JP2011050931A - 水中における水酸基ラジカルの生成方法 - Google Patents

水中における水酸基ラジカルの生成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 水中において水酸基ラジカルを効果的に生成させる方法を提供すること。
【解決手段】 水中に金属体を存在させておき、粒径が50μm以下の微小気泡をそこに供給するかまたはそこで発生させることを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、あらゆる技術分野にその有用性が潜在する特別な機能を付与した水としての水酸基ラジカルを含む水の製造に際し、水中において水酸基ラジカルを効果的に生成させる方法に関する。
水酸基ラジカル(・OH)は水中において最も反応性の高い物質(反応活性種)の一つであり、酸化能力に優れるので汚水処理などの水処理や有害物質の分解処理などに利用できることは当業者によく知られた事実である。水中における水酸基ラジカルの生成方法はいくつか知られているが、その中にオゾンの促進酸化による方法がある。この方法は、不安定な物質であるオゾンを水中で促進的に分解させることで水酸基ラジカルを生成させるものであるが、オゾンは酸性条件下では安定化されるため、アルカリ性条件下で行われるのが一般的である。従って、オゾンの促進酸化によって水中に水酸基ラジカルを生成させることを酸性条件下で行いたい場合、例えば、系内に紫外線を照射する方法(特許文献1)や、系内に過酸化水素水を共存させる方法(特許文献2)などが採用される。しかしながら、紫外線を照射する方法は、水質の汚濁によって効果が低減するといった問題や紫外線を照射するための特別な装置が必要であるといった問題がある。また、過酸化水素水を共存させる方法は、コストが高くつくといった問題がある。
そこで本発明者らは、酸性条件下においても簡易かつ効率的に水酸基ラジカルを含む水を製造することができる方法の研究開発をこれまでに精力的に行ってきており、その成果として、電気伝導度が100μS/cm以上でpHが5以下の水中に粒径が50μm以下の微小気泡を発生させる方法(特許文献3)や、粒径が50μm以下のオゾンを含んだ微小気泡を水中に発生させる方法(特許文献4)を提案している。
特許文献3の方法によれば、ある程度の水深(例えば20cm以上)を有する水槽内や天然水域において、水の電気伝導度を100μS/cm以上とし、かつ、pHを5以下とした上で、粒径が50μm以下の微小気泡を発生させると、微小気泡は、自然浮遊する条件下で、その球形を正常に維持したまま、気液界面に水中のイオン、例えば、水酸基イオン、プロトン(水素イオン)、電気伝導度の調整のために電解質を加えた場合やもともと水中に電解質が存在する場合には電解質イオンなどを電荷として濃縮させながら縮小し、そして消滅の瞬間に高濃度に濃縮された電荷がその濃縮の要因である界面を喪失することにより、超高電場として蓄えられた電荷エネルギーが瞬時に開放されることで、水酸基ラジカルが生成する。また、特許文献4の方法によれば、ある程度の水深(例えば20cm以上)を有する水槽内や天然水域において、粒径が50μm以下のオゾンを含んだ微小気泡を発生させることで、気体溶解に伴う微小気泡の縮小の際、微小気泡の気液界面に高濃度に濃縮された電荷とオゾンが反応し、オゾンが促進的に分解されるので、酸性条件下でも水酸基ラジカルを水中に生成させることができる。従って、これらの方法は、酸性条件下においても簡易かつ効率的に水酸基ラジカルを含む水を製造することができる画期的な方法として自他共に認められているところであるが、さらに効果的に水酸基ラジカルを水中において生成させる方法の探求は、この分野における技術発展のために非常に意義深いものである。
特開2003−94075号公報 特開平9−122662号公報 特開2008−93612号公報 特開2008−237950号公報
