JP2011058535A - 圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バックアップロール13、14を備える圧延機10を用いて鋼板を圧延するに際し、軸受部21、22に循環供給する潤滑油を熱交換器33により冷却して予め設定した温度以下に調整する冷却方法であり、ゾンマーフェルト数を求める工程と、求めたゾンマーフェルト数を基にして、軸受部21、22の負荷面を通過する潤滑油量を求める工程、及び負荷面における摩擦発熱量を求める工程と、求めた潤滑油量及び摩擦発熱量を基にして、負荷面での潤滑油の油膜温度を求める工程と、負荷面での潤滑油の油膜厚さを求める工程と、熱交換器33での潤滑油の冷却温度を、油膜厚さを確保可能な潤滑油温度以上で、かつ、負荷面での潤滑油の油膜温度以下になるように調整する工程とを有する。
【選択図】図1
Description
従って、操業条件が変化する圧延中においても、常に最適な油膜厚みを維持するため、圧延中のロール軸と軸受との間に形成される油膜の厚みを検出する方法が必要となる。
これは、通常、Z・N/Pの値が大きくなれば、油膜厚さも大きくなることが知られていることから、上記Z・N/Pの変化に対して摩擦係数μがZ・N/P=2.5近傍で最小となることに基づき、粘度Zを操業上決定される軸受回転数Nと軸受荷重Pに応じて制御し、Z・N/Pを一定に保持することで、焼付の防止と動力損失の低減を図るものである。
一方で、特許文献3に記載のように、軸受内面の軸を支持するライニングの内部に、互いに深さを異ならせて複数の温度センサーを埋め込み、これらの温度センサーの温度測定データを解析装置にて解析し温度勾配を求め、その温度勾配を油膜の位置にあてはめて油膜の温度を把握する方法もある。
特許文献1の方法では、油膜厚さを一定に保持するために油膜温度を変化させるに際し、油膜温度が高くなり過ぎた場合、軸受メタルの許容上限温度を超え、この軸受メタルの機械的強度が低下し、焼付などのトラブルが起こる可能性があった。
また、特許文献2の方法も、油膜温度については把握することができず、この油膜温度が正常範囲から逸脱する際に、適切な処置をとることができないという問題点があった。
そして、特許文献3の方法では、ライニングと油膜の間の熱伝達係数が、油膜の動粘度、比熱、密度(いずれも油膜温度により変化する)に依存するため、ライニング内部の温度勾配から油膜温度を精度良く予測するには問題があった。また、ライニングに温度測定器を複数設置することは構造的に難しく、温度測定精度にも課題があった。
(1)軸受部に両側軸部が回転可能に支持されたバックアップロールを備える圧延機を用いて鋼板を圧延するに際し、前記両側軸部に取付けられた軸受内輪と、前記軸受部の滑り軸受との間に循環供給する潤滑油を、熱交換器により冷却して予め設定した温度以下に調整する潤滑油の冷却方法において、
前記軸受内輪と前記滑り軸受との潤滑の状態を示すゾンマーフェルト数Sを求めるゾンマーフェルト数算出工程と、
前記ゾンマーフェルト数算出工程で求めた前記ゾンマーフェルト数Sを基にして、前記軸受部の負荷面を通過する潤滑油量を求める負荷面油量算出工程と、
前記ゾンマーフェルト数算出工程で求めた前記ゾンマーフェルト数Sを基にして、前記負荷面における摩擦発熱量を求める負荷面発熱量算出工程と、
前記負荷面油量算出工程で求めた前記潤滑油量と、前記負荷面発熱量算出工程で求めた前記摩擦発熱量とを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜温度を求める負荷面油膜温度算出工程と、
前記負荷面での潤滑油の油膜厚さを求める油膜厚さ算出工程と、
前記熱交換器での潤滑油の冷却温度を、前記油膜厚さ算出工程で求めた油膜厚さを確保可能な潤滑油温度以上で、かつ、前記負荷面油膜温度算出工程で求めた前記負荷面での潤滑油の油膜温度以下になるように調整する潤滑油温度調整工程とを有することを特徴とする圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法。
