JP2011071048A - 消弧用絶縁成型物、および、それを用いた回路遮断器 - Google Patents

消弧用絶縁成型物、および、それを用いた回路遮断器 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、過剰電流遮断時にも、アークを速やかに冷却すると共に、アーク全体を迅速に消弧装置に導入することができる消弧用絶縁成型物、および、高い遮断性能を有する回路遮断器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る第1の消弧用絶縁成型物は、回路遮断器の接触子対周辺に配置する消弧用絶縁成型物であって、ピリミジン、ピリミジン誘導体、プリン、プリン誘導体、テトラゾール、およびテトラゾール誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、消弧用絶縁成型物、およびそれを用いた配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器に関する技術である。
配線用遮断器および漏電遮断器は、過負荷や短絡などの要因で二次側の回路(負荷、電路)に異常な電流が流れたときに電路を開放し、一次側からの電源供給を遮断することにより、負荷回路や電線を損傷から回避させるために用いる装置である。
このような配線用遮断器および漏電遮断器において、過剰電流または定格電流の通電時に、可動接触子の接点と固定接触子の接点を開離させると、両者の間にアークが発生する。遮断時にアークが発生する付近の可動接触子と固定接触子とを、図1(a)および図1(b)に模式的に示す。図1(b)は、図1(a)中のIb−Ibに沿った断面であり、図1(a)に示す消弧装置の側面図である。アークは回路遮断器の構成部品への熱的および電磁力的な負担となるので、速やかに消弧する必要がある。アークの消弧を速やかに進めるため、図1(a)および図1(b)に示すように、可動接触子1の可動接点2と固定接触子3の固定接点4との周辺部に、アークの消弧に寄与する消弧用絶縁成型物5を配置する。消弧用絶縁成型物5は、図1(a)に示すように、例えば、可動接触子1と固定接触子3とを両脇から挟むように配置する。消弧用絶縁成型物は、アークに暴露されると、その成型物を構成する材料自体が分解してガスを発生し、発生したガスによるアークの冷却や発生したガスの吹きつけによるアークの延伸などにより、アークの消弧に寄与する。
さらに、消弧用絶縁成型物は、図2に示すように、可動接点と固定接点との間に発生したアークを引き延ばし、消弧板を備える消弧装置に押し込む役割も果たす。図2に示す消弧装置は、磁性体の金属からなる複数の消弧板6(グリッド)が互いに空隙を介して積層配列されたもので、各消弧板6には切欠部7が備えられている。消弧用絶縁成型物は、可動接点2と固定接点4とを挟むように配置され(図1参照)、この接点間に発生したアーク8を引き込んで分断し、電極降下電圧の発生およびアークの冷却などにより、限流すなわち過電流をより低く抑制させる働きをする。
消弧用絶縁成型物の材料は、たとえば、特許文献1には、絶縁体の熱分解によって水素ガスを発生する材料としてポリメチルペンテンおよびメラミン樹脂などの絶縁材料等が開示されている。また、特許文献2には、脂肪族ケトン樹脂を主成分とする樹脂、特許文献3では、ナイロン、テフロン(登録商標)などの材料を消弧用の絶縁成型物として用いることが開示されている。
特開昭64−77811号公報 特開2001−176372号公報 特開2007−149486号公報
低圧配線用設備の大容量化、省スペース化により、配線用遮断器および漏電遮断器などの小形化が必要となっている。これらの回路遮断器の小型化によって、遮断時のアークによる構成部品への熱的、電磁力的な負担が増加し、遮断時の過電流をより低く抑制することが求められている。結果として、消弧用絶縁成型物によるアークの冷却、および該成型物の消弧性能のさらなる向上が要求されるようになっている。
上記特許文献1〜3に示されるような従来の消弧用絶縁成型物では、小型化に対応した十分な限流性能を得ることができなかった。本発明は、この問題点を解決するために、過電流遮断時にも、アークを速やかに冷却すると共に、アーク全体を迅速に消弧装置に導入することができ、高い遮断性能を有する回路遮断器を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の消弧用絶縁成型物は、回路遮断器の接触子対周辺に配置する消弧用絶縁成型物であって、ピリミジン、ピリミジン誘導体、プリン、プリン誘導体、テトラゾール、およびテトラゾール誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことを特徴とする。
