第1の発明は、室内機に、障害物の有無を検知する撮像装置を設け、撮像装置の検知信号に基づいて空調運転を行う空気調和機であって、撮像装置により検知すべき領域を複数に分割し、複数の分割領域の一部で撮像装置による障害物検知を行うようにしたものである。
この構成により、1回の障害物検知を複数の分割領域の一部に限定することで、検知時間を短縮することができ、ひいては障害物検知精度の低下を極力抑制することができる。
第2の発明は、障害物検知が行われる複数の分割領域の一部を、室内機から見て左右方向に分割された複数の領域群とすることにより、第1の発明と同様の効果を奏することができる。
第3の発明は、障害物検知が行われる複数の分割領域の一部を、複数の分割領域の一つとすることにより、障害物検知時間をさらに短縮することができる。
第4の発明は、障害物検知が行われる複数の分割領域の一部を、室内機からの距離に応じて分割された複数の領域群とすることにより、第1の発明と同様の効果を奏することができる。
第5の発明は、空気調和機の運転初回から複数回は、複数の分割領域のすべてにおいて、障害物検知装置による障害物検知を行うようにすることにより、空調すべき領域に存在するすべての障害物の位置を早期に認識することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<空気調和機の全体構成>
一般家庭で使用される空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1乃至図4は、本発明に係る空気調和機の室内機を示している。
室内機は、本体2と、本体2の前面開口部2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面開口部2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面開口部2aを開放する。なお、図1及び図2は前面パネル4が前面開口部2aを閉じた状態を示しており、図3及び図4は前面パネル4が前面開口部2aを開放した状態を示している。
図1乃至図4に示されるように、本体2の内部には、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気を熱交換する熱交換器6と、熱交換器6で熱交換された空気を搬送するための室内ファン8と、室内ファン8により搬送された空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下風向変更羽根(以下、単に「上下羽根」という)12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右風向変更羽根(以下、単に「左右羽根」という)14とを備えており、前面開口部2a及び上面開口部2bと熱交換器6との間には、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気に含まれる塵埃を除去するためのフィルタ16が設けられている。
また、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18,20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面開口部2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。
さらに、上下羽根12は、上羽根12aと下羽根12bとで構成されており、それぞれ本体2下部に揺動自在に取り付けられている。上羽根12a及び下羽根12bは、別々の駆動源(例えば、ステッピングモータ)に連結されており、室内機に内蔵された制御装置(例えばマイコン)によりそれぞれ独立して角度制御される。また、図3及び図4から明らかなように、下羽根12bの変更可能な角度範囲は、上羽根12aの変更可能な角度範囲より大きく設定されている。
なお、上羽根12a及び下羽根12bの駆動方法については後述する。また、上下羽根12は3枚以上の上下羽根で構成することも可能で、この場合、少なくとも2枚(特に、最も上方に位置する羽根と最も下方に位置する羽根)は独立して角度制御できるのが好ましい。
また、左右羽根14は、室内機の中心から左右に5枚ずつ配置された合計10枚の羽根で構成されており、それぞれ本体2の下部に揺動自在に取り付けられている。また、左右の5枚を一つの単位として別々の駆動源(例えば、ステッピングモータ)に連結されており、室内機に内蔵された制御装置により左右5枚の羽根がそれぞれ独立して角度制御される。なお、左右羽根14の駆動方法についても後述する。
<人体検知手段の構成>
図1に示されるように、前面パネル4の上部には、撮像センサユニット24が撮像装置として取り付けられており、撮像センサユニット24は、図3及び図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。
撮像センサユニット24は、回路基板と、回路基板に取り付けられたレンズと、レンズの内部に実装された撮像センサとで構成されている。また、人体検知手段は、例えば後述する差分処理に基づいて回路基板により人の在否が判定される。すなわち、回路基板は人
の在否判定を行なう在否判定手段として作用する。
<人体検知手段による人位置推定>
撮像センサユニット24による人位置推定を行なうために、公知の技術である差分法を利用する。これは、人物が存在しない画像である背景画像と、撮像センサユニット24が撮像した画像の差分処理を行ない、差分が生じている領域には、人物が存在していると推定するものである。
図5は、本実施形態における人位置推定の処理の流れを示したフローチャートである。ステップS101において、背景差分処理を利用することで、フレーム画像内で差分が生じている画素を検出する。背景差分処理とは、特定の条件下で撮影した背景画像と、背景画像と撮像センサユニットの視野や視点、焦点距離などの撮像条件が等しい状況で撮像した撮像画像を比較することで、背景画像には存在していないが、撮像画像には存在する物体を検出する手法である。人物の検出を行なうためには、背景画像として人物が存在しない画像を作成する。
図6は、背景差分処理を説明するための模式図である。図6(a)は、背景画像を示している。ここで、視野は空気調和機の空調空間とほぼ等しくなるように設定されている。この図において、101は空調空間内に存在する窓を、102は扉を示している。図6(b)は、撮像センサユニットによって撮像されたフレーム画像を示している。ここで、撮像センサユニットの視野や視点、焦点距離などは図6(a)の背景画像と等しい。103は、空調空間内に存在する人物を示している。背景差分処理では、図6(a)と図6(b)の差分画像を作成することにより、人物を検出する。図6(c)は差分画像を示しており、白い画素は差分が存在しない画素、黒い画素は差分が生じている画素を示している。背景画像には存在しないが、撮像されたフレーム画像には存在する人物103の領域が、差分が生じている領域104として、検出されていることがわかる。つまり、差分画像から差分が生じている領域を抽出することで、人物領域を検出することが可能である。
また、前述の背景画像は、フレーム間差分処理を利用することで、作成することが可能である。図7〜図9は、この処理を説明するための模式図である。図7(a)〜(c)は、人物103が窓101の前を右から左に移動しているシーンにおいて、撮像センサユニットによって撮像された連続した3フレームの画像を示した模式図である。図7(b)は図7(a)の次のフレームの画像を、図7(c)は図7(b)の次のフレームの画像を示している。また、図8(a)〜(c)は、図7の画像を利用して、フレーム間差分処理を行なった、フレーム間差分画像を示している。白い画素は差分が存在しない画素、黒い画素105は差分が生じている画素を示している。ここで、視野内で移動している物体は人物のみであるとすると、フレーム間差分画像において、差分が生じない領域には、人物が存在していないと考えられる。そこで、フレーム間差分が生じない領域においては、背景画像を現在のフレームの画像と置き換える。この処理をすることで、背景画像を自動的に作成することができる。図9(a)〜(c)は、それぞれ図7(a)〜(c)の各フレームにおける背景画像の更新を模式的に示した図である。斜線で示した領域106は、背景画像を更新した領域、黒領域107はまだ背景画像が作成されていない領域、白領域108は背景画像が更新されなかった領域を示している。つまり、図9の黒領域107と白領域108の合計領域が、図8の黒色領域と等しくなる。図に示したとおり、人物が動いている場合、黒領域107が徐々に小さくなり、自動的に背景画像が作成されていることがわかる。
