JP2011037374A - 車両姿勢検出装置、および車両姿勢検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一の磁束密度センサが検出した磁束密度と他の磁束密度センサが検出した磁束密度との差に基づいて、車両の姿勢を検出するようにした。この構成によれば、例えば、車両が一の車輪側に傾いた場合、一の車輪の接地荷重と他の車輪の接地荷重とが反対方向に変動する。そのため、一の車輪の接地荷重と他の車輪の接地荷重との差は、一の車輪の接地荷重の低減量の絶対値および他の車輪の接地荷重の増大量の絶対値の合計値分変化する。それゆえ、これらの差に着目した場合、当該差が大きく変化することで、車両が当該一の車輪側に傾いた姿勢をとっていることを比較的容易に検出できる。
【選択図】 図12
Description
本発明は、上記のような点に着目し、車両の姿勢をより適切に検出可能とすることを課題としている。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の制動力制御装置を装備した車両の装置構成の概念図である。
本実施形態の車両は、すべての車輪を駆動する四輪駆動車両である。
(構成)
図1に示すように、車両は、操舵角センサ1、車輪速センサ2、加速度センサ3、ヨーレイトセンサ4、マスタシリンダ圧センサ5、ブレーキスイッチセンサ6、アクセル開度センサ7、およびエンジントルク値センサ8等のセンサ類を備える。これらセンサ類は、検出結果を表す信号を走行制御コントローラ9に出力する。
操舵角センサ1は、運転者によるステアリングホイールの操舵角を検出する。例えば、ステアリングコラムに取り付けたロータリエンコーダ等が利用可能である。
車輪速センサ2は、各車輪10FL〜10RRに配置する。
図2に示すように、車輪速センサ2は、磁気式回転速度センサからなる。磁気式回転速度センサは、マグネットリング16および磁束密度センサ17を備える。
マグネットリング16は、中央部に貫通孔を形成し且つ多極着磁した円板である。例えば、周方向の複数箇所に等間隔に磁極を形成して構成したものを利用可能である。そして、貫通孔を回転側軌道部材13の外径に嵌め込んで固定する。これにより、車輪10FL〜10RRの回転に応じて周期的に変化する磁場を周囲に発生する。
磁束密度センサ17は、自センサ近傍の磁場の磁束密度を検出する検出コイルである。例えば、ピックアップコイルを利用可能である。そして、図3に示すように、マグネットリング16の軸方向と平行な方向で該マグネットリング16と対向させてサスペンション18のナックル19に固定する。これにより、マグネットリング16と磁束密度センサ17との間にエアギャップを形成する。
なお、本実施形態では、磁束密度センサ17を、マグネットリング16の軸方向と平行な方向で対向させて設ける例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、マグネットリング16の外周と対向させて設けることもできる。
ここで、磁束密度センサ17は、マグネットリング16の回転中心よりも上側に対向させて固定する。そのため、車輪の接地荷重が減少すると、固定側軌道部材12と回転側軌道部材13との傾きが増大することでて、マグネットリング16と磁束密度センサ17との間のエアギャップ量が増大する。それゆえ、図4に示すように、エアギャップ量が増大することによって、磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果が低減する。
図1に戻り、加速度センサ3は、車両前後方向の加速度XG、および車幅方向の加速度YGを検出する。加速度センサ3としては、例えば、圧電素子等を用いて構成したデバイスを利用可能である。ここで、XGは、車両の前方向を正方向とし後方向を負方向とする。また、YGは、車両の右方向を正方向とし左方向を負方向とする。
マスタシリンダ圧センサ5は、マスタシリンダの出力圧を検出する。
ブレーキスイッチセンサ6は、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出する。
アクセル開度センサ7は、アクセル開度を検出する。アクセル開度とは、アクセルペダルの踏み込み率である。例えば、アクセルペダルを踏んでいないときを0とし、アクセルペダルを最大限踏んでいるときを100とする。
また、車両は、エンジン出力制御装置20、および制動力制御装置21を備える。
エンジン出力制御装置20は、走行制御コントローラ9が出力する指令に従って、スロットルアクチュエータを制御する。これにより、エンジンの出力を制御する。
制動力制御装置21は、走行制御コントローラ9が出力する指令に応じて、マスタシリンダで昇圧した制動流体を各車輪10FL〜10RRのホイールシリンダ22に供給する。これにより、各車輪10FL〜10RRの制動力を制御する。
走行制御コントローラ9は、脱輪脱出制御部23、スリップ抑制制御部24、およびエンジン抑制部25を備える。
脱輪脱出制御部23は、第1姿勢判定部26および第1液圧制御部27を備える。
第1姿勢判定部26は、一の車輪に対応して設けた車輪速センサ2の磁束密度センサ17が検出する磁束密度と、他の車輪に対応して設けた車輪速センサ2の磁束密度センサ17が検出する磁束密度との差に基づいて、車両が脱輪状態にあるか否かを判定する。ここで、一の車輪および他の車輪とは、車幅方向に並んだ左右輪、車両前後方向に並んだ前後輪、あるいは対角方向に位置する対角輪である。また、対角輪とは、車両を上から見た場合に車両の対角位置にある車輪である。例えば、左前輪10FLおよび右後輪10RRの組、右前輪10FRおよび左後輪10RLの組が対角輪を構成する。さらに、脱輪状態とは、車輪が路面の窪みに落ち込んで路面に接地していない状態である。そして、第1姿勢判定部26は、車両が脱輪状態にあると判定した場合には、車両が脱輪した車輪側に傾いた姿勢をとっていると判定する。一方、車両が脱輪状態にないと判定した場合には、車両が脱輪した車輪側に傾いた姿勢をとっていないと判定する。
また、車両の姿勢を検出するための専用のセンサを別途設ける必要がないので、車両の製造コストが高くなることを回避できる。そのため、比較的安価な車両に好適である。
第1液圧制御部27は、第1姿勢判定部26が、車両が脱輪した車輪側に傾いた姿勢をとっていると判定した場合には、脱輪した車輪に空転を抑制させる制動力が発生するように、当該車輪の目標制動流体圧BFL *を算出する。そして、第1液圧制御部27は、算出した制動流体圧BFL *に一致させる指令を制動流体圧制御装置21に出力する。
第2姿勢判定部28は、一の車輪に対応して設けた車輪速センサ2の磁束密度センサ17が検出する磁束密度と、他の車輪に対応して設けた車輪速センサ2の磁束密度センサ17が検出する磁束密度との差に基づいて、車両がロール状態にあるか否かを判定する。ここで、ロール状態とは、車輪が旋回走行によってロール運動を行っている状態である。そして、第2姿勢判定部28は、車両がロール状態にあると判定した場合には、車両が旋回外輪側に傾いた姿勢をとっていると判定する。一方、車両がロール状態にないと判定した場合には、車両が旋回外輪側に傾いた姿勢をとっていないと判定する。
