JP2011035899A - 立体画像提示方法および提示装置 - Google Patents

立体画像提示方法および提示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2011035899A
JP2011035899A JP2010154595A JP2010154595A JP2011035899A JP 2011035899 A JP2011035899 A JP 2011035899A JP 2010154595 A JP2010154595 A JP 2010154595A JP 2010154595 A JP2010154595 A JP 2010154595A JP 2011035899 A JP2011035899 A JP 2011035899A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
calculation
image data
point
image
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010154595A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5569198B2 (ja
Inventor
Mitsuru Kitamura
満 北村
Yoshiki Yasuda
類己 安田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2010154595A priority Critical patent/JP5569198B2/ja
Publication of JP2011035899A publication Critical patent/JP2011035899A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5569198B2 publication Critical patent/JP5569198B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03HHOLOGRAPHIC PROCESSES OR APPARATUS
    • G03H1/00Holographic processes or apparatus using light, infrared or ultraviolet waves for obtaining holograms or for obtaining an image from them; Details peculiar thereto
    • G03H1/22Processes or apparatus for obtaining an optical image from holograms
    • G03H1/2294Addressing the hologram to an active spatial light modulator
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03HHOLOGRAPHIC PROCESSES OR APPARATUS
    • G03H2225/00Active addressable light modulator
    • G03H2225/60Multiple SLMs