次に、ステップS102において、求まった差分領域を領域分割することにより、複数の人物が存在している場合には、複数の差分領域として分割する。これは、公知の画像クラスタリング手法を利用すればよく、例えば、「差分が生じている画素と、その8近傍に
存在する差分が生じている画素は、同一の領域である」というルールに従って、差分画像を領域分割していけばよい。図10は、この領域分割処理を実行した模式図である。図10(a)は差分処理により計算された差分画像を示し、111およびZ112の黒色画素が差分の生じている画素である。図10(b)は、差分画像として図10(a)が得られたとき、前記「差分が生じている画素と、その8近傍に存在する差分が生じている画素は、同一の領域である」というルールに従って領域分割を行なった結果を示している。ここで、横縞領域Z113と縦縞領域Z114は、別の領域であると判断されている。このとき、画像処理で広く利用されているモルフォロジー処理などのノイズ除去処理を行なってもかまわない。
次に、ステップS103において、求まった各領域の重心位置を計算することにより、検出された人物の位置を検出する。画像の重心位置から人物の位置を検出するためには、透視投影変換を利用すればよい。
透視投影変換を説明するために、2つの座標系を説明する。図11は、2つの座標系を説明するための模式図である。まず、画像座標系を考える。これは、撮像された画像における2次元の座標系であり、画像の左上の画素を原点、右方向にu、下方向にvとする。次にカメラを基準とした3次元の座標系であるカメラ座標系を考える。これは、撮像センサユニットの焦点位置を原点、撮像センサユニット24の光軸方向をZc,カメラ上向きをYc,カメラ左方向をXcとする。このとき、透視投影変換により、以下の関係が成り立つ。
ここで、fは焦点距離[mm]、(u0,v0)は画像座標上での画像中心[Pixel]、(dpx,dpy)は撮像素子1画素の大きさ[mm/Pixel]を示している。ここで、Xc,Yc,Zcは未知数であることに着目すると、数1は、画像上での座標(u,v)が既知の場合、その座標に対応する実際の3次元位置は、カメラ座標系の原点を通るある直線上に存在することがわかる。
図12(a)、(b)に示したように、画像上の人物の重心位置を(ug,vg)、そのカメラ座標系での3次元位置を(Xgc,Ygc,Zgc)とする。ここで、図12(a)は空調空間を横から見た模式図、図12(b)は上から見た模式図を示している。また、撮像センサユニットの設置された高さをH、Xc方向が水平方向に等しいとし、光軸Zcは垂直方向からθの角度を持って設置されているとする。また、撮像センサユニット24の向いている方向を、垂直方向の角度(仰角、垂直線から上方向に測定した角度)α、水平方向の角度(室内機から見て正面の基準線から右向きに測定した角度)βとする。さらに人物の重心の高さをhとすると、空調空間内の3次元位置である、撮像センサユニットから重心位置までの距離L、および向きWは、次式で計算できる。
ここで、撮像センサユニットは、H=約2mの高さに通常設置され、さらに人物の重心の高さhが約80cmであることを考慮すると、数3、数5は、撮像センサユニット24の設置された高さH、および人物の重心の高さhが規定されている場合、画面上の重心位置(ug,vg)より、空調空間内における人物の重心位置(L,W)を一意に求められることを示している。図13(a),(b)は、画像上の重心位置がA〜Gの各領域に存在した場合、空調空間内のいずれの領域に人物が存在するかを示している。また、図14(a),(b)は、人物が存在する場合の模式図を示したものである。図14(a)では、人物の重心位置が領域AおよびFに存在するため、図13(b)の領域AおよびFに人物が存在すると判断する。一方、図14(b)では、人物の重心位置が領域Dに存在するため、図13(b)の領域Dに人物が存在すると判断する。
図15は、撮像センサユニット24を使用して、領域A〜Gの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図16は、撮像センサユニットを使用して、領域A〜Gのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、撮像センサユニット24のフレームレートが5fpsであれば、200ミリ秒)で各領域における人の在否が前述の方法でまず判定される。
この判定結果に基づいて各領域A〜Gを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)と、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)と、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図15のフローチャートにおけるステップS3以降で行われ、この判別方法について図17及び図18を参照しながら説明する。
図17は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図17における楕円で示され
る領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Gにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS2において、全てのセンサ出力をクリアする。
ステップS3において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS3において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Gにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Gをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図18を参照してさらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS4において、各領域A〜Gの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS5において生活区分Iと判別する。また、ステップS4において、各領域A〜Gの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS6において、各領域A〜Gの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS7において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS8において生活区分IIIと判別する。
図18の例では、領域C,D,Gが生活区分Iとして判別され、領域B,Fが生活区分IIとして判別され、領域A,Eが生活区分IIIとして判別される。
また、図19は別の1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図20はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Gを判別した結果を示している。図19の例では、領域B,C,Eが生活区分Iとして判別され、領域A,Fが生活区分IIとして判別され、領域D,Gが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図16のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Gにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S22は、上述した図15のフローチャートにおけるステップS1〜S2と同じなので、その説明は省略する。ステップS23において、所定数M(例えば、45回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS24において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS25において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS26において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Gにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS27において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われるこ
とになる。
