JP2011042138A - 光学素子の製造方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光走査装置に用いられる光学素子を射出成形により製造する際、像面湾曲、波面収差、そして走査線の曲がり等の低減が容易な光学素子の製造方法及び画像形成装置を得ること。
【解決手段】 光走査装置に用いられる光学素子の製造方法において、
前記光学素子は、光軸を含む母線の上を光束が通過することなく、かつ射出成形にて作成される光学素子であり、前記光学素子を射出成形する際は、イニシャル成形工程を初めとする種々の工程を用いて成形されること。
【選択図】 図1
【解決手段】 光走査装置に用いられる光学素子の製造方法において、
前記光学素子は、光軸を含む母線の上を光束が通過することなく、かつ射出成形にて作成される光学素子であり、前記光学素子を射出成形する際は、イニシャル成形工程を初めとする種々の工程を用いて成形されること。
【選択図】 図1
Description
本発明は光学素子の製造方法及び画像形成装置に関し、電子写真プロセスを有するレーザービームプリンタやデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(多機能プリンタ)等の画像形成装置に好適なものである。
従来よりレーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機の光走査装置においては画像信号に応じて光源手段から光変調され出射した光束を、回転多面鏡(ポリゴンミラー)より成る光偏向器(偏向手段)により周期的に偏向させている。そして偏向された光束をfθ特性を有する結像光学系によって感光性の記録媒体(感光ドラム)面上にスポット状に集束させ、その面上を光走査して画像記録を行っている。
この種の光走査装置において、結像光学系には、製造が容易で軽量なプラスチックレンズが用いられることが多い。プラスチックレンズは射出成形による大量生産に向いているのが特徴である。
一方で、感光ドラム面上の像面湾曲を良好にし、かつ感光ドラム面上の走査線湾曲の低減およびfθ特性を良好にするためプラスチックレンズの光学機能面の形状は非球面形状で設計されることが多い。そのため、プラスチックレンズの光学機能面は、射出成形により所望の非球面形状に再現させる必要がある。
ところで、射出成形によりプラスチックからなるレンズを成形する場合、プラスチックの成形収縮により完成したレンズの表面形状が劣化するということが一般に知られている。例えば、プラスチックレンズを素材としてレンズを成形する場合、完成したレンズは鏡面駒で形成されるキャビティの寸法よりも小さくなっている。また光学機能面の形状も同様に鏡面駒の表面形状に対し、成形収縮により変形する。このような誤差が設計許容範囲内にない場合、この成形品は製品として用いることができない。
しかしながら、成形時に生じる型からの変位が安定し、成形日時や環境によって大きく変動しないのであれば、この誤差をあらかじめ型形状で補正することにより、成形品の形状を設計許容範囲内にいれ、製品として使用することができる。
成形時の収縮や変形分等を盛り込んで鏡面駒を作成する方法は、従来から種々と提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1では、一度成形してレンズの光学機能面の形状誤差を測定し、樹脂の不均一な収縮の影響による形状誤差を相殺するように金型の鏡面駒を修正する方法を開示している。特許文献2では、光学特性の測定結果から像面湾曲を相殺するように一部の光学機能面の形状を補正する方法を開示している。
近年では、結像光学系におけるレンズ光軸を含む母線を光束(光線)が通過しないような光学系(たとえば、斜入射光学系)が装置全体のコンパクト化を図る目的で多く用いられている。このような光学系では、副走査断面の形状の変化(光線がレンズの光学機能面を通過する位置における副走査方向の法線角度の変化)によって45度方向の波面収差(以降、「45度アス」と称す。)が変化することが知られている。
特許文献2では、光学ピント測定で得られた像面湾曲を補正するように特定の光学機能面における部分曲率を再設計することは開示されているが、光線通過する位置における傾きについては開示されていない。このため、特許文献2で開示されている手法では、45度アスが劣化し、感光ドラム面上におけるスポットが肥大する恐れがある。
また、副走査断面の形状(光線がレンズの光学機能面を通過する位置における副走査方向の法線角度)によって感光ドラム面上における光線到達高さが変わる。そのため、特許文献2で開示されている手法では、感光ドラム面上における光線到達高さが変化することで走査線の曲がりが劣化する恐れがある。
本発明は光走査装置に用いられる光学素子を射出成形により製造する際、像面湾曲、波面収差、そして走査線の曲がり等の低減が容易な光学素子の製造方法及び画像形成装置の提供を目的とする。
本発明の光学素子の製造方法は、光走査装置に用いられる光学素子の製造方法において、
前記光学素子は、光軸を含む母線の上を光束が通過することなく、かつ射出成形にて作成される光学素子であり、前記光学素子を射出成形する際は、前記光学素子の光学機能面に一定の形状誤差が安定して形成されるように成形条件を設定するイニシャル成形工程と、前記射出成形された光学素子を使用時と同等の配置である評価装置内に取り付け、像面において複数の像高の光軸方向の焦点ずれ量、波面収差量、そして走査線曲がり量を測定する光学測定工程と、前記光学素子のすべての光学機能面の形状を測定し、複数の像高に向かう光線が前記光学機能面を通過する位置において、副走査方向の曲率と副走査方向の傾きが測定結果に最も近くなるような曲面モデルを決定する形状近似工程と、前記形状近似工程で得られた非球面係数による曲面モデルを用いた光学シミュレーションで、光学系の焦点ズレ量、走査線曲がり量、そして波面収差量を評価する評価工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における光軸方向の焦点ずれ量の変化量を求め、各非球面係数の変化に対する焦点ずれ量の敏感度を算出する焦点ズレ感度算出工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における走査線曲がり量と波面収差量を求め、各非球面係数の変化に対する走査線曲がり量と波面収差量の敏感度を算出する傾き感度算出工程と、前記評価工程で得られた焦点ずれ量と前記焦点ズレ感度算出工程で得られた焦点ずれ量を計算した結果との差分に一致するように、1面以上の光学機能面の形状を前記焦点ずれ量の敏感度により新たに再設計する第1の再設計工程と、前記評価工程で得られた走査線曲がり量と前記傾き感度算出工程で得られた走査線曲がり量を計算した結果との差分に一致し、かつ波面収差量を劣化させないように、1面以上の光学機能面の形状を前記走査線曲がり量の敏感度により新たに再設計する第2の再設計工程と、前記第1の再設計工程、第2の再設計工程で求めた面において、前記形状近似工程と前記第1の再設計工程、第2の再設計工程とで求められた形状と設計値の形状との差異を反映させて、成形用型部材のキャビティ面の形状を補正加工する補正工程と、前記補正工程で得られた鏡面駒で成形を行う本成形工程と、を用いていることを特徴としている。