そこで本発明は、水中において水酸基ラジカルを効果的に生成させる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、水中に貴金属などから構成される金属体を存在させておき、粒径が50μm以下の微小気泡をそこに供給するかまたはそこで発生させると、多量の水酸基ラジカルが生成することを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の水中における水酸基ラジカルの生成方法は、請求項1記載の通り、水中に金属体を存在させておき、粒径が50μm以下の微小気泡をそこに供給するかまたはそこで発生させることを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、金属体を構成する金属が金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの少なくともいずれかの貴金属またはこれらの少なくとも1種を含む合金であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、金属体の形状が粒状、板状、ワイヤ状、棒状のいずれかであることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、微小気泡が酸素および/またはオゾンを含むことを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、水のpHが7以下であることを特徴とする。
また、本発明の酸化対象物の処理方法は、請求項6記載の通り、酸化対象物を含む水中に請求項1記載の方法によって水酸基ラジカルを生成させ、生成した水酸基ラジカルで酸化対象物を酸化することを特徴とする。
本発明によれば、水中において水酸基ラジカルを効果的に生成させる方法を提供することができる。
実施例1において生成させた反応活性種としての水酸基ラジカルのESRスペクトルである。 実施例5におけるTOCの経時的変化を示すグラフである。
本発明の水中における水酸基ラジカルの生成方法は、水中に金属体を存在させておき、粒径が50μm以下の微小気泡をそこに供給するかまたはそこで発生させることを特徴とするものである。本発明によれば、水中に金属体を存在させておくことにより、水酸基ラジカルの生成量を飛躍的に増加させることができる。
本発明において、金属体を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの少なくともいずれかの貴金属が挙げられる。これらの金属は単独で使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。また、これらの金属を含む合金を使用してもよい。金属体の形状は特段限定されるものではなく、例えば、粒状、板状、ワイヤ状、棒状などが挙げられる。その使用量は、粒径が50μm以下の微小気泡の発生量などにも依存するが、例えば、水1Lに対して0.1g〜10gである。
なお、本発明において、水中に粒径が50μm以下の微小気泡を発生させる方法は、特許文献3に記載の通り、例えば、気液混合物を流動下において攪拌することにより行うことができる。この場合、回転子などを利用して半径が10cm以下の渦流を強制的に生じせしめ、壁面などの障害物や相対速度の異なる流体に気液混合物を打ち当てることにより、渦流中に獲得した気体成分を渦の消失とともに分散させることで、所望の微小気泡を大量に発生させることができる。また、2気圧以上の高圧下で気体を水中に溶解させた後、これを大気圧に開放することにより生じた溶解気体の過飽和条件から気泡を発生させることができる。この場合、圧力の開放部位において、水流と障害物を利用して半径が1mm以下の渦を多数発生させ、渦流の中心域における水の分子揺動を起因として多量の気相の核(気泡核)を形成させるとともに、過飽和条件に伴ってこれらの気泡核に向かって水中の気体成分を拡散させ、気泡核を成長させることにより、所望の微小気泡を大量に発生させることができる。なお、これらの方法によって発生した気泡群の濃度は100個/mL以上であり、1000個/mLよりも多い値となることも稀ではない(必要であれば特開2000−51107号公報や特開2003−265938号公報などを参照のこと)。
本発明において、微小気泡に含まれる気体は特段限定されるものではなく、例えば窒素を含む微小気泡であっても水中において効果的に水酸基ラジカルを生成させることができる。しかしながら、微小気泡に含まれる気体が酸素やオゾンなどの酸素原子を含む気体である場合やこれらの気体を含む気体(空気など)である場合、よりいっそう効果的に水酸基ラジカルを水中において発生させることができる。
