JP2011064231A - トルクコンバータのポンプインペラ製作方法 - Google Patents
トルクコンバータのポンプインペラ製作方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】インペラシェル10の環状凹部の内面に形成した窪みに、外周縁から突出する爪6a〜6cを嵌め込んでインペラブレード2を配置し、インペラブレード2の内径側端Ei部分をカシメ固定する。その後、インペラシェル10の中央穴11の内径面とトルコンスリーブ20のフランジ24の外周面とを突き合わせ溶接する。カシメ部におけるインペラブレード2の内径側端Ei部分が溶接熱により焼き入れ状態となり、硬度が高くなるので、膨張・収縮によるインペラブレード2とインペラシェル10間の擦れがあってもインペラブレード2が磨耗することがなく、インペラブレード2がインペラシェル10から外れることはない。
【選択図】図5
Description
トルクコンバータは、入力要素として動力源側に連結されるポンプインペラと、出力要素として変速機構の入力軸に接続されるタービンランナと、反力要素としてタービンランナからポンプインペラへ戻る作動流体の整流を行うステータとを備えて作動流体の循環路を形成し、作動流体を介して動力伝達を行う。
図7に示すように、ポンプインペラ1’はインペラシェル10’にインペラブレード2を固定して形成される。すなわち、インペラシェル10’は環状凹部13をもつ断面形状を有し、環状凹部13の内面に多数のインペラブレード2が周方向に並べて配置される。さらにインペラシェル10’には、入力軸と同軸に回転するために中央にトルコンスリーブ20’が溶接されている。
インペラブレード2は外周縁の爪6をインペラシェル10’の窪み15に係止させるとともに、内周縁の爪7をコアリング30のスリットに通した後折り曲げてコアリング30に結合される。
インペラシェル10’の環状凹部13は作動流体の循環路における外周壁の一部を形成し、コアリング30は作動流体の循環路における内周壁の一部を形成している。
このため、すべてのインペラブレード2がコアリング30に結合されているとしても、インペラブレード2の外周縁の爪6がインペラシェル10’の窪み15に係止しているだけでは、インペラシェル10’が膨張した際に作動流体の反力を受けている爪6が窪み15から抜けて、インペラブレード2全体がインペラシェル10’から外れてしまう事態が生じる。
しかし、これらの対策は高価なロウ材を必要としたり、高価な溶接装置を必要とする上、いずれもその作業に手間がかかるものである。
そこで、製作にロウ付けや溶接を省いたポンプインペラとして、カシメによりインペラブレードをインペラシェルに固定するようにしたものがある。
先ず図8の(a)に示すように、トルコンスリーブ20’のフランジ24’の外周面に対応する中央穴11’を有するインペラシェル10’をプレス成形し、つぎに(b)に示すように、トルコンスリーブ20’のフランジ24’外周縁とインペラシェル10’の中央穴11’の内周縁とを突き合わせ溶接して、インペラシェル10’とトルコンスリーブ20’を一体化する。
このあと、(d)に示すように、インペラシェル10’における各インペラブレード2の、中央穴11’の中心に関して内径方向先端である内径側端Eiが位置する部位をプレスに取り付けたカシメ工具Kにより変形させて、インペラブレード2の内径側端Eiとインペラシェル10’とをカシメる。
これにより、インペラブレード2は単にその爪6をインペラシェル10’の窪み15に係止させただけではなく、カシメにより固定され、確実にインペラシェル10’に結合されることが期待された。
発明者はその原因について研究を行なったところ、トルクコンバータにおける上述の温度上昇や内部圧上昇による膨張現象が運転のたびに繰り返されると、カシメ部においてインペラブレード2とインペラシェル10’との当接面に膨張・収縮の変形による擦れが生じて、インペラブレード2の端部が磨耗することを見出した。
カシメ部におけるインペラブレード2の端部が磨耗してしまうと、カシメによる固定機能は当然失われるから、インペラブレード2は単にその爪6がインペラシェル10’の窪み15に係止しているだけの状態となり、インペラシェル10’が膨張した際などに外れることになる。
インペラブレードの硬度を高くするために、別途の焼き入れ工程を必要としないので、製作時間およびコストの増大なしに実現される。
図1は実施の形態にかかるポンプインペラを示す断面図である。
ポンプインペラ1は、トルコンスリーブ20が溶接されたインペラシェル10に多数のインペラブレード2を取り付け、各インペラブレード2を1つのコアリング30に結合して構成されている。
インペラシェル10は金属成形品で、中央穴11を囲んで椀状の環状凹部13を有し、環状凹部13の内面にインペラブレード2が配置される。とくに図示しないが、公知のようにインペラブレード2は環状凹部13の周方向に等間隔に並べられている。インペラブレード2はインペラシェル10よりも薄い金属板からプレス成形されたものである。
インペラシェル10にはインペラブレード2の外周縁の爪6に対応する窪み15(15a、15b、15c)が形成され、各爪が嵌め込まれている。
なお、窪み15に嵌め込まれた状態において、爪6の突出先端縁は窪み15の底壁との間に微小な間隙を残すように設定されており、これにより、インペラブレード2の外周縁3はインペラシェル10の環状凹部13の内面に隙間なく当接する。
なお、個々のインペラブレード2はインペラシェル10の中央穴11の中心を通る直径線に対して傾斜しており、図2はインペラブレード2の外周縁3にそった断面を示している。