前記光学素子は、光軸を含む母線の上を光束が通過することなく、かつ射出成形にて作成される光学素子であり、前記光学素子を射出成形する際は、前記光学素子の光学機能面に一定の形状誤差が安定して形成されるように成形条件を設定するイニシャル成形工程と、前記射出成形された光学素子を使用時と同等の配置である評価装置内に取り付け、像面において複数の像高の光軸方向の焦点ずれ量、波面収差量、そして走査線曲がり量を測定する光学測定工程と、前記光学素子のすべての光学機能面の形状を測定し、複数の像高に向かう光線が前記光学機能面を通過する位置において、副走査方向の曲率と副走査方向の傾きが測定結果に最も近くなるような曲面モデルを決定する形状近似工程と、前記形状近似工程で得られた非球面係数による曲面モデルを用いた光学シミュレーションで、光学系の焦点ズレ量、走査線曲がり量、そして波面収差量を評価する評価工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における光軸方向の焦点ずれ量の変化量を求め、各非球面係数の変化に対する焦点ずれ量の敏感度を算出する焦点ズレ感度算出工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における走査線曲がり量と波面収差量を求め、各非球面係数の変化に対する走査線曲がり量と波面収差量の敏感度を算出する傾き感度算出工程と、前記評価工程で得られた焦点ずれ量と前記焦点ズレ感度算出工程で得られた焦点ずれ量を計算した結果との差分に一致するように、1面以上の光学機能面の形状を前記焦点ずれ量の敏感度により新たに再設計する第1の再設計工程と、前記評価工程で得られた走査線曲がり量と前記傾き感度算出工程で得られた走査線曲がり量を計算した結果との差分に一致し、かつ波面収差量を劣化させないように、1面以上の光学機能面の形状を前記走査線曲がり量の敏感度により新たに再設計する第2の再設計工程と、前記第1の再設計工程、第2の再設計工程で求めた面において、前記形状近似工程と前記第1の再設計工程、第2の再設計工程とで求められた形状と設計値の形状との差異を反映させて、成形用型部材のキャビティ面の形状を補正加工する補正工程と、前記補正工程で得られた鏡面駒で成形を行う本成形工程と、を用いていることを特徴としている。
本発明によれば光走査装置に用いられる光学素子を射出成形により製造する際、像面湾曲、波面収差、そして走査線の曲がり等の低減が容易な光学素子の製造方法及び画像形成装置を達成することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
図1は本発明の実施例1における光学素子の製造方法を示すフローチャートである。図2(A)は本発明の製造方法にて製造された光学素子を用いた光走査装置の実施例1の主走査方向の要部断面図(主走査断面図)である。図2(B)は図2(A)の副走査方向の要部断面図(副走査断面図)である。
[実施例1]
図1は本発明の実施例1における光学素子の製造方法を示すフローチャートである。図2(A)は本発明の製造方法にて製造された光学素子を用いた光走査装置の実施例1の主走査方向の要部断面図(主走査断面図)である。図2(B)は図2(A)の副走査方向の要部断面図(副走査断面図)である。
尚、以下の説明において、副走査方向(Z方向)とは、偏向手段の回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向(偏向手段の回転軸と平行な方向)を法線とする断面である。主走査方向(Y方向)とは、偏向手段で偏向走査される光束を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
図2(A)、(B)において、1は光源手段であり、例えば半導体レーザー等より成っている。尚、本実施例では光源手段1を単一の発光部(発光点)1aより構成したが、これに限らず、例えば2つ以上の発光部から構成しても良い。もしくは単一の発光部を有する光源を複数個用いて構成しても良い。複数の発光部を有することで光偏向器の回転速度を高速にすることなく光走査の高速化が可能となる。
2は開口絞りであり、通過光束を制限してビーム形状を整形している。3はコリメータレンズ(集光レンズ)であり、光源手段1から出射された発散光束を平行光束に近い光束に変換している。4はシリンドリカルレンズであり、副走査断面内(副走査方向)にのみ所定のパワーを有しており、コリメータレンズ3を通過した光束を副走査断面内で後述する光偏向器5の偏向面(反射面)5aもしくはその近傍にほぼ線像として結像させている。尚、コリメータレンズ3とシリンドリカルレンズ4を1つの光学素子より構成しても良い。また開口絞り2、集光レンズ3、そしてシリンドリカルレンズ4等の各要素は入射光学系LAの一要素を構成している。
本実施例では副走査断面内において、コリメータレンズ3の光軸およびシリンドリカルレンズ4の光軸を光偏向器5の偏向面5aに対して傾けて構成している。つまり、光源手段1から発せられた光束が光偏向器5の偏向面5aに副走査方向に斜めに入射(斜入射)するように構成している(斜入射光学系)。
5は偏向手段としての光偏向器であり、例えば5面構成のポリゴンミラー(回転多面鏡)より成っており、モーター等の駆動手段(不図示)により図中矢印A方向に一定速度で回転している。6は集光機能とfθ特性とを有する結像光学系であり、後述する本発明の製造方法にて製造された光学素子としての第1、第2の結像レンズ(fθレンズ)6a、6bより成っている。第1、第2の結像レンズ6a、6bは各々光軸を含む母線の上を光束が通過しない光学素子であり、射出成形によって製造されたプラスチックレンズより成り、光偏向器5によって偏向走査された画像情報に基づく光束を被走査面8上に結像させている。かつ第1、第2の結像レンズ6a、6bは副走査断面内において光偏向器5の偏向面5aと感光ドラム面8との間を共役関係にすることにより、偏向面の面倒れ補償を行っている。
