JP2011056655A - 工作機械、その工作機械の熱流入量および温度分布を近似する方法ならびにその方法のためのプログラム - Google Patents

工作機械、その工作機械の熱流入量および温度分布を近似する方法ならびにその方法のためのプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】複雑構造を有する複合工作機械の熱変位補正の高精度化を図るため,工作機械機体の熱源熱量に基づいた熱変位補正式を構築し,その補正式による熱変位量補正方法を提供する。
【解決手段】被測定構造体の温度測定部における温度上昇量の測定結果から逆解析手法を用いて工作機械機体の熱源熱量を推定する手段と,その推定熱源熱量から工作機械機体の温度上昇分布を計算する手段と,工作機械機体の温度上昇分布から工作機械機体の熱変形を計算する手段と,工作機械機体の熱変位量と熱源熱量の関係に基づいて熱変位補正式を構築する手段とを有することを特徴とする工作機械であって,工作機械機体の構造を反映した熱変位補正式の構築が可能であり,工作機械機体の熱変位を高精度に補正することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、工作機械、その工作機械の熱流入量および温度分布を近似する方法ならびにその方法のためのプログラムに関する。
工作機械の駆動系において、多軸化、複合化に伴って工作機械構造は複雑化し、工作機械の高精度化・高能率化の妨げの一つとなっている熱変位の問題は機械の使用現場において近年ますます顕著な問題になっている。
従来の工作機械の熱変位補正法においては特許文献1〜7、非特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1では工作機械の各部に配置された複数の温度測定手段の出力に基づいてニューラルネットワークの学習機能を利用して、工作機械における熱変位を高精度に補正する方法が、記載されている。特許文献2および非特許文献1では検出器を用いることなく工作機械の駆動系の熱変位誤差を補正する方法が、記載されている。特許文献3および特許文献5では、温度変化を考慮した熱変位補正方法を記載している。また、特許文献4ではニューラルネットワークの逆解法により強制温調の最適な目標温度を求め、工作機械の熱変形を高度に抑制する新しい方法を提示している。また特許文献6では工作機械の構造物の温度分布を考慮し、機械の位置情報、工具の刃先位置又はワーク位置情報に基づいて熱変位量を推定する熱変位補正方法を記載している。さらに特許文献7では、機械本体の複数個所の温度測定に基づいて加工点における熱的な変位量を推定する熱変位補正方法を記載している。
特開平6−8101号公報 特開平7−299701号公報 特開2000−135653号公報 特開2001−138175号公報 特開2003−94290号公報 特開2006−281420号公報 特開2007−167966号公報
堀三計、西脇信彦、石富克也、工作機械の熱変形量推定に関する研究、日本機械学会論文集(C編)、63、608(1997)、pp.1391−1396.
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、特許文献1において、この方法では温度測定手段の出力に対応する工作機械の熱変位量の予測のためのデータテーブルが必要であり、全ての温度測定値に対応できるデータを予め準備することは困難である。
第二に、特許文献2および非特許文献1においては駆動系を含む熱分布モデルを数値シミュレーション上で形成しその熱分布モデルに供給される発熱量を推定することによって、熱変位の補正値を得ているため、熱分布モデルに供給される発熱量が推定できない場合は熱変位の補正値は得られない。また、熱分布モデルに供給される発熱量の推定手段も示されていない。
第三に、特許文献3においては駆動機構の駆動状況に応じた最大熱変位量の特性をあらかじめ求めて記憶手段に記憶させる必要があるため、複雑な熱源分布になる多軸制御工作機械の熱変位補正法としては十分な精度を得られるとは限らない。
第四に、特許文献4、特許文献6、特許文献7のいずれの方法も温度と工作機械の一対一の関係に着目した方法であり、複雑構造を有する多軸制御工作機械の熱変形を十分な精度で推定できるとは限らない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、工作機械の熱分布モデルに供給される熱流入量の効率よい推定を可能にし、その推定された熱流入量に基づいた熱変位補正を可能にする技術を提供することを目的とする。
本発明によれば、複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させてその被削材を所定形状に加工する工作機械であって、上記工作機械に設けられている温度測定部と、上記工作機械における熱流入領域を設定する熱流入領域設定部と、上記熱流入領域における熱流入量を仮定する熱流入量仮定部と、上記熱流入量仮定部によって仮定された熱流入量に基づいて、上記工作機械の温度分布を推定する温度分布推定部と、上記温度測定部による温度検出値と、上記温度分布推定部によって推定された温度分布のうち上記温度測定部に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように、上記熱流入量仮定部に上記熱流入量を別の値に再仮定させて、上記熱流入量仮定部および上記分布推定部に繰り返し計算をさせる対比・ギャップ解析部と、上記返し計算の結果を基にして、上記熱流入領域における近似熱流入量および上記機械の近似温度分布を算出する近似データ算出部と、を備える、工作機械が提供される。
この構成によれば、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように上記熱流入量仮定部に上記熱流入量を別の値に再仮定させて、上記熱流入量仮定部および上記温度分布推定部に繰り返し計算をさせることで、上記温度推定値が上記温度検出値に近くなるような近似熱流入量を探索することができる。そのため、本発明の工作機械を用いれば、このようにして求めた近似熱流入量に基づいて、上記工作機械のモデルデータにその近似熱流入量を適用して、上記工作機械における熱変位データを推定することができ、その熱変位データに基づいて精度のよい熱変位補正を行うことが可能になる。
なお、上記の装置は本発明の一態様であり、本発明の装置は、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明の方法、システム、コンピュータプログラム、記録媒体なども、同様の構成を有する。
本発明によれば、工作機械の熱分布モデルに供給される熱流入量の効率よい推定が可能になるので、その推定された熱流入量に基づいた熱変位補正が可能になる。
実施形態に係る多軸制御工作機械の構造例を説明するための斜視図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械の駆動機構のクロススライドモデルについて説明するための斜視図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械の熱変位補正法の概念について説明するための概念図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械のクロススライドモデルの駆動機構における周縁部におけるデータロガー(温度センサ)の設置場所を示した図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械の構成を説明するための機能ブロック図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械の一部の構成を詳しく説明するための拡大された機能ブロック図である。 実施形態に係る多軸制御工作機械の動作について説明するためのフローチャートである。 実施例1の実験目的を表した実験概念図である。 実施例1で用いた多軸制御工作機械のクロススライドモデルの駆動機構における周縁部における温度センサの温度測定結果を図示したグラフである。 実施例1で用いた多軸制御工作機械のクロススライドモデルの駆動機構において、温度センサの温度測定結果から逆解析によって算出した最適条件の熱源分布に基づいて推定された、クロススライドモデルの駆動機構の温度分布データを図示した3D解析図である。 実施例2に係る、工作機械機体に流入する熱量の推定アルゴリズムである。 実施例2に係る、クロススライドモデルとその温度上昇評価点である。 実施例2に係る、クロススライドモデルの温度上昇解析に用いたクロススライドモデルの物性値を示す。 実施例2に係る、クロススライドモデルの温度上昇測定結果を示す。 実施例2に係る、クロススライドモデルの流入熱量の推定の境界条件を示す。 実施例2に係る、熱源候補領域を示す。 実施例2に係る、最適解における流入熱量を示す。 実施例2に係る、温度上昇量の測定結果と最適解における温度上昇量の相関を示す。 実施例2に係る、熱流入量の推定精度の検討に用いた温度評価点を示す。 実施例2に係る、温度評価点の数が熱流入量の推定結果に及ぼす影響を示す。 実施例2に係る、熱流入量の推定精度の検討に用いた熱源候補を示す。 実施例2に係る、熱源候補数が熱流入量の推定結果に及ぼす影響を示す。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