Abstract

【課題】 画素ピッチの粗い空間光変調素子を用いた場合でも、広い視野角をもった歪みのない再生像を提示する。
【解決手段】 原画像10からの物体光と参照光40R,40Lとによって記録面20R,20L上に形成されるホログラム干渉縞をコンピュータで演算し、画像データ50R,50Lに収める。予め右眼および左眼の観察位置30R,30Lを設定し、参照光40R,40Lとして、これら観察位置に収束する光路をとる光を用いる。液晶ディスプレイなどの空間光変調素子を記録面20R,20Lの位置にそれぞれ配置し、画像データ50R,50Lを供給して駆動し、ホログラム干渉縞を表示させる。この干渉縞の表示面に、参照光40R,40Lと同じ光路をとる再生用照明光を照射し、観察位置30R,30Lに両眼ER,ELを置いた観察者に観察させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、立体画像を提示する方法および装置に関し、特に、空間光変調素子を用いて再生用照明光に対する変調を行うことにより、観察者に立体画像を提示する技術に関する。
立体画像を提示する代表的な方法として、二次元視差画像方式が古くから知られている。この方式は、三次元物体を両眼で観察した場合に、左右の眼の網膜に得られる画像にわずかな視差が生じ、この視差を手がかりに奥行きを知覚するという人間の知覚特性を利用する方式である。この方式で立体画像を提示するには、予め、左眼に提示するための左眼視差画像と右眼に提示するための右眼視差画像とを別個に用意しておき、何らかの方法で、左眼視差画像を左眼のみに提示し、右眼視差画像を右眼のみに提示すればよい。具体的な提示方法としては、アナグリフ方式、液晶シャッター方式、偏光眼鏡方式、パララックスバリア方式、レンチキュラレンズ方式、ヘッドマウントディスプレイ方式など、多数の方法が提案され、実用化されてきている。
ところが、この二次元視差画像方式には、一般に「輻輳調節矛盾」と呼ばれる問題が生じることが知られている。この問題は、「眼の焦点調節距離(ピント位置)」と「輻輳角(物体から見て、左右両眼のなす角)から得られる奥行き距離」との不一致に起因するものである。すなわち、眼は常に二次元画像の表示面に焦点を合わせるため、焦点調節距離は固定であるのに対して、輻輳角は表示される物体の奥行きに応じた異なる角度になるので、脳が両者間の矛盾を認識することになる。この矛盾は、立体画像を観察する際に生じる眼精疲労の原因とも言われている。
これに対して、ホログラフィの技術を利用した立体画像の提示方法では、物体から生じる光の波面の情報を一旦ホログラムという形式で記録し、再生時には、このホログラムに再生用照明光を照射することにより、記録されていた波面を再生することになる。この方法では、物体の波面の情報を正確に再現することができるため、上述した「輻輳調節矛盾」の問題は生じない。このため、ホログラフィは理想的な立体表示技術と言われている。ホログラムを作成するには、通常、記録対象となる物体からの物体光と、これとは別の参照光とを、感光材料からなる媒体の記録面上で重ね合わせ、物体光と参照光との干渉による干渉縞を記録面に形成する方法がとられる。
最近は、コンピュータを利用してホログラムを作成する技術も実用化されており、CG技術で作成された仮想物体を用いて、コンピュータ上でシミュレーションを行い、記録面上に形成される干渉縞パターンを演算によって求めることによって作成された計算機合成ホログラム(CGH)も普及し始めている。また、物体からの波面の情報を干渉縞(振幅強度)として記録する代わりに、物体波の位相のみを記録する方式(キノフォーム方式)や物体波の位相と振幅との双方を記録する方式(複素振幅方式)も提案されている。更に、このようなコンピュータの演算によって得られた干渉縞パターン等の画像データを、液晶ディスプレイなどの空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)に与え、再生用照明光に対する変調を行い、物体光の波面を再生する方法も提案されている。たとえば、下記の特許文献1には、右眼用の空間光変調素子と左眼用の空間光変調素子とを用意し、これらに右眼用画像データおよび左眼用画像データ(ホログラムやキノフォームなど、物体光の波面の情報を記録した画像データ)をそれぞれ与え、左右両眼のそれぞれに物体光の波面を提示する方法が開示されている。
空間光変調素子を用いた立体画像提示方法のメリットは、任意の画像データに基づいて任意の立体画像を提示できる点である。感光材料からなるホログラム記録媒体による再生像は、予め記録されている特定の立体画像に固定されてしまうが、空間光変調素子による再生像は、与える画像データに依存して自由に変えることができる。このため、たとえば、時系列に並べられた複数の画像データを用意し、これらを順番に空間光変調素子に与えて駆動するようにすれば、提示する画像を時間的に更新してゆくことができるため、観察者に対して立体画像を動画として提示することも可能になる。
特開平8−262962号公報
上述したとおり、ホログラフィは、原理的には、理想的な立体表示技術であり、特に、前掲の特許文献1に開示されているように、空間光変調素子を用いた手法を採れば、デジタルデータによって装置を駆動することができるため、理想的な立体動画提示装置を実現することができる。
しかしながら、一般的なホログラム記録媒体に比べて、空間光変調素子の空間分解能は極めて低いのが現状である。これは、液晶ディスプレイに代表される一般的な空間光変調素子が、多数の画素の集合体からなり、画素単位で光学的特性を制御する機能をもっているためである。たとえば、現在、空間光変調素子として商用利用可能な液晶ディスプレイの場合、画素ピッチはたかだか32μm程度である。もちろん、特殊用途の液晶ディスプレイでは、画素ピッチがより小さな製品も開発されているが、立体画像提示装置という一般製品に組み込むには、コストの面で折り合わない。
液晶ディスプレイの画素ピッチは、そのまま表示画像の解像度を決めるパラメータになり、液晶ディスプレイ上に表示されたホログラム干渉縞の解像度は、当該ディスプレイの画素ピッチに依存して定まる。一方、ホログラムを再生する場合、再生用照明光がホログラム記録面の個々の位置で回折され、観察者の眼に入ることになるが、物理的に回折可能な角度の上限は干渉縞の解像度に依存する。結局、画素ピッチが粗くなればなるほど、物理的に回折可能な角度は小さくなるので、大きな回折角を得るためには、画素ピッチをできるだけ細かくし、ホログラム干渉縞の解像度を高める必要がある。しかしながら、上述したとおり、商用利用可能な液晶ディスプレイの画素ピッチはたかだか32μm程度というのが現状である。
このように、空間光変調素子を用いた立体画像提示装置には、一般的なホログラム記録媒体に比べて、物理的に回折可能な角度が小さい、という欠点があるため、「観察者から見た視野角が狭い」という問題が生じる。たとえば、観察者が、空間光変調素子として機能する液晶ディスプレイの中心点に視線を向けて観察した場合、当該中心点近傍からの回折光は観察できるが、液晶ディスプレイ周囲の縁部近傍からの回折光は観察できない、という問題が生じる。これは、液晶ディスプレイの解像度が低く、縁部近傍から視点位置まで再生用照明光を回折することができないために生じる問題である。このように「観察可能な視野角が小さい」ということは、結局、「小さな画像しか表示することができない」ことを意味し、実用上、大きな問題になる。
前掲の特許文献1には、このような問題を解決する一手法として、立体再生像をレンズを通して拡大して観察させる方法が開示されている。観察者には、拡大再生像が提示されるため、視野角は広がり、大きな像を提示することが可能になる。しかしながら、一般的なレンズには光学的な収差が存在ため、拡大再生像に歪みが生じるという新たな問題が発生する。このような像の歪みを是正するためには、収差のない高価なレンズを用いるか、あるいは、収差に基づく立体画像の歪みを補正する演算を行う必要があるが、そのような対策を施すと、装置の製造コストが高騰したり、演算負担が増大したりする、という別な問題が生じてしまう。また、レンズを通した拡大像では、視点位置が変わると歪みの状態も変わるという問題や、再生像について正しい拡大像を得るためには、再生像とレンズとの配置に制約が生じるという問題も生じる。
そこで本発明は、比較的画素ピッチの粗い空間光変調素子を用いた場合でも、広い視野角をもった歪みのない再生像を提示することが可能な立体画像提示方法および提示装置を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、デジタルデータを作成するデータ作成段階と、作成したデジタルデータに基づいて観察者に立体画像を提示する画像提示段階と、を有する立体画像提示方法において、
データ作成段階では、
コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置され、観察者のいずれか一方の単眼に提示する情報を記録する記録面、を特定する記録面データを入力する記録面データ入力段階と、
コンピュータが、座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の単眼による理想的な観察位置を示す観察点、を特定する観察点データを入力する観察点データ入力段階と、
コンピュータが、座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力段階と、
コンピュータが、負側空間から記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、観察点に収束する光路をとる参照光、を特定する参照光データを入力する参照光データ入力段階と、
コンピュータが、原画像からの物体光と参照光とによって記録面上に形成される原画像の情報を演算して記録面上に記録する演算記録段階と、
コンピュータが、記録面上に記録された情報を画像データとして出力するデータ出力段階と、
を行い、
画像提示段階では、
観察者の単眼に提示する光を変調する空間光変調素子を、記録面に対応する位置に配置する素子配置段階と、
空間光変調素子に対して、参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る照明光を照射する照明光照射段階と、
画像データを空間光変調素子に与え、記録面上に記録された情報に基づいて照明光が変調されるようにする光変調段階と、
を行い、しかも、照明光照射段階と光変調段階とを同時に行うようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、デジタルデータを作成するデータ作成段階と、作成したデジタルデータに基づいて観察者に立体画像を提示する画像提示段階と、を有する立体画像提示方法において、
データ作成段階では、
コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼に提示する情報を記録する右記録面と、観察者の左眼に提示する情報を記録する左記録面と、を特定する記録面データを入力する記録面データ入力段階と、
コンピュータが、座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点と、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点と、を特定する観察点データを入力する観察点データ入力段階と、
コンピュータが、座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力段階と、
コンピュータが、負側空間から右記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、右観察点に収束する光路をとる右参照光と、負側空間から左記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、左観察点に収束する光路をとる左参照光と、を特定する参照光データを入力する参照光データ入力段階と、
コンピュータが、原画像からの物体光と右参照光とによって右記録面上に形成される原画像の情報を演算して右記録面上に記録し、原画像からの物体光と左参照光とによって左記録面上に形成される原画像の情報を演算して左記録面上に記録する演算記録段階と、
コンピュータが、右記録面上に記録された情報を右画像データとして出力し、左記録面上に記録された情報を左画像データとして出力するデータ出力段階と、
を行い、
画像提示段階では、
観察者の右眼に提示する光を変調する右眼用空間光変調素子と、観察者の左眼に提示する光を変調する左眼用空間光変調素子とを、それぞれ右記録面および左記録面に対応する位置に配置する素子配置段階と、
右眼用空間光変調素子に対して、右参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る右照明光を照射し、左眼用空間光変調素子に対して、左参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る左照明光を照射する照明光照射段階と、
右画像データを右眼用空間光変調素子に与え、右記録面上に記録された情報に基づいて右照明光が変調されるようにし、左画像データを左眼用空間光変調素子に与え、左記録面上に記録された情報に基づいて左照明光が変調されるようにする光変調段階と、
を行い、しかも、照明光照射段階と光変調段階とを同時に行うようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る立体画像提示方法において、
演算記録段階で、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、演算点Qに入射する参照光を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る立体画像提示方法において、
空間光変調素子として、ピッチpで配列された多数の画素の集合体からなり、画素単位で光学的特性を制御することが可能な素子を用い、
回折可否判定処理において、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立たない場合には、回折不可との判定結果が得られたものとして、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る立体画像提示方法において、
演算記録段階で、原画像からの物体光と参照光とに基づいて、記録面上に形成される合成波の振幅に関する情報もしくは位相に関する情報またはその双方を記録面上に記録するようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る立体画像提示方法において、
原画像データ入力段階で、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力し、
演算記録段階で、個々の原画像について記録面上への記録を行い、
データ出力段階で、個々の原画像についての画像データを出力し、
光変調段階で、個々の原画像についての画像データを順番に空間光変調素子に与え、動画の再生が行われるようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る立体画像提示方法において、
画像提示段階が、空間光変調素子からの0次光を遮蔽する機能を有する0次光遮蔽体を、観察点に配置する遮蔽体配置段階を更に有するようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る立体画像提示方法において、
遮蔽体配置段階で、円盤状の遮光膜からなる0次光遮蔽体を配置し、
遮光膜の径を、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満、となるように設定したものである。
(9) 本発明の第9の態様は、空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行うために、当該空間光変調素子に与える画像データを作成する立体画像提示用の画像データ作成装置において、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者のいずれか一方の単眼に提示する情報を記録する記録面、を特定する記録面データを格納する記録面データ格納部と、
座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の単眼による理想的な観察位置を示す観察点、を特定する観察点データを格納する観察点データ格納部と、
座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力部と、
負側空間から右記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、観察点に収束する光路をとる参照光、を特定する参照光データを格納する参照光データ格納部と、
原画像からの物体光と参照光とに基づいて、記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算する合成波情報演算部と、
記録面上の各演算点についての演算結果を保持する演算結果保持部と、
演算結果保持部に保持されている演算結果を画像データとして出力するデータ出力部と、
を設けるようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行うために、当該空間光変調素子に与える画像データを作成する立体画像提示用の画像データ作成装置において、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼に提示する情報を記録する右記録面と、観察者の左眼に提示する情報を記録する左記録面と、を特定する記録面データを格納する記録面データ格納部と、
座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点と、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点と、を特定する観察点データを格納する観察点データ格納部と、
座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力部と、
負側空間から右記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、右観察点に収束する光路をとる右参照光と、負側空間から左記録面を透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、左観察点に収束する光路をとる左参照光と、を特定する参照光データを格納する参照光データ格納部と、
原画像からの物体光と右参照光とに基づいて、右記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算し、原画像からの物体光と左参照光とに基づいて、左記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算する合成波情報演算部と、
右記録面上の各演算点についての演算結果を保持する右演算結果保持部および左記録面上の各演算点についての演算結果を保持する左演算結果保持部と、
右演算結果保持部に保持されている演算結果を右画像データとして出力し、左演算結果保持部に保持されている演算結果を左画像データとして出力するデータ出力部と、
を設けるようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第9または第10の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
合成波情報演算部が、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、演算点Qに入射する参照光を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
回折可否判定処理において、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとし、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子の画素ピッチをpとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立たない場合には、回折不可との判定結果が得られたものとして、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第9〜第12の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度情報を演算し、
演算結果保持部が、振幅強度情報を演算結果として保持し、
データ出力部が、振幅強度情報によって構成される干渉縞パターンを画像データとして出力するようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第9〜第12の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、
演算結果保持部が、位相情報を演算結果として保持し、
データ出力部が、位相情報によって構成される位相分布パターンを画像データとして出力するようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第9〜第12の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光によって記録面上に形成される合成波の振幅情報を演算し、更に、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、
演算結果保持部が、振幅情報および位相情報を演算結果として保持し、
データ出力部が、振幅情報および位相情報によって構成される複素振幅分布パターンを画像データとして出力するようにしたものである。
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第9〜第15の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置において、
原画像データ入力部が、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力し、
合成波情報演算部が、個々の原画像について合成波の情報を演算し、
演算結果保持部が、個々の原画像についての演算結果をそれぞれ保持し、
データ出力部が、個々の原画像についての画像データを順番に並べた動画データを出力するようにしたものである。
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第9〜第16の態様に係る立体画像提示用の画像データ作成装置を、コンピュータにプログラムを組み込むことにより実現したものである。
(18) 本発明の第18の態様は、空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行う立体画像提示装置において、
観察者のいずれか一方の単眼に提示する光を変調する空間光変調素子と、
空間光変調素子に対して、観察者の単眼による理想的な観察位置として設定された観察点に収束する光路をとる照明光を照射する照明光照射部と、
空間光変調素子を制御するための画像データを格納する画像データ格納部と、
画像データ格納部に格納されている画像データを空間光変調素子に供給して照明光を画像データに基づいて変調させる変調制御部と、
を設けたものである。
(19) 本発明の第19の態様は、空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行う立体画像提示装置において、
観察者の右眼に提示する光を変調する右眼用空間光変調素子と、
観察者の左眼に提示する光を変調する左眼用空間光変調素子と、
右眼用空間光変調素子に対して、観察者の理想的な右眼観察位置として設定された右観察点に収束する光路をとる右照明光を照射する右照明光照射部と、
左眼用空間光変調素子に対して、観察者の理想的な左眼観察位置として設定された左観察点に収束する光路をとる左照明光を照射する左照明光照射部と、
右眼用空間光変調素子を制御するための右画像データと左眼用空間光変調素子を制御するための左画像データとを格納する画像データ格納部と、