本実施例において半導体レーザー1から出射した発散光束は開口絞り2によって該光束(光量)が制限され、コリメータレンズ3により平行光束に近い光束に変換され、シリンドリカルレンズ4に入射している。シリンドリカルレンズ4に入射した平行光束のうち主走査断面においてはそのままの状態で射出する。また副走査断面内においては収束して光偏向器5の偏向面5aにほぼ線像(主走査方向に長手の線像)として結像している。そして光偏向器5の偏向面5aで偏向走査された光束は結像光学系6を介して感光ドラム面8上にスポット状に結像され、該光偏向器5を矢印A方向に回転させることによって、該感光ドラム面8上を矢印B方向(主走査方向)に等速度で光走査している。これにより記録媒体としての感光ドラム面8上に画像記録を行なっている。
[光学素子の製造方法]
本実施例における光学素子としての第1、第2の結像レンズ6a,6bは、図1に示すフローにて製造される。
本実施例における光学素子としての第1、第2の結像レンズ6a,6bは、図1に示すフローにて製造される。
つまり、本実施例において光学素子を射出成形する際は、該光学素子の光学機能面に一定の形状誤差が安定して形成されるように成形条件を設定する。(イニシャル成形工程)(S1)。次いで、射出成形された光学素子を使用時と同等の配置である評価装置内に取り付け、像面において複数の像高の光軸方向の焦点ずれ量、波面収差量、そして走査線曲がり量を測定する。(光学測定工程)(S2)。ここで光学測定工程において、測定の結果がOK(設計値とのピント誤差が許容範囲内)の場合は、設計値に基づいて鏡面駒の成形を行う。(本成形工程)(S11)。しかし、測定の結果がNGの場合は、光学素子のすべての光学機能面の形状を測定し、複数の像高に向かう光線が光学機能面を通過する位置において、副走査方向の曲率と傾きが測定結果に最も近くなるような曲面モデルを決定する。(形状近似工程)(S3)。
上記形状近似工程においては、以下に示す非球面式Δxを用いている(S4)。
ただし、yは光学機能面における主走査方向の位置、
zは光学機能面における副走査方向の位置、
T(y)は光学機能面のyの位置における副走査方向の傾き、
c(y)は光学機能面のyの位置における副走査方向の曲率、
s(y)は光学機能面のyの位置における光線の通過高さ
である。
zは光学機能面における副走査方向の位置、
T(y)は光学機能面のyの位置における副走査方向の傾き、
c(y)は光学機能面のyの位置における副走査方向の曲率、
s(y)は光学機能面のyの位置における光線の通過高さ
である。
次いで、形状近似工程で得られた非球面係数による曲面モデルを用いた光学シミュレーションで、光学系の焦点ズレ量、走査線曲がり量そして波面収差量を評価する。(評価工程)(S5)。また、一方、光学機能面の非球面係数を微小変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、複数の像高における光軸方向の焦点ずれ量の変化量を求め、各非球面係数の変化に対する焦点ずれ量の敏感度を算出する。(焦点ズレ感度算出工程)(S6)。また、一方、光学機能面の非球面係数を微小変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、複数の像高における走査線曲がり量と波面収差量を求め各非球面係数の変化に対する走査線曲がり量と波面収差量の敏感度を算出する。(傾き感度算出工程)(S7)。
次いで、前記評価工程で得られた焦点ずれ量と前記焦点ズレ感度算出工程で得られた焦点ずれ量を計算した結果との差分に一致するように、1面以上の光学機能面の形状を焦点ずれ量の敏感度により新たに再設計する。(第1の再設計工程)(S8)。前記評価工程で得られた走査線曲がり量と前記傾き感度算出工程で得られた走査線曲がり量を計算した結果との差分に一致し、かつ波面収差量を劣化させないように、1面以上の光学機能面の形状を走査線曲がり量の敏感度により新たに再設計する。(第2の再設計工程)(S9)。次いで、第1、第2の再設計工程で求めた面において、前記形状近似工程と第1、第2の再設計工程とで求められた形状と設計値の形状との差異を反映させて、成形用型部材のキャビティ面の形状を補正加工する。(補正工程)(S10)。
次いで、光学測定工程に戻り、再度測定を行い、その測定の結果がOKの場合は、補正工程で得られた鏡面駒で成形を行う。(本成形工程)(S11)。
本実施例では補正工程で得られた鏡面駒により射出成形された光学素子を焦点ズレ感度算出工程で評価した結果が規格より外れている場合は、以下の工程を繰り返す。つまり、図1に示すように評価した結果が規格より外れている場合は、焦点ズレ感度算出工程、傾き感度算出工程、第1の再設計工程、第2の再設計工程、補正工程、本成形工程を繰り返す。
さらに各製造過程について説明する。光学設計ソフト等で作成した設計値に基づいて、結像レンズの光学機能面の形状を作成する成形型の鏡面駒の形状をまず決定する。鏡面駒はステンレス工具鋼で概略の形状を形成し、光学機能面をNi等の切削加工性のよい金属でメッキすることで後述する補正加工をしやすくしている。
上記作成したメッキ部分を任意の形状に削ることで初期に成形するための鏡面駒が完成する。任意の形状については設計値形状、もしくは使用する硝材が成形によって収縮する比率が分かっていれば、設計値に対して収縮比率分をかけることで、成形収縮によって発生する設計値からの誤差が少なくなる。結果として、鏡面駒を修正するためにメッキの削る量が少なくなるため望ましい。
次に作成した鏡面駒を用いて成形を行う(イニシャル成形工程)。成形機の加圧容量やレンズの大きさ、一回の成形サイクルで得られるレンズ個数(取り個数)などで型の構造が異なっている。したがって全てのレンズが同じ成形条件で「安定した成形」が得られるとは限らない。ここでいう「安定した成形」とは、
(1-1)光学機能面に局所的な歪み(ヒケ)が発生しない、
(1-2)複屈折によるスポット肥大が発生しない、
(1-3)取り個数すべてのキャビティで光学機能面の形状がほぼ同一、
(1-4)異なる日時に成形しても光学機能面の形状がほとんど変わらないということを意味している。
(1-1)光学機能面に局所的な歪み(ヒケ)が発生しない、
(1-2)複屈折によるスポット肥大が発生しない、
