JP2011055792A - 食感改善用家禽用飼料、食感の改善された食肉の製造方法及び家禽の飼育方法、並びに家禽用肉質軟化剤 - Google Patents

食感改善用家禽用飼料、食感の改善された食肉の製造方法及び家禽の飼育方法、並びに家禽用肉質軟化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】家禽の食肉の肉質を軟化させ、食感を向上させ得る家禽用飼料を得ること、並びに当該飼料を用いることにより、食感の向上した食肉を大量に製造する方法、及び食感のよい肉質を有する家禽の飼育方法を提供すること、さらには、飼料に添加して用いる家禽用の肉質軟化剤を得ることを目的とする。
【解決手段】飼料中にアスタキサンチン類を含有させて、食感改善用家禽用飼料とする。当該飼料を供与して家禽を飼育することにより、家禽の食肉の剪断応力を減少させ、食感を改善する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鶏肉等家禽の食肉の肉質を軟化させ、食感を向上させる食感改善用家禽用飼料、当該飼料を用いた、食感の改善された食肉の製造方法及び家禽の飼育方法、並びに飼料に添加して用いる家禽用の肉質軟化剤に関する。
従来より、食肉・魚肉の食感改善に関する検討がなされている。たとえば、ウナギについては、グアバ葉及び/又はグアバ葉抽出物を添加した飼料(特許文献1)や、海藻粉末及びオキアミ粉末を配合した飼料(特許文献2)による食感改善効果が知られている。近年鶏肉等家禽の食肉の食感向上が求められているが、現在のところ、家禽用飼料の配合組成を工夫することにより、前記食肉の剪断応力を減少させ、食感を向上させる方法は知られていない。家禽用飼料の栄養添加物として、抗酸化剤のビタミンE、セレン等が知られている(非特許文献1、2)。また、香辛料とビタミンEを含有する飼料を与えることにより、豚肉の肉質(臭い、鮮度、日持ち、ドリップ、保水性)を向上させることが開示されている(特許文献3)。しかし、かかる技術によっては、家禽の食肉の剪断応力を減少させることはできず、これらを供与しても肉の柔らかさに由来する食感は向上しない。
アスタキサンチンは強力な抗酸化力を持つ色素であることから、鶏卵の色調改善効果のため、粗タンパク質(CP)含有量が17.0%で、代謝エネルギー(ME)が2850kcal/kgの市販の配合飼料に添加し、家禽用飼料として用いられている(特許文献4)。また、アスタキサンチンは、マダイの色調改善のための水産飼料としても用いられている(特許文献5)が、供与した動物の肉の剪断応力を減少させることにより、食感を改善させる効果を有することは知られていない。
特許第3916456号公報 特開2003−70426号公報 特許第3923603号公報 特開2004−305057号公報 特許第3317412号公報
食肉品質における飼料セレンの機能;橋澤 義憲・門脇 基二・藤村 忍、日本家禽学会誌 第41巻 秋季大会号、第29ページ、2004年 食餌性セレンによる食肉への機能性付与に関する研究;橋澤 義憲・門脇 基二・藤村 忍、第44回北信越畜産学会新潟県分会要旨、第4ページ、2005年
本発明においては、家禽の食肉の肉質を軟化させ、食感を向上させ得る家禽用飼料を得ること、並びに当該飼料を用いることにより、食感の向上した食肉を大量に製造する方法、及び食感のよい肉質を有する家禽の飼育方法を提供すること、さらには、飼料に添加して用いる家禽用の肉質軟化剤を得ることを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、養鶏場等で家禽用として供与する飼料の配合組成を鋭意工夫した結果、飼料中に特定量のアスタキサンチン類を含有させることにより、当該飼料を供与した家禽の食肉の剪断応力を減少させ、肉質をより柔らかくし、食感を向上させることに成功した。
すなわち本発明は、次の(1)〜(15)に関する。
(1)アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する、食肉の食感改善用家禽用飼料。
(2)アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、(1)に記載の家禽用飼料。
(3)さらに、アルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、(1)に記載の家禽用飼料。
(4)アルギニン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.1〜5重量%である、(3)に記載の家禽用飼料。
(5)リジン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.1〜5重量%である、(3)に記載の家禽用飼料。
(6)トリプトファン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.003〜1重量%である、(3)に記載の家禽用飼料。
(7)粗タンパク質18〜30重量%を含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の家禽用飼料。
