JP2011087976A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、白内障手術により摘出した水晶体の代わりに、眼球内に眼内レンズを挿入するための眼内レンズ挿入器具に関するものであり、詳しくは折り畳んだ後の眼内レンズを鑷子により把持して眼内に挿入することも可能な眼内レンズ挿入器具に関する。
白内障手術においては、超音波乳化吸引によって混濁した水晶体を除去し、その水晶体除去後の眼内へ人工眼内レンズを埋植する方法が広く行なわれている。埋植される眼内レンズには、光学部がポリメチルメタクリレート(PMMA)などの硬質材料からなる硬質眼内レンズと、シリコーンエラストマー、軟質アクリル、ハイドロゲルなどの柔らかい材料からなる軟質眼内レンズがある。硬質眼内レンズを用いる場合には、角膜、あるいは強膜に光学部の径とほぼ同じか、それよりやや大きな幅の切開創から眼内レンズを挿入する必要がある。一方、軟質眼内レンズを用いる場合には、光学部を折り畳むことにより更に小さな切開創から眼内レンズを眼球内に挿入することが可能となる。そして、小さな切開創により手術を行なうことで手術後の角膜乱視や感染症の危険性を回避することができる。かかる事情から近年においては、軟質眼内レンズが好んで用いられる傾向にある。
軟質眼内レンズを眼内に挿入する方法には、鑷子により折り畳んだ眼内レンズをそのまま直接眼内に挿入する方法の他に、インジェクターと呼ばれる専用の挿入器具を用いる方法がある。専用のインジェクターを使用することにより、鑷子を用いて眼内レンズを折り畳むよりも小さく折り畳むことができる。その結果、3mm以下の切開創口から眼内レンズ(以下、単にレンズともいう。)を眼内へ挿入することも可能となっている。
さらに、最近ではレンズの取扱時の細菌による汚染や、レンズの取扱時に起こり得る操作ミスの危険性を排除するために、レンズが予めインジェクター内にセットされているプリセット型のインジェクターも発表されている。そして、プリセット型インジェクターにおいては、出荷時のレンズ固定状態から使用時のレンズ移動状態に移行するために、光学部に応力をかけない状態でインジェクター内部にレンズを保持する機構と、押し出し機構により押し出し可能な位置に移動させるためのレンズ移動機構を有するものがある(例えば、特許文献1および2参照)。
しかし、前記特許文献に開示されたプリセット型インジェクターにおいては、使用時に固定状態から使用可能位置へレンズを移動させなければならず、移動操作に伴う不具合の危険性を排除することはできない。また、使用可能位置へレンズを移動し、光学部がほとんど変形していない状態から押し始めるという構造を有しているため、押し出し機構に要する移動距離が長くなる。それに伴って起こる不具合の可能性が高くなり、インジェクター全体の長さも長くなるなど構造上の制限が生じる。そのため、眼内レンズをレンズ設置部で折り畳み、ある程度の変形を行なってから眼内への移動を開始する機構を設けることにより、レンズの筒内における移動距離を短くすることが可能となり、結果として移動行程中における事故の低減や、インジェクター全体の長さを小さくすることにより取扱性も向上する。このような事情を考慮して可撓性を有する眼内レンズを小さい断面形状にすべく、横方向に圧縮するための機構を備えていることを特徴とした眼内レンズ挿入器具が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、上記特許文献3に開示された発明においては、眼内レンズが圧縮された状態から眼内にて開放される際、眼内を損傷させないために眼内レンズの対向する側端部を概ね平面関係に維持するための保持器を備えていることを一つの特徴としている。そのような形状にした場合、レンズ設置部および筒部の細い部分に眼内レンズが押し込まれると、レンズに非常に高い負荷がかかり、そのためにレンズが損傷する可能性がある。また、筒部にレンズが完全に包含されるため、いったん挿入器具内で変形させたレンズを変形後に取り出すことは不可能であった。
一方、眼内レンズを眼内に挿入する手術においては、例えばレンズの逢着が必要となった場合や、術者が鑷子を使用した挿入方法を好む場合など、何らかの理由により鑷子を用いて眼内レンズを眼内に挿入する必要が生じる場合がある。その際、いったんインジェクター内にセットされたレンズをインジェクター内から取り出し、その後、適切な方法でレンズを折り畳み、鑷子にて眼内へ挿入するという手段を経ることになる。しかし、そのような多段階の操作を含むことで眼内レンズが異物や細菌によって汚染されるなどの危険性は増大し、取扱のミスによる落下、レンズ破損などの可能性も高くなる。特に、プリセット型のインジェクターにおいては、レンズがインジェクター内にセットされた状態で出荷されるが、現在市販されているプリセット型インジェクターにおいては、レンズを鑷子にて取り出すことを意図しているものは無く、インジェクターを破壊する以外に眼内レンズを安全に取り出す機構を有しているものはない。
