JP2011071776A - 電磁波通信媒体、電磁波散乱装置およびアンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】二次元通信媒体内を伝搬する電磁波を三次元空間に放射する。
【解決手段】通信シート30は、電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層36を有する平面状の電磁波伝搬層と、電磁波伝搬層の表面の少なくとも一部の領域に重ねて配置される導体メッシュ層31とを備える。スイッチ層は、互いに略平行に配置された複数のxライン32と、xラインと交差しxラインに対して絶縁された複数のyライン34と、xラインおよびyラインの交差部付近で両者を接続し、所与の制御信号に応じて両者を容量性結合させて電磁波伝搬層内の電磁波を散乱させるように構成された散乱スイッチと、を備える。
【選択図】図2
【解決手段】通信シート30は、電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層36を有する平面状の電磁波伝搬層と、電磁波伝搬層の表面の少なくとも一部の領域に重ねて配置される導体メッシュ層31とを備える。スイッチ層は、互いに略平行に配置された複数のxライン32と、xラインと交差しxラインに対して絶縁された複数のyライン34と、xラインおよびyラインの交差部付近で両者を接続し、所与の制御信号に応じて両者を容量性結合させて電磁波伝搬層内の電磁波を散乱させるように構成された散乱スイッチと、を備える。
【選択図】図2
Description
本発明は、シート状の電磁波伝達媒体を利用して通信を行う技術に関する。
従来、二次元の導波路を有する通信シート表面のマイクロ波近接場を利用して、通信デバイス間の通信や給電を行う二次元通信が提案されている。例えば、非特許文献1においては、電磁波伝送による信号送受信と電力受給電とをする電磁波インタフェース装置が紹介されている。これによると、通信シート上に載置されたデバイス間において、干渉性が低く電磁波漏洩の少ない高セキュリティな無線通信が可能となる。
上述の二次元通信シートは、シート表面から数ミリの範囲でのみ通信可能になることから高い秘匿性を有している点で有利であるが、各通信デバイスを配置できる範囲が通信シート上に拘束されてしまうという問題がある。また、その原理上、電磁波の伝搬はシートが連続している範囲に限られるので、複数の分断されたシート間の結合が困難であるという問題がある。
そこで本願発明者らは、通信シート上に誘電体の周期構造からなるグレーティングアンテナを配置することで、二次元通信の適用範囲を空間的に拡張することを提案している(例えば、非特許文献2)。このようなアンテナ構造が十分多数存在する場合、通信シート内の損失を無視すれば、通信シート内を伝播するマイクロ波の導波モードのエネルギーの大半を放射モードに変換することができる。したがって、例えば通信シートから離れた位置に対して指向性ビームを伝送したり、机と壁などの複数の面に組み込まれた通信シート間を指向性ビームによって相互結合するといった応用的な用途が期待できる。
篠田裕之ら、「表面マイクロ波を用いた信号と電力の同時伝送法(ユビキタス・センサネットワークを支える理論、および一般)」、社団法人 電子情報通信学会技術研究報告 Vol.107, No.53(20070517) pp. 115-118
門内靖明、篠田裕之、「誘電体周期構造による二次元通信シートと外部空間の指向性電磁結合」、第9回システムインテグレーション部門講演会、pp. 553-554
しかしながら、現実の用途では、指向性ビームの方向が空間内で固定されていると不便なことが多い。例えば、指向性ビームを利用して通信デバイスと通信シートの無線接続を試みる場合、通信デバイスの位置に応じて指向性ビームの方向を変化させる必要がある。また、現実の用途では通信シート内を伝播するマイクロ波等の電磁波の波形は一様ではないので、通信状況に応じて適応的にグレーティングパターンを変化させる必要が生じうる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信シート内を伝播する電磁波をシート外部に散乱させるための散乱体の分布パターンが可変である通信シートの構成およびその制御技術を提供することにある。
本発明の一実施形態は、電磁波通信媒体である。この電磁波通信媒体は、電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層を有する平面状の電磁波伝搬層と、電磁波伝搬層の表面の少なくとも一部の領域に重ねて配置されるスイッチ層であって、予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で電磁波伝搬層中を伝搬する電磁波を表面上方に散乱させる複数の散乱スイッチを有するスイッチ層と、を備える。そして、所定の制御信号を付与することで散乱スイッチの状態を変更可能に構成される。
この態様によると、二次元の電磁波通信媒体内を伝播する電磁波を表面上方に散乱させることで、二次元通信の範囲を三次元に拡張することができる。また、電磁波通信媒体上に電磁波を散乱する多数の散乱スイッチを配置した構造を採ることで、散乱ポイントの分布を自在に制御することができる。
スイッチ層は、互いに略平行に配置された複数の第1導線と、第1導線と交差し第1導線に対して絶縁された複数の第2導線とを備え、散乱スイッチは、第1導線と第2導線の交差部付近で両者を接続し、制御信号に応じて両者を容量性結合させて電磁波伝搬層内の電磁波を散乱させるように構成されたスイッチであってもよい。
スイッチ層は、電圧を印加することで誘電率が変化する可変誘電率層を備え、散乱スイッチは、複数の散乱ポイント近傍で局所的に高い誘電率となるように可変誘電率層に電圧を印加するように構成されたスイッチであってもよい。