〈本発明のもとになったアイデア〉
図1は、本実施形態に係る複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させてその被削材を所定形状に加工する工作機械の構造例を説明するための斜視図である。左右に工作物を回転させる主軸が設定設置されており、特に刃物台211はXYZ軸方向への3軸に加えて傾斜加工ができるよう旋回軸が備わり、多軸制御加工が可能となっている。
図2は、実施形態に係る多軸制御工作機械の駆動機構のクロススライドモデルである傾斜支持体について説明するための斜視図である。ここで、本実施形態のクロススライド200は、工作機械のベッド212(図1中に図示)に載せて使用する構成部品であり、ベッド212上のスライドウェイ(不図示)上に沿って前後に移動するサドルの一種である。
そして、図示するように、クロススライドの傾斜面205には、平行して2本の往復スライドウェイ207a、207bが設けられている。この往復スライドウェイ207a、207b上には、被削材を加工するための切削工具を保持する刃物台211(図1中に図示)が設置される。また、この刃物台211は,往復スライドウェイ207a、207bに沿って斜め方向(制限されたYZ軸方向)に移動可能に構成されている。そのため、刃物台211(図1に図示)は、すでに説明したベッド212(図1に図示)に対する前後左右方向(XY軸方向)の移動と、この刃物台のクロススライド200に対する斜め方向(制限されたYZ軸方向)の移動と、の組み合わせによって、結局のところ、立体空間におけるXYZ軸方向に自由自在に移動可能に構成されていることになるのである。
図3は実施形態に係る多軸制御工作機械の熱変位補正法の概念について説明するための概念図である。この多軸制御工作機械の熱変位補正法では、まず、工作機械の構成部品の外表面(例えば,傾斜支持体200の外表面)のうち、この工作機械のオペレータが自らの経験に基づいて発熱源となる可能性の高い場所(例えば、摺動部または回転軸など)に熱源候補領域を設定する。続いて、被測定構造体である工作機械の構成部品の外表面(例えば、傾斜支持体200の外表面)のうち、その外表面の周縁部に設けられている温度測定部によって温度上昇の測定を行う。次いで、その被測定構造体の温度上昇の測定から得られた温度上昇履歴から逆解析により熱源候補領域への熱流入量を算出する。そして、この熱流入量に基づいて被測定構造体であるクロススライドモデルを備える工作機械の熱変位データを推定する。被測定構造体であるクロススライドモデルを備える工作機械において、幾つかの駆動パターンについてこのような一連の作業を行えば、熱流入量に基づいて発生する熱変位を補正するための熱変位補正式の確立が行える。最終的には、このようにして被測定構造体であるクロススライドモデルを備える工作機械ごとに特有の確立された式により各熱源への熱流入量を考慮した熱変位量の推定を行い、熱変位量に基づく熱変位を補正することが可能となる。
そのため、この多軸制御工作機械の熱変位補正法によれば、工作機械の分野では従来から望まれていながら実現が困難であった以下のようなことが可能になる。すなわち、まず、被削材の最終形状をCADデータとしてインプットし、コンピュータにより工作機械駆動パターンを算出する。算出された駆動パターンでは、例えば、軸の回転数がa回転/分、レールのストロークをb回/分と規定されているとすると、流入熱量はQ1=cJ/分、Q2=dJ/分などと、あらかじめコンピュータに格納されたデータテーブルを用いた変換で流入熱量が推定される。そして、すでに、熱流入量に基づいて発生する熱変位を補正するための熱変位補正式の確立が行えていれば、このようにして推定された流入熱量から熱変位量Δdが求められ、この熱変位量Δdに基づく補正を行うことによって高精度の加工がなされるものである。
図4は実施形態に係る多軸制御工作機械のクロススライドモデルの周縁部に設置したデータロガー(温度センサ)の設置場所の一例を示した図である。この図では、後述する実施例で行った実験におけるデータロガー(温度センサ)の設置場所を例として示している。なお、上記の説明では、被測定構造体である工作機械の構成部品の外表面(例えば、傾斜支持体200の外表面)のうち、その外表面の周縁部に温度測定部を設けるとしたが、この図では、温度測定部としてデータロガー(温度センサ)を設定している。そして、設置にあたって断熱パテにより外気を遮断し、クロススライドモデルの表面温度を計測可能な状態にされている。この図では、これらデータロガーの設置数は15としている。
〈実施形態1〉
図5は、上記のアイデアがもとになって発明された、実施形態に係る多軸制御工作機械の構成を説明するための機能ブロック図である。この多軸制御工作機械1000は、複数の駆動機構300によって工具と被削材を相対運動させてその被削材を所定形状に加工する工作機械1000である。この工作機械1000は、全体として、被測定構造体の温度分布を測定する温度測定部201と、そのようにして測定された温度分布に基づいて熱変位補正データを算出する熱変位補正装置100と、そのようにして導き出された熱変位補正データに基づいて駆動パターンに補正を加える複数の駆動機構300と、を備える工作機械である。
まず、この工作機械1000を構成する温度測定部201について以下説明する。この多軸制御工作機械1000には、被測定構造体200の外表面の周縁部における温度を測定するための温度測定部201が設けられている。この温度測定部201には、被測定構造体200の外表面の周縁部に密着させられて、その表面温度を測定・記録するデータロガーとして働く温度センサが含まれている。また、この温度測定部201には、これらの温度センサが測定・記録した温度データに対応する電気信号を受け取って、コンピュータが解読可能な形式の温度データに変換して、熱変位補正装置100に伝達する温度データ変換器204が含まれている。この温度測定部201は、このような構成を有しているため、被測定構造体200が多軸制御工作機械により加工を受け、熱が流入し、温度が上昇すると、これをデータロガーである温度センサにより温度を測定し、温度データ変換器204を介して温度データが熱変位補正装置100に受け渡される。そして、熱変位補正装置100では、温度データ変換器204を介して温度データ受付部によって取得される。こうして取得された温度データは、温度データ記憶部110に格納される。
次に、この工作機械1000を構成する熱変位補正装置100について以下説明する。この熱変位補正装置100には、この工作機械の発熱源から熱流束が流入してくる熱流入領域を設定するための熱流入領域設定部(図5では熱源候補領域の設定受付部104に対応)が設けられている。なお、熱源候補領域の設定受付部104は、操作者によりキーボードなどの入力部102を介して入力された熱源候補領域のデータを受け取ってもよく、あるいは、ネットワーク112、サーバ114などから呼び出されたあらかじめ設定された熱源候補領域に関するデータを読み込んでもよい。こうして受け付けられたデータは後述する被測定構造体モデルデータ生成部120に受け渡される。
