JP2011088864A - インフルエンザウイルスに対するベクターワクチン - Google Patents

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Abstract

【課題】幅広い種類のインフルエンザウイルスに対して高いワクチンの効力を示すベクターワクチンを提供する。
【解決手段】E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35アデノウイルスベクターへ、
1)インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子、または
2)インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、マトリクスタンパク質(M)および核タンパク質(NP)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子
のいずれかを発現できるように組み込んでなる、インフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを提供する。
【選択図】なし

Description

本願は新規インフルエンザウイルスワクチンに関する。詳細には、本願発明は幅広い種類のインフルエンザウイルスに対して高いワクチンの効力を示すベクターワクチンに関する。
近年、H5の鳥インフルエンザのヒトでの大流行の可能性が出現しつつあり、更にH1の変異した豚インフルエンザウィルスが、現にヒトで大流行を起こしているが、インフルエンザ、特にA型インフルエンザは、世界的規模で流行することがある重大なウイルス感染疾患の一つである。
インフルエンザウイルスは抗原変異の頻度が比較的高いために、変異した抗原を有するインフルエンザウイルスに十分に対応できインフルエンザウイルス感染を高い確率で予防できるワクチンは未だ開発されていないのが実情である。
現在までに開発および実用化されているインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンの主なものは、ヘマグルチニン(HA)タンパク質またはニューラミニダーゼ(NA)タンパク質に対する中和抗体の誘導を目的とするものである。しかし、HAタンパク質やNAタンパク質はウイルス株により抗原性の変異の度合いが大きいため、これらワクチンは、インフルエンザウイルスの変異への対応が不十分で、効果を十分に発揮できない場合があるという欠点があった。
また、最近になって、遺伝子工学技術の進歩によりDNAワクチンが開発されている。DNAワクチンとしては組み換えプラスミドを用いたものが一般的であり、目的の抗原をコードするDNAを含む組み換えプラスミドを生体内に投与することによって、生体内で当該DNAによってコードされる抗原性を有するアミノ酸配列が発現し、このアミノ酸配列により免疫反応が生体内で惹起される。しかし、ある特定のプラスミドDNAワクチンを生体に投与しても、喚起される免疫反応の程度は一定ではなく、試験動物の種類、DNAの種類、並びに接種方法などにより免疫反応の程度は多様であり、DNAプラスミドがDNAワクチンとして有用であるかどうかを予測することは一般に困難である。
インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンとしては、インフルエンザAヌクレオプロテイン(NP)をコードするプラスミドDNAがインフルエンザウイルス感染の予防に役立つことが報告されている(非特許文献1および2)。Ulmerらはウイルス内のタンパク質であるヌクレオプロテイン(NP)をコードするDNAをワクチンとして用いることにより、抗原変異にほとんど影響を受けることなく細胞性免疫を誘導し、より強い感染防御効果を達成することに成功している。また、本発明者はインフルエンザウイルスのマトリックスプロテインまたはその抗原性エピトープをコードする塩基配列を有するDNAを含むインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを提案している(特許文献1)。
かかるDNAワクチンは簡便で安全なワクチンとして実用が待たれているが、一方でDNAワクチンはその低い発現量から接種回数が必然的に増えることが予測される。この点を解消できるワクチンとして、組換えウイルスベクターワクチンが提案されている。組み換えウイルスベクターワクチンを用いれば少ない接種回数で十分な量の遺伝子発現とそれから得られる免疫反応、特に抗体産生反応が増強されることが期待される。
組み換えウイルスベクターワクチンを調製するためのウイルスベクターとしては、種々のものが知られており、代表的なものとしてはワクチニアウイルスAnkara株(MVA)およびアデノウイルスが挙げられる。
インフルエンザ感染防御のための組み換えウイルスベクターワクチンとしては、アデノウイルスベクターへインフルエンザのポリペプチドをコードする核酸を導入して得られるウイルスベクターワクチンが提案されている(特許文献2)。特許文献2ではワクチンの作成にインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)をコードする核酸が用いられている。また特許文献3にもアデノウイルスベクターへトリインフルエンザ抗原又は免疫原をコードする配列を導入してなる組み換えウイルスベクターワクチンが開示されている。特許文献3においては免疫原として様々のタンパク質を用いて良いことが提案されているが、実施例で確認されているのはHAをコードする核酸のみである。このほか、HAの抗原遺伝子としてH1−H9の共通したコンセンサス配列を導入したインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンについても提案されている(非特許文献3および4)。