散乱スイッチは、各散乱ポイントで散乱される電磁波が空間中のある方向に対して同位相で伝搬するように制御されてもよい。これによると、各散乱スイッチによって散乱される電磁波を合成して指向性ビームを放射することができる。隣接する散乱ポイント間の位相差に依存して、指向性ビームの放射方向が決まる。
散乱スイッチは、各散乱ポイントで散乱される電磁波が空間上のある点において同位相で干渉するように制御されてもよい。これによると、各散乱体から散乱される電磁波を合成することで、空間上の一点に電磁波を集光させることができる。
次式を満足する位置またはその近傍に位置する散乱スイッチがオンにされて前記誘電体層内の電磁波を表面上方に散乱させるように散乱スイッチが制御されてもよい:
但し、上記の式は、任意の整数mに対して、オンにされるn番目の散乱スイッチの配置位置が満足すべき式を表す。βg、βaは電磁波通信媒体内および空中における電磁波の波数、rnは電磁波通信媒体の表面上の集光点からn番目の散乱スイッチまでの距離、Rnはn番目の散乱スイッチから空中の集光点までの距離を表す。これによると、電磁波通信媒体上の一点と空間上の一点との間で結像関係を実現することができる。
本発明の別の実施形態は、電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層を有する平面状の電磁波通信媒体の表面に近接して配置される電磁波散乱装置である。この装置は、電磁波通信媒体と対向する面にあり、予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で電磁波通信媒体中を伝搬する電磁波を表面上方に散乱させる複数の散乱スイッチを有するスイッチ層と、所定の制御信号を付与することで散乱スイッチの状態を変更可能に構成された制御手段と、を備える。
この態様によると、二次元の電磁波通信媒体内を伝播する電磁波を表面上方に散乱させることで、二次元通信の範囲を三次元に拡張することができる。また、電磁波通信媒体上に電磁波を散乱する多数の散乱スイッチを配置した構造を採ることで、散乱ポイントの分布を自在に制御することができる。さらに、電磁波通信媒体の全領域に渡って散乱スイッチを設ける必要がなくなるため、電磁波通信媒体の製造が容易になりコストを抑制できる。
制御手段は、指向性ビームまたは結像ビームを放射するように散乱スイッチを制御してもよい。
本発明のさらに別の実施形態は、上述した電磁波通信媒体のいずれか一つと、予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で散乱される電磁波が空間上の任意の一点で結像するように散乱スイッチを制御して対象物を検出するように構成された制御手段と、を備える。
この態様によると、従来のフェーズドアレイアンテナよりも簡単な構造で、大口径かつ極薄型のアンテナを構成することができる。
本発明によれば、電磁波通信媒体上に電磁波を散乱する多数の散乱スイッチを配置した構造としたので、散乱ポイントの分布を自在に制御することができる。
以下の説明においては、説明と理解とを容易にするため、電磁波の伝達に用いる電磁波周波数帯において導電体であるものを「導電体」と呼び、当該周波数帯において誘電体であるものを「誘電体」と呼ぶ。したがって、例えば直流電流に対して導体であるか半導体であるか絶縁体であるか等によって、直接的には何ら制約されるものではない。また、導電体と誘電体とは、電磁波との関係においてその特性により定義されるものであって、固体であるか液体であるか気体であるか等の態様や構成材料を制限するものではない。
まず、図1を参照して従来の電磁波通信媒体について説明する。その後、本発明の一実施形態に係る散乱スイッチを備えた電磁波通信媒体について説明する。
図1は、従来の電磁波通信媒体10の全体図および鉛直方向の断面図を示す。図1に示すように、電磁波通信媒体10は、メッシュ状の第1導電体層12と、誘電体層14と、第2導電体層16とを順に備える。第1導電体層12の上面や第2導電体層16の下面にさらに保護層を有していてもよい。各層は、いずれも二次元的に一定の広がりを有する。
誘電体層14は、ある程度の強度と柔軟性と軽量性と美観とを兼ね備えた部材を用いることが好ましい。誘電体層14に用いる不透明な誘電材料として、例えば柔軟性のある樹脂性部材等を用いてもよい。また、誘電体層14として、平面状の布、紙、ゴム、発泡体、ゲル材等を用いることができる。
電磁波通信媒体10は、全体として、二次元的に一定の広がりを有する平面状に構成される。媒体表面または側面に形成される入力部(図示せず)から電磁波(例えば、マイクロ波)が電磁波通信媒体10に入力される。電磁波は主に誘電体層14中を伝搬し、メッシュ状の第1導電体層12の表面に近接場を形成する。この近接場を用いて信号の授受を行うことができる。
具体的には、電磁波通信媒体10の誘電体層14内を電磁波が伝搬している場合に、メッシュ状の第1導電体層12側に所定の構造を持つ電磁波インタフェース装置(図示せず)を近接させると、電磁波通信媒体10との間で容量結合する。そして、誘電体層14内を流れる電磁波の一部がメッシュ状の第1導電体層12と電磁波インタフェース装置との間に吸い出される。電磁波が吸い出される効率は、電磁波インタフェース装置の大きさ、メッシュ状の第1導電体層12と電磁波インタフェース装置との間の距離、保護層の誘電率に依存する。
なお、本明細書において平面状とは、帯状、シート状、布状、紙状、箔状、板状、膜状、フィルム状等であって、面としての広がりを持ち、厚さが薄いものを意味する。以下では、電磁波通信媒体のことを単に「通信シート」と称する場合もある。
続いて、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は例示であって、これに限定されるものではなく、かつ本発明の範囲を制限するものではない。
実施の形態1.