画像データ格納部に格納されている右画像データを右眼用空間光変調素子に供給して右照明光を右画像データに基づいて変調させ、画像データ格納部に格納されている左画像データを左眼用空間光変調素子に供給して左照明光を左画像データに基づいて変調させる変調制御部と、
を設けたものである。
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係る立体画像提示装置において、
右眼用空間光変調素子の右観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、右眼用空間光変調素子の裏側の面から右照明光を照射し、その透過光が観察者に観察されるようにし、
左眼用空間光変調素子の左観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、左眼用空間光変調素子の裏側の面から左照明光を照射し、その透過光が観察者に観察されるようにしたものである。
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19の態様に係る立体画像提示装置において、
右眼用空間光変調素子の右観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、右眼用空間光変調素子の表側の面から右照明光を照射し、その反射光が観察者に観察されるようにし、
左眼用空間光変調素子の左観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、左眼用空間光変調素子の表側の面から左照明光を照射し、その反射光が観察者に観察されるようにしたものである。
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第19〜第21の態様に係る立体画像提示装置において、
右眼および左眼についての覗き窓が形成された遮蔽板を更に設け、
右眼用空間光変調素子および左眼用空間光変調素子を支持体に固定し、
遮蔽板を、支持体に対して定位置をとるように固定し、
観察者が、右観察点に右眼、左観察点に左眼を置いたときに、覗き窓を通して右眼用空間光変調素子および左眼用空間光変調素子を観察することができる位置に、遮蔽板が固定されているようにしたものである。
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第19〜第21の態様に係る立体画像提示装置において、
観察者の頭部に装着するための装着具を更に設け、
右眼用空間光変調素子および左眼用空間光変調素子を支持体に固定し、
この支持体を、装着具に取り付け、
観察者が、装着具を頭部に装着したときに、右観察点に右眼、左観察点に左眼がくるように、支持体の装着具に対する位置を調整したものである。
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第18〜第23の態様に係る立体画像提示装置において、
画像データ格納部に格納されている画像データが、照明光と同一の光路をとる単一波長の参照光と、提示対象となる原画像からの物体光とに基づく演算で得られた、空間光変調素子の変調面の位置に形成される合成波の情報を示す画像データであるようにしたものである。
(25) 本発明の第25の態様は、上述した第24の態様に係る立体画像提示装置において、
画像データによって示される合成波の情報が、「変調面上の演算点Qについての演算を行う際に、空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、演算点Qに入射する参照光を回折することができない場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない」という条件に基づく演算で得られた情報であるようにしたものである。
(26) 本発明の第26の態様は、上述した第24の態様に係る立体画像提示装置において、
画像データによって示される合成波の情報が、「変調面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとし、空間光変調素子の画素ピッチをpとしたときに、『λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p』なる条件が成り立たない場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない」という条件に基づく演算で得られた情報であるようにしたものである。
(27) 本発明の第27の態様は、上述した第18〜第26の態様に係る立体画像提示装置において、
照明光照射部が、光源と、この光源からの光に基づいて平行光を生成する光学素子と、平行光を観察点に集光する集光素子と、を有するようにしたものである。
(28) 本発明の第28の態様は、上述した第18〜第26の態様に係る立体画像提示装置において、
照明光照射部が、点光源と、この点光源からの球面波を観察点に集光する集光素子と、を有するようにしたものである。
(29) 本発明の第29の態様は、上述した第27または第28の態様に係る立体画像提示装置において、
集光素子として、回折光学素子もしくはフレネルレンズを用いるようにしたものである。
(30) 本発明の第30の態様は、上述した第18〜第29の態様に係る立体画像提示装置において、
空間光変調素子として、液晶ディスプレイ、DMD、もしくはLCoSを用いるようにしたものである。
(31) 本発明の第31の態様は、上述した第18〜第30の態様に係る立体画像提示装置において、
空間光変調素子からの0次光を遮蔽するための0次光遮蔽体と、この0次光遮蔽体を支持する透明支持体と、を更に設け、0次光遮蔽体が観察点に位置するように、透明支持体を配置するようにしたものである。
(32) 本発明の第32の態様は、上述した第31の態様に係る立体画像提示装置において、
透明支持体を、透明な板状部材によって構成し、0次光遮蔽体をこの板状部材の表面の一部分に形成された遮光膜によって構成し、
板状部材を、遮光膜が観察点に位置するように配置したものである。
(33) 本発明の第33の態様は、上述した第32の態様に係る立体画像提示装置において、
遮光膜のサイズが、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満、となるように設定したものである。
(34) 本発明の第34の態様は、上述した第33の態様に係る立体画像提示装置において、
遮光膜を円形とし、その直径を0.2mm〜1mmに設定したものである。
本発明によれば、空間光変調素子を駆動する画像データを作成する際には、観察者の単眼による理想的な観察位置を示す観察点を予め設定し、当該観察点に収束する光路をとる参照光を用いた演算を行い、再生時には、当該観察点に収束する光路をとる再生用照明光を照射することになる。このため、当該観察点の近傍から観察する限り、空間光変調素子に大きな角度での回折機能を要求する必要はなくなる。したがって、比較的画素ピッチの粗い空間光変調素子を用いた場合でも、広い視野角をもった歪みのない再生像を提示することが可能になる。
また、本発明では、画像提示を行う際に、観察点に収束する光路をとる再生用照明光を用いることになるので、空間光変調素子からの0次光は、観察点に集光する光になる。そこで、観察点の位置に遮蔽体を配置しておけば、0次光を効果的に遮蔽することができるようになり、バックグラウンド光を抑制することができ、本来提示すべき再生像のコントラストを向上させることができる。
本発明に係る立体画像提示方法のデータ作成段階の基本原理を示す斜視図である。 本発明に係る立体画像提示方法の画像提示段階の基本原理を示す斜視図である。 従来の一般的なホログラムの再生原理を示す側面図である。 本発明に係るホログラムの再生原理を示す側面図である。 本発明に係る立体画像提示方法の基本手順を示す流れ図である。 本発明に係る立体画像提示方法において、ホログラム作成時に演算対象とする物体光の取捨選択原理を示す側面図である。 本発明に係る立体画像提示方法において、ホログラム作成時に演算対象とする物体光の取捨選択の具体的基準を示す側面図である。 本発明に係る立体画像提示用の画像データ作成装置の基本構成を示すブロック図である。 図8に示す装置による演算に用いられる具体的な演算式を示す図である。 本発明の一実施形態に係る立体画像提示装置の基本構成を示す横断面図およびブロック図である。 本発明の変形例に係る立体画像提示装置を観察者に装着した状態を示す上面図である。 本発明の変形例に係る反射型の立体画像提示装置の原理を示す側面図である。 本発明における観察位置の設定範囲を示す側面図である。 本発明の画像提示段階において、空間光変調素子からの0次光を遮蔽する機能を有する0次光遮蔽体を、観察点に配置した状態を示す側面図である。 0次光を遮蔽するための0次光遮蔽体を、板状部材からなる透明支持体の表面の一部分に形成された円形遮光膜によって構成した例を示す平面図である。 図10に示す立体画像提示装置に0次光遮蔽体を付加した変形例の基本構成を示す横断面図およびブロック図である。 図11に示す立体画像提示装置に0次光遮蔽体を付加した変形例を示す上面図である。 反射型の立体画像提示装置に0次光遮蔽体を付加した変形例を示す側面図である。 0次光遮蔽体を付加していない立体画像提示装置によって提示された画像の一例を示す平面図である。 0次光遮蔽体を付加した立体画像提示装置によって提示された画像の一例を示す平面図である。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.本発明の基本原理 >>>
本発明に係る立体画像提示方法は、デジタルデータを作成するデータ作成段階と、作成したデジタルデータに基づいて観察者に立体画像を提示する画像提示段階と、によって構成される。図1は、前半のデータ作成段階の基本原理を示す斜視図であり、図2は、後半の画像提示段階の基本原理を示す斜視図である。
まず、データ作成段階では、図1に示すように、提示対象となる原画像10の情報をホログラフィの技術を利用して記録面20R,20Lに記録し、これを画像データとして出力する作業が行われる。ここで、記録面20Rは、観察者の右眼ERに提示する情報を記録する右記録面であり、記録面20Lは、観察者の左眼ELに提示する情報を記録する左記録面である。
本発明の重要な特徴は、このようなホログラフィの技術を利用した原画像の記録に用いる参照光として、特定の観察点に収束する単一波長の光を用いる点にある。具体的には、図に一点鎖線で示すように、右記録面20Rへの記録には、右観察点30Rに収束する光路をとる右参照光40Rを用い、左記録面20Lへの記録には、左観察点30Lに収束する光路をとる左参照光40Lを用いる。図では、説明の便宜上、右参照光40Rおよび左参照光40Lを円錐側面に沿った光路をとる光として描いているが、実際には、右記録面20R上の個々の点に対して、右観察点30Rに収束する方向に入射する光が右参照光40Rであり、左記録面20L上の個々の点に対して、左観察点30Lに収束する方向に入射する光が左参照光40Lである。
ここでは、便宜上、図示のようなXYZ三次元座標系を定義して、各構成要素の幾何学的な位置関係を説明することにする。まず、右記録面20Rおよび左記録面20Lが、XY平面上に定義されている平面であるものとする。したがって、各記録面上の任意の点は、XY座標系上で所定の座標値(x,y)をもつ点として表現される。また、図示のとおり、観察者の位置を、当該座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内とし、原画像10の位置を、当該座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内とする。
このような配置において、右記録面20Rには、原画像10からの物体光と右参照光40Rとの干渉縞が記録され、左記録面20Lには、原画像10からの物体光と左参照光40Lとの干渉縞が記録される。こうして各記録面20R,20Lに記録された干渉縞の情報は、それぞれ右画像データ50Rおよび左画像データ50Lとして出力される。
ここで、右観察点30Rは、観察者の右眼による理想的な観察位置を示す点であり、左観察点30Lは、観察者の左眼による理想的な観察位置を示す点である。なお、本願における「理想的な観察位置」とは、「データ作成段階において、観察者の各眼の位置として任意に設定された位置」を意味するものである。別言すれば、データ作成段階では、データ作成者は、右観察点30Rおよび左観察点30Lを任意の位置に設定することができるが、一旦、そのような設定に基づいて、原画像10の情報が記録面20R,20Lに記録され、画像データ50R,50Lが作成されれば、当該画像データ50R,50Lを用いて画像提示段階を行う際には、観察者にとって、右観察点30Rおよび左観察点30Lにそれぞれ右眼ERおよび左眼ELを置いて観察するのが最適な観察条件ということになる。
もちろん、左右の眼の位置は、個々の人間によって異なるが、一般的には、人間の左右の眼の間隔は65mm程度であるとされている。したがって、データ作成段階で、右観察点30Rおよび左観察点30Lを設定する際には、65mm程度の間隔をもった2点として設定すれば十分である。また、記録面20R,20Lに対する各観察点30R,30Lの距離は、画像提示段階で用いる立体画像提示装置の構造などを考慮して、適宜設定すればよい。
このデータ作成段階は、実用上は、コンピュータによる演算処理によって実行される。具体的には、たとえば、右記録面20R上には縦横所定のピッチで多数の演算点QRが定義され、左記録面20L上には縦横所定のピッチで多数の演算点QLが定義される。これら各演算点の位置は、XY平面上の所定の座標値(x,y)で特定される。なお、各演算点のピッチは、画像提示段階で用いる空間光変調素子の画素ピッチに等しく設定しておくのが好ましい。
図1には、右記録面20R上の第j番目の演算点QRjと、左記録面20L上の第j番目の演算点QLjとが例示され、原画像10上の第i番目の物体点Piから、これら各演算点QRj,QLjに向かう物体光15R,15Lが一点鎖線で示されている。原画像10は、CGによって作成された三次元の物体像であり、その表面に多数の物体点が定義されている。図には、第i番目の物体点Piのみが例示されている。物体点の密度は、再生像の解像度に応じて適宜設定すればよい。ここに示す実施例の場合、1つの物体点Piは点光源として機能し、球面波からなる物体光を発生させる(もちろん、物体点Piの位置にY軸方向には光が広がらない線分光源を定義してもかまわない。この場合、再生像にY軸方向の視差は得られないが、データ作成段階の演算量を大幅に減らす効果が得られる。)。
図1には、物体点Piから、2つの演算点QRj,QLjに向かう物体光15R,15Lのみが例示されているが、実際には、記録面20R,20L上のすべての演算点に、物体点Piからの物体光が向かうことになる。また、原画像10上には、多数の物体点が定義されており、記録面20R,20L上の任意の1演算点には、これらすべての物体点からの物体光と、右参照光40Rもしくは左参照光40Lとが向かうことになるので、記録面20R,20Lには、これらの光の干渉縞が形成される。画像データ50R,50Lは、このようにして形成された干渉縞のパターンを示す画像データであり、個々の演算点における干渉縞の強度(原画像10からの各物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度)を示すデータになる。
続いて、画像提示段階では、図2に示すように、観察者の右眼ERに提示する光を変調する右眼用空間光変調素子60Rと、観察者の左眼ELに提示する光を変調する左眼用空間光変調素子60Lとを、それぞれ、図1に示す右記録面20Rおよび左記録面20Lに対応する位置に配置する。ここに示す実施例では、各空間光変調素子60R,60Lとして、光を回折することができる微細ピッチで多数の画素を縦横に配列した液晶ディスプレイを用いており、この液晶ディスプレイの表示面(回折面)がXY平面上にくるように配置している。すなわち、各液晶ディスプレイ60R,60Lの表示面は、各記録面20R,20Lに対応し、個々の画素は、個々の演算点に対応する。なお、液晶ディスプレイ60R,60Lは、実際には厚みをもった装置であるが、図2では説明の便宜上、その表示面のみを図示している。
ここで、上述したデータ作成段階で作成した画像データ50R,50Lを用いて、それぞれ液晶ディスプレイ60R,60Lを駆動すれば、その表示面には、データ作成段階で各記録面20R,20Lに形成されたホログラム干渉縞が表示されることになる。この状態で、右眼用の液晶ディスプレイ60Rに対して、図1に示す右参照光40Rと同一の光路を通る再生用右照明光70Rを照射し、左眼用の液晶ディスプレイ60Lに対して、図1に示す左参照光40Lと同一の光路を通る再生用左照明光70Lを照射すれば、これら左右の照明光70R,70Lは、液晶ディスプレイ60R,60L上に表示されたホログラム干渉縞によって変調され、観察者の両眼ER,ELへ到達する。その結果、観察者には、図示のとおり、原画像10の再生像80が虚像として観察される。
右照明光70Rは右観察点30Rに収束する光であり、左照明光70Lは左観察点30Lに収束する光であるので、観察者が、右観察点30Rおよび左観察点30Lにそれぞれ右眼ERおよび左眼ELを置いて観察すれば、理想的な観察環境での観察が可能になり、広い視野角をもった歪みのない再生像80が観察できる。以下、その理由を説明する。
ここでは、便宜上、観察者がいずれか一方の単眼で観察した場合を例にとって、本発明の利点を説明する。図3は、従来の一般的なホログラムの再生原理を示す側面図である。ホログラム記録媒体には、物体光と参照光との干渉縞が記録されるが、通常、参照光としては、記録面に対して所定の角度をもった平面波が用いられ、再生時には、参照光と同等の照明光が用いられる。図3は、このように平面波からなる参照光を用いて形成された干渉縞の画像データによって、空間光変調素子(たとえば、液晶ディスプレイ)60を駆動し、再生像の提示を行っている状態を示す側面図である。観察点30は、観察に用いる観察者の単眼の位置を示している。
いま、このような再生環境において、観察点30から、図にX印で示す位置に再生像点81,82(再生像上の各点)が観察されたものとしよう。このとき、観察点30と、再生像点81,82を結ぶ直線と液晶ディスプレイ60の表示面との交点を点61,62として、これらの点61,62における再生用照明光91,92の回折現象を考えてみる(これらの点61,62は、表示された干渉縞によって光を回折する機能を有するため、以下、回折点61,62と呼ぶ)。
上述したとおり、図3に示す液晶ディスプレイ60上に表示されている干渉縞は、記録面に対して所定の角度をもった平面波からなる参照光を用いて形成されたものであるので、再生用照明光も同等の平面波からなる光を用いることになる。すなわち、再生用照明光91,92は平行光線として所定角度から液晶ディスプレイ60の表示面に入射する。そうすると、再生用照明光91は回折点61において、図示のとおり、回折角θ1だけ曲げられ、回折した再生用照明光91′として観察点30に到達していることになる。同様に、再生用照明光92は回折点62において、図示のとおり、回折角θ2だけ曲げられ、回折した再生用照明光92′として観察点30に到達していることになる。
別言すれば、観察点30から見て、図示の位置に再生像点81(虚像)が観察されるようにするには、回折点61は、再生用照明光91を角度θ1だけ回折して、回折光91′を生じさせる必要があり、同様に、観察点30から見て、図示の位置に再生像点82(虚像)が観察されるようにするには、回折点62は、再生用照明光92を角度θ2だけ回折して、回折光92′を生じさせる必要がある。この場合、図示のとおり、θ2>θ1であり、回折点62は回折点61よりも、より高い回折機能を有している必要がある。すなわち、図示の例のように、液晶ディスプレイ60の中心を望む位置に観察点30を設定した場合、液晶ディスプレイ60の周囲の縁部近傍(図3の場合、下端)には、より大きな回折角で再生用照明光を回折させる機能が要求される。
ところが、既に述べたとおり、液晶ディスプレイなどの空間光変調素子の空間分解能は、一般的なホログラム記録媒体に比べて極めて低い。現在、本発明に用いる空間光変調素子として、商業的に利用可能なコストで市販されている液晶ディスプレイの場合、画素ピッチはたかだか32μm程度である。画素ピッチpを有する液晶ディスプレイによって回折格子を表示させた場合、最も細かな回折格子でも、その格子間隔dは、d=2pになるので、画素ピッチ32μmの液晶ディスプレイを用いたとしても、表示可能な格子の最小格子間隔は、d=64μmである。一方、回折の式によると、光の波長をλ、格子間隔をd、回折次数をmとすると、回折格子に対する入射角をθin、射出角をθoutとしたときに、「d=mλ/(sinθout−sinθin)の絶対値」が成り立つので、一次回折光のみを考慮してm=1とし、一般的に用いられている赤色レーザ光の波長λ=0.6328μmを用いて、θin=0°の場合の当該液晶ディスプレイによる最大回折角θoutを求めると、θout=0.566°程度にしかならない。
このように、画素ピッチが32μm程度の液晶ディスプレイを用いた場合、図3に示す回折角θ1,θ2のような大きな回折角を得ることは到底できない。したがって、そもそも図3に示すように斜め上方から再生用照明光91,92を与えても、観察点30において再生像を観察することはできない。観察点30において再生像を観察するためには、再生用照明光91,92を、液晶ディスプレイ60の表示面に対してほぼ垂直な方向から入射させる必要がある。そうした場合でも、最大回折角θ=0.566°程度では、再生用照明光を観察点30の位置へ向かわせることができる回折点の分布範囲は、液晶ディスプレイ60の中心近傍に限定されてしまう。これが、空間光変調素子を用いた立体画像提示装置に、一般的なホログラム記録媒体に比べて「観察者から見た視野角が狭い」という問題が生じる原因である。このように「観察可能な視野角が小さい」と、結局「小さな画像しか表示することができない」ことになる。
一方、図4は、本発明に係るホログラムの再生原理を示す側面図である。前述したとおり、本発明の重要な特徴は、参照光として、特定の観察点に収束する光を用いる点にある。したがって、図4に示す液晶ディスプレイ60上に表示されている干渉縞は、観察点30に収束する参照光を用いて形成されたものである。そこで、再生用照明光も同等の収束光を用いることになる。このため、図示の再生用照明光71,72は、観察点30に向かう光路をとる光になっている。
図示の例の場合、回折点61,62で回折した再生用照明光71′,72′は、そのまま観察点30に向かう光路をとる光になっている。これは、回折点61,62における回折角が0°であることを示している。別言すれば、回折点61,62の回折角が0°であっても、再生用照明光71,72は、そのまま観察点30まで到達することになる。
以上、図3および図4を用いた説明では、観察点30という幾何学的な1点に到達する照明光91′,92′,71′,72′のみに着目した議論を行ったが、実際には、再生像点81,82を形成する回折光は、単一の光路をとった1本の光線になるわけではなく、液晶ディスプレイ60の表示面上のある程度の幅をもった範囲から回折される光になる。一方、観察者の眼も、観察点30の1点に位置するわけではなく、その周囲の空間に配置された物理的な光学系を形成する。すなわち、観察者の眼は、観察点30の近傍を通る回折光を集光して、網膜上に再生像を結像する光学系ということができる。よって、図4に示す例の場合、再生像点81,82を形成する回折光は、回折点61,62から射出される図示の回折光71′、72′だけではなく、図示の回折点61,62を中心として、液晶ディスプレイ60の表示面上のある程度の幅をもった範囲から回折される光になる。
前述したように、空間光変調素子60として、画素ピッチが32μm程度の液晶ディスプレイを用いた場合、最大回折角θは、θ=0.566°程度にしかならないが、それでも図4に示す例の場合、回折点61,62において、回折光71′、72′の光路を基準光路(回折角θ=0°の光路)として、上下にそれぞれθ=0.566°の範囲で照明光を回折させることができるので、実用上十分なホログラム再生像の観察が可能である。もちろん、図4における空間光変調素子60の上端や下端に位置する回折点63,64についても、観察点30へ向かう方向に照明光(図示されていない)が照射されるので、θ=0.566°程度の最大回折角が得られれば立体像の再生に十分である点に変わりはない。このため、観察点30から見て、広い視野角をもった再生像が得られる。