また、この熱変位補正装置100には、被測定構造体の立体構造・物性・温度測定位置・熱源候補領域についての各種情報を組み合わせて、コンピュータによる各種3Dシミュレーションの対象として用いる際に適したデータとなるように、被測定構造体モデルデータを生成する被測定構造体モデルデータ生成部120が設けられている。また、この熱変位補正装置100には、この被測定構造体モデルデータ生成部120に、これらの各種情報を外部から入手して受け渡すために、外部から熱源候補領域の設定条件を受け付ける熱源候補領域の設定受付部104、被測定構造体に設置された温度センサの位置情報を受け付ける温度測定位置データ受付部116、被測定構造体の立体構造および材料物性に関するデータを受け付ける被測定構造体の構造・物性データ受付部118も設けられている。そして、これらの熱源候補領域の設定受付部104、温度測定位置データ受付部116、被測定構造体の構造・物性データ受付部118を介して外部から取得された被測定構造体の立体構造・物性・温度測定位置・熱源候補領域についての各種情報は、被測定構造体モデルデータ生成部120に集約され、これらのデータを互いに組み合わせて、コンピュータによる各種3Dシミュレーションの対象として用いる際に適したデータとなるように、被測定構造体モデルデータが生成される。そして、このように生成された被測定構造体モデルデータは被測定構造体モデルデータ記憶部122に記憶される。
また、この熱変位補正装置100には、熱流入領域における熱流入量を仮定する熱流入量仮定部(図5では熱流入量仮定データ生成部124に対応)が設けられている。この熱流入量仮定データ生成部124は、上述した被測定構造体モデルデータ記憶部122に記憶された被測定構造体モデルデータを読み出し、その被測定構造体モデルデータに、所定のルールに基づいて仮定される熱流入量を熱源候補領域のデータにひも付けしたうえで書き込む。このようにして、所定のルールに基づいて仮定された熱流入量が書き込まれた被測定構造体モデルデータは、後述する熱分布データ計算部126に受け渡される。
この熱変位補正装置100には、上述したように熱流入量仮定部によって仮定された熱流入量に基づいて、工作機械の温度分布を推定する温度分布推定部(図5では熱分布データ計算部126に対応)が、設けられている。熱分布データ計算部126は熱流入量仮定データ生成部124より所定のルールに基づいて仮定された熱流入量が書き込まれた被測定構造体モデルデータを受け取り、その仮定された熱流入量の場合には、所定の時間経過後に被測定構造体の熱分布がどのようになるのか有限要素解析法などの計算アルゴリズムを用いて計算して、被測定構造体の熱分布データを推定する。こうして推定された熱分布データは、熱分布データ記憶部128に格納される。
この熱変位補正装置100には、温度データ記憶部110に格納されている温度センサによって検出された被測定構造体の複数の温度測定位置における温度検出値と、熱分布データ記憶部128に格納されている被測定構造体のモデルデータにおける上記の温度測定位置に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように後述するように解析を行う対比・ギャップ解析部130が設けられている。すなわち、この対比・ギャップ解析部130は、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように、すでに説明した熱流入量仮定データ生成部124に対して熱流入量を所定のルールに基づいて別の値に再仮定させるように指示する信号を伝達する。すると、このような信号を伝達された熱流入量仮定データ生成部124は、所定のルールに基づいて別の値に再仮定された熱流入量仮定データを生成して熱分布データ計算部126に伝達することになる。一方、この対比・ギャップ解析部130は、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に、これまで説明した各種計算をさらに繰り返し計算させる信号をあわせて伝達する。そのため、その信号を伝達された熱分布データ計算部126は、熱流入量仮定データ生成部124から受け取った別の値に再仮定された熱流入量仮定データに基づいて、その別の値に再仮定された熱流入量の場合には、所定の時間経過後に被測定構造体の熱分布がどのようになるのか有限要素解析法などの計算アルゴリズムを用いて計算して、再び被測定構造体の熱分布データを推定する。こうして推定された熱分布データは、熱分布データ記憶部128に格納される。その後は、このような計算が、温度検出値および温度推定値の間のギャップが小さくなるように繰り返されていく。
さらに、この熱変位補正装置100には、繰り返し計算判定部132が設けられている。この繰り返し計算判定部132は、対比・ギャップ解析部130の指示によって、温度検出値および温度推定値の間のギャップが小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126によって繰り返される計算結果を対比・ギャップ解析部130を介して毎回受け取るようになっている。そして、この繰り返し計算判定部132は、そのギャップが十分小さくなるなどして、繰り返し計算の終了判定が所定のルールに基づいて可となった場合、その終了判定を指示する信号を、後述する近似熱流入量・熱分布データ決定部134に伝達する。一方、この繰り返し計算の終了判定が不可となった場合には、そのまま熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126は計算を繰り返し続けることになる。
この熱変位補正装置100には、近似データ算出部(図5では近似熱流入量・熱分布データ決定部134に対応)が設けられている。この近似熱流入量・熱分布データ決定部134は、繰り返し計算判定部132から終了判定を指示する信号を受け取ると、繰り返し計算の結果を基にして、もっとも上記のギャップが小さい熱流入領域における近似熱流入量および工作機械の近似温度分布の組み合わせデータからなる近似熱流入量・熱分布データを算出する。そして、こうして算出された近似熱流入量・熱分布データは、近似熱流入量・熱分布データ記憶部136に格納される。
そして、この熱変位補正装置100には、熱変位補正データ生成部139が設けられている。この熱変位補正データ生成部139は、近似熱流入量・熱分布データ記憶部136から取得する近似熱流入量・熱分布データを基にして、被測定構造体の立体構造の各位置ごとに導き出される熱変位量を打ち消すために必要な熱変位補正量を演算し、その熱変位補正量を被測定構造体の立体構造の各位置にひも付けして書き込んだ熱変位補正データを生成する。そして、このようにして得られた熱変位補正データは、熱変位補正装置100の出力部138を介して、熱変位補正装置100の外部にある多軸制御工作機械の駆動機構に出力され、被削材の加工精度向上のために用いられる。あるいは、このようにして得られた熱変位補正データは、熱変位補正装置100の出力部138を介して、熱変位補正装置100の外部にあるサーバ116、ネットワーク142、プリンタ140などに出力されて、操作者によって画面上の画像データまたは紙上の印字として目視されてもよい。
図6は実施形態に係る多軸制御工作機械の一部の構成を詳しく説明するための拡大された機能ブロック図である。まず熱分布データ記憶部128および温度データ記憶部110のデータが対比・ギャップ計算部130に受け渡される。対比・ギャップ解析部130においては、差分データ計算部302により計算されたデータを残差最小二乗和計算部304により最小二乗和が計算され、繰り返し計算判定部132に渡される。繰り返し計算判定部132においては閾値記憶部308に記憶されたデータを基に最小二乗和・閾値大小判定部306において最小二乗和と閾値の大小の判定が行われる。この繰り返し計算判定部132は、対比・ギャップ解析部130の指示によって、温度検出値および温度推定値の間のギャップが小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126によって繰り返される計算結果を対比・ギャップ解析部130を介して毎回受け取るようになっている。そして、この繰り返し計算判定部132は、そのギャップが十分小さくなるなどして、繰り返し計算の終了判定が所定のルールに基づいて可となった場合、その終了判定を指示する信号を、後述する近似熱流入量・熱分布データ決定部134に伝達する。一方、この繰り返し計算の終了判定が不可となった場合には、そのまま熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126は計算を繰り返し続けることになる。
図6に図示するように、対比・ギャップ解析部130には、互いに対応するデータ同士を付き合わせて差分を求める差分データ計算部302と、差分データ計算部302で得られた複数項の差分の最小二乗和を計算する残差最小二乗和計算部304とが設けられている。