このように、本実施形態の走行制御コントローラ9は、車両が脱輪した車輪側に傾いた姿勢をとっているのか、車両が旋回外輪側に傾いた姿勢をとっているのか、車両の姿勢を考慮して、各車輪10FL〜10RRに制動流体圧を付与できる。そのため、車両姿勢に応じた適正な制動力を各車輪10FL〜10RRに付与することができる。
ここで、走行制御コントローラ9は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等から構成した集積回路を備える。そして、マイクロプロセッサは、メモリに格納したプログラムに従って、各種センサで検出した信号に基づき、脱輪脱出制御部23として機能する脱輪脱出処理、およびスリップ抑制制御部24として機能するスリップ抑制処理を実行する。
図6は、脱輪脱出処理を表すフローチャートである。
次に、上記走行制御コントローラ9で行う脱輪脱出処理について図6を参照して説明する。
なお、図6の処理は、一定の周期(例えば、100msec.)で繰り返し実行する。
図6に示すように、まずステップS101では、磁束密度計算処理を実行する。磁束密度計算処理とは、各車輪10FL〜10RRの磁束密度センサ17の検出結果間の差、および当該差の時間変化率を算出する処理である。
続いてステップS103に移行して、液圧制御処理を実行する。液圧制御処理とは、脱輪状態にある車輪に付与する制動流体圧を補正する処理である。
続いてステップS104に移行して、制御終了判定処理を実行する。制御終了判定処理とは、脱輪状態にある車輪が脱輪状態から脱出したか否かを判定し、脱輪状態から脱出したと判定した車輪への制動力付与を終了する処理である。
次に、上記走行制御コントローラ9で行う磁束密度計算処理について図7を参照して説明する。
図7に示すように、まずステップS201では、各車輪10FL〜10RRの車輪速センサ2それぞれから磁束密度の検出結果を取得する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、各車輪10FL〜10RRの車輪速センサ2それぞれが出力する信号を読み込む。そして、その読み込んだ信号をメモリに格納する。
続いてステップS202では、車幅方向に並んだ左右輪、車両前後方向に並んだ前後輪または対角方向に位置する対角輪の磁束密度センサ17の検出結果間の差、および当該差の時間変化率を算出する。そして、その算出結果をメモリに格納する。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出したFL磁束密度からRL磁束密度を減算し、減算結果を前後LL磁束密度差とする。また、この前後LL磁束密度差の単位時間当たりの変化量を算出し、算出結果をδ前後LL磁束密度差/dtとする。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出したRL磁束密度からRR磁束密度を減算し、減算結果を後後LR磁束密度差とする。また、この後後LR磁束密度差の単位時間当たりの変化量を算出し、算出結果をδ後後LR磁束密度差/dtとする。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出したFL磁束密度からRR磁束密度を減算し、減算結果を前後LR磁束密度差とする。また、この前後LR磁束密度差の単位時間当たりの変化量を算出し、算出結果をδ前後LR磁束密度差/dtとする。
次に、上記走行制御コントローラ9で行う制御介入判断処理について図8を参照して説明する。
なお、図8の演算処理は、磁束密度計算処理が終了すると4回実行する。そして、各実行のたびに、この演算処理で用いるパラメータである「選択輪」を、左前輪10FL、左後輪10RL、右前輪10FR、および右後輪10RRに順次切り替える。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリからδ前前RL磁束密度差/dtおよびδ後後LR磁束密度/dtを読み出す。
続いて、左前輪10FLまたは左後輪10RLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出したδ前前RL磁束密度差/dtが第1きざし判定閾値より大きいか否かを判定する。第1きざし判定閾値は正値とする。そして、δ前前RL磁束密度差/dtが第1きざし判定閾値より大きいと判定した場合には(Yes)、選択輪に脱輪発生のきざしがあると判定し、ステップS302に移行する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリからδ前前RL磁束密度差/dtおよびδ後後LR磁束密度/dtを読み出す。
第1介入閾値=−(初期設定値−第1オフセット値) ………(1)
図9は、第1〜第12オフセット値を表す制御マップである。
第1オフセット値は、図9(a)の制御マップによって決まる値である。図9(a)の制御マップは、δ前後LL磁束密度/dtをインデックスとし、第1オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第1オフセット値は、δ前後LL磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。ここで、αは正値とする。また、δ前後LL磁束密度/dtが設定値−β(<−α)より小さい場合には、δ前後LL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後LL磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ前後LL磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。また、初期設定値は、正の一定値とする。
第2介入閾値=初期設定値−第2オフセット値 ………(2)
第2オフセット値は、図9(b)の制御マップによって決まる値である。図9(b)の制御マップは、δ前前RL磁束密度/dtをインデックスとし、第2オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第2オフセット値は、δ前前RL磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ前前RL磁束密度/dtが設定値β(>α)より大きい場合には、δ前前RL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前前RL磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ前前RL磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
第3介入閾値=−(初期設定値−第3オフセット値) ………(3)