本発明に係る第2の消弧用絶縁成型物は、上記消弧用絶縁成型物に含まれるピリミジン誘導体が、ウラシル、ウラシル誘導体、チミン、チミン誘導体、シトシン、およびシトシン誘導体からなる群より選択されるいずれか、またはこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする。
本発明に係る第3の消弧用絶縁成型物は、上記消弧用絶縁成型物に含まれるプリン誘導体が、キサンチン、キサンチン誘導体、テオブロミン、テオブロミン誘導体、グアニン、グアニン誘導体、アデニン、およびアデニン誘導体からなる群より選択されるいずれか、またはこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする。
本発明に係る第4の消弧用絶縁成型物は、上記消弧用絶縁成型物に含まれるテトラゾール誘導体がビステトラゾールジアンモニウムであることを特徴とする。
本発明に係る第5の消弧用絶縁成型物は、上記消弧用絶縁成型物に含まれる主たるマトリックス樹脂がポリアミドであることを特徴とする。
本発明に係る回路遮断器は、固定接点の設けられた固定接触子と、可動接点の設けられた可動接触子と、可動接触子を作動させる開閉機構部と、固定接点と可動接点とが開離するときに発生するアークを消弧する消弧装置と、上記固定接触子と上記可動接触子とからなる接触子対周辺に消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器であって、上記いずれかの態様の消弧用絶縁成型物を使用することを特徴とする。
本発明に係る回路遮断器の別の態様は、上記回路遮断器が、絶縁容器と、該絶縁容器に固定された固定接触子と、開閉機構部により開閉動作する可動接触子とを備えた遮断部と、上記固定接点と上記可動接点との間に発生したアークを、多段に積み重ねられた消弧板まで移行させる走行導体を備え、上記固定接触子と上記可動接触子とからなる接触子対周辺に消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器であって、上記いずれかの態様の消弧用絶縁成型物を使用することを特徴とすることを特徴とする。
本発明によれば、接点近傍に配置される消弧用絶縁成型物に、ピリミジン、ピリミジン誘導体、プリン、プリン誘導体、テトラゾール、およびテトラゾール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物または2種以上の混合物を含むので、アーク暴露による消弧用絶縁成型物の分解により発生するガスの量が多量となる。よって、アークの冷却やガスの吹きつけによるアークの延伸などによりアークの消弧が促進され、大電流が流れる際の遮断時における過剰電流を低く抑制することができ、遮断性能の優れた回路遮断器を得ることができる。
また、本発明によれば、接点近傍に設置した消弧用絶縁成型物のアークによる分解ガスの寄与により、限流性能を高めることができるので、事故発生などの過電流遮断時に、回路遮断器自体に注入されるエネルギーの低下により回路遮断器の構造物への負担が軽減して、回路遮断器の小形化が可能となった。
この発明によれば、大電流遮断時にもアークを冷却すると共に、アーク全体を迅速に消弧装置に導入することができ、高い遮断性能を有する回路遮断器を提供することができる。
(a)は本発明における消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す断面図であり、(b)は図1(a)のIb−Ibに沿った消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す側面図である。 本発明の消弧装置のオフ状態を示す側面説明図である。 本発明の回路遮断器の一例の接触時(オン状態)を示す断面図である。 図3に示す本発明の回路遮断器の一例の部分段面図であり、回路遮断器の遮断時(オフ状態)を示す図である。 (a)は固定接触子と消弧用絶縁成型物との配置関係の一例を模式的に示す側面図であり、(b)は図5(a)の上面図である。 本発明の回路遮断器の別の一例の遮断時(オフ状態)を示す部分断面図である。 (a)は消弧用絶縁成型物の絶縁性評価に用いた装置を示す正面図であり、(b)は図7(a)の側面図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