結局、図3に示す従来の一般的なホログラムの再生方法に比べて、図4に示す本発明に係るホログラムの再生方法を採れば、比較的画素ピッチの粗い空間光変調素子を用いた場合でも、広い視野角をもった歪みのない再生像を、拡大レンズなしで提示することが可能になる。
<<< §2.本発明に係る立体画像提示方法 >>>
ここでは、上述した基本原理に基づく具体的な立体画像提示方法を説明する。図5は、本発明に係る立体画像提示方法の基本手順を示す流れ図である。図示のとおり、この手順は、前半のデータ作成段階S1〜S6と後半の画像提示段階S7〜S9とによって構成される。前半のデータ作成段階は、図1に示した基本原理に基づいて、原画像10の情報を記録面20R,20L上に記録し、この記録された情報に基づいてデジタル画像データ50R,50Lを作成する段階であり、後半の画像提示段階は、図2に示した基本原理に基づいて、デジタル画像データ50R,50Lを空間光変調素子60R,60Lに与えて駆動し、観察者に立体画像80(原画像10の再生像)を虚像として提示する段階である。
図5に示すとおり、前半のデータ作成段階は、記録面データ入力段階S1、観察点データ入力段階S2、原画像データ入力段階S3、参照光データ入力段階S4、演算記録段階S5、データ出力段階S6によって構成される。実際には、これらの各段階は、コンピュータによって実行される。
ここで、各ステップS1〜S4は、XYZ三次元座標系上に定義された、図1に示す各構成要素の幾何学的形状や位置の情報をコンピュータに入力する処理である。したがって、このコンピュータへの入力処理を行う前に、設計者は、図1に示す各構成要素の幾何学的形状や位置の情報を設定しておく必要がある。
ここでは、図1に示すように、左右の記録面20R,20LをXY平面上に定義し、Z座標値が負の値をとる負側空間内に原画像10を配置し、Z座標値が正の値をとる正側空間内に、左右の観察点30R,30Lを配置している。もちろん、これとは逆に、原画像10を正側空間内に配置し、左右の観察点30R,30Lを負側空間内に配置する構成をとってもよいし、左右の記録面20R,20Lを任意の座標平面上にとってもかまわない。ここでは説明の便宜上、図1のような設定を行うことにするが、三次元座標系上のどの平面上に記録面20R,20Lをとり、そのどちら側に原画像10や観察点30R,30Lを配置するかは、設計者が適宜決めるべき設計実務上の事項である。したがって、本発明を実施する上で、概念的に図1の設定と等価な設定になっていれば、必ずしも図1の設定どおりにする必要はない。
なお、左右の記録面20R,20Lは、画像提示段階における空間光変調素子60R,60Lの変調面(液晶ディスプレイの場合、画像表示面)に対応する幾何学的位置に配置する必要がある。したがって画像提示段階での実際の空間光変調素子60R,60Lの配置を決定すれば、記録面20R,20Lのサイズや位置も決定する。また、左右の観察点30R,30Lの位置も、実際の画像提示段階において、観察者が両眼ER,ELを置くのに適した位置に設定することになる。
§1で述べたとおり、左右の眼の位置は、個々の人間によって異なるが、一般的には、人間の左右の眼の間隔は65mm程度であるとされている。したがって、実際には、空間光変調素子60R,60Lとして用いる液晶ディスプレイ装置の大きさや、当該液晶ディスプレイ装置の表示面を標準的な観察者が観察するのに適した位置、などを考慮して、左右の記録面20R,20Lの位置や左右の観察点30R,30Lの位置を決定すればよい。
こうして、記録面20R,20Lと観察点30R,30Lとの幾何学的配置が決定すれば、左右の参照光40R,40Lは、それぞれ記録面20R,20L上の必要な領域(干渉縞の記録が行われる領域)を通り、観察点30R,30Lに収束し、所定の波長λをもった光として定義することができる。
一方、原画像10は、任意の物体像を示す立体画像データとして用意することができる。具体的には、たとえば、図1に例示するようなピラミッドの形状をした単純な物体の場合、4頂点の座標値のみを示すデータによって表現することも可能である。通常は、幾何学図形を示す関数やベクトルデータ、あるいは、任意形状の立体をポリゴンなどで表現したデータが用いられることが多い。たとえば、ポリゴンデータの場合、原画像10は、各ポリゴンの頂点座標値と、ポリゴン相互の隣接状態を示す情報を含むデータによって示されることになる。そのような原画像10を示すデータは、CGの技術を利用して作成することができる。
このように、設計者が、XYZ三次元座標系に、左右の記録面20R,20L、観察点30R,30L、原画像10、左右の参照光40R,40Lを設定し、これら設定内容を示す情報をデータとして用意することができたら、これらをコンピュータに入力する処理が行われる。段階S1〜S4は、そのようなデータ入力の処理である。
まず、ステップS1の記録面データ入力段階では、コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼ERに提示する情報を記録する右記録面20Rと、観察者の左眼ELに提示する情報を記録する左記録面20Lと、を特定する記録面データを入力する処理が行われる。記録面データは、たとえば、左右の記録面20R,20Lが矩形領域である場合、その4頂点の位置を示す座標値によって構成することができる。
次に、ステップS2の観察点データ入力段階では、コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点30Rと、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点30Lと、を特定する観察点データを入力する処理が行われる。観察点データは、左右の観察点30R,30Lの位置を示す座標値によって構成することができる。
続く、ステップS3の原画像データ入力段階では、コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像10を特定する原画像データを入力する処理が行われる。原画像データは、上述したように、CGの技術を利用して作成された立体画像データによって構成することができる。なお、本発明にいう「立体画像」とは、「三次元空間内に配置された画像」を意味するものであり、原画像を構成する物体自身が必ずしも三次元形状を有している必要はない。たとえば、文字などの二次元情報のみしか有していない画像を原画像として用いた場合でも、当該文字を三次元空間に配置して観察すれば、奥行きを感じさせる立体視が可能になる。したがって、このような場合、文字などの二次元画像データも、本発明における原画像10として利用することが可能である。
そして、ステップS4の参照光データ入力段階では、コンピュータが、負側空間から右記録面20Rを透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、右観察点30Rに収束する光路をとる右参照光40Rと、負側空間から左記録面20Lを透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、左観察点30Lに収束する光路をとる左参照光40Lと、を特定する参照光データを入力する処理が行われる。参照光データは、左右の観察点30R,30Lへ収束する光路を示す幾何学的なデータと、波長λを示す数値とによって構成することができる。
以上、ステップS1〜S4でコンピュータに入力された各データは、コンピュータ内のメモリやハードディスク装置などに格納される。そして、ステップS5の演算記録段階では、左右の記録面20R,20L上に形成される合成波の情報を、入力データに基づいて演算して記録する処理が実行される。すなわち、この演算記録段階では、コンピュータが、原画像10からの物体光と右参照光40Rとによって右記録面20R上に形成される合成波の情報を演算して右記録面20R上に記録し、原画像10からの物体光と左参照光40Lとによって左記録面20L上に形成される合成波の情報を演算して左記録面20L上に記録する処理が行われる。実際には、左右の記録面20R,20L上に縦横所定ピッチで配列された多数の演算点が定義され、これら各演算点の位置における合成波の振幅強度情報がそれぞれ演算されることになる。
最後のステップS6のデータ出力段階では、コンピュータが、右記録面20R上に記録された情報を右画像データ50Rとして出力し、左記録面20L上に記録された情報を左画像データ50Lとして出力する処理が行われる。上述したとおり、ステップS5の演算記録段階では、左右の記録面20R,20L上に配列された多数の演算点について、それぞれ合成波の振幅強度情報が演算される。これらの演算結果は、実際には、コンピュータのメモリ上に格納されることになる。したがって、個々の演算点をそれぞれ画素として捉え、個々の演算結果を各画素がもつ画素値として捉えれば、メモリ上には、それぞれ画像データが得られたことになる。ステップS6のデータ出力段階は、これらメモリ上の画像データを、それぞれ右画像データ50Rおよび左画像データ50Lとして出力する処理(たとえば、液晶表示バッファにコピーする処理)である。
一方、後半の画像提示段階は、図2に示した基本原理に基づいて、デジタル画像データ50R,50Lを空間光変調素子60R,60Lに与えて駆動し、観察者に立体画像80(原画像10の再生像)を虚像として提示する段階であり、図5に示すとおり、素子配置段階S7、照明光照射段階S8、光変調段階S9によって構成される。なお、照明光照射段階S8と光変調段階S9は、同時に実行され、これら両段階の同時実行により、観察者に再生像の提示が行われることになる。
まず、ステップS7の素子配置段階では、図2に示すように、観察者の右眼ERに提示する光を変調する右眼用空間光変調素子60Rと、観察者の左眼ELに提示する光を変調する左眼用空間光変調素子60Lとを、それぞれ図1に示す右記録面20Rおよび左記録面20Lに対応する位置に配置する処理が行われる。既に述べたとおり、ここに示す実施例では、左右の空間光変調素子60R,60Lとして、それぞれ画素ピッチ32μmの解像度をもった液晶ディスプレイを用いている。
続く、ステップS8の照明光照射段階では、右眼用空間光変調素子60Rに対して、右参照光40Rと同一の光路を通る右照明光70Rを照射し、左眼用空間光変調素子60Lに対して、左参照光40Lと同一の光路を通る左照明光70Lを照射する処理が行われる。ここで、各照明光70R,70Lは、理想的には、各参照光40R,40Lと同一波長λを有する単色のコヒーレント光(たとえば、レーザ光)を用いるのが好ましい。ただ、実用上は、必ずしも同一波長λを有する単色のコヒーレント光である必要はなく、たとえば、白色LEDなどの光源を用いた光を照明光として利用しても、再生像80を観察することは可能である。もちろん、鮮明な再生像80を得るためには、参照光と同一波長λを有する単色のコヒーレント光を照明光70R,70Lとして用いるのが好ましい。
上記ステップS8の照明光照射段階と同時に、ステップS9の光変調段階が実行される。この光変調段階は、前半のデータ作成段階で作成された右画像データ50Rを右眼用空間光変調素子60Rに与え、右記録面20R上に記録された情報に基づいて右照明光70Rが変調されるようにし、前半のデータ作成段階で作成された左画像データ50Rを左眼用空間光変調素子60Lに与え、左記録面20L上に記録された情報に基づいて左照明光70Lが変調されるようにする段階である。
具体的には、このステップS8,S9を同時に実行すれば、左右の空間光変調素子60R,60Lとして機能する液晶ディスプレイ画面上に、図1に示す左右の記録面20R,20L上に形成されたホログラム干渉縞が表示された状態で、この液晶ディスプレイ画面に、図1に示す参照光40R,40Lと同じ角度で照明光70R,70Lが照射されることになる。照明光70R,70Lは、このホログラム干渉縞によって変調(回折)され、観察者の両眼ER,ELへ向かうことになる。したがって、ホログラフィの基本原理により、観察者からは、液晶ディスプレイ画面の奥に、原画像10と等価な再生像80が虚像として観察されることになる。
なお、観察者の理想的な観察位置は、左右両眼EL,ERを、それぞれ左右の観察点20L,20Rに置く位置(厳密に言えば、瞳に位置する有機体レンズの中心点が観察点20L,20Rにくる位置)である。もっとも、実際には、このような理想的な位置から多少外れても、再生像80の観察は可能である。用いる空間光変調素子の解像度が高くなればなるほど(液晶ディスプレイの場合、画素ピッチが細かくなればなるほど)、再生像80が観察可能な領域は広くなる。
<<< §3.演算対象となる物体光の取捨選択 >>>
以上、§2では、本発明に係る立体画像提示方法の具体的な手順を説明した。この手順によれば、画素ピッチ32μm程度の液晶ディスプレイを用いれば、十分に広い視野角をもった歪みのない再生像を、拡大レンズなしで提示することが可能になる。
しかしながら、画素ピッチ32μm程度の液晶ディスプレイに表示されたホログラム干渉縞は、感光性材料を用いて作成された一般的なホログラム記録媒体上のホログラム干渉縞に比べれば解像度が低いため、実際には存在しない空間周波数の干渉縞が含まれてしまうことになる。このように、実際には存在しない空間周波数の干渉縞が液晶ディスプレイ上に表示されると、再生像にいわゆる「折り返し像」が重なって提示されるという現象が生じることが知られている。
本願発明者が行った実験でも、画素ピッチ32μmの液晶ディスプレイを用いて、§2の手順で実際に立体画像の提示を行ったところ、本来の原画像10に対応する再生像80に加えて、その周囲に多数の「折り返し像」が重畳して観察されるという現象が確認できた。もちろん、このような「折り返し像」を意図的に発生させ、意匠的な効果を狙うことも可能であるが、一般的には、「折り返し像」が重畳して観察されると、本来の原画像10の形状把握が困難になり、再生像80は見にくくなる。
そこで、本願発明者は、観察時に「折り返し像」が生じることを抑制し、見やすい再生像を提示することが可能な効果的な方法を見出した。それは、図5に示すステップS5の演算記録段階における演算を行う際に、演算対象となる物体光を取捨選択することにより実現できる。以下、その方法の基本原理と、具体的な実行手順を説明する。
図6は、本発明に係る立体画像提示方法において、ホログラム作成時に演算対象とする物体光の取捨選択原理を示す側面図である。いま、XY平面上に、空間光変調素子として機能する液晶ディスプレイ60を配置し、その画面上にホログラム干渉縞を表示させた状態で、図示のとおり、所定の観察点30に収束する光路をとる再生用照明光(参照光と同一の光路をとる光)を照射した場合を考える。この場合、観察者の理想的な観察位置は、観察点30であるが、ここでは、図示のように、観察者が任意の観察位置35に眼Eを置いて観察を行ったものとしよう。
このような観察態様において、観察者の眼Eによって、物体点Pが再生像(虚像)として観察されるとしたら、再生用照明光Lは、液晶ディスプレイ60上の点Qにおいて、図示のように回折し、回折した再生用照明光L′として観察者の眼Eに入射する必要がある。すなわち、観察位置35から観察したときに、図示の位置に物体点Pが観察できるようにするには、液晶ディスプレイ60上の点Qの位置に、再生用照明光LをL′の方向に回折させる機能をもった干渉縞が形成されている必要がある。
§1で述べたとおり、空間光変調素子60として、画素ピッチが32μm程度の液晶ディスプレイを用いた場合、ディスプレイ画面上に表示される干渉縞による最大回折角θは、θ=0.566°程度にしかならない。したがって、図6に示す例の場合、点Qの位置に表示される干渉縞は、再生用照明光LをL′の方向に回折させる能力をもたない(多次の回折光まで考慮すれば、回折可能であるが、ここでは、観察に十分な光量が得られる1次回折光のみを考慮する)。そうすると、点Qの位置に、物体点Pの情報を干渉縞として記録しても、再生時には、当該干渉縞は、物体点Pの再生には役立たないことになる。
本願発明者は、このように、「空間光変調素子60が実際には照明光を回折することができない方向」への回折を前提とした物体光の記録は、単に役立たないだけでなく、無用な「折り返し像」の発生要因になるものと考えている。実際、本願発明者が、記録面上の特定の演算点Qについては、「再生時に照明光を回折することができない方向への回折を前提とした物体光」を記録対象から除外する実験を行ったところ、「折り返し像」の発生を抑制した良好な再生像を得ることに成功した。
結局、「折り返し像」の発生を抑制した良好な再生像を得るためには、ステップS5の演算記録段階で、記録面20上の演算点Qについての演算を行う際に、再生時に用いる空間光変調素子が、原画像10上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向(図6に示す回折した再生用照明光L′の方向)に、演算点Qに入射する参照光(図6に示す照明光Lと同じ方向から入射する参照光)を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにすればよい。
より詳細に説明すれば、回折可否判定処理は、次のような方法で行うことができる。ここでは、画像提示段階で用いる空間光変調素子として、ピッチpで配列された多数の画素の集合体からなり、画素単位で光学的特性を制御することが可能な素子(たとえば、液晶ディスプレイ)を用いる場合を考えることにする。この場合、図7に示すように、記録面20上に定義された演算点Qについての干渉縞強度を演算する際に、原画像10上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向(物体光Loの方向)に、演算点Qに入射する参照光Lr(観察点30へ向かう収束光)を回折することができるか否かを判定すればよい。
そこで、まず、図示のとおり、「記録面20の演算点Qの位置に立てた法線Nに対する物体光Loの射出方向の角度θo」を物体光Loの入射角と定義し、「記録面20の演算点Qの位置に立てた法線Nに対する参照光Lrの射出方向の角度θr」を参照光Lrの入射角と定義する(角度は符号を考慮する)。すると、画素ピッチpをもつ空間光変調素子によって生成可能な回折格子の最小格子間隔dは、d=2pになるので、1次回折光のみを考慮することにすれば、回折の式により、演算点Qにおいて、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立てば、参照光Lrを物体光Loの方向へ回折させることが可能ということになる。
したがって、実際には、ステップS5の演算記録段階において、記録面20上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像10上の物体点Pから演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立つか否かの回折可否判定処理を行い、上記条件が成り立たない場合には、回折不可との判定結果が得られたものとして、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにすればよい。
たとえば、図1に示す例の場合、右記録面20R上の第j番目の演算点QRjについて合成波の情報を演算する場合、§2で述べた基本的な方法によれば、原画像10上に定義された全物体点から発せられて演算点QRjに到達する物体光(もちろん、演算点QRjから見て、原画像10の隠面となる領域に所属する物体点からの物体光は、演算点QRjには到達しない)と、参照光40Rとの合成波が考慮されることになる。これに対して、この§3で述べる方法では、演算点QRjに到達する物体光についての取捨選択が行われることになり、上記条件が成り立つ場合にのみ、当該物体光を考慮した演算が実行されることになる。したがって、図1に示す例の場合、演算点QRjについての演算では、たとえば、「図示の第i番目の物体点Piからの物体光15Rは考慮するが、ピラミッドの頂点からの物体光は考慮しない」というような取捨選択が行われることになる。
特定の演算点Qについて、どの物体点からの物体光を考慮するかは、個々の物体光の入射角θoと参照光の入射角θrとを用いた上記演算を個別に行うことにより決定することが可能である。ただ、演算負担を軽減するためには、個々の演算点Qについて、上記条件を満足する物体光の入射角θoの範囲を予め算出しておき、当該範囲に入る物体点の三次元領域を求めておくようにするのが好ましい。そうすれば、特定の演算点Qについての演算を行う際には、当該演算点Qについて予め求めておいた三次元領域に含まれる物体点のみを考慮した演算を行えばよいので、演算負担は大幅に軽減される。
<<< §4.本発明に係る画像データ作成装置 >>>
ここでは、図5の流れ図に示す手順の前半に相当するデータ作成段階を実行するために用いる画像データ作成装置の構成を説明する。図8は、この画像データ作成装置100の基本構成を示すブロック図である。
図示のとおり、この画像データ作成装置100は、記録面データ格納部110、観察点データ格納部120、参照光データ格納部130、原画像データ入力部140、合成波情報演算部150、左演算結果保持部160、右演算結果保持部170、データ出力部180によって構成されており、与えられた原画像データDoに基づいて、左画像データDLおよび右画像データDRを作成して出力する機能を有している。出力された左画像データDLおよび右画像データDRは、§5で述べる立体画像提示装置200の左眼用空間光変調素子230Lおよび右眼用空間光変調素子230Rを駆動して、観察者に立体画像の提示を行うために利用される。
記録面データ格納部110は、図5のステップS1における記録面データ入力段階で入力された記録面データを格納する機能を果たす。すなわち、この記録面データ格納部110には、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼ERに提示する情報を記録する右記録面20Rと、観察者の左眼ELに提示する情報を記録する左記録面20Lと、を特定する記録面データが格納される。たとえば、左右の記録面20R,20Lが矩形領域である場合、その4頂点の位置を示す座標値が格納されることになる。
観察点データ格納部120は、図5のステップS2における観察点データ入力段階で入力された観察点データを格納する機能を果たす。すなわち、この観察点データ格納部120には、XYZ三次元座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点30Rと、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点30Lと、を特定する観察点データ(たとえば、観察点30R,30Lの位置を示す座標値)が格納される。
参照光データ格納部130は、図5のステップS4における参照光データ入力段階で入力された参照光データを格納する機能を果たす。すなわち、この参照光データ格納部130には、負側空間から右記録面20Rを透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、右観察点30Rに収束する光路をとる右参照光40Rと、負側空間から左記録面20Lを透過して正側空間へと向かう単一波長の光であって、左観察点30Lに収束する光路をとる左参照光40Lと、を特定する参照光データが格納される。この参照光データは、左右の観察点30R,30Lへ収束する光路を示す幾何学的なデータと、波長λを示す数値とによって構成することができる。
なお、図1に示すように、参照光40R,40Lの光路は、記録面20R,20Lと観察点30R,30Lとが決定すれば、一義的に決定することができる。したがって、実際には、参照光データ格納部130に格納すべき参照光データは、波長λを示すデータを除いて、記録面データ格納部110に格納されている記録面20R,20Lを特定するデータと、観察点データ格納部120に格納されている観察点30R,30Lを特定するデータとに基づいて、自動的に生成することができる。参照光の波長λは、理論的には、再生時に用いる照明光の波長と同一にするのが好ましいが、前述したとおり、実際には、白色LEDを照明光として用いて再生を行っても、ある程度の品質の再生像を得ることができる。したがって、実用上は、任意の所定波長を参照光の波長λとして格納しておけば十分である(たとえば、ここに述べる実施例の場合、一般的な赤色レーザ光の波長として、λ=0.6328μmを格納している)。
原画像データ入力部140は、図5のステップS3における原画像データ入力段階を実行する機能を果たす。すなわち、この原画像データ入力部140は、XYZ三次元座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像10を特定する原画像データDoを入力し、これを格納する機能を果たす。前述したとおり、原画像データDoは、CGの技術を利用して作成された立体画像データによって構成することができる。