この対比・ギャップ計算部130には、図示するように、外部の温度データ記憶部110および熱分布データ記憶部128のデータが受け渡される。すると、対比・ギャップ解析部130においては、温度データ記憶部110および熱分布データ記憶部128から取得した互いに対応するデータ同士が、差分データ計算部302によって付き合わされて各項目毎に差分を抽出される。こうして抽出された差分データは、差分データ計算部302から残差最小二乗和計算部304に受け渡されて、得られた複数項の差分の最小二乗和が計算される。そして、得られた最小二乗和に関するデータは、繰り返し計算判定部132に渡される。
繰り返し計算判定部132には、繰り返し計算を継続するか否かの判定に用いるための上記の最小二乗和の閾値を格納する閾値記憶部308と、その閾値記憶部308から取得した閾値を用いて、上記の最小二乗和およびその閾値の間の大小を判定する最小二乗和・閾値大小判定部306とが設けられている。すなわち、繰り返し計算判定部132においては、閾値記憶部308に記憶されたデータを基に、最小二乗和・閾値大小判定部306で、残差最小二乗和計算部304から取得した最小二乗和と閾値記憶部308から呼び出された閾値との大小の判定が行われる。そして、こうして得られた最小二乗和・閾値大小判定部306の判定結果は、総合判定部318に渡される。
また、この繰り返し計算判定部132には、繰り返し計算にかかった計算時間を計測する時刻計算部314と、これらの繰り返し計算を行った計算回数をカウントする回数計算部316と、これらの計算時間および計算回数についてあらかじめ設定された上限を格納している上限値記憶部312と、が設けられている。また、この繰り返し計算判定部132には、これらの時刻計算部314および回数計算部316から取得した計算時間・計算回数と、上限値記憶部312から取得した計算時間および計算回数の上限値とを比較して、それらの大小を判定する時刻・回数上限到達判定部310が設けられている。すなわち繰り返し計算判定部132においては、上限値記憶部312に記憶されたデータを基に、時刻・回数上限到達判定部310で、これらの時刻計算部314および回数計算部316から取得した計算時間・計算回数と、上限値記憶部312から取得した計算時間および計算回数の上限値との大小の判定が行われる。そして、こうして得られた時刻・回数上限到達判定部310の判定結果は、総合判定部318に渡される。
また、この繰り返し計算判定部132には、これらの最小二乗和・閾値大小判定部306の判定結果および時刻・回数上限到達判定部310の判定結果を取得して、これらの判定結果を総合的に判断して、さらに繰り返し計算を行うべきかどうか判定する総合判定部318が設けられている。例えば、この総合判定部318では、上記の最小二乗和・閾値大小判定部306の判定結果および上記の時刻・回数上限到達判定部310の判定結果を取得して、これらの判定結果がいずれも繰り返し計算を終了する必要がないという判定結果であれば、総合判定部318としても、同様に繰り返し計算を終了する必要がないという総合判定結果(継続判定結果)を下すことになる。そして、この継続判定結果は、総合判定部318から熱流入量仮定データ生成部124へ伝達される。すると、熱流入量仮定データ生成部124は、すでに説明したように、所定のルールに基づいて別の値に再仮定された熱流入量仮定データを生成して熱分布データ計算部126に伝達し、その後は上述の繰り返し計算が続けられることになる。
一方、これらの判定結果のうち少なくとも一つが繰り返し計算を終了すべきであるという判定結果であれば、総合判定部318は、繰り返し計算を終了すべきであるという総合判定結果(終了判定結果)を下すことになる。そして、この終了判定結果は、近似熱流入量・熱分布データ決定部134へ伝達される。すると、近似熱流入量・熱分布データ決定部134は、すでに説明したように、繰り返し計算の結果を基にして、もっとも上記のギャップが小さい熱流入領域における近似熱流入量および工作機械の近似温度分布の組み合わせデータからなる近似熱流入量・熱分布データを算出する。
以下、本実施形態に係る多軸制御工作機械の動作について説明する。図7は本実施形態に係る多軸制御工作機械の動作について説明するためのフローチャートである。この工作機械1000に設けられている熱変位補正装置100を用いて、熱変位補正を行う際には、以下のような動作の手順が実行される。
すなわち、この熱変位補正装置100の電源をONにするなどして、一連の動作をスタートさせると、この熱変位補正装置100に付属する液晶画面などに、この工作機械1000の操作者に対して、自らの過去の経験に基づいてこの工作機械の立体構造のうち熱源となる可能性の高い領域を熱源候補領域として設定することを促す画面が表示される。すると、この工作機械の操作者は、この熱変位補正装置100に付属する入力装置などを用いて自らの過去の経験に基づいてこの工作機械1000の立体構造のうち熱源となる可能性の高い領域を熱源候補領域として設定することになる(ステップS101)。このように、熱源となっている可能性が低い箇所を熱源候補領域に設定すると、熱流入量の推定精度を悪化させる場合がある。従って、最大の熱源に比べて発熱量が極端に小さい(例えば、1/20以下)と予測される箇所については、熱源候補領域に設定しないことが好ましい。また、1つの熱源での発熱量がそれ以外の熱源での発熱量よりも極端に大きい(例えば二番目に発熱量が大きい熱源の10倍以上)の場合には、熱源候補領域の数は7個以下が好ましい。この場合、熱流入量の推定精度が高くなるからである。
また、この熱源候補領域の設定とは別に、この熱変位補正装置100に付属する液晶画面などに、この工作機械1000の操作者に対して、この工作機械1000の立体構造のうち温度センサが設置されている領域を温度測定位置として設定することを促す画面が表示される。すると、この工作機械の操作者は、この熱変位補正装置100に付属する入力装置などを用いて温度センサが設置されている領域を温度測定位置として設定することになる。あるいは、この温度センサが設置されている領域が毎回固定された領域なのであれば、この熱変位補正装置100は、上記の画面表示の代わりに、あらかじめ用意された温度センサが設置されている領域を記録したデータテーブルなどを読み出してもよい。いずれにしても、このようにして、温度測定位置のデータが入力される(ステップS102)。工作機械に設置されている全ての温度測定部201の位置を温度測定位置(温度評価点)として設定してもよいが、計算量を減少させるために、温度測定部201の一部のみを温度測定位置として設定してもよい。1つの熱源での発熱量がそれ以外の熱源での発熱よりも極端に大きい(例えば,二番目に発熱量が大きい熱源の10倍以上)の場合には、温度測定位置の数は4以上が好ましい。温度測定位置の数が4以上の場合に、熱流入量の推定精度が高くなることが実験から明らかになったからである。なお、発熱量の大きい熱源が複数存在している場合にも、温度測定位置の数は4つ以上であるであることが好ましいと考えられる。
これらの熱源候補領域の設定、温度測定位置のデータ入力とは別に、この熱変位補正装置100に付属する液晶画面などに、この工作機械1000の操作者に対して、この工作機械1000の立体構造データおよび材料物性データを入力することを促す画面が表示される。すると、この工作機械の操作者は、この熱変位補正装置100に付属する入力装置などを用いてこの工作機械1000の立体構造データおよび材料物性データを入力することになる。あるいは、この工作機械1000の立体構造データおよび材料物性データが毎回同じ立体構造データおよび材料物性データなのであれば、この熱変位補正装置100は、上記の画面表示の代わりに、あらかじめ用意された立体構造データおよび材料物性データを記録した3DCADデータ(材料物性データ付き)などを読み出してもよい。いずれにしても、このようにして、立体構造データおよび材料物性データが入力される(ステップS105)。
これらの熱源候補領域の設定、温度測定位置のデータ入力、立体構造データおよび材料物性データの入力とは別に、この操作者がこの工作機械1000を用いて被削材からある特定の立体構造を削り出したいと考えて、その立体構造を削り出すための駆動パターンを入力して、熱変位補正のための予備的駆動を行った場合には、この熱変位補正装置100は、この工作機械1000に付属する複数の温度センサから温度測定データを読み出し始める。このようにして、被測定温度構造体(この場合、工作機械1000のうち温度センサが設置されている駆動機構など)の温度データ作成が行われる(ステップS107)。