図2は、本発明の一実施形態に係る通信シート30の概略断面図である。通信シート30は、導体メッシュ層31と、電磁波伝達媒体としての誘電体層36と、導体グラウンド層38とを備える。導体メッシュ層31は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン32と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン34と、両ラインや後述する散乱スイッチ回路を実装、支持するための誘電体基板層33を含む。導体メッシュ層31の上面や導体グラウンド層38の下面にさらに保護層を有していてもよい。各層は、いずれも二次元的に一定の広がりを有する。以下の説明では、図2の断面図において通信シートの長手方向をx軸、紙面に垂直な方向をy軸、通信シートに対して垂直上方をz軸(表面でz=0)として説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る通信シート30の概略断面図である。通信シート30は、導体メッシュ層31と、電磁波伝達媒体としての誘電体層36と、導体グラウンド層38とを備える。導体メッシュ層31は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン32と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン34と、両ラインや後述する散乱スイッチ回路を実装、支持するための誘電体基板層33を含む。導体メッシュ層31の上面や導体グラウンド層38の下面にさらに保護層を有していてもよい。各層は、いずれも二次元的に一定の広がりを有する。以下の説明では、図2の断面図において通信シートの長手方向をx軸、紙面に垂直な方向をy軸、通信シートに対して垂直上方をz軸(表面でz=0)として説明する。
誘電体層36として、平面状の布、紙、ゴム、発泡体、ゲル材等を用いることができる。導体メッシュ層31は、誘電体層36内部を伝搬する電磁波を通信シート30の表面から散乱させるための散乱スイッチ層として機能する。メッシュの各交点には後述する散乱スイッチが配置され、電磁波を散乱させるポイントを調整できるように構成される。なお、導体メッシュの周期は、伝送される電磁波の波長よりも十分短くなるようにする。
図3は、図2の二次元通信シート30の概略全体図である。導体メッシュ層31のxライン32とyライン34とは略垂直に交差して通信シート30の表面上に多数の格子点を形成する。格子点間の間隔は、後述する散乱体の分布パターンの自由度の観点から、短いほど好ましい。xライン32とyライン34とは誘電体基板層33によって互いに直流絶縁されている。xライン32はそれぞれx方向制御部40に接続され、yライン34はそれぞれy方向制御部42に接続される。x方向制御部40およびy方向制御部42の動作については後述する。
図4は、図3中のA部の拡大図であり、誘電体基板層33内で各格子点の近傍に設けられる散乱スイッチ50を説明する図である。
散乱スイッチ50は、二つのコンデンサC1、C2と、スイッチ素子Trとから構成される。x方向制御部40およびy方向制御部42は、xライン32およびyライン34に直流制御信号を入力することで、所望の格子点における高周波容量性結合量を初期状態より大きくする。こうすると、直流絶縁を維持したまま、高周波の電磁波に対しては導通した状態になる。したがって、通信シート30上の各格子点のうち、容量性結合量が局所的に高くなっている箇所を、誘電体層内の電磁波を散乱させる散乱体として機能させることができる。以下の説明では、散乱スイッチ50をオンにして電磁波を散乱させる状態となったものを、特に「散乱体」と呼ぶことにする。
散乱スイッチ50は、二つのコンデンサC1、C2と、スイッチ素子Trとから構成される。x方向制御部40およびy方向制御部42は、xライン32およびyライン34に直流制御信号を入力することで、所望の格子点における高周波容量性結合量を初期状態より大きくする。こうすると、直流絶縁を維持したまま、高周波の電磁波に対しては導通した状態になる。したがって、通信シート30上の各格子点のうち、容量性結合量が局所的に高くなっている箇所を、誘電体層内の電磁波を散乱させる散乱体として機能させることができる。以下の説明では、散乱スイッチ50をオンにして電磁波を散乱させる状態となったものを、特に「散乱体」と呼ぶことにする。
図4の構成によって、通信シート30の誘電体層36内を伝搬する電磁波を、散乱体で三次元空間に放出することができる。この散乱体による電磁波の放出プロセスは、可逆的であることに注意する。つまり、本実施形態の通信シート30は、通信シート表面の散乱体に向けて三次元空間から伝わる電磁波を受け取り、通信シート内部に伝搬させることも可能である。
通信シート30では、各散乱体から所望の指向性方向または集光点位置に到達するまでの空中経路における位相差が2πの整数倍となるように散乱体を分布させることによって、シート上方に放射される電磁波の波面を制御することができる。図5および図6は、そのような散乱体の分布パターンの例を示す。
図5は、通信シート30の表面上に散乱体を周期的に配置した場合を示す。図中、yライン34の黒塗りした箇所は、散乱スイッチ50がオンにされ散乱体として機能している部分を表している。図5では、散乱体は電磁波の進行方向に対してほぼ直角に、すなわちy方向と平行に配置されている。このように、通信シート表面に散乱体を周期的に配置すると、各散乱体によって近接場が一定の位相差で空間中に散乱されるため、波面合成の結果指向性ビームが放射される。