一方、本発明者は改変アデノウイルスベクターを用いたHIV感染防御用のワクチンを提案している(特許文献4)。非増殖型5型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子が35型アデノウイルスファバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35ベクターを用い、ここへHIVのエンベロープ蛋白もしくはそれと同等の機能を有するその変異体をコードする遺伝子が発現可能なように組み込まれたベクターワクチンである。このAd5/35ウイルスベクターを用いて作成したワクチンは非常に強い免疫増強能を有し、ヒト免疫不全ウイルス感染防御に有用であることが示されている。
特開2001−151698号公報 特表2008−522621号公報 特表2009−512421号公報 特開2007−37402号公報
Ulmer, 1993, Science, 259, 1745-1749 Donnelly, 1995, Nature Med., 1, 583-587 Holman DH, Vaccine 2008, 19;26(21):2627-30 Chen MW, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2008 Sep 9:105(36):13538-43
本発明は、幅広い型のインフルエンザウイルス感染を防御することができ、強い免疫増強能を有する、インフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを提供することを目的とする。
本発明は、E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35アデノウイルスベクターへ、
1)インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子、または
2)インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子
のいずれかを発現できるように組み込んでなる、インフルエンザウイルス感染防御用ウイルスベクターワクチンを提供する。
本発明において用いられるAd5/35アデノウイルスベクターとしては、Ad5/35アデノウイルスベクターとしては、そのヘキソンの超可変領域5(HVR5)を変化させた、改変Ad5/35アデノウイルスベクターを用いることがより好ましい。
本発明において用いられるマトリクスタンパク質(M)としてはM1とM2を組合せて用いても、M2蚤を単独で用いてもよい。
本発明のインフルエンザウイルス感染防御用ウイルスベクターワクチンはヒトに対する安全性が非常に高く、強い免疫増強能を有しており、幅広い型のインフルエンザウイルスに対する防御が可能である。また、ヒトを含む哺乳類やニワトリを含む鳥類等、脊椎動物のインフルエンザ感染防御に用いることができる。
本発明で用いる改変Ad5/35アデノウイルスベクターの模式図である。 本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンの模式図である。上段が旧来型のAd5/35アデノウイルスベクターワクチン、下段がAd5/35ヘキソンの超可変領域5(HVR5)を変化させた改変Ad5/35アデノウイルスベクターワクチンを示す。 本発明で用いるAd5/35アデノウイルスベクターを用いて作成した抗HIVワクチンによる抗体産生を、MVAウイルスベクターを用いたワクチン並びに蛋白抗原と比較した試験の結果を示す。 本発明で用いるAd5/35アデノウイルスベクターを用いて作成した抗HIVワクチンによる細胞性免疫増強能を、MVAウイルスベクターを用いたHIVワクチン並びに蛋白抗原と比較した試験の結果を示す。 Ad5/35アデノウイルスベクターと、改変Ad5/35アデノウイルスベクターそれぞれへインフルエンザウイルスのHAをコードする核酸を組み込んでなるベクターワクチンの免疫原性の比較結果を示す図である。 Ad5アデノウイルスベクターと、Ad5/35アデノウイルスベクターと、改変Ad5アデノウイルスベクターと、改変Ad5/35アデノウイルスベクターそれぞれへインフルエンザウイルスのHAをコードする核酸を組み込んでなるベクターワクチンを組み合わせて初回免疫並びに追加免疫に用いた場合の細胞性免疫の増強能を示す図である。 実施例1で用いたベクターワクチンの遺伝子配列を示す図である。 改変Ad5/35アデノウイルスベクターへ各種抗原を導入して調製したウイルスベクターワクチンの感染防御効果を示す図である。 改変Ad5/35アデノウイルスベクターへ各種抗原を導入して調製したウイルスベクターワクチンの、複数のサブタイプのインフルエンザウイルスに対する感染防御効果を示す図である。 実施例2で用いたベクターワクチンの遺伝子配列を示す図である。 実施例2の結果を示す。
本明細書において、「ワクチン」という用語は免疫応答を生じ得る物質を意味する。
本明細書において、「インフルエンザ」という用語は、特に断らない限り最も広義のインフルエンザウイルスを意味する。インフルエンザウイルスは一般的には、インフルエンザウイルス属(これはさらにA型とB型に分類される)とインフルエンザウイルスC型属とに分類されるが、本明細書で「インフルエンザウイルス」という用語を使用する場合には、特に断らない限り、これら全てを包含し、またインフルエンザウイルスのあらゆる変異体をも包含するものとする。
本明細書において、「ウイルスベクターワクチン」とは、ウイルスベクターへ抗原性タンパク質またはペプチド、もしくはそのエピトープをコードする核酸を組み込んでなるワクチンを言うものとする。
本明細書において、あるタンパク質の抗原性エピトープとしては、当該タンパク質の免疫原性に関連するエピトープ(例えば、細胞傷害性T細胞が認識するエピトープ)であるペプチドを含む限りは、完全タンパク質でもあるいはその断片でもよい。従って、本発明で用いる特定のタンパク質またはその抗原性エピトープをコードする遺伝子は、当該タンパク質の全長をコードする必要はなく、エピトープを含む一部の断片をコードするものでもよい。
