JP2011059080A - 特性評価装置、特性評価方法及びプログラム - Google Patents

特性評価装置、特性評価方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】複数のRTN信号が重なっている場合において、RTN信号の性質情報を正確に抽出できるようにすること。
【解決手段】特性評価装置は、測定値の時系列データを取得する測定値取得部と、前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成するグラフ生成部とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は特性評価装置、特性評価方法及びプログラムに関し、特に、MOSデバイスのような半導体デバイスで観測されるランダム・テレグラフ・ノイズの特性評価装置、特性評価方法及びプログラムに関する。
ランダム・テレグラフ・ノイズ(Random Telegraph Noise、RTN)は、デバイスの特性値が時間的に2値(2レベル)間を遷移する現象であり、半導体デバイスにおいてしばしば観測される。例えば、MOSトランジスタにおいては、バイアス電圧が一定であるにも関わらず、ソースとドレインの間を流れる電流値が2値間で変動するRTNが観測される。その原因として、MOSトランジスタのゲート絶縁膜中の電荷捕獲中心に対して、単一電荷が捕獲されたり放出されたりすることが繰り返されることが考えられる。電荷が捕獲された状態と捕獲されていない状態は、それぞれ観測される2つの測定値の一方と他方に対応する。各状態にデバイスが滞在する時間は毎回異なっており、この滞在時間の平均値を時定数と呼ぶ。2つの状態に対応して、捕獲状態の時定数と非捕獲状態の時定数が定義される。RTNの性質は、これらの2つの時定数と特性値の変化の幅(振幅)によって記述することができる。2つの時定数と振幅は、個々のデバイスごとに異なっている。RTN現象を理解するためには、多数のデバイスについて時定数と振幅を測定し、これらの統計的分布(ばらつき)を調べる必要がある。RTNの振幅はデバイスが微細になるにつれて増大する傾向があるため、近年RTN現象を詳細に評価したいという要求が増している。
MOSトランジスタにおいては、電荷捕獲中心の数が統計的にばらついており、多くの場合、複数の電荷捕獲中心が存在する。このとき、2値間を遷移するRTN信号が複数加算されたノイズ信号が観測される。単独のRTN信号に対する時定数と振幅は、特性値が時間とともに変化する波形を直接デジタル・オシロスコープで観察することによって容易に決定することができる。しかし、複数のRTN信号が加算された場合には、特性値は2値を超える多数の離散的な値をとるようになる。したがって、信号波形が複雑となり、単に波形を観察することによって、各々のRTN信号について時定数と振幅を決定することは困難となる。
この問題に対応するため、非特許文献1において、多数のトランジスタを測定し、その中からRTN信号が1個しか存在しない試料のみを選択することにより、RTN信号の分析を容易にする方法が記載されている。また、非特許文献2において、一定時間間隔でサンプリングされたN個の測定値を取得し、横軸値をi番目の測定値、縦軸値をi+N/2番目の測定値とするN/2個の点をプロットしたグラフを作成し(i=1〜N/2)、点が密集する領域の存在により、他のノイズに埋もれたRTNの存在を判別する方法が記載されている。
K. Takeuchi et al., "Single-Charge-Based Modeling of Transistor Characteristics Fluctuations Based on Statistical Measurement of RTN Amplitude," in Symp. VLSI Technology, p.54-55, 2009. A. Konczakowska et al., "A New Method for RTS Noise of Semiconductor Devices Identification," IEEE Trans. Instrumentation and Measurement, 57, pp.1199-1206, 2008.