(8)アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する飼料を供与して家禽を飼育することを含む、食感が改善された食肉の製造方法。
(9)アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、(8)に記載の製造方法。
(10)飼料が、さらにアルギニン、リジン、トリプトファン、及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、(8)に記載の製造方法。
(11)アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する飼料を供与して家禽を飼育することを含む、家禽の飼育方法。
(12)アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、(11)に記載の飼育方法。
(13)飼料が、さらにアルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、(11)に記載の飼育方法。
(14)アスタキサンチン類を含有する、家禽用肉質軟化剤。
(15)アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、(14)に記載の家禽用肉質軟化剤。
本発明により、家禽の食肉の持つ歯切れ、味の強さ、ジューシーさ等を失わない状態で硬さを減少、すなわち、家禽の食肉の剪断応力を減少させて、食感を改善することができる。また、本発明により、食感の向上した肉質を有する家禽を提供することができる。
アスタキサンチン類を含有する実施例1の飼料供与群、及び比較例(コントロール)の飼料供与群の鶏肉について、鶏肉の剪断応力測定結果を示す図である。 アスタキサンチン類を含有する実施例2の飼料供与群、及び比較例(コントロール)の飼料供与群の鶏肉について、鶏肉の剪断応力測定結果を示す図である。 アスタキサンチン類を含有する実施例1の飼料供与群、及び比較例(コントロール)の飼料供与群の鶏肉について、シエッフェの一対比較法による官能評価結果を示す図である。
本発明に係る食感改善用家禽用飼料は、アスタキサンチン類を含有してなる。
「アスタキサンチン」は、キサントフィル類に分類されるカロテノイドの1種である。本発明において、「アスタキサンチン類」とはアスタキサンチン及びその誘導体(就中、エステル体)をいい、たとえば、化学合成法により得られたアスタキサンチン、その誘導体、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチン類等、天然物由来のアスタキサンチン類が挙げられる。アスタキサンチン又はそのエステル体は、J.D.Surmatisら(J.Org.Chem.,32,180−184,1967)、F.von Kienzleら(Helv.Chim.Acta,61,2609−2615,1978)等による方法に従って化学的に合成することができる。また、天然物由来のアスタキサンチンのエステル体を、コレステロールエステラーゼにより分解してアスタキサンチンを得ることもできる。また、ヘマトコッカス藻(Hematococcus pluvialis)やファフィア酵母を培養し、産生されたアスタキサンチン類を抽出、回収して得ることもできる。本発明においては、化学合成法により得られたアスタキサンチン類又はファフィア酵母由来のアスタキサンチン類を用いることが好ましい。さらに、本発明に用いるアスタキサンチン類には、飼料用途のためのアスタキサンチン類を含有するファフィア酵母やヘマトコッカス藻の態様のアスタキサンチン類も含まれるが、アスタキサンチン類を含有するファフィア酵母を用いることが好ましい。
本発明において好ましく用いられるアスタキサンチン誘導体としては、モノメチルエステル、ジメチルエステル等の炭素数1〜6程度の低級アルキルモノエステル又はジエステル、炭素数10〜25程度の飽和又は不飽和脂肪酸とのモノエステル又はジエステル、オボルビン、クラスタシアニン等のタンパク質との結合体などが例示される。アスタキサンチン及びその前記誘導体は、飼料用等として製造販売されている市販品を利用することもできる。
また、「ファフィア酵母(Phaffia rhodozyma)」とは、ミズキやナラの樹液に生息し、ピンク色から赤色のバター状コロニーを形成する酵母である。本発明において用いるファフィア酵母は、酵母それ自体であってもよく、また処理されたものであってもよく、生のままでも乾燥した状態でもよいが、酵母の細胞壁を酵素処理、機械処理又はアルカリ処理等の処理をしたものが好ましく、とりわけ酵素処理したものが好ましい。前記酵素処理としては、バシラス サーキュランス(Bacillus circulans)WL−12等の菌体外酵素で、酵母の細胞壁を一部分解処理する方法などが挙げられる。また、かかるファフィア酵母として、たとえば、協和発酵バイオ株式会社等より製剤化され市販されているものを用いることもできる。なお、本発明において、「ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類」とは、ファフィア酵母の培養物から回収されたアスタキサンチン類、ファフィア酵母自体またはファフィア酵母の処理物中に含まれるアスタキサンチン類等をいう。