本明細書において単に「マトリックスタンパク質(M)」、「核タンパク質(NP)」および「ヘマグルチニン(HA)」という場合、その完全タンパク質のみならず、抗原性エピトープを有するその断片をも含む意味で用いられる場合がある。
本発明においては、E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35アデノウイルスベクターを用いる。ここで、「E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35アデノウイルスベクターへ特定のタンパク質、ペプチドまたはその抗原性エピトープをコードする遺伝子の何れかを発現できるように組み込んでなる」とは、最終的なウイルスベクターワクチンの構成がE1欠損型非増殖型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されており、かつ、特定のタンパク質等が発現できるように当該遺伝子が組み込まれているものであれば、どのような手順で調製されたものであってもよい。例えば一旦E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているE1欠損型Ad5/35アデノウイルスベクターを作成した後に所望のタンパク質等をコードする遺伝子を組み込んで調製する、E1欠損型Ad5アデノウイルスベクターへ所望のタンパク質等をコードする遺伝子を組み込んだ後あるいはそれと同時にファイバータンパク質をコードする遺伝子を置換して調製する、等の手順が考えられる。アデノウイルスベクターワクチンの調製方法は知られており、例えば特開2007−37402号公報に記載の方法に準じて行えばよい。
具体的には初期遺伝子E1が除去された5型アデノウイルスのファイバータンパク質をコードする遺伝子を35型アデノウイルスのファイバータンパク質をコードする遺伝子にて、該35型アデノウイルスのファイバータンパク質をコードする遺伝子が発現可能なように置換する。この置換は遺伝子組み換えの常套法により行えばよく、かかる方法は例えば特開2007−37402に説明されている。なお、35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子およびそのアミノ酸配列は既に公知であり、Mei, Y.F. et al., Virology 206 (1), 686-689, 1995: Dmitry M. et al., J. Virology, Mar. 2000, 2567-2583; NCBI U10272; NCBI AAA66361.1 などに記載されている。ファイバー蛋白は、シャフトとノブから構成され、本発明では通常これらから構成されるファイバー蛋白をコードする遺伝子を用いる。また本発明において、より好適にはE1領域に加えてE3領域もまた欠損している、E1/E3欠損Ad5/35アデノウイルスベクターを用いる。例えば、E1/E3領域欠損で全長のAd5/35ゲノムを含むpAdHM4プラスミド(Mizuguchi, H., Kay, M. A. 1998. Human Gene Therapy. 9:2577 2583)を用いてウイルスベクターワクチンを調製すればよい。
本発明においてAd5/35アデノウイルスベクターとしては、そのヘキソンのhyper variable region(HVR)5を変化させた、改変Ad5/35アデノウイルスベクターを用いることがより好ましい。この改変Ad5/35アデノウイルスベクターとしては、14アミノ酸からなるネイティブのHVR5部分へスペーサーを導入する、アミノ酸を一部変異させる、等が例示される。改変Ad/35アデノウイルスベクターとしては例えばJ. Gene Med. 2009: 11:570-579に記載のものが例示され、例えば、269TTEATAGNAGDNLTP282をTTAATAGAGANLTPやLGSHHHHHHLGSとしたものなどが好適に用いられるがこれらに限定されるものではない。
本発明において好適に用いられる改変Ad5/35アデノウイルスベクターは、ヒトに存在するAd5型に対する抗体の大部分を回避し、強い免疫原性を与えることが出来る。また、Ad5/35のヒト樹状細胞への親和性が強化されており、非常に免疫原性が強い。またAd5/35アデノウイルスベクターは体内で増殖しない為に、安全性は非常に高いという利点を有する。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンは、Ad5/35アデノウイルスベクターへ
1)インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子、または
2)インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)、マトリクスタンパク質(M)およびヘマグルチニン(HA)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子
のいずれかを発現できるように組み込んで調製する。
多くのサブタイプのインフルエンザウイルスのM(M1およびM2)、NP、HAの配列は公知である。かかる配列としては防御の対象とするサブタイプのインフルエンザウイルスより得られる配列を用いればよいが、好適には多くのインフルエンザウイルスのサブタイプ間で保存されているコンセンサス配列を使用する。かかる配列を使用することによって、より広範囲の型のインフルエンザウイルスを防御可能なインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを得ることができる。コンセンサス配列としては、現在までに報告されているものを採用しても、新たに検索してもよい。実際に本願発明者らがトリ、ヒト、ブタなど、今まで報告されている約200種のウイルスのシークエンスを検討した結果、NPは92−95%、Mは92−97%(M1;95−97%、M2;92−95%)と、それぞれ今まで分離され報告されているものはほぼ同一のアミノ酸配列を持っていることを確認した。またHAについてもそのコンセンサス配列が例えばChen MWら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 9;105(36):13538-43.に報告されており、これらの情報に基づいて適宜好適な配列を選択すればよい。