インペラブレード外周縁の残りの2片の爪6b、6cは反対側の外径側端Eo寄りに設けられている。
インペラブレード2の内径側端Eiは、爪6aの一部であるため、インペラシェル10の窪み15a内に沈んだ状態となっている。そして、インペラシェル10における爪6aを嵌め込んだ窪み15aの内径側の壁面がカシメ工具により潰されてインペラブレード2の内径側端Ei上に一部乗り上げ、カシメられている。
フランジ24は、溶接の際のインペラシェル10とフランジ24の軸方向位置合わせのため、外周面25よりも径方向外方へ規制壁27を張り出させてある。
フランジ24との突き合わせ面F(中央穴11の内径面12)と窪み15aの内径側の壁面との間の距離Lは、インペラシェル10の中央穴11まわりの板厚tの3倍以下に設定される。これに対応して、中央穴11の径およびフランジ24の外周径が設定される。
先ず第1の工程として、図4の(a)に示すように、トルコンスリーブ20のフランジ24の外周面25(図3参照)と対応する径の中央穴11を有するとともに、環状凹部13に窪み15(15a、15b、15c)を備えるインペラシェル10をプレス成形する。
第2の工程では、外周縁3に爪6(6a、6b、6c)を有し、内周縁4に爪7(7a、7b)を有するインペラブレード2を成形する。
第1の工程と第2の工程には時間的順序はなく、平行して実行されてよく、インペラシェル10とインペラブレード2が次の第3の工程に供されればよい。
第3の工程において、(b)に示すように、インペラシェル10の窪み15に各インペラブレード2の爪6を嵌め込む。インペラブレード2は環状凹部13に周方向に並べられる。
第4の工程において、コアリング30をすべてのインペラブレード2に結合する。
なお、第3の工程と第4の工程の順序は逆でもよい。
このあと、第6の工程において、(d)に示すように、トルコンスリーブ20のフランジ外周面25(図3参照)とインペラシェル10の中央穴11の内径面12とを突き合わせ溶接して、インペラシェル10とトルコンスリーブ20を一体化して、ポンプインペラ1の完成形とする。
図6は、上記溶接後におけるインペラブレード2の表面硬度の測定結果を示す。乗用車用トルクコンバータのインペラシェルとして典型的なSAPH440材、板厚3.6mmの場合を示す。インペラブレードはインペラシェルより薄いSPCC材、板厚1.0mmである。
インペラブレード2の先端(内径側端Ei)にいくほど高い硬度となっており、インペラブレード2の端部は焼き入れされた状態となっている。
この結果、インペラブレード2がインペラシェル10から外れてしまう事態が防止される。
インペラブレード2の硬度を高くするために、別途の焼き入れ工程を必要としないので、製作時間およびコストの増大なしに実現される。(請求項1に対応する効果)
さらには、第6の工程における溶接は、溶接ビードWがインペラシェル10の外面における膨出部17の立上り根元の曲率半径部にかからない位置に行うので、溶接ビードWと曲率半径部との間にエッジが生じるのを避け、応力集中が防止される。(請求項3に対応する効果)
また、実施の形態ではカシメとしてインペラシェル10側を潰してインペラブレード2をインペラシェル10に固定したものとしたが、これに限らず、インペラブレード2側を潰して固定したり、あるいは双方を潰して固定するものとしてもよい。
2 インペラブレード
3 外周縁
6a、6b、6c 爪
7a、7b 爪
10 インペラシェル
11 中央穴
12 内径面
13 環状凹部
15a、15b、15c 窪み
17 膨出部
20 トルコンスリーブ
22 筒部
24 フランジ
25 外周面
27 規制壁
30 コアリング
31、32 スリット
Ei 内径側端
Eo 外径側端
F 突き合わせ面
K カシメ工具
W 溶接ビード
Claims (3)
- 中央穴を囲んで環状凹部を有するインペラシェルと、前記中央穴の穴縁においてインペラシェルと接続されるトルコンスリーブと、インペラシェルの前記環状凹部に配置される複数のインペラブレードと、各インペラブレードと連結するコアリングとを有するポンプインペラの製作方法であって、
前記中央穴と環状凹部を有し、該環状凹部に周方向に並べられた窪みを備える前記インペラシェルを成形する第1の工程と、
少なくとも外周縁に爪を有する前記インペラブレードを成形する第2の工程と、
前記インペラシェルの前記窪みに各インペラブレードの前記爪を嵌め込んで前記環状凹部に並べる第3の工程と、
前記環状凹部に並べた前記インペラブレードにコアリングを結合する第4の工程と、
前記インペラブレードの内径側端に前記インペラシェルをカシメ固定する第5の工程と、
第5の工程の後、前記トルコンスリーブとインペラシェルを前記中央穴の穴縁において溶接結合する第6の工程とからなることを特徴とするトルクコンバータのポンプインペラ製作方法。 - 前記第6の工程における溶接位置を、前記第5の工程でカシメ固定したインペラブレードの前記内径側端から、インペラシェルの前記中央穴まわりの板厚の3倍以下とすることを特徴とする請求項1に記載のトルクコンバータのポンプインペラ製作方法。
- 前記第6の工程における溶接は、溶接ビードがインペラシェルの外面における膨出部の立上り根元の曲率半径部にかからない位置に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクコンバータのポンプインペラ製作方法。
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