電磁波の伝送方向がx、y方向で一様であると仮定して、xz面内の二次元電磁場を考える。このときの電磁場の規準モードは、通信シートに波動がトラップされながら伝送される導波モード(x方向波数βg)と、空間全域に波動が広がる放射モード(x方向波数βr)の二種類に分けられる。導波モードで伝送されるマイクロ波は通信シート中でほぼ平面波とみなされ、通信シート表面にはz方向に指数減衰する非放射の近接場が形成される。通信シートの表面に波数βpで(すなわち、周期2π/βp)で散乱体を配置したときの指向性ビームの放射方向θnは、次式で表される(例えば、上述の非特許文献2)。
但し、βaは空中における平面波の波数である。
式(1)から分かるように、θnはβpに依存しているので、散乱体の配置周期を変えることで放射方向を調節することができる。つまり、導体メッシュ層31の格子点のうち、散乱体が所望の周期で現れるように格子点を選択し、対応する散乱スイッチ50をオンにすることで、指向性ビームの方向を調節することが可能になる。
図6は、散乱体の分布パターンの別の例を説明する図である。この例では、各散乱体から散乱される電磁波が空間上のある点において同位相で干渉するように散乱体を分布させることで、空間上の一点に電磁波を集光させる。
誘電体層36を伝搬する電磁波の形状が整っていると仮定し、図5と同様にxz面内の二次元問題を考える。各散乱体で散乱させる電磁波が集光点(x0、z0)において同相で加算される必要があるため、散乱体の分布は非周期的になる。図中左端の散乱体による散乱波とn番目の散乱波が2πnの位相差で加算される条件を書き下すと、n番目の散乱体の位置pnを決定する次の方程式が導かれる。
図7(a)、(b)は、通信シート上の一点と空間上の一点との間で結像関係を実現するための散乱体の分布を説明する図である。図7(a)に示す各円周上に適切な間隔で散乱体が分布するように導体メッシュ層31の散乱スイッチを制御することで、通信シート側の集光点位置、すなわち図7(a)の円の内側の極限点と、空間上の一点との間で結像関係を実現することができる。
通信シート上の集光点Pと空間上の集光点Qの二点間で結像が生じるための散乱体の分布パターンの条件は、次式の通りである。
n番目の散乱体は、任意の整数mに対して、式(3)が成り立つような通信シート上の位置に配置すればよい。但し、βg、βaは通信シート内および空中における電磁波の波数、rnは通信シート上の集光点P(波動源)からn番目の散乱体までの距離、Rnはn番目の散乱体から空中の集光点Qまでの距離を表す(図7(b)を参照)。なお、ゼロ番目の散乱体の位置は基準位置であり、通信シート上の任意の位置を選択してよい。
これによって、例えば通信シートの上方に保持された無線通信デバイスに向けて電磁波ビームを放射することで、通信シートと無線通信デバイス間で通信をすることが可能になる。また、電磁波ビームの広がりを絞ることで、空間内に複数のビームを混在させることも可能になり、帯域の活用にもつながる。
さらに、散乱スイッチのオンオフパターンを適宜変化させることで、集光点を空間内の任意の位置に移動させることも可能である。また、必要に応じて各散乱体の誘電率や電磁波の周波数を制御してもよい。したがって、後述するように、本発明の通信シートをフェーズドアレイアンテナとして機能させることも可能である。
図8は、各格子点に配置された散乱スイッチを制御して、所望の位置の格子点を散乱体として機能せしめるための制御プロセスを説明するフローチャートである。
まず、x方向制御部40は、xラインのうち一本をLowに設定する(S10)。続いてy方向制御部42は、所望の散乱体分布パターンにしたがって、オンにすべき散乱スイッチを含むyラインを選択してHi状態とし、それ以外のyラインをLow状態に設定する(S12)。これによって、オンにすべき散乱スイッチのコンデンサC1に電荷が蓄積される。電荷の蓄積されたコンデンサC1がスイッチTrを制御し(S14)、コンデンサC2がxラインとyラインの間に挿入され容量性結合量が増大する(S16)。その後、x方向制御部40はxラインをZ(ハイインピーダンス)に設定する(S18)。以上の一連のプロセスを全てのxラインについて繰り返す(S20)。なお、xライン、yラインに与える制御信号のHi、Low状態として対応させる電圧の符号や値は、用いるスイッチTrの性質に応じて適宜定めればよい。
以上のプロセスの結果、C2が挿入された散乱スイッチではxラインとyラインとが容量性結合され、通信シート内部を伝搬する電磁波を散乱させる散乱体として機能するようになる。
まず、x方向制御部40は、xラインのうち一本をLowに設定する(S10)。続いてy方向制御部42は、所望の散乱体分布パターンにしたがって、オンにすべき散乱スイッチを含むyラインを選択してHi状態とし、それ以外のyラインをLow状態に設定する(S12)。これによって、オンにすべき散乱スイッチのコンデンサC1に電荷が蓄積される。電荷の蓄積されたコンデンサC1がスイッチTrを制御し(S14)、コンデンサC2がxラインとyラインの間に挿入され容量性結合量が増大する(S16)。その後、x方向制御部40はxラインをZ(ハイインピーダンス)に設定する(S18)。以上の一連のプロセスを全てのxラインについて繰り返す(S20)。なお、xライン、yラインに与える制御信号のHi、Low状態として対応させる電圧の符号や値は、用いるスイッチTrの性質に応じて適宜定めればよい。
以上のプロセスの結果、C2が挿入された散乱スイッチではxラインとyラインとが容量性結合され、通信シート内部を伝搬する電磁波を散乱させる散乱体として機能するようになる。
実施の形態2.