かかる事情から、手術方法に応じて二通りの使用方法が可能となる眼内レンズの挿入器具の実現が望まれている。本発明は、眼内レンズが予めインジェクター内にセットされているプリセット型インジェクターにおいて、レンズ設置部にセットしたレンズを簡単な操作により折り畳むことができる機能を有している。そして、インジェクターにより眼内に挿入する場合には、眼内レンズをレンズ設置部で折り畳んだ後、そのままプランジャーにより押出して眼内へ挿入でき、また、鑷子によりレンズを把持して眼内へ挿入する場合には、レンズの折り畳みの前または後にレンズ設置部の上部の壁もしくはその一部に設けた開閉機構によりレンズ設置部を開放し、折り畳んだレンズを折り畳んだ状態で鑷子にて取り出すことが可能な眼内レンズ挿入器具を提供することを目的とする。したがって、本発明はレンズが予めセットされた状態で出荷されるプリセット型インジェクターにもっとも適している。
また、レンズとインジェクターとが別々の包装で供給されるようなインジェクターにも適用することができ、その場合、インジェクターを使用して挿入することも出来るが、レンズをセットした後であっても、緊急な手術の要求に応じて鑷子による挿入術に切り替えることが可能である。
請求項1記載の発明は、折り畳み可能な眼内レンズを眼内に挿入するためのプリセット型の眼内レンズ挿入器具であって、前記プリセット型の眼内レンズ挿入器具は、出荷時にその内部に予め前記眼内レンズがセットされているものであり、前記眼内レンズを通過させて眼内に導く筒状の本体と、前記眼内レンズを押圧して眼内に放出するプランジャーと、前記本体に設けたレンズ設置部において前記眼内レンズを折り畳む折り畳み部材とを備え、前記折り畳み部材は、前記眼内レンズを折り畳む前において前記プランジャーの移動を規制するとともに、前記眼内レンズを折り畳んだ後においてのみ前記プランジャーを移動可能とすることを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材は、前記眼内レンズを二つ折りに畳むことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の眼内レンズ挿入器具において、前記レンズ設置部は、前記本体と一体または別体の開閉蓋を備えたことを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部から前記眼内レンズを把持し取り出すために鑷子を用いるように構成されたことを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記レンズ設置部に2つの折り畳み部材を設け、前記2つの折り畳み部材は板バネにより連結され、前記折り畳み部材は前記板バネの付勢力に抗して前記折り畳み部材の位置を保持する突起を備えたことを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材にロック機構を設け、前記ロック機構を解除しなければ前記眼内レンズを折り畳むことができないことを特徴とするものである。
請求項7記載の発明は、請求項3〜6のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記開閉蓋は、前記眼内レンズの状態を視認するための検査用の穴を備えたことを特徴とするものである。
請求項8記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材は、前記開閉蓋が閉位置にあるときに固定されるように構成されたことを特徴とするものである。
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部において前記プランジャーの移動方向に対して直交する方向に移動可能に構成されたことを特徴とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具において、前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部において回転可能に設けられたボスを備え、前記ボスは、前記レンズ接地部に配置され前記眼内レンズを押圧する押圧部と、前記レンズ設置部の外方に伸びる操作部とを一体に備えたことを特徴とするものである。