前記負荷面油量算出工程では、前記ゾンマーフェルト数Sと、予め設定した前記軸受内輪の軸心と前記滑り軸受の軸心の偏心量ε、前記軸受内輪の半径r、及び前記軸受内輪の外周面長さBとを基にして、前記負荷面を通過する潤滑油量を求め、
前記負荷面発熱量算出工程では、前記ゾンマーフェルト数Sと、前記偏心量ε、前記外周面長さB、及び前記軸受内輪と前記滑り軸受の接触幅Lとを基にして、前記負荷面における摩擦発熱量を求め、
前記負荷面油膜温度算出工程では、前記潤滑油量と、前記摩擦発熱量と、前記潤滑油の密度及び比熱とを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜温度を求め、
前記油膜厚さ算出工程では、前記潤滑油の粘度、前記軸受内輪に掛かる面圧、及び前記バックアップロールの回転数Nを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜厚さを求めることを特徴とする(1)記載の圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法。
従って、潤滑油温度調整工程により、油膜温度と油膜厚さが許容範囲を逸脱した場合には、許容範囲内に戻るように、軸受内輪と滑り軸受けとの間に供給される潤滑油の冷却温度を制御することにより、焼付等の軸受トラブルの防止が図れ、圧延機の安定操業を実現できる。
まず、本発明の一実施の形態に係る圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法を適用する圧延機について説明する。
図1に示すように、圧延機10は、被圧延材である圧延する鋼板(図示しない)の厚み方向(上下方向)両側に配置されたワークロール11、12と、この対となるワークロール11、12を上下方向から挟み込みように配置された上下のバックアップロール13、14とを有している。この上下のバックアップロール(以下、上バックアップロール、下バックアップロールともいう)13、14の負荷面側(上バックアップロール13の上側、下バックアップロール14の下側)には、対となるバックアップロール13、14を挟み込みように、圧下力検出器(例えば、ロードセル)15、16が取付けられている。また、各バックアップロール13、14の軸端には、回転数検出器17、18が取付けられている。
軸受部21、22の上流側には、潤滑油タンク23内の潤滑油を軸受部21、22に供給するための給油本管24が、また、下流側には、軸受部21、22内の潤滑油を潤滑油タンク23内へ戻す戻り油本管25が、それぞれ配置されている。この各バックアップロール13、14の軸受部21、22と給油本管24とは、それぞれ給油支管26、27で接続され、各軸受部21、22と戻り油本管25とは、それぞれ戻り油支管28、29で接続されている。なお、各戻り油支管28、29には、各軸受部21、22から流出した直後の潤滑油の温度を検出するための温度計30、31が設けられている。
熱交換器33には、熱交バルブ(熱交換用バルブ)37が設けられた供給管38が接続され、熱交バルブ37の開度を調整部39により調整し、熱交換器33に供給する冷却水の流量を制御している。
以上の構成により、潤滑油タンク23内の潤滑油は、ポンプ32を介して熱交換器33に送られ、所定温度に冷却された後、途中にストレーナ34を設けた給油本管24、給油支管26、27を通って、上下のバックアップロール13、14の各々の軸受部21、22に供給される。また、各軸受部21、22から流出した潤滑油は、戻り油支管28、29と戻り油本管25を順次通って潤滑油タンク内23に戻る。
このように、潤滑油は循環使用される。