以下に、本発明に係る回路遮断器の実施の形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明に係る回路遮断器における消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す断面図であり、図1(b)は図1(a)のIb−Ibに沿った消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す側面図である。図1(a)および図1(b)において、可動接触子1の開動側に可動接点2が設けられ、固定接触子3の一端であって可動接点2と対応する位置に固定接点4が設けられ、可動接点2および固定接点4の周囲を挟むように消弧用絶縁成型物5が設けられている。本発明に係る回路遮断器は、図1(a)および図1(b)において、可動接点2と固定接点4との間で発生するアークに曝される部分に、特定の化合物を含む消弧用絶縁成型物5を設けることを特徴とする。
次に、回路遮断器の動作について説明する。図1(a)および図1(b)において、開閉機構部(図3および図4参照)が動作して可動接触子1が回動することにより、可動接点2と固定接点4とが接触または開離する仕組みとなっている。接点同士を接触させることにより電力が電源から負荷に供給される。通電の信頼性を確保するために可動接点2は固定接点4に規定の接触圧力で押さえつけられている。
短絡事故などが起こり回路に大きな過電流が流れると、可動接点2と固定接点4との間の接触面における電磁反発力が非常に強くなる。上記可動接点2に加わっている接触圧力に打ち勝つために、可動接触子1は回動し、可動接点2と固定接点4とが開離し、さらに、開閉機構部および引き外し装置の動作によって、固定接点4と可動接点2との開離距離が増大するに従って、アーク抵抗が増大することによりアーク電圧が上昇する。
このような遮断動作中において、可動接点2と固定接点4との間には、アークによって短時間、すなわち数ミリ秒のうちに大量のエネルギーが発生する。この時、消弧装置の側面に設けた消弧用絶縁成型物がアークに曝されることによって分解ガスを発生し、発生した分解ガスによりアークが冷却され消弧される。
また、図2は、U字型、V字型の切欠部7を持つ複数の消弧板6を一定間隔で積層した回路遮断器の消弧装置部分の側面図である。可動接点2と固定接点4の間に発生したアーク8が消弧板20の方向へ磁気力によって引き付けられ伸長するために、アーク電圧は更に上昇する。さらに、消弧装置である複数の板からなる金属製の消弧板に取り込むことで過電流を限流させ、アークを消弧し、回路を遮断する。
上記回路遮断器について、より詳細に説明する。図3および図4は、本発明の回路遮断器の一例の模式的な断面図であり、図3は回路遮断器の接触時(オン状態)、図4は図3に示す回路遮断器の一部であって、回路遮断器の遮断時(オフ状態)を示す。図3および図4において、回路遮断器は、銅などの導体からなる可動接触子1、可動接触子1の一端に固着された可動接点2、可動接点2と接離する固定接点4、固定接点4が固着された銅などの導体からなる固定接触子3、固定接触子3の他端部に構成された電源側の端子部9を備え、外部電源から配線が接続される。消弧装置100部分における消弧板6は互いに空隙を介して積層配列されている。消弧装置100は、可動接点2と固定接点4との間に発生したアークを冷却および消弧する磁性体の金属からなる複数の消弧板6(グリッド)と、グリッドを両側で保持する消弧側板11a(図3および図4においては、消弧側板の片側を示す)と、消弧用絶縁成型物5で構成される。消弧用絶縁成型物5および消弧側板11aは絶縁材料からなり、消弧用絶縁成型物5は後述の特定の材料を含む。消弧用絶縁成型物5は、可動接点2および固定接点4の間に設けており、固定接点4を露出させ、アークに曝される固定接触子3の全面を覆うように設けられている(図5(a)および図5(b)参照)。さらに、上記回路遮断器には、例えば、可動接触子1を回動して開閉駆動する開閉機構部110、この開閉機構部110を手動で操作するためのハンドル13、引き外し装置部120、負荷側の端子部10などを備える。カバー14およびベース15は、上記の各部品を収納および/または固定し、筐体19の一部を構成している。端子部9を筐体19内と隔離するエンドプレート17は、アークによるホットガスを排出する排気孔17aを有し、ベース15に設けられたガイド溝16に挿入装着されている。また、アークを消弧板11bの中央へ走行させるアークランナー18が設けられている。