本発明のM(M1および/またはM2)、NP、およびHAまたはその抗原性エピトープをコードする遺伝子としては、任意のインフルエンザウイルスのサブタイプより単離されるインフルエンザウイルスのゲノムDNAであっても、cDNAであってもよい。また、本発明において、ヒトのインフルエンザ感染を防御するためにインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを調製する場合は、M(M1、M2)、NPおよびHAまたはそのエピトープをコードする遺伝子は、そのDNAコドンをヒト型化されたものであることが好ましい。DNA配列のヒト型化については良く知られており(例えばNakamura Y ら、Nucleic Acids Res.2000 28;292,又はwww.kszusa.or.jp/codon/)、かかる情報に基づき適当なソフトウエアを用いて得ることが可能である。
インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M)の配列は例えばLAMB,RA.,1981, Virology, 112, 746-751等に開示されており公知である。本発明において用いられるマトリックスタンパク質としては、M1およびM2の何れを用いても、または両者組み合わせて用いてもよい。好適にはM2単独、またはM1およびM2を組合せて用いるのがよい。M2タンパク質のエピトープ領域を含む配列として、例えばMSLLTEVETPTRNGWGCSCSDSSDLILWILDRLFFKCIYRRLKYを用いることが可能である。
NPタンパク質及びその発現遺伝子は公知であり、NP発現遺伝子は、1993年に入りUlmer 等によりDNAワクチンで使用されてきた(Ulmerら,Science 1993, 259,1745, , Fuら J.Virology 1997 71; 2715)。NPタンパク質は多くの細胞性免疫誘導エピトープ(Townsendら J.Exp.Med.. 1984,160; 552, Yewdwll ら PNAS 1985 82; 1785)や、インフルエンザウイルスに対する高い抗体価を誘導することが知られている(ChenらJ.Virology, 2001 ,75; 11630)。
本発明において用いられるHAタンパク質およびその発現遺伝子についても数多くの報告があり、コンセンサス配列を用いたワクチンの製造については例えば(ChenらJ.Virology, 2001 ,75; 11630)に開示されている。
一例としては、下記実施例で用いたHA、MおよびNPのアミノ酸配列、これらの配列に1又は複数の置換、欠失、付加アミノ酸を有し、同等の効力を示すアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
本発明においてAd5/35アデノウイルスベクターまたは改変Ad5/35アデノウイルスベクターへ本発明の特定の遺伝子を組み込むには、標準的な遺伝子組み換え法を用いて行えばよく、特に限定されない。本発明においては各抗原をコードする遺伝子の転写がそれぞれに特有の別個のプロモーターによって指令を受けることができるように、抗原をコードする遺伝子とプロモーター配列とをベクター内に配置することができる。あるいは、1つのプロモーターが、互いにインフレームで接続された2以上の抗原をコードする遺伝子の発現を駆動し、融合タンパク質を発現するように、抗原をコードする遺伝子とプロモーター配列とを配置してもよい。プロモーターの種類、並びに抗原をコードする遺伝子配列とプロモーターとの配置関係は当業者により適宜設定することができる。
本発明において、好ましくは1つのプロモーターがインフレームで接続された上記抗原をコードする遺伝子の発現を駆動するようデザインされているものが特に好適に用いられる。本発明において用いられるインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンの模式図を図2に示す。上が従来型のA5/35アデノウイルスベクターワクチンであり、下が改変A5/35アデノウイルスベクターワクチンの模式図である。
また、本発明のベクターワクチンを製造するにあたって、NPとM、またはHA、MとNPを配する順は特に限定されず、任意の順とすればよい。例えば、プロモーター配列に続けてHA―M―NP、NP−M、HA−NP−M2等の順とすることが例示される。また、所望により配列の間に発現を増強するエンハンサー部分をさらに導入してもよい。
本発明のベクターワクチンの調製法として、一例として下記のような手順が挙げられる。CAGプロモーターを含んだ発現カセットをシャトルベクターpHM5のSalI-HindIIIまたはSalI−PstI配列間に組み込み、さらにAd5/35型ウイルスベクターのDNAコスミドであるpAdHM34のPI−SceI−I−CeuI配列間に組み込み,得られたDNAを精製してE1遺伝子を持っているHEK293細胞にFuGene 6 (Roche Diagnostics, Indianapolis, 米国)を用いて遺伝子導入し、そこから得られるAd5/35型ウイルスベクターをHEK293細胞に感染し大量に培養させる。次にAd5/35型ウイルスの感染した細胞を超音波法で破壊した後、大きな細胞破壊物を1500rpmの遠心機にかけ大きな細胞の破片を取り除く。その後、上清部を超遠心塩化セシウム濃度勾配法によって精製し、透析して塩化セシウムを除去した後にPBSで適宜希釈してベクターワクチン溶液とすればよい。