図2に示すように、軸受部21(軸受部22も同様)は、ハウジング(図示せず)に取付け固定された軸受箱41と、この軸受箱41の内側に設置されたホワイトメタル等の軸受材料からなる滑り軸受42と、上バックアップロール13の軸部19周囲に取付けられた軸受内輪(テーパースリーブともいう)43とを有している。なお、図2中の番号44は、軸受内輪43と滑り軸受42との間に形成された油膜である。
なお、上バックアップロール13の軸部19、20は、油膜44を介して軸受箱41で支えられているが、上バックアップロール13は上方向に圧延荷重を受けるため、リング状に形成された油膜44の上部(図2中の上部)が負荷面、油膜44の下部(図2中の下部)が反負荷面となる。また、下バックアップロール14では、上バックアップロール13とは逆に、油膜44の上部が反負荷面、油膜44の下部が負荷面となる。
また、hは負荷面における油膜44の厚さ、TfとQfは、それぞれ負荷面を通過する潤滑油の油膜温度と油量、Nは矢印方向に回転する軸部19の回転数、Wは圧下力(以下、圧延荷重ともいう)である。
そして、Cは軸心を合わせた状態での軸受内輪43と滑り軸受42との間隔を示すクリアランスである。なお、クリアランスCは、軸受内輪43と滑り軸受42の研削作業後、バックアップロール13をスタンド内に組み込んだ状態で、ゲージにて実測した値である。
更に、εは軸部19の中心(軸受内輪43の軸心)と滑り軸受42の中心との上下方向における偏心量(以下、偏心率ともいう)、rは上バックアップロール13の軸受内輪43の外周面の半径(軸受内輪43の軸心位置から外周面表面までの距離)、Bは軸受内輪43の外周面長さ(2πr)である。なお、図2のLは軸受内輪43と滑り軸受42の軸心方向の接触長(接触幅)である。
本実施の形態に係る圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法は、各軸受部21、22の負荷面における油膜44の厚さhと油膜温度Tfの両者が、予め設定した許容範囲を同時に満足することが可能な潤滑油の供給温度を算出し、これを基に熱交換器33の出側の潤滑油温度を調整する方法である。ここで、油膜温度Tfについては、直接の実測が困難であることから理論的に算出して、実測が可能な軸受部21、22からの排出油温Toutに対し、計算値と実測値の比較を行った上で、フィッティングパラメータ(例えば、負荷面における潤滑油の粘度や比熱等)を変化させ、収束計算を行うことで精度を高めるものとするものである。
以下、上バックアップロール13を用いて説明する。
まず、演算器40の負荷面油量算出部46で処理するゾンマーフェルト数算出工程について、図5を参照しながら説明する。
負荷面油量算出部46の粘度演算部49で、ワークロール11、12により鋼板を圧延している最中において、予め設定部50に設定した油膜温度Tinの設定値(例えば、80℃)と、予め求めて設定部50に設定している温度−粘度の関係テーブルから、油膜温度Tinにおける粘性Zを求める。この温度−粘度の関係テーブルを図6に示す。
これにより、鋼板の圧延中に供給した潤滑油の油膜温度Tinから潤滑油の粘度Zが求まる。
P=W/(2・r・L) ・・・(1)
これにより、バックアップロール13、14に掛かる圧延荷重Wから軸受内輪43に掛かる面圧が求まる。
S=(r/C)2・Z・N/P ・・・(2)
これにより、軸受内輪43と滑り軸受42との潤滑の状態を示すゾンマーフェルト数Sが求まる。
負荷面油量算出部46の無次元化油流量演算部54では、予め求めて設定部55に設定してあるゾンマーフェルト数Sと無次元化油流量f1(S)の関係テーブルと、ゾンマーフェルト数演算部53で求めたゾンマーフェルト数Sとから、無次元化油流量f1(S)を求める。なお、無次元化油流量とは、ゾンマーフェルト数Sのみで決まる油膜軸受固有の値を表わす。このゾンマーフェルト数Sと無次元化油流量f1(S)との関係テーブルを図7に示す。
