JP2011068948A - スターリングエンジンの熱交換器 - Google Patents

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定幸 中村
Yoshiaki Hori
芳明 堀
Naohito Kumano
尚仁 熊野
Manabu Oku
学 奥
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Abstract

【課題】スターリングエンジンの熱交換器用ステンレス鋼および構造を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.08%以下、Si:0.2〜3.0%、Mn:2.0%以下、Cr:12.0〜20.0%、Nb:0.8%以下、N:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに、Mo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.05〜4.0質量%を含有するフェライト系ステンレス鋼、および、質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜4.0%、Mn:2.0%以下、Ni:8.0〜16.0%、Cr:16.0〜20.0%、N:0.04%以下、Nb:0.8%以下、さらに、Mo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.50〜4.0質量%を含有するオーステナイト系ステンレス鋼で構成され、これらのステンレス鋼をろう付けにより接合するスターリングエンジンの熱交換器。
【選択図】図1

Description

本発明は、スターリングエンジンの熱交換器に関するものである。
従来のスターリングエンジンの熱交換器は、約500〜900℃の高温排ガス環境にさらされるため、SUS310S等の耐熱鋼が用いられている(例えば、特許文献1)。また、製造方法としては、溶接構造も考えられるが、接合後の残留ひずみが原因で、加熱時に熱交換器が変形し、内部でわずかな隙間で作動しているディスプレーサーが円滑に作動しなくなる恐れがある。このため、加工後に残留ひずみ等による熱変形が発生しにくい切削等で製造されることが一般的であった。
特開2005−133653
しかし、近年スターリングエンジンが使用される環境は、産業廃棄物等の燃焼雰囲気等からの廃熱回収が主目的となりつつあり、熱交換器に求められる耐熱性はさらに厳しくなっている。また、燃焼条件も省エネの目的から加熱一冷却を繰り返されるようになり、いわゆる熱疲労特性も重要視されるようになってきた。
さらには、スターリングエンジンの製造コストも重要となってきており、SUS310Sよりも低コストの耐熱鋼で安価な製造方法が要求されてきている。
本発明は、低コストで、安価なろう付け接合による製造が可能で、従来の耐熱鋼よりも性能が向上させるスターリングエンジンの熱交換器用ステンレス鋼を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明においては質量%で、C:0.08%以下、Si:0.2〜3.0%、Mn:2.0%以下、Cr:12.0〜20.0%、Nb:0.8%以下、N:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼で作製されていることを特徴とするスターリングエンジンの熱交換器、または更にMo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.05〜4.0質量%を含有しているフェライト系ステンレス鋼で作製されているスターリングエンジンの熱交換器とする。
又は、質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜4.0%、Mn:2.0%以下、Ni:8.0〜16.0%、Cr:16.0〜20.0%、N:0.04%以下、Nb:0.8%以下を含有しているオーステナイト系ステンレス鋼、更にMo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.50〜4.0質量%を含有している請求項3記載のオーステナイト系ステンレス鋼、あるいはさらに、REMおよびCaの1種または2種を合計で0.01〜0.20質量%を含有しているオーステナイト系ステンレス鋼で作成されているスターリングエンジンの熱交換器とする。
また、発明鋼の特性を生かし、スターリングエンジンの熱交換器の接合部をろう付けとすることがより好ましい。
本発明によれば、SUS310Sに比べて同等以上の高温強度および耐スケール剥離性を示し、なおかつ、Niろう付け性に優れたスターリングエンジンの熱交換器用ステンレス鋼を提供することができる。
発明者らは、スターリングエンジンに要求される耐熱性としては、内圧がかかるための高温強度、加熱−冷却を繰り返し受けても減肉しない耐スケール剥離性と、良好なろう付け性を確保できる最適成分を検討した結果以下の知見を得た。
オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度を改善するためにはNb、MoおよびCuの添加が有効で、耐スケール剥離性の改善にはSi、REMおよびCaの添加が有効であるとの知見を得た。しかし、600℃以下の温度域ではオーステナイト系ステンレス鋼は高温強度が得られにくい。そこでフェライト系ステンレス鋼における適正成分を検討した結果、高温強度に対してはNb、Mo、CuおよびWの添加が有効であり、耐スケール剥離性に対してはSiおよびMnの添加が有効であるとの知見を得た。
さらに、これらの鋼のろう付け性を調査した結果、TiおよびAlの添加は両鋼種においてろうの濡れ性を阻害するが、Nb、Mo、Cu、W、REMおよびCaについてはろうの濡れ性を阻害しないことを確認した。
以下に本発明における成分限定理由を詳細に述べる。
C:Cはフェライト系ステンレス鋼において高温強度を上昇させるが、Nbとの複合添加においては、Nb炭化物を生成しNb固溶量を低下させ逆に高温強度を低下させる。したがって、0.08質量%以下とする。
Si:本特許において重要な元素であり、添加するにしたがって高温酸化特性を改善させる。しかし、過剰な添加はフェライト相を硬質化させ、加工性を悪化させる。したがって、フェライト系においては0.2〜3.0質量%、オーステナイト系においては2.0〜4.0質量%とする。
Mn:Mnも本特許において重要な元素であり、Siと同様に添加するにしたがって高温酸化特性、特に耐スケール剥離性を改善させる。しかし、過剰に添加するとフェライト系ステンレス鋼においては高温でオーステナイト相の生成を助長するため、2.0質量%以下とする。
Cr:Crは高温における耐酸化特性を安定させる。しかし、過剰に添加すると製造性および加工性を阻害する。したがって、本発明ではフェライト系においては12.0〜20.0質量%、オーステナイト系においては16.0〜20.0質量%とする。
Nb:Nbも本発明において重要な元素であり、CやNを炭窒化物として固定し、鋼中に微細分散析出することで高温強度を上昇させるとともに、過剰なNbが固溶強化となって高温強度を上昇させる。しかし、過剰の添加は熱間加工性や表面品質特性を阻害する。したがって、上限は0.8質量%とする。
Mo、Cu、W:Mo、CuおよびWも高温強度を改善する。しかし、過剰な添加は熱間加工性を阻害するため、1種または2種以上の合計で0.05〜4.0質量%とする。Ni:オーステナイト系におけるNiはオーステナイト相の安定化を促進する。しかし、過剰な添加はコスト増を招くため8.0〜16.0%質量%とする。
REM、Ca:REMおよびCaはオーステナイト系の耐スケール剥離性を向上させる。しかし、過剰に添加すると低温靭性等の低下により製造性が悪化する。したがって、1種または2種の合計で0.01〜0.2質量%とする。
表1に本発明例および比較例における供試鋼の化学成分を示す。これらの鋼は、30kgの真空溶解で溶製した。得られた鋼塊はφ15mmの丸棒および30mmtの板に鍛造し、丸棒は800〜1100℃の溶体化処理を施した。板は熱間圧延で4mmtの熱延板とし、焼鈍後、2.0mmtまでの冷間圧延と800〜1100℃の最終焼鈍を施して冷延焼鈍板とした。
Figure 2011068948
得られた丸棒は、平行部φ10mmの高温引張り試験片に加工後、JISG056に準拠した500℃および700℃の高温引張り試験を実施し、0.2%耐力を測定した。
一方、冷延焼鈍板は、高温酸化試験は全面を#400研磨し、大気+60℃飽和水蒸気の雰囲気において900℃で25分加熱−室温で10分冷却を500サイクル施し、試験前と試験後の質量変化を表面積で除した。また、ろう付け性は、Niろうを用いてろう付け時の濡れ性で評価した。2枚の試験片の間にNiろうを0.5mm厚みで塗布し、真空炉中1150℃でろう付けを実施し冷却後に試験片を取り出し、試験前にNiろうを塗布しなかった上面のNiろうが濡れた表面積で判定した。判定は、元の表面積に対し50%以上Niろうが覆ったものをAとし、20〜50%のものをB、20%以下をCとした。なお、Niろうについては、Cr:19質量%−Si:10質量%−Ni71質量%のもの(JISZ3265で規定するBNi−5相当)を使用し行った。
これらの評価結果を表2に示す。A7は比較のSUS310Sで、F5はTiが添加されているためNiろう付け性が劣り、F6は高温強度および耐スケール剥離性が劣る。また、A5はオーステナイト系であるが、SUS310Sに比べて高温強度および耐スケール剥離性が劣り、A6も耐スケール剥離性が劣る。
Figure 2011068948
一方、発明鋼のFl〜F4鋼は、フェライト系であっても500℃の高温強度がSUS310Sよりも高く、耐スケール剥離性も優れ、なおかつ、Niろう付け性にも優れる。また、Al〜A4はSUS310Sに比べて同等以上の高温強度および耐スケール剥離性を示し、なおかつ、Niろう付け性に優れることがわかる。
本発明鋼を用いNiろう付けされた熱交換器の断面形状例である。
1 熱交フィン
2 ディスプレーサー外筒
3 フランジ
4 外筒端板