本発明の食感改善用家禽用飼料中におけるアスタキサンチン類の濃度は、本発明の目的を達成するためには、10ppm以上であることが好ましい。また、100ppmを超えて含有させても、その効果はほぼ一定であることから、飼料中のアスタキサンチン類の濃度は、好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは20〜40ppmである。
本発明の食感改善用家禽用飼料には、上記アスタキサンチン類に加えて、アミノ酸を含有させることができる。アミノ酸としては、アルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を用いることが好ましい。かかるアミノ酸としては、L−体、D−体、DL−体のいずれをも用いることができるが、L−体が好ましく用いられる。また、これらの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩といった酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、モルホリン塩、ピペリジン塩等の有機アミン付加塩、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸付加塩などが挙げられる。本発明において用いるアルギニン、リジン、トリプトファン並びにこれらの塩は、これらを多く含有する動植物から単離精製する方法、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得することができる。さらにまた、たとえばシグマ−アルドリッチ社等より市販品を購入することもできる。
食感改善用家禽用飼料中における上記アミノ酸等の含有量としては、アルギニン又はその塩が遊離体換算で0.1〜5重量%、好ましくは0.15〜1重量%、とりわけ好ましくは0.2〜0.3重量%であり、リジン又はその塩が遊離体換算で0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜1重量%、とりわけ好ましくは0.2〜0.5重量%であり、トリプトファン又はその塩が遊離体換算で0.003〜1重量%、好ましくは0.003〜0.03重量%、とりわけ好ましくは0.005〜0.02重量%である。なお本発明の食感改善用家禽用飼料には、上記アルギニン、リジン、トリプトファン以外に、メチオニン、バリン、ヒスチジン、スレオニン等の飼料用アミノ酸又はこれらの塩を添加してもよい。
本発明の食感改善用家禽用飼料には、上記アミノ酸以外に、タンパク質、ペプチド、アミン類も含有され得る。かかる窒素化合物の含有量は、「粗タンパク質(CP)含有量」として表される。本発明の食感改善用家禽用飼料の粗タンパク質(CP)含有量は、家禽の飼料として標準的に用いられるものであればどのような値でも良いが、通常18〜30重量%、好ましくは18〜25重量%、とりわけ好ましくは21〜25重量%である。
本発明の食感改善用家禽用飼料には、上記アミノ酸に加えて、大豆油、ナタネ油、綿実油、ゴマ油、落花生油、カヤ油、ツバキ油、オリーブ油、トウモロコシ油等の植物性油脂、中鎖脂肪酸トリグリセライド、タロー、イエローグリース、ラード、ヘッド等の動物性油脂、イワシ精製油、マグロ原油等の魚油などの油脂類、又はこれら油脂類の水素添加物或いは加水分解物を含有させてもよい。
本発明の食感改善用家禽用飼料には、さらにビタミン類、ミネラル類を含有させてもよい。ビタミン類としては一般的なビタミン類が用いられ、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等が挙げられる。ミネラル類としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、セレン、銅、鉄、亜鉛、コバルト等が挙げられ、これらミネラル類を供与するために、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、食塩等が配合される。
また、本発明の家禽用飼料には、炭水化物供与のための配合成分として、トウモロコシ、フスマ、米、麦、綿実粕、マイロ、大豆粕、ゴマ粕、魚粉、脱脂米糠、コーンスターチ、コーングルテンミール、コーンスティープリカー、コーングルテンフィード、コーンジャームミール、ナタネ油粕、海藻粉末、アルファルファ、寒天等を含有させてもよい。
本発明の食感改善用家禽用飼料の総代謝エネルギー(ME)としては、通常家禽用飼料に要求される程度であり、通常2900〜5000kcal/kg、好ましくは2900〜4000kcal/kg、とりわけ好ましくは2900〜3500kcal/kgである。
本発明の対象となる家禽としては、その肉を利用(特に食肉として)するために飼育される鳥であれば、特に制限されず、ニワトリ(採卵鶏、ブロイラー等、好ましくはブロイラー)、七面鳥、アヒル、ウズラ、カモ、キジ、ダチョウ、ガチョウ等が挙げられる。