また、負荷面油量算出部46の偏心率演算部56では、予め求めて設定部57に設定してあるゾンマーフェルト数Sと偏心率εの関係テーブルと、ゾンマーフェルト数演算部53で求めたゾンマーフェルト数Sとから、偏心率εを求める。このゾンマーフェルト数Sと偏心率εとの関係テーブルを図8に示す。
負荷面油量算出部46の軸受供給油流量演算部59は、無次元化油流量演算部54で求めた無次元化油流量f1(S)と、流量係数演算部58で求めた流量係数f3(ε)と、回転数検出器17で測定したバックアップロール13の回転数N、設定部52に設定したクリアランスC、上バックアップロール13の軸受内輪43の外周面の半径r、及び軸受内輪43と滑り軸受42の接触長Lとを基にして、予め設定している式(3)により、ロール軸受供給油流量Qinを求める。
Qin=f1(S)・r・C・N・L・f3(ε) ・・・(3)
Qf=Qin(1−Qs/Qin) ・・・(4)
これにより、ゾンマーフェルト数算出工程で求めたゾンマーフェルト数Sを基にして、軸受部21、22の負荷面を通過する潤滑油量Qfが求まる。
まず、負荷面発熱量算出部47の無次元化発熱量演算部62では、予め求めて設定部63に設定しているゾンマーフェルト数Sと無次元化発熱量f4(S)の関係テーブルと、ゾンマーフェルト数演算部53で求めたゾンマーフェルト数Sとを、各々入力して、無次元化発熱量f4(S)を求める。なお、無次元化発熱量とは、ゾンマーフェルト数Sのみで決まる油膜軸受固有の値を表わすものである。このゾンマーフェルト数Sと無次元化発熱量f4(S)との関係テーブルを図12に示す。
更に、負荷面発熱量算出部47の荷重係数演算部64は、予め求めて設定部63に設定している偏心率εと荷重係数f6(ε)の関係テーブルと、偏心率演算部56から入力した偏心率εとを、各々入力して、荷重係数f6(ε)を求める。この偏心率εと荷重係数f6(ε)との関係テーブルを図13に示す。
H=f4(S)・(W・N・C/105)・{f5(B/L)/f6(ε)} ・・・(5)
これにより、ゾンマーフェルト数算出工程で求めたゾンマーフェルト数Sを基にして、負荷面における摩擦発熱量が求まる。
また、負荷面発熱量算出部47の油の比熱演算部70は、設定部68から入力した使用潤滑油の温度−比熱の関係と、負荷面油膜温度演算部69からの油膜温度Tfとにより、軸受内輪43の負荷面における油膜の比熱Cpを求める。この使用潤滑油の温度−比熱の関係テーブルを図16に示す。
なお、負荷面油膜温度演算部69から、油の密度演算部67と油の比熱演算部70に出力する油膜温度Tfは、演算誤差判定部71での演算が収束した段階で行う。
演算誤差判定部71の軸受排出油温演算部72では、給油本管24に設けた流量計36で測定したロール軸受供給油流量Qinと、摩擦発熱量演算部65で求めた摩擦発熱量Hにより、式(6)から軸受排出油温計算値Tout(cal)が求まる。
Tout(cal)=H/(ρ・Cp・Qin) ・・・(6)
ここで、ρは油膜の密度、Cpは油膜の比熱であり、ρ、Cpともに標準状態(常温・常圧)の値(初期値)である。なお、ρとCpは図示しない設定部で入力する。
また、演算誤差判定部71の排出油温判定部73では、戻り油支管28に設けた温度計30で測定した軸受部21、22から流出した潤滑油の温度Tout(exp)、軸受排出油温演算部72で求めたTout(cal)、及び設定部74から許容差Xを、それぞれ入力し、このTout(exp)とTout(cal)の比較を行っている。
負荷面温度推定部48の負荷面油膜温度演算部69では、負荷面油量算出部46の負荷面通過油量演算部60から入力した負荷面通過油量Qfと、負荷面発熱量算出部47の摩擦発熱量演算部65から入力した摩擦発熱量H、油の密度演算部67から入力した負荷面における油膜の密度ρ、及び油の比熱演算部70から入力した負荷面における油膜の比熱Cp(ρ、Cpともに標準状態(常温・常圧)の値から温度補正により算出)とを基にして、予め設定した式(7)により、負荷面油膜温度Tfを算出する。