これらの一連の動作が完了すると、続いて、この熱変位補正装置100では、これらの被測定構造体の立体構造・物性・温度測定位置・熱源候補領域についての各種情報は集約されて、これらのデータを互いに組み合わせて、コンピュータによる各種3Dシミュレーションの対象として用いる際に適したデータとなるように、被測定構造体モデルデータが生成される(ステップS109)。
続いて、この熱変位補正装置100では、このようにして生成された被測定構造体モデルデータには、所定のルールに基づいて仮定される熱流入量が、熱源候補領域のデータにひも付けされたうえで書き込まれる(ステップS111)。
続いて、この熱変位補正装置100では、このようにして仮定された熱流入量が上記の被測定構造体モデルデータに流れ込んだ場合に、所定の時間経過後に被測定構造体の熱分布がどのようになるのか、有限要素解析法などの計算アルゴリズムを用いて計算して、被測定構造体の熱分布データを推定する(ステップS113)。
次いで、この熱変位補正装置100では、温度センサで検出された温度検出値と上記の所定の時間経過後における被測定構造体の温度推定値とを対比して、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるようにギャップの解析を行われる(ステップS115)。続いて、この熱変位補正装置100では、そのギャップが十分小さくなるなどして、繰り返し計算の終了判定が所定のルールに基づいて可となった場合、その終了判定がされる(ステップS117)。一方、この繰り返し計算の終了判定が不可となった場合には、そのままステップS111に戻り計算を繰り返し続けることになる。
そして、この熱変位補正装置100では、このようにして終了判定がされると、これまでに行った繰り返し計算の結果を基にして、もっとも上記のギャップが小さい熱流入領域における近似熱流入量および工作機械の近似温度分布の組み合わせデータからなる近似熱流入量・熱分布データが算出される(ステップS119)。
その結果、この熱変位補正装置100では、このようにして算出された近似熱流入量・熱分布データを基にして、被測定構造体の立体構造の各位置ごとに導き出される熱変位量を打ち消すために必要な熱変位補正量を演算し、その熱変位補正量を被測定構造体の立体構造の各位置にひも付けして書き込んだ熱変位補正データが生成される(ステップS121)。
このようにして得られた熱変位補正データは、熱変位補正装置100の出力部138を介して、熱変位補正装置100の外部にある多軸制御工作機械の駆動機構300に出力され、被削材の加工精度向上のために用いられる(ステップS123)。以上で一連の動作は終了となる。
以下、本実施形態の本実施形態に係る多軸制御工作機械の作用効果について説明する。
本実施形態に係る工作機械1000は、複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させて該被削材を所定形状に加工する工作機械1000である。ここで、この工作機械1000には、温度測定部201と、工作機械1000における熱流入領域を設定する熱源候補領域の設定受付部104とが設けられている。また、この工作機械1000には、熱流入領域における熱流入量を仮定する熱流入量仮定データ生成部124が設けられている。さらに、この工作機械1000には、熱流入量仮定データ生成部124によって仮定された熱流入量に基づいて、工作機械1000の温度分布を推定する熱分布データ計算部126が設けられている。くわえて、この工作機械1000には、温度測定部201による温度検出値と、熱分布データ計算部126によって推定された温度分布のうち温度測定部201に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124に熱流入量を別の値に再仮定させて、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせる対比・ギャップ解析部130が設けられている。そして、この工作機械1000には、この繰り返し計算の結果を基にして、熱流入領域における近似熱流入量および工作機械1000の近似温度分布を算出する近似熱流入量・熱分布データ決定部134が設けられている。
本実施形態に係る工作機械1000は、このような構成を有するため、その温度検出値およびその温度推定値の間のギャップが小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124に熱流入量を別の値に再仮定させて、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせることで、上記温度推定値が上記温度検出値に近くなるような近似熱流入量を探索することができる。そのため、本実施形態の工作機械1000を用いれば、このようにして求めた近似熱流入量に基づいて、工作機械1000のモデルデータにその近似熱流入量を適用して、工作機械1000における熱変位データを推定することができ、その熱変位データに基づいて精度のよい熱変位補正を行うことが可能になる。
また、本実施形態に係る工作機械1000では、対比・ギャップ解析部130が、上記の温度検出値および上記の温度推定値の間の残差二乗和が小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせる残差最小二乗和計算部304を有している。
本実施形態に係る工作機械1000は、このような構成を有するため、残差最小二乗和計算部304によって、上記の温度検出値および上記の温度推定値の間のギャップを残差二乗和として、適切かつ効率よく評価することができる。そのため、上記温度推定値が上記温度検出値に近くなるような近似熱流入量についても、適切かつ効率よく探索することができる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000では、残差最小二乗和計算部304が、温度検出値および温度推定値の間の残差二乗和が所定の閾値よりも小さくなるように、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせる最小二乗和・閾値大小判定部306を有する。
本実施形態に係る工作機械1000は、このような構成を有するため、残差二乗和が所定の閾値よりも小さくなるまで繰り返し計算を続けることになるので、近似計算において一定以上の精度を確保することができ、さらに残差二乗和が所定の閾値よりも小さくなった時点で繰り返し計算を終了することができるので、余計な計算を行うことなく効率よく近似計算をすることができる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000では、残差最小二乗和計算部304が、繰り返し計算の回数が所定の回数に到達するまで、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせる回数計算部316を有している。
本実施形態に係る工作機械1000は、このような構成を有するため、繰り返し計算の回数が所定の回数に到達した時点で繰り返し計算を終了することができるので、余計な計算を行うことなく効率よく近似計算をすることができる。
また、本実施形態に係る工作機械1000では、残差最小二乗和計算部304が、繰り返し計算に要した時間が所定の長さに到達するまで、熱流入量仮定データ生成部124および熱分布データ計算部126に繰り返し計算をさせる時刻計算部314を有している。