表1は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表1中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、N=4の場合、過去4回分の履歴(ΣA4、ΣA3、ΣA2、ΣA1)のうち、生活区分Iについては、1回以上の累積反応期間回数が1回でもあれば、人がいると判定する。また、生活区分IIについては、過去4回の履歴のうち、1回以上の累積反応期間回数が2回以上あれば、人がいると判定するとともに、生活区分IIIについては、過去4回の履歴のうち、2回以上の累積反応期間回数が3回以上あれば、人がいると判定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明に係る空気調和機の室内機においては、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表2は、このようにして人の在否を判定し、T1=0.2秒、M=45回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明に係る空気調和機の室内機により空調すべき領域を撮像センサユニットにより複数の領域A〜Gに区分した後、各領域A〜Gの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Gの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行なわないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Gにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、上述したように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
以上の説明では、撮像センサユニットによる人位置推定として、差分法を利用したが、もちろん、他の手法を利用してもかまわない。例えば、人物の全身の画像データを利用して、フレーム画像から人らしい領域を抽出するようにしてもかまわない。このような手法としては、例えば、HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量などを利用する手法が広く知られている(N. Dalal and
B. Triggs, ”Histograms of Oriented Grad
ients for Human Detection”, In Proc. IEEE Conf. on Computer Vision and Pattern Recognition, Vol.1, pp.886−893, 2005.)。HOG特徴量は、局所領域内におけるエッジ方向ごとのエッジ強度に着目した特徴量であり、この特徴量をSVM(Support Vector Machine)などにより学習・識別を行なうことにより、フレーム画像から人物領域を検出するようにしてもかまわない。
図21は、フレーム画像から人らしい領域を抽出する処理を利用した人位置推定の処理の流れを示したフローチャートである。この図において、図5と同じステップに関しては、同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS104において、前述のHOG特徴量を利用することで、フレーム画像内において、人らしい領域を人領域として抽出する。
ステップS103において、求まった人領域の重心位置を計算することにより、検出された人物の位置を検出する。画像の重心位置から人物の位置を検出するためには、前述の通り、数3、数5を利用すればよい。
また、人物の全身の画像データを利用するのではなく、フレーム画像から顔らしい領域を抽出するようにしてもかまわない。このような手法としては、例えば、Haar−Like特徴量などを利用する手法が広く知られている(P. Viola and M. Jones, ”Robust real−time face detection”, International Journal of Computer Vision, Vol.57, no.2, pp.137−154, 2004.)。Haar−Like特徴量は、局所領域間における輝度差に着目した特徴量であり、この特徴量をSVM(Support Vector Machine)などにより学習・識別を行なうことにより、フレーム画像から人物領域を検出するようにしてもかまわない。
図22は、フレーム画像から顔らしい領域を抽出する処理を利用した人位置推定の処理の流れを示したフローチャートである。この図において、図5と同じステップに関しては、同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS105において、前述のHaar−Like特徴量を利用することで、フレーム画像内において、顔らしい領域を顔領域として抽出する。
ステップS103において、求まった顔領域の重心位置を計算することにより、検出された人物の位置を検出する。画像の重心位置から人物の位置を検出するためには、前述の通り、透視投影変換を利用すればよい。このとき、人物の全身領域を利用して、その重心位置から人物の位置を検出する場合、人物の重心の高さとして、h=約80cmとしたが、顔領域を利用する場合、顔重心までの高さとして、h=約160cmとして数3、数5を利用することにより、人物の位置を検出する。
<障害物検知手段の構成>
前述の撮像センサユニット24を利用して、障害物検出を行なう、この障害物検知手段について説明する。なお、本明細書で使用する「障害物」という用語は、室内機の吹出口10から吹き出され居住者に快適空間を提供するための空気の流れを妨げる物全般を指しており、例えばテーブルやソファー等の家具、テレビ、オーディオ等の居住者以外の物を総称したものである。
本実施の形態においては、障害物検出手段により居住空間の床面を図12に示した通り、垂直方向の角度αと水平方向の角度βに基づき、図23に示されるように細分化し、これらの領域の各々を障害物位置判別領域あるいは「ポジション」と定義し、どのポジションに障害物が存在しているかを判別するようにしている。なお、図23に示される全ポジションは、図13(b)に示される人位置判別領域の全領域と略一致しており、図13(b)の領域境界を図23のポジション境界に略一致させ、領域及びポジションを次のように対応させることで、後述する空調制御を容易に行なうことができ、記憶させるメモリを極力少なくしている。
領域A:ポジションA1+A2+A3
領域B:ポジションB1+B2
領域C:ポジションC1+C2
領域D:ポジションD1+D2
領域E:ポジションE1+E2
領域F:ポジションF1+F2
領域G:ポジションG1+G2
なお、図23の領域分割は、ポジションの領域数を人位置判別領域の領域数より多く設定しており、人位置判別領域の各々に少なくとも二つのポジションが属し、これら少なくとも二つの障害物位置判別領域を室内機から見て左右に配置しているが、各人位置判別領域に少なくとも一つのポジションが属するように領域分割して、空調制御を行なうこともできる。
また、図23の領域分割は、複数の人位置判別領域の各々が、室内機までの距離に応じて区分され、近い領域の人位置判別領域に属するポジションの領域数を遠い領域の人位置判別領域に属するポジションの領域数より多く設定しているが、室内機からの距離にかかわらず、各人位置判別領域に属するポジション数を同数にしてもよい。
<障害物検知手段の検知動作及びデータ処理>
上述したように、本発明に係る空気調和機は、人体検知手段により領域A〜Gにおける人の在否を検知するとともに、障害物検知手段によりポジションA1〜G2における障害物の有無を検知し、人体検知手段の検知信号(検知結果)と障害物検知手段の検知信号(検知結果)に基づいて、風向変更手段である上下羽根12及び左右羽根14を駆動制御することにより、快適空間を提供するようにしている。
人体検知手段は、前述の通り、例えば人物が動くことを利用し、空調空間内で動きがある物体を検知することにより人の在否を検知することができるのに対し、障害物検知手段は、撮像センサユニット24により障害物の距離を検知することから、人と障害物を判別することができない。
人を障害物として誤認すると、人がいる領域を空調できなかったり、人に空調風(気流)を直接当ててしまったりすることもあり、結果として非効率な空調制御あるいは人に不快感を与える空調制御となるおそれがある。
そこで、障害物検知手段について、以下に説明するデータ処理を行って障害物のみを検知するようにしている。
まず、撮像センサユニットを利用した障害物検知手段について説明する。撮像センサユニット24を利用して障害物を検出するために、ステレオ法を利用する。ステレオ法は、複数の撮像センサユニット24及び26を利用し、その視差を利用して被写体までの距離を推定する手法である。図24は、ステレオ法による障害物検出を説明するための模式図