非特許文献1の方法においては、RTN信号が1個しか存在しない試料を選別する必要がある。このために多数の試料を測定する必要がある。また、複数のRTN信号が加算されたデバイスにおけるRTNの挙動は、RTN信号が1個しか存在しないデバイスにおけるRTNの挙動とは異なる可能性がある。しかしながら、非特許文献1の方法によると、複数のRTN信号が加算されたデバイスにおけるRTNについての分析を行うことができない。
非特許文献2の方法によると、2次元のグラフ上の点の分布の仕方を調べることにより、RTN信号の存在を確認し、複数の離散的な特性値を容易に識別することができる。しかしながら、非特許文献2で提案された方法においては、グラフの横軸も縦軸も時間の情報を含まない。したがって、もとの信号波形に含まれる時間に関する情報が、ほぼ完全に失われてしまうという問題がある。
そこで、複数のRTN信号が重なっている場合において、RTN信号の性質を正確に抽出できるようにすることが課題となる。本発明の目的は、かかる課題を解決する特性評価装置、特性評価方法及びプログラムを提供することにある。
本発明の第1の視点に係る特性評価装置は、
測定値の時系列データを取得する測定値取得部と、
前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成するグラフ生成部とを備えている。
本発明の第2の視点に係る特性評価装置は、
サンプリングされたN個の測定値を取得する測定値取得部と、
iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成するグラフ生成部とを備えている。
本発明の第3の視点に係る特性評価方法は、
コンピュータが、測定装置又は記憶装置から測定値の時系列データを取得する工程と、
前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成する工程とを含む。
本発明の第4の視点に係る特性評価方法は、
コンピュータが、サンプリングされたN個の測定値を取得する工程と、
iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成する工程とを含む。
本発明の第5の視点に係るプログラムは、
測定装置又は記憶装置から測定値の時系列データを取得する処理と、
前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成する処理とをコンピュータに実行させる。
本発明の第6の視点に係るプログラムは、
サンプリングされたN個の測定値を取得する処理と、
iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成する処理とをコンピュータに実行させる。
本発明に係る特性評価装置、特性評価方法及びプログラムによると、複数のRTN信号が重なっている場合において、RTN信号の性質を正確に抽出することができる。
本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置の動作について説明するための図である。 本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置の動作について説明するための図である。 本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置の動作について説明するための図である。 非特許文献2に記載された方法について説明するための図である。 本発明の第2の実施形態に係る特性評価装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態に係る特性評価装置の動作について説明するための図である。
第1の展開形態の特性評価装置は、上記第1の視点に係る特性評価装置であることが好ましい。
第2の展開形態の特性評価装置は、上記第2の視点に係る特性評価装置であることが好ましい。
第3の展開形態の特性評価装置は、前記グラフに基づいて前記測定値を分析する分析部をさらに備えていることが好ましい。
第4の展開形態の特性評価装置は、
前記時系列データが、半導体デバイスの電気的特性であって、
前記分析部が、前記グラフに存在する方形のパターンに基づいて、RTN(Random Telegraph Noise)の原因となる複数の状態の存在を識別することが好ましい。
第5の展開形態の特性評価装置は、前記分析部が、前記グラフの縦軸と横軸の値が等しい箇所であって点が密集している箇所における測定値に基づいて、RTNの振幅を抽出することが好ましい。