本発明において、食肉の食感改善とは、鶏肉等家禽の食肉の持つ歯切れ、味の強さ、ジューシーさ等を失わない状態で、肉の硬さ、すなわち肉の剪断応力を減少させることを意味し、その結果食肉の食感を向上させることを意味する。
上記した本発明の食感改善用家禽用飼料を供与して家禽を飼育する場合、給飼方法、給飼時刻、給飼回数、1回又は1日の給飼量は、特に変更する必要はなく、汎用の家禽用飼料のみを与える場合と同じでよい。また、前記飼育方法により飼育した家禽から常法により食肉を得ることにより、食感が改善された食肉を製造することができる。
また、本発明は、アスタキサンチン類を含有する家禽用肉質軟化剤を提供する。本発明の「家禽用肉質軟化剤」とは、家禽用飼料に添加して用いる飼料用添加剤であって、本添加剤を添加した家禽用飼料を供与することにより、家禽の食肉の剪断応力を減少させるものをいう。
本発明の家禽用肉質軟化剤は、通常の家禽用飼料に対して、アスタキサンチン類の濃度が10ppm以上となるように添加することが好ましく、より好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは20〜40ppmとなるように添加する。
本発明の家禽用肉質軟化剤に用いるアスタキサンチン類については、上記と同様である。また、本発明の家禽用肉質軟化剤には、上記と同様にアミノ酸類、油脂類、ビタミン類、ミネラル類、炭水化物供与用成分などを含有させることができる。
本発明の家禽用肉質軟化剤には、上記アスタキサンチン類とともに、通常飼料用添加剤に用いられる澱粉等結合剤などの基剤成分を加えてもよい。家禽用飼料への家禽用肉質軟化剤の配合は、常温、常圧下、開放容器内で撹拌機などにより混合することで足りる。その場合、粉状にしたものを市販の家禽用飼料にそのまま振りかけてもよく、粒状にしたものを混合してもよい。
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1、2]食感改善用家禽用飼料
表1に示した組成により、食感改善用家禽用飼料を製造した。すなわち、表1中の各成分を混合して食感改善用家禽用飼料とした。なお、本実施例1及び2の食感改善用家禽用飼料は、米国国家研究会議家畜栄養委員会(National Research Council;NRC)(1994)の要求量に基づいて設計したため、粗タンパク質は23.00%、総代謝エネルギーは3200(kcal/kg)であった。
[比較例]家禽用飼料
表1に示す組成に従って、アスタキサンチンを含有するファフィア酵母を添加せず、代わりに寒天を添加して、比較例の家禽用飼料を製造した。
Figure 2011055792
[実施例3]飼育及び食肉の製造
ニワトリ(コブ系雌ブロイラー)を、実施例1の食感改善用家禽用飼料(アスタキサンチン20ppm含有)供与群、実施例2の食感改善用家禽用飼料(アスタキサンチン40ppm含有)供与群、比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群の3群に分け、14日齢〜屠殺直前までの28日間、実施例1、2及び比較例の各家禽用飼料をそれぞれ継続的に供与した。供与中止後にニワトリを屠殺し、各群の食肉の物性の比較(剪断応力の測定)及び食感の比較(官能試験)を、以下の通り行った。
(1)剪断応力の測定
ニワトリから胸肉を採取して浅胸筋を切り取り、測定用試料を作成した。レオメーター(FUDOH RHEO METER RT−25005J、株式会社レオテック製)を用い、筋繊維と直角方向に試料を配置し、ワーナーブラッツラー型ナイフ、円柱状のプランジャー、アロークレイマー型のプレートで剪断応力を測定した。
測定結果を図1及び2に示した。図1より明らかなように、アスタキサンチン20ppmを含有する実施例1の家禽用飼料供与群では、比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群に比べて、食肉の剪断応力が有意(p<0.01)に減少した。また、図2に示されるように、アスタキサンチン40ppmを含有する実施例2の家禽用飼料供与群においても、食肉の剪断応力が比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群に比べ30%以上減少した。
(2)官能試験
18人のパネラーを用いて、アスタキサンチン20ppmを含有する実施例1の食感改善用家禽用飼料供与群、及び比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群の食肉の食感について、官能試験を行った。官能試験は、両群の食肉の食感に差があるか否かを二点識別法により評価させ、また、食肉の硬さ、歯切れ、ジューシーさ、味の強さについて、シエッフェの一対比較法(食肉の官能評価ガイドライン、家畜改良センター編、日本食肉消費総合センター、2005年刊)により比較させた。
二点識別法による評価結果を表2に、シエッフェの一対比較法による評価結果を図3に示した。表2に示すように、二点識別法では、アスタキサンチンを含有する実施例1の食感改善用家禽用飼料の供与により、有意(p<0.01)に食肉の食感に差が生じることが示された。
