JP2011044449A - ボロメータ材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボン薄膜を材料として、室温付近で高いTCR絶対値を有するボロメータ材料を製造できる技術を提供する。
【解決手段】カーボン薄膜を通電しながら酸処理を施すことによりボロメータ材料を作製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ボロメータ材料の製造方法に関する。
全ての物質は、その物質がもつ温度に由来する赤外線を放射している。その赤外線を検知し、観測対象の温度を検出する素子は、一般に赤外線センサとよばれる。このような赤外線センサをマイクロレベルでアレイ化したものが、赤外線イメージング技術に用いられる。赤外線イメージング技術を用いることによって、観測対象の温度の差異を画像化することができるため、夜間などの暗視野においてもビデオ撮影が可能となる。そのため、防犯カメラや監視カメラなどの用途に必要な技術となっている。また、近年では、インフルエンザなどによって発熱している人を判別する用途としても注目されている。
赤外線は、可視光よりも長い波長領域の電磁波の総称であり、おおよそ、近赤外 (〜約3μm)、中赤外(約3〜8μm)、遠赤外(約8〜14μm)などが、赤外線センサで応用される波長範囲となる。
特に、遠赤外線は、大気による吸収が少ないこと、また、人間の体温が10μm近辺の遠赤外線を放射していることなどの理由から、人間の生活環境を観測対象とした赤外線センサとして重要となる。
赤外線センサ材料としては、HgCdTeをセンサ材料とした量子型赤外線センサが広く使われてきた。しかしながら、量子型赤外線センサでは、素子温度を少なくとも液体窒素温度(77K)まで冷却する必要があるため、機器の小型化に制約があった。
そこで、近年、素子を低温まで冷却する必要が無い非冷却型赤外線センサが広まっている。非冷却型赤外線センサとしては、素子の温度変化に伴う電気抵抗の変化を検出することを原理とするボロメータが広く用いられている。ボロメータの素子材料としては、バナジウム酸化物やアモルファスSiなどを薄膜状に形成させた材料が使われている。
ボロメータの性能指標としては、いくつかのパラメータが挙げられるが、特に、TCR(抵抗温度係数:Temperature Coefficient of Resistance)と呼ばれる電気抵抗の温度変化率(温度1度あたりの抵抗変化率)と、抵抗率(Resistivity、比抵抗ともよぶ)というパラメータが重要となる。一般に、TCRの絶対値が大きくなると、赤外線センサの温度分解能(NETD)が小さくなり感度が向上する。抵抗率もまた、一定値以上にすることが望ましい。こうすることで、ボロメータ以外の配線抵抗とボロメータ材料の電気抵抗との差を一定値以上にすることができる。しかしながら、抵抗率が大きくなりすぎると、ノイズが大きくなってしまい好ましくない。そのため、装置の高感度を達成するためには、抵抗値を一定範囲に制御することも重要である。なお、ボロメータで用いられる材料としては、半導体的な性質を示すものが適当であるため、TCRは負の値となる。そこで、絶対値としてのTCRを以下「TCR絶対値」という。
現在、非冷却型ボロメータに用いられている材料としては、室温におけるTCRが約−2%/Kの酸化バナジウム薄膜が用いられている(非特許文献1)。しかしながら、酸化バナジウムには様々な結晶相が存在し、それぞれ特有の性質を示す。成膜時にそれらの混在比率を一定にしにくいなどの理由により、アレイ化した際に、アレイ間での性能ばらつきが必ずしも十分に小さいとはいえないのが現状である。
また、酸化バナジウム以外では、アモルファスシリコンや多結晶シリコン−ゲルマニウムなどの材料も製品化されている。しかしながら、酸化バナジウムを上回る性能が得られるにはいたっていない。これらの材料では、抵抗率が大きすぎることが問題となる。
このような技術的背景の中、カーボン材料を用いたボロメータの研究例が多く報告されている。たとえば、非特許文献2、3のように、カーボン材料としてカーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)、特に単層カーボンナノチューブ(以下、SWNTともいう)を用いたボロメータの研究例がある。