本発明の眼内レンズ挿入器具によれば、眼内レンズを折り畳む前において、プランジャーの誤操作等により眼内レンズが押出されないように規制することができる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、本発明に係る眼内レンズ挿入器具の第1実施例を示すものであり、図1は開閉蓋が開かれ、かつノズルキャップが装着された状態を示す図面である。この眼内レンズ挿入器具1は、折り畳み可能な可撓性を有する眼内レンズ2を眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器具1であって、前記眼内レンズ2を通過させて眼内に導く筒状の本体3と、前記眼内レンズ2を押圧して眼内に放出するプランジャー4を備え、前記本体3に設けたレンズ設置部5において眼内レンズ2を折り畳む折り畳み部材8を設けるともに、前記レンズ設置部5において眼内レンズ2を取り出し可能としたものである。
以下、具体的に説明する。筒状の本体3はハンドピースとも呼称され、筒状の本体3の途中にレンズ設置部5が設けられている。そして、筒状の先端部6の内径寸法は細く絞られており、その先端部6を切開創から眼内へ挿入して眼内レンズ2を移植できるようにされている。また、筒状の本体3の術者側には把持部7が設けられるとともに、筒状の本体3の内部には眼内レンズ2を押圧するためのプランジャー4が摺動自在に装着されている。また、レンズ設置部5にはレンズ2を折り畳むための折り畳み部材8が、レンズ設置部5上で平行移動可能なようにプランジャー軸4aに対し横方向から装着されている。レンズ2を設置する際には、この折り畳み部材8を横外方向に引き出してレンズ2を設置する。折り畳み部材8を横外方向いっぱいに引き出すと、レンズ設置部5にはレンズ光学部2aの外径寸法よりやや大きなスペースが確保され、レンズ2の光学部2aに余分なストレスを与えることなくレンズ2を設置することができる。
また、折り畳み部材8が横外方向に引き出された状態では、プランジャー4の誤操作等によりレンズ2が押出されないよう規制すべく、プランジャー先端部4bが折り畳み部材8の側片に突き当たるように構成されている。なお、レンズ設置部5にはレンズ2の移動を規制するための位置規制用突起9が設けられている。
また、筒状の先端部6は手術時において眼内へ挿入されるため、常に清浄な状態に保持されている必要がある。そこで、先端部たるノズル6を保護するためにノズルキャップ11が装着される。このノズルキャップ11はノズル6を保護するとともに、前記折り畳み部材8の押し込み動作を規制する機能をも兼ね備えている。すなわち、ノズルキャップ11を外した後でなければ、折り畳み部材8を押し込むことができないようにされている。したがって、誤操作等により不適切なタイミングでレンズ2が折り畳まれるのを防止することができる。
図2はレンズ2設置後、開閉蓋12を閉じた状態を示すインジェクター1の外観図である。レンズ設置部5には本体3と一体または別体の開閉蓋12が設けられており、レンズ2設置後に開閉蓋12を閉じることによりインジェクター1を運搬等しても眼内レンズ2をレンズ設置部5内に固定できるようにされている。また、開閉蓋12には検査用の穴13が設けられており、開閉蓋12を閉じた状態であっても、レンズ設置部5に設置されたレンズ2の状態を外部から容易に視認できるようにされている。本実施例においては、本体3と一体の開閉蓋12が合成樹脂材料からなるヒンジ14により開閉できるようにされている。
図3は、図2のA−A矢視を示す断面図であり、(a)はレンズ2がプリセットされた状態を示し、(b)はレンズ2が折り畳まれた後の状態を示している。また、(c)は折り畳んだレンズ2を鑷子15により取り出せる状態にしたものを示している。(a)に示すプリセット状態においては、レンズ2は自由移動できない程度に位置固定されているが、光学部2aに何ら余分な応力は付加されない。したがって、プリセット状態で長時間保管してもレンズ2の光学特性に悪影響を与えることがない。また、誤ってプランジャー4を操作したとしても、折り畳み部材8を押し込まない限りプランジャー4の動きは折り畳み部材8に衝突して規制されるので、(a)に示すプリセット状態では眼内レンズ2の押出しを防止することができる。さらに、ノズルキャップ11を外さない限り折り畳み部材8を押し込むこともできないので、誤って眼内レンズ2を折り畳むことも防止できる。
手術時、このインジェクター1を使用して眼内レンズ2を眼内へ挿入する場合、ノズルキャップ11を取り外した後、折り畳み部材8を押し込んでレンズ設置部5に収納された眼内レンズ2を変形させて折り畳む。具体的には、(b)に示すように折り畳み部材8を押し込むと、眼内レンズ2の光学部2aは本体3の内壁面と折り畳み部材8により圧縮され、略U字形状に折り畳まれる。その後、先端部たるノズル6を眼球の切開創口から眼球内に挿入し、プランジャー4により眼内レンズ2を押圧して眼内に移植することができる。なお、折り畳み部材8を押し込んで眼内レンズ2を折り畳んだ位置においては、折り畳み部材8に設けられたプランジャー通し穴8dの中心がプランジャー軸4aの軸心と一致するように構成されており、プランジャー4を押すことにより眼内レンズ2を押圧して移動することができるようになっている。