図9は、本発明の別の実施形態に係る通信シート80の概略断面図である。この実施形態では、導体メッシュ層の代わりに、電磁波を散乱させるスイッチ層として局所的に電圧を印加することで誘電率が変化する可変誘電率層を利用する。
通信シート80は、散乱スイッチ層81と、電磁波伝達媒体としての誘電体層88と、誘電体層88よりも誘電率の低い保護層87およびクラッド層90とを備える。散乱スイッチ層81は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン82と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン84と、両者に挟まれ、初期状態で誘電体層88よりも誘電率の低い可変誘電率層86とを含む。xライン82、yライン84および可変誘電率層86は、保護層87に実装され支持される。散乱スイッチ層81の上面やクラッド層90の下面にさらに保護層を有していてもよい。各層は、いずれも二次元的に一定の広がりを有する。
図9は、本発明の別の実施形態に係る通信シート80の概略断面図である。この実施形態では、導体メッシュ層の代わりに、電磁波を散乱させるスイッチ層として局所的に電圧を印加することで誘電率が変化する可変誘電率層を利用する。
通信シート80は、散乱スイッチ層81と、電磁波伝達媒体としての誘電体層88と、誘電体層88よりも誘電率の低い保護層87およびクラッド層90とを備える。散乱スイッチ層81は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン82と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン84と、両者に挟まれ、初期状態で誘電体層88よりも誘電率の低い可変誘電率層86とを含む。xライン82、yライン84および可変誘電率層86は、保護層87に実装され支持される。散乱スイッチ層81の上面やクラッド層90の下面にさらに保護層を有していてもよい。各層は、いずれも二次元的に一定の広がりを有する。
可変誘電率層86は、xライン82とyライン84とが交差する格子点において局所的に電圧を印加することで、その部分の誘電率が初期状態よりも高くなる誘電率可変の誘電体で構成されている。したがって、図10に示すように、通信シート80の表面上に、局所的に誘電率の高い領域と低い領域とを混在させることができる。なお、図中xライン82およびyライン84のうち黒塗りの部分は電圧を印加していることを表し、可変誘電率層86のうち斜線部分92は誘電率が変化している領域を表している。このように通信シートの近接場中で誘電率の変化が存在する部分は、誘電体層88内を伝搬する電磁波を通信シート上面に散乱させる。以下の説明では、誘電率が変化し、誘電体層88内を伝搬する電磁波を散乱させる状態となった局所領域を「散乱体」と呼ぶことにする。
なお、散乱体の形状、すなわち誘電率を変化させる領域の形状は特に制限されない。一般に、誘電体層を伝搬する電磁波の波長は散乱体の幅よりも大きいため、散乱体の形状の影響は小さいためである。
(実施例)
図11および図12は、実施の形態1に係る通信シートによる電磁波散乱のシミュレーション結果を示す。本シミュレーションにおけるモデルを、図11(a)を参照して説明する。通信シート100は、下から導体グラウンド層、第1誘電体層、yライン層、第2誘電体層、xライン層の5層から構成される。電磁波は第1誘電体層内を伝播する。xライン102およびyライン104ともに、1mm幅の導線を5mm間隔で配列した。xラインとyラインの格子点のうち、容量性結合を与える箇所、つまり散乱スイッチをオンにする箇所には、誘電率の大きな誘電体106を挿入することで表現している。シミュレーションの対象とする電磁波の周波数は、5.6GHzである。なお、図では簡略化のためにy方向の幅を短く表しているが、実際のシミュレーションでは、x、y方向のいずれにも同様の構造が繰り返されるものとして行った。
図11および図12は、実施の形態1に係る通信シートによる電磁波散乱のシミュレーション結果を示す。本シミュレーションにおけるモデルを、図11(a)を参照して説明する。通信シート100は、下から導体グラウンド層、第1誘電体層、yライン層、第2誘電体層、xライン層の5層から構成される。電磁波は第1誘電体層内を伝播する。xライン102およびyライン104ともに、1mm幅の導線を5mm間隔で配列した。xラインとyラインの格子点のうち、容量性結合を与える箇所、つまり散乱スイッチをオンにする箇所には、誘電率の大きな誘電体106を挿入することで表現している。シミュレーションの対象とする電磁波の周波数は、5.6GHzである。なお、図では簡略化のためにy方向の幅を短く表しているが、実際のシミュレーションでは、x、y方向のいずれにも同様の構造が繰り返されるものとして行った。
図11(a)に示す散乱体の分布パターン1では、図中にBで示すように、yラインの5列ごとに1列の散乱体を配置した(つまり、散乱スイッチをオンにした)。図11(b)は分布パターン1のシミュレーション結果である。ここでは、xz面の断面図において電場のx方向成分をプロットしている。図示するように、通信シートの表面からx軸の負方向に向かう平面波が形成されていることが分かる。
図12(a)は、散乱体の分布パターン2を示す。図中にCで示すように、yラインの3列に連続して散乱体を配置し、さらに隣接する3列の散乱体とは5列の間隔をあけるようにしてある。図12(b)は、分布パターン2に対するシミュレーション結果である。図示するように、通信シートの表面からx軸の正方向に向かう平面波が形成されていることが分かる。
以上の通り、通信シートの表面上でx、yライン間の容量性結合量を急激に変化させることで、通信シートの誘電体層内を伝播する電磁波をシートの表面から散乱させられることが確認された。また、散乱体の分布パターンを変えることで、シート表面から放射される平面波の方向を制御できることが確認された。この結果は、図2乃至図4を参照して説明した散乱スイッチのアレイが原理的に実現可能であることを示している。
なお、本明細書では省略するが、実施の形態2で示した通信シートについても同様のシミュレーション結果が得られることはいうまでもない。
なお、本明細書では省略するが、実施の形態2で示した通信シートについても同様のシミュレーション結果が得られることはいうまでもない。
実施の形態3.