上記消弧用絶縁成型物と接触子対(固定接触子および可動接触子)との配置関係について、図5(a)に接触子対の側面図および図5(b)に図5(a)の平面図を示す。図5(a)および図5(b)において、消弧用絶縁成型物5は、可動接触子1の可動接点2および固定接触子3の固定接点4の接触子対付近に設けており、固定接点4を露出させ、アークに曝される固定接触子3の全面を覆うように設けられている。
図6は回路遮断器の消弧室部の別の一例を模式的に示す側面図である。図示していないが、このような消弧室部は絶縁物からなる容器(絶縁容器)の中に、異常電流を検出して開極指令を出すリレー部、同指令の伝達先である駆動機構部などと一体収納されている。図6に示すように、消弧室部100は固定接点4を有する固定側走行導体20と、固定接点4と接離する可動接点2を有した、固定側走行導体20と接触子対を形成する可動接触子1と、上記可動接触子1の開離時に固定接点4と可動接点2の間に発生するアークを取り込み分断する複数枚重ねられた消弧板6からなる消弧装置22と、可動接触子1上のアークが転流し、消弧装置に誘導する可動側走行導体21と、アーク発生に伴う分解ガスを回路遮断器の外部に排出するための排気孔17aとを備える。固定側走行導体20は絶縁容器に固定された固定接触子と一体化された形状を有する。
図6において、固定接点4が固着された固定接触子3は、固定側走行導体20に接続され、該固定側走行導体20は消弧装置22側へと伸びている。可動接触子1には可動接点2が固着され、さらに、可動接触子1は可動側走行導体21と導体で接続され、電気的に接続状態にある。なお、固定接点4、もしくは可動接点2は固定側走行導体20もしくは可動接触子1を構成する導電部材で代用されてもよい。固定接点4が固着された固定側走行導体20、および可動側走行導体21は消弧装置22へと伸びており、消弧装置22の両側から挟み込む構造となっている。
消弧用絶縁成型物5は、図6において、固定接点4と可動接点2との間、および固定側走行導体20の間に作られる空間を挟む形で配置される。板状部材であれば対状に配置され、例えばコの字状部材であれば囲む様に配置される。
排気孔17aは絶縁部材で構成されており、図示するように、消弧装置22の背面側に配置されている。
上記消弧室部100において、回路遮断器に過電流が流れると、図には示していない可動接触子1に接続された開閉機構部が動作して可動接触子1が開極して、固定接点4と可動接点2との間にアーク(図中アークI)が発生する。アークの発生とともに、消弧用絶縁成型物5から分解ガスが発生し、消弧室部100内の圧力が上昇する。この固定接点4および可動接点2の接点対間のアークIに、周囲の圧力勾配による排気孔17a方向への分解ガスの流れ、および、可動側走行導体21に流れる過電流からの電磁力などが作用して、まず固定側部のアーク端が固定接点4から連続して伸びる固定側走行導体20を消弧装置100方向に走行する。続いて、もう一方のアーク端は、可動側走行導体21に転流する(図中アークII)。この転流によりアークは消弧装置100に備えられた消弧板6に対して略垂直な状態で到達し、消弧板6によって分断される(図中アークIII)。この結果、電極降下電圧が生じてアーク電圧が高くなり、限流性能が高められる。上記固定接触子と、開閉機構部により開閉動作する可動接触子とを併せて遮断部ともいう。
本発明の消弧用絶縁成型物(以下において、成型物ということがある)には、ガス発生能をもつ添加剤として、ピリミジン、ピリミジン誘導体、プリン、プリン誘導体、テトラゾール、およびテトラゾール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物を含む。ピリミジン誘導体とは、化学式(1)で示されるピリミジンの誘導体であり、プリン誘導体とは、化学式(2)で示されるプリンの誘導体であり、テトラゾール誘導体とは、化学式(3)で示されるテトラゾールの誘導体である。また、誘導体とは、上記ピリミジン、プリン、またはテトラゾールについて、ピリミジン骨格、プリン骨格、またはテトラゾール骨格のそれぞれを有する化合物であって、ガス発生能(消弧能)を有するものをいう。このような誘導体には、ピリミジン、プリン、またはテトラゾールのそれぞれの置換または付加化合物等が含まれる。これらの材料を複数混合して用いる場合、その混合割合は特に限定されない。