または、Ad5/35ウイルスベクターに代えて、Ad5/35のヘキソンのHVR5領域を例えばLGSHHHHHHLGSをコードする遺伝子で置き換えられるよう、ヘキソン領域のXbaIサイトを置換した改変Ad5/35プラスミド遺伝子pAdHM62へ上記と同様にして発現カセットをI−CeuI/PI−SceIサイトに挿入してもよい。
こうして得られるプラスミド遺伝子を、FuGENE6T遺伝子挿入試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス、インディアナポリス、米国)を使用することによって、ヒトのE1遺伝子を持っている胚腎臓(HEK293)(Microbix Biosystems Inc.、トロント、オンタリオ、カナダ)の中に遺伝子導入して、増殖させることができる。
増殖した細胞を超音波法で破壊した後、1500rpmの遠心機にかけ大きな細胞の破片を取り除く。その後、上清部を超遠心塩化セシウム濃度勾配法によって精製し,透析して塩化セシウムを除去してベクターワクチンを得ることができる。PBSで適宜希釈してベクターワクチン溶液とすればよい
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンはヒトを含む哺乳類やニワトリ等鳥類を含む脊椎動物に投与され、投与を受けた動物にはインフルエンザに対する免疫が生じる。本発明で用いるDNAによってコードされるインフルエンザウイルスの由来のタンパク質またはそのエピトープペプチドが、これが抗原となって細胞傷害性T細胞が活性化されて細胞性免疫が喚起され(場合によってはB細胞も抗体産生細胞へと分化し、体液性免疫も喚起される)、インフルエンザに対する免疫が生じる。本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを用いる免疫は、インフルエンザの発症を予防することのみならず、インフルエンザ感染による症状の軽減化に役立つものである。
本発明のワクチンの投与方法としては、例えば、本発明のワクチンを適当な溶剤、例えば、PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等に溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填して注射剤を調製して、注射することにより投与される。注射剤には必要に応じて慣用の担体等を加えてもよい。本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンは、静脈、筋肉、腹腔、鼻腔、皮膚等に投与することができる。
本発明はまた、本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンと医薬上許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬上許容される担体としては、特に制限はなく、本発明のワクチンの効力を阻害しない限り通常の注射剤に配合される成分のいずれを含んでいてもよい。その他の成分、例えばアジュバント、安定剤、pH調整剤、保存剤などを含んでいてもよい。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンの投与量は、インフルエンザウイルス感染から宿主を保護するために効果的な免疫応答を誘発するのに有効なベクターワクチンの量であり、投与する対象、投与方法、投与形態等によって異なる。通常成人1人当たり10〜1013ウイルス粒子数の範囲、好ましくは1011〜1012ウイルス粒子数の範囲である。
本発明のベクターワクチンの投与回数は、インフルエンザウイルス感染から宿主を保護するために効果的な免疫応答を誘発するのに有効であるよう、適宜定めればよい。本願発明のベクターワクチンは、免疫増強能が高く、1回又は2回投与にて高い効果が期待される。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンは他のワクチンと組み合わせて用いても良い。この場合、第2のワクチンは本発明のワクチンとは別のベクター、例えばE1欠損アデノウイルスベクターAd5やE1欠損アデノウイルスベクターのヘキソンのHVR5を本発明に用いる改変Ad5/35ベクターと同様に改変した改変Ad5ベクター、その他公知のベクターワクチンの製造に用いられるベクター等を用いて調製されるベクターワクチンであっても、不活性化ワクチン等の抗原ワクチンであってもよい。また、本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンは、ベクターAd5/35および改変Ad5/35をそれぞれ用いたものを別個に作成し、これらを組み合わせて用いてもよい。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを2種類併用する場合、あるいは本発明のワクチンと第2のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを併用する場合、その投与の順は特に制限されず、どちらを先に投与してもよい。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンと第2のワクチンとは単一の医薬組成物に配合することなく、それぞれ別個の医薬組成物として調製し、同時あるいは逐次的に、あるいは同時に被験者に投与することができる。即ち、本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンは、本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンとは異なる第2のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンと併用することができる。この場合、本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンと第2のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンとを含むワクチンキットの形態で提供することもできる。