微小気泡を発生させる水のpHは特段限定されるものではない。しかしながら、本発明に基づく水酸基ラジカルの生成効果は、酸性条件下(pH7以下)において優れている(pH5以下が望ましい)。この事実は、汚水処理などの水処理を行う場合、水のpHがアルカリ性であると処理中に過剰な沈殿物が生成することで処理条件が悪化する場合があることから、沈殿物の生成を抑制し、優れた処理効率を維持するためには、水のpHは酸性であることが望ましいという事情に好都合である。なお、水のpHを酸性にするための調整は、必要に応じて有機酸および/または無機酸を加えることで行うことが望ましい。この場合、有機酸としては酢酸やシュウ酸やクエン酸などを使用することができる。無機酸としては塩酸や硫酸や硝酸などを使用することができる。
水中に微小気泡を発生させた後、少なくとも1秒間、望ましくは少なくとも10秒間、微小気泡を水中で自然浮遊させることが望ましい。微小気泡を球形を保ちながら縮小させることで、気泡の分裂に伴う表面積の増加を防止することにより、微小気泡の気液界面に電荷をより高濃度に濃縮させることができるからである。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
例えば、特開2003−265938号公報に記載の方法に従って、4気圧の高圧下で、塩酸でpHを2.5に調整され、かつ、スピントラップ剤であるDMPO(5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド)を約5mg/Lの濃度で含有する水中に酸素を溶解させた後、これを大気圧に開放することにより生じた溶解酸素の過飽和条件から粒径分布が1μm〜50μmの酸素を含む微小気泡を水中に発生させ、これを直径約5mmの銅の粒を約1g入れた5Lのビーカーに供給し、10秒以上、微小気泡を水中で自然浮遊させた後、水中に含まれる反応活性種を電子スピン共鳴法(ESR)により測定した結果(スペクトル)を図1に示す。図1から明らかなように、このスペクトルからは、水酸基ラジカルに特徴的な1:2:2:1の大きさを示す4個のピークが認められ、左右のマンガンマーカー長に対する先頭のピーク長の比率は約40%であった。ピーク長と水酸基ラジカルの生成量は相関しているので、以上の結果から、粒径が50μm以下の酸素を含む微小気泡と銅の粒を水中で共存させることで、水中に多量の水酸基ラジカルを生成させることができることがわかった。
比較例1:
ビーカー中に銅の粒を存在させないこと以外は実施例1と同様の実験を行い、水中に含まれる反応活性種をESRにより測定した結果、実施例1で得られたスペクトルと同様に水酸基ラジカルのピークが認められたが、その先頭のピーク長は、実施例1で得られたスペクトルにおける先頭のピーク長の約1/8.5であった。よって、実施例1と比較例1の結果から、水中に銅の粒を存在させておくと、銅の粒が存在しない場合に比較して水酸基ラジカルの生成量が約8.5倍に増加することがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、水中において微小気泡と銅の粒を接触させることで、銅の粒の表面が水酸基ラジカルの生成に対する何らかの促進作用を発揮することが考えられた(銅のかわりに酸化銅を使用した場合や水中に銅イオンを存在させた場合には水酸基ラジカルの生成量が増加しないことを別途の実験で確認した)。
実施例2:
気体として酸素のかわりに窒素を使用すること以外は実施例1と同様の実験を行い、水中に含まれる反応活性種をESRにより測定した結果、実施例1で得られたスペクトルと同様に水酸基ラジカルのピークが認められた。左右のマンガンマーカー長に対する先頭のピーク長の比率は約20%であったことから、実施例1に比較して水酸基ラジカルの生成量はおよそ半分であったが、ビーカー中に銅の粒を存在させないで同様の実験を行った場合、水酸基ラジカルの生成はそのピークがノイズに埋もれてしまって明確に認めることができない程度に少量であることに鑑みれば、気体として窒素を使用した場合でも、水中に銅の粒を存在させておくことで、水酸基ラジカルを効果的に生成させることができることがわかった。
実施例3:
気体として酸素のかわりに無声放電によってその約3%をオゾンに変換したオゾン含有酸素を使用すること以外は実施例1と同様の実験を行い、水中に含まれる反応活性種をESRにより測定した結果、水酸基ラジカルのピークはノイズに埋もれてしまって明確に認めることができなかった。実験終了後、水中のDMPOを分析すると、そのほとんどが分解されていたので、この現象はDMPOを酸化分解してしまうほど多量に水酸基ラジカルが生成したことによるものと考えられたが、この考察は、微小気泡の水中での自然浮遊時間を数秒の短時間にした場合には水酸基ラジカルのピークが認められたことによって支持された。