第6の展開形態の特性評価装置は、前記分析部が、前記方形のパターンの内部に含まれる点の数が所定の基準値を超える場合には、前記測定値取得部における測定値のサンプリングの間隔を短くすることが好ましい。
第7の展開形態の特性評価装置は、前記分析部が、前記グラフに含まれる一部のデータ点を選択し、選択したデータ点に基づいて測定値を分析することが好ましい。
第8の展開形態の特性評価装置は、前記分析部が、前記一部のデータ点を、操作者の指示に基づいて選択することが好ましい。
第9の展開形態の特性評価方法は、上記第3の視点に係る特性評価方法であることが好ましい。
第10の展開形態の特性評価方法は、上記第4の視点に係る特性評価方法であることが好ましい。
第11の展開形態のプログラムは、上記第5の視点に係るプログラムであることが好ましい。
第12の展開形態のプログラムは、上記第6の視点に係るプログラムであることが好ましい。
(実施形態1)
次に、本発明の第1の実施形態に係る特性評価装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る特性評価装置10の構成を示すブロック図である。特性評価装置10は、測定値取得部11、グラフ生成部12、表示部13、入力部14及び分析部15を含む。
測定値取得部11は、N個のサンプリング時刻における測定値D(i=1、2、…、N)を取得する。測定値取得部11は、半導体デバイスの電気特性を測定し、その結果をデジタル値に変換する測定器としての機能を含んでいてもよい。一方、測定値取得部11は、すでに測定されたデータを任意の記憶装置から読み取ることによって測定データを取得するようにしてもよい。
グラフ生成部12は、取得した測定データに基づいて、時間差プロットを作成し、その結果を表示部13に表示する。時間差プロットの作成方法についは後述する。グラフ生成部12は、CPUとDRAMなどのメモリとを含む演算装置によって構成することができる。
表示部13は表示装置(例えば液晶ディスプレイ)であり、時間差プロットを表示する。操作者は、表示結果に基づいて、適宜情報を判別する。入力部14は、キーボード、マウス、タッチパネルのようなヒューマン・インターフェースにより構成され、上記した半導体デバイス評価装置の動作を制御するための情報(例えば、測定条件の設定、入力するデータ・ファイルの選択)を入力するために用いることができる。表示部13と入力部14は、タッチパネル機能付きディスプレイとして一体的に構成されていてもよい。
分析部15は、グラフ生成部12によって生成されたグラフを参照して、測定値に対する分析を行う。なお、分析部15による分析内容については、後述する。
図2は、本実施形態の特性評価装置10の動作を示すフローチャートである。まず、測定値取得部11は、N個のサンプリング時刻における測定値D(i=1、2、…、N)を取得する(ステップS11)。このような測定値は、一例として、市販の半導体パラメータ・アナライザなどの測定装置を用いて半導体デバイスの測定を実施することで得られる。測定値取得部11は、別途測定した上で記憶装置(例えばハードディスク、CD−R)に記録された測定結果を取り込むことで測定値を得るようにしてもよい。次に、グラフ生成部12は、取得した測定値を用いて、後述の時間差プロットを作成する(ステップS12)。次に、分析部15は、得られたグラフ(時間差プロット)に基づいて、測定データを分析する(ステップS13)。分析部15は、例えば、RTN信号の各状態、各状態に対応する測定値、測定の完全性(例えばサンプリング間隔の適否)を分析する。
図3は、時間差プロットの作成方法について説明するための図である。まず、測定値取得部11は、対象とする半導体デバイス(例えばMOSトランジスタ)の電流を(通常は一定の時間間隔で)繰り返し測定し、その値をアナログ−デジタル変換(AD変換)によってデジタル値として記憶装置(非図示)に記録する。これにより、半導体デバイスを流れた電流の測定値が離散的な時刻(サンプリング時刻)において記録される。
グラフ生成部12は、こうして得られた多数のサンプリング時刻における測定データ(第i番目の測定データをDとする。)を、縦軸を測定値、横軸をサンプリング時刻としたグラフ(電流対時刻プロット)上にプロットする。このとき、測定値(例えば電流)の時間変化をグラフ化することができる(図3(a)の黒丸参照)。かかる動作は、デジタル・オシロスコープの動作と同様である。なお、図3(a)においては、黒丸の間隔はまばらであるが、サンプリング点の間隔を十分細かくすることで滑らかな波形を求めることもできる。