合成波情報演算部150は、図5のステップS5における演算記録段階を実行する機能を果たす。すなわち、この合成波情報演算部150は、原画像データ入力部140によって入力された原画像データと、記録面データ格納部110に格納されている記録面データと、参照光データ格納部130に格納されている参照光データと、に基づいて、原画像10からの物体光と右参照光40Rとによって右記録面20R上の所定の演算点Qの位置に形成される合成波の情報を演算するとともに、原画像10からの物体光と左参照光40Lとによって左記録面20L上の所定の演算点Qの位置に形成される合成波の情報を演算する。
左演算結果保持部160および右演算結果保持部170は、こうして得られた演算結果を保持する機能を果たす。すなわち、左演算結果保持部160は、左記録面20L上の各演算点Qについての演算結果を保持し、右演算結果保持部170は、右記録面20R上の各演算点Qについての演算結果を保持する。ここに示す実施例では、各記録面20R,20L上に、所定ピッチp(再生時に用いる空間光変調素子の画素ピッチ)で縦横に多数の演算点Qを設定している。左右の演算結果保持部160,170は、このような二次元配列された多数の演算点Qについての演算結果を保持する。
データ出力部180は、左演算結果保持部160に保持されている演算結果を左画像データDLとして出力し、右演算結果保持部170に保持されている演算結果を右画像データDRとして出力する機能を果たす。これらの画像データは、二次元配列された多数の演算点Qについての演算結果を画素値としてもつ画像データになる。
続いて、合成波情報演算部150によって実行される具体的な演算例を述べておく。図9は、合成波情報演算部150による演算に用いられる具体的な演算式を示す図である。一般に、光などの波動は、余弦波と正弦波との和として数式で記述され、余弦波の成分を実数、正弦波の成分を虚数で表現した複素振幅という形式で表される。
たとえば、第i番目の物体点Piからの物体光の任意の演算点Qにおける複素振幅αiは、図9上段に示すとおり、
αi=Ai/Ri・exp (−j・2π/λ・Ri+j・φi) 式(1)
で示される。ここで、Aiおよびφiは、物体点Piから発せられた物体光の初期の振幅および位相、Riは、物体点Piと演算点Qとの距離である。これらの値は、いずれも、原画像データDoに基づいて決定されるパラメータである。また、λは物体光の波長、jは虚数単位である。一方、参照光の演算点Qにおける複素振幅αrは、図9下段に示すとおり、
αr=Ar・exp (j・2π/λ・Rr+j・φr) 式(2)
で示される。ここで、Arは、参照光の振幅(式(2)では、参照光の振幅は減衰しないものとしているため、振幅Arはどの位置でも同じである)、φrは、参照光の観察点30の位置における位相、Rrは、観察点30と演算点Qとの距離、λは参照光の波長、jは虚数単位である。ここで、物体光の波長λと参照光の波長λとは等しくなるように設定する。
合成波情報演算部150による演算で求める情報は、演算点Qの位置において、演算対象となる各物体光と参照光との合成波の情報である。より具体的には、ホログラム干渉縞として合成波の情報を記録するのであれば、演算対象となる全物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度の値を求めればよい。たとえば、演算対象となる物体光の数がn個あったとすれば、演算点Qにおける合成波の振幅強度を示す演算値Iは、
I=(αr+Σi=1~n αi)
で与えられる。ここで、αrは上述した式(2)で求まる参照光の演算点Qにおける複素振幅であり、αiは上述した式(1)で求まる第i番目の物体点Piからの物体光の演算点Qにおける複素振幅αiであり、「Σi=1~n 」は、当該複素振幅αiの第1番目〜第n番目までの総和を示す。
個々の演算点Qについて求められた演算値I(振幅強度情報)は、左右の演算結果保持部160,170に保持され、データ出力部180によって、これらの振幅強度情報によって構成される干渉縞パターンが左右の画像データDL,DRとして出力される。
なお、§3で述べたとおり、実用上は、観察時に「折り返し像」が生じることを抑制し、見やすい再生像を提示するために、演算対象となる物体光の取捨選択を行うのが好ましい。この場合、合成波情報演算部150は、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、演算点Qに入射する参照光を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算(当該物体点Pからの物体光を演算対象から除外する演算)を行うようにすればよい。
具体的には、図7を用いて説明したとおり、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとし、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子の画素ピッチをpとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立たない場合には、回折不可とする回折可否判定処理を実行し、回折不可との判定結果が得られた場合には、当該演算点Qについては、当該物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うようにすればよい。
以上、図8のブロック図を参照しながら、本発明に係る画像データ作成装置100の基本構成を説明したが、実際には、この画像データ作成装置100は、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって実現される装置である。したがって、各データ格納部110,120,130は、コンピュータ用の記憶装置によって構成し、原画像データ入力部140やデータ出力部180は、当該コンピュータの入出力機能によって実現し、左右の演算結果保持部160,170は、当該コンピュータが作業領域として利用するメモリによって構成し、合成波情報演算部150は、当該コンピュータのCPUやメモリ、および当該CPUが実行するプログラムによって構成することができる。
<<< §5.本発明に係る立体画像提示装置 >>>
ここでは、図5の流れ図に示す手順の後半に相当する画像提示段階を実行するために用いる立体画像提示装置の構成を説明する。図10は、この立体画像提示装置200の基本構成を示す横断面図およびブロック図である。
この立体画像提示装置200は、図2に示す基本原理に基づき、空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行う装置であり、図示のとおり、装置筐体210、左照明光照射部220L、右照明光照射部220R、左眼用空間光変調素子230L、右眼用空間光変調素子230R、遮蔽板240、変調制御部250、画像データ格納部260によって構成されている。
装置筐体210は、左照明光照射部220L、右照明光照射部220R、左眼用空間光変調素子230L、右眼用空間光変調素子230Rを組み込むための外囲器であり、これらの各構成要素を所定位置に支持する支持体として機能する。ここに示す実施例では、この装置筐体210の一方の開口面には、遮蔽板240が嵌め込まれている。この遮蔽板240には、図示のとおり、左眼用覗き窓241Lおよび右眼用覗き窓241Rが設けられている。これら両覗き窓241L,241Rの間隔は、一般的な観察者の両眼距離(約65mm)に設定されており、観察者は、図示のとおり、左眼ELおよび右眼ERを、両覗き窓241L,241Rの手前に配置し、装置筐体210内を覗き込むことができる。
左眼用空間光変調素子230Lは、観察者の左眼ELに提示する光を変調する機能を果たす構成要素であり、図2に示す素子60Lに対応するものである。同様に、右眼用空間光変調素子230Rは、観察者の右眼ERに提示する光を変調する機能を果たす構成要素であり、図2に示す素子60Rに対応するものである。ここに示す実施例の場合も、これら空間光変調素子230L,230Rとして、液晶ディスプレイ装置が用いられている。
左照明光照射部220Lは、左眼用空間光変調素子230Lに対して、観察者の理想的な左眼観察位置として設定された左観察点245Lに収束する光路をとる再生用左照明光を照射する機能を果たす。ここに示す実施例の場合、左照明光照射部220Lは、レーザ221L、集光レンズ222L、ピンホール板223L、コリメートレンズ224L、集光レンズ225Lによって構成されている。レーザ221Lで生成された単一波長λ(この例では、λ=0.6328μm)の再生用照明光は、集光レンズ222Lによって、ピンホール板223Lの中央に形成されたピンホール位置に一旦集光される。そして、このピンホール位置から放射状に広がった照明光は、コリメートレンズ224Lによって平行光に成形される。この平行光は、更に、集光レンズ225Lによって、左観察点245Lに収束するように集光される。
一方、右照明光照射部220Rは、右眼用空間光変調素子230Rに対して、観察者の理想的な右眼観察位置として設定された右観察点245Rに収束する光路をとる再生用右照明光を照射する機能を果たす。この右照明光照射部220Rも、レーザ221R、集光レンズ222R、ピンホール板223R、コリメートレンズ224R、集光レンズ225Rによって構成されており、その基本機能は、上述した左照明光照射部220Lの機能と全く同じである。
かくして、左眼用空間光変調素子230Lには、左照明光照射部220Lによって、単一波長λをもち、左観察点245Lに収束する光路をとる再生用左照明光が照射され、右眼用空間光変調素子230Rには、右照明光照射部220Rによって、単一波長λをもち、右観察点245Rに収束する光路をとる再生用右照明光が照射される。装置筐体210は、左右の照明光が上述したような光路をとるように、また、これら照明光と各空間光変調素子との位置関係が図2で説明した関係を満たすように、各構成要素を所定位置に固定する支持体として機能する。
一方、画像データ格納部260は、左眼用空間光変調素子230Lを制御するための左画像データDLと右眼用空間光変調素子230Rを制御するための右画像データDLとを格納する構成要素である。また、変調制御部250は、この画像データ格納部260に格納されている左画像データDLを左眼用空間光変調素子230Lに供給して再生用左照明光を当該左画像データDLに基づいて変調させ、この画像データ格納部260に格納されている右画像データDRを右眼用空間光変調素子230Rに供給して再生用右照明光を当該右画像データDRに基づいて変調させる処理を実行する。
実際には、この変調制御部250および画像データ格納部260は、コンピュータによって構成される。各空間光変調素子230L,230Rとして、液晶ディスプレイ装置を用いた場合、変調制御部250は、左画像データDLおよび右画像データDRに基づいて、ホログラム干渉縞の画像を、液晶ディスプレイ装置に表示させる処理を行うことになる。このような画像表示処理は、一般的なコンピュータにおける画像表示処理と基本的には同じである。
結局、図10に示す立体画像提示装置200の基本構成は、図2に示す基本構成と等価になる。ここで、左眼用空間光変調素子230Lおよび右眼用空間光変調素子230Rは、支持体として機能する装置筐体210に固定されており、また、左眼および右眼についての覗き窓241L,241Rが形成された遮蔽板240は、この装置筐体210に対して定位置をとるように固定されている。しかも、観察者が、左観察点245Lに左眼EL、右観察点245Rに右眼を置いたときに(厳密に言えば、瞳に位置する有機体レンズの中心点が各観察点にくる位置に置いたときに)、左右の覗き窓241L,241Rを通して、左眼用空間光変調素子230Lおよび右眼用空間光変調素子230Rを観察することができる位置に、遮蔽板240が固定されている。別言すれば、観察者が左右の覗き窓241L,241Rを通して、装置筐体210の内部を覗き込もうとした場合に、自然に、観察者の左右両眼EL,ERが、左右の観察点245L,245Rの位置にくるように、遮蔽板240の位置が調節されていることになる。
したがって、変調制御部250によって、左右の空間光変調素子230L,230Rにホログラム干渉縞を表示させ、左右の照明光照射部220L,220Rによって照明光を照射させた状態で、観察者が、左眼ELおよび右眼ERを、両覗き窓241L,241Rの手前に配置して内部を覗き込むと、図2で述べた基本原理に基づいて、空間光変調素子230L,230Rの奥に再生像が観察されることになる。
ここで、画像データ格納部260に格納されている左右の画像データDL,DRは、§4で述べた画像データ作成装置100によって作成された画像データであり、再生用照明光と同一の光路をとる単一波長の参照光と、提示対象となる原画像からの物体光とによって、空間光変調素子の変調面の位置に形成される合成波の情報を示す画像データである。したがって、§1で説明したとおり、空間光変調素子230L,230Rとして、比較的画素ピッチの粗い空間光変調素子を用いた場合でも、広い視野角をもった歪みのない再生像を、拡大レンズなしで提示することが可能になる。実際、空間光変調素子として、画素ピッチが32μm程度の液晶ディスプレイを用いた場合でも、広い視野角をもった再生像が得られている。
もちろん、§3で述べたように、演算対象となる物体光を取捨選択する方法で作成された画像データDL,DRを画像データ格納部260に格納して用いれば、「折り返し像」の発生を抑制した、見やすい再生像を提示することができる。
ところで、この図10に示す実施例で用いられている遮蔽板240は、次の2つの機能を果たしている。第1の機能は、観察者の両眼を、理想的な観察位置である左右の観察点245L,245Rへガイドする機能である。既に述べたとおり、本発明では、左右の観察点245L,245Rに両眼EL,ERを配置して観察するのが最も好ましい。覗き窓241L,241Rが形成された遮蔽板240を用いれば、観察者の両眼を、この観察点245L,245Rの位置へ自然にガイドすることができる。
遮蔽板240の第2の機能は、空間光変調素子230L,230Rで生じる高次回折光が、観察者の眼に入ることを阻止する機能である。回折格子を経て曲げられる回折光には、1次回折光、2次回折光、3次回折光、...というように、様々な回折光が存在し、それぞれ向かう方向が異なっている。ただ、次数が高くなるに従って光量は減少するため、1次回折光を観察するのが最も効率的である。したがって、本発明でも、1次回折光を観察することが前提となっており、2次以上の高次回折光が観察者の眼に入ると、再生像に対してノイズ成分として観察されることになり好ましくない。遮蔽板240に設けられた覗き窓241L,241Rは、光学的アパーチャとして機能し、無用な高次回折光が観察者の眼に入るのを阻止する働きをする。
以上、本発明に係る立体画像提示装置200の構成を、図10に示す具体的な実施例に基づいて説明したが、もちろん、本発明を実施するにあたり、立体画像提示装置の細かな構成は、必ずしもこの実施例と同一である必要はない。
たとえば、図10に示す実施例では、左右一対のレーザ221L,221Rを設けているが、光源として1台のレーザ装置のみを用意し、ビームスプリッタなどの光学系を用いて、このレーザ装置から発生させた単一のビームを2つのビームに分岐させて利用するようにしてもかまわない。また、上述したとおり、本発明を実施するにあたり、再生用照明光としては、レーザ光のようにコヒーレントな単色光を用いるのが好ましいが、実用上は、白色LEDなどを光源として用いても、再生像の観察が可能であり、光源は必ずしもレーザ光源に限定されるものではない。
また、左右の照明光照射部220L,220Rの光学的構成も、様々なバリエーションが考えられる。図10に示す実施例は、照明光照射部220L,220Rを、光源と、この光源からの光に基づいて平行光を生成する光学素子と、当該平行光を観察点に集光する集光素子と、によって構成した一例を示すものであり、具体的な光学系の組み合わせには、この他にも様々なバリエーションが存在する。また、必ずしも「一旦平行光を生成した後に、これを観察点に集光する」という構成を採る必要もない。たとえば、照明光照射部を、点光源と、この点光源からの球面波を観察点に集光する集光素子と、によって構成すれば、平行光を生成する必要はない。
なお、図10に示す実施例では、再生用照明光を観察点に集光する集光素子として、集光レンズ225L,225Rを用いている。これら集光レンズ225L,225Rとしては、フレネルレンズを用いることができる。もちろん、再生用照明光を観察点に集光させる機能をもつ集光素子は、レンズに限定されるものではなく、この他にも様々な光学素子を用いることが可能である。たとえば、集光素子として、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)を用いると、レンズに比べて非常に厚みが小さい素子であるため、装置全体を小型化できるメリットが得られる。
<<< §6.本発明の変形例 >>>
最後に、本発明のいくつかの変形例を掲げておく。
< 6−1.ヘッドマウント型の装置 >
図10に示す立体画像提示装置100を小型化できれば、いわゆるヘッドマウント型のディスプレイ装置を実現することが可能である。図11は、図10に示す立体画像提示装置100の変形例に係る装置を観察者に装着した状態を示す上面図である。この変形例は、ヘッドマウント型のディスプレイ装置として機能するものであり、観察者の頭部Hに装着して利用することができる。すなわち、この装置は、観察者の顔面に装着する支持体270と、この支持体270に取り付けられた装着具280とを有している。装着具280は、観察者の頭部Hに装着するための構成要素であり、図示の例では、ゴム製品のベルトによって構成されている。
支持体270の内部には、図に破線で示すように、左照明光照射部220L,右照明光照射部220R,左眼用空間光変調素子230L,右眼用空間光変調素子230Rが固定されている。そして、図示のように、観察者が、装着具280を頭部Hに装着したときに、左観察点に左眼EL、右観察点に右眼ERがそれぞれくるように、支持体270の装着具280に対する位置が調整されている。
この図11に示すような接眼型の装置では、観察点と空間光変調素子との距離を短く設定することができるので、空間光変調素子の変調面(液晶ディスプレイの表示面)の面積が比較的小さくても、広い視野角をもった再生像を提示することが可能である。したがって、図10に示す装置に比べて、空間光変調素子230L,230Rを小型化することができ、それに合わせて光照射部220L,220Rも小型化することができるので、装置全体はかなりコンパクトに設計できる。また、頭部Hに装着すると、左右両眼EL,ERが、自然に左右の観察点にくるような位置調節が行われているため、覗き窓を有する遮蔽板を設けなくても、理想的な観察位置からの観察が可能になる。
< 6−2.反射型の立体画像提示装置 >
これまで述べた実施例は、いずれも照明光を透過させるタイプの空間光変調素子を用いた透過型の立体画像提示装置であった。たとえば、図2に示す例の場合、右眼用空間光変調素子60Rの右観察点30Rに向かい合った面を表側の面としたときに、右眼用空間光変調素子60Rの裏側の面から右照明光70Rを照射し、その透過光が観察者に観察されるようにしている。同様に、左眼用空間光変調素子60Lの左観察点30Lに向かい合った面を表側の面としたときに、左眼用空間光変調素子60Lの裏側の面から左照明光70Lを照射し、その透過光が観察者に観察されるようにしている。
これに対して、照明光を反射させるタイプの空間光変調素子を用い、右眼用空間光変調素子60Rの表側の面から右照明光70Rを照射し、その反射光が観察者に観察されるようにし、左眼用空間光変調素子60Lの表側の面から左照明光70Lを照射し、その反射光が観察者に観察されるようにすれば、反射型の立体画像提示装置を構成することができる。この場合、右眼用空間光変調素子60Rに対しては、変調面(記録面)に関して、右参照光と鏡像関係となる光路を通る右照明光を照射し、左眼用空間光変調素子60Lに対して、左参照光と鏡像関係となる光路を通る左照明光を照射すればよい。
図12は、このような反射型の立体画像提示装置の原理を示す側面図である。空間光変調素子60が透過型のものである場合は、これまで述べたように、観察点30に収束するような再生用照明光71,72(データ作成時に用いた参照光と同じ光路をとる光)を、図の左から右へ向かって入射させ、観察点30において、空間光変調素子60を透過した照明光が観察されるようにしていた。これに対して、空間光変調素子60が反射型のものである場合は、空間光変調素子60の変調面(記録面)に関して、再生用照明光71,72(データ作成時に用いた参照光)と鏡像関係になる光路を通る再生用照明光76,77を、図の右から左へ向かって入射させ、観察点30において、空間光変調素子60を反射した回折照明光76′,77′が観察されるようにすればよい。
空間光変調素子60が反射型のものである場合、再生用照明光76,77は、結局、観察点30に収束する光路をとる光になるので、結局、これまで述べてきた透過型の空間光変調素子60と同様の再生像が観察できる。なお、図12に示す例において、観察点30に観察者の眼を置くと、図の右から左へ向かって入射させる再生用照明光の一部が観察者の影になって空間光変調素子60まで到達しない可能性があるので、実用上は、回折照明光76′,77′の光路上にハーフミラーなどを配置し、観察点30の光学的な位置を移動させるなどの工夫を施すのが好ましい。また、ハーフミラーなどを配置することで、ホログラム再生像と外界のシーンを重ねて観察できる、いわゆる光学シースルー状態とすることもできる。
< 6−3.単眼提示用の装置 >
これまで述べてきた実施例は、いずれも観察者が左右両眼を用いて再生像を観察することを前提としたものであったが、本発明は、ホログラフィの技術を利用して立体画像の提示を行うものであるため、観察者が片目で観察する場合にも、ある程度の立体感をもった再生像の提示が可能である。したがって、これまで述べてきた実施例における右眼用の構成要素もしくは左眼用の構成要素のみを用いて本発明を実施することも可能である。たとえば、§2で述べた立体画像提示方法を実施する際には、観察者が左右いずれかの単眼で観察することを前提として、右眼用もしくは左眼用のいずれか一方のデータ作成を行い、いずれか一方の画像提示を行うようにすればよい。
このように、単眼による観察を前提とした場合、本発明に係る立体画像提示装置は、観察者のいずれか一方の単眼に提示する光を変調する空間光変調素子と、当該空間光変調素子に対して、観察者の単眼による理想的な観察位置として設定された観察点に収束する光路をとる照明光を照射する照明光照射部と、空間光変調素子を制御するための画像データを格納する画像データ格納部と、この画像データ格納部に格納されている画像データを空間光変調素子に供給して照明光を画像データに基づいて変調させる変調制御部と、を設けておけばよい。
ただ、これまで述べてきた実施例のように、観察者が左右両眼を用いて再生像を観察できるようにしておけば、両眼視差による立体視効果も得られるため、実用上は、両眼観察を行うことを前提として本発明を実施するのが好ましい。
< 6−4.観察位置の設定範囲 >
これまで述べた実施形態では、データ作成段階において、図1に示すように、所定の観察点30R,30Lを設定して画像データ50R,50Lを作成しておき、画像提示段階で、観察者が、図2に示すように、この観察点30R,30Lに両眼を置いて観察を行えば、理想的な再生像が得られる、という説明を行った。そのため、図10や図11に示す立体画像提示装置では、観察者の両眼EL,ERを、観察点30R,30Lの位置にガイドするための工夫が施されている。
ただ、理想的な再生像が得られる観察位置は、必ずしも観察点30R,30Lという幾何学的な1点に限られるわけではなく、実際には、観察点30R,30Lの近傍における、ある程度の範囲をもった空間内に両眼EL,ERを置いても、理想的な再生像を観察することが可能である。これを図13の側面図を用いて説明しよう。
図13は、透過型の空間光変調素子60に対して、観察点30に収束する再生用照明光を図の左方から照射した状態を示している。ここで、空間光変調素子60には、その全面にホログラム干渉縞が記録されているものとする。すなわち、この側面図において、空間光変調素子60の上端の演算点Qaから下端の演算点Qbに至るまで、すべての領域に干渉縞が形成されることになる。この場合、上端の演算点Qaには、図示のとおり、観察点30へ収束する再生用照明光Laが照射され、下端の演算点Qbにも、図示のとおり、観察点30へ収束する再生用照明光Lbが照射される。