本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを第2のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンと併用する場合、それらの投与の順番は制限されず、どちらを先に投与してもよい。また、第2のワクチンは、DNAワクチンでも抗原ベースのワクチン(すなわち、組換えタンパク質あるいは全死病原体など)の何れでもよい。一つの好ましい実施態様においては、第2のワクチンは抗原ベースのワクチンであり、本発明のベクターワクチンは、抗原ベースの第2のワクチンと同時に投与される。あるいはまた、別の実施態様においては、まず、本発明のベクターワクチンを投与して免疫応答を感作し、次いで、2週間から8週間後に、抗原ベースの第2のワクチンを投与することによって、免疫応答を高めることができる。また本願発明のワクチンと組み合わせる第2のワクチンとしては、この他にも蛋白ワクチン、強い抗原性を有するMAP法にて作成したM2やNPの合成ワクチン、あるいはホルマリン不活化ワクチン等が例示される。かかる第2のワクチンは上記のように数週間の間に追加免疫をしてもよく、または数年後に追加免疫をすることもあり得る。
本発明のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンについて、参考例並びに実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、以下の参考例並びに実施例においてインフルエンザウイルスA/Puerto Rico/8/1934株H1N1とA/SWNは横浜市立衛生研究所、神奈川県より、他のH3N2ウイルスは国立感染研究所ウイルス部より提供された株を用いた。
また、以下の参考例及び実施例においては、インフルエンザAウイルスA/Puerto Rico/8/1934株(H1N1)由来のHA、NP、M1およびM2配列をコードするDNAを用いてベクターワクチンを調製した。実施例で用いた遺伝子にコードされる各アミノ酸配列は下記のとおりである。
Figure 2011088864











Figure 2011088864
Figure 2011088864









Figure 2011088864
[参考例1]
改変Ad5/35アデノウイルスベクターの性質:
本願発明で用いられる改変Ad5/35アデノウイルスベクターにより調製されるベクターワクチンと、ベクターワクチンによく用いられるワクチニア(MVA)ベクターワクチンと比較した。本参考例においては、HIV−1のEnv抗原タンパク質を両ベクターへ導入してベクターワクチンを調製し、その免疫能を比較した。改変Ad5/35アデノウイルスベクターワクチンは、Ad5/35のヘキソンのHVR5領域を例えばLGSHHHHHHLGSをコードする遺伝子で置き換えられるよう、ヘキソン領域のXbaIサイトを置換した改変Ad5/35プラスミド遺伝子pAdHM62を用いて作成した。
改変Ad5/35アデノウイルスベクター、ワクチニアベクターへHIV−1のEnv抗原を組み込んだベクターワクチン、並びにHIV−1のEnvタンパク抗原を用いた。各群6匹のアカゲザルへそれぞれのベクターワクチンを0週および8週の2度免疫した。抗体産生能並びに細胞性免疫増強能を図3に示す。図3より明らかなように、改変Ad5/35アデノウイルスベクターを用いて調製したベクターワクチンはMVAを用いたワクチンと比しても極めて強い免疫能を示した。
[参考例2]
Ad5/35アデノウイルスベクターと改変Ad5/35アデノウイルスベクターの免疫能の比較:
Ad5/35アデノウイルスベクターと改変Ad5/35アデノウイルスベクターそれぞれを用い、HA抗原遺伝子を発現可能なように含むベクターワクチンを調製した。HA抗原遺伝子は、インフルエンザウイルスA/Puerto Rico/8/1934株H1N1(以下A/PR/8とする)より得た配列であって、配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子を用いた。
Ad5/35アデノウイルスベクターワクチンは、HAタンパク質の発現カセットをシャトルベクターpHM5のSalI-HindIIIまたはSalI−PstI配列間に組み込み、さらにAd5/35型ウイルスベクターのDNAコスミドであるpAdHM34のPI−SceI−I−CeuI配列間に組み込み,得られたプラスミドを精製してE1遺伝子を持っているHEK293細胞に導入し、増殖したものから得た。
改変Ad5/35アデノウイルスベクターワクチンは、HAタンパク質の発現カセットをシャトルベクターpHM5のSalI-HindIIIまたはSalI−PstI配列間に組み込み、Ad5/35のヘキソンのHVR5領域をLGSHHHHHHLGSをコードする遺伝子で置き換えられるよう、ヘキソン領域のXbaIサイトを置換した改変Ad5/35プラスミド遺伝子pAdHM62へ組み込み、得られたプラスミドを精製してHEK293細胞へ導入し、増殖したものから得た。
増殖した細胞を超音波法で破壊した後、1500rpmの遠心機にかけ大きな細胞の破片を取り除いた。その後、上清部を超遠心塩化セシウム濃度勾配法によって精製し,透析して塩化セシウムを除去してベクターワクチンを得た。PBSで適宜希釈してベクターワクチン溶液とした。吸光時計でOD260nmを測定し、1OD260nm=1012vp(ウイルス粒子)/mlでウイルス濃度を決定した。
Balb/Cマウスに0週に各々Ad5/35ウィルスベクターワクチンを1×1011VP/マウス免疫し、追加免疫として2週間後、同じ量のAd5/35ウィルスベクターワクチンまたは改変Ad5/35ウィルスベクターワクチンを免疫し、8週、14週、24週後の抗HA抗体価を測定した。HA抗原は遺伝子操作にてA/PR8より作製したものであり、その抗原によるELISAで抗体価を測定した。結果を図4に示す。