Figure 2011055792
また、図3に示すように、シエッフェの一対比較法では、アスタキサンチンを含有する実施例1の食感改善用家禽用飼料供与群では、味の強さやジューシーさについては比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群と差がないが、食肉の歯切れが有意(p<0.01)によく、肉の硬さについても有意(p<0.01)に柔らかいと評価された。つまり、鶏肉の味覚のよさを失うことなく、肉質が柔らかく、且つ歯ごたえが良くなったため、食感が大幅に改善された。
なお、アスタキサンチンと同じ抗酸化剤であるビタミンEを供与しても、肉の剪断応力は弱くならず、食感が改善されないことが知られている。これに対して、アスタキサンチンは、予期せぬ効果により食感を大幅に改善した。
[実施例4]飼育及び食肉の製造
ニワトリ(コブ系雌ブロイラー)を、アスタキサンチン20ppmを含有する実施例1の食感改善用家禽用飼料供与群、比較例(コントロール)の家禽用飼料供与群の2群に分けて飼育し、28日齢〜屠殺直前までの10日間の飼育成績を比較した。また、コニカミノルタ社製色彩色素計を用いて肉質の色差分析を行い、さらに実施例3の場合と同様に剪断応力の測定を行った。
飼料供与期間の体重増量、胸肉重量、胸肉比率、腹腔内脂肪比率等を測定し、飼育成績を表3に示した。表3において明らかなように、アスタキサンチンを含有する実施例1の飼料を供与した群と、比較例(コントロール)の飼料供与群では、10日間の飼育結果にほとんど差は見られなかった。
Figure 2011055792
実施例1の飼料供与群と比較例の飼料供与群について、食肉の肉質に関する色差分析値及び剪断応力を比較して、表4に示した。アスタキサンチンを含有する実施例1の飼料供与群では、比較例(コントロール)の飼料供与群に比べ、赤みの目安であるa値が増加し、剪断応力が減少した。
Figure 2011055792
上記の通り、本発明は、家禽の食肉の剪断応力を減少させて、前記食肉の持つ歯切れ、味の強さ、ジューシーさ等を失わない状態で硬さを減少させ得る食感改善用家禽用飼料を提供するものである。また、前記食感改善用家禽用飼料を用いて家禽を飼育することにより、食感の改善された家禽の食肉を製造する方法、及び食感の向上した肉質を有する家禽の飼育方法を提供するものである。

Claims (15)

  1. アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する、食肉の食感改善用家禽用飼料。
  2. アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、請求項1に記載の家禽用飼料。
  3. さらに、アルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の家禽用飼料。
  4. アルギニン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.1〜5重量%である、請求項3に記載の家禽用飼料。
  5. リジン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.1〜5重量%である、請求項3に記載の家禽用飼料。
  6. トリプトファン又はその塩の含有量が、遊離体換算で0.003〜1重量%である、請求項3に記載の家禽用飼料。
  7. 粗タンパク質18〜30重量%を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の家禽用飼料。
  8. アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する飼料を供与して家禽を飼育することを含む、食感が改善された食肉の製造方法。
  9. アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、請求項8に記載の製造方法。
  10. 飼料が、さらにアルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、請求項8に記載の製造方法。
  11. アスタキサンチン類を10〜100ppm含有する飼料を供与して家禽を飼育することを含む、家禽の飼育方法。
  12. アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、請求項11に記載の飼育方法。
  13. 飼料が、さらにアルギニン、リジン、トリプトファン及びこれらの塩よりなる群から選択した1種又は2種以上を含有する、請求項11に記載の飼育方法。
  14. アスタキサンチン類を含有する、家禽用肉質軟化剤。
  15. アスタキサンチン類が、ファフィア酵母由来のアスタキサンチン類である、請求項14に記載の家禽用肉質軟化剤。
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