グラフ生成部12は、上記のようにして得られたデータを、次のようにプロットすることで時間差プロットを生成する(図3(b))。図3(b)を参照すると、時間差プロットにおいては、グラフの縦軸と横軸はいずれも測定値である。まず、横軸値を第1番目の測定値D、縦軸値に第2番目の測定値Dとした点(すなわち座標(D、D))に点をプロットする。次に、横軸値を第2番目の測定値D、縦軸値に第3番目の測定値Dとした点(すなわち座標(D、D))に点をプロットする。以下同様にプロットを繰り返す。すなわち、プロットしたい全データの数をNとした場合に、i=1〜N−1において、横軸値を第i番目の測定値D、縦軸値を第i+1番目の測定値Di+1とした点(すなわち座標(D、Di+1))に点をプロットする。なお、横軸と縦軸は互いに直交し、各々の目盛りが等しい間隔で区切られていることが望ましい。縦軸と横軸とを入れ替える(すなわち縦軸値を第i番目の測定値D、横軸値を第i+1番目の測定値Di+1とした点をプロットする)ことは差し支えない。
図3(b)の点(1)は、図3(a)の測定値の組(1)に対するプロットである。図3(b)の点(2)〜(4)は、それぞれ図3(a)の組(2)〜(4)に対するプロットである。すなわち、時間差プロットにおける1個の点は、それぞれ2個の測定値に対応している。
図4は、単一のRTN信号のみが存在する場合の時間差プロットの例を示す。P型MOSトランジスタのソースと基板を0Vとし、ドレインに−0.05V、ゲートに−0.8Vの一定電圧を印加し、ドレインを流れる電流の時間変化を測定した。ドレイン電流値の測定(サンプリング)は、10μs間隔で32,000回行なった(N=32,000)。図4(a)は得られたデータの電流対時刻プロットであり、図4(b)は対応する時間差プロットである。
図4(b)を参照すると、横軸値と縦軸値が等しくなる線(斜め45度の破線)上に点が密集した領域(2箇所)が見られる。これらの密集した点群(状態0及び状態1とする)は、それぞれRTN信号における2つの状態(非捕獲状態及び捕獲状態)に対応し、各点群が位置する電流値(縦軸でも横軸でも同一の値である)は各RTNの状態における電流値に相当する。時間差プロットを用いると、横軸値と縦軸値が等しくなる線上の点の密集によって、そこにRTNの状態が存在することを容易に識別することができる。
図4(b)を参照すると、これら2つの密集点を頂点として含む方形上にも多くの点が存在している。これらの点のうちの左辺と上辺における点の存在は、状態1から状態0への遷移が発生したことを示している。一方、これらの点のうちの右辺と下辺における点の存在は、状態0から状態1への遷移が発生したことを示している。すなわち、分析部15は、このような方形のパターンを参照することにより、複数の状態間の遷移が存在することを識別することができる。
図4(b)を参照すると、方形の内部にも点(途中戻りとして表示)が存在している。これらの点は、状態1−>状態0−>状態1(ないし状態0−>状態1−>状態0)という遷移が起こったものの、状態0(ないし状態1)における滞在時間がサンプリングの時間間隔と比較して短いために、測定器が状態0(ないし状態1)における滞在を捉えきれなかったことを示している。かかる点が非常に多い場合には、分析部15は、測定値取得部11における測地値のサンプリング間隔を短くすることが好ましい。このようなサンプリング間隔の変更は、かかる点の数が所定の基準値(例えば全測定点数の0.1%など)を超えた場合に行なうようにすることができる。
図4のようにRTN信号が一つしかなく、単純で明確なRTN波形が観測される場合であれば、RTNの2つの状態を識別することは比較的容易である。しかし、現実には複雑な波形が観測される場合が多い。本実施形態の特性評価装置10による時間差プロットは、複雑な波形の判別において特に有効である。
図5は、波形が複雑である場合の例を示す。図5(a)の波形を参照すると、2つのRTN信号が加算されているようにも見えるものの、下向きに伸びるひげ状の短いパルスの高さは毎回異なっており一定値ではない。したがって、図5(a)のパルスがRTN信号であるのか否かは判然としない。
図5(b)は、図5(a)に対応する時間差プロットである。図5(b)を参照すると、2つの正方形が明瞭に観察され、4つの状態、状態00、状態01、状態10、状態11の存在が明確となる。ここで、状態xyのうちのxは第1のトラップの状態を表し、yは第2のトラップの状態を表す。また、状態0は非捕獲、状態1は捕獲状態に対応する。ただし、状態01と状態11における点の密度は低い。これは状態x1(x=0又は1)における滞在時間が測定器のサンプリング間隔と比較して短いからである。すなわち、図5(a)の測定においてはサンプリング間隔が長すぎるため、速いRTN信号を正確に捉えることができず、結果として高さが不安定なパルスが観測されていることが分かる。