である。図において、撮像センサユニット24及び26を利用して、障害物である点Pまでの距離を計測している。また、fは焦点距離、Bは二つの撮像センサユニット24及び26の焦点間の距離、u1は撮像センサユニット24の画像上での障害物のu座標、また、u1の撮像センサユニット26の画像上での対応点のu座標をu2、Xは撮像センサユニットから点Pまでの距離を示している。また、2つの撮像センサユニット24及び26の画像中心位置は等しいとする。このとき、撮像センサユニットから点Pまでの距離Xは、次式より求められる。
この式から、撮像センサユニットから障害物の点Pまでの距離Xは、撮像センサユニット24,26間の視差|u1−u2|に依存することがわかる。
また、対応点の探索は、テンプレートマッチング法を利用したブロックマッチング法などを利用すればよい。以上のように、撮像センサユニットを利用することで、空調空間内の距離測定(障害物の位置検知)を行なう。
数3、数5、数6より、障害物の位置は、画素位置と視差によって推定されることがわかる。表3におけるi及びjは、計測すべき画素位置を示しており、垂直方向の角度及び水平方向の角度は、上述した仰角α及び室内機から見て正面の基準線から右向きに測定した角度βをそれぞれ示している。すなわち、室内機から見て、垂直方向に5度〜80度、水平方向に10度〜170度の範囲で各画素を設定し、撮像センサユニットは各画素の視差を計測する。
すなわち、空気調和機は、画素[14,15]から画素[142,105]までの各画素で視差を測定することで距離測定(障害物の位置検知)を行なう。
また、空気調和機の運転開始時の障害物検知手段の検知範囲を、仰角10度以上に制限するようにしてもかまわない。これは、空気調和機の運転開始時には人がいる可能性が高
く、人を検知しない可能性が高い領域のみ、すなわち壁がある領域を距離測定することで、計測データを有効利用できるからである(人は障害物ではないので、後述するように、人がいる領域のデータは使用しない)。
次に、障害物までの距離測定について、図25のフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS41において、現在の画素に対応する領域(図13に示される領域A〜Gのいずれか)に人がいないと判定された場合には、ステップS42に移行する一方、人がいると判定された場合には、ステップS43に移行する。すなわち、人は障害物ではないので、人がいると判定された領域に対応する画素では、距離測定を行なうことなく以前の距離データを使用し(距離データを更新しない)、人がいないと判定された領域に対応する画素においてのみ距離測定を行い、新たに測定した距離データを使用する(距離データを更新する)ように設定する。
すなわち、各障害物位置判別領域において障害物の有無判定を行なうに際し、各障害物位置判別領域に対応する人位置判別領域における人の在否判定結果に応じて、各障害物位置判別領域における障害物検知装置の判定結果を更新するか否かを決定することで、障害物の有無判定を効率的に行っている。より具体的には、人体検知装置により人がいないと判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知装置による前回の判定結果を新たな判定結果で更新する一方、人体検知装置により人がいると判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知装置による前回の判定結果を新たな判定結果で更新しないようにしている。
ステップS42において、前述のブロックマッチング法を利用することで、各画素の視差を計算し、ステップS44へ移行する。
ステップS44においては、同じ画素で8回のデータを取得し、取得したデータに基づく距離測定が完了したかどうかの判定が行われ、距離測定が完了していないと判定されると、ステップS41に戻る。逆に、ステップS44において、距離測定が完了したと判定されると、ステップS45に移行する。
ステップS45において、その信頼性を評価することで、距離推定の精度を向上させる。すなわち、信頼性があると判断した場合、ステップS46において距離番号確定処理を行なう一方、信頼性がないと判断した場合には、ステップS47において近傍の距離番号をその画素の距離データとして処理を行なう。
なお、これらの処理は撮像センサ24及び26で行われることから、撮像センサユニット24及び26は障害物位置検知装置手段として作用する。
次にステップS46における距離番号確定処理を説明するが、用語「距離番号」についてまず説明する。
「距離番号」は、撮像センサユニットから空調空間のある位置Pまでのおおよその距離を意味しており(後述するように一定の幅を持つ)、図26に示されるように、撮像センサユニットは床面から2m上方に設置され、撮像センサユニットから位置Pまでの距離を「距離番号相当の距離」X[m]とすると、位置Pは次の式で表される。
数6に示したように、距離番号相当の距離Xは撮像センサユニット間の視差の視差に依存する。また、距離番号は2〜12までの整数値とし、各距離番号に相当する距離を表4のように設定している。
なお、表4は、各距離番号と数2によって各画素のv座標値によって決定される仰角(α)に相当する位置Pの位置を示しており、黒色を付した部分は、hがマイナスの値となり(h<0)、床に食い込む位置を示している。また、表4の設定は、能力ランク2.2kwの空気調和機に適用されるものであり、この空気調和機は専ら6畳の部屋(対角距離=4.50m)に設置されるものとして、距離番号=10を制限値(最大値D)とし設定
している。すなわち、6畳の部屋では、距離番号≧11に相当する位置は、対角距離>4.50mで部屋の壁を越えた位置(部屋の外側の位置)となり、全く意味を持たない距離番号であり、黒色で示している。
因みに、表5は、能力ランク6.3kwの空気調和機に適用されるものであり、この空気調和機は専ら20畳の部屋(対角距離=8.49m)に設置されるものとして、距離番号=12を制限値(最大値D)として設定している。
表6は、空気調和機の能力ランクと各画素の仰角に応じて設定された距離番号の制限値を示している。
次に、ステップS45における信頼性評価処理と、ステップS46における距離番号確定処理について説明する。
上述したように、距離番号には、空気調和機の能力ランクと各画素の仰角に応じて制限値が設定されており、距離番号推定結果がN>最大値Dの場合でも、複数の測定結果において、すべての結果が距離番号=Nでなければ、距離番号=Dに設定される。
各画素で8回分の距離番号を決定し、大きい方から順に2つの距離番号と小さい方から順に2つの距離番号を除いて、残り4つの距離番号の平均値を取り、距離番号を確定する。ブロックマッチング法によるステレオ法を用いる場合、輝度変化のない障害物を検出する場合、視差計算は安定せず、測定する毎に大きく異なる視差結果(距離番号)が検出されてしまう。そこで、ステップS45において、残り4つの距離番号の値を比較し、そのばらつきが閾値以上である場合、ステップS47において、その距離番号の値は信頼性がないとしてその画素での距離推定をあきらめ、近傍画素において推定されている距離番号を利用する。なお、平均値は小数点以下を切り上げて量子化した整数値とし、このようにして確定された距離番号に相当する位置は、表4あるいは表5に記載のとおりである。
なお、本実施の形態では、各画素で8つの距離番号を決定し、大小それぞれ2つの距離番号を除いて、残り4つの距離番号の平均値を取り、距離番号を確定するようにしたが、各画素で決定する距離番号は8つに限られるものではなく、平均値を取る距離番号も4つに限られるものではない。
すなわち、各障害物位置判別領域において障害物の有無判定を行なうに際し、各障害物位置判別領域に対応する人位置判別領域における人の在否判定結果に応じて、各障害物位置判別領域における障害物検知手段の判定結果を更新するか否かを決定することで、障害物の有無判定を効率的に行っている。より具体的には、人体検知手段により人がいないと判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知手段による前回の判定結果を新たな判定結果で更新する一方、人体検知手段により人がいると判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知手段による前回の判定結果を新たな判定結果で更新しないようにしている。
なお、図25のフローチャートにおけるステップS43において、以前の距離データを使用するようにしたが、空気調和機の据え付け直後は以前のデータは存在しないので、障害物検知手段による各障害物位置判別領域における判定が初回の場合には、デフォルト値を使用することとし、デフォルト値としては、上述した制限値(最大値D)が使用される。