消弧用絶縁成型物に、ピリミジンまたはその誘導体、プリンまたはその誘導体、テトラゾールまたはその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことにより、アーク暴露の結果、消弧用絶縁成型物の分解により発生するガスが多量なので、アークの冷却や、吹きつけによるアークの延伸などにより、アークの消弧を促進して、大電流遮断時における過剰電流を低く抑制することができる、遮断性能の優れた消弧用絶縁成型物を得ることができる。その結果、回路遮断器の接点近傍に消弧用絶縁成型物を配置することにより、小型で遮断性能の優れた回路遮断器を得ることができる。
Figure 2011071048
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上記のピリミジンの誘導体は、特に、ウラシル(化学式(4))などのウラシルまたはその誘導体、またはチミン(化学式(5))などのチミンまたはその誘導体、シトシン(化学式(6))などのシトシンまたはその誘導体、またはこれらの2種以上の混合物であることが好ましい。このようなピリミジンの誘導体が上記成型物に含有される場合は、アーク暴露の結果、消弧用絶縁成型物の分解により発生する多量のガスによって、アークの冷却や吹きつけによるアークの延伸などによりアークの消弧を促進し、大電流遮断時における過剰電流を低く抑制することができ、結果、回路遮断器の接点近傍に消弧用絶縁成型物を配置することにより、小型で遮断性能の優れた回路遮断器を得ることができる。ピリミジンの誘導体としては、上記例示に限定されるものではなく、例えばバルビツール酸(化学式(7))またはその誘導体なども含まれ、上記と同様の効果を奏する。
Figure 2011071048
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上記のプリンの誘導体は、キサンチン(化学式(8))などのキサンチンまたはその誘導体、またはテオブロミン(化学式(9))などのテオブロミンまたはその誘導体、またはグアニン(化学式(10))などのグアニンまたはその誘導体、またはアデニン(化学式(11))などのアデニンまたはその誘導体、またはこれらの2種以上の混合物であることが好ましく、例として、キサンチン、パラキサンチン、ヒポキサンチン、テオブロミン、テオフィリン、グアニン、尿酸等が挙げられる。このようなプリンの誘導体が上記成型物に含有される場合は、アーク暴露の結果、消弧用絶縁成型物の分解により発生する多量のガスによって、アークの冷却や吹きつけによるアークの延伸などによりアークの消弧を促進し、大電流遮断時における過剰電流を低く抑制することができ、遮断性能の優れた回路遮断器を得ることができる。プリンの誘導体としては、上記例示に限定されるものではなく、例えばキサンチンの誘導体である、カフェイン(化学式(12))、テオフィリン(化学式(13))、パラキサンチン(化学式(14))、ヒポキサンチン(化学式(15))や、アデニンの誘導体である、アデノシン(化学式(16))、イノシン(化学式(17))、ウリジン(化学式(18))や、これらの誘導体なども含まれ、上記と同様の効果を奏する。
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上記のテトラゾールの誘導体は、ビステトラゾールジアンモニウム(化学式(19))であることが好ましい。ビステトラゾールジアンモニウムを消弧用絶縁成型物に含む場合は、ガス発生量を特に改善することができ、アーク暴露の結果、消弧用絶縁成型物の分解により発生する多量のガスによって、アークの冷却や吹きつけによるアークの延伸などによりアークの消弧を促進し、大電流遮断時における過剰電流を低く抑制することができ、遮断性能の優れた回路遮断器を得ることができる。テトラゾールの誘導体としては、上記例示に限定されるものではなく、例えば5−アミノテトラゾール(化学式(20))やその誘導体等も含まれ、上記と同様の効果を奏する。
Figure 2011071048
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上記消弧用絶縁成型物には50重量%以上のマトリックス樹脂を含むことが好ましく、これらのマトリックス樹脂としては、ポリオレフィン、ポリオレフィン系共重合体、ポリアミド、ポリアミド系ポリマーブレンド、ポリアセタールおよびポリアセタール系ポリマーブレンド、脂肪族ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などやこれらの混合物が使用される。