一方、術者の都合等によりインジェクター1を使用して直接眼内へレンズ2を移植するよりも、鑷子15により眼内レンズ2を把持して眼内に挿入する方が好ましい場合もある。そのような場合、(c)に示すように眼内レンズ2を折り畳み部材8によって折り畳んだ後、開閉蓋12を開いて折り畳んだ光学部2aを鑷子15により把持して眼内に挿入することができる。したがって、本発明によれば、インジェクター1を使用して眼内レンズ2を眼内に移植することができるとともに、眼内レンズ2を折り畳んだ後、必要に応じて鑷子15により眼内レンズ2を把持して眼内に移植することもできる。
図4〜図8は、本発明に係る眼内レンズ挿入器具1の第2実施例を示すものであり、図4は開閉蓋12を開いた状態を示す図面である。本実施例は、折り畳み部材8、ノズルキャップ11および保護カバー16の具体的構造が前記第1実施例と異なる。したがって、第1実施例と共通する部分についての説明は省略し、異なる構造を有する折り畳み部材8、ノズルキャップ11および保護カバー16について説明する。
本実施例による折り畳み部材8はレンズ設置部5において回転可能なボス8aが設けられ、そのボス8aにはレンズ設置部5に配置される押圧部8bと本体3から外方に伸びる操作部8cが一体的に設けられている。そして、図5に示すようにレンズ設置部5に眼内レンズ2をセットする際には、操作部8cを本体3より外方に回動させてレンズ設置部5に広いスペースを確保してレンズ2を設置する。この状態においてはボス8aに設けられた貫通溝8eの方向とプランジャー軸4aの方向が一致することはなく、誤操作等によりプランジャー4が押されたとしてもプランジャー軸4aの先端部4bはボス8aの側面に突き当たって移動が規制されるため、眼内レンズ2がプランジャー軸4aによって押圧されるのを防止することができる。
また、本実施例によるノズルキャップ11は、図4に示すようにノズル6の先端部を塞ぐキャップ部11aとプレスホルダー11bが一体的に形成されている。ここで、プレスホルダー11bは本体3の外面と前記折り畳み部材8の操作部8cとの間に配置され、プレスホルダー11bを取外さない限り操作部8cの操作ができないよう機能する。
さらに、図5に示すように、ノズル6およびレンズ設置部5全体を保護するための保護カバー16を設けることもできる。保護カバー16の下面には、2箇所に突起16aが一体的に設けられており、保護カバー16を本体3に装着すると、開閉蓋12に設けられた穴12aに前記突起16aが挿通され、レンズ2の光学部2aの外縁近傍に達するようにされている。したがって、保護カバー16を本体3に装着すると、レンズ設置部5におけるレンズ2の移動を規制することができる。なお、保護カバー16にもレンズ光学部2aの中心に対応する位置にレンズ2の状態を視認できるよう検査用の穴16bが設けられている。
図6は、図5のB−B矢視を示す断面図であり、レンズ設置部5にレンズ2がセットされた状態を示している。レンズ設置部5にレンズ2をセットする際には、折り畳み部材8の操作部8cを操作して押圧部8bを外方位置にすることにより、レンズ設置部5に光学部2aを載置できるスペースが確保される。もちろん、レンズ2をセットする場合には、保護カバー16を取り外し、開閉蓋12を開く必要がある。セットされた後のレンズ2は、保護カバー16に設けられた突起16aにより移動が制限される。
図7は、図5に対応する図面であり、折り畳み部材8の操作部8cが本体3側に操作されてレンズ2が折り畳まれる状態を示している。レンズ2を折り畳む際には、先ず保護カバー16を本体3から取り外す。そうすると、折り畳み部材8の操作部8cの動きを規制していたプレスホルダー11bも一緒に取り外され、レンズ2の折り畳み操作が可能な状態になる。そこで、折り畳み部材8の操作部8cを本体3側に押すと、折り畳み部材8はボス8aを中心として回動し、押圧部8bによりレンズ2の光学部2aの一端が押圧される。レンズ2の光学部2aの一端が押圧されれば、レンズ2は本体3の内壁と押圧部8bとの間に挟まれて圧縮されることから折り畳まれることになる。そして、折り畳み部材8のボス8aが回動すると、そのボス8aに設けられている貫通溝8eの方向とプランジャー軸4aの方向が一致するようにされている。このようにレンズ2が折り畳まれた後においては、プランジャー4の操作により折り畳まれたレンズ2の光学部2aを押圧して移動することができるようになる。したがって、プランジャー4を使用してレンズ2を眼内に移植する場合には、プランジャー4によりレンズ2の光学部2aを押圧して移植することができる。