(1-3)取り個数すべてのキャビティで光学機能面の形状がほぼ同一、
(1-4)異なる日時に成形しても光学機能面の形状がほとんど変わらないということを意味している。
上記の「安定した成形」を得るために、成形時にレンズにかける圧力(保圧)、成形の1サイクルの時間(成形タクトタイム)、型の内部温度(型温度)といった成形条件を全てのレンズにおいて調整を行っている。上記に述べたような成形条件の調整により、1回目の成形品(イニシャル成形品)が得られる。このイニシャル成形品について、中心部の肉厚、基準面から光学機能面の面頂点までの距離、および光学機能面の形状を測定することで、初期の性能を評価してゆく。(形状近似工程)。
光学機能面の測定については、図3に示すように、測定針21を光学機能面22に対して同図に示す軌跡をさせることで細ピッチでの3次元形状評価を行っている。評価結果の一例を図4(A),(B),(C),(D)に示す。
図4(A)は主走査方向に関して設計形状に対する光学機能面の形状の誤差を示しており、レンズ座標0から遠ざかるほど形状誤差が大きいことを示している。(主走査形状誤差)。図4(B)は測定した主走査方向における光学機能面の形状に対して特定の範囲(例えば10mm幅)で2次関数フィッティングを行い、得られた関数の2階及び1階微分値から部分曲率を求め、設計値の部分局率に対するニュートン本数誤差を算出したものである。(主走査ニュートン誤差)。図4(C)は図3のように光学機能面を主走査方向に対して所定の分割数で区切り、各分割位置において光学機能面の母線の法線方向における断面形状を測定し、実際に光線が通過する位置において設計値からのニュートン本数誤差を表したものである。(副走査ニュートン誤差)。図4(D)は光学機能面の母線の法線方向における断面形状から、光学機能面を光線が通過する位置において母線の法線方向に対する断面形状の傾きθを表したものである。(副走査傾き)。なお、上記光学機能面の母線とは光学機能面の頂点を通る線のことである。また、母線の法線方向における断面形状は図3における点線部23である。また、実際に光線が通過する位置は図3におけるS点である。
上記で得られた主走査形状誤差、主走査ニュートン誤差、副走査ニュートン誤差、および副走査傾きを修正するような鏡面駒の形状を算出するために、誤差量を関数でフィッティング(調整)する必要がある。
本実施例における、レンズの光学機能面の形状は以下の表現式により表されている。各レンズ面と光軸との交点を原点とし、光軸方向をx軸、主走査断面内において光軸と直交する軸をy軸、副走査断面内において光軸と直交する軸をz軸としたとき、主走査方向と対応する母線方向が、
(但し、Rは曲率半径、k、A2、A4、A6、A8、A10は非球面係数)
副走査方向(光軸を含み主走査方向に対して直交する方向)と対応する子線方向が、
副走査方向(光軸を含み主走査方向に対して直交する方向)と対応する子線方向が、
ここで、c=c0+B2Y2+B4Y4+B6Y6+B8Y8+B10Y10
(但し、c0は光軸上の子線曲率、B2、B4、B6、B8、B10は係数)
尚、子線曲率cは各々の位置における母線の法線を含み主走査面と垂直な面内に定義されている。このような設計値に対して、主走査における形状誤差をフィッティングするために以下に示す関数を用いる。但し、E2、E4、E6、E8、E10、E12、E14、E16は非球面係数である。
(但し、c0は光軸上の子線曲率、B2、B4、B6、B8、B10は係数)
尚、子線曲率cは各々の位置における母線の法線を含み主走査面と垂直な面内に定義されている。このような設計値に対して、主走査における形状誤差をフィッティングするために以下に示す関数を用いる。但し、E2、E4、E6、E8、E10、E12、E14、E16は非球面係数である。
Δx=E2Y2+E4Y4+E6Y+E8Y8+E10Y10+E12Y12+E14Y14+E16Y16・・・(式3)
次に、光学機能面を通過する光線の軌跡が図5(A)であったときに光学機能面の母線に対する光線の通過高さをs(y)とすると、副走査断面におけるニュートン本数誤差をフィッティングするために以下に示す関数(非球面式Δx)を用いる。但し、cΔ、TΔは各々光軸を通過する副走査断面において、光線が通過する位置における子線曲率誤差、子線傾き誤差である。
次に、光学機能面を通過する光線の軌跡が図5(A)であったときに光学機能面の母線に対する光線の通過高さをs(y)とすると、副走査断面におけるニュートン本数誤差をフィッティングするために以下に示す関数(非球面式Δx)を用いる。但し、cΔ、TΔは各々光軸を通過する副走査断面において、光線が通過する位置における子線曲率誤差、子線傾き誤差である。
ここで、
T(y)=T0+M2Y2+M4Y4+M6Y6+M8Y8+M10Y10+M12Y12
(但し、T0は光軸上の子線傾き、M2、M4、M6、M8、M10、M12は係数)
c(y)=(c0+F2Y2+F4Y4+F6Y6+F8Y8 +F10Y10+F12Y12)/2
(但し、c0は光軸上の子線曲率、F2、F4、F6、F8、F10、F12は係数)
上記のように、イニシャル成形品の光学機能面の形状誤差データを(式3)および(式4)を使って最小自乗近似することで全ての光学機能面について関数近似ができた。よって、この関数をもとの鏡面駒の形状関数に付加してやれば、次に成形した結像レンズの全ての光学機能面の形状は設計値形状に近づくことになる。形状測定と並行して、このレンズを用いて光学性能を評価する(光学測定工程)。
T(y)=T0+M2Y2+M4Y4+M6Y6+M8Y8+M10Y10+M12Y12
(但し、T0は光軸上の子線傾き、M2、M4、M6、M8、M10、M12は係数)
c(y)=(c0+F2Y2+F4Y4+F6Y6+F8Y8 +F10Y10+F12Y12)/2
(但し、c0は光軸上の子線曲率、F2、F4、F6、F8、F10、F12は係数)
上記のように、イニシャル成形品の光学機能面の形状誤差データを(式3)および(式4)を使って最小自乗近似することで全ての光学機能面について関数近似ができた。よって、この関数をもとの鏡面駒の形状関数に付加してやれば、次に成形した結像レンズの全ての光学機能面の形状は設計値形状に近づくことになる。形状測定と並行して、このレンズを用いて光学性能を評価する(光学測定工程)。