SWNTは、直径によってバンドギャップを制御できる。SWNTの直径が0.5nm〜5.0nmの範囲においては半導体的な性質を示し、その範囲のバンドギャップは1μm〜12μmのエネルギーに相当し、赤外線を吸収する波長領域にある。
非特許文献2では、40μmの溝上に数本のSWNTを気相成長させて形成させたボロメータが、77K〜275Kの温度範囲において、TCRが−1.23%/Kであり、抵抗値は275Kで60.7kΩあったと報告されている。複数のSWNTを干渉させずに、直線状に気相成長させることはそれほど簡単な技術ではないが、SWNTそのものがもつ性質としての赤外線吸収が検証されている。
また、非特許文献3では、SWNT同士が重なり合う網目状の薄膜を形成し、単一のSWNTがもつバンドギャップのエネルギー吸収を利用するだけではなく、SWNT自体には主に電気伝導体の役割を持たせ、SWNT同士の接点における電気伝導が要因となる電気抵抗の温度変化を利用した例が報告されている。SWNTを薄膜状に形成する方法としては、比較的簡単な塗布法などを用いることができるため、材料としての応用性は高い。
ところで、SWNTなどのCNTを薄膜した材料は、ITOなどの透明電極の代替材料としても期待されている(非特許文献4)。そのような用途においては、CNT薄膜の電気抵抗をできる限り小さくすることが求められる。導電性薄膜においては、例えば、特許文献1には、薄膜形成後に酸処理を行うことによって、電気抵抗を低減する方法が提案されている。
特開2008−222545号公報
N.Butler et. al.,SPIE Proceedings vol.2252(1995) Infrared Technology XXI, pp. 583 F.Rao et, Nanotechnology vol.20, pp.055501 (2009) M.E.Itkis et, Science, vol. 312, pp.413 (2006) Z.Wu et, Science, vol. 305, pp.1273 (2004)
しかしながら、上記文献記載の技術では、カーボン薄膜をボロメータ材料として用いた場合、室温付近で十分に高いTCR絶対値が得られないという問題があった。たとえば、非特許文献3においては、100Kで−2.5%/Kと高いTCR絶対値を得ているが、温度上昇につれてTCR絶対値は低下していき、300KではTCR絶対値が0に近いところにまで低下してしまう。また、非特許文献2に記載のものも、300Kでは、TCR絶対値が0に近いところにまで低下してしまう。そのため、カーボン薄膜は、室温付近で用いる赤外線センサに適用することが難しいという問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カーボン薄膜を材料として、室温(25℃)付近で高いTCR絶対値を有するボロメータ材料を製造できる技術を提供することにある。
本発明によれば、カーボン薄膜を通電しながら酸処理を施すことによりボロメータ材料を作製する、ボロメータ材料の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記のいずれかの方法で製造された、ボロメータ材料が提供される。
また、本発明によれば、上記のボロメータ材料を用いた、ボロメータ素子が提供される。
また、本発明によれば、基板と、前記基板上にアレイ状に配列された複数のボロメータ素子と、を有し、前記ボロメータ素子が上記のボロメータ素子である、赤外線センサが提供される。
また、本発明によれば、基板上にアレイ状に上記のボロメータ素子を複数個配列させる、赤外線センサの製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の赤外線センサを用いて赤外線吸収を検出する方法が提供される。
本発明によれば、室温付近で高いTCR絶対値を有するボロメータ材料を製造できる技術が提供される。
以下、本発明の実施の形態について、説明する。本実施の形態は、カーボン薄膜を通電しながら酸処理を施すことによりボロメータ材料を作製する、ボロメータ材料の製造方法である。