第3オフセット値は、図9(c)の制御マップによって決まる値である。図9(c)の制御マップは、δ前後LR磁束密度/dtをインデックスとし、第3オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第3オフセット値は、δ前後LR磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。また、δ前後LR磁束密度/dtが設定値−βより小さい場合には、δ前後LR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後LR磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ前後LR磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。
第4介入閾値=−(初期設定値−第4オフセット値) ………(4)
第4オフセット値は、図9(d)の制御マップによって決まる値である。図9(d)の制御マップは、δ前後RR磁束密度/dtをインデックスとし、第4オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第4オフセット値は、δ前後RR磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。また、δ前後RR磁束密度/dtが設定値−βより小さい場合には、δ前後RR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後RR磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ前後RR磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。
第5介入閾値=−(初期設定値−第5オフセット値) ………(5)
第5オフセット値は、図9(e)の制御マップによって決まる値である。図9(e)の制御マップは、δ前前RL磁束密度/dtをインデックスとし、第5オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第5オフセット値は、δ前前RL磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。また、δ前前RL磁束密度/dtが設定値−βより小さい場合には、δ前前RL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前前RL磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ前前RL磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。
第6介入閾値=−(初期設定値−第6オフセット値) ………(6)
第6オフセット値は、図9(f)の制御マップによって決まる値である。図9(f)の制御マップは、δ前後RL磁束密度/dtをインデックスとし、第6オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第6オフセット値は、δ前後RL磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。また、δ前後RL磁束密度/dtが設定値−βより小さい場合には、δ前後RL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後RL磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ前後RL磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。
第7介入閾値=初期設定値−第7オフセット値 ………(7)
第7オフセット値は、図9(g)の制御マップによって決まる値である。図9(g)の制御マップは、δ前後LL磁束密度/dtをインデックスとし、第7オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第7オフセット値は、δ前後LL磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ前後LL磁束密度/dtが設定値βより大きい場合には、δ前後LL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後LL磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ前後LL磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
第8介入閾値=−(初期設定値−第8オフセット値) ………(8)
第8オフセット値は、図9(h)の制御マップによって決まる値である。図9(h)の制御マップは、δ後後LR磁束密度/dtをインデックスとし、第8オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第8オフセット値は、δ後後LR磁束密度/dtが設定値−αより大きい場合には0をとる。また、δ後後LR磁束密度/dtが設定値−βより小さい場合には、δ後後LR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ後後LR磁束密度/dtが設定値−α以下で且つ設定値−β以上である場合には、δ後後LR磁束密度/dtが負値で且つ絶対値が大きいほど直線的に増大する。
第9介入閾値=初期設定値−第9オフセット値 ………(9)
第9オフセット値は、図9(i)の制御マップによって決まる値である。図9(i)の制御マップは、δ前後RL磁束密度/dtをインデックスとし、第9オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第9オフセット値は、δ前後RL磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ前後RL磁束密度/dtが設定値βより大きい場合には、δ前後RL磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後RL磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ前後RL磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
第10介入閾値=初期設定値−第10オフセット値 ………(10)
第10オフセット値は、図9(j)の制御マップによって決まる値である。図9(j)の制御マップは、δ前後RR磁束密度/dtをインデックスとし、第10オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第10オフセット値は、δ前後RR磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ前後RR磁束密度/dtが設定値βより大きい場合には、δ前後RR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後RR磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ前後RR磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