光学性能の評価のために、図5(B)に示すような評価工具(評価装置)を製作する。この評価工具は、光走査装置と同じ光学配置になるように、平板上に半導体レーザー1、コリメータ3、シリンドリカルレンズ4、ポリゴンミラー5、および結像レンズ6a,6bを配置している。そして、結像レンズを交換できるようにすることで全てのレンズの光学性能を評価することができる。観測系については、半導体レーザー1の発光点から感光体ドラム面8までの距離と同じになる位置にCCDカメラ10を配置する。このCCDカメラ10は図4(C)に示すX方向(レール12の矢印方向)、Y方向(レール11の矢印方向)、およびZ方向(不図示)に動き、各位置での主走査方向および副走査方向のスポット径(PSF、LSF)やピーク光量を計測できる。
具体的には、CCDカメラ10を測定したい像高に移動させ、次にポリゴンミラー5の角度を結像レンズ6a,6bのfθ係数から算出した角度にあわせ、半導体レーザー1を発光させてスポットがCCDカメラ10の観測域に入るようにする。
次に、CCDカメラ10をX方向に等ピッチに移動させるとともに、スポットの重心位置が常にCCDカメラ10の中心にくるようにCCDカメラ10をY方向およびZ方向に移動させる。このときのCCDカメラ10の位置とスポット径をパソコン上に出力させることで、図6(A)に示すような特定像高におけるスポット径のデフォーカス特性を観測することができる。そして、このデフォーカス特性から主走査方向(もしくは副走査方向)のスポット径の上限規格を横切るX座標値A点およびB点を算出する。そしてX座標値A点とB点の平均を深度中心(ピント位置)として、図5(A)に示すように数点の評価像高におけるピント位置を求める。
図6(B)に評価工具(焦点ずれ測定工具)で評価した結像レンズの深度中心位置と設計値との比較を示す。図6(B)の実線は実際に結像レンズを測定したときのピント位置であり、点線は設計値によるピント位置を示す。この実測と設計値との差が結像レンズの内部起因と予測される量である。また、設計の像面位置における主走査方向および副走査方向の照射位置をCCDカメラ10の位置情報から出力することで、fθ特性や走査線湾曲量を評価することができる。
評価工具で得られた主走査方向および副走査方向の設計値からのピントずれは、
(2-1)光学機能面の形状が設計値からずれていることの影響
(2-2)レンズ内部による影響
の2つの原因をもっている。
(2-1)光学機能面の形状が設計値からずれていることの影響
(2-2)レンズ内部による影響
の2つの原因をもっている。
上記(2-2)については光学機能面の形状を設計値に戻せば影響は無くなるので形状近似工程で得られた形状を設計値に戻すような形状補正を行えばよい。しかし、上記(2-2)の影響を算出するためには、現状のピントずれから上記(2-1)の影響を切り分ける必要がある。このために、結像レンズの全ての光学機能面の形状を形状近似工程で算出した関数に基づいて新たに定義し、この光学機能面の形状を元に光学モデルを作成し光線追跡によりピント位置を算出することで上記(2-1)が判る。そして、評価工具で得られたピント位置と先に求めた上記(2-1)との差分が上記(2)の影響であると考えられる。
上記(2-2)の量が想定している規格(例えば、設計値におけるスポット径の許容深度幅の1/5)以下であれば、再設計は行わずに形状を元に戻すような補正を行ってやればよい。反対に、上記(2-2)の量が想定規格より大きい場合には、先に作成した光学モデルを用いて、上記(2-2)に相当する形状変化量を見積もるために特定面のみ新たに再設計を行い所望の係数を見つけてやればよい。
そして再設計により、特定面の光学機能面の形状の係数値が見つかった後、再設計を行った面の係数値と設計値との差分を求め、さらに異方性収縮量を考慮して補正量を決定する。そして、補正量をイニシャルの鏡面駒の形状の係数値に足すことで形状誤差および内部ずれを考慮した鏡面駒の形状が決まる。また、再設計を行っていない残り全ての光学機能面については、形状誤差を近似した関数の係数値に異方性収縮量を考慮した分をイニシャルの鏡面駒の形状に足せばよい。
これから、再設計工程について述べてゆく。評価工具によるピント測定結果になるような結像レンズの光学機能面の形状を再設計することで予測する。ここで、先に述べた(式1)の係数について、以下のようなXを変数ベクトルとして定義する。また、Xにおける測定像高における主走査方向のピントをfm(X)、測定像高において実際に測定して得られた主走査方向のピントをfm,tar(X)とする。そのとき、評価関数ベクトルとして以下のようなF(X)を定義する。
レンズ自動設計において、以下の数式で定義されるメリット関数φ(X)を最小化することで所望の性能を得るためのレンズ光学機能面の形状が得られるという減衰最小自乗法(DLS法:Damped Least Squares法)が知られている。なお、この減衰最小自乗法はWynneらによって提案されている。
φ(X)=FT(X)F(X)+ρΔXTΔX・・・(式6)
(式6)において、FT(X)はF(X)の転置行列であり、ΔXTは各変数の変動量ΔXの転置行列である。またρは非線形補正量を制御するパラメータであり、ダンピングファクタと呼ばれている。評価関数F(X)をX=X0近傍で1次までのTaylor展開を行うと、以下のようになる。
(式6)において、FT(X)はF(X)の転置行列であり、ΔXTは各変数の変動量ΔXの転置行列である。またρは非線形補正量を制御するパラメータであり、ダンピングファクタと呼ばれている。評価関数F(X)をX=X0近傍で1次までのTaylor展開を行うと、以下のようになる。
Aは偏微分行列(Jacobian)であり、(式7)を各ベクトル要素に直すと以下のようになる。
メリット関数φ(X)の極値条件は、▽φT(X)=0である。これを(式6)および(式7)を用いて書き換えると以下のようになる。
{ATA+ρI}ΔX=−ATF(X0)・・・(式9)
ただし、Iは単位行列である。そして、(式9)をΔXについて解くと、以下のようになる。
ただし、Iは単位行列である。そして、(式9)をΔXについて解くと、以下のようになる。
ΔX=−{ATA+ρI}−1ATF(X0)・・・(式10)
今まで述べてきたことを踏まえて、具体的な再設計について図7のフローを用いて説明する。なお、図7は光学素子(結像レンズ)の再設計のフローである。まず、結像レンズの光学機能面における特定の1面について、先に述べた(式3)の係数を単独に微小量(設計値における係数の1/1000程度)だけに変化させたレンズ形状を作成する。そして、光学ソフト等を用いて光線追跡を行い、測定を行った像高と同じ位置における主走査方向のピント位置変動量を算出し、これを図8のような敏感度マトリックスAに整理する。(感度算出工程)。