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.08%以下、Si:0.2〜3.0%、Mn:2.0%以下、Cr:12.0〜20.0%、Nb:0.8%以下、N:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼で作製されていることを特徴とするスターリングエンジンの熱交換器。
  2. 請求項1記載のフェライト系ステンレス鋼に、更にMo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.05〜4.0質量%を含有しているフェライト系ステンレス鋼で作製されていることを特徴とする、請求項1記載のスターリングエンジンの熱交換器。
  3. 質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜4.0%、Mn:2.0%以下、Ni:8.0〜16.0%、Cr:16.0〜20.0%、N:0.04%以下、Nb:0.8%以下を含有しているオーステナイト系ステンレス鋼で作成されていることを特徴とするスターリングエンジンの熱交換器。
  4. 請求項3記載のオーステナイト系ステンレス鋼に、更にMo、CuおよびWの1種または2種の合計で0.50〜4.0質量%を含有している請求項3記載のオーステナイト系ステンレス鋼で作成されていることを特徴とする、スターリングエンジンの熱交換器。
  5. 請求項3および請求項4のオーステナイト系ステンレス鋼に、さらに、REMおよびCaの1種または2種を合計で0.01〜0.20質量%を含有しているオーステナイト系ステンレス鋼で作成されていることを特徴とする、スターリングエンジンの熱交換器。
  6. 接合部がろう付けにより形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5に記載のスターリングエンジンの熱交換器。
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