既に述べたとおり、空間光変調素子60には、その回折能力に限界がある。たとえば、画素ピッチが32μm程度の液晶ディスプレイの場合、ディスプレイ画面上に表示される干渉縞による最大回折角θmaxは、λ=0.6328μmとして、θmax=0.566°程度である。そこで、空間光変調素子60の最大回折角をθmaxとすれば、図示のとおり、再生用照明光Laは演算点Qaにおいて、角度2・θmaxの範囲で回折され、回折した再生用照明光の光路は、図の光路La(+)とLa(−)の間に挟まれた範囲内(約1.132°の範囲内)をとることになる。同様に、再生用照明光Lbは演算点Qbにおいて、角度2・θmaxの範囲で回折され、回折した再生用照明光の光路は、図の光路Lb(+)とLb(−)の間に挟まれた範囲内をとることになる。
この場合、図にハッチングを施して示す範囲Sが、理想的な再生像を観察することが可能な範囲になると考えられる。この範囲S内の任意の位置は、上端の演算点Qaで回折した照明光と下端の演算点Qbで回折した照明光との双方が到達可能な位置であるため、空間光変調素子60上の任意の演算点で回折した照明光が、すべて到達可能な位置ということになる。そうすると、理想的な再生像が得られる観察位置は、必ずしも観察点30の1点のみに限定されるわけではなく、観察点30の近傍領域、すなわち、図13にハッチングを施して示す範囲S内の任意の点を観察位置とした場合にも、理想的な再生像が得られることになる。
したがって、図10や図11に示す立体画像提示装置において、観察時に観察者の両眼EL,ERをガイドする位置(観察位置の設定範囲)は、必ずしも正確な観察点30R,30Lの位置である必要はなく、図13にハッチングを施して示す範囲Sに相当する領域内であれば十分ということになる。
< 6−5.原画像情報を記録する方式のバリエーション >
これまで述べた実施形態では、記録面上に形成される合成波の情報を、ホログラム干渉縞として記録する例を述べたが、原画像の情報は、必ずしもホログラム干渉縞として記録する必要はない。ホログラフィの技術を利用して立体画像の提示を行うには、物体光の波面の情報を何らかの方法で媒体上に記録し、再生用照明光を照射したときに、物体光の波面を忠実に再現できればよい。これまで述べてきた実施形態は、波面の情報を干渉縞として記録する方式であり、原画像からの物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度に関する情報を記録する方式である。
これに対して、原画像からの物体光によって記録面上に形成される合成波の位相(参照光に基づいて補正した位相)に関する情報を記録する方式(キノフォーム方式)や、振幅と位相の双方を記録する方式(複素振幅方式)も知られている。本発明を実施する上で、原画像情報を記録する方式は、上記各方式のいずれでもかまわない。
すなわち、これまで述べてきた「干渉縞記録方式」では、合成波情報演算部150が、演算対象となる全物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度情報を演算し、演算結果保持部160,170が、この振幅強度情報を演算結果として保持し、データ出力部180が、この振幅強度情報によって構成される干渉縞パターンを画像データとして出力することになる。
この場合、図9に示すように、第i番目の物体点Piからの物体光の任意の演算点Qにおける複素振幅αiを、
αi=Ai/Ri・exp (−j・2π/λ・Ri+j・φi) 式(1)
として、参照光の演算点Qにおける複素振幅αrを、
αr=Ar・exp (j・2π/λ・Rr+j・φr) 式(2)
とすれば、演算点Qにおける参照光とn個の物体光との合成波の振幅強度を示す演算値Iは、
I=(αr+Σi=1~n αi)
で与えられることは、既に述べたとおりである。
これに対して、「キノフォーム方式」では、合成波情報演算部150が、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、演算結果保持部160,170が、この位相情報を演算結果として保持し、データ出力部180が、この位相情報によって構成される位相分布パターンを画像データとして出力することになる。この場合、演算点Qにおける参照光とn個の物体光との合成波の位相を示す演算値は、Σi=1~n αiで与えられるn個の物体光の複素振幅の総和について求められた位相と、参照光の複素振幅の位相と、の差で与えられる。
また、「複素振幅方式」では、合成波情報演算部150が、演算対象となる全物体光によって記録面上に形成される合成波の振幅情報を演算し、更に、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、演算結果保持部160,170が、この振幅情報および位相情報を演算結果として保持し、データ出力部180が、この振幅情報および位相情報によって構成される複素振幅分布パターンを画像データとして出力することになる。この場合、振幅情報は、Σi=1~n αiで与えられるn個の物体光の複素振幅の総和について求められた振幅(複素振幅の実数部の2乗と虚数部の2乗との和の平方根)であり、位相情報は、上記「キノフォーム方式」と同様の方法で求められた位相である。
なお、「キノフォーム方式」を採る場合、空間光変調素子として「位相変調」を行うことが可能な素子を用いる必要がある(一般的な液晶ディスプレイは、液晶分子の配向制御により、位相変調を行う機能を有している)。また、「複素振幅方式」を採る場合は、「振幅変調」と「位相変調」との双方を行う必要があるため、「振幅変調用の空間光変調素子」と「位相変調用の空間光変調素子」とを重ねて用いる、などの工夫が必要になる。
< 6−6.動画の提示 >
感光性材料を用いた一般的なホログラム記録媒体に対して、液晶ディスプレイなどの空間光変調素子の利点は、与える画像データに応じて、表示させる変調画像を自由に変化させることができる点である。したがって、本発明は、静止した立体画像を提示するだけでなく、動画からなる立体画像を提示するのにも適している。
具体的には、図5に示すステップS3の原画像データ入力段階で、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力し、ステップS5の演算記録段階で、個々の原画像について記録面上への記録を行い、ステップS6のデータ出力段階で、個々の原画像についての画像データを出力し、ステップS9の光変調段階で、個々の原画像についての画像データを順番に空間光変調素子に与え、動画の再生が行われるようにすればよい。
また、図8に示す画像データ作成装置によって、動画提示用の画像データを作成できるようにするには、原画像データ入力部140に、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力する機能をもたせ、合成波情報演算部150に、個々の原画像について合成波の情報を演算する機能をもたせ、左右の演算結果保持部160,170に、個々の原画像についての演算結果をそれぞれ保持する機能をもたせ、データ出力部180に、個々の原画像についての画像データを順番に並べた動画データを出力する機能をもたせればよい。
更に、図10に示す立体画像提示装置200に、動画提示機能をもたせるには、画像データ格納部260に、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを格納しておき、変調制御部250が、これを一定の周期で順番に選択して、空間光変調素子230L,230Rに対する変調制御を行うようにすればよい。
< 6−7.インタラクティブに変化する立体画像の提示 >
上述した動画提示の他、本発明はインタラクティブに変化する立体画像を提示する用途にも利用可能である。たとえば、パソコンや電子ゲーム機などのプログラムでは、三次元CGデータに基づいてディスプレイ画面上に三次元物体(たとえば、ゲームのキャラクタ)を表示し、ユーザのキー操作やマウス操作による指示に基づいて、当該物体の位置、向き、姿勢、形状などを変化させて表示する手法が普及している。本発明は、このようなインタラクティブに変化する画像提示にも利用可能である。
具体的には、予めゲームキャラクタなどの三次元物体の三次元CGデータを読み込んでおき、ユーザのキー操作やマウス操作による指示に基づき、当該三次元CGデータから表示対象となる原画像データDoを生成し、この原画像データDoに基づいて、これまで述べてきた本発明に係る方法を利用して、左右の液晶ディスプレイに与える左画像データDLおよび右画像データDRをリアルタイムで作成し、立体画像提示を行えばよい。ユーザから指示が与えられるたびに、三次元物体の位置、向き、姿勢、形状などを変化させた立体画像提示をリアルタイムで行うようにすれば、インタラクティブに変化する立体画像の提示が可能になる。
< 6−8.空間光変調素子のバリエーション >
これまで述べた実施形態では、空間光変調素子として液晶ディスプレイを用いた例を述べたが、本発明に用いる空間光変調素子は、与えられた画像データに基づいて、照射された再生用照明光の振幅や位相を変調する機能をもった素子であれば足り、液晶ディスプレイに限定されるものではない。たとえば、DMD(Digital Micromirror Device)やLCoS(Liquid Crystal on Silicon)などを、空間光変調素子として用いてもかまわない。
< 6−9.実写撮影に基づく画像データの作成 >
図5に示す実施形態では、データ作成段階をコンピュータを用いたCGH(Computer Generated Hologram)の手法で作成する例を述べたが、画像データの作成は、実在の物体像を実写撮影することによって用意することも可能である。たとえば、実在の物体像と実在の参照光に基づいて、所定の記録面上にホログラム干渉縞を生成させ、このホログラム干渉縞を撮像素子によってデジタルデータに変換するようにすれば、CGHの手法の代わりに、実在の物体像の実写撮影により、画像データの作成が可能になる。
< 6−10.空間光変調素子からの0次光の遮蔽 >
既に述べたとおり、空間光変調素子からは、1次回折光だけでなく、2次回折光、3次回折光、...というように、様々な回折光が得られる。ただ、次数が高くなるに従って光量は減少し、また、図10に示す装置のように、光学的アパーチャとして機能する覗き窓241L,241Rが形成された遮蔽板240を設けることにより、無用な高次回折光が観察者の眼に入るのを阻止することができる。しかしながら、空間光変調素子からは0次光、すなわち、変調を受けずにそのまま直進する再生用照明光の成分が得られ、その光量の割合は比較的大きい。
たとえば、図13に示す例の場合、再生用照明光Laは空間光変調素子60の上端の演算点Qaにおいて回折されるが、0次光はそのまま直進して観察点30へ向かうことになる。同様に、再生用照明光Lbは空間光変調素子60の下端の演算点Qbにおいて回折されるが、0次光はそのまま直進して観察点30へ向かうことになる。このような0次光は、観察時にバックグラウンド光となり、本来提示すべき再生像の観察を妨げる要因になる。したがって、できるだけ観察者の眼まで届かないように遮蔽するのが好ましい。
一般的なホログラムでは、再生用照明光として平行光線が用いられるため、0次光も平行光線となり、観察時にこの0次光のみを遮蔽することは困難である。ところが、本発明では、観察点に収束する光路をとる再生用照明光を用いて像の再生を行うことが前提であるため、観察点に何らかの遮蔽体を配置することにより、0次光を効果的に遮蔽することが可能である。
図14は、本発明の画像提示段階において、空間光変調素子60(液晶ディスプレイ)を透過した0次光を遮蔽する機能を有する遮蔽体310を、観察点30に配置した状態を示す側面図である。実際には、0次光遮蔽体310を、観察点30に配置するために、この0次光遮蔽体310を支持する透明支持体300を用意することになる。図14に示す例では、板状の透明支持体300の左側面の中央部に0次光遮蔽体310が支持されている(図では、観察点30の位置を示す黒丸と、0次光遮蔽体310とが重なって示されている)。なお、ここで、透明支持体300における「透明」とは、必ずしも100%に近い透光性を意味するものではなく、たとえば、光透過率50%のものでもかまわない。ただ、明るい再生像を得る上では、できるだけ光透過率の高いものを用いるのが好ましい。
上述したとおり、本発明の場合、再生用照明光は観察点30に収束する光路をとるので、0次光は、この観察点30に集光する。したがって、図示のように、観察点30の位置に0次光遮蔽体310を配置しておけば、0次光は観察点30の位置で遮蔽され、そこから右方向への進行は阻止される。よって、図にハッチングを施して示す範囲S内の観察点30より右側で観察を行うようにすれば、観察者の眼に届く0次光をカットすることができる。要するに、本発明に係る立体画像提示方法における画像提示段階で、空間光変調素子60からの0次光を遮蔽する機能を有する0次光遮蔽体310を、観察点30に配置する遮蔽体配置段階を更に行うようにすればよい。
図15は、0次光を遮蔽するための0次光遮蔽体を、板状部材からなる透明支持体300の表面の一部分に形成された円形遮光膜310によって構成した例を示す平面図である。具体的には、たとえば、ガラス板からなる透明支持体300の片面の中央部に、印刷、蒸着、接着などの方法で円形遮光膜310(たとえば、アルミニウム膜)を形成すればよい。この実施例では、円形遮光膜310として遮光フィルム(たとえば、株式会社きもと製カーボンフェザー)を用いている。もちろん、透明支持体300としては、必要に応じて、特定の波長の光についてのみ透過する色ガラスなどを用いてもかまわない。このような透明支持体300を、空間光変調素子60の変調面(データ作成段階での記録面)の手前に、円形遮光膜310が観察点30に位置するように配置すれば、画像提示段階において、0次光を遮蔽することができる。
図14は、図15に示す透明支持体300を、円形遮光膜310の形成面が左側に向くように配置した例である。円形遮光膜310は、円盤状の0次光遮蔽体として機能し、この例の場合、空間光変調素子60の変調面(データ作成段階での記録面)に平行となるように配置されている(必ずしも平行となるように配置する必要はない)。
ここで、円形遮光膜310の径は、理論的には、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満、となるように設定すればよい。たとえば、光源として円状の微小な光源(四角でもよい)を用いた場合、当該点光源の直径以上の直径をもつ円形遮光膜310を形成しておけば、0次光を有効にカットすることができる。あるいは、図10に示す例のように、ピンホールを通過してくる光を光源として用いた場合、当該ピンホールの直径以上の直径をもつ円形遮光膜310を形成しておけば、0次光を有効にカットすることができる。円形遮光膜310の直径がこれより小さいと、円形遮光膜310の周囲から0次光が漏れることになる。
一方、円形遮光膜310の直径の理論上の最大値は、人間の瞳孔の最大径である。人間の瞳孔は、眼球に入射する光量に応じた自動絞り調節機能を有しており、その直径は、2mm〜8mm程度とされている。円形遮光膜310の直径が、観察者の瞳孔の直径よりも大きくなると、1次回折光も含めたすべての光が遮蔽されることとなり、再生像が見えなくなってしまう。実用上は、後述するように、0.2mm〜1mm程度の直径をもった円形遮光膜310を形成しておけば、再生像の観察に悪影響を及ぼすことなく、0次光を効果的にカットすることができる。
図16は、図10に示す立体画像提示装置に0次光遮蔽体310を付加した変形例の基本構成を示す横断面図およびブロック図である。図示のとおり、左眼用覗き窓241Lの手前には、左側透明支持体(透明な板状部材)300Lが取り付けられ、右眼用覗き窓241Rの手前には、右側透明支持体(透明な板状部材)300Rが取り付けられている。また、左側透明支持体300Lの手前側の面には、円形遮光膜(0次光遮蔽体)310Lが形成されており、右側透明支持体300Rの手前側の面には、円形遮光膜(0次光遮蔽体)310Rが形成されている。
しかも、左眼観察点は円形遮光膜310L上に設定されており、右眼観察点は円形遮光膜310R上に設定されており、これら円形遮光膜310L,310Rによって、空間光変調素子(液晶ディスプレイ)230L,230Rからの0次光は効果的に遮蔽される。観察者の両目EL,ERの位置は、各観察点よりも若干手前になるが、図14にハッチングを施した領域S内であれば、再生像の観察に支障は生じない。
この例では、ピンホール板223L,223Rには、直径25μmのピンホールが形成されており、光源のサイズは25μmということになる。したがって、この例の場合、理論的には、円形遮光膜310L,310Rの直径を、25μm以上とすれば、0次光の効果的な遮蔽を行うことができる。しかしながら、実際には光学系の収差の影響があるため、若干、大きめの円形遮光膜を形成するのが好ましい。もちろん、形成するピンホールが大きければ大きいほど、円形遮光膜の径も大きくする必要がある。
一般的には、ピンホールの径は、せいぜい100μm程度であるので、円形遮光膜の直径を0.2mm以上にしておけば、0次光の十分な遮光が可能である。一方、人間の瞳孔の直径は、2mm〜8mm程度とされているので、円形遮光膜の直径が1mm以下であれば、再生像の観察に悪影響が及ぶことはない。したがって、円形遮光膜の直径を0.2mm〜1mmに設定すれば、良好な結果が得られる。
実際、図16に示す装置において、直径1mmの円形遮光膜310L,310Rを用いて観察を行ったところ、0次光による再生像の劣化を十分に抑制しつつ、明るい再生像を観察することができた。このとき、観察者には、円形遮光膜の存在は一切認識されず、円形遮光膜の存在により再生像の観察に悪影響が及ぶことはなかった。これは、観察者の視野には円形遮光膜310L,310Rが入っているものの、焦点が合っていないため、障害物として認識されることはないためである。なお、遮光膜の形状は円形に限定されるものではなく、任意の形状でかまわない。任意形状の場合も、そのサイズは、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満に設定するのが好ましい。
図17は、図11に示す立体画像提示装置に0次光遮蔽体310を付加した変形例を示す上面図である。図示のとおり、左眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)230Lの手前には、左側透明支持体(透明な板状部材)300Lが取り付けられ、右眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)230Rの手前には、右側透明支持体(透明な板状部材)300Rが取り付けられている。また、左側透明支持体300Lの手前側には、円形遮光膜(0次光遮蔽体)310Lが埋め込まれており、右側透明支持体300Rの手前側には、円形遮光膜(0次光遮蔽体)310Rが埋め込まれている。
しかも、左眼観察点は円形遮光膜310L上に設定されており、右眼観察点は円形遮光膜310R上に設定されており、これら円形遮光膜310L,310Rによって、空間光変調素子(液晶ディスプレイ)230L,230Rからの0次光は効果的に遮蔽される。この例の場合も、観察者の両目EL,ERの位置は、各観察点よりも若干手前になるが、図14にハッチングを施した領域S内であれば、再生像の観察に支障は生じない。
図18は、反射型の立体画像提示装置に0次光遮蔽体を付加した変形例を示す側面図である。既に述べたとおり、空間光変調素子60が反射型のものである場合は、空間光変調素子60の変調面(記録面)に関して、再生用照明光71,72(データ作成時に用いた参照光)と鏡像関係になる光路を通る再生用照明光76,77を、図の右から左へ向かって入射させ、観察点30において、空間光変調素子60を反射した回折照明光76′,77′が観察されるようにする。この場合の0次光は、空間光変調素子60の変調面で何ら変調を受けずに、単に、光学的な反射の法則によって反射してきた光ということになるので、やはり観察点30に集光する光になる。したがって、観察点30の位置に0次光遮光体310がくるように、透明支持体300を配置すれば、これまで述べた透過型のものと同様に、0次光を有効にカットすることができる。
最後に、観察点の位置に0次光遮光体を配置して0次光をカットした場合の具体的効果を示す実例を挙げておく。図19は、図10に示す0次光遮蔽体を付加していない立体画像提示装置によって提示された画像(左右のうちの一方)の一例を示す平面図である。これに対して、図20は、図16に示す0次光遮蔽体を付加した立体画像提示装置によって提示された画像(左右のうちの一方)の一例を示す平面図である。いずれも、「ABC」という文字からなる同一の原画像に基づいて作成された同一の原画像データを用いて画像提示を行った結果であるが、図19に示す例の場合、「ABC」という文字の背景部分に0次光に起因したノイズが生じているのに対し、図20に示す例の場合は、背景部分のノイズが抑制され、再生像のコントラストが向上していることがわかる。これは、0次光遮光体によって0次光が効果的に抑制されたためである。
10:原画像(物体像)
15L,15R:物体光
20:記録面
20L:左記録面
20R:右記録面
30:観察点
30L:左観察点
30R:右観察点
35:観察位置
40L:左参照光
40R:右参照光
50L:左画像データ
50R:右画像データ
60:空間光変調素子(液晶ディスプレイ)
61〜64:回折点
60L:左眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)
60R:右眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)
70L:再生用左照明光
70R:再生用右照明光
71,72:再生用照明光
71′,72′:回折した再生用照明光
76,77:再生用照明光
76′,77′:反射回折した再生用照明光
80:再生像
81,82:再生像点
91,92:再生用照明光
91′,92′:回折した再生用照明光
100:画像データ作成装置
110:記録面データ格納部
120:観察点データ格納部
130:参照光データ格納部
140:原画像データ入力部
150:合成波情報演算部
160:左演算結果保持部
170:右演算結果保持部
180:データ出力部
200:立体画像提示装置
210:装置筐体(支持体)
220L:左照明光照射部
220R:右照明光照射部
221L,221R:レーザ
222L,222R:集光レンズ
223L,223R:ピンホール板
224L,224R:コリメートレンズ
225L,225R:集光レンズ
230L:左眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)
230R:右眼用空間光変調素子(液晶ディスプレイ)
240:遮蔽板
241L:左眼用覗き窓
241R:右眼用覗き窓
245L:左眼観察位置
245R:右眼観察位置
250:変調制御部
260:画像データ格納部
270:支持体
280:装着具
300:透明支持体(透明な板状部材)
300L:左側透明支持体(透明な板状部材)
300R:右側透明支持体(透明な板状部材)
310:0次光遮蔽体(円形遮光膜)
310L:左側0次光遮蔽体(円形遮光膜)
310R:右側0次光遮蔽体(円形遮光膜)
Ai:第i番目の物体光の複素振幅
Ar:参照光の複素振幅
DL:左画像データ
DR:右画像データ
E:観察者の眼
EL:観察者の左眼
ER:観察者の右眼
H:観察者の頭部
j:虚数単位
L:再生用照明光
L′:回折した再生用照明光
La,Lb:再生用照明光
La(+),La(−),Lb(+),Lb(−):回折した再生用照明光の光路
Lo:物体光
Lr:参照光
Pi:原画像上の第i番目の物体点
P:原画像上の物体点
Q:記録面上の演算点
Qa:記録面の上端の演算点
Qb:記録面の下端の演算点
QLj:左記録面上の第j番目の演算点
QRj:右記録面上の第j番目の演算点
Ri:第i番目の物体点と演算点との距離
Rr:演算点と観察点との距離
S:観察位置の設定範囲
S1〜S9:流れ図の各段階(ステップ)
X,Y,Z:三次元座標系の各座標軸
αi:第i番目の物体光の複素振幅
αr:参照光の複素振幅
λ:光の波長
θ1,θ2:回折角
θo:物体光の入射角
θr:参照光の入射角
θmax:最大回折範囲
φi:第i番目の物体光の位相
φr:参照光の位相