図27は、ある居住空間の立面図(撮像センサユニットを通る縦断面図)であり、撮像センサユニットの下方2mに床面があり、床面から0.7〜1.1mにテーブル等の障害物がある場合の測定結果を図面化したもので、図中、網掛け部、右上がりの斜線部、右下がりの斜線部は、近距離、中距離、遠距離(これらの距離については後述する)にそれぞれ障害物があるものと判定されている。
<障害物検知の学習制御>
前述のように、ステレオ法は輝度変化のない障害物を検出する場合など、被写体によっては、障害物検知に失敗する可能性が高くなる。
一例として、輝度変化がなく、平坦な上面を有する食卓等のテーブルを考えると、テーブル上に何もない場合、ステレオ法では視差計算に失敗してしまうため、テーブルの位置決定は難しい。しかし、テーブル上に生活用品(食器、リモコン、本、新聞、ティッシュ箱等)が存在すると、上面に輝度差(テクスチャ)が生じるため、ステレオ法によるテーブルの位置決定は容易になる。
そこで、この学習制御においては、障害物検知を、障害物だけでなく障害物の近傍にある周囲の付帯物との相互作用も利用して行なうようにしている。しかしながら、実際に部屋内に置かれている家具等(実際には、家具というよりもむしろ家具上に置かれている生活用品)は日々その場所が変わる可能性が高く、障害物の角度や、障害物近傍の周囲付帯物の相互作用は変化することから、障害物検知を繰り返し行なうことにより、検知ミスを極力低減することが可能となる。この学習制御は、図28に示されるフローチャートのように、毎回の走査結果を元に障害物位置を学習し、その学習制御結果から障害物のある場所を判断し、後述する気流制御を行なうものである。
図28は、障害物有無判定を示すフローチャートを示しており、この障害物有無判定は、図23に示される全てのポジション(障害物位置判別領域)に対し順次行われる。ここでは、ポジションA1を例に取り説明する。
撮像センサユニット24,26により障害物検知動作を開始すると、まずステップS71において、ポジションA1の最初の画素で撮像センサユニット24,26により検知動作(ステレオ法)を行い、ステップS72において、上述した障害物の有無判定を行なう。ステップS72において、障害物があると判定されると、ステップS73において、第1のメモリに「1」を加算する一方、障害物がないと判定されると、ステップS74にお
いて、第1のメモリに「0」を加算する。
ステップS75において、ポジションA1の最終画素における検知が終了したかどうかを判定し、最終画素における検知が終了していない場合には、ステップS76において、次の画素でステレオ法により検知動作を行い、ステップS72に戻る。
一方、最終画素における検知が終了した場合には、ステップS77において、第1のメモリに記録された数値(障害物があると判定された画素の合計)をポジションA1の画素数で除して(割算を行って)、次のステップS78において、その商を所定の閾値と比較する。商が閾値より大きい場合には、ステップS79において、ポジションA1には障害物があると一時的に判定され、ステップS80において、第2のメモリに「5」を加算する。一方、商が閾値未満の場合には、ステップS81において、ポジションA1には障害物がないと一時的に判定され、ステップS82において、第2のメモリに「−1」を加算する(「1」を減算する)。
なお、撮像センサユニット24,26により障害物検知は、撮像センサユニット24,26から障害物までの距離が遠くなるほど難しいことから、ここで使用する閾値は、室内機からの距離に応じて、例えば次のように設定される。
近距離:0.4
中距離:0.3
遠距離:0.2
また、この障害物検知動作は、空気調和機を運転するたびに行われるので、第2のメモリには、「5」あるいは「−1」が繰り返し加算される。そこで、第2のメモリに記録される数値は、最大値を「10」に、最小値を「0」に設定している。
次に、ステップS83において、第2のメモリに記録された数値(加算後の合計)が判定基準値(例えば、5)以上かどうかを判定し、判定基準値以上であれば、ステップS84において、ポジションA1には障害物があると最終的に判定される一方、判定基準値未満であれば、ステップS85において、ポジションA1には障害物がないと最終的に判定される。
なお、第1のメモリは、あるポジションの障害物検知動作が終了すると、そのメモリをクリアすることにより、次のポジションにおける障害物検知動作のメモリとして使用できるが、第2のメモリは、空気調和機を運転するたびに一つのポジションでの加算値を累積することから(ただし、最大値≧合計≧最小値)、ポジション数と同数のメモリが用意されている。
上述した障害物検知の学習制御において、判定基準値として「5」を設定し、あるポジションにおける初回の障害物検知で障害物ありと最終的に判定されると、第2のメモリには「5」が記録される。この状態で、次回の障害物検知で障害物なしと最終的に判定されると、「5」に「−1」を加算した値が判定基準値未満となるので、そのポジションには障害物は存在しないことになる。
しかしながら、次回の障害物検知でも障害物ありと最終的に判定されると、「5」に「5」を加算した値「10」が第2のメモリに記録され、合計値は判定基準値以上なので、そのポジションには障害物は存在することになり、次々回以降5回の障害物検知で障害物なしと判定されても、「10」に「−1×5」を加算した値は「5」なので、そのポジションには依然として障害物が存在することになる。
つまり、この障害物検知の学習制御は、複数回の加算累計値(あるいは加減算累計値)に基づいて障害物の最終有無判定を行なうに際し、障害物ありと判定されたときに加算する値を、障害物なしと判定されたときに減算する値よりも十分に大きな数字に設定したことに特徴があり、このように設定することで、障害物があるという結果が出やすいようにしている。
また、第2のメモリに記録される数値に最大値及び最小値を設定することで、引越しや模様替え等により障害物の位置が大きく変化しても、できるだけ早くその変化に追随することができる。最大値を設けない場合、障害物ありと毎回判定されると、その和が次第に大きくなり、引越し等により障害物の位置が変わり、障害物ありと毎回判定された領域に障害物がなくなった場合でも、判定基準値を下回るのに時間がかかってしまう。また、最小値値を設けなかった場合には、その逆の現象が発生することになる。
図29は、図28のフローチャートで示される障害物検知の学習制御の変形例を示しており、ステップS100,S102,S103の処理のみ図28のフローチャートと相違しているので、これらのステップについて説明する。
この学習制御では、ステップS99において、ポジションA1には障害物があると一時的に判定されると、ステップS100において、第2のメモリに「1」を加算する。一方、ステップS101において、ポジションA1には障害物がないと一時的に判定されると、ステップS102において、第2のメモリに「0」を加算する。
次に、ステップS103において、現在の障害物検知を含む過去10回の障害物検知に基づいて第2のメモリに記録された合計値を判定基準値(例えば、2)と比較し、判定基準値以上であれば、ステップS104において、ポジションA1には障害物があると最終的に判定される一方、判定基準値未満であれば、ステップS105において、ポジションA1には障害物がないと最終的に判定される。
すなわち、上述した障害物検知の学習制御は、あるポジションにおける過去10回の障害物検知で8回障害物を検知できなくても、2回検知できれば、障害物があると最終的に判定されることになる。したがって、この学習制御は、障害物があると最終的に判定する障害物検知回数(ここでは、2)を、参照する過去の障害物検知回数よりも十分に小さな数字に設定したことに特徴があり、このように設定することで、障害物があるという結果が出やすいようにしている。
なお、室内機本体あるいはリモコンに、第2のメモリに記録されたデータをリセットするボタンを設け、このボタンを押すことにより、前記データをリセットするようにしてもよい。
基本的には、気流制御に大きな影響を及ぼす障害物や壁面の位置が変わることは少ないが、引越し等に伴う室内機の設置位置の変更や、部屋内の模様替えによる家具位置の変更等が生じた場合、それまでに得られたデータを元に気流制御を行なうことは好ましくない。これは、学習制御により、いずれはその部屋に適した制御となるが、最適制御となるまでには時間がかかるからである(特に、その領域において障害物がなくなった場合に顕著である)。したがって、リセットボタンを設け、室内機と障害物あるいは壁面の相対的な位置関係が変わった場合には、それまでのデータをリセットすることにより、過去の間違ったデータを元にした不適切な空調を防止できるとともに、学習制御を最初から再開することにより、より早くその状況に合った制御とすることができる。
<障害物回避制御>