図8は、図7中のC−C矢視断面を示すものであり、レンズ2折り畳み後の状態を示している。インジェクター1を使用して眼内レンズ2を移植する場合には、図8に示すレンズ2折り畳み後の状態からプランジャー4により光学部2aの外縁を押圧して移植する。一方、インジェクター1を使用せず、鑷子15によりレンズ2を把持して眼内にレンズ2を移植する場合には、図8に示す折り畳み後のレンズ2を、開閉蓋12を開けることによって鑷子15により把持して眼内に移植することができる(図15参照)。
図9〜図12は、本発明に係る眼内レンズ挿入器具1の第3実施例を示すものであり、図9は保護カバー16を取り外した状態を示す図面である。本実施例は前記第1実施例や第2実施例とは折り畳み部材8および開閉蓋12の構造が大きく異なるが、その他の構造については共通している。したがって、第1実施例や第2実施例と共通する部分についての説明は省略し、異なる構造を有する折り畳み部材8と開閉蓋12について説明する。
本実施例においては2つの折り畳み部材8を有し、レンズ2の光学部2aを両側から挟んで折り畳むようになっている。また、2つの折り畳み部材8はレンズ設置部5に対して軸対称位置に配置され、板バネ17により連結されている。さらに折り畳み部材8の適所には突起8fが設けられ、この突起8fが本体3に設けられた凹所等に係止できる構成とされている。かかる構造を有するインジェクター1において、レンズ設置部5にレンズ2をセットする際には板バネ17を圧縮することなく、折り畳み部材8を外方に出した状態にしておく。この状態においては2つの折り畳み部材8,8間にレンズ2を収納できるスペースが確保される。
レンズ2をセット後、図10に示すように本体3に保護カバー16が装着される。このことによりレンズ2の位置は固定されるとともに、ロック機構8g,16cによって2つの折り畳み部材8,8の動きも規制される。すなわち、保護カバー16の裏面にはレンズ2の位置を固定するための2箇所の突起16aと、折り畳み部材8の動きを固定するための4箇所の突起16cが設けられており、保護カバー16を本体3に装着することによりレンズ2の動きと折り畳み部材8の動きをロックすることができるようにされている。具体的には、保護カバー16の裏面に設けられた2箇所の突起16aは、開閉蓋12に設けられた2箇所の穴20に挿通され、レンズ2の光学部2aの移動を規制する。また、折り畳み部材8に設けられたロック穴8gに保護カバー16の突起16cが挿入されることにより折り畳み部材8はロックされることになる。
なお、図10に示す開閉蓋12は、本体3とは別体として構成しているが、ヒンジ等により本体3と一体構造とすることもできる。
図11は図10のD−D矢視を示す斜視図であり、(a)はプリセット状態を示し、(b)はレンズ折り畳み後の状態を示している。(a)に示すプリセット状態においては、レンズ2の光学部2aにストレスを与えることなく載置される。(b)に示すレンズ折り畳み後の状態では、レンズ2の光学部2aは両側から押されて断面が略U字形に折り畳まれている。ここで、レンズ設置部5の上部に装着される開閉蓋12には、レンズ2の状態を視認するための検査穴19と保護カバー16の突起16aが挿通される穴20が設けられている。
図12は、図11と同じ部位を示す図面であるが、レンズ折り畳み後のレンズ2の移植方法を説明するためのものである。具体的には、図10のD−D矢視を示す斜視図であり、(a)はプランジャー軸4aによりレンズ2を押し出す場合を示し、(b)は鑷子15によりレンズ2を把持する場合を示している。インジェクター1を使用してレンズ2を移植する場合には、(a)に示すように2つの折り畳み部材8を両側から押してレンズ2を折り畳んだ後、プランジャー軸4aによりレンズ2を押圧して移植する。一方、インジェクター1を使用せずに鑷子15によりレンズ2を把持して移植する場合には、(b)に示すようにレンズ折り畳み後に開閉蓋12を取外し、その後、鑷子15により折り畳んだレンズ2を把持して眼内に移植することができる(図15参照)。
図13および図14は、本発明に係る眼内レンズ挿入器具1の第4実施例を示すものであり、開閉蓋12を取外した状態を示している。本実施例は前記第3実施例と同様の構成を有するものであるが、折り畳み部材8の具体的構造が第3実施例と異なる。したがって、第3実施例と共通する部分についての説明は省略し、第3実施例と異なる構造を有する折り畳み部材8について説明する。