第11介入閾値=初期設定値−第11オフセット値 ………(11)
第11オフセット値は、図9(k)の制御マップによって決まる値である。図9(k)の制御マップは、δ後後LR磁束密度/dtをインデックスとし、第11オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第11オフセット値は、δ後後LR磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ後後LR磁束密度/dtが設定値βより大きい場合には、δ後後LR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ後後LR磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ後後LR磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
第12介入閾値=初期設定値−第12オフセット値 ………(12)
第12オフセット値は、図9(l)の制御マップによって決まる値である。図9(l)の制御マップは、δ前後LR磁束密度/dtをインデックスとし、第12オフセット値を表すマップである。この制御マップでは、第12オフセット値は、δ前後LR磁束密度/dtが設定値αより小さい場合には0をとる。また、δ前後LR磁束密度/dtが設定値βより大きい場合には、δ前後LR磁束密度/dtの値にかかわらず、正の一定値γをとる。さらに、δ前後LR磁束密度/dtが設定値α以上で且つ設定値β以下である場合には、δ前後LR磁束密度/dtが大きいほど直線的に増大する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、下記(13)式に従って、第1〜第12介入閾値を算出する。
第1介入閾値 =−初期設定値
第2介入閾値 = 初期設定値
第3介入閾値 =−初期設定値
第4介入閾値 =−初期設定値
第5介入閾値 =−初期設定値
第6介入閾値 =−初期設定値
第7介入閾値 = 初期設定値
第8介入閾値 =−初期設定値
第9介入閾値 = 初期設定値
第10介入閾値= 初期設定値
第11介入閾値= 初期設定値
第12介入閾値= 初期設定値 ………(13)
前記ステップS304では、選択輪が脱輪しているか否かを判定する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後RR磁束密度差、前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差、前後LR磁束密度差、および第1〜第12介入閾値を読み出す。
続いて、左前輪10FLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、図10(a)に示すように、読み出した前後LL磁束密度差が第1介入閾値より小さいか否かを判定する。そして、前後LL磁束密度差が第1介入閾値より小さいと判定した場合には(Yes)、選択輪が脱輪していると判定し、ステップS305に移行する。
また、前後RR磁束密度差が第4介入閾値以上であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(e)に示すように、読み出した前前RL磁束密度差が第5介入閾値より小さいか否かを判定する。そして、前前RL磁束密度差が第5介入閾値より小さいと判定した場合には(Yes)、選択輪が脱輪していると判定し、前記ステップS305に移行する。
また、前後LL磁束密度差が第7介入閾値以下であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(h)に示すように、読み出した後後LR磁束密度差が第8介入閾値より小さいか否かを判定する。そして、後後LR磁束密度差が第8介入閾値より小さいと判定した場合には(Yes)、選択輪が脱輪していると判定し、前記ステップS305に移行する。
また、前後RR磁束密度差が第10介入閾値以下であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(k)に示すように、読み出した後後LR磁束密度差が第11介入閾値より大きいか否かを判定する。そして、後後LR磁束密度差が第11介入閾値より大きいと判定した場合には(Yes)、選択輪が脱輪していると判定し、前記ステップS305に移行する。
車両は、一の車輪が脱輪状態になり、車両が当該一の車輪(以下、「脱輪車輪」と呼ぶ)の側に傾いた場合、脱輪車輪の接地荷重が減少することによって、脱輪車輪の磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果が低減する。ここで、車両には、上屋や左右のスタビライザによって荷重移動量変化の拘束がある。そのため、脱輪車輪の接地荷重が低減すると、その減少分だけ、他の車輪の接地荷重が増大する。それゆえ、他の車輪の磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果が増大する。その結果、図11に示すように、脱輪車輪の磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果と他の車輪の磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果との差の絶対値は、脱輪車輪の磁束密度センサ17による磁束密度の検出量の減少量の絶対値に比べ、より大きくなる。それゆえ、本実施形態では、それらの検出結果の差に基づくことで、各車輪の脱輪状態をより適切に検出することが可能となる。そして、一の車輪の脱輪状態によって、車両が当該一の車輪側に傾いた姿勢をとっていることを検出することができる。そのため、車両の姿勢をより適切に検出できる。
すなわち、例えば、車両旋回時に、旋回内輪が浮き上がる方向にロール運動を行った場合、旋回内輪の接地荷重が減少し、その減少分だけ旋回外輪の接地荷重が増大する。ここで、旋回内輪の接地荷重の減少量の絶対値は、脱輪発生時の脱輪車輪の接地荷重の減少量の絶対値よりも僅かに小さいだけである。そのため、例えば、図13に示すように、車輪毎に接地荷重の減少量の絶対値が脱輪判定用の閾値を超えたか否かを判定し、閾値を超える車輪を脱輪車輪と判定する方法では、旋回内輪も脱輪車輪であると誤判定する可能性がある。そして、車両が旋回外輪側に傾いた姿勢をとっていると誤判定する可能性がある。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、加速度センサ3が出力する信号を読み込む。そして、その読み込んだ信号をメモリに格納する。