上述の各実施の形態では、通信シートの少なくとも一部の領域または全領域に、電磁波を散乱させる散乱体を自在に分布できるスイッチ層を配置することを述べた。しかしながら、このような構成では、シートの比較的広い領域に渡って散乱スイッチを設けなくてはならないので、コストが上昇し、またシート面積が大きくなるほど製造が困難になる。そこで、電磁波を伝播させる通信シートと電磁波の散乱装置とを別個の構成としてもよい。
上述の各実施の形態では、通信シートの少なくとも一部の領域または全領域に、電磁波を散乱させる散乱体を自在に分布できるスイッチ層を配置することを述べた。しかしながら、このような構成では、シートの比較的広い領域に渡って散乱スイッチを設けなくてはならないので、コストが上昇し、またシート面積が大きくなるほど製造が困難になる。そこで、電磁波を伝播させる通信シートと電磁波の散乱装置とを別個の構成としてもよい。
図13は、通信シート140と電磁波散乱装置131とを別個とする構成の一例を示す。
通信シート140は、図1で説明した従来の通信シート10と同様の構造であり、x−yライン間が絶縁されていないメッシュ状の第1導電体層142と、誘電体層136と、第2導電体層138とを備える。
一方、電磁波散乱装置131は、導体メッシュ層と誘電体層135とを備える。導体メッシュ層は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン132と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン134と、両ラインや上述の散乱スイッチ回路を実装、支持するための誘電体基板層133を含む。
通信シート140は、図1で説明した従来の通信シート10と同様の構造であり、x−yライン間が絶縁されていないメッシュ状の第1導電体層142と、誘電体層136と、第2導電体層138とを備える。
一方、電磁波散乱装置131は、導体メッシュ層と誘電体層135とを備える。導体メッシュ層は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン132と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン134と、両ラインや上述の散乱スイッチ回路を実装、支持するための誘電体基板層133を含む。
電磁波散乱装置131は、xライン132とyライン134の各格子点の近傍に設けられた散乱スイッチを所望の散乱体分布パターンにしたがってオンオフするための制御回路(図示せず)をさらに備える。電磁波散乱装置131の導体メッシュ層は、上述の実施の形態1と同様の動作原理により、電磁波散乱装置131の上面から電磁波を散乱させるための散乱スイッチ層として機能する。なお、電磁波散乱装置131は、通信シート140の表面に対して着脱自在に構成される。
この構成において、通信シート140の誘電体層136を伝搬する電磁波は、電磁波散乱装置131の誘電体層135に吸い出される。そして、誘電体基板層133に配置された散乱スイッチを実施の形態1と同様に制御することで、電磁波散乱装置131上の所望のポイントから電磁波を散乱させることができる。
図14は、通信シート200と電磁波散乱装置181とを別個とする構成の別の例を示す。
通信シート200は、電磁波伝達媒体としての誘電体層188と、誘電体層188よりも誘電率の低い上部クラッド層187および下部クラッド層190とを備える。但し、上部クラッド層187は、近接場を減衰しきらない程度の厚さになるように調節する。
一方、電磁波散乱装置181は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン182と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン184と、両者に挟まれ、初期状態で誘電体層188よりも誘電率の低い可変誘電率層186とを含む。可変誘電率層186は、xライン182とyライン184とが交差する格子点において局所的に電圧を印加することで、その部分の誘電率が初期状態よりも高くなる誘電率可変の誘電体で構成されている。xライン182、yライン184は、可変誘電率層186に実装され支持される。
通信シート200は、電磁波伝達媒体としての誘電体層188と、誘電体層188よりも誘電率の低い上部クラッド層187および下部クラッド層190とを備える。但し、上部クラッド層187は、近接場を減衰しきらない程度の厚さになるように調節する。
一方、電磁波散乱装置181は、x方向に互いに略平行に配置された導線であるxライン182と、y方向に互いに略平行に配置された導線であるyライン184と、両者に挟まれ、初期状態で誘電体層188よりも誘電率の低い可変誘電率層186とを含む。可変誘電率層186は、xライン182とyライン184とが交差する格子点において局所的に電圧を印加することで、その部分の誘電率が初期状態よりも高くなる誘電率可変の誘電体で構成されている。xライン182、yライン184は、可変誘電率層186に実装され支持される。
電磁波散乱装置181は、所望の散乱体分布パターンにしたがって各格子点に局所的に電圧を印加するための制御回路(図示せず)をさらに備える。電磁波散乱装置181は、上述の実施の形態2と同様の動作原理により、電磁波散乱装置181の上面から電磁波を散乱させる。なお、電磁波散乱装置181は、通信シート200の表面に対して着脱自在に構成される。