Claims (34)

  1. デジタルデータを作成するデータ作成段階と、作成したデジタルデータに基づいて観察者に立体画像を提示する画像提示段階と、を有する立体画像提示方法であって、
    前記データ作成段階は、
    コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置され、観察者のいずれか一方の単眼に提示する情報を記録する記録面、を特定する記録面データを入力する記録面データ入力段階と、
    コンピュータが、前記座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の前記単眼による理想的な観察位置を示す観察点、を特定する観察点データを入力する観察点データ入力段階と、
    コンピュータが、前記座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力段階と、
    コンピュータが、前記負側空間から前記記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記観察点に収束する光路をとる参照光、を特定する参照光データを入力する参照光データ入力段階と、
    コンピュータが、前記原画像からの物体光と前記参照光とによって前記記録面上に形成される前記原画像の情報を演算して前記記録面上に記録する演算記録段階と、
    コンピュータが、前記記録面上に記録された情報を画像データとして出力するデータ出力段階と、
    を有し、
    前記画像提示段階は、
    観察者の前記単眼に提示する光を変調する空間光変調素子を、前記記録面に対応する位置に配置する素子配置段階と、
    前記空間光変調素子に対して、前記参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る照明光を照射する照明光照射段階と、
    前記画像データを前記空間光変調素子に与え、前記記録面上に記録された情報に基づいて前記照明光が変調されるようにする光変調段階と、
    を有し、前記照明光照射段階と前記光変調段階とを同時に行うことを特徴とする立体画像提示方法。
  2. デジタルデータを作成するデータ作成段階と、作成したデジタルデータに基づいて観察者に立体画像を提示する画像提示段階と、を有する立体画像提示方法であって、
    前記データ作成段階は、
    コンピュータが、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼に提示する情報を記録する右記録面と、観察者の左眼に提示する情報を記録する左記録面と、を特定する記録面データを入力する記録面データ入力段階と、
    コンピュータが、前記座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点と、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点と、を特定する観察点データを入力する観察点データ入力段階と、
    コンピュータが、前記座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力段階と、
    コンピュータが、前記負側空間から前記右記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記右観察点に収束する光路をとる右参照光と、前記負側空間から前記左記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記左観察点に収束する光路をとる左参照光と、を特定する参照光データを入力する参照光データ入力段階と、
    コンピュータが、前記原画像からの物体光と前記右参照光とによって前記右記録面上に形成される前記原画像の情報を演算して前記右記録面上に記録し、前記原画像からの物体光と前記左参照光とによって前記左記録面上に形成される前記原画像の情報を演算して前記左記録面上に記録する演算記録段階と、
    コンピュータが、前記右記録面上に記録された情報を右画像データとして出力し、前記左記録面上に記録された情報を左画像データとして出力するデータ出力段階と、
    を有し、
    前記画像提示段階は、
    観察者の右眼に提示する光を変調する右眼用空間光変調素子と、観察者の左眼に提示する光を変調する左眼用空間光変調素子とを、それぞれ前記右記録面および前記左記録面に対応する位置に配置する素子配置段階と、
    前記右眼用空間光変調素子に対して、前記右参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る右照明光を照射し、前記左眼用空間光変調素子に対して、前記左参照光と同一もしくは鏡像関係となる光路を通る左照明光を照射する照明光照射段階と、
    前記右画像データを前記右眼用空間光変調素子に与え、前記右記録面上に記録された情報に基づいて前記右照明光が変調されるようにし、前記左画像データを前記左眼用空間光変調素子に与え、前記左記録面上に記録された情報に基づいて前記左照明光が変調されるようにする光変調段階と、
    を有し、前記照明光照射段階と前記光変調段階とを同時に行うことを特徴とする立体画像提示方法。
  3. 請求項1または2に記載の立体画像提示方法において、
    演算記録段階で、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、前記演算点Qに入射する参照光を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うことを特徴とする立体画像提示方法。
  4. 請求項3に記載の立体画像提示方法において、
    空間光変調素子として、ピッチpで配列された多数の画素の集合体からなり、画素単位で光学的特性を制御することが可能な素子を用い、
    回折可否判定処理において、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、前記演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立たない場合には、回折不可との判定結果が得られたものとして、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うことを特徴とする立体画像提示方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の立体画像提示方法において、
    演算記録段階で、原画像からの物体光と参照光とに基づいて、記録面上に形成される合成波の振幅に関する情報もしくは位相に関する情報またはその双方を記録面上に記録することを特徴とする立体画像提示方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の立体画像提示方法において、
    原画像データ入力段階で、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力し、
    演算記録段階で、個々の原画像について記録面上への記録を行い、
    データ出力段階で、個々の原画像についての画像データを出力し、
    光変調段階で、個々の原画像についての画像データを順番に空間光変調素子に与え、動画の再生が行われるようにすることを特徴とする立体画像提示方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の立体画像提示方法において、
    画像提示段階が、空間光変調素子からの0次光を遮蔽する機能を有する0次光遮蔽体を、観察点に配置する遮蔽体配置段階を更に有することを特徴とする立体画像提示方法。
  8. 請求項7に記載の立体画像提示方法において、
    遮蔽体配置段階で、円盤状の遮光膜からなる0次光遮蔽体を配置し、
    前記遮光膜の径を、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満、となるように設定することを特徴とする立体画像提示方法。
  9. 空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行うために、当該空間光変調素子に与える画像データを作成する装置であって、
    XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者のいずれか一方の単眼に提示する情報を記録する記録面、を特定する記録面データを格納する記録面データ格納部と、
    前記座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の前記単眼による理想的な観察位置を示す観察点、を特定する観察点データを格納する観察点データ格納部と、
    前記座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力部と、
    前記負側空間から前記右記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記観察点に収束する光路をとる参照光、を特定する参照光データを格納する参照光データ格納部と、
    前記原画像からの物体光と前記参照光とに基づいて、前記記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算する合成波情報演算部と、
    前記記録面上の各演算点についての演算結果を保持する演算結果保持部と、
    前記演算結果保持部に保持されている演算結果を画像データとして出力するデータ出力部と、
    を備えることを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  10. 空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行うために、当該空間光変調素子に与える画像データを作成する装置であって、
    XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配置された記録面であって、観察者の右眼に提示する情報を記録する右記録面と、観察者の左眼に提示する情報を記録する左記録面と、を特定する記録面データを格納する記録面データ格納部と、
    前記座標系におけるZ座標値が正の値をとる正側空間内に配置された点であって、観察者の理想的な右眼観察位置を示す右観察点と、観察者の理想的な左眼観察位置を示す左観察点と、を特定する観察点データを格納する観察点データ格納部と、
    前記座標系におけるZ座標値が負の値をとる負側空間内に配置された原画像を特定する原画像データを入力する原画像データ入力部と、
    前記負側空間から前記右記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記右観察点に収束する光路をとる右参照光と、前記負側空間から前記左記録面を透過して前記正側空間へと向かう単一波長の光であって、前記左観察点に収束する光路をとる左参照光と、を特定する参照光データを格納する参照光データ格納部と、
    前記原画像からの物体光と前記右参照光とに基づいて、前記右記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算し、前記原画像からの物体光と前記左参照光とに基づいて、前記左記録面上の所定の演算点の位置に形成される合成波の情報を演算する合成波情報演算部と、
    前記右記録面上の各演算点についての演算結果を保持する右演算結果保持部および前記左記録面上の各演算点についての演算結果を保持する左演算結果保持部と、
    前記右演算結果保持部に保持されている演算結果を右画像データとして出力し、前記左演算結果保持部に保持されている演算結果を左画像データとして出力するデータ出力部と、
    を備えることを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  11. 請求項9または10に記載の画像データ作成装置において、
    合成波情報演算部が、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、前記演算点Qに入射する参照光を回折することができるか否かを判定する回折可否判定処理を行い、回折不可との判定結果が得られる場合には、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うことを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  12. 請求項11に記載の画像データ作成装置において、
    回折可否判定処理において、記録面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、前記演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとし、立体画像の提示に用いる予定の空間光変調素子の画素ピッチをpとしたときに、「λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p」なる条件が成り立たない場合には、回折不可との判定結果が得られたものとして、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない演算を行うことを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  13. 請求項9〜12のいずれかに記載の画像データ作成装置において、
    合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光と参照光とによって記録面上に形成される合成波の振幅強度情報を演算し、
    演算結果保持部が、前記振幅強度情報を演算結果として保持し、
    データ出力部が、前記振幅強度情報によって構成される干渉縞パターンを画像データとして出力することを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  14. 請求項9〜12のいずれかに記載の画像データ作成装置において、
    合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、
    演算結果保持部が、前記位相情報を演算結果として保持し、
    データ出力部が、前記位相情報によって構成される位相分布パターンを画像データとして出力することを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  15. 請求項9〜12のいずれかに記載の画像データ作成装置において、
    合成波情報演算部が、演算対象となる全物体光によって記録面上に形成される合成波の振幅情報を演算し、更に、演算対象となる全物体光の合成波の位相と、参照光の位相と、の差を示す位相情報を演算し、
    演算結果保持部が、前記振幅情報および前記位相情報を演算結果として保持し、
    データ出力部が、前記振幅情報および前記位相情報によって構成される複素振幅分布パターンを画像データとして出力することを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  16. 請求項9〜15のいずれかに記載の画像データ作成装置において、
    原画像データ入力部が、時系列に並べられた複数の原画像を示す動画データを、原画像データとして入力し、
    合成波情報演算部が、個々の原画像について合成波の情報を演算し、
    演算結果保持部が、個々の原画像についての演算結果をそれぞれ保持し、
    データ出力部が、個々の原画像についての画像データを順番に並べた動画データを出力することを特徴とする立体画像提示用の画像データ作成装置。
  17. 請求項9〜16のいずれかに記載の画像データ作成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  18. 空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行う立体画像提示装置であって、
    観察者のいずれか一方の単眼に提示する光を変調する空間光変調素子と、
    前記空間光変調素子に対して、観察者の前記単眼による理想的な観察位置として設定された観察点に収束する光路をとる照明光を照射する照明光照射部と、
    前記空間光変調素子を制御するための画像データを格納する画像データ格納部と、
    前記画像データ格納部に格納されている前記画像データを前記空間光変調素子に供給して前記照明光を前記画像データに基づいて変調させる変調制御部と、
    を備えることを特徴とする立体画像提示装置。
  19. 空間光変調素子を用いて立体画像の提示を行う立体画像提示装置であって、
    観察者の右眼に提示する光を変調する右眼用空間光変調素子と、
    観察者の左眼に提示する光を変調する左眼用空間光変調素子と、
    前記右眼用空間光変調素子に対して、観察者の理想的な右眼観察位置として設定された右観察点に収束する光路をとる右照明光を照射する右照明光照射部と、
    前記左眼用空間光変調素子に対して、観察者の理想的な左眼観察位置として設定された左観察点に収束する光路をとる左照明光を照射する左照明光照射部と、
    前記右眼用空間光変調素子を制御するための右画像データと前記左眼用空間光変調素子を制御するための左画像データとを格納する画像データ格納部と、
    前記画像データ格納部に格納されている前記右画像データを前記右眼用空間光変調素子に供給して前記右照明光を前記右画像データに基づいて変調させ、前記画像データ格納部に格納されている前記左画像データを前記左眼用空間光変調素子に供給して前記左照明光を前記左画像データに基づいて変調させる変調制御部と、
    を備えることを特徴とする立体画像提示装置。
  20. 請求項19に記載の立体画像提示装置において、
    右眼用空間光変調素子の右観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、右眼用空間光変調素子の裏側の面から右照明光を照射し、その透過光が観察者に観察されるようにし、
    左眼用空間光変調素子の左観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、左眼用空間光変調素子の裏側の面から左照明光を照射し、その透過光が観察者に観察されるようにしたことを特徴とする立体画像提示装置。
  21. 請求項19に記載の立体画像提示装置において、
    右眼用空間光変調素子の右観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、右眼用空間光変調素子の表側の面から右照明光を照射し、その反射光が観察者に観察されるようにし、
    左眼用空間光変調素子の左観察点に向かい合った面を表側の面としたときに、左眼用空間光変調素子の表側の面から左照明光を照射し、その反射光が観察者に観察されるようにしたことを特徴とする立体画像提示装置。
  22. 請求項19〜21のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    右眼および左眼についての覗き窓が形成された遮蔽板を更に備え、
    右眼用空間光変調素子および左眼用空間光変調素子が支持体に固定されており、
    前記遮蔽板は、前記支持体に対して定位置をとるように固定されており、
    観察者が、右観察点に右眼、左観察点に左眼を置いたときに、前記覗き窓を通して前記右眼用空間光変調素子および前記左眼用空間光変調素子を観察することができる位置に、前記遮蔽板が固定されていることを特徴とする立体画像提示装置。
  23. 請求項19〜21のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    観察者の頭部に装着するための装着具を更に備え、
    右眼用空間光変調素子および左眼用空間光変調素子が支持体に固定されており、
    前記支持体は、前記装着具に取り付けられており、
    観察者が、前記装着具を頭部に装着したときに、右観察点に右眼、左観察点に左眼がくるように、前記支持体の前記装着具に対する位置が調整されていることを特徴とする立体画像提示装置。
  24. 請求項18〜23のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    画像データ格納部に格納されている画像データが、照明光と同一の光路をとる単一波長の参照光と、提示対象となる原画像からの物体光とに基づく演算で得られた、空間光変調素子の変調面の位置に形成される合成波の情報を示す画像データであることを特徴とする立体画像提示装置。
  25. 請求項24に記載の立体画像提示装置において、
    画像データによって示される合成波の情報が、「変調面上の演算点Qについての演算を行う際に、空間光変調素子が、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ引いた直線の延長線方向に、前記演算点Qに入射する参照光を回折することができない場合には、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない」という条件に基づく演算で得られた情報であることを特徴とする立体画像提示装置。
  26. 請求項24に記載の立体画像提示装置において、
    画像データによって示される合成波の情報が、「変調面上の演算点Qについての演算を行う際に、原画像上の物体点Pから前記演算点Qへ向かう物体光の入射角をθoとし、前記演算点Qに対する参照光の入射角をθrとし、物体光および参照光の波長をλとし、空間光変調素子の画素ピッチをpとしたときに、『λ/(sin θo − sin θr)の絶対値≧2p』なる条件が成り立たない場合には、前記演算点Qについては、前記物体点Pからの物体光を考慮しない」という条件に基づく演算で得られた情報であることを特徴とする立体画像提示装置。
  27. 請求項18〜26のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    照明光照射部が、光源と、この光源からの光に基づいて平行光を生成する光学素子と、前記平行光を観察点に集光する集光素子と、を有することを特徴とする立体画像提示装置。
  28. 請求項18〜26のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    照明光照射部が、点光源と、この点光源からの球面波を観察点に集光する集光素子と、を有することを特徴とする立体画像提示装置。
  29. 請求項27または28に記載の立体画像提示装置において、
    集光素子として、回折光学素子もしくはフレネルレンズを用いることを特徴とする立体画像提示装置。
  30. 請求項18〜29のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    空間光変調素子として、液晶ディスプレイ、DMD、もしくはLCoSを用いることを特徴とする立体画像提示装置。
  31. 請求項18〜30のいずれかに記載の立体画像提示装置において、
    空間光変調素子からの0次光を遮蔽するための0次光遮蔽体と、この0次光遮蔽体を支持する透明支持体と、を更に備え、前記0次光遮蔽体が観察点に位置するように、前記透明支持体が配置されていることを特徴とする立体画像提示装置。
  32. 請求項31に記載の立体画像提示装置において、
    透明支持体が、透明な板状部材によって構成され、0次光遮蔽体が前記板状部材の表面の一部分に形成された遮光膜によって構成され、
    前記板状部材が、前記遮光膜が観察点に位置するように配置されていることを特徴とする立体画像提示装置。
  33. 請求項32に記載の立体画像提示装置において、
    遮光膜のサイズが、照明光の光源のサイズ以上、人間の瞳孔の最大径未満、となるように設定されていることを特徴とする立体画像提示装置。
  34. 請求項33に記載の立体画像提示装置において、
    遮光膜を円形とし、その直径を0.2mm〜1mmに設定したことを特徴とする立体画像提示装置。
JP2010154595A 2009-07-08 2010-07-07 立体画像提示方法および提示装置 Active JP5569198B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010154595A JP5569198B2 (ja) 2009-07-08 2010-07-07 立体画像提示方法および提示装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009161467 2009-07-08
JP2009161467 2009-07-08
JP2010154595A JP5569198B2 (ja) 2009-07-08 2010-07-07 立体画像提示方法および提示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011035899A true JP2011035899A (ja) 2011-02-17
JP5569198B2 JP5569198B2 (ja) 2014-08-13