本実施形態に係る工作機械1000は、このような構成を有するため、繰り返し計算に要した時間が所定の長さに到達した時点で繰り返し計算を終了することができるので、余計な計算を行うことなく効率よく近似計算をすることができる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000では、熱変位補正装置100が、工作機械1000の操作者による熱流入領域の設定条件の入力を受け付ける熱源候補領域の設定受付部104を有している。これにより、操作者の経験などを踏まえた条件設定も可能になるので、熱流入領域を絞り込んで限られた領域内でのみ熱流入量の仮定を行えばよいので、熱流入量を効率および精度良く近似することができるため、結果として効率および精度良く熱変位補正を行うことができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、本実施形態に係る工作機械1000では、詳しくは説明を省略したが、熱流入量仮定データ生成部124が、上記のように設定された熱流入領域において、熱流入量の初期値をランダムに仮定するランダム数値仮定部(不図示)を有していてもよい。このように、熱流入量の初期値をランダムに仮定したうえで、何度も繰り返し計算を行うことによって、あらゆる熱流入量の初期値の可能性についてしらみつぶしにシミュレーションを行うことができるため、結果として精度の良い近似熱流入量を算出することができる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000では、詳しくは説明を省略したが、熱流入量仮定データ生成部124が、繰り返し計算判定部132の判定結果に基づいて、前回の計算で仮定された熱流入量をランダムに変動させて、次回の熱流入量を再仮定するランダム変動部(不図示)を有していてもよい。このように、繰り返し計算判定部132の判定結果に基づいて、前回の計算で仮定された熱流入量を所定のルールに基づいた形でランダムに変動させて、次回の熱流入量を再仮定したうえで、何度もヒューリスティックな繰り返し計算を行うことによって、あらゆる熱流入量の初期値の可能性について、網羅的かつ探索的にシミュレーションを行うことができるため、結果として精度の良い近似熱流入量を効率よく算出することができる。
また、本実施形態に係る工作機械1000では、詳しくは説明を省略したが、熱分布データ計算部126が、工作機械1000の立体構造および物性に関する情報を含む被測定構造体モデルデータに、仮定された熱流入量を適用して有限要素解析によって、温度分布を推定する有限要素解析部(不図示)を有していてもよい。このように、有限要素解析によって温度分布を推定することにより、工作機械1000の立体構造を細かく分割した各ブロック毎に単純な計算式をたてて、それらの計算結果を各ブロック同士の境界条件によって交換しあうことにより、全体としての計算の精度を維持しつつ、計算効率を向上させることができるため、他の解析法と比較して、精度良く効率の良い解析が可能となる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000では、詳しくは説明を省略したが、近似熱流入量・熱分布データ決定部134が、繰り返し計算の一連の結果のうち、ギャップが最小となる熱流入量および温度分布の組み合わせを、近似熱流入量および近似温度分布として選択する最小ギャップ選択部(不図示)を有していてもよい。このように、何度も繰り返し計算を行うことによって、あらゆる熱流入量の初期値の可能性についてしらみつぶしにシミュレーションを行って、多くの組み合わせの近似熱流入量および近似温度分布を算出したうえで、それらの中からギャップが最小となる組み合わせを選択することによって、結果として精度の良い近似熱流入量および温度分布の組み合わせを算出することができる。
また、本実施形態に係る工作機械1000は、詳しくは説明を省略したが、近似熱流入量・熱分布データ決定部134によって算出された近似温度分布に基づいて、工作機械1000の熱変位データを推定する熱変位推定部(不図示)をさらに備えていてもよい。このように、熱流入量の効率よい推定を行ったうえで、その推定された熱流入量に基づいた工作機械1000の各位置における熱変位を推定すれば、その推定された熱変位に基づいた熱変位補正が可能になる。
さらに、本実施形態に係る工作機械1000は、詳しくは説明を省略したが、熱変位推定部(不図示)によって推定された、工作機械1000の熱変位データに基づいて移動体の移動目標位置データの補正量を算出する熱変位補正データ生成部139をさらに有する。このように、熱変位データに基づいて移動体の移動目標位置データの補正量を算出することによって、推定された熱変位に基づいた熱変位補正が可能になり、温度の変化にかかわらず精度の高い被削材の加工が可能になる。
また、本実施形態に係る工作機械1000は、熱変位補正データ生成部139によって算出された補正量に基づいて切削加工部の軸送りを補正する軸送り補正部(不図示)をさらに備えている。このようにすれば、算出された補正量に基づいて切削加工部の軸送りを補正することが可能になり、よって精度の高い被削材の加工が可能になる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
図8は本実施例の実験目的を表した実験概念図である。図示するように、本実施例で行った実験では、恒温室でのクロススライドの温度測定によって得られた一定時間経過後の温度上昇量を求める実験値と、熱源を仮定して一定時間経過後の温度上昇量の解析による各点の温度上昇量の解析値を比較して、繰り返し計算によって、実験の温度測定結果と一致する熱源(温度上昇量)を探索することにより、クロススライドモデルの熱源分布の推定を行った。なお、具体的な実験手順および実験結果について以下説明する。
既知熱源としてシリコンラバーヒータ2箇所をクロススライドモデルの斜面部に伝熱グリースで摺動面に密着させ、ベークライト板と万力で固定させた。続いて温度センサをクロススライドモデル上15点(以下温度センサ1,2・・・15とする)に設置し室温21℃、湿度55%の条件の恒温室内で加熱条件150W×2個、8時間で加熱を行い、温度上昇履歴計15点で時間を追って調べた。その結果を図9に示す。
図9は、本実施例で用いた多軸制御工作機械のクロススライドモデルの駆動機構における周縁部における温度センサの温度測定結果を図示したグラフである。すなわち、図9は、加熱実験を行った際の温度−時間プロットである。図9を見るとおり、シリコンラバーヒータに近い温度センサ15は大きな温度上昇を示し、逆に温度センサ4などは設置されたシリコンラバーヒータから遠いため温度上昇は小さかった。これらの8時間後の温度上昇量は以下の表1および表2のとおりであった。
これら15点の温度上昇量の測定結果から、逆解析による熱源の推定を行った。逆解析の手法を以下に示す。温度センサにより測定された温度上昇履歴が図9に示すようなクロススライドモデル上に9点の熱源があると仮定してそれらから熱が流入するとしたモデルの温度上昇履歴と比較し、最適化アルゴリズムで選定した熱流束の組み合わせで時刻歴温度解析を行ったものと比較することで後述する(式1)の目的関数である残差の二乗和が最小になるような熱流束の組み合わせを探索した。なお、クロスモデルの物性値は材質はねずみ鋳鉄、密度は7500kg/m、熱伝導率は50W/(m・K)、比熱0.55kJ/(kg・K)、熱源以外の放熱面に適用する熱伝達係数は10W/(m・K)である。ここで熱流束を適用した面を除いてすべての面は放熱面とした。すなわち、熱流束=(流入する熱量W)/(面積mm)とすることができる。
続いて同様の実験で、今回は測定点を17点に増やして実験を行い、恒温室でのクロススライドモデルの温度測定結果tc_04〜tc_oの17点の一定時間経過後の温度上昇量と最適化アルゴリズムで選定した熱流束の組み合わせ、kp99〜kp43の17点において時刻歴温度解析で所定時間経過後の各点温度上昇量を以下の表3のように比較した。
ここで目的とする関数は残差の二乗和
δ=(kp99−tc_04)+(kp42−tc_05)+・・・・
+(kp43−tc_o)・・・(1)
におけるδが最小になる熱流束の組み合わせを探索した。実験値と完全に一致する場合はδ=0となるものである。一つの熱流束の組み合わせの温度解析に約3分を要した。この温度解析の繰り返し計算により目的関数を最小化する熱流束の組み合わせを探した。この繰り返し計算の時間には約24時間、約500回程度の繰り返し計算を行った。その結果を以下の表4に示す。また、繰り返し計算において最適条件におけるクロススライドモデルの温度分布を図10に示す。よって最適条件における熱源分布から既知熱源の流入がほぼ推定可能となった。
図10は最適条件におけるクロススライドモデルの温度分布を表した3D解析図である。すなわち、図10は実施例で用いた多軸制御工作機械のクロススライドモデルの駆動機構において、温度センサの温度測定結果から逆解析によって算出した最適条件の熱源分布に基づいて推定された、クロススライドモデルの駆動機構の温度分布データを図示した3D解析図である。この解析図を見れば、本実施例の方法によって、最適条件における熱源分布により既知熱源の熱流入量がほぼ推定可能となったことがわかる。
<実施例2>
実施例2では、以下に示す方法に従って、温度評価点の数と熱源候補領域の数が熱流入量の推定精度に与える影響について調べた。