以上の説明において、捕獲中心が非捕獲状態である場合の電流は、捕獲中心が捕獲状態である場合の電流よりも大きい場合を想定した。捕獲されるキャリアが電子か正孔かの違いによって、この大小関係が逆になる場合もある。かかる場合には、上記の説明を適宜読み替えればよい。
図5(a)において複雑な波形が観測されたのは、2つ原因によることが分かる。1つ目の原因は、2個のRTN信号が重なっていることである。2つ目の原因は、測定器のサンプリング間隔がRTNの滞在時間と比較して長すぎる(サンプリングが十分に速くない)ことである。時間差プロットを用いると、複数のRTN信号が加算されている場合においても、容易に複数の状態を識別することができる。また、測定器のサンプリング速度が不十分であるために生じた測定結果の不完全性を容易に判別することができる。測定結果が不完全であることが明らかとなった場合には、サンプリング間隔を短くして測定をやり直すといった対策を講じることができる。
図6は、図5(a)の測定データに対して、非特許文献2の方法を適用した結果を示す。非特許文献2の方法においても横軸と縦軸を測定値としたグラフが用いられる。しかし、本実施形態による時間差プロットでは座標(D、Di+1)に点をプロットするのに対して、非特許文献2の方法では座標(D、Di+N/2)に点をプロットする点で相違する。すなわち、非特許文献2の方法においては、N個のデータのうち前半のN/2個のデータを横軸に用い、残りのN/2個のデータを縦軸に用いる。したがって、横軸の測定値と縦軸の測定値とは時間的に離れており、両者の間の時間的相関は失われる。その結果、もとの信号波形に含まれる時間に関する情報はほとんど失われてしまう。図6を参照すると、横軸と縦軸の両方について、3つの値の周りに点が集中していることから、矢印で示した3つの状態の存在を確認することができる。しかしながら、非特許文献2の方法によると、本実施形態の特性評価装置10と異なり、4番目の状態を識別することができない。
本実施形態における時間差プロットでは、横軸と縦軸に時間の情報を含まない量が用いられるものの、時間的に近い隣接した測定値を用いてプロットが行なわれる。したがって、測定データに含まれていた時間に関する情報が残存している。したがって、特性評価装置10によると、RTNの原因となる複数の状態に関して、非特許文献2の方法よりも多くの状態を識別することができる。
本実施形態の特性評価装置10によると、RTN信号における複数の離散的な特性値を容易に識別することができる。また、特性評価装置10によると、複数のRTN信号が重なっている場合に、サンプリングされた多数の測定値データのうち、各RTN信号の2つの定常な状態に属するデータがいずれのデータであるかを容易に判別することができる。したがって、RTNの性質を正確に抽出することができる。さらに、特性評価装置10によると、測定器のサンプリング速度が不十分であることも判別することができる。
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係る特性評価装置について、図面を参照して説明する。本実施形態の特性評価装置は、第1の実施形態の特性評価装置(図1)と同様の構成に基づいて実現しうる。
図7は、本実施形態の特性評価装置の動作を示すフローチャートである。図7のステップS21及びS22は、それぞれ図2のステップS11及びS12と同様である。測定値取得部11は、N個のサンプリング時刻における測定値D(i=1、2、…、N)を取得する(ステップS21)。グラフ生成部12は、取得された測定データを元に時間差プロットを作成し、その結果を表示部13に表示する(ステップS22)。
次に、分析部15は、ステップS22で得られたグラフ(時間差プロット)において分析対象領域を決定する(ステップS23)。分析部15は、装置の操作者が入力部14を用いて指定した分析対象領域を入力するようにしてもよい。分析部15は、一例として、図8(a)の領域R1乃至R4を決定する。このとき、分析部15は、各領域がいずれのトラップにおけるいずれの状態(例えば捕獲又は非捕獲)に対応するかを同時に決定することが望ましい。
次に、分析部15は、各分析対象領域に属する測定値に対する分析を行う。分析部15は、例えば、各状態での電流値、各トラップによるRTN振幅、各トラップの各状態での滞在時間の統計分布、時定数を決定する(ステップS24)。分析部15は、以上により得られた分析結果を記録又は出力する(ステップS25)。分析結果は表示部13に表示され、記憶装置(非図示)に記録されるようにしてもよい。