Tf=H/(ρ・Cp・Qf) ・・・(7)
これにより、負荷面油量算出工程で求めた潤滑油量Qfと、負荷面発熱量算出工程で求めた摩擦発熱量Hとを基にして、負荷面での潤滑油の油膜温度Tfが求まる。
負荷面温度推定部48の負荷面油膜上限温度演算部75では、負荷面油膜温度演算部69で算出した負荷面油膜温度Tfと、設定部76から上バックアップロール13の軸部19のブッシング許容温度Tmaxとを、それぞれ入力して、これを比較する。そして、負荷面の油膜温度Tfがブッシング許容温度Tmax未満(Tf<Tmax)となるように、軸受部21、22に供給する潤滑油の温度Tinを演算する(なお、ブッシング温度の許容下限温度は設定しない)。
h=C(1−ε) ・・・(8)
負荷面温度推定部48の負荷面油膜厚さ対応下限油温演算部78では、油膜温度と許容最小油膜厚さの関係テーブルと、負荷面油膜厚さ演算部77から入力した負荷面油膜厚さhと、予め設定部76に設定した許容最小油膜厚さhminとを、それぞれ入力する。そして、この負荷面油膜厚さhが許容最小油膜厚さhminを超える(許容最小油膜厚さ、例えば通常30μm程度を基準とする)ときの軸受部21、22に供給する潤滑油の温度Tinの範囲を、入力した図18から演算する。この図18は、油膜温度と許容最小油膜厚さの関係テーブルである。
これにより、負荷面での潤滑油の油膜厚さが求まる。
負荷面温度推定部48の熱交バルブ開度判定部81では、負荷面油膜上限温度演算部75、負荷面油膜厚さ対応下限油温演算部78、及び油膜強度対応下限油温演算部79の各々で求めた軸受部21、22に供給する潤滑油の温度Tinを、それぞれ入力する。そして、この負荷面油膜上限温度演算部75で求めた温度Tinの温度範囲:Tin<Tmax、負荷面油膜厚さ対応下限油温演算部78で求めた温度Tinの温度範囲:Tmin<Tin<Tmax、油膜強度対応下限油温演算部79で求めた温度Tinの温度範囲:Tmin<Tin<Tmaxの共通範囲の中間値を求めて、熱交バルブ開度判定部81へ出力する。
なお、以上に示した各行程は、繰り返し行う。
これにより、熱交換器33での潤滑油の冷却温度を、油膜厚さ算出工程で求めた油膜厚さを確保可能な潤滑油温度以上で、かつ、負荷面油膜温度算出工程で求めた負荷面での潤滑油の油膜温度以下になるように調整できる。
ここでは、前記実施の形態で算出した負荷面油膜温度の精度の検証について、以下に説明する。
まず、計算により求めた軸受内部発熱量と、軸受への供給油量から排出油温Toutを算出し、排出油温実測値との比較を行った。ここで、実測値近傍に計算値を合わせ込んだ排出油温計算値に対し、負荷面油膜温度Tfの計算値と軸受内部温度実測値(滑り軸受内部に直接シース熱電対を埋め込み測定)から予測した滑り軸受の表面温度(=油膜との境界面温度)を、図20のように比較すると、ほぼ正確に再現できていることが示される。なお、図20において、単位とは、圧延単位のことであり、単位1〜3とは、3つの圧延単位を意味している。ここで、1つの圧延単位の鋼板の枚数は、50〜120枚程度であるため、図20では、多数のプロット点が図示されている。
ここで、実線で示す油膜温度が最も高くなる条件(即ち、圧延速度大、圧延荷重大)で計算した結果は、実測値の上限付近をカバーできていることから、実測点と油膜との間の熱伝達抵抗による温度差の影響を考慮すると、予測精度が信頼できるものであることを確認できた。
従って、本発明により得られる負荷面油膜温度Tfの値を用いることで、前述した潤滑状態の管理を適切に実施することが可能であることを確認できた。
前記実施の形態においては、上バックアップロールの軸受部に供給する潤滑油の温度調整を行った場合について説明したが、これは上バックアップロールの負荷面の油膜温度が、下バックアップロールに比較して、許容温度以上に上昇し軸受焼損トラブルが多いためである。この原因は、上バックアップロールでは、負荷面が軸部の上部にあるのに対し、下バックアップロールでは、負荷面が軸部の下部にあることから、給油した潤滑油も、上バックアップロールの場合は反負荷面(軸受け下部)に集まり易く、下バックアップロールの場合は負荷面(軸受け下部)に集まり易いことによる。