前記ステップS306では、車両が選択輪側に傾いているか否かを判定する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから車両前後方向の加速度XG、および車幅方向の加速度YGを読み出す。
続いて、左前輪10FLまたは左後輪10RLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、図14(a)(b)に示すように、読み出した車両前後方向の加速度XG、および車幅方向の加速度YGに基づき、tan-1(YG/XG)が−180°以上で且つ0°以下であるか否かを判定する。そして、tan-1(YG/XG)が−180°以上で且つ0°以下であると判定した場合には(Yes)、車両は左側、つまり、選択輪側に傾いていると判定し、ステップS307に移行する。一方、tan-1(YG/XG)が−180°より小さいまたは0°より大きいと判定した場合には(No)、この演算処理を終了する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、操舵角センサ1、車輪速センサ2、ヨーレイトセンサ4、および加速度センサ3が出力する信号をメモリに読み込む。
続いて、走行制御コントローラ9は、メモリに読み込んだ信号に基づき、車両が直進状態、つまり、旋回状態以外の状態にあるか否かを判定する。そして、車両が直進状態にあると判定した場合には(Yes)、ステップS308に移行する。一方、車両が旋回状態にあると判定した場合には(No)、この演算処理を終了する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、前後LR磁束密度差を読み出す。
続いて、左前輪10FLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出した前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、前後LR磁束密度差に基づき、下記(14)式に従って選択輪の目標制動流体圧BFL *を算出する。目標制動流体圧BFL *とは、左前輪10FL輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の目標値である。
ここで、HighSelect(|前後LL磁束密度差|、|前前RL磁束密度差|、|前後LR磁束密度差|)は、|前後LL磁束密度差|、|前前RL磁束密度差|、|前後LR磁束密度差|のうち最大のものを選出する関数である。第1係数および第2係数は、正の一定値とする。
BFR *=HighSelect(|前後RR磁束密度差|、|前前RL磁束密度差|、|前後RL磁束密度差|)×第1係数+(XG 2+YG 2)1/2×第2係数) ………(15)
一方、左後輪10RLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出した前後LL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差に基づき、下記(16)式に従って選択輪の目標制動流体圧BRL *を算出する。目標制動流体圧BRL *とは、左後輪10RL輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の目標値である。
一方、右後輪10RRが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出した前後RR磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後LR磁束密度差に基づき、下記(17)式に従って選択輪の目標制動流体圧BRR *を算出する。目標制動流体圧BRR *とは、右後輪10RR輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の目標値である。
続いて、走行制御コントローラ9は、算出した目標制動流体圧に選択輪のホイールシリンダ22の制動流体圧を一致させる指令を制動力制御装置21に出力する。
これによって、選択輪が脱輪状態にある場合に、選択輪に制動流体圧を付与できる。それゆえ、選択輪の空転を抑制でき、選択輪以外の車輪にエンジンの駆動力を伝達でき、車両の脱輪状態からの脱出性能を向上することができる。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後RR磁束密度差、前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差、および前後LR磁束密度差を読み出す。
続いて、左前輪10FLが選択輪の対角輪である場合には、走行制御コントローラ9は、図10(a)に示すように、読み出した前後LL磁束密度差が第1介入閾値以上であるか否かを判定する。そして、前後LL磁束密度差が第1介入閾値より小さいと判定した場合には(No)、選択輪の対角輪が脱輪していると判定し、この演算処理を終了する。
また、前後RR磁束密度差が第4介入閾値以上であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(e)に示すように、読み出した前前RL磁束密度差が第5介入閾値以上であるか否かを判定する。そして、前前RL磁束密度差が第5介入閾値より小さいと判定した場合には(No)、選択輪の対角輪が脱輪していると判定し、この演算処理を終了する。
また、前後LL磁束密度差が第7介入閾値以下であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(h)に示すように、読み出した後後LR磁束密度差が第8介入閾値以上であるか否かを判定する。そして、後後LR磁束密度差が第8介入閾値より小さいと判定した場合には(No)、選択輪の対角輪が脱輪していると判定し、この演算処理を終了する。
また、前後RR磁束密度差が第10介入閾値以下であると判定した場合には、走行制御コントローラ9は、図10(k)に示すように、読み出した後後LR磁束密度差が第11介入閾値以下であるか否かを判定する。そして、後後LR磁束密度差が第11介入閾値より大きいと判定した場合には(No)、選択輪の対角輪が脱輪していると判定し、この演算処理を終了する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから車両前後方向の加速度XG、および車幅方向の加速度YGを読み出す。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出した車両前後方向の加速度XG、および車幅方向の加速度YGに基づき、(XG 2+YG 2)1/2が傾き判定閾値より大きいか否かを判定する。傾き判定閾値は正値とする。例えば、加速度センサ3の特性や車両の脱輪状態からの脱出性を考慮して設定する。そして、(XG 2+YG 2)1/2が閾値より大きいと判定した場合には(Yes)、車両の傾きが大きいと判定し、ステップS311に移行する。一方、(XG 2+YG 2)1/2が傾き判定閾値以上であると判定した場合には(No)、車両の傾きが小さいと判定し、この演算処理を終了する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、前後LR磁束密度差を読み出す。