今まで述べてきたことを踏まえて、具体的な再設計について図7のフローを用いて説明する。なお、図7は光学素子(結像レンズ)の再設計のフローである。まず、結像レンズの光学機能面における特定の1面について、先に述べた(式3)の係数を単独に微小量(設計値における係数の1/1000程度)だけに変化させたレンズ形状を作成する。そして、光学ソフト等を用いて光線追跡を行い、測定を行った像高と同じ位置における主走査方向のピント位置変動量を算出し、これを図8のような敏感度マトリックスAに整理する。(感度算出工程)。
この敏感度マトリックスAを用いて(式10)から変数ベクトルΔXを求める。そして、特定面における(式1)および(式2)の各係数をΔX分変動させて評価ベクトルF(X)を計算する。そして、(式6)のメリット関数φ(X)が収束するまで、図7のフローに従い(光線追跡による敏感度マトリックスAの算出)→(変数ベクトルΔXの算出)→(評価ベクトルF(X)の計算)を繰り返す。この図7のフローによって、評価工具での測定値になるような光学機能面の形状関数が得られる。(主走査再設計工程)。
先に係数を変化させる面を特定面としたが、レンズ設計において主走査方向のピントに敏感な面が存在する。逆にピントに鈍感な面を用いて実際のピント位置になるような光学機能面の形状を再現しようとすると、設計値に対して形状が大幅に変わる恐れがあり、鏡面駒の補正後にピントは設計値に近づくものの、fθ特性が設計値から大きくずれてしまう恐れがある。したがって、実際に係数を変化させる面を選択する際には、再現したいピント変動に敏感な面を選択するほうが良い。
またピント変動に敏感な面であっても設計値に対する形状変化量が多い場合には、1面だけでなく2面の係数を変化させることで、fθ特性への影響を小さくするのが望ましい。また、敏感度マトリックAの評価情報は測定像高における主走査方向のピント変動量としたが、測定像高における照射位置変動量を追加することで、fθ特性も同時に評価できるので望ましい。
ピント位置が決定したところで、次に図9のフローに従い45度アスの評価および補正を行う。なお、図9は45度アスの結果による補正方法のフローである。45度アスは、先に述べた形状近似工程で得られた光学機能面の形状を元に光学モデルを作成し、光線追跡により45度アスを算出することで求めるか、もしくは以下に述べる測定によって評価することができる。
図5(B)で示した評価工具において、シリンドリカルレンズ4を称呼の位置に対して、図に示すように、シリンドリカルレンズ4の光軸方向に対して回転させる。すると、回転角度に応じて、図10(A)の丸いスポット形状が図10(B)のように変形してスポット径の肥大がおこる。シリンドリカルレンズ4の回転角度に対するスポット径の変化を図10(C)のようにすれば、スポット径が最小になる回転角度が大きいほど45度アスが大きいことがわかる。また、シリンドリカルレンズ4の回転方向によって45度アスの符号がわかる。評価して得られた45度アスの量がデフォーカスによる最小スポット径にほとんど影響しない(設計値に対して2〜3μm以内の肥大量)のであれば、45度アスを変化させないような補正をする必要がある。逆にデフォーカスによる最小スポット径が45度アスの影響を受けて大きくなってしまう場合は、45度アスを抑えるような補正を行う必要がある。
45度アスの補正方法について、子線形状の補正を例に述べてゆく。複数の光学機能面のうち、ある1面に対して(式2)で決まる子線形状に(式4)を変形させた(式9)で定義される下記の数式を追加する。
ここで、c0は例えば子線の有効幅に対してニュートン1本変化した際の曲率であればよい。また、T0は例えばtan(3’)、M1は例えば1/1000程度の微小量であればよい。各測定像高において、設計値における副走査方向のピント、副走査方向の照射位置、45度アスが(式9)を追加前後での増減量を求める。これにより、子線の曲率が有効幅でニュートン1本変化したときの測定像高における副走査方向のピント敏感度、子線の傾きが3’変化したときの測定像高における副走査方向の照射位置敏感度がわかる。また、子線の傾きが主走査方向の光学機能面位置Yが変化するに従い0.05’変化したときの45度アスの敏感度がわかる。この作業を光学機能面の面数だけ繰り返すことで、各面における3つの評価項目(副走査ピント、副走査照射位置、45度アス)に対する光学敏感度が求まる。
このようにして求めた敏感度表を用いて、測定工具での測定値(副走査ピント、副走査照射位置、45度アス)に合うように、複数の像高に至る光線が光学機能面を通過する位置での子線曲率や子線傾きを計算で求める。そして、複数の光線通過位置で求められた子線曲率や子線傾きから、(式4)の各係数をフィッティングすることで決定させる。このとき、1面で辻褄が合わない場合は、複数面を用いて計算を行う必要がある。(副走査再設計工程)。
上記のように、新たに再設計を行った光学機能面の形状関数と設計値の形状関数の差分を(式3)および(式4)を用いて算出し、この関数を鏡面駒に付加することで補正後成形した結像レンズによる光学特性が設計値に近づくことになる。(補正工程)。このとき、鏡面駒の主走査方向の長さに対する、成形したレンズにおける光学機能面の主走査方向の長さの比率がわかっていれば、(式3)および(式4)のYの係数に関する部分にこの比率をYの次数に応じてかけてやる。これによれば、成形した結像レンズの光学性能をより設計値に近づけることができるので望ましい。
そして、新たに求めた関数をもとに鏡面駒を再加工する。このとき、光学機能面の修正をすると共に、レンズ中心部の肉厚や基準面に対する光学機能面の頂点位置を修正するために、型に対する鏡面駒の相対位置を調整している。そして、新たに求めた関数をもとに鏡面駒を再加工する。そして再度成形を行い、光学機能面の形状測定およびレンズ中心部の肉厚や基準面に対する光学機能面の頂点位置を測定し、設計値に対する形状誤差が許容範囲に入っているかどうかを確認する。また、再度成形した結像レンズの光学性能を図5(B)の評価工具を用いて計測し、設計値とのピント誤差が許容範囲内かどうか判定する。判定の結果、許容範囲内であれば補正を終了させる。逆に許容範囲外であった場合は、再度ピント測定結果から再度特定面の光学機能面の形状を再設計し、鏡面駒の補正形状を見直す工程をピント誤差が許容範囲内になるまで繰り返す必要がある。