上記障害物の有無判定に基づき、風向変更手段としての上下羽根12及び左右羽根14は、暖房時次のように制御される。
以下の説明においては、用語「ブロック」、「フィールド」、「近距離」、「中距離」、「遠距離」を使用するが、これらの用語をまず説明する。
図13に示される領域A〜Gは次のブロックにそれぞれ属している。
ブロックN:領域A
ブロックR:領域B,E
ブロックC:領域C,F
ブロックL:領域D,G
また、領域A〜Gは次のフィールドにそれぞれ属している。
フィールド1:領域A
フィールド2:領域B,D
フィールド3:領域C
フィールド4:領域E,G
フィールド5:領域F
さらに、室内機からの距離については次のように定義している。
近距離:領域A
中距離:領域B,C,D
遠距離:領域E,F,G
表7は、左右羽根14を構成する5枚の左羽根と5枚の右羽根の各ポジションにおける目標設定角度を示しており、数字(角度)に付した記号は、図30に示されるように、左羽根あるいは右羽根が内側に向く場合をプラス(+、表7では無記号)の方向、外側に向く場合をマイナス(−)の方向と定義している。
また、表7における「暖房B領域」とは、障害物回避制御を行なう暖房領域のことであり、「通常自動風向制御」とは、障害物回避制御を行なわない風向制御のことである。ここで、障害物回避制御を行なうかどうかの判定は、室内熱交換器6の温度を基準としており、温度が低い場合は居住者に風を当てない風向制御、高すぎる場合は最大風量位置の風向制御、適度な温度の場合は暖房B領域への風向制御を行なう。また、ここでいう「温度が低い」、「高すぎる」、「居住者に風を当てない風向制御」、「最大風量位置の風向制御」とは、次のとおりの意味である。
・低い温度:室内熱交換器6の温度は皮膚温度(33〜34℃)を最適温度として設定しており、この温度以下になりうる温度(例えば、32℃)
・高すぎる温度:例えば、56℃以上
・居住者に風を当てない風向制御:居住空間に風を送らないように、上下羽根12を角度制御して、風が天井に沿うように流れる風向制御
・最大風量位置の風向制御:空気調和機は、上下羽根12及び左右羽根14により気流を曲げると必ず抵抗(損失)が発生することから、最大風量位置とは損失が限りなく0に近くなる風向制御(左右羽根14の場合、まっすぐ正面を向いた位置であり、上下羽根12の場合、水平から35度下を向いた位置)
表8は、障害物回避制御を行なう場合の上下羽根12の各フィールドにおける目標設定角度を示している。なお、表8における上羽根の角度(γ1)及び下羽根の角度(γ2)
は垂直線から上方向に測定した角度(仰角)である。
次に、障害物の位置に応じた障害物回避制御について具体的に説明するが、障害物回避制御において使用される用語「スイング動作」「ポジション停留稼動」「ブロック停留稼動」についてまず説明する。
スイング動作とは、左右羽根14の揺動動作のことで、基本的には目標の一つのポジションを中心に所定の左右角度幅で揺動し、スイングの両端で固定時間がない動作のことである。
また、ポジション停留稼動とは、あるポジションの目標設定角度(表7の角度)に対し、表9の補正を行い、それぞれ、左端及び右端とする。動作としては、左端と右端でそれぞれ風向固定時間(左右羽根14を固定する時間)を持ち、例えば、左端で風向固定時間が経過した場合、右端に移動し、右端で風向固定時間が経過するまで、右端の風向を維持し、風向固定時間の経過後、左端に移動し、それを繰り返すものである。風向固定時間は、例えば60秒に設定される。
すなわち、あるポジションに障害物がある場合に、そのポジションの目標設定角度をそのまま使用すると、温風が常に障害物に当たるが、表9の補正を行なうことで、障害物の横から温風を人がいる位置に到達させることができる。
さらにブロック停留稼動とは、各ブロックの左端と右端に対応する左右羽根14の設定角度を、例えば表10に基づいて決定する。動作としては、各ブロックの左端と右端でそれぞれ風向固定時間を持ち、例えば、左端で風向固定時間が経過した場合、右端に移動し、右端で風向固定時間が経過するまで、右端の風向を維持し、風向固定時間の経過後、左端に移動し、それを繰り返すものである。風向固定時間は、ポジション停留稼動と同様に、例えば60秒に設定される。なお、各ブロックの左端と右端は、そのブロックに属する人位置判別領域の左端と右端に一致しているので、ブロック停留稼動は、人位置判別領域の停留稼動と言うこともできる。
なお、ポジション停留稼動とブロック停留稼動は、障害物の大きさに応じて使い分けている。前方の障害物が小さい場合、障害物のあるポジションを中心にポジション停留稼動を行なうことで障害物を避けて送風するのに対し、前方の障害物が大きく、例えば人がいる領域の前方全体に障害物がある場合、ブロック停留稼動を行なうことで広い範囲にわたって送風するようにしている。
本実施の形態においては、スイング動作とポジション停留稼動とブロック停留稼動を総称して、左右羽根14の揺動動作と称している。
以下、上下羽根12あるいは左右羽根14の制御例を具体的に説明するが、人体検知手段により人が単一の領域にのみいると判定された場合、人体検知手段により人がいると判定された人位置判別領域の前方に位置する障害物位置判別領域に障害物があると障害物検知手段により判定された場合、上下羽根12を制御して障害物を上方から回避する気流制御を行なうようにしている。また、人体検知手段により人がいると判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域に障害物があると障害物検知手段により判定された場合、人がいると判定された人位置判別領域に属する少なくとも一つの障害物位置判別領域内で左右羽根14を揺動させ、揺動範囲の両端で左右羽根14の固定時間を設けない第1の気流制御と、人がいると判定された人位置判別領域あるいは当該領域に隣接する人位置判別領域に属する少なくとも一つの障害物位置判別領域内で左右羽根14を揺動させ、揺動範囲の両端で左右羽根14の固定時間を設けた第2の気流制御の一つを選択するようにしている。
また、以下の説明では、上下羽根12の制御と左右羽根14の制御を分けているが、人及び障害物の位置に応じて、上下羽根12の制御と左右羽根14の制御は適宜組み合わせて行われる。
A.上下羽根制御
(1)領域B〜Gのいずれかに人がいて、人がいる領域の前方のポジションA1〜A3
に障害物がある場合
上下羽根12の設定角度を通常のフィールド風向制御(表8)に対し表11のように補正し、上下羽根12を上向き設定した気流制御を行なう。
(2)領域B〜Gのいずれかに人がいて、人がいる領域の前方の領域Aに障害物がない場合(上記(1)以外)
通常自動風向制御を行なう。
B.左右羽根制御
B1.領域A(近距離)に人がいる場合
(1)領域Aにおいて障害物のないポジションが一つの場合
障害物のないポジションの目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ第1の気流制御を行なう。例えば、ポジションA1,A3に障害物があり、ポジションA2に障害物がない場合、ポジションA2の目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ、基本的には障害物のないポジションA2を空調するが、ポジションA1,A3に人がいないとは限らないので、スイング動作を加えることで、ポジションA1,A3に多少でも気流が振り分けられるようにする。
さらに具体的に説明すると、表7及び表9に基づいて、ポジションA2の目標設定角度及び補正角度(スイング動作時の揺動角)は決定されるので、左羽根及び右羽根は共に10度を中心に、それぞれ±10度の角度範囲で止まることなく揺動(スイング)し続ける。ただし、左羽根と右羽根を左右に振るタイミングは同一に設定されており、左羽根と右羽根の揺動動作は連動している。
(2)領域Aにおいて障害物のないポジションが二つで、隣接している場合(A1とA2あるいはA2とA3)
障害物のない二つのポジションの目標設定角度を両端としてスイング動作させ第1の気流制御を行なうことで、基本的に障害物のないポジションを空調する。
(3)領域Aにおいて障害物のないポジションが二つで、離れている場合(A1とA3)
障害物のない二つのポジションの目標設定角度を両端としてブロック停留稼動させ第2の気流制御を行なう。
(4)領域Aにおいてすべてのポジションに障害物がある場合
どこを狙っていいのか不明なので、ブロックNをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行なう。領域全体を狙うよりもブロック停留稼動の方が指向性のある風向となって遠くに届きやすく、障害物を回避できる可能性が高いからである。すなわち、領域Aに障害物が点在している場合でも、障害物と障害物との間には通常隙間があり、この障害物間の
隙間を通して送風することができる。
(5)領域Aにおいてすべてのポジションに障害物がない場合