比較例2:
散気管を利用して粒径分布が0.5mm〜3mmの酸素を含む気泡を水中に発生させたこと以外は実施例1と同様の実験を行い、水中に含まれる反応活性種をESRにより測定したところ、水酸基ラジカルのピークは全く認めることができなかった。以上の結果から、酸素を含む気泡の大きさが大きすぎると、水中に銅の粒を存在させておいても、そもそも水酸基ラジカルは生成しないことがわかった。
実施例4:
銅のかわりに金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムのそれぞれを使用した場合においても、使用しない場合に比較して水酸基ラジカルの生成量が増加することを実施例1と同様の実験において確認した。
実施例5:
自体公知の微小気泡発生装置(必要であれば特開2003−265938号公報を参照のこと)を使用して粒径分布が1μm〜50μmの空気を含む微小気泡を水中に連続的に発生させ、これを、繊維工場などからの排水に含まれる難分解性の有機化合物であるポリビニルアルコール(PVA)を酸化対象物として溶解させた水溶液(塩酸でpHを2.2に調整)を満たすとともに、直径約2mm×長さ約200mmの銅ワイヤ(約5g)を入れた5Lのビーカーに連続的に供給し(装置全体は循環ポンプを使用した閉鎖回路)、水中に含まれる全有機炭素量(TOC)の変化を島津製作所社製のTOC分析装置(TOC−V CHS)を使用して経時的に分析した。結果を図2に示す。図2から明らかなように、水中に含まれるTOCは、実験開始から30分後に一時的な増加が認められたが、その後は時間の経過とともに減少し、PVAが効率的に酸化分解されたことがわかった。PVAはオゾンをバブリングさせる方法によっても酸化分解されないほどに難分解性であるにもかかわらずこのような結果が得られたのは、水中に生成した水酸基ラジカルの優れた酸化能力によるものと考えられた。
比較例3:
ビーカー中に銅ワイヤを存在させないこと以外は実施例5と同様の実験を行ったところ、実験開始から2時間以内ではPVAは酸化分解されなかった(PVAの酸化分解はその後において確認できた)。
実施例6:
気体として空気のかわりにオゾンを使用し、PVAのかわりに電子部品工場などからの排水に含まれる難分解性の有機化合物である陰イオン界面活性剤(MBAS)を酸化対象物とすること以外は実施例5と同様の実験を行った。その結果、試験開始直後に液面から大量の発泡(泡沫)が生じたが、約1時間後にはMBASの酸化による不活化によって発泡は収まった。
比較例4:
ビーカー中に銅ワイヤを存在させないこと以外は実施例6と同様の実験を行ったところ、実験開始から3時間以内では発泡は収まらず、MBASの酸化による不活化には時間を要することがわかった。
本発明は、水中において水酸基ラジカルを効果的に生成させる方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 水中における水酸基ラジカルの生成方法であって、水中に金属体を存在させておき、粒径が50μm以下の微小気泡をそこに供給するかまたはそこで発生させることを特徴とする方法。
  2. 金属体を構成する金属が金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの少なくともいずれかの貴金属またはこれらの少なくとも1種を含む合金であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 金属体の形状が粒状、板状、ワイヤ状、棒状のいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 微小気泡が酸素および/またはオゾンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. 水のpHが7以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
  6. 酸化対象物を含む水中に請求項1記載の方法によって水酸基ラジカルを生成させ、生成した水酸基ラジカルで酸化対象物を酸化することを特徴とする酸化対象物の処理方法。
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