本実施例は、レンズ設置部5に2つの折り畳み部材8を設け、前記2つの折り畳み部材8を板バネ17により連結すると共に、前記折り畳み部材8に突起8fを設けて本体3の適所に係止し、前記板バネ17の付勢力に抗して前記折り畳み部材8の位置を保持可能としたものである。ただし、板バネ17による連結方法が第3実施例と異なっている。2つの折り畳み部材8は略八の字状に配置され、その一端を板バネ17により連結している。そして、板バネ17を中心にして2つの折り畳み部材8が所定角度だけ回動できるようにされている。すなわち、2つの折り畳み部材8を外方に開いた状態ではレンズ設置部5において、2つの折り畳み部材8は略八の字状に配置され、レンズ光学部2aを設置できるだけのスペースが確保される。したがって、この状態においてはレンズ光学部2aに余分な応力を与えることなくレンズ2を設置できる。レンズ設置後、開閉蓋12を本体3に装着することによりレンズ2のセットは完了する。また、開閉蓋12の裏面には図示しないが、レンズ2の位置を固定するための複数の突起と折り畳み部材8の動きを固定するための複数の突起が設けられており、開閉蓋12を本体3に装着することによりレンズ2の動きと折り畳み部材8の動きを規制することができるようになっている。さらに、開閉蓋12にはプランジャー軸4aの動きを規制する突き当てを設け、プランジャー4の誤操作によってレンズ2が押圧されないようにされている。
図15は、インジェクター1を使用することなく、鑷子15によりレンズ2を把持する様子を示すものである。レンズ2が折り畳まれた後においては、レンズ2の折り曲げ部が折り畳み部材8よりも上方に凸となるので、鑷子15により容易にレンズ2を把持することができる。
以上、本発明を幾つかの実施例に基づいて説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施をすることができる。例えば、上記実施例においては、2つの折り畳み部材8を連結する方法として別体の板バネ17を用いる場合を示したが、2つの折り畳み部材8とバネ部材を一体に形成することもできる。
1 眼内レンズ挿入器具(インジェクター)
2 眼内レンズ(レンズ)
3 本体
4 プランジャー
5 レンズ設置部
8 折り畳み部材
8f 突起
12 開閉蓋
14 ヒンジ
15 鑷子
8g,16c ロック機構
17 板バネ
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17 板バネ
Claims (10)
- 折り畳み可能な眼内レンズを眼内に挿入するためのプリセット型の眼内レンズ挿入器具であって、前記プリセット型の眼内レンズ挿入器具は、出荷時にその内部に予め前記眼内レンズがセットされているものであり、前記眼内レンズを通過させて眼内に導く筒状の本体と、前記眼内レンズを押圧して眼内に放出するプランジャーと、前記本体に設けたレンズ設置部において前記眼内レンズを折り畳む折り畳み部材とを備え、前記折り畳み部材は、前記眼内レンズを折り畳む前において前記プランジャーの移動を規制するとともに、前記眼内レンズを折り畳んだ後においてのみ前記プランジャーを移動可能とすることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材は、前記眼内レンズを二つ折りに畳むことを特徴とする請求項1記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記レンズ設置部は、前記本体と一体または別体の開閉蓋を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部から前記眼内レンズを把持し取り出すために鑷子を用いるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記レンズ設置部に2つの折り畳み部材を設け、前記2つの折り畳み部材は板バネにより連結され、前記折り畳み部材は前記板バネの付勢力に抗して前記折り畳み部材の位置を保持する突起を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材にロック機構を設け、前記ロック機構を解除しなければ前記眼内レンズを折り畳むことができないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記開閉蓋は、前記眼内レンズの状態を視認するための検査用の穴を備えたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材は、前記開閉蓋が閉位置にあるときに固定されるように構成されたことを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部において前記プランジャーの移動方向に対して直交する方向に移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
- 前記折り畳み部材は、前記レンズ設置部において回転可能に設けられたボスを備え、前記ボスは、前記レンズ接地部に配置され前記眼内レンズを押圧する押圧部と、前記レンズ設置部の外方に伸びる操作部とを一体に備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の眼内レンズ挿入器具。
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