表1に実施例1の光学系における各レンズの光学配置、形状および使用した硝材の特性を示している。また、表2にアナモフィックレンズ1およびアナモフィックレンズ2の光学機能面の形状を示している。表2における記号については、先に述べた(式1)および(式2)の通りである。尚、本明細書において、アナモフィックレンズ1は結像レンズ6a、アナモフィックレンズ2は結像レンズ6bに該当する。
図11(A)に本発明の実施例1の光学系での被走査面上の像面湾曲を示す。また図11(B)に本発明の実施例1の光学系でのfθ特性を示す。また図11(C)に本発明の実施例1の光学系での被走査面上のスポット形状(ピーク光量に対して、5%,10%,13.5%,36.8%,50%の等高線)を示す。また図12(A),(B)に本発明の実施例1の像面位置をデフォーカスさせたときの主走査方向および副走査方向のスポット径を示す。
はじめに、鏡面駒を表2に示すような非球面形状なるように加工を行う。次に、イニシャル成形を行い、安定した成形条件下で得られたアナモフィックレンズ1およびアナモフィックレンズ2を評価工具に搭載し、主走査および副走査方向のピントを評価し、その結果を図13(A),(B)に示す。図13(A),(B)に示すように、主走査方向のピント、および副走査方向のピントが設計値(点線で表示)に対して傾いているのがわかる。また、副走査方向の照射位置は図13(C)に示すように60μm程度の湾曲が発生している。次に光学機能面の形状を測定し、その形状から光学モデルを作成し、光線追跡を行って45度アスを算出し、その結果を図13(D)に示す。
主走査方向のピントずれを補正するために、評価工具で得られたピントになるような光学機能面の形状を再設計した。変動させた係数については、主走査方向のピントに敏感なアナモフィックレンズ1の第1面とした。設計値の形状関数に対して、前記図7のフローによる再設計を行って算出した形状関数との差分を表3に示す。だだし、yの値が正(半導体レーザー側)のときには添字uがついた係数を用いている。またyの値が負(反半導体レーザー側)のときには添字lがついた係数を用いている。
次に副走査方向のピントずれ、照射位置および45度アスを補正する。図14(A)にアナモフィックレンズ2の各光学機能面を光線が通過する光線通過位置を示す。同図(A)において原点は光学機能面の光軸位置を示す。また、同図(A)に示したアナモフィックレンズ2の光線通過位置において、形状を微小変化させたときの副走査方向のピントずれ(同図(B))、照射位置(同図(C))および45度アス(同図(D))の敏感度を示す。尚、図14(A)〜(D)において原点は光学機能面の光軸位置を示している。
ここで、ピントについては、3mm幅におけるニュートン本数が1本変化するように各光線通過位置における曲率を変化させ算出を行った。照射位置については、各光線通過位置において副走査方向の傾きを一律に3’与えて算出を行った。また、45度アスについては、光学機能面の光軸から端部にかけて副走査方向の傾きが一律に0.05’変化するような形状を与えて算出を行った。
図14(B)の敏感度を元に、各光線通過位置における副走査方向のピントが図13(B)に示したピントに合致するように、アナモフィックレンズ2の第2面の副走査方向の曲率を算出した結果を図15(A)に示す。図15(A)の結果を元に、(式4)で定義する関数フィッティングを行った結果を表4に示す。だだし、yの値が正(半導体レーザー側)のときには添字uがついた係数を、またyの値が負(反半導体レーザー側)のときには添字lがついた係数を用いている。
次に、図14(C)の敏感度から、副走査方向の照射位置が図13(C)になるよう、アナモフィックレンズ2の第2面の副走査方向の傾きを算出した結果を図15(B)に示す。次に図15(B)で得られた値をフィッティングした関数から微分値を算出し、図14(D)の45度アス敏感度から45度アスを算出した。算出した結果を図16(A)に示すが、形状近似工程で算出した45度アス(点線)とほぼ同等の結果が得られており、第2面で副走査方向の照射位置を補正すると45度アスも同様に補正することが可能であることが分かる。参考として、アナモフィックレンズ1の第2面で副走査方向の照射位置を補正するような副走査方向の傾きを算出したときの45度アスの量を図16(B)に示す。図16(B)の結果から、45度アスの量は形状近似工程で得られた45度アス(点線)とはかけ離れているために、この面で副走査方向の照射位置を補正した場合、45度アスが劣化する可能性がある。
図15(B)の結果を元に、(式4)で定義する関数フィッティングを行った結果を表5に示す。だだし、yの値が正(半導体レーザー側)のときには添字uがついた係数を用いている。またyの値が負(反半導体レーザー側)のときには添字lがついた係数を用いている。
イニシャル成形に用いた鏡面駒の形状関数に対して、アナモフィックレンズ1の第1面の鏡面駒の形状関数に対して表3の誤差量を引いて鏡面駒の形状を決定した。また、アナモフィックレンズ2の第2面の形状関数に対して表4および表5の誤差量を引いて鏡面駒の形状を決定した。
鏡面駒の補正加工後、2回目の成形で得られたアナモフィックレンズ1およびアナモフィックレンズ2を用いて、評価工具で測定した結果を図17(A)、(B)、(C)、(D)に示す。同図(A)、(B)、(C)、(D)において、主走査方向のピント(同図(A))、副走査方向のピント(同図(B))ともに、設計値のピントと一致している。また、副走査方向の照射位置(同図(C))、45度アス(同図(D))ともに良好に補正されており、1回の補正によって補正加工を完了することができた。
このように本実施例では射出成形したプラスチックレンズの光学機能面の形状が所望の設計形状に近づくように鏡面駒の形状を補正すると共に、レンズ内部の不均一性による影響を相殺するように一部の光学機能面の鏡面駒の形状に追加補正を行っている。これにより本実施例では像面湾曲の低減とfθ特性を両立できるプラスチックレンズの射出成形における鏡面駒の補正方法を提供することができる。
[カラー画像形成装置]
図18は本発明の実施例のカラー画像形成装置の要部概略図である。本実施例は、光走査装置(光走査光学系)を4個並べ各々並行して像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。図18において、60はカラー画像形成装置、61,62,63,64は各々実施例1に示したいずれかの構成を有する光走査装置、71,72,73,74は各々像担持体としての感光ドラム、31,32,33,34は各々現像器、51は搬送ベルトである。尚、図18においては現像器で現像されたトナー像を被転写材に転写する転写器(不図示)と、転写されたトナー像を被転写材に定着させる定着器(不図示)とを有している。