図4に示すようにAd5/35HAで免疫し、改変Ad5/35HAで追加免疫したとき(黒丸)、最も強い抗体価が得られた。
[参考例3]
Ad5/35アデノウイルスベクターと改変Ad5/35アデノウイルスベクターの細胞性免疫増強能の比較:
参考例2と同様にして、HAをコードする遺伝子を発現できるよう組み込んでなる、Ad5ウイルスベクターワクチン、改変Ad5ウイルスベクターワクチン、Ad5/35ウイルスベクターワクチン並びに改変Ad5/35ベクターウイルスワクチンを調製した。Balb/Cマウスに初回免疫としてAd5ウイルスベクターワクチンを投与し、2週間後に追加免疫として改変Ad5/35ウイルスベクターワクチンまたはAd5/35ウイルスベクターワクチンを投与した。28週後に各マウスより脾臓細胞を取り、その抗原(抗原はHAのタンパク)を脾臓細胞と同時に48時間培養した後、特異的に反応するINF−γ SFC(INF-γ spot forming cells)を測定してその細胞性免疫活性化能を測定した。
図5に示すように、改変Ad5/35ウイルスベクターを使用して得たベクターワクチンは強い抗体産生が見られた。以前の報告よりかなり多くのヒトが持つAd5型の抗体はAd5/35あるいはAd5に対する免疫阻止反応が極めて高いことが知られているが、本願発明で用いた改変Ad5/35ウイルスベクターは、生体内に存在するAd5に対する抗体の作用があまり影響せず強い免疫活性化能を発揮するものと考えられる。
改変Ad5/35ベクターDNAを含むpAdHM62にA/PR/8(H1N1)のNP,M2,HAをコードする遺伝子をそれぞれ挿入し、またはNP−M2をコードする遺伝子を挿入してベクターワクチンを作成した。具体的にはCAGプロモーターを含んだ発現カセットをシャトルベクターpHM5のSalI-HindIIIまたはSalI−PstI配列間に組み込み、pAdHM62のPI−SceI−I−CeuI配列間に組み込み,得られたDNAを精製してE1遺伝子を持っているHEK293細胞にFuGene 6 (Roche Diagnostics, Indianapolis, 米国)を用いて遺伝子導入し、そこから得られる改変Ad5/35型ウイルスベクターをHEK293細胞に感染し大量に培養させた。次に,改変Ad5/35型ウイルスの感染した細胞を超音波法で破壊した後、大きな細胞破壊物を1500rpmの遠心機にかけ大きな細胞の破片を取り除く。その後、上清部を超遠心塩化セシウム濃度勾配法によって精製し,透析して塩化セシウムを除去し、PBSに希釈してウイルス溶液とした。吸光時計でOD260nmを測定し、1OD260nm=1012vp(ウイルス粒子)/mlでウイルス濃度を決定した。実施例1のベクターワクチンの遺伝子構成を図6に示す。
得られたワクチンを各群10匹のBalb/Cマウスへ1×1011VP(ウイルス粒子)を経鼻投与にて免疫した。10日後に10LD50のA/PR/8(H1N1)ウイルスをネンブタノールにて麻酔した後経鼻的に投与して感染させた。感染後の生存率を調べた。結果を図7に示す。
また各ベクターワクチンにて同様に免疫したBalb/Cマウスへ、インフルエンザウイルスA/PR/8(H1N1)、A/WSN/33(H1N1)またはA/Udron/72(H3N2)のLD50量を経鼻的に感染させ、15日後の生存率を観察した。結果を図8に示す。改変Ad5/35にNP−M2をコードする遺伝子を挿入したベクターワクチンはA/PR/8のみならずA/SWN(H1N1)やA/Udron(H3N2)に対しても高い感染防御能を示したが、一方でHAのみを導入したベクターワクチンはそのような広い防御能は認められなかった。
改変Ad5/35ベクターDNAを含むpAdHM62にA/PR/8(H1N1)のHA−NP−M2をコードする遺伝子を挿入(実施例3)、又はHA、NP、M2をそれぞれコードする遺伝子を挿入したベクターワクチンを実施例1と同じ方法にて調製した。実施例3のベクターワクチンの遺伝子構造を図9に示す。
また不活化ワクチンとしては、発育鶏卵で培養したA/PR/8(H1N1)インフルエンザウイルスを約1%のフォルマリンにて24時間室温にて反応させたものを2度生理的食塩液にて洗浄したものを使用した。
各ベクターワクチンを1×1011VP(ウイルス粒子、2種類または3種類のベクターワクチンを投与する場合には、それぞれ1/2、1/3量ずつを同時に投与)をBalb/Cマウス筋肉内に免疫した。10日後、10LD50のインフルエンザウイルスA/PR/8(H1N1)またはA/Guizhou−X(H3N2)を経鼻的に感染させ、15日後の生存率を測定した。結果を図10に示す。
改変Ad5/35にHA−NP−M2をコードする遺伝子を挿入した実施例3のワクチンは両方の型のインフルエンザウイルスに100%の感染防御能を示した。しかしHAのみで作製したワクチンや、不活化ワクチンではこの様な作用は認められなかった。
上記実施例においてはA/PR/8(H1N1)由来のHA、NP、M2配列を用いたが、多くの型に見られる共通遺伝子配列を基にして配列を最適化した。HA、NP、M1およびM2として特に、下記アミノ酸配列をコードする遺伝子配列、特に好ましくはヒト化遺伝子配列を用い、これをプロモーター以下HA―M2−M1―NPの順で実施例1の手順に基づき導入して改変Ad5/35ベクターワクチンを調製する。本実施例のベクターワクチンは、A/PR/8(H1N1)のみならず、他の型のインフルエンザウイルスに対する防御において幅広く使用することが可能である。


Figure 2011088864
M2 1-97 配列番号6
MSLLTEVETPTRNGWECRCSDSSDPLVIAASIIGILHLILWILDRLFFKCIYRRLKYGLKRGPSTEGVPESMREEYRQEQQNAVDVDDGHFVNIELE
M1 1-252 配列番号7