1.熱源推定アルゴリズム
図11は,工作機械機体の熱源を推定するためのアルゴリズムを示す。本アルゴリズムでは,以下のようにして工作機械に流入する熱量を推定する。まず,工作機械の機体に設置した温度センサで機体の温度上昇量を測定する。つぎに,逆問題を解いてこの温度上昇量の測定値に対応する熱源からの熱流入量を推定する。逆問題は,仮定した熱流入に対して有限要素法で工作機械機体の温度上昇解析を行い,その解析結果と温度上昇量の測定結果を比較し,それらの差が小さくなるように最適化手法を用いて熱流入量を決定する方法である。図11中、「CAE」は、Computer Aided Engineeringの略であり、コンピュータを用いた工作機械機体のモデルデータを生成することを意味する。また、「FEM」は、有限要素法を意味する。
2.クロススライドモデル
図12は,図11に示した熱源推定アルゴリズムの有用性を定常温度上昇実験で検証するために用いた,複合加工機のクロススライドモデルの概略図を示す。本クロススライドモデルは,市販の複合加工機のベッド上に設置されている構造部品であり,複合工作機械のベッドのすべり直動案内上に沿ってy軸方向に移動する。また,クロススライドモデルの傾斜面のすべり案内には,刃物台を搭載するサドルが設置され,傾斜摺動面上を移動する。y軸方向の運動と傾斜摺動面上のサドルの運動の組み合わせによって,切削工具のz軸方向の移動が可能になっている。熱源推定アルゴリズムの有用性を検証する定常温度上昇実験では,クロススライドモデルは単体で取り扱い,クロススライドモデル底面摺動面に貼り付けた硬質のゴムシートを介して支持して使用した。図13は,クロススライドモデルの熱解析に用いた物性値を示す。
クロススライドモデルの温度上昇は,図12中に示した15個の点に温度センサを貼り付けて測定した。温度センサはKNラボラトリーズ製の温度データロガーであり,温度データはサンプリング間隔1分でコンピュータに集録した。面熱源には,長さ600mm,幅50mm,出力300Wのシリコンラバーヒータを用いた。シリコンラバーヒータは熱伝導性の高いグリースを塗布した傾斜摺動面上に直接設置したが,その反対側の面には,その表面から空気中への熱放散をできるだけ少なくするため,断熱性の高いベークライトを配置し,それを固定した。温度上昇実験は,室温を21℃に保持した環境下で8時間加熱して行った。
3.熱源における熱流束の推定方法
図14は,出力300Wの定常面熱源によるクロススライドモデル温度上昇の測定結果を示す。クロススライドモデルの温度は加熱開始直後から上昇し始め,加熱開始8時間後に最大温度上昇は測定点t15の28.4Kであった。ここで,図11に示したアルゴリズムを用い,加熱開始8時間後のクロススライドモデルの温度上昇量に対応する各熱源候補領域からの熱流入量を有限要素法による熱解析と最適化手法を組み合わせて推定する。
図16は,クロススライドモデルの有限要素モデルを示す。面A?Iは,クロススライドモデルの熱源候補領域であり,シリコンラバーヒータを設置した面(面B)以外の面(面A,面C〜I)も熱源の候補領域として設定した。9個の熱源候補領域は、クロススライドの実際の運転を考慮して選択した。有限要素法によるクロススライドモデルの温度上昇解析は時刻歴温度上昇解析とした。最適化手法としては線形計画法,逐次2次計画法,Downhill Simplex法,遺伝的アルゴリズムを組み合わせた手法を用い,熱源の探索は次式で得られる目的関数δを最小化する方向に進めた。
ここで,Tex(i)は,測定点iにおける定常温度上昇量,Tan(i)はその測定点に対応するFEM解析で求めた温度上昇量であり,目的関数はそれらの差の二乗和とした。
図15は,各熱源候補領域で適用した熱流束値の探索範囲を示す。いずれの熱源候補領域も,熱流束の初期値および熱流束の探索範囲の最大値と最小値は同じ値とした。なお,熱源候補領域に発熱がない場合には熱源候補領域からの放熱もあり得る。そこで,いずれの熱源候補領域においても熱流束の下限値は負の熱流束とした。
4.クロススライドモデルの熱源探索結果
クロススライドモデルの熱源候補領域における熱流入量は,温度上昇解析の繰り返し結果から目的関数が最も小さくなる組み合わせとして求められたものである。図17は,9ヶ所の熱源候補領域における熱流入量の推定結果を示す。なお,熱流入量は熱流束の最適解の値にその熱源候補領域の面積を乗じて求めた。
クロススライドモデルの面Bに出力300Wのシリコンラバーヒータを設置し、それ以外の面には熱源を設置していないので、熱源候補領域Bにおける熱流入量が300Wとなり、それ以外の熱源候補領域における熱流入量が0Wになるのが理想的な推定結果である。
最適解では,実験モデルでシリコンラバーヒータを設置した面Bの熱流入量が最も大きく,その熱流入量はシリコンラバーヒータの出力300Wより約16%小さい250.6Wであった。なお,実験ではシリコンラバーヒータを設置しなかった熱源候補領域G,H,Iにも無視できない熱流入が推定された。また,最適解の総流入熱量はシリコンラバーヒータの出力300Wより15%大きい343Wとなった。これは熱源候補数と関係があり,推定精度に及ぼす熱源候補数の影響については「5−2.熱源候補数の影響」の項で検討する。
図18は,クロススライドモデルの温度上昇量の測定結果と熱流束の探索結果の熱流束の組み合わせで計算した解析結果との関係を示す。クロススライドモデル表面上の温度評価点では,温度上昇量の測定結果と解析結果はよく一致した。
5.考察
工作機械機体の熱変形は機体の温度上昇および温度上昇むらに依存する。「4.クロススライドモデルの熱源探索結果」の項で明らかにしたように,単一の定常面熱源に対する流入熱量の推定精度は実用的に利用できる程度であった。本節では,熱流入量の推定精度に及ぼす温度評価点の数および熱源候補領域の数の影響について検討する。
5−1.温度評価点の数の影響
図19は,温度評価点の数が熱源の熱流入量の推定精度に及ぼす影響を調べるための解析条件を示す。「4.クロススライドモデルの熱源探索結果」の項では,すべての温度評価点に対応する温度上昇量の測定結果と推定熱流束に基づく解析結果を式(2)の目的関数の計算に用いた。本項では,目的関数の計算に用いる温度評価点の数を1?15まで変化させ,温度評価点の数が熱流入量の推定結果に及ぼす影響を調べた。
図20は,温度評価点の数が熱流入量の推定精度に及ぼす影響を示す。温度評価点の数が小さかったタスクp1やタスクp2では,シリコンラバーヒータを設置した熱源領域からの熱流入量が小さく,十分な精度での流入熱量を推定できなかった。図20から,実用上必要な精度で熱流入量の推定を行うには,温度評価点は少なくとも4点は必要であった。
5−2.熱源候補数の影響
クロススライドモデルを用いた本温度上昇実験の熱源領域数は1であったのに対して,熱流入量の推定に用いた熱源候補領域は9ヶ所とした。工作機械の運転状況を考慮すれば熱源候補領域の絞り込みは可能である。そこで,前述のクロススライドモデルを対象に,熱源の熱流入量の推定精度に及ぼす熱源候補領域の数の影響を図21に示した解析条件で調べた。
図22は,熱源の熱流入量の推定精度に及ぼす熱源候補領域の数の影響を示す。なお,温度評価点の15点とした。タスクs2やタスクs3の場合,タスクs1の場合と比較して熱流入量の推定精度は高く,熱源候補領域Bからの流入熱量もヒータの出力300Wにほぼ等しい297Wであった。
これらの結果から,工作機械機体への流入熱量を高精度で推定するためには,実機工作機械の運動モードを考慮した温度測定点の選定および熱源候補領域の設定が必要であるといえる。
6.まとめ
工作機械の機体に流入する熱量を推定する方法として,有限要素法と最適化手法を組み合わせた方法を提案し,クロススライドモデル単体の温度上昇実験の結果に基づいてその有用性を検証した。その結果,次のことがわかった。熱源近傍の機体の定常温度測定値を用いれば,工作機械機体に流入する熱量は実用上十分な精度で推定可能である。工作機械機体に流入する熱量の推定精度を高めるためには,工作機械機体に設置する温度センサの数やその設置場所を工作機械の運転モードを考慮して決定する必要がある。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
100 熱変位補正装置
102 入力部
104 熱源候補領域の設定受付部
110 温度データ記憶部
114 サーバ
116 温度測定位置データ受付部
117 サーバ
118 被測定構造体構造・物性データ受付部
120 被測定構造体モデルデータ生成部