この構成において、制御回路が通信シート200の表面上に局所的に誘電率の高い領域と低い領域とを混在させると、通信シートの近接場中で誘電率が変化して、誘電体層188内を伝搬する電磁波を電磁波散乱装置181上の所望のポイントから散乱させることができる。
以上のように、散乱スイッチを多数備えた電磁波散乱装置を通信シート上に載置することで、上述の実施の形態1および2と同様の散乱効果が期待できる。つまり、図13または図14に示した構成によると、電磁波を内部に閉じ込める通信シート上に電磁波散乱装置を置いた部分のみが電磁波を散乱させるようになるため、スイッチ層を通信シートの全域に構成する必要性がなくなる。また、通信シートと電磁波散乱装置の間には電気的な接点等が不要なので、電磁波散乱装置を通信シートの所望の位置に置いて電磁波を送受信することができる。したがって、シートの製造が容易になるとともに、コストを抑制することができる。
以上説明したように、実施の形態1乃至3によれば、二次元の通信シート内を伝播する電磁波を通信シートの上面に散乱させることで、二次元通信の範囲を三次元に拡張することができる。つまり、二次元通信の電波局在性と通常の無線通信の電波偏在性という両者のメリットを併せ持つ電波空間を構築することができる。
また、通信シート上に多数散乱のスイッチを密に配置しスイッチのオン/オフにより散乱体の配置を制御する可変構造を採用することで、指向性ビームを所望の方向に放射することができる。これによって、通信シート上空の特定のポイントに位置する他の通信媒体との無線通信や、複数の二次元シート間(例えば、机、壁、天井に配置された二次元通信シート間)の相互接続が実現される。つまり、いたずらに通信範囲を広がることなく、また通信シートと密着させる必要なく外部機器と通信シート間の通信ができるようになる。この通信手法は、ミリ波などの直進性の強い高周波の伝送形態として特に有効である。
なお、通信シートにおいて導体層を配置するか否かは、主に伝播する電磁波の周波数帯に応じて決まる。図2に示したような、誘電体層を導体メッシュ層と導体グラウンド層とで挟んだ構成の通信シートは、主にマイクロ波を伝播させるのに適している。これに対し、図9に示したような、誘電体層をより誘電率の低い低誘電率層で挟んだ構成の通信シートは、ミリ波やテラヘルツ波を伝播させるのに適している。
また、スイッチ層と電磁波伝播層の組み合わせとして、上記では、「導体メッシュ層を用いたスイッチ層、誘電体層、導体グラウンド層」の組み合わせと、「可変誘電率層を用いたスイッチ層、誘電体層、クラッド層」の組み合わせを示した。この他に、「可変誘電率層を用いたスイッチ層、誘電体層、導体グラウンド層」の組み合わせも可能である。
実施の形態4.
上記では、多数の散乱スイッチが配置されたスイッチ層を有する通信シートを用いることで、二次元通信を三次元的に拡張することを説明した。これに加えて、本発明に係る通信シートは、フェーズドアレイアンテナとしても機能させることができる。
上記では、多数の散乱スイッチが配置されたスイッチ層を有する通信シートを用いることで、二次元通信を三次元的に拡張することを説明した。これに加えて、本発明に係る通信シートは、フェーズドアレイアンテナとしても機能させることができる。
上述したように、通信シート上に分布される散乱体は、その位置に応じた位相で電磁波の一部を放射する。したがって、制御回路を使用して散乱体の分布パターンを適応的に変化させることで、放射波面を自在に形成し、指向性や集光性を制御することが可能になる。つまり、通信シート上の散乱体(または散乱スイッチ)をそれぞれ小さなアンテナとみなし、これら多数のアンテナから放射される電磁波の位相を電気回路で制御することで電磁波を合成し、放射方向を走査することでレーダーとして用いることができる。また、アンテナ全体の開口径は、通信シート表面上の散乱体の個数を増やすことで拡大することができる。上述と同様、この散乱体による放射過程は可逆的であり、送受信において双方向的に用いることができる。
従来のフェーズドアレイアンテナでは、アンテナの裏側に多数の位相変換器を備え、電磁波送受信機からの電波を分配しながらそれぞれのアンテナにあわせて位相をずらしていた。このため、アンテナの小型化、薄型化が難しく、また大口径のアンテナを作成しにくいという問題があった。これに対し、本発明の二次元通信シートを用いれば、より簡単な構造で大口径かつ極薄型のフェーズドアレイアンテナを構成することができる。この薄さのため、無線通信やレーダー計測といったマイクロ波帯の応用のみならず、アンテナを生活空間中の壁面や天井などに組み込み、テラヘルツ帯を利用して数m以上遠方に存在する人物や化学物質を検出、識別したり、または集光点を順次切り替えてイメージングを実現するなどの応用が期待される。
上述の実施形態では、xラインとyラインとが略垂直に交差しているが、導線の配置はこれに限られない。例えば、xラインとyラインとが菱形のメッシュを形成するような角度で配置されてもよい。また、xラインとyラインによる格子点の間隔は等間隔であることが好ましいが、不等間隔であってもよい。通信シートの表面上に多数の格子点が比較的粗密少なく分布しており、制御信号に応じて格子点近傍のスイッチをオン/オフして所望の散乱体パターンを形成できるならば、格子点またはスイッチの分布の仕方に制限はない。
実施の形態では、散乱スイッチをオンにした状態を「散乱体」と呼称したが、伝搬層の電磁波が反射する部分とみなしてこれを「反射体」と称してもよい。