上記の分析対象領域は、時間差プロットの横軸値と縦軸値が一致する直線に対して線対称な形状(前記直線と並行な辺を有する長方形、前記直線と並行な長軸又は短軸を有する楕円など)とするのが好ましい。このような形状は、前記の直線からの距離範囲と、電流値の範囲との2つの値によって指定することができ、図7のステップS23の実施が容易となるからである。
表示部13は、測定値対時間のグラフ(図4(a)、図5(a))と、対応する時間差プロットのグラフ(図4(b)、図5(b))を、同一の画面上に並べて表示することが好ましい。また、分析対象領域を指定した場合に、表示部13は、前記領域に属する測定値が測定値対時間のグラフ上で識別可能となるように表示することが好ましい。表示部13は、例えば、該当する測定値の表示点の色又は輝度を他の点とは異なるように表示するようにしてもよい。このとき、特性評価装置10の操作者は、指定した分析対象領域が意図した測定点を含んでいるか否かを判断することができる。
なお、図7のステップS23は操作者の判断によって行なうようにしてもよいし、分析部15がパターン認識を行なうことにより自動で行うようにしてもよい。
時間差プロットは、測定されたN個の測定値の中から特定のRTNの状態に対応する測定値を判別するために用いることができる。図8(a)において領域R1に含まれる点に相当する測定値(すなわち、R1に含まれる点の横軸値又は縦軸値の少なくともいずれか一方に相当する測定値。以下では、領域R1に属する測定値と呼ぶ。)は、状態00に属するものと判断することができる。
これらの測定値は、背景ノイズのために、ばらついている。時間差プロット上において、点が広がりを持って分布するのはこのためである。そこで、これら測定値を平均することによって状態00の真の(背景ノイズがないときの)電流値を推定するようにしてもよい。領域R2、R3、R4についても同様の処理を行なうことで、状態10、01、11に相当する電流値を決定することができる。こうして得られた状態00の電流値と状態10電流値との差を計算することで、第1のトラップによるRTNの振幅が得られる。また、状態00の電流値と状態01の電流値を計算することで、第2のトラップによるRTNの振幅が得られる。
各状態における滞在時間は、次のようにして決定することができる。領域R1又はR3に属する測定値は、第1のトラップが非捕獲の状態に相当する。したがって、領域R1又はR3に属する点が時間的に連続して何個存在するかを調べることによって、第1のトラップの非捕獲状態における滞在時間を求めることができる。図8(b)は、滞在時間を求める方法を説明するための模式図である。
図8(b)を参照すると、サンプリングされた測定値は黒丸で示されている。6つの黒丸は、すべて領域R1又はR3(状態00又は状態01)に属している。途中矢印で示した測定値は大きく変化しているが、これは第2のトラップの状態の変化により生じたものであって、このとき第1のトラップの状態は変化していない。したがって、図8(b)に示した6個の黒丸の期間において第1のトラップの状態は不変であり、第1のトラップは測定6回分の期間だけ非捕獲状態に滞在していることが分かる。このことから、第1のトラップの捕捉状態における滞在期間T1を算出することができる。
また、白丸で示したサンプリング時刻において、測定2回分の期間だけ、第1のトラップが非捕獲状態に滞在している。このことから、同様に、第1のトラップの非捕獲状態における滞在時間T2を算出することができる。以上の操作を繰り返すことにより、第1のトラップの非捕獲状態における滞在時間が統計的にどのように分布するかを調べることができる。なお、滞在時間は毎回異なっており、統計的にばらつく。
同様に、領域R2又はR4(状態10又は状態11)に属する点が時間的に連続していくつ存在するかを調べることによって、第1のトラップが捕獲状態に滞在する時間を求めることができる。また、領域R1又はR2(状態00又は状態10)に属する点が時間的に連続して何個存在するかを調べることによって、第2のトラップが非捕獲状態に滞在する時間を調べることができる。さらに、領域R3又はR4(状態01又は状態11)に属する点が時間的に連続して何個存在するかを調べることによって、第2のトラップが捕獲状態に滞在する時間を調べることができる。以上により、各トラップの各状態における滞在時間の統計的分布を調べることが可能である。
なお、RTNにおける滞在時間は、多くの場合において指数分布することが知られている。したがって、分析部15は、滞在時間の詳細な統計分布を得る代わりに、滞在時間の平均値(すなわち時定数)を決定するようにしてもよい。