上記マトリックス樹脂は、消弧性能、耐圧強度および耐アーク消耗性の向上、さらには成形時間の短縮を図るために用いられる。
ポリオレフィンは芳香環を有さず、耐衝撃性に優れることから、消弧性能および耐圧強度を満足させるために用いられる。その具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。それらのなかではポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの比重が小さいものが、絶縁材料の軽量化の点から好ましく、特にポリメチルペンテンは融点240℃の結晶性樹脂のために高耐熱性が得られる点から好ましい。
ポリオレフィン系共重合体は芳香環を有しないことから消弧性能を満足させるために用いられる。その具体例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などがあげられるが、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの高強度樹脂が、耐圧強度の向上を図る点から好ましい。
ポリアミドはアミド結合をもつ高分子化合物のことをいい、本発明ではポリアミド共重合体をも含む。ポリアミドは高強度樹脂であり、耐圧強度を満足させるために用いられる。その具体例としては、ナイロン6T、ナイロン46、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン610、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン6とナイロン66の共重合体ナイロンなどがあげられる。なおナイロンはポリアミドのうち線状の合成ポリアミドのことをいい、ナイロンmnは炭素数mのジアミン(NH2(CH2NH2)と炭素数nの2塩基酸(HOOC(CH2n-2COOH)との重縮合物のことをいい、ナイロンnは炭素数nのω−アミノ酸(H2N(CH2n-1COOH)またはラクタムの重合物のことをいう。
マトリックス樹脂としてポリアミドを含む場合は、アーク暴露による分解によって発生するガスにより、さらに、アークを冷却およびアーク電圧を向上し、大電流遮断時における過電流を低く抑制することができ、遮断性能、耐環境性、耐熱性に優れた回路遮断器を得ることができる。
上記ポリアミドの具体例のなかでは高融点の結晶性ポリアミドであるナイロン46(融点290℃)およびナイロン66(融点260℃)が、高い熱変形温度が得られ、一層の耐熱性の向上を図り得る点から好ましい。
ポリアミドをマトリックス樹脂とする場合には、上記ガス発生能をもつ添加剤の熱分解温度は、マトリックス樹脂との混合する際の安定性の観点から270℃以上が望ましく、また、熱分解によるガス発生の観点から500℃以下であることが望ましい。このような熱分解温度を有する上記添加剤としては、ウラシル、アデニン、キサンチン、テオブロミン、グアニン、ビステトラゾールジアンモニウムなどが該当する。
ガス発生能を持つ添加剤の添加量としては、消弧用絶縁成型物中1重量%以上30重量%以下が好ましく、3重量%以上10重量%以下が特に好ましい。1重量%未満では、添加剤の性能を十分に発揮することが出来ず、消弧用絶縁成型物の遮断性能への寄与が小さく、30重量%を超える場合では、消弧用絶縁成型物の衝撃強度が低下し、過電流遮断時に破損する場合があることから好ましくない。
また、消弧用絶縁成型物に、耐アーク消耗性、耐圧強度の向上を図るために、ケイ酸アルミニウム、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、アルミナウィスカなどのセラミック繊維、ガラス繊維を充填剤として用いることもできる。
この充填剤の添加量としては、消弧用絶縁成型物中5重量%以上50重量%以下が好ましく、10重量%以上30重量%以下が特に好ましい。5重量%未満では、強度向上を十分に達成することができない場合があり、50重量%を超える場合では、相対的に、消弧用絶縁成型物の消弧用成分が減少し、遮断性能が低下するため好ましくない。
消弧用絶縁成型物は、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、酸化促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、充填剤などの添加物を配合して成形することができる。