また、実施の形態では、高周波に対する容量性結合量を変化させる方式と、誘電率を変化させる方式の通信シートについて説明したが、電磁波を通信シートの表面で散乱させることが可能であれば、他の手法を使用してもよい。例えば、誘電体層の上に導電率またはインピーダンスや透磁率が可変な層を設けてもよい。また、各散乱スイッチは、機械的、電気的または電子的なスイッチング動作を必ずしも含んでいなくてもよい。
実施の形態では、散乱体を通信シート上に規則的に配置する例を述べた。しかしながら、実際の使用時には、誘電体層内を伝搬する電磁波の波形は不規則であることが多い。そこで、電磁波の波形に応じて遅延を与えられるように、散乱体とするスイッチの配置を適応的に変更するように構成してもよい。
本発明に係る電磁波通信媒体、電磁波散乱装置およびアンテナは、上述の実施形態等での説明に限定されることはなく、自明な範囲で適宜その構成を変更し、また形状や素材や部材等を変更して用いることが可能であることは当業者に容易に理解されるところである。また、上述の実施形態の説明等に用いた各部材の間に、適宜他の任意の部材を含ませ、かつ介在させることを何ら妨げるものではない。
30 通信シート、 31 導体メッシュ層(スイッチ層)、 33 誘電体基板層、 36 誘電体層、 38 導体グラウンド層、 50 散乱スイッチ、 80 通信シート、 81 散乱スイッチ層、 86 可変誘電率層、 87 保護層、 88 誘電体層、 90 クラッド層、 100 通信シート、 106 誘電体、 131 電磁波散乱装置、 133 誘電体基板層、 135,136 誘電体層、 138 第2導電体層、 140 通信シート、 142 第1導電体層、 181 電磁波散乱装置、 186 可変誘電率層、 187 上部クラッド層、 188 誘電体層、 190 下部クラッド層、 200 通信シート。
Claims (9)
- 電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層を有する平面状の電磁波伝搬層と、
前記電磁波伝搬層の表面の少なくとも一部の領域に重ねて配置されるスイッチ層であって、予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で前記電磁波伝搬層中を伝搬する電磁波を表面上方に散乱させる複数の散乱スイッチを有するスイッチ層と、を備え、
所定の制御信号を付与することで前記散乱スイッチの状態を変更可能に構成されたことを特徴とする電磁波通信媒体。 - 前記スイッチ層は、
互いに略平行に配置された複数の第1導線と、
第1導線と交差し第1導線に対して絶縁された複数の第2導線と、を備え、
前記散乱スイッチは、第1導線と第2導線の交差部付近で両者を接続し、前記制御信号に応じて両者を容量性結合させて前記電磁波伝搬層内の電磁波を散乱させるように構成されたスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波通信媒体。 - 前記スイッチ層は、電圧を印加することで誘電率が変化する可変誘電率層を備え、
前記散乱スイッチは、前記複数の散乱ポイント近傍で局所的に高い誘電率となるように前記可変誘電率層に電圧を印加するように構成されたスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波通信媒体。 - 前記散乱スイッチは、各散乱ポイントで散乱される電磁波が空間中のある方向に対して同位相で伝搬するように制御されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波通信媒体。
- 前記散乱スイッチは、各散乱ポイントで散乱される電磁波が空間上のある点において同位相で干渉するように制御されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波通信媒体。
- 次式を満足する位置またはその近傍に位置する散乱スイッチがオンにされて前記誘電体層内の電磁波を表面上方に散乱させるように前記散乱スイッチが制御されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波通信媒体:
- 電磁波を伝搬する少なくとも一層の誘電体層を有する平面状の電磁波通信媒体の表面に近接して配置される電磁波散乱装置であって、
前記電磁波通信媒体と対向する面にあり、予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で前記電磁波通信媒体中を伝搬する電磁波を表面上方に散乱させる複数の散乱スイッチを有するスイッチ層と、
所定の制御信号を付与することで前記散乱スイッチの状態を変更可能に構成された制御手段と、
を備えることを特徴とする電磁波散乱装置。 - 前記制御手段は、指向性ビームまたは結像ビームを放射するように前記散乱スイッチを制御することを特徴とする請求項7に記載の電磁波散乱装置。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波通信媒体と、
予め設定されている複数の散乱ポイント近傍で散乱される電磁波が空間上の任意の一点で結像するように前記散乱スイッチを制御して対象物を検出するように構成された制御手段と、
を備えることを特徴とするアンテナ。
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