上記の例において、領域R1に属する測定値と領域R2に属する測定値の間に遷移途中の測定値(領域R1、R2のいずれにも属さず、領域R3、R4にも属さない測定値)が含まれる可能性がある。このような遷移途中の測定値が所定の個数以下存在する場合であっても、上記の時間的な連続性は保たれているものとみなして滞在時間を決定するようにしてもよい。
以上の説明において、トラップの個数は2個としたが、トラップの個数が3個以上の場合においても、同様にしてRTNの性質を抽出することができる。
なお、特性評価装置10(図1)は、図2又は図7のフローチャートに示した各ステップを実行するよう指示するプログラムを、コンピュータ(自身が制御する測定装置に接続されたものであってもよい)に、組み込むことによって実現してもよい。
以上の記載は実施形態に基づいて行ったが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更を加えることができる。なお、本発明に係る特性評価装置は、例えば、半導体デバイスにおけるRTN現象の評価及び分析に用いることができる。
10 特性評価装置
11 測定値取得部
12 グラフ生成部
13 表示部
14 入力部
15 分析部

Claims (12)

  1. 測定値の時系列データを取得する測定値取得部と、
    前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成するグラフ生成部とを備えていることを特徴とする特性評価装置。
  2. サンプリングされたN個の測定値を取得する測定値取得部と、
    iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成するグラフ生成部とを備えていることを特徴とする特性評価装置。
  3. 前記グラフに基づいて前記測定値を分析する分析部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の特性評価装置。
  4. 前記時系列データは、半導体デバイスの電気的特性であって、
    前記分析部は、前記グラフに存在する方形のパターンに基づいて、RTN(Random Telegraph Noise)の原因となる複数の状態の存在を識別することを特徴とする、請求項3に記載の特性評価装置。
  5. 前記分析部は、前記グラフの縦軸と横軸の値が等しい箇所であって点が密集している箇所における測定値に基づいて、RTNの振幅を抽出することを特徴とする、請求項3又は4に記載の特性評価装置。
  6. 前記分析部は、前記方形のパターンの内部に含まれる点の数が所定の基準値を超える場合には、前記測定値取得部における測定値のサンプリングの間隔を短くすることを特徴とする、請求項5に記載の特性評価装置。
  7. 前記分析部は、前記グラフに含まれる一部のデータ点を選択し、選択したデータ点に基づいて測定値を分析することを特徴とする、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の特性評価装置。
  8. 前記分析部は、前記一部のデータ点を、操作者の指示に基づいて選択することを特徴とする、請求項7に記載の特性評価装置。
  9. コンピュータが、測定装置又は記憶装置から測定値の時系列データを取得する工程と、
    前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成する工程とを含むことを特徴とする特性評価方法。
  10. コンピュータが、サンプリングされたN個の測定値を取得する工程と、
    iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成する工程とを含むことを特徴とする特性評価方法。
  11. 測定装置又は記憶装置から測定値の時系列データを取得する処理と、
    前記時系列データに含まれる互いに前後するデータのうちの前者を一方の軸にとり、後者を他方の軸にとった2次元のグラフを生成する処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  12. サンプリングされたN個の測定値を取得する処理と、
    iを1〜N−1の整数とし、第i番目の測定値をD、第i+1番目の測定値をDi+1として、座標点(D、Di+1)に点をプロットしたグラフを生成する処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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