図18は本発明の実施例のカラー画像形成装置の要部概略図である。本実施例は、光走査装置(光走査光学系)を4個並べ各々並行して像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。図18において、60はカラー画像形成装置、61,62,63,64は各々実施例1に示したいずれかの構成を有する光走査装置、71,72,73,74は各々像担持体としての感光ドラム、31,32,33,34は各々現像器、51は搬送ベルトである。尚、図18においては現像器で現像されたトナー像を被転写材に転写する転写器(不図示)と、転写されたトナー像を被転写材に定着させる定着器(不図示)とを有している。
図18において、カラー画像形成装置60には、パーソナルコンピュータ等の外部機器52からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ53によって、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)、B(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。これらの画像データは、それぞれ光走査装置61,62,63,64に入力される。そして、これらの光走査装置からは、各画像データに応じて変調された光ビーム41,42,43,44が射出され、これらの光ビームによって感光ドラム71,72,73,74の感光面が主走査方向に走査される。
本実施例におけるカラー画像形成装置は光走査装置(61,62,63,64)を4個並べ、各々がC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)、B(ブラック)の各色に対応している。そして各々平行して感光ドラム71,72,73,74面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字するものである。
本実施例におけるカラー画像形成装置は上述の如く4つの光走査装置61,62,63,64により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて各色の潜像を各々対応する感光ドラム71,72,73,74面上に形成している。その後、記録材に多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
前記外部機器52としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置60とで、カラーデジタル複写機が構成される。
本発明で使用される画像形成装置の記録密度は、特に限定されない。しかし、記録密度が高くなればなるほど、高画質が求められることを考えると、1200dpi以上の画像形成装置において本発明の実施例1の構成はより効果を発揮する。
1 光源手段、2 開口絞り、3 コリメータレンズ、4 シリンドリカルレンズ、5 偏向手段、6 結像光学系、8 被走査面、10 CCDカメラ
Claims (3)
- 光走査装置に用いられる光学素子の製造方法において、
前記光学素子は、光軸を含む母線の上を光束が通過することなく、かつ射出成形にて作成される光学素子であり、前記光学素子を射出成形する際は、前記光学素子の光学機能面に一定の形状誤差が安定して形成されるように成形条件を設定するイニシャル成形工程と、前記射出成形された光学素子を使用時と同等の配置である評価装置内に取り付け、像面において複数の像高の光軸方向の焦点ずれ量、波面収差量、そして走査線曲がり量を測定する光学測定工程と、前記光学素子のすべての光学機能面の形状を測定し、複数の像高に向かう光線が前記光学機能面を通過する位置において、副走査方向の曲率と副走査方向の傾きが測定結果に最も近くなるような曲面モデルを決定する形状近似工程と、前記形状近似工程で得られた非球面係数による曲面モデルを用いた光学シミュレーションで、光学系の焦点ズレ量、走査線曲がり量、そして波面収差量を評価する評価工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における光軸方向の焦点ずれ量の変化量を求め、各非球面係数の変化に対する焦点ずれ量の敏感度を算出する焦点ズレ感度算出工程と、前記光学機能面の非球面係数を変化させた状態で光学モデルによる光線追跡を行い、前記複数の像高における走査線曲がり量と波面収差量を求め、各非球面係数の変化に対する走査線曲がり量と波面収差量の敏感度を算出する傾き感度算出工程と、前記評価工程で得られた焦点ずれ量と前記焦点ズレ感度算出工程で得られた焦点ずれ量を計算した結果との差分に一致するように、1面以上の光学機能面の形状を前記焦点ずれ量の敏感度により新たに再設計する第1の再設計工程と、前記評価工程で得られた走査線曲がり量と前記傾き感度算出工程で得られた走査線曲がり量を計算した結果との差分に一致し、かつ波面収差量を劣化させないように、1面以上の光学機能面の形状を前記走査線曲がり量の敏感度により新たに再設計する第2の再設計工程と、前記第1の再設計工程、第2の再設計工程で求めた面において、前記形状近似工程と前記第1の再設計工程、第2の再設計工程とで求められた形状と設計値の形状との差異を反映させて、成形用型部材のキャビティ面の形状を補正加工する補正工程と、前記補正工程で得られた鏡面駒で成形を行う本成形工程と、を用いていることを特徴とする光学素子の製造方法。 - 前記補正工程で得られた鏡面駒により射出成形された光学素子を焦点ズレ感度算出工程で評価した結果が規格より外れている場合は、前記焦点ズレ感度算出工程、前記傾き感度算出工程、前記第1の再設計工程、前記第2の再設計工程、前記補正工程、前記本成形工程を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
- 前記形状近似工程において、以下に示す非球面式Δxを用いることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
zは、前記光学機能面における副走査方向の位置、
T(y)は、前記光学機能面のyの位置における副走査方向の傾き、
c(y)は、前記光学機能面のyの位置における副走査方向の曲率、
s(y)は、前記光学機能面のyの位置における光線の通過高さ
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