より具体的には、本実施の形態のボロメータ材料の製造方法は、以下の各工程からなる。
(i)カーボン薄膜を成膜する工程
(ii)カーボン薄膜を通電させる工程
(iii)通電状態のカーボン薄膜を酸性溶液に浸積させて酸処理を施す工程
(iv)酸処理したカーボン薄膜を洗浄する工程
(v)洗浄した酸処理後のカーボン薄膜を乾燥する工程
以下各工程について詳細に説明する。
[(i)カーボン薄膜を成膜する工程]
カーボン薄膜の成膜方法としては、カーボン粒子同士が接触しあい、積層構造を形成しているカーボン薄膜を形成させることができれば、どのような方法をも用いることができる。カーボンを気相成長法(CVD法、レーザーアブレーション法等)により気相成長させて、そのまま薄膜化させてもよいし、すでに粒子状になったカーボンを何らかの方法で薄膜化させてもよい。
より簡単な方法としては、溶媒中にカーボン粒子を分散させた溶液を原料として基材に積層させる方法が挙げられる。この方法としては、印刷法、インクジェット法、スプレー塗布法、スピンコート法、ディップコート法、又は、ろ過法等が挙げられる。
基材としては、例えば、シリコン等の半導体基板が挙げられる。基材には、赤外線センサの部材として、絶縁膜や配線等が形成されていてもよい。また、溶媒に分散剤などを加えてカーボン粒子を分散させることも有効である。分散剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムといった界面活性剤、ゼラチン、シクロデキストリン、でんぷん又はピレン誘導体等が挙げられる。また、カーボン粒子の分散方法としては、超音波分散や攪拌などの方法も挙げられる。
使用する溶媒に関しては特に限定を加えることはないが、成膜法に応じて適宜選択することができる。たとえば、塗布法により基材に塗布するときは、溶媒は、室温で液体であり、沸点が水の沸点以下である揮発性の高い溶媒が好ましく、例えば、水、炭素数1〜12の脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、炭素数1〜12の脂肪族エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、ジクロロエタン、クロロホルム等が例示される。
塗布法の一例として、エタノールにカーボン粒子を分散させ、基材上に塗布することによって、薄膜形成させる方法が挙げられる。
また、インクジェット法、スプレー塗布法又は滴下法などによってカーボン薄膜を形成させる場合は、カーボン粒子を比較的粘度の高い溶媒に分散させてインク状もしくはペースト状とすることが好ましい。このような粘性のある溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルジグリコール、グリセリン、α−テルピネオール等が例示される。
スピンコート法を用いる場合、赤外線素子を形成したウェハ上に直接スピンコートする方法が適当である。この方法を用いる場合、一回のコーティングによって形成される薄膜の膜厚は十分に厚いとはいえない。そこで、複数回コーティングを繰り返すことで適当な膜厚のカーボン薄膜を得ることができる。コーティングを複数回行う場合は、薄膜を乾燥させた後に積層させるプロセスとすることが望ましい。
また、ディップ法では、カーボン粒子を分散させた溶液中に、基材を浸漬させて薄膜を形成させる。この方法を用いる場合、一回の浸漬によって形成される薄膜の膜厚は十分に厚いとはいえない。そこで、複数回浸漬を繰り返すことで適当な膜厚のカーボン薄膜を得ることができる。
カーボン薄膜の成膜に使用するカーボン材料としては、数nm〜数μmオーダーのカーボン粒子を用いることが望ましい。特に、アスペクト比が大きいもの、チューブ状の構造を持つものが望ましい。具体的には、カーボンナノチューブ(CNT)、より具体的には単層カーボンナノチューブ(SWNT)や多層カーボンナノチューブ(MWNT)などのように、微視的レベルにおいてチューブ構造を持つカーボン粒子が適当である。また、カーボンナノホーンのような構造であってもよい。このようなカーボン材料を用いて成膜することで、成膜に使用したカーボン材料から構成されるカーボン薄膜を得ることができる。
