6)
[1. 試験方法]
図1に示す装置を用いて、種々のパーフルオロ系電解質膜(膜種類、添加剤、膜厚さ等が異なる)の過酸化水素蒸気暴露試験を行った。暴露温度×暴露時間=120℃×5hr、過酸化水素水濃度=20wt%、送液速度=0.12mL/min、N2ガス流量=0.85L/minとした。
暴露試験後、回収液の電気導電率σ及びF-濃度を測定した。さらに、F-濃度からF-排出速度を算出した。
[2. 結果]
図6に、回収液の電気導電率σとF-排出速度との関係を示す。
図6より、電気導電率σとF-排出速度との間に良好な対応関係があることがわかる。すなわち、F-排出速度は、F-濃度を測定しなくても、回収液の電気導電率σを測定することによって、推定可能であることがわかる。
(実施例7)
[1. 試験方法]
[1.1. 暴露試験]
図1に示す装置を用いて、炭化水素系電解質膜(大きさ60mm×60mm、厚さ10μm)の過酸化水素蒸気暴露試験を行った。N2ガス流量(希釈率)=0.3L/min一定として、過酸化水素水濃度と温度を変えて5hr暴露した。
[1.2. 引張試験]
暴露試験後の膜について、引張試験を行った。クロスヘッドスピードは、10mm/minとした。
[2. 結果]
図7に、暴露時の過酸化水素濃度及び温度による電解質膜の最大応力(引張強さ)の変化を示す。
図7より、高温暴露かつ高濃度過酸化水素蒸気暴露では、最大応力の低下が著しくなることがわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る化学的安定性評価装置は、過酸化水素ガス雰囲気下における各種材料(例えば、電解質膜、触媒層、膜電極接合体、シール材などの燃料電池の構成要素として用いられる材料)の化学的安定性を迅速に評価する装置として用いることができる。
10 化学的安定性評価装置
20 過酸化水素気化部
22 蒸発容器
30 過酸化水素水送液部
40 キャリアガス供給部
50 試験片暴露部
52 暴露容器
60 排ガス回収部

Claims (6)

  1. 蒸発容器内に送液された過酸化水素水を加熱手段を用いて蒸発させ、過酸化水素ガスを含むガスを発生させる過酸化水素気化部と、
    前記蒸発容器内に前記過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液部と、
    前記蒸発容器内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、
    試験片を収容するための暴露容器内に、前記蒸発容器内で発生した前記過酸化水素ガス及び前記キャリアガス供給部から供給される前記キャリアガスを含む入ガスを供給する試験片暴露部と、
    前記暴露容器から排出される排ガスを回収する排ガス回収部と
    を備えた化学的安定性評価装置。
  2. 前記蒸発容器は、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなる請求項1に記載の化学的安定性評価装置。
  3. 前記過酸化水素気化部−前記試験片暴露部−前記排ガス回収部間にある前記過酸化水素ガスを含むガスと接触する経路の全部は、少なくともその内表面がフッ素樹脂からなる請求項1に記載の化学的安定性評価装置。
  4. 前記過酸化水素送液部は、前記過酸化水素水を前記蒸発容器に供給するためのシリンジポンプを備えている請求項1から3までのいずれかに記載の化学的安定性評価装置。
  5. 前記排ガス回収部は、
    前記排ガスに含まれる成分の一部を溶媒に溶解させ又は前記排ガスに含まれる成分の全部又は一部を凝縮させ、回収液を得る回収手段と、
    前記回収液のpH、電気伝導率、及び、イオン成分濃度のいずれか1以上を測定する測定手段と
    をさらに備えた請求項1から4までのいずれかに記載の化学的安定性評価装置。
  6. 前記試験片は、有機材料を含む燃料電池の構成要素である請求項1から5までのいずれかに記載の化学的安定性評価装置。
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