続いて、左前輪10FLが選択輪の対角輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出した前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、前後LR磁束密度差に基づき、前記(14)式に従って選択輪の目標制動流体圧BFL *を算出する。目標制動流体圧BFL *とは、左前輪10FL輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の目標値である。
一方、左後輪10RLが選択輪の対角輪である場合には、走行制御コントローラ9は、読み出した前後LL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差に基づき、前記(16)式に従って選択輪の目標制動流体圧BRL *を算出する。
続いて、走行制御コントローラ9は、算出した目標制動流体圧に選択輪の対角輪のホイールシリンダ22の制動流体圧を一致させる指令を制動力制御装置21に出力する。
これによって、選択輪が脱輪状態にある場合、選択輪に制動流体圧を付与する際に、選択輪の対角輪にも制動流体圧を付与できる。それゆえ、左右輪の駆動力の不均衡を防止でき、駆動力の不均衡によって車両にヨーモーメントが発生することを防止できる。
次に、液圧制御処理について図15を参照して説明する。
なお、図15の演算処理は、制御介入判断処理が終了すると制御輪の数だけ実行する。制御輪とは、制御介入判断処理で脱輪状にあると判定し、制御介入判断処理で出力する指令をもとに制動力の制御を行っている車輪である。そして、制御輪が1つである場合には、その制御輪を液圧制御処理で用いるパラメータである「選択輪」として演算処理を実行する。また、制御輪が複数である場合には、各実行のたびに、この液圧制御処理で用いるパラメータである「選択輪」を、それら複数の制御輪の1つに順次切り替える。
図15に示すように、まず、ステップS401では、選択輪が脱輪状態から脱出しつつあるか否かを判定する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後RR磁束密度差、前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差、および前後LR磁束密度差を読み出す。
続いて、左前輪10FLが選択輪である場合には、走行制御コントローラ9は、図16(a)に示すように、読み出した前後LL磁束密度差が第1離脱閾値より大きいか否かを判定する。第1離脱閾値は、第1介入閾値より絶対値の大きい負値とする。そして、前後LL磁束密度差が第1離脱閾値より大きいと判定した場合には(Yes)、脱輪状態から脱出しつつあると判定し、ステップS402に移行する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、アクセル開度センサ7が出力する信号をメモリに読み込む。そして、その読み込んだ信号をメモリに格納する。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み込んだ信号に基づき、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度より大きいか否かを判定する。前回のアクセル開度とは、このステップを前回実行したときに読み込んだ信号が表すアクセル開度である。このステップを始めて実行する場合には、前回のアクセル開度として現在のアクセル開度の値を用いる。そして、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度より大きいと判定した場合には(Yes)、運転者に車両の発進意志があると判定し、ステップS403に移行する。一方、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度以下であると判定した場合には(No)、運転者に車両の発進意志がないと判定し、前記ステップS405に移行する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、選択輪の車輪速センサ2が出力する信号を読み込む。そして読み込んだ信号をメモリに格納する。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み込んだ信号、つまり、車輪速に基づき、選択輪の車輪速が0より大きいか否かを判定する。そして、選択輪の車輪速が0より大きいと判定した場合には(Yes)ステップS404に移行する。一方、選択輪の車輪速0であると判定した場合には(No)、前記ステップS405に移行する。
前記ステップS404では、選択輪の制動流体圧を低減する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリからアクセル開度を読み出す。
続いて、読み出したアクセル開度に基づき、図17の制御マップを参照して、選択輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の減圧量を算出する。図17の制御マップは、アクセル開度と開速度との乗算値(つまり、アクセル開度×開速度)をインデックスとし、選択輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の減圧量を表すマップである。開速度とは、アクセル開度の時間変化率である。図17の制御マップでは、制動流体圧の減圧量は、アクセル開度×開速度が0である場合には比較的小さい正値をとる。また、アクセル開度×開速度が設定値より大きい場合には、アクセル×開速度の値にかかわらず、比較的大きい一定値をとる。さらに、アクセル開度×開速度が0より大きく且つ前記設定値以下である場合には、アクセル開度×開速度が大きいほど2次関数的に増大する。
これによって、選択輪が脱輪状態から脱出しつつあり、運転者に車両の発進意志があり、選択輪が回転している場合に、選択輪の制動流体圧を低減できる。それゆえ、選択輪に駆動力を伝達でき、車両の脱輪状態からの脱出性能を向上することができる。
図15に戻り、一方、前記ステップS405では、運転者に車両の発進意志があるか否かを判定する。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出したアクセル開度に基づき、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度より大きいか否かを判定する。そして、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度より大きいと判定した場合には(Yes)、運転者に車両を加速させる意思があると判定し、ステップS406に移行する。一方、現在のアクセル開度が前回のアクセル開度以下であると判定した場合には(No)、運転者に車両の発進意志がないと判定し、ステップS408に移行する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まずメモリから選択輪の車輪速を読み出す。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出した車輪速に基づき、選択輪の車輪速が0より大きいか否かを判定する。そして、選択輪の車輪速が0より大きいと判定した場合には(Yes)、ステップS407に移行する。一方、選択輪の車輪速が0以下であると判定した場合には(No)、前記ステップS408に移行する。