カーボンナノチューブを用いる場合、その直径は、0.5nm〜5.0nmの範囲にするとよい。SWNTの場合、直径を上記範囲とすることで、バンドギャップが1μm〜12μmのエネルギーに相当することとなる。したがって、SWNTからなる薄膜が赤外線を吸収することができるようになる。
カーボン薄膜は、例えば、厚さ10nm〜1μm程度とする。カーボン薄膜の厚みは、SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)で観察することで測定することができる。カーボン薄膜の幅は、数mm程度とすることができる。ただし、実際に素子形成する際には、数μm〜数100μmオーダーのサイズとすることが望ましい。
[(ii)カーボン薄膜を通電させる工程]
まず、カーボン薄膜の両端付近に電極線を接触させるように設置する。ついで、耐酸性ろ紙で挟み、さらにスライドガラスで挟み、クリップで固定する。この電極線を通じてカーボン薄膜を通電させることができる。電極線には、例えば、白金線を用いることができる。
通電条件としては、例えば10nm〜1μm程度の厚さをもち、数mm程度の幅をもつ薄膜であるならば、1〜10V程度の電圧をかけることが適当である。その際に、1×10−6A〜1×10−1A程度の電流が流れる条件が適当である。ただし、通電条件は、薄膜を形成する基盤の形状や面積などによって適正値が変わるため、特に限定することはない。
[(iii)通電状態のカーボン薄膜を酸性溶液に浸積させて酸処理を施す工程]
酸処理に用いる酸としては、酸処理能力をもち、通電状態を維持できる条件にあるならば、特に限定することはないが、pH4以下で行うことが好ましく、pH1以下で行うとより好ましい。酸処理に用いる酸としては、硝酸、硫酸、塩酸又はリン酸などを挙げることができる。これらの酸は、水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール)などの溶媒に溶解し、任意の濃度に調整して用いてもよい。硝酸は、乾燥させることによる残渣が少ないこと、酸処理能力が高いことなどの理由から特に好ましい。酸処理は、通電状態を維持しつつ行い、10分以上行うことで、TCR絶対値を十分に大きくすることができる。また、この酸処理を1時間〜2時間行うことで、0℃〜50℃におけるTCR絶対値が0.5%/K以上であり、かつ、電気抵抗率が10Ω・cm以下のボロメータ材料を得ることができる。
[(iv)酸処理したカーボン薄膜を洗浄する工程]
酸処理の終了後、通電を停止し、酸処理で用いた酸が除去されるよう洗浄する。例えば、水等で洗い流して洗浄させればよい。
[(v)洗浄した酸処理後のカーボン薄膜を乾燥する工程]
薄膜の洗浄後、酸処理で用いた酸の残渣、及び、洗浄で用いた水等が薄膜から除去されるよう乾燥させる。乾燥は、薄膜を加熱して行うことが好ましい。例えば、電気炉で熱したり、熱風に晒したりことで加熱乾燥させることができる。加熱乾燥は、除去すべき物質が除去できる温度以上で行うと好ましく、例えば、水を除去する場合は、80℃以上にするとよい。また、薄膜を構成するカーボン粒子が蒸発しない温度以下にすることが好ましく、例えば、500℃以下にすることができる。さらに、150℃〜300℃で行うことで、0℃〜50℃におけるTCR絶対値が0.5%/K〜1%/Kであり、かつ、電気抵抗率が0.1Ω・cm〜10Ω・cmのボロメータ材料が得ることができる。乾燥時間は、30分〜2時間とすることができる。
このようにして製造されたボロメータ材料に、配線等を取り付けてボロメータ素子を得る。このボロメータ素子をシリコン等の半導体基板上に複数個アレイ状に配列させ、必要に応じて任意の部材を取り付け、赤外線センサを得ることができる。得られた赤外線センサを用いて、赤外線カメラや赤外線イメージング装置を作製してもよい。
得られた赤外線センサを用いれば、室温下で、感度よく赤外線吸収を検出することができる。