領域Aの通常自動風向制御を行なう。
B2.領域B,C,D(中距離)のいずれかに人がいる場合
(1)人がいる領域に属する二つのポジションの一方にのみ障害物がある場合
障害物のないポジションの目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ第1の気流制御を行なう。例えば、領域Dに人がいて、ポジションD2にのみ障害物がある場合、ポジションD1の目標設定角度を中心として左右にスイング動作させる。
(2)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行なう。例えば、領域Dに人がいて、ポジションD1,D2の両方に障害物がある場合、ブロックLをブロック停留稼動させる。
(3)人がいる領域に障害物がない場合
人がいる領域の通常自動風向制御を行なう。
B3.領域E,F,G(遠距離)のいずれかに人がいる場合
(1)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの一方にのみ障害物がある場合(例:領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、ポジションB1に障害物がない)
(1.1)障害物があるポジションの両隣に障害物がない場合(例:ポジションB1,C1に障害物がない)
(1.1.1)障害物があるポジションの後方に障害物がない場合(例:ポジションE2に障害物がない)
障害物があるポジションを中心としてポジション停留稼動させ第2の気流制御を行なう。例えば、領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、その両側にも後方にも障害物がない場合、ポジションB2にある障害物を横から避けて領域Eに気流を送り込むことができる。
(1.1.2)障害物があるポジションの後方に障害物がある場合(例:ポジションE2に障害物がある)
中距離領域で障害物がないポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行なう。例えば、領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、その両側には障害物がないが、その後方に障害物がある場合、障害物がないポジションB1から気流を送り込むほうが有利である。
(1.2)障害物があるポジションの両隣のうち一方に障害物があり、他方に障害物がない場合
障害物がないポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行なう。例えば、領域Fに人がいて、ポジションC2に障害物があり、ポジションC2の両隣のうちポジションD1に障害物があり、C1に障害物がない場合、障害物がないポジションC1からポジションC2の障害物を避けて気流を領域Fに送ることができる。
(2)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行なう。例え
ば、領域Fに人がいて、ポジションC1,C2の両方に障害物がある場合、ブロックCをブロック停留稼動させる。この場合、人の前方に障害物があり、障害物を避けようがないので、ブロックCに隣接するブロックに障害物があるかどうかに関係なく、ブロック停留稼動を行なう。
(3)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの両方に障害物がない場合(例:領域Fに人がいて、ポジションC1,C2に障害物がない)
(3.1)人がいる領域に属する二つのポジションの一方のポジションにのみ障害物がある場合
障害物がない他方のポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行なう。例えば、領域Fに人がいて、ポジションC1,C2,F1に障害物がなく、ポジションF2に障害物がある場合、人がいる領域Fの前方は開放されているので、遠距離の障害物を考慮して障害物のない遠距離のポジションF1を中心に空調する。
(3.2)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行なう。例えば、領域Gに人がいて、ポジションD1,D2に障害物がなく、ポジションG1,G2の両方に障害物がある場合、人がいる領域Gの前方は開放されているが、この領域全体に障害物があり、どこを狙っていいのか不明なので、ブロックLをブロック停留稼動させる。
(3.3)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がない場合
人がいる領域の通常自動風向制御を行なう。
<障害物の有無判定のみに基づく障害物回避制御>
この障害物回避制御は、基本的には障害物検知装置により障害物ありと判定された領域を回避し、障害物なしと判定された領域に向けて送風するためのものであり、以下その具体例を説明する。
A.上下羽根制御
(1)領域A(近距離)に障害物がある場合
暖房時には軽くなって浮き上がる暖気を抑えるために上下羽根12を最下方向に向けて温風を送り出すと、領域Aに障害物がある場合、障害物の裏(室内機側)に暖気がたまったり、暖気が障害物に当たって床面まで届かなかったりすることが考えられる。
そこで、室内機直下もしくはその近傍に障害物を検知した場合、上下羽根12の設定角度を通常のフィールド風向制御(表8)に対し表11のように補正し、上下羽根12を上向き設定した気流制御を行い、障害物の上から空調を行う。障害物を回避しようと気流全体を上に上げすぎてしまうと、暖気が居住者の顔に直接当たってしまい、不快感を与えるため、下羽根12bで暖気を持ち上げて障害物を回避しつつ、上羽根12aで浮き上がりを防ぐようにしている。
B.左右羽根制御
(1)領域B,C,D(中距離)のいずれかに障害物がある場合
障害物がない方向を重点的に空調する。例えば、領域C(部屋中央)に障害物を検知した場合には、障害物のない両側の領域B,Dを含むブロックを交互にブロック停留稼動させることで、障害物のない(=人の存在する可能性の高い)領域を重点的に空調できる。
また、領域BあるいはD(部屋の隅)に障害物を検知した場合には、領域C及びDあるいは領域B及びCを含むブロックをブロック停留稼動させる。この場合、複数回(例えば、5回)に1回の割合で、領域C及びDあるいは領域B及びCをブロック停留稼動した後
、領域BあるいはDに向けて左右羽根14をスイングさせるようにすると、人の存在する可能性がより高い領域を中心に空調することができるばかりでなく、部屋全体の空調の点で効果がある。
また、障害物の有無を判別するポジション(障害物位置判別領域)は、空気調和機の能力ランクに関係なく図23に示されるように細分化してもよいが、能力ランクに応じて設置される部屋のサイズも異なるため、分割領域数を変えるようにしてもよい。例えば、能力ランクが4.0kw以上のものでは、図23に示されるように分割し、3.6kw以下のものでは、遠距離領域を設けることなく、近距離領域を3分割し、中距離領域を6分割するようにしてもよい。
さらに、図23に示されるように、放射状に部屋を認識し、室内機から等間隔で近/中/遠距離と分割した場合、室内機から離れるほどその面積は大きくなる。そこで、室内機から離れるほど判別領域数を多くすることにより、各領域の大きさを略均一にすることができ、気流制御が行いやすくなる。
また、居住空間内の検知は、障害物検知手段が表3に示される各画素位置を検知することにより行われるが、室内機から判別領域までの距離に応じて画素位置の1単位を大きくすることもできる。
ここで、各画素位置に対応する検知小領域を「セル」という用語で表現すると、各領域における検知セル数の数が増加するほど検知精度は向上するが、検知時間が長くなることから、検知精度と検知時間の兼ね合いを考慮するのが好ましい。そこで、例えば、近距離に対応する各画素位置(俯角α:25度〜80度)では水平方向及び垂直方向をともに10度刻みに走査するとともに、中距離に対応する各アドレス(俯角α:15度〜30度)及び遠距離に対応する各画素位置(俯角α:5度〜20度)では水平方向及び垂直方向をともに5度刻みに検知することにより、各領域における検知セル数を略等しく(概ね20個前後)することができる。
なお、本実施の形態においては、距離検知手段としてのステレオ法を採用したが、ステレオ法に代えて、投光部28と撮像センサユニット24を利用した手法を採用することもできる。この手法について説明する。