消弧用絶縁成型物の作製方法としては、既存の方法で行なうことができる。たとえば、射出成形、押し出し成形、中空成形(ブロー成形)、熱成形(真空または圧空成形)、カレンダー成形、2種以上のシートやフィルムを重ね合せたり、貼り合わせて一体物に加工する積層成形、液体成形、注型、粉末成形などが挙げられる。
消弧用絶縁成型物に対して、表面の耐光性向上、耐候性向上などの機能性向上化学薬品処理や物理的処理などの後処理を行なってもよい。化学薬品処理としては、薬品処理、溶剤処理、カップリング剤処理、モノマー・ポリマーコティング、表面グラフト化などが挙げられる。また、物理的処理としては、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオンビーム処理などが挙げられる。
本発明の回路遮断器によれば、接点近傍に設置した上記消弧用絶縁成型物のアークによる分解ガスの寄与により、限流性能が高められた結果、事故発生などの過電流遮断時に、回路遮断器自体に注入されるエネルギーの低下により本回路遮断器の構造物への負担が軽減して回路遮断器の小形化が可能となっている。
本発明の回路遮断器には、上記のような消弧用絶縁成型物を接点近傍に設置し、消弧用絶縁成型物のアークによる分解ガスの寄与により、限流性能を高めると共に、接点間に発生したアークが走行導体を走行することで高速にアークを伸張させて限流性能を向上するようにしている。この結果、事故発生などの過電流遮断時に、回路遮断器自体に注入されるエネルギーの低下により本回路遮断器の構造物への負担が軽減して回路遮断器の小形化が可能となる。
以下に、本発明の消弧用絶縁成型物および本発明の回路遮断器について、図面とともに詳細に説明する。本実施の形態の具体的な実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
(実施例1〜8、比較例1〜4)
表1に実施例1〜8および比較例1〜4で製造した消弧用絶縁成型物の材料組成を示す。表1に示す配合量の関係を満たすマトリックス樹脂と添加剤とを、サイドフィード式樹脂混練機で加熱混練し、押し出し機によって、ペレットを形成した後、射出成形によって、縦40mm、横60mm、厚さ1mmの消弧用絶縁成型物を作製した。
得られた消弧用絶縁成型物について、図7(a)および図7(b)に示す絶縁性を評価する装置でアーク電流の遮断性能を評価した。図7(a)は上記装置の断面図を示し、図7(b)は上記装置の側面図を示す。図7(a)および図7(b)に示す評価装置は、試験容器71と、対向電極72と、試料73(各実施例または比較例で製造された消弧用絶縁組成物)と、試料台74とにより構成される。試験は、AC300V、推定短絡電流20kAの過電流が流れる電気回路で行なった。電極接点にはAg60wt%−WC36wt%−グラファイト4wt%の組成の材料を使用した。この評価する装置では、電気回路に過電流が流れたとき発生するアークによって、消弧用絶縁成型物が分解ガス化し、アークの消弧を促進し、想定短絡電流よりも小さい電流で回路が遮断されるが、この時の回路に流れる最大の電流値を限流ピーク電流として遮断性能を評価するものである。限流ピーク電流は小さいほど遮断性能が高いと判断する。各樹脂の限流ピークを表1に示す。表1には、比較例1〜4として、本発明における添加剤を使用しない場合および従来の消弧用成型物の結果を示した。
Figure 2011071048
表1および下記表2において、BHT−2NH3は、ビステトラゾールジアンモニウムを表わす。
表1の試験結果から、実施例1〜8は、比較例1〜4と比較して、限流ピーク電流が低減しており、本発明の消弧用絶縁成型物によるアーク遮断性能の向上が認められた。
(実施例9〜11、比較例5)
表2に示す配合量の関係を満たすマトリックス樹脂と添加剤とを用いて、実施例1と同様に本発明の消弧用絶縁成型物を作製した。実施例9〜10および比較例5において製造した消弧用絶縁成型物を用いて、図3および図4に例示する回路遮断器を作製し、実施例11は図6に例示する消弧室部を含む回路遮断器を作製し、遮断試験、短絡試験を行なった。遮断試験、短絡試験以下に示すものである。
<過負荷遮断試験>
上記構成の消弧装置(または消弧室部)を含む回路遮断器に閉成状態で定格電流の6倍の電流(たとえば100A用回路遮断器の場合は600A)を通電し、可動接点2と固定接点4とを接点開離距離L(可動接点2と固定接点4との距離)15〜25mmで開離させ、アーク電流を発生させ、アーク電流の遮断を規定回数成功させることをもって合格とする試験。