つづいて、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、カーボン薄膜を通電しながら酸処理を施すことにより、室温(25℃)におけるTCR絶対値を向上した炭素材料からなるボロメータ材料を得ることができる。このメカニズムは明らかではないが、通電しながら酸処理を行なうと、カーボン粒子のコンタクト部分における接触抵抗の影響で局所的に発熱しやすくなり、その結果、酸処理によりコンタクト部分に選択的に欠陥が形成されて電気抵抗が高くなる傾向があり、TCR絶対値の向上につながると考えられる。
従来、特にカーボン粒子としてSWNTを赤外線吸収に利用する場合、SWNTが絡み合わないように成長させる必要があるが、製造方法が難しいという問題点があった。また、SWNT同士が絡み合うような薄膜を形成した場合、そのままでは室温付近で十分に高いTCR絶対値が得られにくいため、室温付近で用いる機器に適用することが難しいという問題点があった。
そこで、十分なTCR絶対値を得るため、カーボン薄膜になんらかの処理が必要とされた。例えば、簡単な処理方法としては、酸処理などが有効とも考えられるが、酸処理のみを施すと、薄膜形成前後に関わらず、ランダムな箇所でSWNTが酸処理の影響を受けるため、SWNT自体及び薄膜全体の電気抵抗が低下してしまう。その結果、TCR絶対値も減少してしまうという問題点があった。
一方、本実施形態のように、薄膜に通電しながら酸処理を行うことで、カーボン粒子のコンタクト部分に選択的に欠陥を与えることができる。したがって、電気伝導性を低下させて、電気抵抗を高くすることができ、TCR絶対値の向上につながると考えられる。
また、本実施形態の方法で処理された薄膜は、加熱乾燥を行うことでさらにカーボン粒子のコンタクト部分に欠陥を与えることができる。これは、酸処理で与えられた欠陥に熱処理が加わることで、さらに十分な欠陥をカーボン粒子に付与できるものと考えられる。したがって、適度な加熱乾燥を行うことで、TCR絶対値をさらに向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
(実施例)
SWNT(本荘ケミカル社製、直径平均1.5nm)1.0mgを、50mLのエタノールに加え、超音波装置を用いて1時間超音波分散させた。得られたSWNTの分散液10mLを、40mLのエタノールと混合し、さらに超音波分散処理を1時間行った。このように調整したSWNTの分散液20mLを用い、スピンコート法によってMgO基板上にカーボン薄膜を形成した。MgO基板は、1.0cm×1.5cmで、厚さ0.5mmのものを用いた。ついで、カーボン薄膜の両端付近に白金線を接触させるように設置し、それを耐酸性ろ紙で挟み、さらにスライドガラスで挟み、クリップで固定した。ついで、白金線を通じて、外部電源から3Vを印加して30mA(3×10−2A)の電流を流した。そのまま70%硝酸(pH<1)に薄膜部分が浸漬されるようにし、1時間、通電状態を保持しつつ酸処理を行った。処理終了後、十分に水洗し、150℃1時間電気炉内で乾燥させた。その後、薄膜の断面をSEMで観察した結果、薄膜の膜厚は、300nmであることが確認できた。
(比較例1)
実施例と同様にMgO基板上にカーボン薄膜を形成した後、通電及び酸処理を行わずにMgO基板ごと150℃1時間電気炉内で乾燥させた。薄膜の断面をSEM観察することによって、膜厚は300nmであることが確認できた。
(比較例2)
まず、70%硝酸中で1時間浸漬させたSWNTを、十分に水洗後、80℃で1時間乾燥させた。この硝酸処理をしたSWNT1.0mgに関して、実施例と同様の方法で薄膜化し、薄膜をMgO基板ごと150℃1時間電気炉内で乾燥させた。断面をSEM観察することによって、膜厚は300nmであることが確認できた。
(比較例3)
実施例と同様の方法でMgO基板上にカーボン薄膜を形成した後、通電させずに、70%硝酸に1時間浸漬させた。硝酸浸漬後、十分に水洗し、150℃で1時間乾燥させた。
(TCR及び電気抵抗率の測定)
実施例及び比較例1〜3で得られた薄膜上に、電気抵抗測定用の四端子を、金蒸着によって形成した。この際、端子間の距離は2mmとした。次に、0℃〜50℃まで温度を変化させながら、バイアス電流1μA印加のもと、4端子測定によって電圧を計測した。