前記ステップS407では、選択輪の制動流体圧を増大する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、選択輪の車輪速が0となるように、選択輪のホイールシリンダ22の制動流体圧の増圧量を算出する。
これによって、選択輪が脱輪状態から脱出する素振りもないが、運転者に車両の発進意志があり、選択輪が回転している場合には、選択輪の制動流耐圧を増大できる。それゆえ、脱輪している選択輪への駆動力の伝達を抑制でき、脱輪していない他の車輪に駆動力をより多く伝達でき、車両の脱輪状態からの脱出性能を向上することができる。
一方、前記ステップS408では、選択輪の制動流体圧を保持させる。
これによって、運転者に車両の発進意志がない場合、または選択輪が回転していない場合には、選択輪の制動流耐圧を保持できる。それゆえ、脱輪している選択輪への駆動力の伝達抑制を継続し、車両の脱輪状態からの脱出性能を保持することができる。
次に、制御終了判定処理について図18を参照して説明する。
なお、図18の演算処理は、制御輪の数だけ実行する。そして、制御輪が1つである場合には、その制御輪を制御終了判定処理で用いるパラメータである「選択輪」として演算処理を実行する。また、制御輪が複数である場合には、各実行のたびに、「選択輪」を、それら複数の制御輪の1つに順次切り替える。
図18に示すように、まずステップS501では、選択輪が脱輪状態から脱出したか否かを判定する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、まず、メモリから前後RR磁束密度差、前後LL磁束密度差、前前RL磁束密度差、後後LR磁束密度差、前後RL磁束密度差、および前後LR磁束密度差を読み出す。
また、前後LL磁束密度差が第1終了閾値以下である場合には、走行制御コントローラ9は、図16(b)に示すように、読み出した前前RL磁束密度差が第2終了閾値より小さいか否かを判定する。第2終了閾値は、第2離脱閾値より絶対値の小さい正値とする。そして、前前RL磁束密度差が第2終了閾値より小さいと判定した場合には(Yes)、選択輪が脱輪状態から脱出したと判定し、前記ステップS502に移行する。
前記ステップS502では、選択輪の制動流体圧を0にする。
具体的には、走行制御コントローラ9は、選択輪のホイールシリンダ22の制動流体圧を0にさせる指令を制動力制御装置21に出力した後、この演算処理を終了する。
これによって、選択輪が脱輪状態から脱出した後、すぐに選択輪の制動力を解除できる。それゆえ、選択輪を回転可能な状態とし、車両のスムーズな発進が可能となる。
図19は、スリップ抑制処理を表すフローチャートである。
次に、上記走行制御コントローラ9で行うスリップ抑制処理について図19を参照して説明する。
なお、図19の処理は、脱輪脱出処理で脱輪状態にある車輪への制動流体圧の付与を行っておらず、且つ車両のヨーレートがスリップ抑制処理開始閾値である場合に、一定の周期(例えば、100msec.)で繰り返し実行する。ここで、スリップ抑制処理開始閾値とは、いわゆるVDC(vehicle Dynamics Control)制御の開始閾値である。
具体的には、走行制御コントローラ9は、メモリから前前RL磁束密度差を読み出す。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出した前前RL磁束密度差の絶対値がロール判定閾値より大きいか否かを判定する。ロール判定閾値は、第1〜第12介入閾値より絶対値の小さい正値とする。そして、前前RL磁束密度差がロール判定閾値より大きいと判定した場合には(Yes)、車両がロール運動を行っていると判定し、ステップS602に移行する。一方、前前RL磁束密度差の絶対値がロール判定閾値以上である場合には(No)、車両がロール運動を行っていないと判定し、この演算処理を終了する。
具体的には、走行制御コントローラ9は、メモリから前前RL磁束密度差を読み出す。
続いて、走行制御コントローラ9は、読み出した前前RL磁束密度差に基づき、接地荷重が低い車輪が空転しないように各車輪10FL〜10RRの目標制動流体圧BFL *〜BRR *を算出する。例えば、脱輪状態から脱出するための制動流体圧よりも小さな値とし、車両のロール状態に応じて接地荷重の小さい車輪の値を増大する。
これによって、車両がロール運動を行っている場合に、各車輪10FL〜10RRに空転の抑制に適した制動流体圧を付与できる。それゆえ、車両のロール運動によって接地荷重が低減した車輪の空転を抑制でき、車両の走行安定性を向上することができる。
このように、本実施形態の走行制御コントローラ9は、車両が脱輪した車輪側に傾いた姿勢をとっているのか、車両が旋回外輪側に傾いた姿勢をとっているのか、車両の姿勢を考慮して、各車輪10FL〜10RRに制動流体圧を付与できる。そのため、車両姿勢に応じた適正な制動力を各車輪10FL〜10RRに付与することができる。
図20は、本実施形態の制動力制御装置の動作を説明するための説明図である。
次に、第1実施形態の制動力制御装置を装備した自車両の動作について、図20を参照して説明する。
まず、悪路を走行中、運転者が減速操作を行うことで、図20の時刻t1に示すように、車両が停止直前の低速走行状態になったとする。そして、車速が低減するにつれ、左前輪10FLが徐々に窪みに落ち込み、左前輪10FLが脱輪状態に移行しているとする。すると、左前輪10FLの車輪速センサ2では、固定側軌道部材12と回転側軌道部材13との傾きが増大することで、マグネットリング16と磁束密度センサ17との間のエアギャップ量が増大する。それゆえ、エアギャップ量が増大することで、左前輪10FLの磁束密度センサ17による磁束密度の検出結果が低減する。そして、左前輪10FLの磁束密度センサ17は、低減した磁束密度を表す信号を走行制御コントローラ9に出力する。
続いて、走行制御コントローラ9は、前後RR磁束密度差の絶対値が第10介入閾値の絶対値より大きいか否かを判定する。また、後後LR磁束密度差の絶対値が第11介入閾値の絶対値より大きいか否かを判定する。さらに、前後LR磁束密度差の絶対値が第12介入閾値の絶対値より大きいか否かを判定する。そして、前後RR磁束密度差、後後LR磁束密度差および前後LR磁束密度差の絶対値がそれぞれ第10、第11および第12介入閾値の絶対値以下であると判定した場合には、右後輪10RRが脱輪していないと判定する(ステップS309、Yes)。続いて、走行制御コントローラ9は、総合Gが傾き判定閾値より大きい場合には、車両の傾きが大きいと判定する(ステップS309、Yes)。そして、走行制御コントローラ9は、右後輪10RRの目標制動流体圧BRR *を算出し、右後輪10RRのホイールシリンダ22の制動流体圧を目標制動流体圧BRR *に一致させる指令を制動力制御装置21に出力する(ステップS311)。