図31に示されるように、本実施形態の本体2には、撮像センサユニット24および投光部28を有する。投光部28は、光源70と走査部72からなり(図示せず)、光源70は、LEDやレーザーを利用すればよい。また、走査部72はガルバノミラーなどを利用し、投光方向を任意に変化させることができる。図32は、撮像センサユニット24と投光部28の関係を示した模式図である。本来、投光方向は2自由度、撮像面は縦横の2次元平面であるが、説明を簡略化するために、投影方向1自由度、撮像面は横方向のみの直線として考える。ここで、投光部28は、撮像センサユニット24の光軸方向に対して、投光方向ρで光を投光する。撮像センサユニット24は、投光部28が投光する直前のフレーム画像と投光中のフレーム画像の差分処理を行なうことにより、投光部28が投光した光を反射している点Pの画像上でのu座標u1を取得する。撮像センサユニット24から点Pまでの距離をXとすると、以下の関係が成り立つ。
よって、
つまり、投光部28の投光方向ρを変化させながら、その光の反射点Pを検出することにより、空調空間内の距離情報を得ることができる。
表18におけるi及びjは、投光部28が走査すべきアドレスを示しており、垂直方向の角度及び水平方向の角度は、上述した仰角α及び室内機から見て正面の基準線から右向きに測定した角度βをそれぞれ示している。すなわち、室内機から見て、垂直方向に5度〜80度、水平方向に10度〜170度の範囲で各アドレスを設定し、投光部28は各アドレスを計測し、居住空間を走査する。
次に、障害物までの距離測定について、図33のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図33のフローチャートは図25のフローチャートと極めて類似しているので、異なるステップのみ以下説明する。
まずステップS48において、投光部28が投光を行なうアドレス[i,j]に対応する領域(図13に示される領域A〜Gのいずれか)に人がいないと判定された場合には、ステップS49に移行する一方、人がいると判定された場合には、ステップS43に移行する。すなわち、人は障害物ではないので、人がいると判定された領域に対応する画素では、距離測定を行なうことなく以前の距離データを使用し(距離データを更新しない)、人がいないと判定された領域に対応する画素においてのみ距離測定を行い、新たに測定した距離データを使用する(距離データを更新する)ように設定する。
ステップS49において、前述の投光処理と反射点を撮像センサユニット24から取得することにより、障害物までの距離を推定する。もちろん、前述のように、距離番号確定処理を利用して、距離番号を利用した処理を行なえばよい。
また、距離検知手段として人体検知手段を利用してもかまわない。これは、人体検知手段を利用した人体距離検出手段と、人体検知手段を利用した障害物検出手段からなる。この処理について説明する。
図34に示されるように、本実施形態の本体2には、単一の撮像センサユニット24を有する。また、図35は、人体検知手段を利用した人体距離検出手段の処理の流れを示したフローチャートである。この図において、図5と同じステップに関しては、同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS201において、人体距離検出手段は、前記人体検知手段が領域分割を行なった各領域において、差分が生じている画素のうち、最も画像上部に存在する画素を検出し、そのv座標をv1として取得する。
さらに、ステップS202において、人体距離検出手段は、最も画像上部のv座標であるv1を利用して、撮像センサユニットから人物までの距離を推定する。図36は、この処理を説明するための模式図である。図36(a)はカメラ近傍と遠方に二人の人物121,122が存在するシーンの模式図、図36(b)は撮像センサユニットが図36(a)のシーンにおいて撮像した画像の差分画像を示している。また、差分が生じている領域123,124は、それぞれ、人物121,122に対応する。ここで、人物の身長h1が既知であり、空調空間内のすべての人物の身長はほぼ等しいとする。前述のように、撮像センサユニット24は2mの高さに設置されているため、図36(a)に示すように、撮像センサユニットは、人物の上部から見下ろして撮像を行なう。このとき、人物が撮像センサユニットに近ければ近いほど、図36(b)に示すように、人物は画像上の下部に撮像される。すなわち、人物の最も画像上部のv座標v1と撮像センサユニットから人物までの距離は1対1に対応する。このことから、人物の最も上部のv座標v1と撮像センサユニットから人物までの距離の対応を事前に求めておくことにより、人体検知手段を利用した人体距離検出手段を行なうことができる。表19は、人物の平均身長をh1として利用し、人物の最も画像上部のv座標v1と撮像センサユニットから人物までの距離の対応を事前に求めた例である。ここでは、撮像センサユニットとして、VGAの解像度を有する撮像センサユニットを利用した。この表より、例えば、v1=70であった場合、撮像センサユニット24から人物までの距離は、およそ2mであると推測される。
次に、人体検知手段を利用した障害物検出手段について説明する。
図37は、人体検知手段を利用した障害物検出手段の処理の流れを示したフローチャートである。
ステップS203において、障害物検出手段は、前記人体距離検出手段が推定した撮像センサユニット24から人物までの距離情報を利用して、画像上での人物の高さv2を推定する。図38は、この処理を説明するための模式図であり、図36と同様のシーンを示した模式図である。ここで、前述のように人物の身長h1が既知であり、空調空間内のすべての人物の身長はほぼ等しいとする。前述のように、撮像センサユニット24は2mの高さに設置されているため、図35(a)に示すように、撮像センサユニットは、人物の上部から見下ろして撮像を行なう。このとき、人物が撮像センサユニット24に近ければ近いほど、図35(b)に示すように、人物の画像上での大きさは大きくなる。すなわち、人物の最も画像上部のv座標と最も画像下部のv座標との差v2は、撮像センサユニットから人物までの距離に対して、1対1に対応する。このことから、撮像センサユニットから人物までの距離がわかっている場合に、その画像上での大きさを推定することができる。これは、人物の最も画像上部のv座標と最も画像下部のv座標との差v2と撮像センサユニットから人物までの距離の対応を事前に求めておけばよい。表20は、人物の最も画像上部のv座標v1、人物の最も画像上部のv座標と最も画像下部のv座標との差v2と撮像センサユニット24から人物までの距離の対応を事前に求めた例である。ここでは、撮像センサユニットとして、VGAの解像度を有する撮像センサユニットを利用した。この表より、例えば、撮像センサユニット24から人物までの距離が2mであった場合、人物の最も画像上部のv座標と最も画像下部のv座標との差v2=85であると推測される。
ステップS204において、障害物検出手段は、差分画像の各領域において、最も画像上部に存在する差分が生じている画素と最も画像下部に存在する差分が生じている画素を検出し、そのv座標の差v3を計算する。
ステップS205において、撮像センサユニット24から人物までの距離情報を利用して推定した画像上での人物の高さv2と、実際の差分画像から求めた人物の高さv3を比較することで、撮像センサユニット24と人物の間に障害物が存在するかどうかを推定する。図39、図40は、この処理を説明するための模式図である。図39は、図36と同様のシーンを示しており、撮像センサユニット24と人物の間に障害物が存在しないシーンを示した模式図である。一方、図40は障害物が存在するシーンを示した模式図である。図39において、撮像センサユニットと人物の間に障害物が存在しない場合、撮像センサユニット24から人物までの距離情報を利用して推定した画像上での人物の高さv2と、実際の差分画像から求めた人物123の高さv3はほぼ等しくなる。一方、図40において、撮像センサユニット24と人物の間に障害物が存在する場合、人物の一部が遮蔽されてしまい、遮蔽された領域は差分が存在しなくなる。ここで、空調空間内の遮蔽物は、ほとんどのものが床に置かれていることに着目すると、人物の下部領域が遮蔽されると考えられる。このことは、人物領域の最も画像上部のv座標であるv1を利用して人物までの距離を求めた場合、もし、撮像センサユニット24と人物の間に障害物が存在したとしても、距離は正確に求まることを示している。一方、もし、撮像センサユニット24と人物の間に障害物が存在する場合、実際の差分画像から求めた人物125の高さv3は、撮像センサユニット24と人物までの距離情報を利用して推定した画像上での人物の高さv2に比べ、小さくなると推測される。そのため、ステップS205において、v3がv2に比べ十分に小さいと判断された場合、ステップS206に移行し、撮像センサユニットと人物の間に障害物があると判断する。この際、撮像センサユニットと障害物との距離は、最も上部のv座標v1から求めた撮像センサユニットから人物までの距離に等しいとする。
以上のように、人体検知手段による検知結果を利用して、距離検知手段を実現する。