比較例および実施例の測定結果を、表1にまとめた。比較例1では、TCRは−0.1%/K、電気抵抗率は0.02Ω・cmであった。比較例2および比較例3では、抵抗率に顕著な差はみられなかったが、TCR絶対値が1桁減少する結果となった。それに対し、実施例では、TCRは−0.5%/K、電気抵抗率は0.4Ω・cmと、電気抵抗率が一桁大きくなるものの、TCR絶対値が5倍に増大することを実証することができた。
Figure 2011044449
このように、本発明の方法を用いることによって、ボロメータ型赤外線センサに用いるボロメータ材料としてのカーボン薄膜、特にSWNT薄膜の抵抗率およびTCR絶対値を増大することが可能となる。

Claims (20)

  1. カーボン薄膜を通電しながら酸処理を施すことによりボロメータ材料を作製する、ボロメータ材料の製造方法。
  2. 通電状態の前記カーボン薄膜を酸性溶液に浸積させることで前記酸処理を施す、請求項1に記載のボロメータ材料の製造方法。
  3. 前記酸性溶液は、硝酸、硫酸、塩酸及びリン酸からなる群から選ばれる、請求項1または2に記載のボロメータ材料の製造方法。
  4. 前記酸処理は、pH4以下で行う、請求項1乃至3いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  5. 電圧が1V〜10V、電流が1×10−6A〜1×10−1Aの条件下で、1時間〜2時間通電しながら前記酸処理を施す、請求項1乃至4いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  6. 前記カーボン薄膜がチューブ状のカーボン粒子からなる、請求項1乃至5いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  7. 前記カーボン薄膜は、カーボンナノチューブである、請求項1乃至6いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  8. 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである、請求項7に記載のボロメータ材料の製造方法。
  9. 前記カーボン薄膜が、カーボンナノホーンからなる、請求項1乃至8いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  10. 前記カーボン薄膜は基材上に形成されており、
    溶媒中に分散したカーボン粒子を前記基材に積層させることにより、前記基材上に前記カーボン薄膜を形成する、請求項1乃至9いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  11. 前記カーボン薄膜は基材上に形成されており、
    印刷法、インクジェット法、スプレー塗布法、スピンコート法、ディップコート法、及び、ろ過法のいずれかを用いて前記基材上に前記カーボン薄膜を形成する、請求項1乃至10いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  12. 前記酸処理を施した前記カーボン薄膜を加熱乾燥して前記ボロメータ材料を作製する、請求項1乃至11いずれかに記載のボロメータ材料の製造方法。
  13. 前記加熱乾燥は、150℃〜300℃で行う、請求項12に記載のボロメータ材料の製造方法。
  14. 請求項1乃至13に記載のいずれかの方法で製造された、ボロメータ材料。
  15. 0℃〜50℃におけるTCRの絶対値が0.5%/K以上である、請求項14に記載のボロメータ材料。
  16. 電気抵抗率が0.1Ω・cm〜10Ω・cmである、請求項15に記載のボロメータ材料。
  17. 請求項14乃至16いずれかに記載のボロメータ材料を用いた、ボロメータ素子。
  18. 基板と、
    前記基板上にアレイ状に配列された複数のボロメータ素子と、
    を有し、
    前記ボロメータ素子が請求項17に記載のボロメータ素子である、赤外線センサ。
  19. 請求項17に記載のボロメータ素子を基板上にアレイ状に複数個配列させる、赤外線センサの製造方法。
  20. 請求項18に記載の赤外線センサを用いて赤外線吸収を検出する方法。
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