Family

ID=43764459

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010154595A Active JP5569198B2 (ja) 2009-07-08 2010-07-07 立体画像提示方法および提示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5569198B2 (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012132289A1 (ja) * 2011-03-25 2012-10-04 パナソニック株式会社 表示装置
JP2015184609A (ja) * 2014-03-26 2015-10-22 オリンパス株式会社 表示装置
JP2016033665A (ja) * 2015-09-09 2016-03-10 大日本印刷株式会社 立体画像表示装置および立体画像表示方法
KR101620197B1 (ko) 2014-10-02 2016-05-12 한국생산기술연구원 홀로그램 3차원 안경
US9513600B2 (en) 2012-11-08 2016-12-06 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Display device using computer generated hologram
US9851580B2 (en) 2010-09-07 2017-12-26 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Projection type image display apparatus
US10051243B2 (en) 2010-09-07 2018-08-14 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Scanner device and device for measuring three-dimensional shape of object
US10802444B2 (en) 2010-09-07 2020-10-13 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Illumination apparatus using a coherent light source
CN114616506A (zh) * 2019-11-01 2022-06-10 株式会社籁天那 具有重影阻挡功能和广视角的紧凑型增强现实用光学装置

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6956104B2 (ja) * 2016-03-15 2021-10-27 マジック リープ, インコーポレイテッドMagic Leap,Inc. 短待ち時間レンダリングのための広ベースラインステレオ

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000284677A (ja) * 1999-03-30 2000-10-13 Asahi Glass Co Ltd ホログラフィック表示装置
JP2004264839A (ja) * 2003-02-12 2004-09-24 Dainippon Printing Co Ltd 計算機合成ホログラム
JP2004309709A (ja) * 2003-04-04 2004-11-04 Dainippon Printing Co Ltd 計算機合成ホログラム

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000284677A (ja) * 1999-03-30 2000-10-13 Asahi Glass Co Ltd ホログラフィック表示装置
JP2004264839A (ja) * 2003-02-12 2004-09-24 Dainippon Printing Co Ltd 計算機合成ホログラム
JP2004309709A (ja) * 2003-04-04 2004-11-04 Dainippon Printing Co Ltd 計算機合成ホログラム

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10051243B2 (en) 2010-09-07 2018-08-14 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Scanner device and device for measuring three-dimensional shape of object
US10802444B2 (en) 2010-09-07 2020-10-13 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Illumination apparatus using a coherent light source
US10523902B2 (en) 2010-09-07 2019-12-31 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Scanner device and device for measuring three-dimensional shape of object
US10156732B2 (en) 2010-09-07 2018-12-18 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Projection type image display apparatus
US9851580B2 (en) 2010-09-07 2017-12-26 Dai Nippon Printing Co., Ltd. Projection type image display apparatus
CN102918444A (zh) * 2011-03-25 2013-02-06 松下电器产业株式会社 显示装置
JP2013061657A (ja) * 2011-03-25 2013-04-04 Panasonic Corp 表示装置
WO2012132289A1 (ja) * 2011-03-25 2012-10-04 パナソニック株式会社 表示装置
US9513600B2 (en) 2012-11-08 2016-12-06 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Display device using computer generated hologram
JP2015184609A (ja) * 2014-03-26 2015-10-22 オリンパス株式会社 表示装置
KR101620197B1 (ko) 2014-10-02 2016-05-12 한국생산기술연구원 홀로그램 3차원 안경
JP2016033665A (ja) * 2015-09-09 2016-03-10 大日本印刷株式会社 立体画像表示装置および立体画像表示方法
CN114616506A (zh) * 2019-11-01 2022-06-10 株式会社籁天那 具有重影阻挡功能和广视角的紧凑型增强现实用光学装置
CN114616506B (zh) * 2019-11-01 2024-02-23 株式会社籁天那 具有重影阻挡功能和广视角的紧凑型增强现实用光学装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP5569198B2 (ja) 2014-08-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5569198B2 (ja) 立体画像提示方法および提示装置
Maimone et al. Holographic near-eye displays for virtual and augmented reality
TWI709765B (zh) 擴增實境光場頭戴式顯示器
US20180129166A1 (en) Holographic display apparatus for providing expanded viewing window
US7738151B2 (en) Holographic projector
Hamasaki et al. Varifocal occlusion for optical see-through head-mounted displays using a slide occlusion mask
US20210373330A1 (en) Holographic head-up display system
EP3513254B1 (en) Holographic wide field of view display
JP5015950B2 (ja) ホログラフィックに再構成されたシーンにおける不均一な輝度知覚を補償する方法
TWI390369B (zh) 減少光斑的方法和裝置
JP2010512551A (ja) 3次元オブジェクトの再構成を生成するヘッドマウント・ディスプレイデバイス
KR20160066942A (ko) 홀로그래픽 광학 소자의 제조 방법 및 장치
JPH0850255A (ja) ホログラフィ立体画像を用いたヘッド・アップ表示装置およびヘッド・ダウン表示装置
CN106200340A (zh) 空间光调制器和包括其的全息显示装置
TWI431443B (zh) 產生三維場景全像圖重建之裝置及方法
CN113885209B (zh) 一种全息ar三维显示方法及模组、近眼显示系统
EP3792681A1 (en) Multi-image display apparatus using holographic projection
US20130120816A1 (en) Thin flat type convergence lens
KR102561101B1 (ko) 확장된 시야창을 제공하는 홀로그래픽 디스플레이 장치
KR20120118621A (ko) 홀로그램 기록 장치 및 홀로그램 재생 장치
CN112882228A (zh) 基于白光照明的彩色全息近眼ar显示系统和彩色全息图计算方法
KR102161250B1 (ko) 홀로그래픽 디스플레이 장치, 홀로그램 광학 시스템 및 홀로그램 영상 기록 방법
JPH06102811A (ja) ホログラムの作成および立体表示方法並びに立体表示装置
KR20200071108A (ko) 넓은 시야를 생성하기 위한 디스플레이 디바이스 및 방법
JP2001350395A (ja) ホログラフィックステレオグラム露光装置及び方法、並びにホログラフィックステレオグラム作成システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130513

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140415

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140509

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140527

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140609

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5569198

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150