MSLLTEVETYVLSIVPSGPLKAEIAQRLEDVFAGKNTDLEALMEWLKTRPILSPLTKGILGFVFTLTVPSERGLQRRRFVQNALNGNGDPNNMDRAVKLYKKLKREITFHGAKEVALSYSTGALASCMGLIYNRMGTVTTEVALGLVCATCEQIADSQHRSHRQMVTTTNPLIRHENRMVLTSTTAKAMEQMAGSSEQAAEAMEVASQARQMVQAMRTIGTHPSSSAGLKDDLLENLQAYQKRMGVQMQRFK
NP 1-228 配列番号8
RASVGRMVGGIGRFYIQMCTELKLSDYEGRLIQNSITIERMVLSAFDERRNKYLEIRRIWAAVKGVGTMVMELVRMIKRGINDRNFWRGENGRRTRVAYERMCNILKGKFQTAAQRAMMDIDPFRLLQNSQVFSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRVSSFIRGTRVVPRGQLSTARPEDVSFQGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMSNEGSYFFGDNAEEYDN

Claims (12)

  1. E1欠損非増殖型5型アデノウイルスのファイバータンパクをコードする遺伝子が35型アデノウイルスのファイバー蛋白をコードする遺伝子に発現可能なように置換されているAd5/35アデノウイルスベクターへ、
    1)インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチド、またはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子、または
    2)インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、マトリクスタンパク質(M)および核タンパク質(NP)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子
    のいずれかを発現できるように組み込んでなる、インフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  2. Ad5/35アデノウイルスベクターのヘキソンの超可変領域5(HVR5)のアミノ酸が改変されている、請求項1記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  3. Ad5/35アデノウイルスベクターのヘキソンタンパク質の超可変領域5(HVR5)の269TTEATAGNAGDNLTP282がTTAATAGAGANLTPまたはLGSHHHHHHLGSに置き換わっている、請求項1記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  4. インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、マトリクスタンパク質(M)および核タンパク質(NP)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子を発現できるように組み込んでなる、請求項1〜3いずれかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  5. インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、マトリクスタンパク質(M)および核タンパク質(NP)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープがA型インフルエンザに由来するものであり、A型インフルエンザを防御するために用いられる、請求項1〜4何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  6. A型インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスH1N1タイプである、請求項5に記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  7. インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、核タンパク質(NP)およびマトリクスタンパク質(M)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子の少なくとも1つが、複数の型のインフルエンザウイルスにおけるコンセンサス配列である、請求項1〜6いずれかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  8. インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)、マトリクスタンパク質(M)および核タンパク質(NP)由来のポリペプチドまたはこれらの抗原性エピトープをコードする遺伝子の少なくとも1つが、ヒト化された遺伝子である、請求項1〜7何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  9. プロモーターに続いてNP−M2がこの順で導入されている、請求項1〜8何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  10. プロモーターに続いてHA−NP−M2がこの順で導入されている、請求項1〜8何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  11. プロモーターに続いてHA―M―NPがこの順で導入されている、請求項1〜8何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチン。
  12. 請求項1〜11何れかに記載のインフルエンザウイルスに対するベクターワクチンを含む医薬組成物。
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