<短絡試験>
閉成状態において、10〜100kAの過剰電流を通電して可動接触子を開離させ、アーク電流を発生させ、このアーク電流の遮断の成功と破損がないことをもって合格とする試験。
上記実施例9〜11および比較例5で使用した消弧用絶縁成型物の構成と試験結果を表2に示す。
Figure 2011071048
実施例9〜11では、過負荷試験は規定遮断回数の12回に到達し、短絡試験も規定遮断回数の3回遮断を達成し、消弧用絶縁成型物の破損も無かった。これに対し、比較例5では、過負荷試験、短絡試験ともに規定回数に達することが出来なかった。これは、アーク電流を吹消すだけの熱分解ガスを発生することができないため遮断不能となったものと考えられる。
また、上記実施例においては消弧用絶縁成型物に含まれるマトリックス樹脂としてポリアミドを使用したが、該樹脂に限定されず、成型物に本発明における添加剤を含む場合に本発明の効果が得られることは、発明の詳細な説明において述べたとおりである。
以上の結果から、本発明の消弧用絶縁成型物は、ピリミジンまたはその誘導体、プリンまたはその誘導体、テトラゾールまたはその誘導体からなる群より選ばれる一つ以上の材料を添加剤として含むので、従来の消弧用絶縁成型物よりも消弧性能に優れることが分かった。また、本発明の消弧用絶縁成型物を用いた回路遮断器は、回路遮断性能に優れることが示された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 可動接触子、2 可動接点、3 固定接触子、4 固定接点、5 消弧用絶縁成型物、6,11b 消弧板、7 切欠部、8 アーク、9,10 端子、100 消弧室部、11a 消弧側板、110 開閉機構部、13 ハンドル、120 引き外し装置部、14 カバー、15 ベース、16 ガイド溝、17 エンドプレート、17a 排気孔、18 アークランナー、19 筐体、20 固定側走行導体、21 可動側走行導体、22 消弧装置、60 絶縁性評価に用いた装置、71 試験容器、72 対向電極、73 試料、74 試料台。

Claims (7)

  1. 回路遮断器の接触子周辺に配置する消弧用絶縁成型物であって、ピリミジン、ピリミジン誘導体、プリン、プリン誘導体、テトラゾール、およびテトラゾール誘導体からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことを特徴とする消弧用絶縁成型物。
  2. 前記ピリミジン誘導体は、ウラシル、ウラシル誘導体、チミン、チミン誘導体、シトシン、およびシトシン誘導体からなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項1に記載の消弧用絶縁成型物。
  3. 前記プリン誘導体は、キサンチン、キサンチン誘導体、テオブロミン、テオブロミン誘導体、グアニン、グアニン誘導体、アデニン、およびアデニン誘導体からなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項1に記載の消弧用絶縁成型物。
  4. 前記テトラゾール誘導体は、ビステトラゾールジアンモニウムである請求項1に記載の消弧用絶縁成型物。
  5. 前記消弧用絶縁成型物は、50重量%以上のマトリックス樹脂を含み、該マトリックス樹脂がポリアミドである請求項1〜4のいずれかに記載の消弧用絶縁成型物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器であって、
    固定接点の設けられた固定子と、可動接点の設けられた可動子と、前記可動子を作動させる開閉機構部と、前記固定接点と前記可動接点が開閉機構部により開離されるときに発生するアークを消弧する消弧装置と、前記固定接触子と前記可動接触子とからなる接触子対周辺に前記消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器であって、
    絶縁容器と、該絶縁容器に固定された固定接触子と、開閉機構部により開閉動作する可動接触子とを備えた遮断部と、前記固定接触子と前記可動接触子との間に発生したアークを多段に積み重ねられた消弧板まで移行させる走行導体とを備え、前期固定接触子と前記可動接触子とからなる接触子対周辺に前記消弧用絶縁成型物を備えた回路遮断器。
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