122 被測定構造体モデルデータ記憶部
124 熱流入量仮定データ生成部
126 熱分布データ計算部
128 熱分布データ記憶部
130 対比・ギャップ解析部
132 繰り返し計算判定部
134 近似熱流入量・熱分布データ決定部
136 近似熱流入量・熱分布データ記憶部
138 出力部
139 熱変位補正データ生成部
140 プリンタ
142 ネットワーク
200 傾斜支持体(クロススライドモデル(クロススライド))
201 温度測定部
202a 温度センサ
202b 温度センサ
202c 温度センサ
204 温度データ変換器
205 クロススライドの傾斜面
207a 往復スライドウェイ
207b 往復スライドウェイ
211 刃物台
212 ベッド
300 多軸制御工作機械の駆動機構
302 差分データ計算部
304 残差最小二乗和計算部
306 最小二乗和・閾値大小判定部
308 閾値記憶部
310 時刻・回数上限到達判定部
312 上限値記憶部
314 時刻計算部
316 回数計算部
318 総合判定部
1000 工作機械

Claims (16)

  1. 複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させて該被削材を所定形状に加工する工作機械であって、
    前記工作機械に設けられている温度測定部と、
    前記工作機械における熱流入領域を設定する熱流入領域設定部と、
    前記熱流入領域における熱流入量を仮定する熱流入量仮定部と、
    前記熱流入量仮定部によって仮定された熱流入量に基づいて、前記工作機械の温度分布を推定する温度分布推定部と、
    前記温度測定部による温度検出値と、前記温度分布推定部によって推定された温度分布のうち前記温度測定部に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、該温度検出値および該温度推定値の間のギャップが小さくなるように、前記熱流入量仮定部に前記熱流入量を別の値に再仮定させて、前記熱流入量仮定部および前記温度分布推定部に繰り返し計算をさせる対比・ギャップ解析部と、
    前記繰り返し計算の結果を基にして、前記熱流入領域における近似熱流入量および前記工作機械の近似温度分布を算出する近似データ算出部と、
    を備える、工作機械。
  2. 請求項1記載の工作機械において、
    前記対比・ギャップ解析部が、前記温度検出値および前記温度推定値の間の残差二乗和が小さくなるように、前記熱流入量仮定部および前記温度分布推定部に繰り返し計算をさせる残差二乗和計算部を有する、工作機械。
  3. 請求項2記載の工作機械において、
    前記残差二乗和計算部が、前記温度検出値および前記温度推定値の間の残差二乗和が所定の閾値よりも小さくなるように、前記熱流入量仮定部および前記温度分布推定部に繰り返し計算をさせる閾値判定部を有する、工作機械。
  4. 請求項2記載の工作機械において、
    前記残差二乗和計算部が、前記繰り返し計算の回数が所定の回数に到達するまで、前記熱流入量仮定部および前記温度分布推定部に繰り返し計算をさせる計算回数判定部を有する、工作機械。
  5. 請求項2記載の工作機械において、
    前記残差二乗和計算部が、前記繰り返し計算に要した時間が所定の長さに到達するまで、前記熱流入量仮定部および前記温度分布推定部に繰り返し計算をさせる計算時間判定部を有する、工作機械。
  6. 請求項1乃至請求項5いずれかに記載の工作機械において、
    前記熱流入領域設定部が、前記工作機械の操作者による熱流入領域の設定条件の入力を受け付ける設定条件受付部を有する、工作機械。
  7. 請求項1乃至請求項6いずれかに記載の工作機械において、
    前記熱流入量仮定部が、前記設定された熱流入領域において、熱流入量の初期値をランダムに仮定するランダム数値仮定部を有する、工作機械。
  8. 請求項7に記載の工作機械において、
    前記熱流入量仮定部が、前記繰り返し計算において、前回の計算で仮定された熱流入量をランダムに変動させて次回の熱流入量を再仮定するランダム変動部を有する、工作機械。
  9. 請求項1乃至請求項8に記載の工作機械において、
    前記温度分布推定部が、前記工作機械の立体構造および物性に関する情報を含むモデルデータに、前記仮定された熱流入量を適用して有限要素解析によって、前記工作機械における温度分布を推定する有限要素解析部を有する、工作機械。
  10. 請求項1乃至請求項9に記載の工作機械において、
    前記近似データ算出部が、前記繰り返し計算の一連の結果のうち、前記ギャップが最小となる熱流入量および温度分布の組み合わせを、前記近似熱流入量および前記近似温度分布として選択する最小ギャップ選択部を有する、工作機械。
  11. 請求項10に記載の工作機械において、
    前記近似計算部によって算出された近似温度分布に基づいて、前記工作機械の熱変位データを推定する熱変位推定部をさらに備える、工作機械。
  12. 請求項11に記載の工作機械において、
    前記熱変位推定部によって推定された、前記工作機械の熱変位データに基づいて前記移動体の移動目標位置データの補正量を算出する補正量計算部をさらに備える、工作機械。
  13. 請求項1乃至請求項8に記載の工作機械において、
    前記温度分布推定部が、前記工作機械の立体構造および物性に関する情報を含むモデルデータに、前記仮定された熱流入量を適用して有限要素解析によって、前記工作機械における温度分布を推定する有限要素解析部を有し、
    前記熱変位によって推定された、前記工作機械の熱変位データに基づいて前記移動体の移動目標位置データの補正量を算出する補正量計算部をさらに備える、工作機械。
  14. 請求項12乃至請求項13に記載の工作機械において、
    前記補正量計算部によって算出された前記補正量に基づいて切削加工部の軸送りを補正する軸送り補正部をさらに備える、工作機械。
  15. 複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させて該被削材を所定形状に加工する工作機械の熱流入量および温度分布を近似する方法であって、
    前記工作機械に設けられた複数の温度測定点において温度を測定するステップと、
    前記工作機械における熱流入領域を設定するステップと、
    前記熱流入領域における熱流入量を仮定するステップと、
    前記仮定された熱流入量に基づいて、前記工作機械の温度分布を推定するステップと、
    前記温度測定点において測定された温度検出値と、前記推定された温度分布のうち前記温度測定点に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、該温度検出値および該温度推定値の間のギャップが小さくなるように、前記仮定された熱流入量を別の値に再仮定させて、前記熱流入量を仮定するステップおよび前記温度分布を推定するステップを繰り返させるステップと、
    前記繰り返しの結果を基にして、前記熱流入領域における近似熱流入量および前記工作機械の近似温度分布を算出するステップと、
    を含む、近似方法。
  16. コンピュータに複数の駆動機構によって工具と被削材を相対運動させて該被削材を所定形状に加工する工作機械の熱流入量および温度分布を近似させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記工作機械に設けられた複数の温度測定点において温度を測定するステップと、
    前記工作機械における熱流入領域を設定するステップと、
    前記熱流入領域における熱流入量を仮定するステップと、
    前記仮定された熱流入量に基づいて、前記工作機械の温度分布を推定するステップと、
    前記温度測定点において測定された温度検出値と、前記推定された温度分布のうち前記温度測定点に対応する箇所の温度推定値と、を対比して、該温度検出値および該温度推定値の間のギャップが小さくなるように、前記仮定された熱流入量を別の値に再仮定させて、前記熱流入量を仮定するステップおよび前記温度分布を推定するステップを繰り返させるステップと、
    前記繰り返しの結果を基にして、前記熱流入領域における近似熱流入量および前記工作機械の近似温度分布を算出するステップと、
    を含む、近似方法を実行させる、プログラム。
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