その際、上述したように左前輪10FLに回転を抑制する制動力を付与している。そのため、前輪10FL、10FRの駆動軸をエンジンが回転しても、左前輪10FLの空転を抑制でき、駆動軸に設けた差動歯車の回転を抑制できる。それゆえ、右前輪10FRにエンジンの駆動力を伝達でき、車両の発進性を向上できる。そのため、アクセル開度が小さい場合にも、車両を十分に加速でき、脱輪状態から容易に脱出できる。
このような指令を出力することによって、制動力制御装置21は、左前輪10FLのホイールシリンダ22の制動流体圧を0とする。これにより、左前輪10FLが脱輪状態から脱出した後、すぐに左前輪10FLの制動力を解除できる。それゆえ、左前輪10FLをより容易に回転可能な状態とし、車両のよりスムーズな発進が可能となる。
ちなみに、図21の時刻t6に示すように、車輪それぞれのスリップ率を検出し、スリップ率が設定値より大きい車輪に制動力を付与する方法では、車両の空転が発生して始めて、左前輪10FLに制動力が付与される。それゆえ、アクセル開度が増大する。
また、その際、空転が発生している車輪のみに制動力を付与するため、左右輪の駆動力に不均衡を生じ、駆動力の不均衡によって車両にヨーモーメントが発生する。
さらに、図20の時刻t7に示すように、車両が脱輪状態から脱出しつつある場合にも、制動力を低減することなく、継続して付与する方法では、車両の発進時に、制動力を付与している車輪を引きずってしまい、車両の脱輪状態からの脱出性能が低減する。
なお、本実施形態では、図2のマグネットリング16が磁場発生手段を構成する。以下同様に、図2の磁束密度センサ17が磁束密度検出手段を構成する。また、図1の走行制御コントローラ9、図5の第1姿勢判定部26、第2姿勢判定部27、図8のステップS304、図19のステップS19が車両姿勢検出手段を構成する。
(1)本実施形態では、車両姿勢検出手段は、一の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度と、他の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度との差に基づいて、車両の姿勢を検出する。
この構成によれば、例えば、車両が一の車輪側に傾いた場合、一の車輪の接地荷重と他の車輪の接地荷重とが反対方向に変動する。そのため、一の車輪の接地荷重と他の車輪の接地荷重との差は、一の車輪の接地荷重の低減量の絶対値および他の車輪の接地荷重の増大量の絶対値の合計値分変化する。ここで、車輪の接地荷重が変化すると、その車輪の車輪速センサに対応して設けた磁場発生手段と磁束密度検出手段との間のエアギャップ量が変化し、磁束密度検出手段による磁束密度の検出結果が変化する。それゆえ、一の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度と他の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度との差に着目した場合、当該差が大きく変化することで、車両が当該一の車輪側に傾いた姿勢をとっていることを比較的容易に検出できる。そのため、車両の姿勢をより適切に検出できる。
この構成によれば、車輪の接地荷重の変化に対する、磁場発生手段と磁束密度検出手段との間のエアギャップの変化量が比較的小さくなる。このような場合にも、一の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度と、他の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出した磁束密度との差が大きく変化することにより、車両の姿勢をより適切に検出できる。
この構成によれば、車幅方向に並んだ左右輪の接地荷重の差に基づいて、車両の姿勢を検出できる。そのため、車両の横方向の姿勢をより適切に検出できる。
(4)一の車輪と他の車輪とは、車両前後方向に並んだ前後輪である。
この構成によれば、車両前後方向に並んだ前後輪の接地荷重の差に基づいて、車両の姿勢を検出できる。そのため、車両の前後方向の姿勢をより適切に検出できる。
この構成によれば、対角方向に位置する対角輪の接地荷重の差に基づいて、車両の姿勢を検出できる。そのため、車両の車幅方向の姿勢および前後方向の姿勢を検出できる。それゆえ、車両の車幅方向の姿勢および前後方向の姿勢を個別に検出する方法に比べ、ハードウェア構成や演算処理の内容を簡略化でき、比較的安価に構成できる。
Claims (6)
- 複数の車輪それぞれに車輪速センサを備え、
前記車輪速センサは、
車輪側に設置してあり、車輪の回転に応じて周期的に変化する磁場を発生する磁場発生手段と、
前記磁場発生手段と対向する車体側に設置してあり、対向する磁場発生手段によって生じる磁場の磁束密度を検出する磁束密度検出手段と、を有し、
前記複数の車輪のうち、一の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出する磁束密度と他の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出する磁束密度との差に基づいて、車両の姿勢を検出する車両姿勢検出手段を備えることを特徴とする車両姿勢検出装置。 - 前記磁場発生手段は、多極着磁したロータであり、
前記磁束密度検出手段を、前記ロータの軸方向と平行な方向で該ロータに対向して設置したことを特徴とする車両姿勢検出装置。 - 前記一の車輪と前記他の車輪とは、車幅方向に並んだ左右輪であることを特徴とする請求項1に記載の車両姿勢検出装置。
- 前記一の車輪と前記他の車輪とは、車両前後方向に並んだ前後輪であることを特徴とする請求項1に記載の車両姿勢検出装置。
- 前記一の車輪と前記他の車輪とは、対角方向に位置する対角輪であることを特徴とする請求項1に記載の車両姿勢検出装置。
- 複数の車輪それぞれに、車輪側に設置し、車輪の回転数に応じて周期的に変化する磁場を発生する磁場発生手段と、前記磁場発生手段と対向する車体側に設置し、対向する磁場発生手段によって生じる磁場の磁束密度を検出する磁束密度検出手段と、を有する車輪速センサを設置し、
前記磁束密度検出手段が検出した磁束密度を取得する磁束密度取得ステップと、
前記磁場検出ステップの実行後、前記複数の車輪のうち、一の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出する磁束密度と他の車輪に対応して設けた車輪速センサの磁束密度検出手段が検出する磁束密度との差に基づいて、車両の姿勢を検出する車両姿勢検出ステップと、を実行することを特徴とする車両姿勢検出方法。
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