この場合、下バックアップロールの軸端に回転数検出器を取付け、更に、戻り油支管に温度計を設け、ゾンマーフェルト数演算部と軸受供給油流量演算部にそれぞれ入力するバックアップロールの回転数Nを回転数検出器の測定値とし、摩擦発熱量演算部に入力する圧延荷重Wと回転数Nを各々圧下力検出器と回転数検出器で測定した値とし、更に、排出油温判定部に入力する戻り油支管内の潤滑油の温度Tout(exp)を温度計の値とし、上バックアップロールと同様に演算する。
Claims (2)
- 軸受部に両側軸部が回転可能に支持されたバックアップロールを備える圧延機を用いて鋼板を圧延するに際し、前記両側軸部に取付けられた軸受内輪と、前記軸受部の滑り軸受との間に循環供給する潤滑油を、熱交換器により冷却して予め設定した温度以下に調整する潤滑油の冷却方法において、
前記軸受内輪と前記滑り軸受との潤滑の状態を示すゾンマーフェルト数Sを求めるゾンマーフェルト数算出工程と、
前記ゾンマーフェルト数算出工程で求めた前記ゾンマーフェルト数Sを基にして、前記軸受部の負荷面を通過する潤滑油量を求める負荷面油量算出工程と、
前記ゾンマーフェルト数算出工程で求めた前記ゾンマーフェルト数Sを基にして、前記負荷面における摩擦発熱量を求める負荷面発熱量算出工程と、
前記負荷面油量算出工程で求めた前記潤滑油量と、前記負荷面発熱量算出工程で求めた前記摩擦発熱量とを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜温度を求める負荷面油膜温度算出工程と、
前記負荷面での潤滑油の油膜厚さを求める油膜厚さ算出工程と、
前記熱交換器での潤滑油の冷却温度を、前記油膜厚さ算出工程で求めた油膜厚さを確保可能な潤滑油温度以上で、かつ、前記負荷面油膜温度算出工程で求めた前記負荷面での潤滑油の油膜温度以下になるように調整する潤滑油温度調整工程とを有することを特徴とする圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法。 - 請求項1記載の圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法において、前記ゾンマーフェルト数算出工程では、前記鋼板の圧延中に供給した潤滑油の温度Tinから求めた潤滑油の粘度、前記バックアップロールに掛かる圧延荷重から求めた前記軸受内輪に掛かる面圧、前記バックアップロールの回転数N、前記軸受内輪と前記滑り軸受の間のクリアランスC、及び前記軸受内輪の半径rを基にして前記ゾンマーフェルト数Sを求め、
前記負荷面油量算出工程では、前記ゾンマーフェルト数Sと、予め設定した前記軸受内輪の軸心と前記滑り軸受の軸心の偏心量ε、前記軸受内輪の半径r、及び前記軸受内輪の外周面長さBとを基にして、前記負荷面を通過する潤滑油量を求め、
前記負荷面発熱量算出工程では、前記ゾンマーフェルト数Sと、前記偏心量ε、前記外周面長さB、及び前記軸受内輪と前記滑り軸受の接触幅Lとを基にして、前記負荷面における摩擦発熱量を求め、
前記負荷面油膜温度算出工程では、前記潤滑油量と、前記摩擦発熱量と、前記潤滑油の密度及び比熱とを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜温度を求め、
前記油膜厚さ算出工程では、前記潤滑油の粘度、前記軸受内輪に掛かる面圧、及び前記バックアップロールの回転数Nを基にして、前記負荷面での潤滑油の油膜厚さを求めることを特徴とする圧延ロール軸受部に供給する潤滑油の冷却方法。
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